うずまきナルトの支配物語   作:ガンオタ

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非常に遅くなり誠に申し訳ございません。


第5話

第5話 心に灯った明かり

 

  図書室の鍵を職員室に返したあと、ナルトはヒナタと共に街灯の灯りでほんのり照らされた通りを歩いていた。

 夕暮れ時。通りは、急いで家に帰ろうと走る大勢の子供たちや仕事終わりに仲間と一杯飲もうと肩を組んだ忍達などでとても騒々しかった。

 老若男女が発する喜怒哀楽の声、通りに並ぶ露店や居酒屋から流れ出る香辛料の香りと調理油の匂い、ムッとするような熱気と臭気そして喧騒に包まれ通りを歩く2人だが、その様子はどことなくよそよそしく、互いに気を遣っているようだった。

 

「(はぁ……。アカデミー出てからヒナタと何も喋ってないなぁ……)」

 

 自分から誘っておきながらヒナタが喜ぶような会話が全くできていない自分の不甲斐なさに呆れるナルト。

 前世で自分が好きだった人とこうして互いに並んで歩いていることに喜ぶべきなのだが、どうしても喜びよりも緊張の方が大きかった。

 ヒナタのことが気になり、ちらっと横目で見てみるが、俯いていて顔がよく見えない。

 恥ずかしさを隠すようにナルトは頬をポリポリとかく。

 このまま一言も交わすことなくヒナトと別れるのかと不安になり、ナルトはどうにか会話のきっかけを始めようと色々思案する。しかし、意外なところからそのきっかけは訪れた。

 

「おっ! ナルトじゃねぇか!!」

 

「え?」

 

 突然聞こえた野太い男の声に驚くナルトとヒナタ。 

 2人が視線を向けると、そこには『ラーメン一楽』と書かれた暖簾を持った店主のテウチが立っていた。

 

「あ、テウチさん、どうも」

 

 テウチの姿を見たナルトはそう言ってぺこりと頭を下げた。

 暖簾を掛け終えたテウチが2人の前にやってくる。

 

「今、帰りか?」

 

「はい」

 

「卒業試験が近いから仕方ねぇだろうが。あんまり根を詰めるなよ」

 

「アハハハ、そこはうまいことやってるので、ご心配なく」

 

 ニコニコと愛想笑いを浮かべながらナルトはテウチの言葉を聞く。

 

「なら、いいんだがな……ん?」

 

 ナルトの言葉を聞いたテウチはそこで隣に立つヒナタに目を向ける。

 すると、テウチは何か合点がいったのか、「ほう」と感心したかのよう顎に手を当てた。

 

「なるほどなぁ〜、ナルトもそういう年頃か」

 

 ニヤニヤとまるで面白いモノを見るかのよう顎をさすりながらテウチはそう言った。

 テウチの言葉を聞いたナルトは気恥ずかしさそうに頬をかき、ヒナタは頬を紅く染める。

 

「いやいや、その、ヒナタとは偶然図書室で……えっと、それで一緒に勉強して、時間も時間だったので一緒に帰ってるんです。……帰る方角も同じですし……アハハ」

 

「ええっと、その……」

 

 しどろもどろになりながら答える年若い少年少女の姿を見て、テウチは笑みを浮かべる。

 

「ハッハッハッ! 最近めっきりイタズラをしなくなったと思ったら、まさか彼女が出来てたとはな。そりゃ、変わるモンだ」

 

「いや、だから……」

 

「……」

 

 ナルトとヒナタの姿を見て、恋人同士だと思ったテウチは豪快に笑う。

 ナルトは恥ずかしさのあまり頭をかき、ヒナタに至って限界を超えたのか両手で顔を覆っている。

 

「なぁにそう恥ずかしがるこったねぇ。今度嬢ちゃんと一緒に食いに来い。サービスしてやっからな!」

 

 と、ナルトの頭をワシワシと撫でましながらテウチは言うと、店へと戻っていた。

 

「たく、テウチさんったら……」

 

「フフフ、一楽の店主さんと仲良いんだねぇ、ナルトくん……」

 

 乱れた髪を直すナルトに、笑みを浮かべながらヒナタはそう言った。

 

「うん、暇な時よく皿洗いとか買い出しの手伝いをしてる。で、そのお返しにまかない食べさてもらったり、余った食材とかを貰ってるんだ。まあ、バイトみたいなモノだね」

 

「へぇ……」

 

 自分がまだ知らないナルトの一面を知り、ヒナタは小さく驚きの声を上げる。

 原作では、海野イルカと同じく『ラーメン一楽』の店主であるテウチは木の葉隠れの里での数少ないナルトの理解者であり支援者であった。

 12年が経過しているとはいえ、いまだに里の人々の脳裏には『九尾事件』の記憶が鮮明に残っている。そして多くの人間が九尾の人柱力であるナルトに対して憎しみや不安を抱いている。そんな中でテウチだけがナルトに対して九尾の人柱力としてではなく、1人の木の葉の里の人間として接していた。

 

「(三代目が持ってくる生活費だけじゃきついしね……)」

 

 毎月三代目火影が生活費を持ってくるが、家賃や電気ガスなどの生活費を払うと手元に残る額は12歳という食べ盛りのナルトからすればどうしても足りない。

 そこでナルトが考えたのが、『ラーメン一楽』でのバイトであった。

 ナルトは、初めて『ラーメン一楽』にバイトを申し出たことを思い浮かべる。

 いつものようにラーメンを食し、カウンターの奥で満面の笑みを浮かべるテウチに「あの……皿洗いとか、掃除とかやるんでどうか働かせてください」と頭を下げた。

 ナルトの申し出に驚くテウチだったが、ナルトの目をしばし見据えたあと二つ返事でその申し出を受け入れた。テウチとしても自分と娘では手が足りないことがあったので、ナルトの申し出はまさに渡りに船であった

 ただ、報酬は現金ではなく、まかないや余りモノといった現物支給だったが、それでもナルトにとっては大助かりであった。

 

「(一楽以外にバイトできるところとかないしね)」

 

 里のほとんどが敵愾心を抱く中、人柱力であるナルトを雇う店など皆無だ。

 テウチは気にするなと言っていた、自分が働くことで一楽が不利益を被ること恐れ、ナルトは厨房には立たず、客から見えない裏側で皿洗いやゴミの分別などをやっている。

 

「ナルトくん?」

 

 一楽でのバイトを思い出していたナルトだったが、不思議そうな声で問いかけるヒナタの姿を見て我にかえる。

 

「え、ああ、ごめんごめん。それじゃ、行こうか」

 

「うん」

 

 ナルトの言葉を聞いたヒナタは笑みを浮かべ頷く。

 再び通りを歩き始める2人。

 しばらく歩いたところで、ナルトが唐突に口を開いた。

 

「最近調子はどう? ヒナタ」

 

「え?」

 

 ナルトに問いかけられたヒナタは足を止めた。

 振り返ったナルトは顔に笑みを浮かべる。

 

「なんかぶっきらぼうな訊きかたしてごめんね。でも、ここ数日ヒナタ元気なかったからさ」

 

「……」

 

 ナルトの言葉を聞いたヒナタは胸元の前で手をキュッと握り締める。

 

「うまいアドバイスできないかもしれないけど……ほら、話すことで気持ちが楽になることもあるかもしれないじゃん」

 

 ヒナタの前に来たナルトは身を屈め、俯いているヒナタを見つめる。

 

「ん?」

 

 優しい笑みを浮かべながら首を傾げるナルト。

 恋慕を抱く少年の顔がすぐ目の前に来て、ヒナタはゴクリと唾を飲む。

 数刻の逡巡のあと、ようやく決心がついたのか、ヒナタはゆっくりと口を開いた。そして、この数日の間自分の身に起きたことをナルトに語った。

 

 

***

 

「そっか。妹さんとの試合で負けちゃったのか……」

 

「うん……」

 

 通りの端に置いてあったベンチに並んで座り、ヒナタの話を聞いたナルトは小さくそう呟いた。

 

「5つも下の妹に負ける者など日向にはいらんって……父様に言われちゃった」

 

 膝の上に置いていた拳を握り締め、唇を震わせながらヒナタはそう言った。

 無様に地面に横たわりながら顔を上げたヒナタが見たモノ。それはあまりにも非常で残酷な光景だった。

 

 まさかの出来事に驚き固まる妹

 憐れみの感情を向ける一族の人間たち。

 

 そして、失望と落胆の感情が籠った瞳で自分を見下ろす父。

 

 今でも鮮明にあの時の光景が脳裏に蘇る。

 

「私ね……一族と……父様に認められたくて……頑張ってるんだけど……っ……うっ……どうしてもうまくできなくて……同じ失敗を何度も繰り返してばかり……」

 

 嗚咽混じりに、涙まじりに心のうちを吐き出すヒナタ。

 

「……」

 

 ナルトは何も言わずただ黙って耳を傾ける。

 

「宗家の長女なのに……っ……うっ……強くならないといけないのに、弱いまんまで……泣き虫で……」

 

 今まで心の中で押し殺してきた不安や怒り、悲しみや憎しみといった感情が堰を切ったようヒナタの口から溢れ出る。

 

「ナルトくん……私には忍びの才能ないんだよ……」

 

 ヒナタは自分の手を見つめる。

 日々の厳しい修練でマメや切り傷でボロボロになった掌。

 日向宗家の長女として生まれたのに、その才に見放された出来損ない。

 いっそ女ではなく、男として生まれていればこんな辛く苦しい思いをせず済んだのではないか。

 どうして自分は生まれてきたんだろう。

 俯く視界にふと黄色い髪と、蒼い瞳が入り込む。

 

「努力は報われるってよく聞くけど、この混沌とした世界じゃはそうはいかない。誰しも迷い、間違い、回り道をする。でもねえ、ヒナタ」

 

「え?」

 

「それでいいんだよ。そうやって人は人になるんだ。だからね、誰よりも悩み苦しみ、迷い苦しみ、痛みに苦しんできたヒナタはきっと誰よりも強く、そして誰よりも優しい心を持つ人なんだ」

 

「この傷だらけの掌がその証拠だよ」

 

 ナルトはそう言うと、ヒナタの冷たく傷だらけの掌を両手で優しく握り、右目の蒼い瞳でヒナタの雪のように白い瞳をまっすぐに見つめる。

 

「ヒナタは強い。僕が保証する」

 

「ナルトくん……」

 

 優しい笑みを浮かべながらナルトはそう言った。

 その言葉を聞いたヒナタは、ナルトの手に包まれ自身の掌をの額にぴたりとくっつけた。

 まるで、冷たく冷え切った身体を熱で溶かそうとするかのように。

 まるで、吹雪の中でぽっと灯った炎を消すまいとするかのように。

 まるで、救いを求める放浪者のように。




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