恋空~春、夜空の下で~   作:雪音

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ついにここまできました…!!最後まで【恋空 ~春、夜空の下で~】にお付き合い下さいまして、本当に…本当に有難うございました!!にじファン掲載時からご愛読下さった皆様、そしてハーメルンに移ってからご愛読下さった皆様には感謝してもしきれないくらい感謝しております!!両サイトでいただいたコメントは1つ1つが私の活動源でした!!

何事も最後というのは本当に寂しいものですが、恋空もここで終わりを迎えます。ただ、紫苑の死という出来事で沈んだまま終わるのはやはり銀魂らしくないし、銀時らしくないと思い、プロット上は第十八訓で終わるはずだった恋空に、第終訓という話を設けました^^エピローグ的なものだと思っていただければよろしいかと。彼等らしいケジメの付け方をどうぞ見守ってやってください!!



【第終訓】悲しいだけの葬式なんてぶち壊せ!!

人の死は、いつの時代でも悲しく、そして寂しいものだ。

 

たくさんの者が、坂田 紫苑の死を悼み、涙を流した。

 

万事屋の子供達や真選組の隊士は勿論のこと、僅かな時をかぶき町で過ごした間に知り合った数多くの者達が葬列に参加した。

 

しかしその葬列の中に、彼女の夫となった坂田 銀時の姿は見られなかった。

 

花見の最中に紫苑が息を引き取って、万事屋に彼女の身体を運んだ後、新八と神楽に万事屋を暫く空けるとだけ言い残し、忽然と姿を消したのだ。最後に銀時と言葉を交わしたのは新八と神楽だったが、この2人も銀時の行き先は聞いておらず、万事屋からも、かぶき町からも姿を眩ませたのだ。

 

もしや、彼女の後を追って自ら命を絶ってしまったのではないかと、最悪のケースが脳裏を過ぎった。それを危惧して、真選組、御庭番、かぶき町の人達、そして万事屋の子供達総出で銀時を探したが…死した形跡もなく、それどころか足取りすらも掴めなかった。

 

「……銀ちゃん……」

 

きっと辛かったに違いない。花見で紫苑を看取った時、銀時は微笑んでいた。けれど…最愛の人を亡くして、銀時が心穏やかに居られるはずなどないのだ。精神的に銀時は弱い。もしかしたら自分達の知らないところでひっそりと逝ってしまったのではないか?

 

そんな事はありえないと何度も思い直しても…最悪のケースが脳裏から離れる事はなかった。

 

やがて、紫苑の身体が納められた棺が墓前に埋められる。その墓は、真選組隊士が殉職した際に葬られる場所に立てられた。【坂田紫苑之墓】と刻まれたそこに、棺が埋められる。

 

いよいよ…紫苑と会えなくなると、周りのすすり泣く声も増えてきた。

 

「では…最期に別れの挨拶を。近藤局長…宜しいですかな?」

「うむ…」

 

住職に言われ、紫苑の墓前に立とうとした…その時だった。

 

『その挨拶、待ったァァァッッッ!!!!!!』

 

聞こえてきた声に、全員の視線が背後に集中する。

 

そこに立つ者達の顔ぶれに、全員が目を見開いて驚いた。

 

「…か、桂ァ!?」

「おいおいっ…過激派の高杉だぞ!?」

「あれって、快援隊の社長か…?」

 

悲しみに包まれていたその場所が、一気に殺気立つ。真選組の面々は皆、刀に手を掛けようとするが…

 

「待てィィィッッッ!!!!」

「きょ…局長…!?」

 

それを、近藤が制する。真選組隊士達がどよめく中、近藤・土方・沖田は…ただ真っ直ぐと4人の男を見つめる。

 

桂 小太郎、坂本 辰馬、高杉 晋助、そして――…

 

「銀ちゃん!!」

「銀さん!!」

 

坂田 銀時。

 

皆が隊服や喪服など…黒で統一された服を着ているのに対し、彼等の服装はバラバラだった。坂本はいつものロングコートで派手な身形(みなり)だ。派手で言えば、晋助の着ている蝶のあしらわれた紫の着物も負けていないだろう。桂は真選組の面々がいつも見てきた着物姿だ。そして銀時は…

 

いつもの流水模様の着流しではない、蝶のあしらわれた桜色の着物。

 

それをいつものように着崩して、下に黒のインナーを着ている。

 

喪に服すような格好ではない。そして…更に特徴的だったのが、全員がその腰に刀を携えていたことだった。あの銀時でさえ、いつもの洞爺湖(木刀)ではなく刀を差していた。

 

ピリピリとした空気。住職もどうしたものかとオロオロしている。一方、銀時達と近藤達はただ…無言で視線を交わしていた。

 

そして…

 

「真選組隊士、全員に告ぐ!!……道を開けてやれ…」

 

近藤が発したそれは、あまりにも信じられない言葉だった。

 

「何を言ってるんですか局長!!過激派攘夷志士の高杉が居るのですよ!?」

「桂も居ます!!捕まえるチャンスです!!」

「局長!!」

 

隊士達は口々にそう言い、刀を抜こうとした。しかし…

 

「真選組局中法度ォォォッッ!!!!局長の(めい)に背きし者は、士道不覚悟で切腹ゥゥゥッッッ!!!!!」

 

今度は土方の怒声が響き渡る。局中法度を持ち出されては、どうしようもない。誰もが納得いかないという顔をしていたが、それでも局長・副長の(めい)とあらばと…渋々刀を納める。

 

「オメェら、聞こえなかったのかィ?局長は道を開けろって言ってんだろうが。道を開けてあげなせェ。」

 

それとも、俺の刀の錆びになりたいかィ?

 

沖田の言葉に全員の血の気が引く。更に、近藤・土方の気迫に負けて…中央が綺麗に開いた。それを確認した4人は、それぞれ視線で確認して頷き合うと、ゆっくりと…その中央を歩く。隊士の中には隙あらばと思った者もいたが…中央を歩く4人には一切の隙がない。そんな隊士達の殺気さえも綺麗に受け流しながら、4人は悠々と歩く。そして…近藤・土方・沖田の前に立った。

 

誰も、口を開かないピリピリとした空気。万事屋の子供達でさえ、この成り行きは見守ることしか出来なかった。

 

やがて…晋助が動く。全員が息を呑んだ。

 

しかし、晋助はそんな周りの一挙一動に構うことなく…

 

「武装警察・真選組…局長・近藤 勲殿、副長・土方 十四郎殿、一番隊隊長・沖田 総悟殿…。妹、坂田 紫苑が世話になった。命を救い、真選組隊士として受け入れてくれたこと…心より感謝する。」

 

深々と頭を下げ、感謝の意を表した。誰もが驚いた。あの、“血も涙もない鬼の高杉”と名高い男が、ここまで律儀に頭を下げる姿など…想像もしなかったからだ。

 

否、晋助だけではない。

 

「げにまっこと…ワシの戦友が世話になったぜよ」

「紫苑を家族と慕い大事にしてくれたこと…礼を言う」

 

坂本も、桂も、そして…

 

「妻・紫苑の事を慕い、最期まで紫苑を真選組の隊士として手厚く葬ってくれたこと…かたじけなく思う所存」

 

銀時もまた、それぞれの思いを口にし、頭を下げた。それを真剣な表情で見ていた近藤はニカッと笑う。土方と沖田も同じように笑みを零した。

 

「最期の別れだ。ちゃんと済ませろよ?」

「ったく…最後の最期まで紫苑に心配掛けやがって…。紫苑の夫が聞いて呆れるぜ」

「けど…旦那達は絶対に来てくれるって…俺ァ信じてやしたぜィ?」

 

3人の言葉を受けて、頭を上げた4人もまた笑う。

 

それは…

 

真選組(捕らえる側)攘夷志士(逃げる側)とは思えない程…

 

穏やかなものだった。

 

やがて、近藤ら3人も銀時らに道を開ける。4人が紫苑の元に辿り着くと、再び視線で合図をし合う。そして4人一斉に腰に下げていた刀を鞘ごと抜いた。

 

真選組隊士達の間に再び緊張が走る。

 

だがしかし、そんなことはお構い無しに4人は刀を墓前に差し出した。

 

シンとした空気。それを先陣切って裂いたのは銀時だった。

 

「我ら、この刀に勝利を誓い、紫苑と背中を預け合い、攘夷戦争にて共に戦えたことを誇りに思う!!」

 

それに続くように…それぞれ思い思いの言葉を口にした。

 

「松陽塾の幼馴染として」

「戦地で知り()うた戦友(とも)として」

「兄として」

「夫として」

 

『共に笑い、苦しみ、泣き、喜んだ日々は何物にも変えられない宝だ!!』

 

「安心せぇ、ワシらは大丈夫じゃ!!」

「紫苑よ…俺達はもう仲違いしたりはしない。だからゆっくり眠るのだぞ?」

「大丈夫だ、もう…お前が悲しむようなこたァ…お前の愛したこの世界を壊すようなこたァしねぇ…」

「だからよ、先に松陽先生んとこ行って…先に説教されろ。攘夷戦争に出たことをなッ!!」

 

皆が悲しみ、涙を流している中…

 

一番辛いはずの彼等は、誰よりも重く紫苑の死を受け止め、そして…

 

「大丈夫…紫苑はいつでも俺達の中で生きてる」

 

誰よりも真っ直ぐに先を見据えていた。

 

更にグイッと刀を前に差し出し、銀時は真っ直ぐと墓石を見つめる。

 

「紫苑…一緒に生きよう。俺が…俺達が生きている限り…」

 

『俺達は…ずっと、一緒だ!!』

 

全員が息を呑んだ。

 

「ククッ…しみったれた別れは(しょう)に合わねェからなァ…」

「だから我々は紫苑を笑って見送ろう」

「アッハッハッ!!げにまっこと、ワシらは不謹慎じゃのォ!!」

「紫苑、不謹慎だって呪うんだったら真っ先に辰馬を呪えよ?こいつが一番馬鹿笑いしてんだからな!!」

 

これが攘夷戦争の英雄と謳われた男達の強さなのかと。

 

憎しみも、悲しみをも乗り越えて…

 

彼等は戦友のために涙を流すのではなく、戦友のために笑って見送るという選択肢を選んだのだ。

 

男達の強さに…全員が敬意を表した。

 

殺気立っていた隊士達は全員、銀時達に敬礼をしている。万事屋の子供達も満足げに笑っていた。

 

やがて4人の男達は墓標に背を向け、再び真っ二つに分かれた中央の道を引き返す。その道が途切れた場所で全員が立ち止まり、そして銀時だけが振り返った。

 

たった一言…

 

「鬼兵隊副官・高杉 紫苑殿、俺達の背中…預けたぜ…?」

 

笑いながら、そう言った。

 

何とも彼等らしい言葉だと…近藤は笑う。

 

「…さぁて…そろそろ…テメェらを攘夷志士としてしょっ引いていいよなァ?」

 

ニィッと土方が笑った。それにつられるようにして、銀時も笑う。

 

「捕まえられるもんなら捕まえてみ?俺ら、逃げ足だけは速いよ?」

 

ドーンと聞きなれたバズーカの音がする。どうやら沖田がぶっ放したらしい。住職は腰を抜かして驚いている。しかし、彼等のことをよく知るかぶき町の者達は「ああ、始まった」と呆れていた。

 

「ククッ…逃げるぜェ!!」

了解(ラジャー)ぜよッ!!」

「フハハハハッ、捕まえられるものなら捕まえてみるのだな、幕府の犬共よ!!」

 

さっきの感謝の言葉はどこへやら。

 

しかし、悲しみの色など似合わない。

 

「新八ィ、神楽ァ!!万事屋全員集合だァ!!逃げるぞォ!!」

「銀ちゃん、待つネ!!定春居ないヨ!!」

「待ってくださいよ、銀さん!!」

 

ここは騒がしい連中が自由奔放に生きるかぶき町。

 

「よぉし、俺が10数える間に逃げろよーッ。その後はテメェら全員とっ捕まえるからなァ!!」

「土方さん、旦那も捕まえるんですかィ?」

「廃刀令違反だ。とっ捕まえねぇでどーする。」

「えっと……時効はいつですかね?」

 

山崎の問いに、近藤はニカッと笑う。

 

「日付が変わるまでだ!!」

 

こうして…坂田 紫苑の葬儀は、騒々しいまま幕を閉じた。

 

住職はただ呆けることしか出来ず、残った参列者達も成り行きを呆然と見つめていたが…やがてどこからともなく笑い声が聞こえ、葬儀には似付かない…大きな笑い声が墓場に響き渡った。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

その後、晋助と桂は手を結び、晋助は宇宙海賊春雨と完全に手を切る。鬼兵隊は過激な攘夷活動から身を引いた。狙いを天導衆にのみ定めて動き出したのだ。

 

坂本は相変わらず空を飛び回っては船に酔い、女を追い掛け回しては陸奥から説教される日々。

 

かぶき町もまた、なんら変わらない。

 

真選組は相変わらずチンピラ警察と言われているし、相変わらず騒ぎを起こしている。ただ、桂や晋助を執拗に追うことをしなくなったと、かぶき町の者達は何となく感じていた。

 

唯一、かぶき町で変わったことがあるとすれば…

 

「おーし、依頼料も入ったしスーパー行くぞ、スーパー!!」

「最初に酢昆布買うネ!!」

「バッキャロー、俺のいちご牛乳が先だつってんだろ!!」

「どっちも買えばいいじゃないですか。ったく…みっともない…。定春もそう思うでしょ?」

「アンアンッ!!」

 

万事屋の店主が、流水模様の着流しではなく、蝶のあしらわれた桜色の着物を着崩して、かぶき町を闊歩するようになったことぐらいだ。

 

そして…

 

「あ、そうそう。この前、高杉さんから電話がありましたよ?そろそろ桜が見頃だぞって…!!」

「おー、そういやヅラと辰馬も言ってたなー」

「じゃあ萩で花見アルな!!」

 

毎年、夜桜の下、萩で花見をするようになった。

 

春…夜空の下で酒を酌み交わす。

 

かつて戦場で交わした何気ない約束は…

 

「よー、晋助ー。待った?」

「いや、俺も今来たところだ。…よォ、久しいな…新八、神楽…」

「久しぶりネ!!」

「いやぁ、桜が散る前にみんなの都合が合って、本当に良かったですよ!!」

「おー、おまんら先に来ちょったが~!!」

「む、もう来ていたか…出遅れてしまったな。」

 

いつしか、毎年の恒例行事となっていた。

 

ヒラリと舞い散る桜を見つめて銀時は笑う。

 

「紫苑…今年もまた大騒ぎしようじゃねーか…!!」

 

ブワッと吹いた桜吹雪は、銀時が伸ばした手をすり抜ける。

 

それはまるで…

 

――もう…待ちくたびれたんだから…!!

 

紫苑が笑いながらそう言っているかのようだった。

 

 

【終】

 




最後までお付き合いいただき、本当に有難うございました。これにて、恋空は完結となります。彼等なりのケジメの付け方はいかがだったでしょうか?

書きながら何度も訂正して、出来上がったものを読み直し、また訂正し…という作業を何度か繰り返しました!!この話は締めにして、紫苑の死に銀時達なりにケジメをつける大事な場面でもあったので、なるべく暗くならないように、けれど彼等らしくしっかりとケジメが付けられるようにと…このような話になりました。ただ、晋助が真選組に頭を下げて礼を言うシーンは…最後まで入れるかどうか悩んだんですけどね^^;彼らしくないかなーと思ったんですよ(苦笑)けど、そんな一面があってもいいんじゃないか?だってこれは二次創作の小説じゃん!!らしくないんだったら、この小説の晋助の行動すべてがらしくないわっ!!と勝手に開き直り、結局このような形となりました。

ここで話すとまたちょっと長くなるので、この小説全体のあとがきは別にUPしようと思います^^

にじファン時からの読者様、ならびにハーメルン移行後の読者様すべてに感謝です^^

最後までお付き合いいただき、本当に有難うございました!!
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