古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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ここから第3話後編になります。
どうぞ最後まで、お楽しみ下さい。


後編

その頃 博物館地下階層

 

 地下ではオウガとマルムが一緒にサイカニアを捜索していた。

 レクシィは単独で少し前を歩いていて、アメジストとパラパラは各々の主人の横について歩いている。

 

「それにしても、流石は大英博物館…凄まじい規模と収蔵数だね。

まあでもここの収蔵品は、昔のイギリスが世界中に持っていた植民地からかき集めてきたものが多いんだ。

だから「盗品博物館」なんてあだ名で呼ぶ人も一定数いるんだよ」

 

「学校でも聞いたわね、その話。

元の国が返還を求めてるのに未だに聞き入れてないって社会の先生も言ってたわ」

 

「そうだね。でも、この大英博物館に集められたからこそ保存状態を良いままに保つことができた、とも考えられるから…今を生きる俺達がどっちがいい悪いを判断することは難しいかもしれないね」

 

「そうね…。強奪同然で持ってきたものを展示して知らんぷりも許せないけど、そうしなかったらアタシ達がこうして見ることができなかったかもしれないし…。

難しい問題ね…」

 

「歴史的価値のあるものは一度紛失するともう取り戻すことができないから、このあたりの問題は難しいよね。

実際ティラノサウルス・スーが発見された時も発掘したブラックヒルズ社と土地の権利者の間で…」

 

「あっ! パラパラ! 何してるの!?」

 

 オウガの説明に覆いかぶさるようにマルムが大声を張り上げる。

 見るとパラパラが博物館に飾られた観葉植物を食べてしまっていたのだ。

 隣を見ると、いつの間にやらアメジストはその倍は食べている。

 凄まじい食い意地である。

 

「おいおい…ダメじゃないかアメジスト…。

とは言え食べちゃったものはどうしようもないし、あとでここの職員さんに謝るんだぞ」

 

 オウガが軽く叱ると、アメジストは少し項垂れてしまった。

 

「そんなことしたらダメよ、パラパラ!」

 

 マルムもあまり大きな声ではなかったものの、パラパラを叱る。

 するとパラパラは植木鉢の陰に隠れ、弱々しい声を上げた。明らかに怯えている。

 その姿に、オウガは強烈な既視感を覚えた。

 

(今のパラパラの様子…レックスに追い回されてた時のエースとそっくりだ…。

もしかしてエースは…)

 

 マルムもどうやら既視感に気付いたようだった。

 

「ねぇ、オウガ…。なんかパラパラを見てると、エースの目を思い出すの。アタシの見間違いかしら…?」

 

「いや、見間違いじゃないと思う。俺が考えるにエースは…」

 

 そうやってオウガとマルムが相談している様を陰からこっそりと窺っている2人組…ノラッティ〜とエドがいた。

 

「いたッス。…でも本当にやるんスか?

女の恐竜は弱そうッスけど、男の方は2匹もいるッスよ…?」

 

「上手くやれれば一気に恐竜をゲットできるザンス。

それにこの先は行き止まりなことは確認済み。こんなチャンスないザンス…!」

 

 そう呟いてノラッティ〜はアクトホルダーにスピノのカードを通した。

 

「湧き上がれ…スピノサウルス! ザンス!」

 

グァギュオオオオッ!!

 

 成体化したスピノが降り立ち、オウガとマルム達へと襲いかかった!

 

「スピノサウルス!? ってことはアクト団ね!」

 

「! まずいっ! レクシィ!」

 

 スピノの向かう先にはレクシィがいた。このままでは踏み潰されてしまう!

 オウガは力の限り走り、大きく跳躍してレクシィを抱え込んだ。勢い余って床をゴロゴロと転がり、壁に背中からぶつかってようやく止まった。

 アメジストが心配そうな様子で駆け寄ってくる。オウガは背中をしたたかに打ったものの、幸いにも怪我はないようだ。

 

「いてて…大丈夫だったか? レクシィ…。

アメジストも…心配かけたな…」

 

 2匹に言葉をかけながらオウガが起き上がる。周りを見渡すが、そこにはもうマルムもスピノもいなかった。

 マルムの悲鳴と、スピノの足音だけが暗い館内に響いていた。

 

「マルムと離れちゃったな…。スピノサウルスを相手取るのにパラパラだけだと力不足かもしれないし、早く合流しないと…」

 

 オウガは恐らく彼らが進んでいったと思われる道を通っていくものの、やがて防火シャッターに突き当たった。

 動かされたのはごく最近のようだ。恐らくアクト団が起動してマルムの逃げ道を塞いだのだろう。

 

「まずいぞ…。完全に分断されちゃったよ。

どこか別の道からこの先へ行かないと…マルムが…」

 

 オウガがあちこちを見渡している間、チビ恐竜たちはすぐそばでその様子を見ていたが…ふと、レクシィが頭をもたげ、小さく唸り声を上げた。

 

 

その頃…

 

 マルムはオウガとはぐれ、スピノから逃げ続けたものの、行き止まりまで追い込まれてしまった。

 非常口のドアは開く気配がなく、完全に追い詰められた状況である。

 すぐ前にはスピノが立ちはだかっており、ここから逃がすつもりはなさそうだ。

 

「…いいわ! やってやろうじゃない!」

 

 マルムはそう叫ぶとパラパラをカードへ戻し、ディノホルダーにスキャンした。

 

「ディノスラーッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス!」

 

キュオオオオオン!

 

 成体化したパラサウロロフスが現れ、スピノと対峙する。

 そこへようやくノラッティ〜とエドが追い付いてきた。

 

「もう逃げられないッスよー?」

 

「この恐竜でもウサラパ様は喜んでくれるザンス!」

 

 マルムは気丈な態度を見せてはいたが、内心焦っていた。

 草食恐竜のパラサウロロフスと大型肉食恐竜のスピノサウルス。パワーではスピノサウルスの圧勝なのは間違いない。

 かと言って今パラパラが使える技カードは1枚だけ。それも補助技のため攻撃には使えないのだ。

 パワーでも勝てない。逆転の技カードもない。

 どう考えても、勝てるビジョンが思い浮かばなかった。

 

「リュウター! レックスー! オウガー!」

 

 声の限りに叫び助けを呼んでみたものの、何も応答は返ってこなかった。

 

「フフン、無駄ッスよ!」

 

「ここはこの博物館の地下階層のさらに奥深く…。助けを呼んだところで絶対に聞こえないザンス!」

 

 アクト団の言葉にマルムも諦めかけたその時…。

 パラパラが自身の頭部を振動させ、重低音を発生させ始めた。

 

「あん? 何ザンシょ、この音は」

 

「…パラパラ?」

 

 重低音ではあるものの決して不快ではない、そんな不思議な音は、博物館中にこだましていく…。

 

 

 その頃、オウガは必死にシャッターの先へ行ける道を探している最中だった。

 

「くそっ、ここもダメか…。となるとさっきの分岐まで戻って…」

 

 オウガがそう呟きつつ考え込んでいた時。

 どこからともなく重低音が聞こえてくる。

 その音にオウガも気付いた瞬間、レクシィが駆け出すと廊下の先で立ち止まり、小さく唸り声を上げた。

 

「レクシィ…もしかして今の音のところへ案内してくれるのか?」

 

 レクシィは首を縦にも横にもふることもなかった。ただ、その視線で「付いて来い」と語っているかのようだった。

 

「…分かった。レクシィ! 案内してくれ!」

 

 その言葉とほぼ同時に駆け出したレクシィを、オウガとアメジストは追いかけ始めたのだった。

 

 

 その頃、リュウタやレックスもパラパラの重低音を耳にし、そちらへ向かおうとしていた。

 その道中、レックスは突然エースに背中から飛びかかられ、倒されてしまった。

 いい加減にしろ、と文句の一つも言いたくなり振り返った時、先ほどまで自分がいた場所がティラノの巨大な足で踏み躙られていた。

 そして自分を突き飛ばしたエースは、小さな体にも関わらずティラノを威嚇している。

 

「エース…お前もしかして…僕を助けてくれたのか…?」

 

 先ほどまで自分から逃げていて、嫌われたのかと思っていたのに今度は命の危機を助けてくれたエースの真意を測りかねていると、そこへウサラパがやって来た。

 何故か体にはミイラの包帯が巻きつけられている。

 

「あっ! …ミイラ、オバさん…?」

 

「だぁれがミイラオバさんだゴルルアっ!?

…まあこれはいい機会ね。サイカニアより前にあなたのカルノタウルスをいただいていくことにするわ!

行きなさいティラノちゃん!」

 

 ウサラパの指示に応えるかのように吠えるティラノ。

 レックスも覚悟を決め、エースをカードへ戻してからもう一度ディノホルダーでスキャンした。

 

「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

グォォォォォォン!!

 

 レックスの前口上と共にエースが成体化し、ティラノと向き合った。

 

「オーッホッホッホッホ! 1人で、しかもカルノタウルスでティラノに勝てると思っているのかしら?」

 

 ウサラパの言う通り真正面からのパワー勝負では敵わないと考えたエースは、素早い動きでティラノの撹乱を図った。

 素早く周囲を回り、時にはティラノの股下をくぐって混乱させようとしたのだ。

 しかししびれを切らしたティラノの痛烈な尻尾の一撃を受け、壁に強く叩きつけられてしまった。

 

「あぁっ、エース!」

 

 レックスが心配そうな声をかける。ダメージは負ったものの、エースはまだ戦えそうだ。

 …そんな中、そこへ飛び込んできた人影があった。

 古代博士だ。それも沢山の野菜や草が詰まったカゴを抱えている。

 

「おっと! 現れたな! アクト団のティラノ!」

 

「新手ね…。でも何かしらそれは?

残念ながらティラノちゃんは肉食恐竜。そんな草なんかで惑わされないわよーっだ!」

 

「これは近くのロンドン動物園から貰ってきたカバの餌だ!サイカニアを誘き出すためのな!」

 

「ホーッホッホッホ! なんですってぇ?

アタシ達のためにサイカニアを誘き出すことまでしてくれるなんて、アンタは本当におカバ…おっと間違い、おバカさんねぇ!」

 

 

 一方その頃、地下の袋小路ではパラパラとスピノの戦いが始まっていた。

 スピノの強烈な尻尾攻撃を諸に受けてしまったパラパラだが、すかさず体勢を立て直し、お返しと言わんばかりにスピノの横腹に突進し、突き転がす。

 

「パラサウロロフスにしては随分とガッツがあるやつッスね…。

そうだノラッティ〜! ソーノイダ様から貰ってきたあの技カードを使うッス!」

 

「そうだったザンス! 食らうザンス! 『激流封印(ショックウェーブ)』!」

 

 ノラッティ〜がアクトホルダーに技カードを通すと、スピノの周囲を水が渦巻き始め、やがて渦潮のようになっていく。続けてスピノが咆哮を上げると水がパラパラの方へと流れて包み込み、再び渦を巻き始めた。

 激流の中で揉まれ、パラパラが苦痛の声を上げる。

 

「アンタ達も技カードを持ってるのね…」

 

「当たり前ザンス! 技カードが使えるのは自分たちだけだと思わないことザンス!」

 

 このままでは遅かれ早かれパラパラは倒されてしまう。

 だがマルム1人ではパラパラを助けることはできない。

 もはやどうすることもできないと思われた…その時だった。

 

 廊下の向こう側から声が聞こえてきたのだ。

 

燃え上がれ!ティラノサウルス・レックス!

揺るがせ!ステゴサウルス!

 

 その声と共に成体の姿で現れたレクシィとアメジストがエドとノラッティ〜を押しのけ、スピノを突き飛ばした。

 スピノの体勢が崩れたことで技も解け、パラパラはようやくショックウェーブから解放される。

 

「お…お前はさっきのガキンチョ!」

 

「防火シャッターを閉めたはずなのに何でここまで来れたザンスか!?」

 

 そこへ駆けつけてきたのは、他ならぬオウガだったのだ。

 

「おじさん達は知らないみたいだから教えてあげるよ。

ティラノサウルスはよく嗅覚の鋭さが取り上げられるけど、それ以外の視覚や聴覚もかなり優秀だったと言われているんだ。

特に聴覚は重低音を聞き取るのに適していた。これは恐らく獲物の鳥脚類が会話の際に発する鳴き声を聞き取りやすいように適応進化したものだと個人的には考察しているんだけど…そのお陰でレクシィがパラパラの声を聞き取って、ここまで辿り着ける道を見つけてくれたって訳さ!」

 

「オウガ…!」

 

「ぐっ…だから何ッスか! ここまで辿り着いたところで、おれ達に倒されればそこまでッス!」

 

「ガキンチョの癖に調子に乗りすぎザンス!

スピノ! あいつをおしおきしてやるザンスぅぅ!」

 

 スピノが起き上がり、オウガに襲いかかろうとする…が、その前にアメジストが立ちふさがった。

 すかさずオウガがディノラウザーに技カードをスキャンしようとする。

 

「アメジスト! 君の力をアクト団に見せてやるんだ!

土竜(クエイク)』…!」

 

 アメジストの技を発動させようとした、その時だった。

 レクシィが猛然とスピノに向かって駆け出し、首筋に噛みつくと引き倒したのだ。

 そのまま引きずったかと思うと、横倒しになったスピノの腹に片足を乗せ、首筋に噛みついたまま強く引っ張り始めた…。

 

「レクシィちゃん…もしかして、スピノにトドメを刺そうとしてるの…?」

 

 マルムの見立ては正しかった。

 レクシィは明らかに殺意を持って、スピノの首を引っ張り続けている…。このままでは、スピノの頭部が千切り取られてしまう!

 筋組織がブチブチと千切れる音と、スピノの弱々しい悲鳴が不気味に響いていた。

 

「やめてくれ! レクシィ! ただ戦うだけならまだしも殺すことはないだろ! 口を離してくれ!」

 

 オウガが叫ぶと、レクシィはいらただしげにオウガを睨み…スピノの腹に乗せていた足を外すと、力の限りスピノを壁に叩きつけた。

 スピノの体から力が抜け、カードへと戻っていく…。

 そのカードを素早くノラッティ〜が回収すると、エドと共に脱兎の如くその場から逃げ出した。

 

「さ、さっさとここから逃げるザンス〜!」

 

「このままじゃオレ達もあのティラノに食い殺されちまうッス〜!」

 

 その場には困惑した様子のオウガやマルム、アメジスト達と、ただ1頭まだ暴れ足りない様子のレクシィが残された。

 

「なぁレクシィ…何もあそこまですることはなかっただろ…?

もうスピノに戦うだけの気力は残ってなかったわけだし…」

 

 オウガがそう話しかけたものの、レクシィは何も言わずにカードへと戻っていった。

 困惑した様子のオウガに、アメジストとマルムが近づいていく。

 

「オウガ…どうしてレクシィちゃんは、あのスピノをあそこまで痛めつけてたのかしら?」

 

「俺にも分からない…。

一緒にやっていくからにはお互いに分かっていきたいと思っていたのに…俺、レクシィが分からないよ…」

 

「オウガ…そんなに思い詰めないで…。

アナタとレクシィちゃん、アメジストちゃんのお陰でアタシもパラパラも助かったんだから…」

 

 マルムの言葉に、オウガも顔を上げ…あることに気がついた。

 

「…あれ? もうスピノは倒されてバトルは終わったはずなのに、時空の歪みが直ってない…」

 

「もしかすると、リュウタかレックスがオバさんと戦ってるのかも! アタシ達も急いで合流しましょう!」

 

 

その頃 エースとティラノが戦っている場所では…

 

「あぁん!? また誰かがアタシのことオバさん呼ばわりしたわね!?」

 

 ウサラパの注意がそちらへ向いた隙に、レックスは技カードをディノホルダーにスキャンした。

 

「『疾風無敵(サイクロン)』!」

 

 たちまちエースの周囲に竜巻が巻き起こり、それを纏ってティラノへと突進していく。

 完全に意表を突いた形ではあったが、それでもティラノには耐えられてしまった。

 

「あら、やるじゃない!

でもアタシ達だってこんな時のために技カードを用意してきたのよー?

食らいなさい!『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』!」

 

 ウサラパが技カードをアクトホルダーに通すと、ティラノに赤い光が宿り、力がみなぎり出す。

 そしてティラノは口から業火を吐き出し、エースの体を炎で包み込んだ。

 燃え盛る炎の中、力尽きたエースはカードへと戻っていってしまった。

 

「そんな…エース!!」

 

「よっし! これでカルノタウルスはいただきよぉーん!」

 

 愕然とするレックスをよそに、床に落ちたカードを拾おうとするウサラパ。

 しかしその手が届こうとした瞬間、ピンク色の投げ縄のようなものが素早くカードをかっさらっていった。

 

「おおっとアクト団! そうはさせんぞ!」

 

 投げ縄…もといカメレオン鞭を使ったのは古代博士だった。

 彼はエースのカードを回収すると、すぐにレックスに渡す。

 

「レックス! 今のうちにここから逃げるんだ!」

 

「でも…パパさん! あなた1人じゃティラノには…」

 

「そうよ! 人間の身でティラノちゃんに敵うと思って? 怪我をしたくなければさっさとカードを渡しなさい!」

 

 その時、サイカニアが急ぎ足で現れるとティラノを弾き飛ばし、古代博士の用意したカバの餌をもりもりと貪り始めた。

 

「おお! やはり私の発想は正しかった! サイカニアがカバの餌に引き寄せられてやって来たぞ!」

 

 更にサイカニアの後に続く形で、リュウタとガブも姿を現す。

 

「オレも忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

「「リュウタ!」」

 

「いっくぜー! ガブ! ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス!」

 

ゴオォォォォォォ!!

 

 リュウタが掛け声と共にガブのカードをディノホルダーに通し、成体化させる。

 降り立ったガブは眼前のティラノと睨み合いを始めた。

 だがそんな彼らのすぐ横で、サイカニアは相変わらずカバの餌を貪っている。よほど腹が減っていたようだ。

 

「ぐぬぬぬ…ティラノ! まずはさっさとサイカニアからやっておしまい!」

 

 ウサラパの指示に従い、ティラノは餌に夢中なサイカニアに突進し、尻尾を一振りして打ちすえる。

 その一撃が堪えたようでサイカニアは力尽き、カードに戻っていってしまった。

 だが、これは結果的にウサラパの采配ミスとなった。

 ティラノはこの時、ガブに背を向ける形となってしまったのである。

 この好機を見逃すリュウタではなかった。すぐさま技カードをディノホルダーにスキャンする。

 

「今だガブ! 『来電蓄電(エレクトリックチャージ)』!」

 

 雷をその身に受け、両角の間に電気エネルギーを蓄えたガブがティラノに突進していく。

 ノーガードでその一撃を受けたティラノは大きく吹き飛び、壁に激突するとカードに戻っていった。

 

「それも私がいただきだーっ…ってあぁっ!」

 

 すかさず古代博士が投げ縄を投げ入れるも、今度はそれよりも早くウサラパがサイカニアのカードを回収してしまった。

 

「ふふ〜ん! 同じ手は2度も食わないわよ!」

 

 ティラノのカードは遅れてその場へやって来たノラッティ〜とエドが既に回収している。

 何やらひどく慌てた様子であった。

 

「う、ウサラパ様〜! 助けてほしいッス〜!」

 

「スピノがやられたザンス! もたもたしてるとミー達も食い殺されるザンス!」

 

「どうしたんだい、そんなに慌てて…。

まあこれで今回の目的は達成よ! 土の石版もサイカニアのカードも手に入れた!

ティラノもスピノもやられはしたけど結果的にはアタシ達の勝利よー!

さっ、お前たち! 逃げるよ!」

 

「「ヘイヘイホー!」」

 

 そう言うが早いかウサラパ達は走り出し、あっという間に館内のどこかへと消えていってしまった。

 

「くそっ、逃げ足の速い連中だな。あっという間に見えなくなっちゃったぜ…」

 

 悔しがるリュウタ達のところへ、オウガとマルムも合流した。

 今回も恐竜を奪われてしまったものの、まずは互いの無事を喜び合う。

 レックスもエースをチビ恐竜形態で呼び出し、感謝の言葉を伝えた。

 

「エース、さっきはありがとう…って、何隠れてるんだよ」

 

 しかしエースはすぐさまレックスから離れ、マルムの背後に隠れてしまった。

 

「なぁレックス。さっきマルムと話してたんだけどさ…もしかしたらエースは、ウンチをレックスに叱られたからそれを隠そうとして食べちゃったんじゃないかな」

 

「…え? そうなのか…?」

 

「ほら、動画とかであるでしょ? イタズラしたワンちゃんが叱られないように知らないフリをしたり隠れて出てこなかったり…。

エースも同じように、レックスに怒られてビックリしちゃっただけなんじゃないかしら?」

 

 オウガとマルムの話を聞いたレックスがエースを見つめると、エースは恥ずかしそうに顔を伏せた。

 それを見たレックスはゆっくりエースに歩み寄ると、優しくエースを抱きしめた。

 

『ギャウ…?』

 

「ごめんな、エース。僕がウンチに驚いて大声なんか出しちゃったから…。

もういいんだよ、気にしなくても。僕にも悪いところはあったから…」

 

 レックスがそう話しかけると、エースは驚いた表情をしてから、ゆっくりと顔を綻ばせて元気に鳴き返した。

 

『…ギャウッ!』

 

「良かった! これで解決ね!」

 

「レックスとエースが仲直りできて良かったぜ!」

 

「…うん。二人共、本当に良かったね」

 

 レックスとエースが仲直りできたことをDキッズの皆が祝福する一方で、オウガの心の中にはトゲが刺さったままになっていた。

 何故レクシィは人間を憎んでいるのか?

 何故スピノに容赦のない攻撃を加えたのか?

 …何故、パートナーである自分に心の内を明かしてくれないのか?

 翻訳機はディノラウザーに組み込んでもらい、肌見放さず持ち歩いているものの、あれからレクシィが話しかけてくれたことは一度だってなかった。

 どうすればもっと、レクシィのことを理解することができるんだろうか…。

 そのように悩みこむオウガの横顔を、当のレクシィはじっと見つめていたのだった…。

 

 

その後 アジ島

 

「よし! 3つ目のアクトホルダーが完成したぞい!

これで石版は、あのガキ共が持っているものを含めて全部見つかったことになるぞい!」

 

 ソーノイダがそう言ってアクト団工作員の3人組に新しいアクトホルダーを手渡すと、彼らは喜びを爆発させるかのようにはしゃぎ出した。

 

「やったッス! これで石版コンプリートッス!」

 

「あとは恐竜カードを集めていくだけザンス!

探すものが減ると気も楽になるザンス!」

 

「さっそくアクト恐竜たちの顔合わせといこうじゃないか! 出てらっしゃ〜い!」

 

 そう言ったウサラパが、ティラノ・スピノ・サイカをチビ恐竜で召喚する。

 だがチビ恐竜たちは示し合わせたのかのように工作員3人組に襲いかかり、噛みついたり背中に乗っけたりして痛めつけたのだった。

 

「「「お、お助け〜!」」」

 

 3人組がチビ恐竜たちに追われて研究室を出ていくのをソーノイダは呆れ顔で見送りながら、再び技カード作りへと取り掛かった。

 しかし、彼の頭に残る疑問が変わらず彼の思考を妨害する。

 

(確かヤツらの話では、ガキ共は4人だったはず。じゃから石版も4つそっちにあるものだと思っておったのだが…。つまりガキ共の1人が使っているのは石版ではないということぞいか?

石版の代わりになる、恐竜を召喚できるアイテム…?

うーむ…見当もつかんぞい…)

 

 彼の疑問が解消されるのは、それから数週間後のことになる…。

 

 

その頃 どこかの場所

 

 地下深くの、光すら届かない部屋。

 明かりも少なく薄暗いが高級感のある部屋のデスクに、1人の男が座っていた。

 年齢は比較的若いのだが、その若さの割に後退気味の生え際と丸眼鏡が特徴的な男だ。

 その男はしばらくデスクに向かい何やら書き物をしていたが、扉が叩かれた音に気づいて顔を上げた。

 

「…入れ」

 

 その声に応じて部屋へと入ってきたのは、カンボジアでオウガに襲いかかった男達…ジェイソン・ホスキンスとイシドーラ・ミルズだった。

 彼らはオウガとオーウェンに敗れた後、カンボジアの森を数日彷徨ってからようやくここへ戻ってこれたのだ。

 そんなボロボロの彼らを見て、男が鼻で笑う。

 

「その様子では、作戦は失敗したようだな」

 

「その通りだ。ホスキンスの見通しが甘かった。もっと慎重に動いていれば、私のスーツも買い直す必要はなかったはずだ」

 

「うるせぇ! お前がカフスボタンなんか弄ってなかったらあいつらを騙し通せたかもしれなかったんだろうが!」

 

 口論に発展しかけた2人を、男が手で制する。

 

「言い訳はいい。

だがジュラシック・アンバーの保持者を2人も確認できたのは十分な収穫だ。あとは残りの『Ⅲ』の居所さえ突き止められれば、我々が全てのアンバーを揃えられる目処もつくというもの。

とは言え、作戦の失敗を見逃すわけにはいかん。

さて…どうするべきか…」

 

「ま…待てよ! そ、そうだ!

確か保持者のうち、ガキの方はティラノサウルスを使ってやがった!

それもインドミナスと渡り合えるほどの実力で…」

 

「…何?ティラノサウルスだと?」

 

 男はそう聞き返したかと思うと、低く笑い出した。

 

「ククク…クックック…まさかティラノサウルスの使い手が現れるとは…これは好都合だ。

いよいよ私の自説が絶対不変の真実であることを知らしめる機会が近づいてきたというわけだ…」

 

 ブツブツと呟き出した男を見て、思わずジェイソンとイシドーラが顔を見合わせる。

 

「…よし。その子供はしばらく放っておけ。

これからしばらくお前達はアンバー『Ⅲ』の捜索を最優先に行動してもらう」

 

「な、何っ!?」

 

「それは別に構わないが…そろそろ我々の技カードが必要になってきたのではないか?

インドミナス・レックスやインドラプトルは十分な実力はあるが、技カードの有無によるディスアドバンテージを覆すほどではないからな」

 

「それに関しては私の方で調べて目処は付けてある。

先方との折り合いがつき次第お前達を連れてその相手に交渉を持ちかけるつもりだ」

 

「だ、だがな!

あのガキを放っておくのは賛成できねぇ!

本当に倒せるってのか!? お前が今改造している恐竜で…」

 

改造しているのではない!

『正しい』復元に戻しているだけだッ!!!

 

 突如として男が激昂する。

 その勢いに思わずジェイソンとイシドーラはたじろいだ。

が、すぐに男は平静を取り戻し、続ける。

 

「…安心しろ。その子供はこの私が相手をし、ティラノサウルス諸共叩き潰してみせよう。

心配はいらん。この私…」

 

 そう言って男が部屋の外…強化ガラスで区切られた隣の区画へと視線を移す。

 そこには、黒い鱗を持った巨大な肉食恐竜が安置されていた。体中にチューブが繋がれ、何かを流し込まれている…。

 その恐竜を満足そうな表情で眺めながら、男が続ける。

 

「この私…『カロリディー・ドジスン』と、最強の肉食恐竜『ギガノトサウルス・カロリニィ』に全て任せておけ」

 

そう呟き、男…カロリディー・ドジスンはその顔に醜悪な笑みを浮かべたのだった…。

 

 

 




 今回の恐竜解説!

「今回の担当は、私!古代博士だ!
今回君達に紹介する恐竜は、鋼鉄の要塞『サイカニア』!装盾亜目の中でも通称鎧竜とされるグループに属している恐竜だ!
発掘地は南モンゴルで、この周辺のゴビ砂漠では多くの恐竜の化石が発見されていることで有名だな!
名前の意味は、モンゴル語で「美しいもの」。発見された頭蓋骨の保存状態が非常に良かったことから、この名前が付けられたという話だ。
ちなみに学名は殆どの場合ラテン語で名付けられるんだが、このように発掘地の言葉が学名に使われることも珍しいことではないぞ!
本作恐竜キングでは強さが最高位に位置するこの恐竜だが、実のところ全長は6メートル程。鎧竜全体では中くらいの大きさなんだ。
装甲に並ぶ鋭いトゲ、そして尻尾の先についているハンマーのような大きな骨のコブが特徴的だな!さらに体全体を見ると、かなり平べったい見た目なのもこの恐竜の特徴と言えるだろう!
…と、ここまで話してきたんだが…本編でオウガ君が言ってくれていた通り、これまでサイカニアだとされていた化石は、頭以外全て別の恐竜であることが判明してしまったんだ。
これまで鎧竜随一の化石の保存度を誇っていたサイカニアが、一気に頭しか分からない恐竜になってしまったことはとても残念なことだな…。
しかし!しかしだ!別の恐竜だとされていた化石が実はサイカニアのものではないか?と推測されている話もあるそうだから、決して残念な話ばかりではない!
恐竜研究とは、トライ&エラー&デバッグの繰り返しなのだ!」

第6話に登場させるJP・JW恐竜について考えています。以下の恐竜ならどれを登場させるのがよいか、または登場させてほしいか、是非皆様のお考えをお聞かせ下さい。

  • ディロフォサウルス
  • パラサウロロフス・ワルケリ
  • スティギモロク(お助け恐竜)
  • ディメトロドン(お助け恐竜)
  • メトリアカントサウルス
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