前に不意にポケモンの話が書きたくなって、ここだけ書いたは良いモノのメモ帳に放置されていたので、整理も兼ねてアップしてみました。

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レッドがセレナとカロスを旅して、フラダリと対峙する話

レッドとセレナ、カロスにて、フラダリとの対峙。

 

 

「貴様等は何故このような事をしている?    何が目的だ?」

 

「……私達はただ、この美しい世界が醜い争いに穢されていくのが我慢ならないだけだ!    ポケモンを従える事で人類は繁栄した。繁栄しすぎた。栄華を極めてしまった。その数を増やしすぎた。だがしかし!    この世界は有限だ。あらゆる物には限りがある。食糧。土地。資源。エネルギー。ありとあらゆる物には養える限界がある!…………もう無理なんだよ。  限界なんだ。人類がこれ以上繁栄するのには、今の世界を保つ事でさえ、あらゆる物は足りていない!    では限りある世界で、その消費者だけが底無しに増えていけばどうなる?    行き着く先は何だ?    そう、争いだ。醜く争い合い、私利私欲に取り憑かれた魑魅魍魎共が、限りある世界を己のモノにせんと、泥沼の戦いが始まる!    奪う者と奪われる者に別れ、この美しい世界を絶望と悲劇の汚物で染め上げる!    私の美しい世界を、いともたやすく犯し尽くす!    そのような事、私には耐えられない。この世界を穢そうなどと、許されざる悪徳だ!    許してはならぬ罪業だ!    人類は今まさにその巨悪に身を委ねようとしている。だから滅ぼすのだよ。ヒトも……ポケモンもなぁ!      汚物は消毒してしかるべきだろう?    穢れは祓われるてしかるべきだろう?    だろう滅ぼすのだよ、私達以外の全てをなぁ!    お前になら分かるるだろう、セレナ。私と同じ景色を見て、同じ絶望を抱いたお前なになら!」

 

「そんな…………分からないわ、分からない!    貴方の言い分なら、ポケモン達に罪は無いじゃない!    それを……汚物だなんて……穢れだなんて……ッ!」

 

「ポケモン達に罪は無い。そうだな、その通りだ。私もそれは認めよう。言い方が悪かったな、私も彼らを穢れなどとは思っていないよ。だがな、ポケモン達は、その力は、驚異なのだよ!    彼らの力はあまりにも強大だ。ただ在るだけで争いを生む程にな。大きすぎる力は人を貪欲にする。私欲へと走らせる。搾取と略奪を生みだす!    私の創り上げる新世界に争いなど不要だ。有ってはならぬ!

よってその原因となり得るモノには退場して貰わなければならないのだよ。哀しいがな。これも美しい世界の為の礎だ。尊い犠牲だ。

仕方ないのだよ」

 

フラダリは静かに涙を流していた。その雫に彼の嘆きと絶望、そして諦観、彼をここまで追い詰めたありとあらゆる感情が込められているように感じ、セレナは息を呑む。

 

「そんな…………」

 

彼の言葉は、思いは、狂気は、未だ穢れを殆ど知らない若干16歳の無垢な少女には衝撃的に過ぎた。世界が美しいままで完結していた旅立つ前までの彼女ならば、その言葉の意味を理解する事すら出来なかったのだろう。

しかしこの旅を通して彼女は世界と、世間と触れ合って来た。汚い部分からも目を背けず、対峙してきた。そんな几帳面で不器用な、しかし尊い姿勢こそがレッドに憧憬の念すら抱かせたのだか、しかしその経験によって、フラダリの言い分も共感を覚えずとも理解はできてしまったのだ。今までそれなりに信頼を置き、少なからず価値観を共有していた彼がこの様な恐ろしい事を、そして苦悩を、絶望を心の内に秘めていたと知って、セレナには世界が崩れるような感覚がした。下手に理解できてしまったからこそ、そして一瞬でも心の何処かで共感を覚えてしまった己を自覚して、その衝撃はより巨大な矛となり、彼女を抉ったのだ。最も、彼女が共感を覚えたのはフラダリの手段でも目的でもなく、行動に至るまでの前提のみなのだが、いかんせん彼女は衝撃から立ち直っておらず、またそれを理解するには自分の内と対峙する経験が足りていなかった。

 

そんなとき、この空気をぶち壊しにするようなーーーー

 

「フフッ……フハハハ……フフハハハハハハハハッ」

 

一人の男の高笑いが響いた。

 

その場違いなような、そうでないような、寧ろ彼こそが悪役なのではないかと思わせる見事なまでの高笑いには、セレナもカルムも、フラダリですらも呆気にとられた顔をしていたが、我に帰ったフラダリの顔には徐々に怒気が込められていく。

 

「貴様…………なにが可笑しいッ!!」

 

その大人ですら竦みあがりそうな怒声にも、彼ーーレッドは動じない。

 

「何が可笑しい?    クククッ……これは異なことを。笑ってくれと言わんばかりの滑稽な演説だったではないか!    寧ろ笑いを取りに来たのかとすら思ったが、その反応からすると、そうではないらしいな。するとなにか、先程のアレは本気で言っていたのか?    フフフッ……これは傑作だなァ!!」

 

フラダリの顔が怒りと羞恥でその髪のように真っ赤に染まり、鬼の様に歪む。

 

「貴様ァァァァッ!!」

 

「ククッ……そうか、お前はアレか、周囲に触れ回っている内に自分すらも騙してしまったタイプか。狂信者の類だな、等が悪い。

自分を正義と、善だと思い込んでいる分『悪の組織』などと宣う連中よりもよっぽど手に負えないな。では訊くが、お前の子飼い共が発電所で、ボール工場で、化石発掘現場で行っていた事は何だ?    略奪ではないのか?    お前の言う罪ではないのか?    忌み嫌われるべき悪徳ではないのか?」

 

「それは…………仕方が無いのだ!    世界が奪うか奪われるかに別れるしか無いのなら!    奪う側に立つしかないだろう!    これも全て大義のためだ。大義を成す為には必要な事だった。争いの無い美しい世界を創る為には必要な事だった!    セレナァ!   君もこの世界は醜いと、変えねばならないと思ったのだろう!?    変えてみせると誓っていただろう!?    もう今の世界に未来は無い…………今からでも遅くはない、私の下に来るんだ!    君ならば我々は諸手を挙げて歓迎しよう!    私と共に新しい世界を創り上げよう!!」

 

「そんな…………私は……私はそんなつもりじゃ……確かに変えなければいけないと思ったわ!    変えて見せると誓ったわ!    それでもこんな方法じゃない!     こんな方法じゃ……誰も救われないじゃない!!」

 

「何故だ!    この世界には未来など無いと何故分からない!    この醜い世界には最早救う価値など無いと何故分からない!?」

 

「黙れ、小物め。自己矛盾を孕まなければ為されない目的など大義とは呼ばない!    お前は結局、自分が幸せに自分の好みの世界で生きて行きたいだけの、我儘で自己中心的な子供だ。世界の醜い部分を直視できずに逃げ回り、勝手に絶望して目を背けたまま爆弾を放って美しい部分ごと消し去ろうとしている弱者だ。世界を直視し、対峙し、絶望し、それでも前に進もうと必死に足掻けるセレナの足下にも及ばない!

彼女に同意を求めるな!    彼女に共感を求めるな!    お前のふざけた思想でこれ以上彼女に傷をつけるな!    これ以上彼女をお前に穢されるのは我慢ならん。ピカチュウ!    電磁波だ!    これ以上ヤツを喋らせるな!」

 

それまでずっと可笑しそうにしていたレッドだったが、あまりにもセレナに執着し、しつこく食い下がるフラダリに遂にブチ切れた。

フラダリがここまでセレナに執心し、引き込もうとするのは偏に、彼女の気高く純粋な在り方に触れてきた事により、彼の中にも彼女を絶対視するある種の信仰が生まれてきており、彼女の在り方こそ、価値観こそが正義だと思う節があったからだった。これは己を正義だと思い込む事により自己を正当化しようとするフラダリにとっては由々しき事態である。即ちセレナが自分と対峙する事は己の正義を脅かし、己の行動は不当なのだと他ならぬフラダリ本人が認めざるを得ない事にも繋がりかねないのだ。そうなってしまったが最後、自身の業に耐え切れず、再起は不可能になると無意識下で分かっているからこそ、セレナを自分の下に繋ぎとめようと躍起になって長々と自分の思いをぶちまけたのである。もしここにセレナが居なかったのならば、彼はここまでペチャクチャと喋ってはいなかっただろう。

そのような、自分一人では悪にも善にもなり切れず、自分の正義をこうも容易くセレナに脅かされているフラダリの在り方こそをレッドは嗤っていたのだが、こうもしつこいと呆れと共に怒りが込み上げてくる。セレナに未来への希望と正義を見出していたのは、レッドもまた同様だったのだ。

 




つづきません。

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