【コミカライズ化決定】引き抜いた聖剣が独占欲剥き出しなヤンデレ彼女面してくる件   作:アスピラント

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野生のメスガキが現れた!

「僕はもう消えてなくなりたい」

「ど、どんまいっす」

「エルフとして長く生きてきたけど、あんな恥ずかしい場面は中々ないよ」

「うわぁぁぁぁ!」

 

 悲報――アレックス初日で変態聖剣マスターという渾名授かる。クロスフォードに着いていきなり、マルティアナのせいで不名誉な印象を脳に焼き付けたアレックスは、宿屋に戻っていきなりガチ泣きをかました。

 

「あれはちょっと私たちでも助けられなかったね……」

「エルドレインさんすら不可能っすから」

 

 皆は乾いた笑みを浮かべて、ひとまずアレックスを慰めていると、彼はいきなり申し訳なさそうな顔をした。

 

「……結局、今日の集まりで何も決まらなかったのは僕のせいだよな……」

「そりゃそうっすよ。あんな事態になったら収拾つかないっすもん」

 

 本来ならチームの編成、今後の調査方針、任務のスケジュール。決めなければならないことは山積みだったはずだ。しかし担い手が壇上で「愛する妻のために世界を救う」と宣言した直後に、冷静な話し合いができる空気など残っているはずもなく、エルドレインが苦笑交じりに「今日は解散、詳細は明日以降に」と一言告げて終わりになった。

 

「……全部マルティアナのせいだからな」

 

 アレックスはベッドに仰向けになりながら、天井を見て言った。

 

『私のせい?』

 

 腰に置いた聖剣が涼しい声で答える。悪びれる気配が、一切ないためアレックスはひどく驚いた。

 

「そうだよ、何百人の前で何を言わせるんだ」

『ふんっ』

「い、いつか台に深く刺す……!」

『そして私はまた立ち上がる』

「剣でしょ」

 

 いつか泣かす――そう思った時、アレックスの脳裏にある光景がよぎった。

 

『大したことなくていい。貴方が側にいてくれれば、それだけで十分だから』

 

 以前に夢見たあの光景だ。

 焼け野原の平原、少年の傍らで膝をつく少女の姿。

 あれがマルティアナと無関係だとは思えない。

 

(……あの、夢は……)

 

 マルティアナが何故こんなにも面倒くさい、ではなく面倒な感情を抱えているのか。アレックスはよく知らない。幻術の中で垣間見たあの光景が、関係しているのだろうとは思っているが詳しい事情は何も聞いていない。マルティアナ自身が話してくれていないし、アレックスも無理に聞き出そうとは思っていなかった。

 

(理由を知らない限り、どうにもならないな)

 

 何故こんなにも執着するのか。何故シカトされただけであそこまで暴走するのか。根っこにある何かを理解しない限り、同じことが繰り返される気がした。責めることも、宥めることも、どちらも的外れになる。

 

「はぁ……」

 

 エリドゥに言われた言葉がふと蘇った。マルティアナの精神は脆い――と。あれは揺さぶりのつもりだったのだろうが、嘘でもなかったとアレックスは思っている。

 

「アレックス、そろそろ風呂行かないと混むっすよ」

「あー……そうだな」

 

 するとローズの呼びかけがアレックスを現実に引き戻す。

 のそりと起き上がろうとした、その時だった。

 

 ――コン、コン

 

 扉を叩く音がして全員が止まった。

 

「誰っすかね……」

「さぁ……」

 

 ローズが首を傾けた。宿に知り合いはいない。エルドレインが何か伝えに来たのか、あるいはギルドの関係者か。アレックスはベッドから降りて扉に近づいた。

 

「はい、どちら様ですか」

「うひぃ!」

 

 扉の向こうにいたのは、見たことない少年だった

 年齢はアレックスと同じくらいか、少し下か。背は低くはないが、体格は細く、どこか頼りない印象を受ける。目は絶えず泳いでいて、こちらと視線が合った瞬間にびくっと肩が跳ねた。

 

「あ、あの……」

 

 少年は口を開いたが、そこから言葉が出てくるまでに数秒かかった。

 

「み、ミミ様が……」

 

 一度言葉を切って、何度も深呼吸をしたあと、何かを覚悟するような表情になる。そんなに命懸けな頼み事かとアレックスが身構えてると――

 

「お、お前をお呼びだ!」

「ぼ、僕……?」

「つ、ついてくるがいいと……思います〜……」

 

 最後が急に萎んだ。

 アレックス、ローズ、リリア、レイナの4人はしばらく沈黙したあとで漸く口を開いた。

 

「「「「はい??」」」」

 

 アレックスはリアクションに困りながら、少年をもう一度眺めた。ミミ、という名前には聞き覚えがなかった。少なくとも今日会った人物の中にその名前はいない。

 

「えっと……ミミさんって、どなたですか」

「あ、あの……今回のチームに参加してる冒険者で……ミミ様は……す、凄い人なんです。すごく。ほんとに」

「それはわかったけど……なんで僕が呼ばれてるんだ?」

「そ、それは……その……」

 

 少年はきっと睨み返す(涙目を向けてるだけにしか見えない)と、気持ち大きめの声で言った。

 

「た、たいまんじゃ〜!」

「……もう全然わからん」

 

 とりあえず彼じゃ話にならないのは明らかだ。

 アレックスはミミ様とやらに会うことに決める。

 

『なんか女の勘が囁いてる、良くない事が起こると……!』

 

 マルティアナの戯言に戦々恐々としながらも……。

 

 ◆

 

 少年に連れられて、アレックスたちは夜の街へと出た。クロスフォードの通りは夜になっても賑やかで、あちこちの酒場から笑い声や喧騒が漏れ聞こえてくる。

 

「えっと……君の名前、聞いてもいいかな」

 

 アレックスが歩きながら少年に聞くと、彼は少し嬉しそうな顔をしてから口を開いた。

 

「ぼ、僕はチャーリー……あ、い、いや……ぼ、僕は……名もなきさすらいの冒険者で……ッ!」

「どんなキャラ設定なの?」

 

 レイナが穏やかな声で突っ込むと、少年――チャーリーはうぐっと呻き声を出しながら顔を俯かせる。確かに中々キャラが迷子なのは皆気になっていた。

 

「チャーリー君だよな、よろしく」

「……よ、よろしくお願いします」

 

 結局普通に答えた。抵抗する体力がなくなったらしい。アレックスは少し気の毒に思いながらも、隣を歩くリリアの呟きが聞こえてきた。

 

「それにしてもミミって……なんか聞いたことあるような、ないような」

「アタシも何か引っかかるっすけど……思い出せないっすね」

 

 ローズも腕を組みながら首を傾ける。アレックスには全く心当たりがなかったが、2人がそう言うなら今回のチームで何か噂になっているような人物なのかもしれない。

 

 やがてチャーリーが足を止めた。

 

「こ、ここです……」

 

 目の前にあったのはいかにも冒険者が集まりそうな酒場だった。扉の隙間から喧騒が溢れ出しており、入る前から中の賑やかさが伝わってくる。アレックスは一つ深呼吸をして、扉を押し開けた。

 

 途端に視線が集まってくる。

 

(やっぱりかよ)

 

 昼間の一件が尾を引いているのか、アレックスの顔を見た冒険者たちが次々と肘で隣の人間を突いて耳打ちを始める。「あいつだ」「剣と結婚してる」「本物か」という声が、さざ波のように広がっていく。

 

「……気まずい」

「まぁ自業自得っすけど」

「マルティアナのせいだし……!」

『また乗っ取りましょうか?』

「勘弁してください」

「……なんて言われているか、容易に想像出来るっすね……」

 

 ローズに可哀想なものを見るような視線を向けられながらも、アレックスが奥へと進もうとした、その時だった。

 

「よーく来たわね!! 聖剣の担い手!!!」

 

 酒場の奥から、よく通る声が飛んできてアレックスは反射的に声のした方へ視線を向けた。

 

「逃げなかった事は褒めてあげるわ!!」

 

 テーブルの上に片足を乗せて仁王立ちしている人物がいた。オレンジ色の髪を左右のツインテールにまとめた、小柄な女の子だ。背丈はアレックスより頭一つ分は低いが、放っている気迫はそんな体格差を全く感じさせない。こちらを睨む目は鋭く、口元には八重歯がのぞく獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

「夜分遅くに申し訳ございません……いや、本当に」

 

 その隣では眼鏡をかけた女の子が、申し訳なさそうな顔でこちらに頭を下げていた。

 

『随分とまぁ小生意気そうで……でもそのままで居てちょうだいね、私のライバルはいらないから』

(マルティアナは何を言ってるんだ……)

 

 もはや呪文にしか聞こえない。

 アレックスは深くは触らないでおこうと堅く誓った。

 

「私の名前はミミ! A級冒険者の中でも若手最有望株よ!」

 

 ミミがテーブルの上で胸を張って高らかに名乗りを上げた瞬間、隣の眼鏡の少女がさっと手を掲げた。

 

 ぶわっ。

 

 色とりどりの紙吹雪が宙に舞った。どこから取り出したのか、明らかに事前に用意していたとしか思えない量だった。ひらひらと舞い落ちる紙片の中で、ミミは満足げに仁王立ちしている。

 

「……」

 

 アレックスは紙吹雪を浴びるミミをしばらく眺めてから、おずおずと口を開いた。

 

「あのー……何の最有望株なんでしょうか」

「英雄に決まってるじゃないの!」

 

 ダンッと机の上に足を乗っけてミミは高らかに宣言する。

 

「いつか世界に名を轟かせる大英雄! それがこのミミ様なんだから! あんたみたいなぽっと出とは格が違うのよ!」

 

 ふんぞり返るミミを前に、アレックスは反応に困った。自信があるのは伝わってくるが、根拠の部分がさっぱり見えてこない。どう返せばいいのか考えあぐねていると、後ろにいたローズが急に声を上げた。

 

「あ! まさかあんた、あの壊し屋ミミ!?」

「何だそれ」

 

 アレックスが聞き返すと、ローズは少し興奮した様子で続けた。

 

「結構有名な若手冒険者っすよ。その小さい体に似合わず、デカいハンマー振り回して魔獣やモンスターを豪快に粉砕するって話で……それで壊し屋なんて異名がついたって聞いたっす」

「へえ……」

 

 アレックスは思わずミミを見直した。あの小柄な体でハンマーを振り回して魔獣を倒すというのは、確かに想像すると凄まじい。生意気な態度はともかく、実力は本物なのかもしれない。少しだけ感心しかけた、その時だった。

 

「だけど……」

 

 レイナがぽつりと呟いた。

 

「仕事が荒っぽすぎて、毎回周りの建物とか壊しちゃうんだよね。それで賠償金がかさんで、借金が中々えぐいことになってるって聞いたなー」

 

 ぴしり、とミミの動きが止まった。

 

「…………」

 

 あれだけ威勢のよかった少女が、急に石像のように固まる。段々と額に汗が滲み始め、ひらひらと舞う紙吹雪が彼女の額にピタリと張り付く。

 

「あ、あれは……その、不可抗力というか……魔獣が頑丈なのが悪いんであって……」

「あ、やっぱり当たってたんすね」

「ち、違う! ちょっとした事故というか……!」

 

 ミミが必死に手を振って弁明しようとすると紙吹雪をまだ撒き続けていた眼鏡の少女が、にこやかに口を開いた。

 

「本当は借金返済のために、この任務に来てます」

「フェル〜〜〜!!!」

 

 ミミが顔を真っ赤にして絶叫した。

 

「な、何バラしてんのよ! 言うな〜〜!! このアホタレ!!」

 

 テーブルから飛び降りたミミが、フェルと呼ばれた少女の腕やら肩やらをポカポカと叩き始める。だが小柄なミミの拳ではろくにダメージもないようで、フェルは動じる様子もなく叩かれ続けていた。

 

 それどころか――

 

「ああ……ミミさんの曇らせ顔は、いつ見ても最高ですね」

 

 フェルは恍惚とした表情を浮かべていた。眼鏡の奥の瞳がうっとりと細まり、口元からは涎が一筋垂れている。叩かれて赤面しながら必死に弁明するミミの姿を、心の底から愛おしそうに見つめていた。

 

(何か出会うやつの変態率高いのは何)

「ふへへ……もっと困っていいんですよ、ミミさん。私はそういうミミさんが一番好きなので」

「気持ち悪いこと言ってんじゃないわよ!!」

 

 ミミの叩く勢いが増したが、フェルの笑みはむしろ深まっていく。完全に逆効果だった。

 

「…………」

 

 アレックスはそれを見て、生乾きした洗濯物を嗅いだ時みたいな顔をしていた。

 

(うわぁ……)

 

 壇上で剣を妻だと宣言した自分が言えた義理ではないかもしれないが、それでもドン引きせざるを得ない光景だった。少なくとも自分の周りには、ここまで業の深そうな人間はいなかった気がする。いや、マルティアナがいるか、と思い直して余計に気が滅入った。

 

『……あら、あの眼鏡の子。なかなか良い趣味してるじゃない』

(同類だもんな)

 

 アレックスはそっと視線を逸らした。隣ではローズが「なんか濃いのが来たっすね……」と苦笑し、リリアは「ボクたちと良い勝負かも」と妙に納得した顔をしていた。レイナだけが「賠償金、他人事じゃないなあ」と何故かしみじみ呟いていた。

 

「それで一体何の用で呼び出ししたんすか?」

 

 話が進まないと判断したローズが聞くと、ポカポカ叩いていたミミは「はっ!」とした顔をしてから、ズビシィと指差した。

 

「聖剣の担い手の実力を見るためよ!」

「え、僕!?」

「そうよ! あんたどうせ剣に頼りっきりなんでしょ」

「むっ」

 

 わかりやす過ぎる挑発にアレックスはムキになる。

 

「私とタイマン張りなぁ!!」

 

 本来なら馬鹿正直に乗ることはしたくない。

 だが今彼らがいるのは酒場――周りには冒険者たちがいる。

 

「おっ、担い手と壊し屋のタイマンか!」

「こりゃ見ものだぞ!」

「おい、どっちに賭ける!?」

「俺は壊し屋に銀貨三枚だ!」

 

 ミミの宣言を聞いた周囲の冒険者たちが、一気に盛り上がり始めた。あちこちで賭けが始まり、酒杯を片手にした男たちがニヤニヤとこちらを眺めている。完全に見世物だった。

 

(うわ……完全に逃げ場がない)

 

 アレックスは内心で天を仰いだ。ここで尻込みすれば、剣に頼るだけの臆病者という印象が決定的になる。昼間の一件で地に落ちた評価を、さらに掘り下げることになりかねない。

 

 ナフタの言葉が頭をよぎる。

 わからせろ――と。

 

「仕方ない……」

 

 アレックスは一度深呼吸をしてから、まっすぐミミを見据えた。

 

「いいとも、僕自身の実力だってこと、思い知らせてやる」

「言うじゃない!」

 

 ミミが獰猛に笑い、お互いに睨み合う。

 この状況を見ていたマルティアナは妙に黙りこくったまま、考えていた。

 

(これって……あまり私にとってよろしくない事になるのでは……)

 

 

 クロスフォード総本部の一室では、まだ灯りが灯っていた。

 

 昼間の大規模な顔合わせとは別に、各部隊を統括する立場の冒険者たちが集まり、今後の方針について詰めた話し合いが続けられていた。広い円卓を囲むのは、いずれもギルド内で名の知れた実力者ばかりだ。その上座に、エルドレインは静かに座っていた。

 

「魔獣の発生地点だが、やはり山岳地帯に集中している。特に最近、環境が変わったという報告が複数の地域から上がっている」

「環境が変わった、とは?」

「気候、植生、地形……本来あり得ない速度で変質しているらしい。原因は不明だ」

 

 地図を囲んで、冒険者たちが意見を交わす。エルドレインは腕を組んだまま、それぞれの発言に静かに耳を傾けていた。口数は多くないが、その視線が円卓を一巡するだけで、場の空気が引き締まる。

 

 そんな最中――部屋の扉が勢いよく開いた。

 

「エルドレイン様!!」

 

 飛び込んできたのは、エルドレインの部下である若い冒険者だった。息を切らし、顔を紅潮させている。明らかに何かを急いで伝えに来た様子だ。

 

「おい、今は会議中だぞ」

 

 円卓の1人が低い声で叱責した。

 

「全員、重要な話をしている。緊急でなければ後にしろ」

「す、すみません……! ですが……」

 

 部下は一度言葉を詰まらせてから、思い切ったように声を張った。

 

「聖剣の担い手と、壊し屋ミミが……決闘をするとの報告が!」

 

 円卓に微妙な空気が流れた。

 まだやらかすんかい――そんな目をしていた。

 

「……決闘?」

「はい、酒場で。すでにかなりの数の冒険者が集まって、騒ぎになっているようで……」

 

 報告を聞いた幹部たちが、それぞれに渋い顔をした。

 

「全く……こんな時に問題を起こしおって」

「壊し屋ミミか……噂は聞いている。腕は確かだが、とにかく素行が荒い」

「聖剣の担い手も担い手だ。昼間あれだけ目立っておいて、今度は決闘騒ぎとは。若いというのも考えものだな」

 

 口々に苦言が漏れるのも無理もなかった。これから世界規模の脅威に立ち向かおうという矢先に、内輪で揉め事を起こされては士気に関わる。組織としての結束が問われる場面で、若手2人が衆人環視の中で殴り合いを始めようとしているのだから。

 

「すぐに止めさせるべきでしょう。エルドレイン様、私が向かいます」

 

 一人の幹部がそう言って腰を上げかけた、その時だった。

 

「いや」

 

 エルドレインが、静かに口を開いた。

 

「エルドレイン様……?」

 

 短い一言だったが、それだけで腰を上げかけた幹部の動きが止まる。エルドレインは少し考えるような素振りを見せてから、ゆっくりと立ち上がった。

 

「私が行く」

「エルドレイン様自らですか?」

「ああ」

 

 エルドレインは背中のバスターソードを担ぎ直しながら、淡々と続けた。

 

「他の者が便乗して暴れ出さないようにはしてほしい。酒場には血の気の多い連中も多いだろうからな。だが――」

 

 一度言葉を切る。

 

「二人の戦いは、止めるな」

 

 報告に来た部下が、思わず聞き返した。

 

「よ、よろしいので? 止めなくて……。下手をすれば、どちらかが大怪我を……」

「構わない」

 

 エルドレインの返答に迷いはなかった。

 

「むしろ、この戦いは皆に見せた方がいいだろう」

 

 その言葉に幹部たちが怪訝そうな顔をして問うた。

 

「見せた方がいい、とは……どういう意味でしょうか」

「考えてもみろ」

 

 エルドレインは円卓を見回した。

 

「あの担い手は、昼間あんな調子だっただろう。剣に頼っているだけの男だと、すでに大半の者がそう思っている。私の部隊に入れたことに、内心で不満を抱いている者も少なくないはずだ」

 

 返答はなかった。図星を突かれたのか、何人かが気まずそうに視線を逸らす。ユピテルスの鎮圧にはルカもいたという話だ。彼の力が主たるものと考える冒険者も少なくなかった。

 

「これから我々は、命を預け合って戦うことになる。そんな状況で、仲間の実力を疑ったまま戦場に出るのは危険だ。互いを信用できない部隊ほど脆いものはない」

 

 エルドレインは扉の方へ歩き出しながら、続けた。

 

「ならば、ここではっきりさせた方がいい。あの担い手が、剣の力に頼るだけの男なのか。それとも……自分の足で立てる戦士なのか」

 

 扉の前で、エルドレインは一度だけ振り返った。

 

「それを見極める良い機会だ。皆の目の前で、な」

 

 その表情は相変わらずクールで、何を考えているのか読み取りにくい。しかしその目の奥には、担い手という存在に対する、確かな興味の色があった。

 

(それに……私自身も気になる、伝説の聖剣の力がどんなものか……な)

 

 

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