恋空~春、夜空の下で~   作:雪音

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何とか20話以内に終わりそうな予感です(笑)にじファン閉鎖と聞いたときは、どうなることかと思いました…(苦笑)とりあえず仮置きの状態ですが小説を移し替えることも出来ました^^あとは時間を見つけてサイトを作り、また小説を移していこうと思っているところです。

あと今回の話ですが……今までの中で一番ギャグ傾向が強いです(笑)今までずっとシリアスぶっ通してきたんですが…まぁ、1話ぐらいほんわか出来る話があってもいいかなーと思いまして(笑)

あと、前々から話していた新たに連載を開始したい小説についてですが…P4小説or銀魂×RKRNのクロス小説になりそうです!!どっちにしようか悩んでるんですよね~(苦笑)


【第十七訓】いつか帰るところ

近藤・土方・沖田、そして新八・神楽が大江戸病院に訪れた時には、既に銀時と紫苑は病室に居なかった。どういうことだと首をかしげた一同だったが、近くを通りかかった看護師から話を聞くことが出来た。

 

「ったく…俺達が来るまで待てねぇのか、あの野郎は…」

 

話によると、紫苑と銀時は片付けを済ませて早々に屋上に向かったらしい。もし誰か面会人が来たら、その時は屋上にいると伝えて欲しいと看護師に言伝(ことづて)していたのだ。エレベータで屋上まで向かい、扉を開けると…

 

「そうそう、あの時コタローがメッチャ怒って怖かったよね!!」

「怖かったっつーか、煩かったの間違いだろ…?」

「えー、そぉ?結構…銀時も兄さんも辰馬も、顔引き攣ってたけどなァ…」

「だから何でそんな事ばっか覚えてんだよ!?」

「あと…、私塾で兄さんと銀時がいたずら書きしてたら、松陽先生が背後から来て…」

「あー、あれなァ。あん時はマジでビビッたぜ。だって松陽先生、気配を完全に消して来るんだもんなァ」

 

楽しそうに話している2人の姿があった。紫苑は真選組の隊服を着ている。倒れた時に着ていた服がそれだったからだろう。2人で屋上の手すりに体重を預け、江戸の街を見下ろしながら他愛ない話で盛り上がっていた。

 

「何というか…」

「お似合いネ!!」

 

2人の背中を見て、子供達は顔を見合わせて笑う。あんな美人が銀時の婚約者とは本当に勿体無いものだと、最初こそ思ったが…こうして見ると、本当にお似合いの2人だ。

 

「ね、辰馬は宇宙にいるのよね?」

「おう、そうだけど…それがどうかしたのか?」

「宇宙ってどんな感じなのかなーって。少し興味あるの。」

「……宇宙ねェ…。アイツ、自分の船で船酔いしてんぞ?」

「やだ、なにそれ!!辰馬らしいっちゃらしいけど…」

「どこまでも馬鹿だよな、アイツ」

「い、いや…だから、そこは辰馬らしいって…言ってあげようよッ…」

「そー言ってるワリには…紫苑、声が笑ってるぜィ?」

 

突然聞こえてきた第三者の声に、2人は驚いたように後ろを振り向いた。子供達は銀時を呼びながら駆け寄ってくる。そして真選組の3人はそれぞれ…いろんな表情をしていた。近藤はいつもと変わらず、豪快な笑みだ。土方は…何となくバツが悪そうな顔をしている。昨日のことを思い出して居心地が悪いのか、それとも2人の話を聞いてしまった罪悪感かは分らない。沖田はというと…2人の話が面白かったらしく、「坂本って人はそんなに(いろんな意味で)ヒドイんですかィ?」と聞いていた。

 

「あー…、そっか…紫苑を迎えに来たんだな」

 

もうそんな時間かと銀時は苦笑しながら頭を掻く。しかし銀時の言葉に、「それもだが」と近藤が前置きを言う。

 

「実は万事屋にも屯所まで来て欲しい。もちろん、新八君達もだ。」

「………?何だ、まだなんか俺らに聞きてぇことがあんのか?」

 

昨日だけでも十分いろいろな事を話した。攘夷志士と真選組という超えてはならない壁を超えて…それはもういろいろな事を。しかし、彼等はまだ聞きたいことがあるという。少し…紫苑にも不安の色が見えた。

 

(まさか…天導衆に銀時のことが…?)

 

そんな紫苑の表情を的確に読み取った土方が、苦笑しながら口を開く。

 

「安心しろ、万事屋をとっ捕まえるとかそんな話じゃねぇよ。どっちかっていうと…紫苑、お前関係での確認事項だ」

「…私…?」

 

まさか自分の事とは思いもしなかった紫苑は、自分を指差し首を傾げる。確認とは一体何なのだろうか?しかし、続きをここで話すつもりはないらしい。

 

「とりあえず…落ち着いて屯所で話そう」

 

何も心配は要らないと、近藤は笑いながら紫苑と銀時に言う。近藤が言うのだ。悪い知らせではないだろう。

 

「じゃあ…屯所に戻りましょうか。あ、確か報告書が今日までだった…!!」

「ああ、それはいい。俺が片付けておく。今日は休め」

「何でィ、土方さん。俺にはそんなこと、一言も言ってくれたことないじゃないですかィ」

「テメェは日頃の行いが悪すぎんだよ!!」

 

ギャーギャーと騒ぐ2人を「病院だから静かにな!!」と必死に宥める近藤。結局、騒がしいまま3人はエレベータへと向かっていった。

 

「…何だろ…?」

「さァな…?」

 

2人揃って首を傾げていると、銀時の手を新八が、紫苑の手を神楽が取る。

 

「銀さん、僕達も早く行きましょうよ!!」

「じゃないと、アイツらに置いて行かれるネ!!」

 

それもそうかと笑いながら、4人仲良く手を繋いでエレベータへと向かった。

 

 

 

真選組の屯所に着くと、色んな隊士達が紫苑の身体を心配して出迎えてくれた。なるほど、紫苑は相当慕われているらしい。それは、彼等の表情ですぐに分かった。

 

「愛されてんねェ、紫苑?」

「ふふっ、いいでしょー?」

「あーあ、ジェラシー、ジェラシー」

「銀さん…いい年したオッサンが何言ってるんですか…」

「しーちゃん、ムッサイ男ばっかりの中で辛かったアルな。きっと凄い拷問だったに違いないネ」

 

口々に好き放題言ってる万事屋の面々を紫苑は面白そうに見つめる。子供達の言葉に、銀時がムキになって返す様は、見ていて大人気(おとなげ)ないとも言えるが、微笑ましくもあった。その姿は、松陽がまだ健在だった頃の自分達のようだ。

 

「紫苑さん、よかった~…無事だったんですね!!」

 

万事屋の3人を見ながら笑っていると、山崎がこちらに駆けて来る。「心配したんですよ?」という彼に、紫苑は申し訳無さそうに眉をハの字にさせた。

 

「けど…理由は局長から聞きました。紫苑さんの大切な人、見つかってよかったですね!!」

 

山崎は笑いながら紫苑、そして銀時に視線をやった。どうやら、真選組隊士の間では既に紫苑と銀時の仲については広まっているらしい。恐らく…いや絶対、噂を振りまいたのは沖田だろう。それ以外に考えられない。

 

「えっと…それで、近藤さん達はどこに…?」

 

恥ずかしそうに笑いながら紫苑が聞けば、「局長室です」と言って一礼する。どうやら仕事の途中で態々紫苑の顔を見に来たようだ。

 

「……これだけ男が居て…しーちゃんはよく無事だったアルな……」

「うん、僕も今同じこと思ってた」

 

傍から見ても紫苑が真選組の皆に慕われているのはよーく分った。本当によく、男所帯の真選組で何事もなく過ごせたものだと…いろんな意味で感心してしまう。そんな2人の言葉に、紫苑はちょっと困ったように笑っていた。

 

「別に誰からも声が掛からなかった訳ではないのよ?」

 

その言葉にギョッとしたのは銀時である。

 

しかし、次の紫苑の言葉で…

 

「ただ、私は…銀時が生きているって信じていたから。だから…いつもお断りしていたの。信じ続けてよかった!!」

 

今度は恥ずかしそうに頬を紅く染めるのであった。

 

 

 

局長室に向かう途中も色んな隊士達に声を掛けられ、そのたびに大丈夫だと紫苑も伝えて…そうしてようやく局長室へと辿り着いた。

 

「随分遅かったな?迷った…ってことはねぇよな。紫苑も一緒だし…」

「いやァ?ここの隊士達がそりゃもう紫苑を大事にしてるみてぇでなァ。会う奴会う奴、全員が紫苑に声掛けるもんだから…」

「なるほど」

 

そりゃご苦労だったと土方が苦笑気味に労う。それに銀時も苦笑で返した。思っていた以上に紫苑は真選組の隊士に好かれているらしい。元攘夷志士という肩書きが、もしかすると隊士達と紫苑の間に少なからず壁を作っているのではないかと思ったが、その心配もどうやら銀時の杞憂だったようだ。

 

(…紫苑が真選組(ここ)に残ることを望むなら…)

 

本当だったら、万事屋で一緒に僅かな時間を共に過ごしたいと思った。けれど、真選組の隊士達が皆笑顔で紫苑を出迎える姿を見て、銀時は思ったのだ。

 

真選組に残るか、万事屋に来るか。それを決めるのは紫苑でなければならないと。

 

(とは言っても…真選組って除隊出来んの……?)

 

しかし、疑問はそこなのだ。近藤達は自分達に紫苑の事で何か話そうとしているようだが…もし紫苑が除隊を望んだとして、果たして真選組の局中法度には触れないのだろうか?そんなことを考えながら、近藤・土方・沖田に向かい合うように銀時が座る。その横には紫苑がいて、少し後ろの方には新八と神楽が座っていた。

 

「さて…話というのは…紫苑の事についてだ…」

 

どっしりと構えて座った近藤が開口一番に言ったのは…

 

「単刀直入に聞こう。紫苑…素直な気持ちを俺達に聞かせてくれ。紫苑は真選組に残りたいと思っているか?それとも…除隊して万事屋の元に行きたいと思っているか?」

 

まさに銀時が疑問を抱いていた内容だった。唐突な質問だった為、紫苑は思わず呆けてしまう。しかし我に返って、今度はどうしたものかと銀時と近藤達を交互に見始めた。

 

「紫苑、近藤さんも言ったが…素直な気持ちでいい。話してくれ。」

 

土方に促され、今度は俯いてしまう。しかし、それは紫苑なりにいろいろと葛藤があるのだろう。

 

(どうしたい…?除隊したい…?けど、銀時と一緒に時を過ごしたい。だからといって、真選組から除隊したいの…?ううん、除隊は…したくない。私は真選組(ここ)が好きだから。けど…あれ?ちょっと待って、私…どうしたいんだろう…?)

 

中々顔を上げてくれない紫苑を見て、沖田は苦笑を漏らす。

 

「とりあえず…紫苑がどう思ってるか聞かせてくれやせんかねィ?除隊とかそーゆーのは抜きにして…紫苑はどうしたいんでィ?」

 

どうしたいかと問われ、紫苑はゆっくりと顔を上げる。どうやら酷く悩んでいるらしく、視線が泳いでいた。

 

「えっと…私は銀時の傍に居たいと思ってる。けど…真選組のみんなも大切だから、除隊はしたくなくて…。でも、銀時とはもう絶対に離れたくなくて、けどそれだったら真選組は除隊しなきゃいけないよなァ……って、色んな気持ちが堂々巡りして全然纏まらないの…」

 

なるほど、彼女はいろいろ考えた結果…真選組の除隊は望まないが、しかし銀時と一緒に居ることを望んでいるのか。

 

それでは答えも出ないはずだと近藤は豪快に笑う。一方、銀時は呆れたように笑っていた。

 

「お前…どんだけ欲張りだよ…」

「うっ、だ…だって…」

 

元攘夷志士だった自分を本当の家族のように大切にしてくれた真選組には恩を感じている。銀時が見つかったからと言って、簡単に切れるような(えにし)ではないのだ。

 

「しーちゃんはきっと、銀ちゃんの経済力が心配ネ!!」

「あー…なるほど、それ確かに言えてるね…」

 

しかし子供達はそんな紫苑の思いに気付くはずも無く、好き放題言っている。何せ家賃もロクに払えない上に、給料すらもロクに払えないほどの経済力だ。子供達に指摘されて、思わずウッと言葉に詰まってしまう銀時である。

 

「紫苑、俺達のこたァ気にしなくていいんだぜィ?気ィ遣ってんなら大丈夫でさァ。(いず)れは俺が副長になって真選組を引っ張っていくという未来に変わりはないぜィ?」

「オイィィィ!!何勝手に未来想像してんだよ!?副長は俺!!テメェいい加減にしろよ!?」

「……うん、こんな人達ばっかりだったら…紫苑さんだって不安ですよね、凄く分かります……」

 

突然始まった土方と沖田の言い合いを見て、新八は頬を引き攣らせる。これでは確かに、真選組からは離れられないと…。

 

「し、新八君そうじゃないの!!銀時の経済力とか、トシと総ちゃんの殺し合い(喧嘩)とか…そんなのが理由で悩んでるんじゃないの!!」

「え、何か“殺し合い”って書いて“喧嘩”ってルビ振られなかった?しかもそれを“そんんなの”で片付けたよ?え、何それ、銀さん怖い」

「そうネ、もうそのまま“殺し合い”でヨロシ」

「っておいィィィィ!!何の話だよ!!話戻して!!戻してェェェ!!」

 

脱線しつつあった話は、さすがというべきか…ボケが飽和したこの空間で新八が見事にツッコみ、話を戻す。

 

「で?結局のところ、紫苑は何が理由で悩んでんだ?」

「除隊の件なら心配はいらんぞ?俺もトシも紫苑が望むのであれば除隊を許可する。法度には触れないから、それも心配はいらん!!」

 

銀時と近藤の言葉に紫苑は苦笑しながら、慎重に言葉を選ぶ。

 

「私は…銀時の隣という場所に戻りたい。けど…真選組もまた、私の居場所なの。だから…どちらか、なんて…選べないわ…」

 

本当に欲張りよね、と苦笑する紫苑。しかし、紫苑の言葉が近藤達にとってはとても嬉しかった。遠くを見つめながら思いを馳せている紫苑の姿は、屯所内でも色んな隊士達が目撃している。それは恋人を想ってか、かつての仲間を想ってか、はたまた兄のことを想ってか…それは分らない。だから、もしかしたら(いず)れ紫苑は真選組から居なくなってしまうのではないかと思っていたのだ。昔、命を預け合って戦った仲間と、自分達真選組を比べれば重みが違う。きっと、紫苑は迷うことなく真選組から離れていくだろうと。

 

しかし、彼等が思っている以上に…紫苑にとって真選組は大きな存在だったのだ。

 

「銀時が万事屋の子供達やお登勢さん達を大事に想っているように…私もね、真選組のみんなのことを大切に想っている。私にとって、真選組は第二の家族だから…」

 

だから、どちらかなんて選べない。本当は選ばなければならないことだ。選べと言われれば銀時と共に居る事を選びたいのだが…その後に後悔してしまいそうなのだ。

 

「……ふむ、これは参ったな……」

 

紫苑にすべてを一任するつもりだった近藤は、さてどうしたものかと腕を組む。しかし、紫苑が胸を張って“第二の家族”と言ってくれた事は嬉しかった。銀時という探し人が見つかってもなお、自分達の事を大切に想ってくれる紫苑の優しさが嬉しかったのだ。

 

しかし、紫苑の身体のことを考えると…やはり、最期の幸せは想い人である銀時と共に過ごして欲しい。真選組(自分達)はもう、十分紫苑と共に楽しい時を過ごした。

 

「おいゴリラ」

 

そんなことを考えていると、神楽が近藤を呼ぶ。ゴリラと言われて泣きそうになった近藤だが、あえてそれを聞かなかったことにして視線をやると、まん丸で綺麗なブルーの瞳はキラキラと輝いていた。

 

「私から提案ネ。しーちゃんもお前らも決められないなら、私が決めるアル!!」

「えええ!?ちょっと待って神楽ちゃん!?これ紫苑さんの問題だから!!僕達が口を挟んでいい問題じゃないよね!?」

 

まさかそんなことを言われるとは思わなかった近藤はポカンと呆け、土方は溜息を吐きながら頭を抱える。沖田も「何言ってるんでィ、寝言は寝て言いやがれィ」と毒舌を吐いていた。しかし、そんな彼等をよそに銀時と紫苑は苦笑を漏らしている。

 

「ったく、何でオメェが提案したがるんだよ。でもまぁ…このままじゃ埒が明かねぇし…とりあえず言ってみ」

「うん、神楽ちゃんの提案…参考にしたいな。聞かせて?」

 

紫苑は優しく笑いながら神楽の頭を撫でる。彼女に頭を撫でられて嬉しかったのか、華のような笑みを浮かべながら…

 

「銀ちゃんと私としーちゃんで万事屋に住むヨロシ!!そして、万事屋から真選組に通えば問題ないネ!!」

 

そう言った。

 

神楽の言葉に、その場にいた全員が驚く。シンと…室内が静まり返った。

 

「………駄目アルか………?」

 

誰も何も言わない為、もしかしたら場違いな事を言ってしまったのかも知れないと神楽は俯く。だが、次に神楽が感じたのは…暖かい温もり。そう、紫苑が神楽を抱きしめていたのだ。

 

「しーちゃん…?」

「うん…、神楽ちゃんは天才ね……!!」

 

誰も思いつかなかったこと。全員が、どちらか片方を取る事ばかりを考えていた為、全くと言っていい程それ以外の方法を考えなかった。

 

紫苑がどちらか片方のみを選べないのであれば、どちらも選べばいい。

 

神楽の提案は…まさに、紫苑の悩みを万事解決する名案だったのだ。

 

「何でィ、チャイナもいい事言うじゃねーかィ」

「うるせーヨ、サド!!別にお前らのことを思って言ったんじゃないネ。私はしーちゃんが大事だから、しーちゃんのために言ったアル。銀ちゃんだってしーちゃんと一緒にいたいでショ?」

「おぉ?おう、そりゃもちろん…!!」

 

突然話を振られて、反射的に返せば神楽は満足そうに笑った。

 

「マヨ、これじゃ駄目アルか?万事屋から真選組に通うのは駄目ネ?」

 

ずっと黙っていた土方。紫苑がどうするのが最善か…それをずっと考えていたのだが、どうやら今回ばかりは真選組の頭脳も神楽には勝てなかったらしい。フッと小さな笑みを零す。

 

「俺ァ近藤さんの指示に従うまでだ。近藤さんがそれを許すなら、俺はそれでいい。紫苑が幸せになれるなら…それでいい…」

 

土方の言葉に、全員の視線が近藤に集中する。

 

「……ふむ、では…紫苑の処遇を決める。我々真選組は紫苑の幸せを願う。よって――……」

 

 

 

* * * * *

 

 

 

すべての話を終えて、万事屋に戻った一行。銀時がいて、新八がいて、神楽がいて、そしてその中に…

 

「お前…驚くほど荷物少なくねぇか?」

「まぁ、元々荷物なんて殆どなかったからね。着物もあまり買ってないし…」

「しーちゃんの部屋はどこアルか?押入れは下だったら空いてるヨ!!」

「いや、押入れで寝ようとか考えるの神楽ちゃんぐらいだから…」

「んだよ、うるせぇヨ。ドラ●もんだって押入れで寝てるネ」

「ドラ●もんと紫苑さんを一緒にしないのッ!!」

 

紫苑の姿。

 

近藤の下した判断は、万事屋から真選組に通うことを許可するというものだった。原則、真選組の隊士達は何かあったときの為に屯所に住み込むことが絶対条件となる。だから、今回の判断は特例中の特例だった。もっとも、この判断に真選組の隊士達は誰も不満を言うことなく…むしろ、紫苑が真選組のことを見捨てないでくれたことに喜んだ。紫苑自身は、こんな中途半端な気持ちのままでよいものかと悩んだが、近藤も土方も気にしないでいいと言ってくれた。だったらと…その好意に甘えることにしたのだ。

 

「ふーん…ここが万事屋、か…。銀時の住む家…」

「新八、神楽、こっちに来い」

「何ですか?」

「どーしたネ?やっぱりしーちゃんの部屋は押入れアルか?」

「それまだ言ってんの!?」

 

ワイワイと騒ぐ子供達に「いいからこっちに来い!!」と言い、とりあえず言い争いは落ち着く。そして銀時が神楽と新八の耳元でゴニョゴニョと何かを言うと、2人はパッと明るい顔になった。

 

紫苑は不思議そうに首を傾げる。

 

新八と神楽が紫苑の方を向いた。銀時も同じように紫苑を見る。

 

そして…

 

『万事屋へようこそ!!』

 

3人は声を揃えて、紫苑を迎え入れた。突然のことに目を丸くして驚く紫苑。銀時は笑いながら紫苑を抱き寄せる。

 

「これからは、ここがオメェの家だ。昔約束した…2人で一緒に暮らすって約束…。まぁ、餓鬼が1匹いるが…」

「匹ってなんネ!?失礼アルな!!」

「これで約束、果たせたな…」

「……ッ、うん……!!」

 

紫苑の瞳から零れ落ちる大粒の涙を銀時が指で掬い取る。泣いてはいるが、紫苑は嬉しそうに笑っていた。

 

「宜しくお願いしますね、万事屋の旦那?」

「じゃ、オメェは万事屋婦人だな…!!」

「あーあ、しーちゃんがとうとう銀ちゃん(マダオ)の毒牙に掛かったネ…」

「もし生活に耐えられなくなったら遠慮なく僕に言ってくださいね!!」

 

 

アハハハハハッッ!!!!

 

 

その日、万事屋からは元気のよい声が絶える事がなかった。煩いと怒鳴り込んできたお登勢も、紫苑のことを聞きそれは良かったと目元を和ませた。

 

そして、その夜…

 

「で、お前はいつからいたんだよ…?」

「ずっと天井裏でスタンバッてました」

「ホント…何やってたんですか、桂さん…」

「馬鹿アルな」

 

いい加減、天井裏の気配が鬱陶しく感じてきた銀時は、天井に思いっきり木刀を投げつけたのだ。紫苑も気配には気付いていたらしく、時々天井をちらちらと見ていた。そして、天井から降ってきた人物は、銀時・新八・神楽が予想した通りのさっちゃん(ストーカー)……ではなく。

 

「…コタロー…」

 

昨日から万事屋の留守を預かっていた桂だった。

 

「はー…、何で普通にリビングにいなかったわけ?何で天井裏?テメェ何してんの?」

「ま、待て銀時!!俺の話を聞いてくれ!!」

 

桂の話によると、銀時達万事屋のメンバーが戻ってくるのを待っていたが、待てど暮らせど戻ってくる気配がなく、置手紙を残してアジトに戻ろうとした。だが表で真選組の沖田の声が聞こえてきた為、慌てて天井裏に隠れたのだ。しかし、万事屋に戻ってきたのは銀時達だけ。だったら大丈夫かと思い降りようとしたのだが…そこに紫苑の姿があった。服装は真選組の隊服。そこで桂は降りていいものか否か…悩み続けていたのだ。そして今に至るのでした。あれ、作文?

 

「ったく、何やってんだよ…」

「一瞬、さっちゃんさんかと思いましたよ、ホントに」

 

白い目で見つめてくる紫苑以外のメンバーに、申し訳ないと頭を下げる桂。しかし…自分を見ても何も言わない紫苑に、少し不安も感じていたのだ。

 

ビデオテープで見た紫苑は、あんな風に言っていたが…やはり、自分の事を怒っているのではないだろうか?だったら…やはり、謝るべきなのだろうか?いやけど、謝ったら殴ると言っていた。じゃあどうすればいいの!?

 

そんな葛藤を勝手にしている桂である。

 

新八の言葉を最後に、騒がしかった万事屋に沈黙が広がる。その沈黙を破ったのは…

 

「ふふっ…コタロー…逮捕しちゃうぞ?」

 

紫苑の悪戯っぽい声。手錠を指でクルクルと回しながら言うのだから、どこまで本気でどこまで嘘なのか分かったもんじゃない。しかも彼女の服装は未だに隊服のままだ。もしかしたら本当に逮捕されるのかもしれない。冷や汗をかく桂を見て、紫苑はニコリと笑った。

 

「冗談よ、コタロー。」

「冗談でもよしてくれ、寿命が縮むかと思ったぞ…」

「そのまま縮みまくってサクッとくたばっちまえ、ヅラ」

「ヅラじゃない桂だ!!」

 

ああ、いつもの彼に戻った。新八と神楽は顔を見合わせて笑う。

 

「ったく、オメェは何の心配をしてたんだよ…」

「……、それは……」

「私がコタローのことを恨んでるとでも思った?」

「…………」

「思ってたんですね」

「分りやすいアルな」

 

全くもう、と紫苑は苦笑しながら桂の手を取る。そしてフワリと笑いながら…

 

「ただいま、コタロー。心配掛けて…ごめんなさい…」

 

そう言った。突然のことに桂は驚いたが、やがて目元を和ませながら…

 

「ああ、おかえり…。やっと…銀時の元に戻ってこれたのだな…」

 

本当によかったと…そう思った。

 

それから新八は実家に戻ると帰って行き、リビングには銀時・神楽・紫苑・桂が残っていた。と言っても、時計は既に深夜を指している。神楽は銀時に体を預けて深い眠りに落ちていた。

 

「ったく、寝るんだったら押入れに戻って寝ろっての…」

「それだけリーダーが銀時のことを大事に想っている証拠だろう?」

「そういえば、何でコタローは神楽ちゃんのことをリーダーって言うの?」

「む、それは……企業秘密だ」

「何が企業秘密だよ、この電波が」

「電波じゃない桂だ!!」

 

ある程度桂を弄り倒した後、ゴホンとワザとらしく銀時が咳払いをした。そして意を決したように口を開く。

 

「オメェら…約束の事は覚えてんな?」

「萩で、夜桜の下月見酒…だろう?」

「もちろん、覚えているわ」

 

約束という言葉に、全員が頷く。それに満足そうな表情をする銀時に「だがしかし」と桂が難しそうな顔をした。

 

「辰馬はともかくとして……」

「晋助のことか?」

「ん、ああ…そうだ、高杉のことだ…………、ちょっと待て、銀時…。今、何て…?」

 

銀時は今、何といった?(たもと)(わか)った幼馴染のことを、名前で呼ばなかったか?もうずっと…攘夷戦争以降、銀時は晋助のことを名前では呼ばなくなった。しかし今、銀時は確かに“晋助”とそう言ったのだ。

 

「んー?実はな…俺、晋助と仲直りした」

「な…何ィィィィ!!??何でだ!?俺の知らないところで貴様、何をやっておる!!俺だけ仲間はずれェェェ!?」

「まぁ、話の流れでなー。さァて、どーすんよ…ヅラ。オメェだけ晋助と喧嘩したままだぜェ?辰馬曰く、仲直りできなかったら月見酒には参加させないってさー」

 

ケラケラと楽しそうに笑う銀時に、これは参ったと桂は苦笑する。どうやら、晋助と仲を戻したいと思っていたのは、自分だけではなかったらしい。否、もしかすると…晋助に向けて斬ると言った事自体、銀時にとっては辛いことだったのかもしれない。だが、その晋助と銀時の仲は戻ったという。

 

(だったら、俺だけが意地を張る必要もないな…)

 

桂とて晋助を心底憎んでいたわけではない。ただ、晋助が許せなかっただけなのだ。どういう経緯で銀時と晋助が仲直りをしたのかは分からないが…だったら自分もそうしなければならない。

 

「ならば、仲直りせざるを得んな。月見酒…これでも楽しみにしていたのだぞ?」

「違いねーや」

 

ハハッと笑う銀時の着流しを、控えめに引っ張られて「ん?」と銀時がそちらに視線を向ける。すると、どこか不安そうな表情の紫苑がいた。

 

「…………」

 

言葉を探しているのか…中々、紫苑は口を開こうとしない。それに苦笑しながら、銀時は紫苑の頭を撫でる。

 

「心配はいらねぇよ。お前らは花見の当日に仲直りしろ。大丈夫、晋助の想いは…決して紫苑から離れてねぇ。それは…ちゃんと確認した」

 

だから、何も心配はいらない。

 

不思議なもので…銀時に言われると、不安なこともそうではなくなる。きっと大丈夫だと…そう思えてしまう。

 

「うむ、紫苑よ…銀時の言う通りだ。あ奴は口では悪態ばかり吐いておるが、身形(みなり)を見ればすぐに分かる。紫苑が戦争中に買った着物を今でもそれは大事に着ているからな。」

「…仲直り…できるかな…?」

「できるさ、紫苑と晋助なら…絶対に…」

 

だから、何も心配は要らないと銀時と桂は笑う。

 

この2人が大丈夫というのなら、きっと大丈夫。

 

紫苑はそう信じて…静かに目を閉じた。

 

再会した時に見せたニヒルな笑みをまた向けられるかもしれない。

今更何しに来たと言われるかもしれない。

また空虚な瞳を向けられるかもしれない。

 

それを思うと…怖い。

 

けれど、やはり信じたいのだ。

 

友の言葉を。

そして…優しかった兄を。

 

「うん、私…頑張ってみる…」

 

だったら、逃げずにまた向き合おう。あの時は刃を向けることでしか語ることが出来なかったが、今だったら…きちんと向き合える。

 

高杉 晋助の妹、高杉 紫苑として。

 

「もう、逃げない」

 

力強い言葉に、2人も頷く。

 

「…あ、着物で思い出した…!!」

 

と、これまで張り詰めていた空気はどこへやら。紫苑は忘れていたと言わんばかりに声を上げる。

 

「銀時、コタロー。兄さんの着物のことでずっと疑問に思ってたことがあったんだけど…。あの時私は、今兄さんが着ている紫の着物と、桜色の着物を買ったわよね?」

 

戦争中に立ち寄った店で気に入って買った2枚の着物。結局、紫苑と離れ離れになったため、着物だけが彼等の手元に残った。2枚とも晋助が持つべきだと、そう言ったが…晋助は紫の着物しか自分のものにしなかった。

 

「あとの1枚って……?」

 

誰かが持っているのだろうか。しかし戦争中に購入したものだ。もしかしたら、もう誰の手元にも無いのかもしれない。だが、そんな紫苑の思いは杞憂に終わる。

 

「あぁ、それなら…銀時」

「おう」

 

とりあえず神楽を押入れに寝かせて、銀時は奥の部屋へと入っていく。紫苑は首を傾げていたが、桂は小さく笑みを零していた。

 

「他の誰でもない、お前の着物だ。晋助と銀時が蔑ろにするわけなかろう」

「じゃあ…」

「着物とはこれのことですかな、お嬢さん?」

 

ニッと笑いながら戻ってきた銀時の手元にある物。それこそ紫苑が探していた物だった。

 

「……私の、着物……大切に持っててくれたのね…」

「当たり前だろ?他の誰でもない…紫苑の着物だからな。安心しろ、誰も袖は通してねぇし、ババァに頼んで時々手入れしてもらってたから、いつでも着れるぜ?」

 

着物を広げて紫苑の肩に掛ける。

 

「ふむ…よく似合うな」

「ああ、花見の時はそれを着て行ったらどうだ?」

「…えぇ、そうするわ…!!」

 

兄妹(きょうだい)色違いでおそろいの着物。

 

これでまた、皆が晋助をシスコンと弄るに違いない。それが手に取るように分った紫苑は思わず笑ってしまう。

 

「その色合いだと、色の白い銀時でも似合いそうだな」

「ヅラ、オメェ何言って……っておい、紫苑!?」

「あ、ホントだ!!銀時にも凄く似合う…!!」

 

自分の肩に掛かっていたそれを、今度は銀時の肩に掛ける。銀髪に色白と…アルビノ体質である銀時に、桜色の着物は良く似合っていた。

 

それを見て、紫苑はフワリと笑う。その意味が分からなかった銀時は首を傾げていたが、紫苑はただ「よく似合うよ」と言うだけだった。

 

(もし私がこの世を去ったら、その時は…その着物を銀時が着てくれたら嬉しいな、なんて…。そんな事、今は言うべきではないわね…)

 

けれど、できればそうして欲しい。

 

紫苑の微笑みには、そんな想いが込められていた。

 

そんなことを知るはずも無い銀時は…

 

「いやァ、けどそうしたらオメェ…晋助とおそろいだぜ?」

「ペアルックという奴か…。ふむ、男同士でペアルック…」

「……ヤバイ、ちょっとそれ面白そう!!」

「うへっ、やめろキモいわッ!!」

 

慌てて着物を脱いで紫苑の肩に掛けなおすのであった。

 

そんな彼等の様子を…影から見るものが2人。

 

今は話に夢中の為、誰もその気配に気付いていないが、そこには…

 

「不思議だわ…。銀さんを他の女に取られたのに、全然悔しくないなんて。」

「何というか…あんなに幸せそうに笑っておる銀時を見ると、こっちも嬉しくなるというものじゃ…」

 

密かに(?)銀時に思いを寄せていた2人の女性。

 

「して…主は諦めるのか?」

「しょうがないじゃない、あんな素敵な(ひと)がいたんじゃ…私なんて勝てるわけないわ。ツッキーこそどうなのよ?」

「…わっちは元々銀時のことなど眼中にありんせん。銀時が笑っていられるなら…わっちはそれで十分でありんす。」

「ホント、ツッキーって素直じゃないんだから…」

 

猿飛 あやめと死神太夫・月詠。銀時に女が出来たという情報をいち早く掴んだあやめはすぐに月詠にそれを知らせ、どんな女か見極めると言って天井裏に潜んだのだ。最も月詠は、そんなコソコソと誰かの私生活を覗き見ることなど嫌だったのだが、日輪に「銀さんにいい人が出来たとして…それがとんでもない悪女だったらどうするんだい?月詠はそれでもいいの?」と言われたのだ。そう言われてしまうと気になるもので…結局、あやめと仲良く万事屋の天井裏に忍ぶことになったのだ。

 

「銀時にも似合ってるのにな…。あ、だったらせめて写メ撮らせてよ!!」

「オメェ、どーせそれを沖田君とか土方君辺りに見せるんだろ?絶対ヤダ!!」

「ありゃ、バレてた」

「バレバレだっつーの!!オメェ花見の時に、辰馬にも見せる気だったろ?」

「え、そこまでバレてたの!?」

「ふむ、これが以心伝心というやつか…」

「いや、それ絶対ちげーだろ…」

 

だが、今この場に自分達は不釣合いだ。自分の目で見て確認して納得したのであれば、ここに残る必要はない。

 

「わっちは百華のことも気になるからそろそろ戻るが…主はどうするのじゃ?」

「私も戻るわ。銀さん達の邪魔はしたくないし…」

 

あやめと月詠は視線を交わしてフッと笑みを零す。最後にもう一度、下で騒いでいる3人を視界に入れて、2人は万事屋を後にした。

 

こうして、賑やかな夜は更けていった。

 

いつもだったら煩いと怒鳴り込んでくるお登勢も、この日ばかりは住人達の好きにさせていた。スナックに来ていた長谷川が「珍しく銀さんのとこ、賑やかだね」と上を見ながら零したが、それにお登勢は笑いながらこう言った。

 

「まァ、アイツの婚約者が来てるからねェ。そりゃ賑やかにもなるだろうさ」

 

その一言でスナック・お登勢が騒がしくなったのは……また、別の話である。




というわけで、2枚の着物の内、1枚は銀時が持っているという設定だったんです。紫の着物…つまり、晋助が着てる着物のことばっかり話しに出ていたので忘れているのでは?と思われていたかなーと思っていたんですが…忘れていたわけではなく、まだ出すタイミングではなかったというだけなのです(笑)やっとこれで、フラグは全部拾ったかな…!!

さて、私の予定ではあと2話でこの小説は終わります!!次回が十八訓、その次が終幕という形となります!!なんか、アニメ銀魂みたく終わる終わる詐欺状態でしたね^^;しかも1話1話が長いから…読んで下さる皆様は大変なんじゃなかろうかと思ってました(苦笑)ホントにご迷惑をお掛けします、あばば(=∀=;)

にじファン時代から読み続けて下さった皆様、及びハーメルンに移ってから読み始めた皆様…本当に有難うございます^^あと2話で恋空は終わってしまいますが、最後までお付き合い頂けたら…雪音さん泣いて喜びます!!←

ちなみに、ヅラがもっさんのことを“坂本”ではなく“辰馬”と呼んでいるのは…成り行きです(笑)いや、ヅラだけ仲間の事を苗字呼びもなんか違和感あるなーと思って(苦笑)
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