恋空~春、夜空の下で~   作:雪音

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今回はしーちゃんこと紫苑の出番はありません^^;ごめんね~(苦笑)そろそろ、攘夷組を出したいとか言っておきながら今回の話には登場してないとか…!!どんだけ話持っていくのが下手なんだよorz(苦笑)


【第十一訓】言葉の重み

集中治療室前の殺伐とした空気が、子供達によっていつものそれへと変わったときだった。沖田がクイッと銀時の着流しを引っ張ると、さっきまでの悲しみに揺れていたその瞳は、いつもと同じ…沖田のよく知る“死んだ魚のような目”になっていた。それを見て、思わず沖田は笑ってしまう。

 

「…ね、人の顔を見て笑うって失礼じゃない?総一郎君?」

「総悟でさァ、旦那」

 

あぁ、いつもの彼だ。

 

そんな事を考えながら、沖田は屈託なく笑う。それを見た銀時は少し驚いたような表情を見せたが、バツが悪そうに頭をかきながら苦笑した。

 

「あー、その悪かったねぇ…。…ちゃんと聞こえてたから」

「何がですかィ?」

「ん?全部」

 

さっきまで申し訳なさそうな表情をしていた銀時は、今度はニヤリと笑う。流石の沖田も、あの状態ですべてを聞かれていたとは思ってもいなかったらしく、今度は沖田が参ったといわんばかりの表情を見せた。そして思った。やはり、彼には敵わないと。

 

「全く、銀さん…まさか沖田さん達に迷惑を掛けたんじゃないでしょうね?」

「別にサドとマヨとゴリラに迷惑を掛けようと構わないネ」

 

子供達の言葉に周りの大人達は笑ったり、一部は眉をヒクつかせたりと反応は様々だったが、沖田だけは違った。大事な事を言いそびれたと溜息を吐きながら、改めて銀時を呼び治療室の中を指差す。

 

「旦那、紫苑が目を覚ましてますぜィ?多分、薬が抜けきったんでさァ…」

「……!!紫苑…!!」

 

その言葉を聞けば、またすぐに視線は紫苑の眠る部屋の中へと移る。しかしその瞳は先ほどとは違い、崩れてしまいそうな危うさは無く…心の底から心配していると、そんな表情だ。さっきよりもしっかりとした()で紫苑を見つめていた。

 

「……なんだよ、笑いながら手なんか振りやがって……」

 

ガラス越しに見た紫苑は、完全に薬が抜けたのだろう。笑いながら銀時に手を振っている。それにつられるように、銀時もまた笑い小さく手を振った。その様子を、その場に居た全員が微笑ましく見守っていたが、近藤だけがどこか悲しげに笑っている。それを見た土方も、改めて幸せそうに笑っている銀時を見て複雑な心境になった。

 

紫苑の命は残り少ない。

 

それを今、伝えるべきか否か…。

 

どうしたものかと考えていた2人だったが、ガラッと扉の開く音で2人は我に返る。まさか銀時が中に入ってしまったのでは?と一瞬思ったのだ。しかし、予想に反して銀時は先ほどと同じ場所に立っている。中に入ったのはどうやら医者だったらしい。小さく嘆息し、土方は近藤に視線をやる。それに気付いた近藤は小さく頷いた。

 

土方の言わんとすることが分かっていたから。

 

(そうだ…隠す事ではない。いや、隠してはいけないことだ…)

 

相手が他の誰でもない紫苑の婚約者である銀時は、この事実を…一番知る必要がある。意を決したように、近藤は銀時の傍まで歩み寄り声を掛ける。それに、銀時はきちんと反応して振り返った。

 

「万事屋、紫苑のことで大事な話があるのだが…」

「……分かった。けどよ、俺だけじゃ多分…納得いかねぇ奴らがいると思うからよぉ…」

 

そう言って、銀時は自分を心配して訪れたのであろう子供達やお登勢達を見渡す。そして苦笑しながら先を続けた。

 

「全員に聞かせてもいいかねぇ…?ババァ達がここに来てる理由は…何となく、分かるからよぉ…」

 

銀時は気付いていた。何故、たまもこの場所に来たのかという…その理由が。よく自分の家に押しかけてきては厄介ごとを持ち込んでくる幼馴染の為に、この場所にやって来たのだろう。

 

(まぁ、ヅラが来なかっただけでも良しとするか…。流石にアイツも、そこまで馬鹿じゃなかったか…)

 

桂は時として、形振り構わない時がある。銀時とて人のことを言えた立場ではないのだが、桂は手段を選ばないで突っ込んでくる為、銀時以上にタチが悪い。しかし、その桂が今回あえて来なかったという事は…恐らくはこの場に真選組が居る事を子供達から聞いたのだろう。そこまで考えた銀時は、チョイチョイとたまに手招きをした。

 

「何でしょう、銀時様?」

「ほら、しっかり見て…しっかり記憶して、しっかり持って返ってやってくれ。アイツも…相当、苦しんだからな…」

「…銀時様はご存知だったのですか?私がこの場所に訪れた理由を…?」

「いいや、知らねぇよ?けど……何となく分かったってところかな?」

 

真選組の面々は訳が分からないとそれぞれ訝しげな表情を見せたり、首を傾げたりしていたがそれに構うことなく、銀時はポンポンとたまの頭を撫でる。

 

「暫く、紫苑のことを任せた。何かあったらすぐに知らせに来てくれ…」

「了解しました」

 

「では行くか」と近藤に促され、銀時は頷きその場を離れようとする。チラリと…紫苑の方に視線を向ければ、どこか不安そうな表情(かお)をしていた。それに苦笑しながら、ちょっと待って欲しいと近藤に告げ、紫苑が見える位置に再び戻る。そして…

 

 

――スッ…、サッサッ…、シュッ…

 

 

銀時は両手を大きく動かし、何かを紫苑に伝えた。それを理解したらしい紫苑は、不安そうな表情から、安心したような…それでいてどこかおかしそうに笑う。そして、ゆっくりと紫苑も手を動かす。それは、両腕を使って大きな丸を作っていた。

 

「…よし、紫苑副官殿の許可も得たし…本当に行こうかねぇ…」

 

どこか懐かしそうに笑いながら、銀時は近藤の隣に足を進める。全員が、今のは一体何なのかと…そういった視線で銀時を見つめていた。それに気付いていた銀時は、少し悲しそうに笑いながら…

 

「合図だ……。鬼兵隊とその仲間達にだけ通じる合図。攘夷戦争中は、爆音やら何やらで声なんて全然聞こえなかったからな。離れた位置にいる場合はこうやって腕で指示を仰いだり、それに対して返事をしたりしてたんだよ…」

 

そう告げた。全員が驚いたように目を見開く。まさか、銀時の口から“鬼兵隊”という言葉が出るとは思いもしなかったからだ。(いな)、その口から“攘夷戦争”という言葉が出ること事態予想できなかった。もちろん、紫苑と銀時の関係が分かった以上、今更すぎる事ではあるが…それを誰に追及される事も無く、銀時が自然に口にしたことが意外だったのだ。

 

「ちなみに、今の合図は何て言ったんだい?」

 

聞いたのはお登勢である。それに、銀時は笑いながら…

 

「“本陣から離れて敵陣に探りを入れてくる”って…言ってやった」

 

ニヤリと笑う銀時に、土方が「誰が敵だ!!」と声を荒げ、それに対して「ウルセェ、土方コノヤロー」といつものように沖田が毒舌攻撃をする。騒がしくなってきた病院の廊下でお登勢は溜息を吐き、キャサリンは「ウルサイ人達デスネ」などと呆れている。そんな中、さっきの合図に興味を示した子供達は銀時の傍に駆け寄りクイッと着流しを引っ張った。

 

「他にもあるネ?あんな合図?」

「おー、俺達本陣の人間ですら分からない合図もあるぜ?例えば…鬼兵隊総督と副官の間でしか分からない合図、とかな…」

「それってつまり…高杉さんと紫苑さん…ですよね?」

「そーゆーことだよ、新八君」

「じゃあ、しーちゃんと銀ちゃんにしか分からない合図もあったりするネ?」

「え、俺と紫苑?……そうさなぁ……俺は鬼兵隊の隊員じゃなかったから、特にねぇよ」

「恋人同士なのに平隊員達以下の扱いとか…」

「銀ちゃん、ご愁傷様アル…」

「何?え、何?何でそこで、お前らは銀さんを哀れんでるわけ!?」

 

子供達の視線に哀れみのそれが含まれていることを感じて、何でそんな目をされなければならないのかと不機嫌そうに言うが、それでも子供達が両の手を放すことは無く。

 

「けど、羨ましいです…。そうやって、言葉を交わさなくても通じる何かがあるって…」

「そうネ、私達も結構長い付き合いになるけど…やっぱりしーちゃん達には敵わないアル」

「そうだろう、そうだろう。羨ましいだろう?けどな、肝心な時に言葉が届かないのも…結構辛いんだぜ?」

「それがイコールで泣いていい理由にはならないネ」

「あ、僕が言おうと思ったのに…」

「だからいつまで経っても新八のままなんだヨ、新一になれないんだヨ。何だよ、八って」

「コラァァァッッッ!!!全国の新八さんに謝れェェェェ!!!」

「はいはい、新八の全力のツッコミは痛いほど分かったから場所を考えような~。ここ、病院だから…」

「うっ…は、はい…そうですね…」

 

また、銀時もそんな子供達の手を放すことは無く。

 

そこには、先ほどまで崩れ落ちそうなほどに脆かった銀時ではなく…皆のよく知り、そして慕っている銀時が居た。

 

 

 

紫苑の担当医から予め許可を得ていた近藤は、銀時を始めとした万事屋メンバーとその場に残ったたま以外のスナック・お登勢メンバーをある部屋へと招き入れた。恐らくは医師と患者、もしくは親族が話し合う場所だろう。そこに人数分の椅子を揃えて、中央には近藤と銀時が向かい合うようにして座る。他のメンバーは思い思いの場所に座っていた。

 

「……まぁ、なんっつーか…よ…。ありがとな…」

 

何とも言えない沈黙。それを破ったのは、銀時の礼の言葉だった。誰もが驚いていたが、構わず銀時は続ける。

 

「紫苑がどういう経緯で真選組に入ったのかは分からねぇし、真選組に入った紫苑を責めるつもりもねぇ。ただ…生きてた。それだけで…俺ァ十分だ…。多分、アンタらが助けてくれたんだろ、紫苑を?…マジでありがとな…」

 

正直な話…真選組のメンバーは全員、銀時に罵られると…そう思っていた。何故、その存在を隠していたのかと…そう言われると思っていた。もちろん、真選組メンバーは紫苑の存在を隠していたわけではない。ただ、身体に負担をかけないようにと…あまり大きな任務を与えなかっただけだ。それに、万事屋が絡んでくる事件の時には本当にタイミングが悪く、いつも紫苑はそこに居なかった。

 

「いや、万事屋よ…。俺達はお前に謝らなければならん。紫苑が攘夷戦争に出ていたことも、元鬼兵隊の副官だったことも、そして紫苑に婚約者がいたことも…本人の口から聞いて知っていた…」

「まさか、その婚約者がお前だとは思いもしなかったがな」

「…てぇことは、紫苑は俺の名は言わなかったのか?」

「言ってたら、とっくに旦那と紫苑…会わせてまさァ…。流石の俺でも、そこまでドSじゃありませんぜィ?」

 

真選組面々の言葉に、一瞬呆けた銀時だったが…確かに、今まで何度も接触してきた真選組の隊士達が、自分を攘夷志士と疑う事はあっても攘夷戦争に参加していた者として扱ってくる事はなかった。それは恐らく、紫苑が銀時に気を遣ってそうしたのだろう。名前を言えば、その生存が分かる確率は格段に上がる。しかし、もし攘夷志士としてではなく、一般人として平穏な暮らしをしていたら…銀時に迷惑が掛かってしまうと危惧したのだろう。

 

「紫苑に気を遣わせちまったなぁ…」

 

苦笑する銀時に、土方は更に続けた。

 

「まぁ、まさかお前が自ら口を割るとは思いもしなかったがな…」

「……はぁ…、“白夜叉”についてか?」

 

白夜叉

 

その言葉に、部屋の空気が一瞬にして変わる。新八と神楽は驚いたような…それでいて、どこか不安な様子で銀時と土方を交互に見つめている。お登勢は溜息を吐きながら、それでも事の成り行きをただ見ているだけだった。

 

「…認めるのか…?自分が…白夜叉だと…?」

 

驚愕の近藤の声。その声は、驚きからか…それとも伝説とまで言われ、尚且つ最も恐れられたと言われていたその張本人を目の前にしたが故の恐怖からか…少し震えている。問われた銀時は一つ溜息を吐くと、めんどくさそうに頭を掻いた。

 

「ま、自分で言っちまったからな。攘夷戦争で…ヅラが“狂乱の貴公子”、高杉が“鬼兵隊総督”、紫苑が“鬼兵隊副官”と言われていたように…俺は“白夜叉”と呼ばれていた。…迷惑な話だ。こんな二つ名、望んでねぇんだよ…俺ァ…。しかも、本名より白夜叉(こっち)の方が有名になっちまったから洒落にならねぇって話。まぁ、そのおかげで…坂田 銀時が攘夷戦争に参加していたという事実が明るみに出ることは無かったんだけどな」

 

ふと…そこまで話した時、銀時はあることを思い出す。自分と同じような二つ名が…ある時より天人達の間で恐れられるようになった事を。その二つ名が、当時の自分達に“紫苑が生きているのでは?”という希望をもたらしたということを。

 

「なぁ…聞きたいことがあんだけどよぉ…」

「何ですかィ?」

「…お前ら真選組…いや、幕府でもいいや。そっち側で…“紫怨(しおん)の鬼”という二つ名は…有名か?」

 

問われた真選組の面々は、それぞれ首を横に振る。3人が揃って「“紫苑”という名なら当然知っているが」と付け足す。

 

(ということは…この二つ名は俺の白夜叉ほど露見しなかったという事か…。…いや、そもそも紫苑の二つ名かどうかすら定かじゃねぇ。あくまで、攘夷戦争の時だけ広まった二つ名ってことか…)

 

「それがどうかしたのか」と問うてきた土方に、「いや、なんでもない」と苦笑してその話はそこで終わる。だが、一連の話を黙って聞いていた万事屋の従業員達とスナック・お登勢のメンバーは何ともいえない表情でその様子を見ていた。

 

紫怨(しおん)の鬼”

 

その名は、さっきまだスナックに居た時…桂の口から聞いた二つ名だ。もしかしたら、紫苑のことかもしれないが、結局は分からなかったと…桂自身がそう言っていた二つ名。やはり、どこかで銀時も気にしていたのだろう。

 

「ケッ、しかしまさかテメェが伝説とまで言われた男だったとはな。世も末だ…」

「言ってろよ、多串君」

「誰が多串だ、誰が!!」

「…あ、あの…土方さん…?」

「あ?なんだ、眼鏡?」

 

土方と銀時が毒舌戦を繰り広げているところに口を挟むのはかなり勇気がいったが…しかし、新八にはどうしても確認しておきたい事があった。ただでさえ、銀時は真選組…というよりも土方から、攘夷志士ではないかという疑いの目を向けられていた。

 

しかし、ここで銀時の正体が“白夜叉”だとバレてしまった。

 

「…銀さんを……捕まえるんですか…?」

 

声が震える。

 

新八は知っているのだ。幕府側についている天人達にとって、白夜叉は大量の天人を殺した憎き仇であり、天人が幕府を牛耳っている今でもなお恐怖の対象であるということを。そして、現在攘夷活動をしていなくても…白夜叉は捕縛の対象となり、そしてそのまま死刑となるということも。

 

考えなくても分かることだ。

 

今の幕府を操っているのは、天導衆と呼ばれる天人集団。その天人集団が白夜叉を憎み恐れていないはずが無い。

 

新八の問いに、流石の神楽もキッと土方を睨む。

 

「捕まえるアルか?銀ちゃんは今、何もしてないネ。それなのに捕まえるアルか?“白夜叉”だから?たった…そんな名前ひとつで銀ちゃんは捕まらなきゃならないネ?」

 

神楽はこういったことに非常に敏感だ。自分が天人だと…夜兎だと恐れられ、人々から避けられていたからだ。流れている血が違う、種族が違う。ただそれだけの理由で、嫌な思いを沢山してきた。そんな中で、自分を家族同然に慕ってくれたのが銀時だった。銀時が白夜叉だと知っても、神楽は何も感じなかった。その銀時が、“白夜叉”という名前だけで捕まってしまう。神楽だけではなく、これは新八も危惧していたことだった。神楽同様、新八の表情も険しい。

 

「僕達にとって、銀さんは銀さんです」

「銀ちゃんが白夜叉だろうと何だろうと、私達には関係ないネ」

 

子供達の真剣な()と言葉を受け、ハァと土方は小さく溜息を吐きながら頭をガシガシと掻く。煙草に手が伸びそうになったが、ここが病院である事を思い出しそれは何とか留めた。

 

「確かに…幕府(うえ)からは、白夜叉、及び攘夷戦争で名を上げた者達を見つけ次第捕縛という勅命(ちょくめい)がある」

「……!!だったら、絶対に私達が銀ちゃんを護るネ!!」

「チャイナ、最後まで俺の話を聞け」

 

少し強い口調で…そして鋭い視線で神楽を睨めば、不満そうではあったが土方の話を聞くために黙る。一方の土方は近藤に視線をやり、ひとつ頷く。そして…

 

「俺達は確かに幕臣であり、御上の勅命であれば絶対に守らなければならない。勿論、白夜叉を捕らえよという(めい)も例外ではない。だがな……俺達は俺達なりの士道(ルール)を持っている。万事屋がガキ共を護ることを士道(ルール)にしてるように…俺達は、俺達の魂に従って剣を抜いている。……今の俺達にとって、“白夜叉を捕まえる”ことは…その士道(ルール)に反する…」

「…それって、つまり…」

「まぁ、俺達は万事屋に沢山の借りがあるからな。それに、俺達の目の前におるのは“万事屋”を営む胡散臭い一般人ということだ。捕まえる理由などありはせんよ」

 

土方はタンタンと、そして近藤はニッと笑いながらそう言った。しかし、この2人が言っている事は…矛盾していないだろうか?近藤は“万事屋を営む一般人”と言ったが、銀時は自ら“自分は白夜叉”だと名乗ったのだ。

 

目の前にいるのは、万事屋のオーナーでもあり、そして白夜叉でもあるのだ。

 

「アンタ達、言ってることが無茶苦茶だね。どういうつもりだい?」

 

胡乱気に聞くお登勢の言葉に答えたのは沖田だった。

 

「まぁ、何と言いますか…俺達はアンタらが思っているほど、御上に忠誠を誓ってる訳ではないんでさァ」

「あーあ、そういうことサラッと言っちゃっていいわけぇ?」

 

銀時が間髪入れずにツッコめば、沖田は悪びれた様子も無く笑う。そして土方もまた、口角を吊り上げて笑っていた。

 

「誰があんな奴らに忠誠を誓うかよ。俺達の国を乗っ取っただけでは飽き足らず、侍の魂である刀まで奪いやがった奴らだぜ?俺が…俺達真選組全員が忠誠を誓い、絶対の(かしら)と決めているのはただ1人だけだ」

 

誰、と言わずとも…それが誰なのかはすぐに分かる。

 

「随分愛されてんねぇ、局長さんよぉ?」

 

真選組にとって、御上よりも大事な存在は他の誰でもない…真選組局長の近藤 勲ただ1人なのだ。

 

「あとは俺の決めることじゃねぇ。この件は近藤さんの決める事だ。俺も総悟も、近藤さんの(めい)に従う…」

「そういうことでさァ。まぁ、出来れば…めんどくさくない(めい)である事を願いたいもんですけどねィ」

「同感だ。白夜叉をとっ捕まえるなんざ、随分と骨が折れそうだからな」

「そのまま全身の骨が折れて死んじまえ、土方コノヤロー」

「テメェこそバッサリ斬られて死んじまえ、沖田コンチクショー」

 

勝手に始まった土方と沖田の毒舌戦に「また始まった」と苦笑しつつも、近藤は真っ直ぐと銀時を見据える。それを、死んだ魚のような目で銀時は見返していた。

 

「坂田 銀時はただの一般人。俺達は、その坂田 銀時と白夜叉が同一人物であることを知らなかった。そして、今後もこの件に関して調査をするつもりはない。これが…俺の下した判断だ」

「御上に「なんで~?」って聞かれたらどー答えるつもりだ?」

「一般人を疑っては警察の名が下がる。それとも幕府そのものの名が下がっても宜しいのか?と…脅しでもかけるか?」

「ククッ、こりゃとんでもねぇこと言い出しやがったよ…」

 

参ったと両手を挙げてヘラッと笑う銀時。同じように、近藤もまたニッと笑った。

 

「そういうことだが……何か問題があるだろうか?」

 

別に誰に聞いたわけでもないのだろうが、近藤が尋ねると子供達はニッと笑う。

 

「問題ないですね」

「そーヨ!!銀ちゃんは銀ちゃんネ!!」

 

お登勢もフッと笑みを零した。

 

「銀時、命拾いしたね。アンタ、コイツらに感謝しなよ…」

 

キャサリンはどこかつまらなさそうにしている。

 

「坂田サンモ、一度ブタバコニ入ッテミタラドウデスカ?結構、居心地イイデスヨ?」

「キャサリン!!冗談でも勘弁してくんねぇ!?そういうのはよ!!」

 

キャサリンの言葉と銀時のツッコミに、重い空気が漂っていたその部屋に初めて笑い声が響いた。

 

「まぁ、近藤さんが言った通りだ。テメェじゃなけりゃ話は変わってきたんだろがな…。マジで感謝しやがれ、ボケが」

「いっそ、土方コンチクショーが白夜叉って事で御上に報告しやしょうか?」

「おー、それいいね総悟君。けど、ソイツ銀髪じゃねぇよ?無理じゃね?」

「んなもん、ペンキでもぶっかけて白く染めれば十分ヨ!!」

「お、チャイナもたまにはいいこと言うじゃねぇか」

「オイィィィィィ!!!!テメェら、何俺を陥れようとしてやがんだァァァァァ!!!!」

 

ギャーギャーと騒ぐ4人を引き攣った笑みで見守りつつ…ふと、新八は近藤に視線を向ける。同じように苦笑しながらその様子を見ていたが…どこか、表情が冴えないような気がする。

 

「近藤さん?」

「ん?どうした、新八君?」

「いえ……、近藤さん…他に何か銀さんに言いたいことがあるんじゃないですか?」

 

新八に指摘され、驚いたように目を見開けば新八は苦笑しながら続ける。

 

「何か凄く…言いづらそうな…それでいて、絶対に伝えなければならないって…。そんな顔、してましたから」

「新八君には敵わんな…。流石は未来の義弟(おとうと)だ…」

「誰が義弟(おとうと)ですか、誰が」

 

ツッコむところはしっかりとツッコむ辺りは流石である。冗談はさておき…と、近藤は改めて銀時を呼んだ。丁度銀時は、土方と睨み合いながら火花を散らしていたが、近藤に呼ばれ、それはあっけなく幕引きとなる。

 

「今度は何だよ?……あ、いや…。俺も聞きたいことがあったんだったわ。どうしても…聞きたいことが…」

「そうか…。俺も万事屋にどうしても言わねばならんことがある。だがまぁ…万事屋の方から先に聞こう」

「…そんじゃ…お言葉に甘えて…」

 

どこか聞きづらそうに…(いな)、出来れば聞きたくなど無いとその表情が物語っていた。だが、聞かねばならない事実だと…銀時は腹を括る。

 

銀時の聞きたかったこと、それは…

 

「紫苑のことだ…。アイツは……何か、酷い病…なのか…?」

 

まさに、近藤が言わねばならないと思っていたそれだった。

 

銀時が離脱した事で、今度は土方と沖田、それに神楽が加わって毒舌戦を繰り広げていたが…銀時の言葉で、それが強制的に終了となる。神楽は首を傾げていたが、土方と沖田は何ともいえない表情をしている。そう、それこそさっき新八が近藤に対して言った“言いづらいが言わねばならない”というような…そんな表情である。

 

一瞬の沈黙。その沈黙が、僅かに明るさを取り戻しつつあった部屋の空気を再び重くした。

 

「……万事屋よ、俺の言わねばならんこととは……紫苑の病についてだ…」

 

重い沈黙を破ったのは近藤の一言。

 

その一言は…

 

「…紫苑の身体はもう…いつ、限界を迎えてもおかしくは無い…」

 

銀時が生きてきた中で最も重く…

 

「1年前の今頃だった……」

 

最も…

 

「あと1年、その命がもつかどうか…それが、医者からの告知だった。つまり…“今”が……その告知の時なんだ…」

 

聞きたくない言葉だった。

 

 

 

近藤から、その言葉を聞いた瞬間…

 

銀時は目を見開き、その紅い瞳から…

 

大粒の涙を零した。

 

 

 

「う、そ…、だろ…」

 

 

 

あぁ…まただ…。

 

 

 

「な、んで…」

 

 

 

どうしてこんなに…

 

 

 

「俺、達……また、離れ離れに……なるのかよ……ッ…!!」

 

 

 

ひとつひとつの言葉が、重く感じてしまうのだろうか…?

 

 

 

いつも何気なく使っている言葉が。

いつも何気なく呼んでいる名前が。

 

 

 

「……し、おん……」

 

 

 

どうして、こんなに重く…苦しいのだろうか……?

 

 

 

その答えは、誰も見出す事が出来るはずも無く…

 

ただ、涙を零しながら「何で」と呟く銀時が再び壊れてしまわないように…

 

 

 

「銀さん」

「銀ちゃん」

 

 

 

その手を握り、名前を呼ぶことしか出来なかった。

 

 

 

真選組以外の誰もが知らなかった事実。

 

紫苑の寿命。

 

それは…銀時だけでなく、その事実を知らなかった誰もが胸を痛める事実であった。




次…攘夷組出せるかな?てか、追憶編の晋助の終わり方が銀時との電話っていう設定を忘れてるわけじゃないですよ~!!まだそこまで話が進んでないだけです^^;(苦笑)

(2011年7月27日 にじファン初投稿)
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