人類史の裏で悪いことする諸悪の根源系チート転生者   作:オスマン○帝国

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人間なかよし(合意なし)


2.それでも英雄はやってくる

 

 カードゲームをやっていた人間なら分かると思うが、時代によって強いデッキ、流行っているカードってのが出てくる。俗にいう『環境』ってやつだ。

 

 その裏には弱い、または使われなくなったカード達が山のように積み重なっており、ほとんどがカードショップの肥やしになっている。俺が幼少期に欲しくて堪らなかった魂のカード達も、一部を除けば時代と共に紙切れ同然の値段となっただろう。

 

 だがカードゲーム自体が企業が提供する商品な以上、売れないカードをまた印刷し直すのはコストの無駄、損だ。新しい、そして既存のカードより強力なものをドンドン出し、集金していかなければせっかく育てたコンテンツの存続危機にも陥る。

 

 新たらしいカードを出して、集金し、また新しいカードを出し...ってサイクルを永遠に繰り返した果てに、歴史あるゲームほど初期と比べてとんでもないカードパワーのインフレを引き起こす。だがまあ、インフレはカードゲームの宿命みたいなもんで、致し方ないことだ。

 

 しかし、あまりに強カードが入れ替わるサイクルスピードを上げすぎると、当然プレイヤーは減る。誰だって金を出して買ったカードが一瞬で紙切れになったら嫌だし、安心して着いていけない。

 

 そこで企業がある程度そのサイクルを遅らせるために行う対策が、強すぎる特定カードの禁止や投入枚数制限や、既存カードにシナジーのある新カードを作ること、この二択だ。

 

 強すぎるカードのパワーを抑えると同時に、既存カードの価値暴落も抑える。こうすることで持続的な商品展開が可能となり、コンテンツの寿命・価値を保つことができる。

 

 さて、なぜ俺がいきなりこんな話をしているのかというと、この『カードと企業』の関係、それと似たような問題にぶち当たっているからだ。

 

 具体的に、まずカードは俺が造り出した魔物で、企業は俺、プレイヤーをこの世界に生きる人類と仮定しよう。異世界を舞台としたこのゲームは、俺という企業の下、日々新しい魔物(カード)が供給されている状態だ。そして俺が魔物造りに精を出して早数百年────いや数千年か?ともかく、それだけの期間があれば明確に魔物(カード)間の優劣が出てくる。

 

 俺はそれを、何事も自然に任せるのが一番!と考え放置し、許容した。優劣もまた、食物連鎖形成には必要だろう、と。

 

 その結果、造り出した一部の魔物が強すぎて、人類(プレイヤー)が大量引退(ぜつめつ)するクソ環境となってしまったのだ。

 

 なかでも特に人類(プレイヤー)を大量に死に追いやった張本人、それは何を隠そう我が最初の創造物たるゴブリンである。

 

 こいつらは単体の生物としてではなく種族全体を見た場合、あまりにも強すぎた。異世界種族環境ではぶっちぎりのtier1、今や異世界はゴブリン一強環境である。

 

 なぜこんな事態になったのか。

 

 俺がゴブリンという種族に与えたのは、大抵のモノを食べれる雑食性に、どんな種族とも交配可能な繁殖力。人類と比べたら馬鹿とはいえ原始的な道具を扱えるほどの知能を生後数ヶ月で獲得する成長性。そして群れ単位で集団生活を営める社会性。オマケにゴブリンと言えば進化だよなァ!という安易な発想で付け足した極低確率で産まれる上位個体。

 

 箇条書きにすると、よく出てくるテンプレゴブリンのイメージそのままだ。

 

 だが冷静に考えてみて欲しい。人類が短くとも5年は掛かる幼少期を僅か数ヶ月で終え、悪食による死亡率も低く、道具まで使い、上位個体に統率されれば数百・数千体単位の数までの群れを作る。しかも繁殖欲も高く異種交配すら可能。

 

 こんな種族が居たらそりゃあ天下取るわというスペックだ。

 

 ゴブリンに対するデメリットとして欲求への衝動を強めたのも裏目に出た。後先考えずバカスカ子どもを産みまくるヤツらは周辺環境の食料を食い荒らし、農耕という概念がないから当然食料が無くなったら移動する。意図せずして軍隊アリのような習性を獲得するに至ってしまった。

 

 それはさながら蠢く緑の川の如し。

 

 このままでは世界がゴブリンに埋め尽くされる。

 

 俺が数年間掛けて造り上げ、頂点捕食者たれと産み出したドラゴンが数千体のゴブリンに群がられ、見るも無惨に殺された瞬間、流石の俺でも許容できなくなった。ヤツら、飛べる成竜を放置して巣と雛を狙うのだ。そして降りて来ざるをえない親竜を圧殺。悪知恵と知能の高さに思わず脱帽したよ。

 

 いやーほんとは俺が手を出しすると、わざわざ育てたアサガオを自ら水抜きして枯らすみたいで嫌なのだが、現状を見るとそんなことも言ってられない。

 

 制限改定、するしかないでしょう。

 

 押し寄せるゴブリンの波により、幾つも人類の村や街、国が滅びた。戦争の悲惨さを訴えるため悲劇的に作られた映画なんかよりよっぽど酷い絵面で、それはそれは素晴らしい光景だったのだが、俺は人類に滅んで欲しいわけではない。なんなら一番好きな種族だ。俺の目的(しゅみ)のためにも、世界のメインには人類がなって欲しいと本心から思っている。

 

 故にゴブリンには悪いが、まず繁殖能力を下げた。それでも他種族より高いが弱体化は免れないだろう。バランスを見誤り、ぶっ壊れ性能に設定した俺の落ち度だ。そして低めに設定していたはずの筋力なんかの各種ステータスも下げた。単体では弱いが、数の暴力を駆使する種族として見た場合高すぎたのだ。

 

 これでゴブリンは最強種族から中堅ぐらいの強さに落ち着いただろう。だがいくらステータスを弄ったとて、現生するゴブリンの総数は変わらない。このままではよわよわザコ種族の人類は数に呑まれてお死枚♠︎だ。

 

 だから次は既存カードにシナジーのある新カードの追加────人類にテコ入れする必要がある。

 

 そこで何が人類の強化パッチとしていいかなーと考えたとき、この世界一騎当千の英雄って居なくね、と気がついた。

 

 ゴブリンが最強だったのは、異世界のクセに数が圧倒的優位を誇るからだったのだ。

 

 だったら造りますか、一騎当千の『英雄』を。

 

 というわけで、人類の妊婦を無差別に10人ほど攫ってきた。

 

 先程言ったかもしれないが、俺は何事も自然が一番と考えるタイプだ。建築ゲーに於いてクリエイティブモードで造った壮大な建造物よりも、サバイバル特有の機能美を追求した建造物の方を美しいと感じるタイプと言えば分かりやすいだろうか。そんな思想こそが、この面倒な事態を引き起こしたとも言えるが、まあ性癖のようなモノだ。今更変えることはできない。

 

 妊婦を攫ったのも、安易に今生きる人間達に力を与えるより、これから生まれてくる子どもが周囲の人間から化け物と恐れられ、差別され、その果てに英雄として立ち上がる。そういった試行錯誤の歴史の積み重ねこそが自然であり、俺が美しいと感じるからだ。

 

 逆に、心折れた英雄が人類に復讐し、人類が滅亡しようともそれはそれで面白い。絶滅したとて()()()()()()()がそこら中に居るのだ。人類をまた生み出すのも俺には容易い。手間は掛かるがまったくのノーリスクだ。

 

 そんな未来の話はひとまず置いておき、英雄を生み出す第一段階として、俺は妊婦の腹の中にいる子どもに肉片を分け与えた。だがゴブリンのように肉体の全てを置き換えたわけではない。ほんの一部、質量でいえば1000分の1程にしかならないだろう。

 

 だがこの改造の肝は、肉片が()()することにある。

 

 この肉片を英雄因子とでも名付けようか。因子の機能として、子ども達が大人になり、結婚し、そのまた子どもを産めば一定の確率で両親が持つ因子分、体内の因子割合が増加する。その時点では肉体になんの影響も及ぼさないが、因子割合が高い者同士で婚姻を進め世代を重ねると徐々に蓄積していくわけだ。そして一定の割合を超えた瞬間、生まれた子どもは強大な力を手にする()()となる。

 

 英雄となった子どもは単純な身体能力の強化や知力の向上など、人類の完全上位互換となる圧倒的強者だ。強さで言えば、ゴブリンに圧殺された成竜一匹分ぐらいか。負けたとは言え、まともに戦えばゴブリン数千体分の力を持つ化け物と同格だ。

 

 だがこの英雄因子によるテコ入れだと、世の中英雄だらけになるので一つ欠点を与えた。

 

 それは英雄の子どもには一切、因子の遺伝が行われないという欠点だ。

 

 高い因子割合を持つ英雄が種馬になれば、それだけで上位人類が量産されてしまう。だからそもそもの遺伝能力を喪失させ、因子の蓄積とリセットを人類全体で行う。こうすることによって、特定の血統が英雄を独占する事態を防ぐとともに、英雄の個体数調整を自然に行える。

 

 言なれば、人類全体で行う英雄ガチャだな。

 

 だが今回だけはゴブリンの調整ミスによる人類滅亡の危機なためお詫びとして、1000分の1しかない因子でも通常の英雄と同じだけの力を振るえるようにしておいた。もちろん、英雄の欠点である因子のリセットは無効だ。確定チケットである。

 

 まあ、そこから先はこのチャンスを生かすも殺すも人類次第だ。

 

 生まれ出でる英雄たちにはどのような形であれ、是非とも俺が楽しめるストーリーを紡いでほしいと思う。

 

 おめでとうまだ見ぬ子ども達!君達の末路は英雄だ!

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 神から奇跡を授けられし十人の聖母と、その母から生まれし神に祝福された十人の英雄。

 

 今より遥か昔、人類が緑の悪魔と呼ばれたゴブリンから不当に虐げられ、絶滅の危機に瀕した際に彼らは現れた。彼らは皆一様に一騎当千の力を持ち、国を飲み込んだ幾千万のゴブリンを僅か十人で退ける偉業を成し遂げた。

 

 人類なら誰もが知るこの伝説は、当時の英雄達が使用していたとされる衣服や武具、魔物との交戦記録が現存していることから、ほとんど全ての国で史実として扱われている。そして大陸随一の規模を誇る正教会が崇める神こそがこの奇跡を与えた存在であり、聖母と英雄もまた信仰の対象として今なお崇拝されているのだ。

 

 そんな伝説が始まったとされる地こそ、世界の中心地であるといっても過言ではない現在の城壁都市ニトナトスである。

 

 故にニトナトスの大聖堂は他の地、他の聖堂と比べ特別な意味合いを持つ。その敬意を、その誠意を、その信仰を試す場として、厳格かつ神聖な、神に恥じぬ装いが求められるのだ。

 

「ここに居られましたか、大司教様」

 

 精巧なレリーフが柱を彩り、著名な画家が複数年掛けて天井に描いた聖母と十人の英雄が見守る身廊。そこには一心不乱に、聖母像に祈りを捧げる老人が居た。

 

 豪奢な服を着ていながらも、それを感じさせない気品と威厳を併せ持つ彼は、この都市を含む複数の聖堂を管理・運営する大司教────つまり、ニトナトスに於ける正教会の実質的なトップである。

 

 大司教は祈りの際に閉じた目は静かに開け、声のする方へゆっくりと振り返る。

 

「司教、いつもご苦労様です。それで、彼は見つかりましたか?」

 

「いえ、大司教様……彼の職場を訪ねたのですが怪我で離職したらしく、それ以降の足取りも……」

 

 近頃の大聖堂は十数年に一度の大規模な修復作業の話題と業務で持ち切りである。そして大司教が司教に任じたのは、その中でも重要な職人確保などの人事管理であった。

 

 司教に対しての信用の高さからこの重要な仕事を任せているが、歴史ある大聖堂に万が一は許されない。可能であるなら、信頼と実績を積んだ職人に仕事を回すのは必然である。

 

 そこで白羽の矢が立ったのが、以前にもこの大聖堂の修復に関わり、見事な腕で大司教の覚えもめでたかった『彼』だ。司教は大司教直々の指名によりその彼に仕事を依頼したのだが、まさか居ないとは考えてもなかった。

 

 だが司教も大司教も、長くこの都市で暮らしてきた者達だ。故に職を失い、あらゆる庇護から外れた者の末路がどうなるかは察していた。

 

「恐らく、辞めさせられたのでしょう。彼ほど腕の良い職人に対してそのような惨い仕打ちをするとは、三魔導士の悲劇から何を学んだのか」

 

「全くです。ですが彼が居ない以上別の者に依頼を回さねばなりません。大司教様の心中お察し致しますが、新たな職人を探すほか……」

 

 司教の言葉を聞き、大司教は深く息を吐く。

 

 三魔道士の悲劇とは、十人の英雄の内の三人が魔導士であったがために起こった悲劇である。当時、異端の技術とされた魔法を扱った三人は他の英雄達と比べ人々によって冷遇され、差別された。その死後も他の英雄達とは同格とされず、残された文献の数なども圧倒的に少ない。しかし、現代では魔道士の地位向上によりその認識が改められ、教会内の教訓として語り継がれているのである。

 

 そして正教会に関わる人間がこの故事を引き合いに出す場合、相手が相当不服、或いは怒りを感じていることに他ならない。

 

 司教は、目の前の老人が自身が思っていた以上に不機嫌であることを察した。

 

「仕方ありません。残念でなりませんが、別の職人をお願いします。これからも貴方には期待していますよ」

 

「承知いたしました」

 

 暗にもう下がってよいと言われていることに気付いている司祭は、一刻も早く立ち去りたい衝動に駆られる。しかし、どうしても無視出来ぬ報告がまだ一つあった。

 

 司祭は嫌々ながらも口を開く。

 

「大司教様、市井の間で怪死事件が多発していることはご存じですか?」

 

「ええ、もちろん。神も無辜の民の死に涙していることでしょう。ですがそれがなにを────まさか、影種ですか?」

 

「異常な力で引きちぎられた鉄製品が見つかっております。まず間違いないかと」

 

「以前に影種発見されたのが約50年前でしたか。まだ猶予はあると思っていましたが、都市内部での発見……まったく前例がないわけではありませんが、厄介なことです」

 

 影種

 

 人類に仇なす魔物には、その種族ごとに生息域がある。魚が海に住み、鳥が木に巣を作るように、その分布は基本的には変わることがない。しかし数十年、或いは数百年に一度、ほとんど固定されているはずの魔物の生息域に、まったく別の新種が発生することがある。

 

 既存の動物の新種と区別するため、影も形もないところから生まれる故に付けられた名が『影種』。

 

 過去、対処法の不明な影種を放置したことでいくつもの街や都市を失った経験から、人類は影種を可及的速やかに排除、或いは生態の早期解明を急務としていた。

 

「英雄を向かわせるほかありませんか」

 

 人類は英雄達の手によって緑の悪魔から救われ、その総数を増やしてきた。そしてその中からは極稀に、超人的な身体能力を発揮する人間が生まれるようになった。時に戦場を駆ける兵として、時に力を振るう王として君臨した彼らを人類は十人の英雄達と同じ魔物からの解放者という期待を込めて、同様に『英雄』と呼ぶ。

 

 このニトナトスには、そんな一騎当千の英雄が三騎存在する。

 

 一人はこの都市に在駐する帝国の兵士。

 

 一人は商人ギルドの元締めとして商人達の手綱を握る大商人。

 

 そして最後の一人は、この正教会に忠誠を誓った教会騎士。

 

 だが今現在、帝国の兵士は活性化した東のオーク征討に、大商人は西の交易都市との商談に向かっていた。故にこの任務は最後の一人に託される。

 

()()の予定は今、空いていますね?」

 

「ええ、日々祈りと鍛錬を繰り返しております」

 

「結構。あまりこういった調査には不向きな性格ですが、致し方ありません」

 

 こうして民を害する魔物を討つため、教会騎士の派遣は決まった。

 

 新たな魔物と英雄の邂逅は近い。

 

 

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