しばらく皆と遊ばないって意気込んで、メノちゃんのための縫い物やクッキー作りを、私と一緒に本番に向けて頑張っているチルノちゃん。
でも、やっぱり皆と遊びたいって気持ちを抑えるのは、チルノちゃんにとっては難しいことだったらしい。ずっとウズウズしていたのを、私は見逃さなかったから。
大丈夫。練習時間が減って、本番があまり上手にできなかったとしても、お誕生日をお祝いする気持ちさえ本物ならば、メノちゃんはもらったプレゼントの出来不出来なんて気にしないよ。
むしろ、約束云々以前にチルノちゃんのことが友達として大好きで、一緒に遊んでお話しをするだけで喜んでくれる妖精さんなんだから、一旦休憩して皆のところに遊びに行こう。
どうせなら、妖精軍団の皆でも誘って、楽しく気ままな妖精会議にでもしようよ。
そう伝えながら、遊びたいって思いつつどこか迷っていた様子のチルノちゃんを少し強引に、腕をぎゅっと引っ張って連れてきたのだ。
「えへへ、どう? この着物、僕に似合ってるかな?」
「おう! 逆に聞くけど、あたいと大ちゃんの着物姿はどう思ってる?」
「とっても可愛い、似合ってる! 気の利いた感想言ってあげられればよかったんだけど、僕ってそういう才能なくてさ」
「へへっ、ありがとな!」
「可愛いとか似合ってるって言われるだけで嬉しいから、別にいいのに。本当、メノちゃんらしいや」
結果はご覧の通り、我慢してた分普段よりも楽しそうに遊んでる。人里のお散歩、駄菓子屋さん訪問、寺子屋の子供たちとの遊び、皆でわいわいかき氷を食べる、着物を着てはしゃぐ、これら全てで。
当然、これからするつもりの色んな遊びでも、チルノちゃんは私やサニーちゃんたちと楽しく遊ぶはず。メノちゃんが誘った小鈴ちゃん、新聞のネタ探しついでについてきた文さん、この2人も一緒だもんね。
それに、私だってチルノちゃんと同じ気持ちだ。だって今、我慢を解いたお陰でとっても心が晴れやかなんだもん。
メノちゃんが、ルナちゃんの着物を着てサニーちゃんたちと一緒に、人里を楽しんだってお話。それと、サニーちゃんがメノちゃん仕様の着物を作って欲しいって、秘密裏におばあちゃんにお願いしに行ったお話。
これを聞いて、メノちゃんを加えた妖精軍団の皆で着物を着て、人里に限らず色々なところに遊びに行きたいという希望が、今叶ったから。ちなみに、小鈴ちゃんは自分のがあったから着てるけど、文さんは着物がないからこのままだ。
「それにしても、本当に大丈夫? 無理なら無理でいいんだよ。私もチルノちゃんも、やっぱり止めたって言われても怒らないから」
「そうだぞ! あたい、まさか1度も作ったことがないなんて思わなくてさ」
「ううん、大丈夫。チルノと大ちゃんが、本当に欲しいって思ってるものなんでしょ?」
「まあな! どちらかといえば、大ちゃんの方が欲しがってるんだけど!」
「えへへ。実はそうなんだ、メノちゃん」
「なら尚更だよ! 期待に応えられるように、頑張るからね!」
後はそう、お祝い本のお返しとしてメノちゃんが、手作りで想いのこもった花冠を作ってくれることになったのも、嬉しくなる理由の1つとして外せない。
親友のチルノちゃんとお揃いの、可愛い花冠。ノゼちゃんとスフェちゃんが着けてた、レミリアさんから贈られた紅と白の花冠を見て欲しくなったんだよね。
柄や色のリクエストはしてないけど、メノちゃんならばきっと可愛いものを作ってくれると信じてる。というか、同じくらい仲良しなメノちゃんに贈られるんだから、多少好みから外れた程度なら変わらず満足できる。
そもそもね、どうしてもというならリクエストしようよって話になると思うし、作ったことのないものを作ってとお願いするのは、本来無茶なことなんだもの。
「それはそうと……
「ええ! 来ておいてなんだけど、こんなにも早く
「まあね。暇そうにしてたうちのじい様も駆り出して、何とかってやつさ。あれだけ気前よく、サニーにどんと前もって銭を出されりゃ尚更だね」
「えっ。あ、その……ありがと。おばあちゃん」
「どういたしまして。一応、品質には拘ったつもりではあるけども、何か不具合とかがあったら来な」
「うんっ!」
ただ、唯一残念だったのがリリーちゃんとラルバちゃん、クラピちゃんは探しても居なかったり別の予定があったりで遊べなかったところかな。私がそうだから、メノちゃんの気持ちも分かるよ。
まあ、私たち妖精軍団は例外なく皆仲良しだけど、趣味も性格も心の中も各々似ているところはあっても、完全に同じではない。
同じ妖精、例えば同じ場所の水から生まれた妖精さん同士でさえ、容姿が凄くそっくりになることはそこそこあっても、趣味や性格や心内の3つが同じになることは、殆んどない。似る確率だって、とっても低い。
それこそ、フランさんの分身魔法みたいな力を使い、増やした分身でもない限りは。
「良ければ、メノウの着物姿を撮って現像しましょうか?」
「えっ、いいの?」
「はい、取材の御礼も兼ねていますし。明日にでも、家のポストにリリーたち3人分のも投函しておきますね」
「わぁ……ありがとね、文さん! じゃあ早速……ルナも一緒にハイ、チーズ!」
「わわっ! ちょ、私も!? 心の準備が……というか、外に出てからじゃなきゃ邪魔で迷惑じゃない?」
「あ、確かに!」
ちなみに、メノちゃんの着てる着物はカスミソウと地球の刺繍がちりばめられた、白と薄水色のとっても似合う可愛い感じの着物だ。
人里の人たちにとっては、伝わる二つ名も相まって水のイメージがあんまりなく、おばあちゃんもサニーちゃんがお話をしてなければ、大地のイメージが強い黄土色系統で行こうとしてたらしい。
白や水色系統が1番似合う妖精さんだけど、メノちゃんなら普通に可愛くて似合ってたと思うし、正直見てみたいかも。お金と手間の問題とかもあるし、今は言わないけどね。
「ふふっ……サニーちゃんたちも、楽しそうに記念撮影参加してる」
「そりゃそうよ! メノとの消えない思い出が1つ増えたんだもの!」
「汚れはともかく、紛失と破損には気をつけないとですねぇ。劣化もしますし」
それよりも、私もメノちゃんとの記念撮影をしたいな。思い返せば、他の妖精軍団の皆とは何度もしたことあるのに、メノちゃんとは1度もやったことがない。
今までそんな気にしてなかったのに、いざ気になり始めると心の奥底から急にしてみたいって気持ちが、噴き出すように表に出てきてる。
メノちゃんも、そんな私を気遣ってかおいでおいでと手招きしてくれてるし、せっかくなんだから私とチルノちゃんも、記念撮影の輪に入れてもらわなきゃ。
(迷うなぁ……)
撮影してもらう時のポーズは、メノちゃんと一緒に左手でピースにしようかな。サニーちゃんや小鈴ちゃんみたいに、にっこりしながらジャンプでもしてみようかな。
いや、あんまりメインじゃない私が目立ってもあれだから、普通に笑顔で居るだけでいいかな。記念撮影の目的というか最初の意図は、今日ここに居ないリリーちゃんとラルバちゃん、クラピちゃんにメノちゃんの着物姿を見せるためなんだもの。
「じゃあさ、色んなところ回ってあたいたちの……特に、メノの着物姿見せに行こうぜ! 紅魔館、博麗神社、理想郷、香霖堂」
「え、チルノ? 全部、よく遊びに行く場所だから今日は行かないって……」
「いーのいーの、気が変わったし! 大ちゃんたちの反対がなければ、あたいは賛成するから!」
とまあ、何だかんだお店の外に出てから始まった記念撮影タイムが長引いた後、次はどこにしようかって皆でうんうん唸りながら考えていたその時、チルノちゃんがこんなことを皆に向けて提案してきた。私たちの着物姿を、友達の皆に見せに行くって提案を。
「いいと思う。
「びっくり箱的な感じ? やろうやろう!」
「私も賛成よ! 本当、大ちゃんの力ってイタズラに便利ね!」
「同じく、楽しくなりそうだから異議なし。メノも喜んでるわ」
「選択肢が魅力的だけど、小鈴が居るなら博麗神社か理想郷のどっちかになりそうよー」
紅魔館のレミリアさんたち、博麗神社の霊夢さんたち、香霖堂の霖之助さんは、私たちの着物姿を見慣れてる。同じ装いならば、殊更そう。
だけど、守護妖精さんは1度たりとも見たことがない上に、メノちゃんの着物姿に至ってはサニーちゃん、ルナちゃんとスターちゃん以外、私を含め今挙げた友達全員が見たことなかったっけ。もし、見せに行ったらさぞかしびっくりしてくれるに違いない。
私以外の皆も大いに賛成してるっぽいし、提案はそのまま採用されることになるだろう。さて、最初はどこになるのかな。
(うーん……)
でも、スターちゃんが言ってるように、小鈴ちゃんが居るなら安全面を考えて、博麗神社か理想郷のどっちかになるのは確実だ。慣れてるって意味も考えると、博麗神社にするのが1番何も考えなくてよさそうだけど。
「私としては、メノウちゃんのお家? 拠点? ともかく、妖精たちの理想郷ってところに行ってみたいんだけどなぁ。実際に、この目で見てみたいしさ」
しかし、理想郷も捨て難い。蒼氷の渓谷みたいに
完全なる未知の場所ではあるけれど、メノちゃんのお友達なお陰で、いざという時には常に見守ってくれてる守護妖精さんが、駆けつけてくれるしね。
「僕的には、小鈴なら連れてってもいいんだけど……好奇心旺盛なんだし、絶対時間足りなくなるよ。楽しくなり過ぎて」
「あー……心当たりしかないわー」
「小鈴ちゃん、そのせいで何回もやらかしちゃって、霊夢さんにちょくちょく警戒というか、監視されてるんだよね」
「えっ、初耳なんだけど。小鈴、何やったの? イタズラでお賽銭箱でも壊した?」
「いや、流石にそれはないよー。ちょっとその、妖魔本を読んでたりしてる時、変なのに当たったのか怪異に憑かれちゃったりしてて」
「別方向に盛大に駄目なやつ! 無事でよかったぁ……」
両方行くって選択肢もなくはなかったけど、今まで散々人里で楽しんで遊んできたお陰で、時間がまるで足りないから却下。
霊夢さんとか魔理沙さんが一緒ならまだしも、そうでないのに小鈴ちゃんが居る中で夜中まで外で遊ぶのは、お父さんとお母さんにも許可取ってないし、普通に危ないんだもの。
もし、夜中まで遊んでいて何かトラブルが発生し、小鈴ちゃんを怪我させたりそれ以上の最悪な事態になってしまえばどうなるか、考えるだけでも恐ろしい状況がやってきてしまうんだから。
その点、博麗神社なら万が一夜中まで夢中に遊んでたとしても、あの霊夢さんの目が届く場所。安全面に加えて、人里の人間さんたちからの高い信用があるって意味でも、候補としては強いかな。
命知らずの妖精さんに引けを取らない小鈴ちゃん本人は、ちょっぴり不満かもしれないけどね。
「メノウちゃんがそういうなら、まあ仕方ないかぁ……うん、じゃあ理想郷はまた今度ね!」
「よし! 小鈴も頷いてくれたことだし、全会一致で博麗神社に決定ね! 大ちゃん!」
「分かった。皆、私か私に触れてる誰かに掴まって……えい!」
そうこうしている内に、メノちゃんの「今日は、博麗神社にしない?」って一言が決め手となり、皆の意見が博麗神社で一致したから、文さん含めて全員繋がってるのを確認した上で、力を使って瞬間移動を試みる。
視界がほんの一瞬濃い霧に、身体全部が一瞬湿った風に包まれたかと思えば、次の瞬間にはもう既に博麗神社の境内。いつものように、縁側であうんちゃんとお茶を飲んでた霊夢さん、遊びに来てた魔理沙さんはびっくりしたらしく、数秒視線がこっちを向いたまま。
まあ、私たち妖精軍団が着物姿だったからというよりは、メノちゃんが着物姿だったことと小鈴ちゃんが居ることにびっくりしたんだろうけど。
「わは、魔理沙だぁ~! ぎゅーっ!」
「よう! 随分とまあ、可愛らしい着物姿だな。私らに見せにきたのか?」
「うん! えへへ、魔理沙に可愛いって言われた! 僕嬉しい!」
「相変わらずの魔理沙好きねぇ、メノは。ちなみにだけど、私も魔理沙の可愛らしい着物姿って感想には同意するわよ」
「私もですっ! それはそうと、いつか一緒にお祭り行きましょうね! メノちゃん!」
「わぁぁ……!」
で、メノちゃんは魔理沙さんを見るや否や、何か考える間もなく反射的に走って飛びつくように抱きつく。ここ最近、想定外のタイミングで自分が大好きな人妖さんに会った時に見せるようになった、最上級の甘え仕草だ。
抱きつく行為自体は、ここに居る妖精全員ニコニコのメノちゃんに何度も同じことをされてるし、逆にしたりしてる。仲良し妖精同士なら当然、特に珍しいことではない。
私たち妖精軍団よりは大人な友達の霊夢さんや魔理沙さん、文さんは自らしに行くことは殆んどないけど、受け入れはしてくれてる。
小鈴ちゃんは、多分もう少し親交を深めればやるようにはなるかな。まあ、それでも主にメノちゃんの方からするって感じにはなりそう。
(……メノちゃん)
重要なのは、大好きな家族や友達に甘えたいって欲求を、前よりも遥かに強く表に出せるようになったこと。駄目な時ならまだしも、そうじゃない時だって過剰に怯え、遠慮していた頃に比べたら本当に元気になってくれて。
1人の大切な友達として、私は本当に嬉しいよ。どのくらい嬉しいかって、言葉にすることが難しいくらいにはね。
「霊夢も、あうんも、可愛いって褒めてくれた! えへへ、サニーがおばあちゃんにお願いしててくれたお陰だよ。ありがとね!」
「ふふっ、どういたしまして! さあ、せっかく来たことだし……思う存分、はしゃぎ倒すわよー!」
「はぁ……魔理沙。後片付け、手伝ってもらうわよ?」
「おう! 任せときな、霊夢!」
ニッコニコな表情をしながら魔理沙さんに抱きつき続けるメノちゃんに、スターちゃんたちのハイテンションぶりを更に焚き付けてるサニーちゃん。
そして、そんなサニーちゃんたちを見ていてため息をつく霊夢さんに、メノちゃんの頭をなでなでしつつご機嫌な魔理沙さんを見ながら、私もチルノちゃんたちと一緒にその輪へ混ざりに行くのであった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。