ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
これも女神様ってやつの仕業なのでしょうか……・
※ いないと思うけど、古傷注意ね
※ いないと思うけど、古傷注意ね
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さすがに夜中に行くのもって話だし、怒りプンプンで突撃するのは……やり過ぎるとマズイので、一旦実家へ戻る。
明美にもそうだけど、実家の父と母にも……あ、そうそう。
描写がまったく無かったけど、父も現場に居た。
父も歳を取って丸くなったからなのか、『まあ、程々にな……』みたいな感じで空気に徹していただけである。
……冷静に考えてみたら、だ。
自分の娘がハニートラップを仕掛けた挙句、逆上した作業員(体格は良い)を殴り飛ばして、そのままの勢いで彼らの雇い主に直接電話で脅しを掛ける……うん。
はたして、娘を信頼しているからこそなのか……判断に迷うところだが、これで別に親子関係は良いのだから、なんとも不思議な話である。
で、だ。
せっかくだからと、電話でエマと春人に今日は二人でお留守番をするようにと話を通して、千賀子は実家で一泊することにした。
お正月や夏休みの時など、まとまった連休の時は帰省しているが……自分一人だけ実家に居るということに、なんとも千賀子は不思議な気持ちであった。
昔……というか、二人を連れて戻ってきた時に寝泊まりする部屋に、一人でいる。
そこは、祖父母が寝ていた部屋であり……こうして一人で座っていると、なんとも表現し難い懐かしさを覚えずにはいられなかった。
感傷という言葉とは、少し違うが……まあ、考えるだけ無駄か。
一つ気持ちを切り替えた千賀子は、晩御飯の支度を手伝いに向かう。せっかくだし……と、思ったのだけど、普通に拒否された。
エマと春人が来ていたり、和宏一家が来ていたならばともかく、千賀子一人増えただけの事。
晩御飯の量を一人分増やせば良いだけで、せいぜいフライパンを一回分多く使うだけだ……ということで、千賀子はおとなしく席に座って待つことになった。
「……残念だったな」
「ん? いや、まあ、致し方ないかな。この家の台所の主はお母さんの方だし」
「はは、なるほど、言われてみたらそうか」
その言葉と共に、父はテレビのチャンネルを変えて……それをBGMに新聞へと視線を落とした。
基本的に、父は呼ばれない限りは台所へは行かない。下手に向かっても邪魔になるだけだと分かっているからだ。
それは、千賀子も察していたので何も言わなかった……のだけど……なんとなく、だけど。
(老けたなあ、お父さんも、お母さんも)
先ほど見た母の横顔を思い出しつつ、すぐ傍に居る父の横顔を見た千賀子は……ふと、そんな事を思った。
……考えてみれば、当たり前だ。
千賀子はもう……う~ん、年齢詐欺にも程があるけど、対して、父と母は……たしか、60歳は過ぎていたと思う。
千賀子が実家に居たのは確か……高校卒業と共に本格的に『神社』に移住したから……約20年くらい前だ。
それから、連休などに合わせて子どもたちを連れて戻るくらいで、その時は子供の事に意識が向いていた。
だから、こうして改めて両親を見て……なんとなくだけど、それだけの月日が流れていたのだなということを千賀子は深く実感したのであった。
「……けっこう静かね」
そうして、手早く支度を終えた(さすがに、配膳くらいはする)母と共に、手を合わせて……晩御飯を食べながら、雑談。
「そりゃあ、普段は私と父さんだけだもの」
「そうだな、テレビを見ながらポツポツ話し合うくらいだろう」
「それはそうだけど、ここらへん、昔に比べて静かになったなあって」
「そりゃあそうよ、ここって田舎だもの」
「これでもだいぶマシだぞ。ほら、明美ちゃんのところ、あの銭湯のおかげでボチボチ観光客が来るらしくてな、そのおこぼれがこっちにも来てる」
「え、マジで?」
普通に驚いたけど、話を聞けばけっこう納得する。
要は、千賀子のおかげである。
明美のところの銭湯もそうだけど、それとは別に、ちょいと何かを買おうとして秋山商店に来る人が居るんだとか。
あと、ここが『秋山千賀子の実家』という事を知った、千賀子のファンが写真を撮りに来るのだとか。
その際、バカなファンは別としても、まともなファンは記念品にと色々買っていくから、それなりの売り上げが今もあるんだとか。
「へえ、私ってこんなところにも影響があるのね」
「なんだ、自分の事なのに知らなかったのか?」
「自分の事だから分からないの。私、エマがまだ小学生だった頃、その同級生たちからは『やたらおっぱいがデカい母ちゃん』って言われていたのよ」
「まあ、あんたは誰に似たんだか、おっぱいデカいからね。子どもなんてそんなものよ」
両親と、たわいのない話をしながら……そんな中で、千賀子は……なんとなく、懐かしさと寂しさが入り混じる、不思議な気持ちで過ごすのであった。
そうして、翌日。
『──(=^ω^=)お仕事中ですよ』
「……え、なに、いきなり?」
なんか、いきなり女神様から話しかけられた千賀子は、意味が分からず首を傾げた。
せめて、どういう意味なのかを教えてくれたら良かったのだけど……残念ながら、女神様は意味深に笑うだけで何も教えてくれなかった。
正直、千賀子はちょっと嫌な予感を覚えた。
こういう、ちょっと意味深な雰囲気を醸し出している時の女神様って、だいたいろくな事をしていないからだ。
かといって、下手に突くと藪蛇もいいとこなので……気付いていても、スルーするしかないのだけれども。
まあ、とにかく、だ。
夜も開けて、朝食を食べてしばしのんびりした千賀子は、よいしょと大きなお尻をあげて、ゴルフ場建設予定地へと向かった。
今はまだまだ邪魔な住宅などを解体し、更地にして平面な地面を作っている段階で、敷地内にはプレハブ小屋やら重機やらがいくつも設置されているはず……だったのだけど。
「……あれ?」
どういうわけか、聞いていた場所には何も無かった。
プレハブ小屋も、重機も、建設予定を示す看板も、作業員たちも……誰一人としておらず、中途半端に壊された家屋やら何やらがそのまま放置されていた。
これは……夜逃げしたのだろうか?
仮にそうだとしても、あれだけの人数と、放置されている銃器……そして、解体したプレハブ小屋を運ぶとなれば、相当な騒音が周りに響いていたはずだ。
ていうか、それなら朝一番に自分のところに話が流れてくるはずである。
この辺りは誰かの噂が一夜にして町全体に広がる……なんて事はないけど、これだけ大掛かりな工事ともなれば、それだけ注目を集めているはずなわけだ。
人間が一人二人くらいならともかく、数十人……重機はおろかプレハブ小屋まで無音のまま運び出すなんて事が……人間に可能なのだろうか?
──ちらり、と。
千賀子は、頭上より己を見下ろす女神様を見上げる。
視線を受けた女神様は『ああ、なんて愛らしい……!!』なんか感極まった様子で震えていた……まあ、聞いても藪蛇だろうし、いいけど。
ていうか、女神様が関与していたら、その時点で下手にツッコみを入れない方が良い……というのが、これまでの経験則だ。
女神様は人間の事を分かっているようで、微妙に分かっていないので、下手に口を挟むとさらに悪い結果になる可能性が高いから。
まあ、とにかく、だ。
念のため、実家に戻って話を聞けば……どういうわけか、両親とも一切の疑問を覚えず、『工事は中止されて、作業員は帰った』という認識であり。
明美たちに聞いても似たようなモノで、それでいて『今も工事中だっけ?』といった感じで矛盾した事を言い始めるので、余計に千賀子はそれ以上踏み込まないことに決めたのであった。
──とにかくヨシ、この精神は大事である。
……。
……。
…………さて、そんなわけで、降って湧いたかのような騒動もひと段落して。
『なんか居なくなったし、また何かあったら連絡するから』
と、明美からも言われたので、両親に挨拶をしてからエマと春人がいる東京に帰って……少し、話は変わるのだけれども。
実はこの頃、都の文化局にてアンケートが行われ、公表されていた。
そのアンケートとは、『買ったは良いけど少し使ってそれっきりな死蔵品』に関して、というもの。
なんともユニークなアンケートだが、この結果もまた現代人に通じるものがあったり……ちなみに、だ。
死蔵品ランキングナンバーワンは、『ジューサー&ミキサー』、続いて『ホットカーラー』、『ぶら下がり健康器』……『ミシン』もランクインである。
けっこう意外に思うかもしれないが、1987年のこの頃。
千賀子くらいの年代の時点で、実はもうすっかり裁縫から遠ざかりつつあった世代だったりする。
もちろん、祖母や母親などか教わったり、手先が器用だったり趣味でやっていたりで上手な人もいたけど、実はそんな感じである。
なんでかって、千賀子の子供の頃(1960年代半ば以降)にはもう足踏みミシンが主流だったおかげで、手縫いの針仕事が激減したからである。
ギリギリ、千賀子の母くらいの年代以前で裁縫が必須能力。
戦後になって工場の裁縫仕事がどんどんミシンに取って代わった事で、どんどん裁縫をする頻度が減っていったからである。
いわゆる、昔の女性は裁縫が上手で何でも手縫いしていた……というのは、手縫いが出来たらだいたい仕事にあり付けたからで、それだけ手縫いする場面があったからである。
……ちなみに、だ。
千賀子の世代くらいでも、裁縫は学校以外で経験したことが無い(家では、せいぜいボタンや雑巾を作るくらい)という女性はかなり多い。
なんでかって、足踏みミシンは高価だったので、子どもには触らせない家庭が多かったのだ。
安ければ5000円くらいで購入出来たりする現代とは違い、その頃の足踏みミシンは……現代価格で50万~100万はするくらいの高級品だったからだ。
なので、子どもが触って破損させたり糸を絡ませたりして修理が必要となれば、下手したら数万円という金が飛ぶわけで……よほど教育熱心な家庭以外では触らせないのが普通であった。
おまけに、手縫いで用意するよりも既製品の方がどんどん安上がり(大量生産のため)になっていった事もあり、ミシンが家に無いという家もそれなりに多かったのである。
もちろん、この頃にはミシンも安価になってきたし機能性も向上した(具体的には、足踏みではなくなってコンパクト化)ので、置いてある家も多かったのだけど。
……で、それを踏まえたうえで、だ。
「え、雑巾を?」
「うん、お母さんの手作りを用意してくれって」
「4月に持って行かなかった?」
「なんかね、雑巾をまとめて入れていた箱を、先生が間違えてゴミに出しちゃったらしくて、すみませんって」
「えぇ……まあ、いいけど」
どうも学校で教師たちが不手際をしてしまったようで、新たに雑巾の提出が必要になったとのことで。
久しぶりに、千賀子は押し入れより裁縫道具一式を取り出したわけである。
ちなみに、この頃にも雑巾の既製品はあったのだけど。
現代のように学校から帰って来た子供に言われてすぐに用意出来るほどには流通していなかったので、こういう場面では費用に迫られて雑巾を用意したりはしていた。
なお、ミシンはある。あるのだけど、使うと露骨にロボ子の視線が厳しくなるので、手縫いである。
「お母さん、上手だね」
ちく、ちく、ちく……根気よく針を通す手際を見ていた春人は、そう感想をこぼした。
「そう? 私はまだ下手な方かもよ。お婆ちゃんくらいの年代は本当に上手だったけど」
「そうなの?」
「そうよ、お婆ちゃんがまだ若い頃はこういった仕事がいっぱいあったらしいけど、私が子どもだった時にはもう仕事が無くなっちゃったらしいのよ」
「そうなんだ……」
「機械を使えば、手で雑巾一枚縫い終わるまでに、10枚でも20枚でも30枚でも縫い終わっちゃうからね……はい、出来た」
「ありがとう、お母さん」
重ねたタオルの四方を縫って、中央を大きく×印に縫う。雑巾と言えば、定番の縫い方だ。
受け取った雑巾をランドセルに入れに行った春人を見送った千賀子は、さてと、と裁縫道具を片付けながら──何気なく、開けっ放しにしていた窓の向こう、庭先に目を向けた時であった。
(……エマ?)
ふと、千賀子は……庭先の木の前に立っているエマを見つけた。
その木は、いわゆる若木というやつで、外の街路樹に比べて一回りも二回りも小さかった……その前に立っているエマが、何やらブツブツと呟いている。
……いったい、何をしているのだろうか?
気になった千賀子は、巫女的パワーを応用して耳を澄ませる。
盗み聞きするのは良くないのではとも思ったが、場所が場所なので……ん?
(なんか話しかけている……木に話しかけているのかな? それに、歌か、これ……え、なにをしているの?)
なんだろう、耳を澄ませれば澄ませるほど、意味が分からなくなってきた。
これは、青春特有のお悩みを木々に語るというか、独り言なのか……と、思っていると、今度はポケットから取り出した折り畳み式の鏡で、顔を確認し──たかと思えば。
なにやら、額のあたりをムニムニと触って……それから、足早にてってこどこかへ走って行った。
……。
……。
…………意味が分からなかった千賀子は、首を傾げるしかなかった。
だから、千賀子はまだ分からなかった。
そう、1987年のこの頃より数年先にまで、数多の思春期女子たちの心を掴み、大量の……そう。
千賀子の前世において、『ぼく
今生では違う名前なのだけど、前世の世界において、その名を『僕の地球を守って』。
その作品がどんどん人気を増し始めていた……そんな時期であったのだけど、千賀子はまだ気付いていなかった。