古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
レックスの父オーエン博士から、映画の方針を巡ってスピノバーグ監督と決裂状態になってしまったことを聞かされたDキッズ。
そしてそれから間もなく、その舞台であるハリウッドに恐竜が出現した報せを受け、彼らは現地へと赴いた。
そこに現れたのは、かつてサン・ユベール島での狂気の実験の末生み出された異形の怪物「ディストータス・レックス」と、惚れた相手(同種のアニマトロニクス)を守るため立ち向かうペンタケラトプスだった。
ベースのティラノサウルスすら上回る筋肉量と耐久性、そして長大な腕から繰り出される打撃の数々に、レクシィもエンピロも迂闊に手を出せなかった。
しかし、ペンタケラトプスの決死の『瞬雷千烈』がディストータスの大振りの攻撃を誘い、それがディストータスの唯一の弱点である腕関節の可動域の超過を引き起こす。そこに付け込んだレクシィとエンピロの合体技『蒸気大爆砕』でディストータスを撃破し、更にペンタケラトプスのカードも保護することに成功した。
だがその裏では、何故かハリウッドに放置されていたタルボーンヌをロトが回収し、アジ島へと持ち帰っていたのだった…。
前編
ロシア連邦 モスクワ
ここは、極寒の地モスクワ。ロシア連邦の首都でもあるこの街では、今日も雪が降りしきっていた。
そんな中でも子供達は元気に雪合戦に興じていたのだが…。
「んん? 何だこれ」
1人の少年が、雪の中から何かを掘り出す。それは、いつもの卵型カプセルだった。訝しげにカプセルを見回す彼の体に、誰かが投げた雪玉がぶつかる
「うわっ!? やったなー!」
少年はすぐさま雪玉を握り、投げ返す。やがて雪合戦がヒートアップしてきたところで、勢い余ってカプセルまで投げてしまった。カプセルは大きく弧を描きながら飛んでいくと、凍った池の上を滑り…氷上釣りの穴から水中へ落ちてしまう。
するとカプセルは水中で2つに割れ、1枚のカードを排出した。カードはたちまち青い光と共に膨れ上がっていく…。
ウオォォォォン…!!
直後、池の氷を破って上陸した竜脚類が、こだまするような咆哮を轟かせる。その巨体に驚き、子供達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
竜脚類としては小柄ながらも、青い肌と金色の装甲のコントラストが美しい恐竜…それは、アンペロサウルスであった。
その頃 日本国三畳市 Dラボ
一方その時、オウガはちょうどDラボに来ていた。第一目的は勿論ミサに会うためだったが、ここ最近は別の目的もある。
「アーケオプテリクス、大分元気になったみたいですね」
「えぇ、そうかもね。もう大分体力も戻ってきたみたいで、最近はDラボ中を飛び回ってるのよ」
2人の視線の先では、元気そうに滑空するアーケオプテリクスと、それを追いかけるアメジストとエンピロの姿があった。ちなみにレクシィはその中には加わらず、オウガの膝の上で丸くなっている。
「でも、念には念を…ってことで、今日はこれからあの子の定期検診をするのよ。わたしもそれに協力することになってるから、もし恐竜が出たら今日は対応できないかもね」
「大丈夫ですよ。そんな都合悪い時に限って恐竜が出るわけが…」
オウガがそう言いかけた時、2人のディノラウザーが恐竜出現のアラームを鳴らす。冒頭のアンペロサウルスを感知したのだ。
「…こういうのって意外と起こるものなのかもね」
「何で今日に限って…」
それから十数分もしない内に、恐竜の出現を知った他のDキッズがいつも通りDラボへ集合した。
「リアスさん! 今回はどこ?」
「ロシア連邦のモスクワね。今あの辺りはとっくに冬だから防寒装備は持っていった方がいいわよ」
リアスのアドバイスに従い、リュウタ達3人はいそいそと防寒着を着込んでいく。
ちなみにオウガは先に聞いていたので既に着用済みである。
「モスクワか〜…。モスクワといえばロシア! ロシアといえばシベリア鉄道だな!」
「シベリア鉄道? なにそれ」
「モスクワからウラジオストクまで、9297キロを結ぶ世界一長い鉄道のことさ」
「話には聞いたことはあったけど、途方もない距離なんだね」
「桁が大きすぎて想像つかないわ…」
「シベリア鉄道か〜! オレも社会の授業で聞いたこと…あったような…なかったような…」
と、そこでレックスは着替える素振りのないミサに気づく。
「…あれ? ミサさんは今回は来ないんですか?」
「今日はアーケオプテリクスちゃんの定期診断をしなきゃいけないの。だからどうしても手が必要って言われちゃって…ごめんね」
「そうなんだ〜」
「まあまあ、心配いらないわよミサさん。アタシ達でしっかりシベリアの恐竜を保護してくるから!」
「おや、君達もお揃いのようですね」
そこで、ウー博士がそんなことを口にしながら部屋へ入ってきた。
「あ、ウー博士。今回アンバーの方の反応はありましたか?」
「今回は検知されませんでした。とはいえ要回収リストの残りも僅かですし、致し方ありませんよ」
「それじゃあ、あともう少しでオーウェンさん達の目的も達成されるのね!」
「でも…そうなればオーウェンさんもウー博士も…」
俺達の世界に関わり続ける理由がなくなるってことですよね…とは、オウガは言えなかった。それを口にしてしまうと、いつか来る彼らとの別れという避けようのない現実と向き合わねばならない感じがしたのだ。
そんな彼の心理を知ってか知らずか、ウー博士は彼らに微笑みかける。
「さぁ、恐竜が貴方たちを待っているはずですよ。早く行ってきなさい」
「…はい、分かりました」
「いってきまーっす!」
テレポートが発動し、4人の姿が掻き消える。そんな彼らを、古代博士とリアスとミサはいつも通りの顔で、ウー博士は一抹の寂しさが入り混じったような顔で見送ったのだった。
その頃 アジ島
そんな頃、ウサラパは大層上機嫌な様子で寛いでいた。その理由は、しばらくアジ島を空けていたタルボーンヌが帰還したことである。
「いやった〜っ!
タルボーンヌが帰ってきた上、修理も終わったことだし…これでアタシ達も、苦しい家事から解放されるわぁ〜!」
「だといいんスけどねぇ…」
「メーカーに問い合わせできないから間に合わせの修理しかできなかったって言ってたザンスよ?」
「大丈夫大丈夫。間に合わせ程度とはいえ、何とかなるなる…」
その時部屋の扉が開き、タルボーンヌが掃除機と共に入ってきた。彼女は無言で掃除機の電源を入れると…。
「お掃除、おそうじ、オソウジ」
「ぎゃああぁぁ!?」
部屋中に散乱するゴミには目もくれず、真っ先にウサラパの顔へ掃除機をかけ始め…。
「サァ、お洗濯オセンタク」
「ぐえっ!?」
洗いたてのシーツと共にウサラパを物干し竿にかけ…。
「サァ、ご飯ゴハン」
「あむっ…ってかっらあぁ〜!?」
食事として激辛カレーを出してきた。完璧な家政婦ロボットだったはずの彼女がえらい違いである。
食事を終え、ようやく部屋に戻ったウサラパ達は疲れ切った様子で座り込んでしまう。
「はぁ…ダメね。ぜんっぜんダメ」
「間に合わせの修理って、最低限家事ができる程度に留まってたんスね…」
「考えてみればドクターはあのアクトロイドを作り上げたくらいだし、プログラミングが不得意なのかもしれないザンス」
すると、彼らの背後で部屋の扉が開く音がした。振り向くと、そこにはロトとロアがいる。
「聞いてよ。タルボーンヌさんが『子供は勉強なんかしちゃいけません』って言ってきてさ」
「わたし達2人とも勉強部屋からつまみ出されちゃったの。なんかいつもと正反対だから調子狂っちゃうわ。
ねぇおにい様。本当におじい様と一緒にタルボーンヌを直したの? 全然ダメじゃない」
「そんなこと言われたって…ボクもお爺ちゃんも家政婦ロボットの修理なんかしたことないから仕方ないだろ」
「どうかしら? ノーピスとの研究には精を出してたし、単純にやる気がないだけじゃないの?」
「おいロア、いくら何でも言っていいことと悪いことが…」
その時、彼らのアクトホルダーから恐竜出現の通知音が響く。それと共に、ロトの端末へノーピスからの通信が入ってきた。
『ロト。恐竜が出たぞ。場所はロシア連邦の首都モスクワだ』
「それは分かったけど…ノーピス。何でタルボーンヌさんの修理を手伝ってくれなかったの?
ノーピスならボクやお爺ちゃんより機械の扱いは手慣れてるだろ?」
『今最優先すべきことは、この世界に散らばった恐竜カードを回収することだからだ。タルボーンヌの修理くらい、帰ってからいくらでもやれる。そうだろう?』
「そんな…アクト団みんなの家事をやってくれてたタルボーンヌさんを、そんなぞんざいな扱いにしていいわけないよ!」
『ん? 何だその口のきき方は。恐竜回収に行かないのか?
ならあの役立たず3人組を向かわせるとするかな。もっともそうなれば、帰れる日は更に遠のくだろうがね』
その言葉に烈火の如く怒るウサラパ達を背景に、ロトはグッと唇を噛み締め…口を開く。
「分かった…行くよ」
『それでいい。すぐに駐機場に向かってくれ』
通信が途切れると共に、ロトは踵を返して部屋から走り去る。
「おっ、お前達! アタシ達も行くんだよ!」
「そうッス! あんなコケにされて黙っていられないッス!」
「ノーピスに目にもの見せてやるザンスぅぅ!」
そう勇んで飛び出していった3人だったが、彼らの前にタルボーンヌが立ちはだかった。
「何してるんデス!? お勉強のオジカンですヨ!」
「えぇっ!?」
「何でミー達が…」
「こんなのおかしいッス〜!」
何故かタルボーンヌは彼らを勉強部屋へ連行していってしまう。一体どうしてそんな思考回路になってしまったのだろうか。
そしてその場には、呆れ顔のロアだけが残された。
「あーあ、おにい様もウサラパ達もバカみたい。
…勉強部屋にも入れなくて暇だし、あの子達に会いに行こうかな」
こうしてロアもその場を後にしたのだった…。
その頃 モスクワ
テレポートしてから間もなく、騒ぎを聞きつけてDキッズが向かった先には、街中を闊歩するアンペロサウルスの姿があった。
「いたぞ!」
「丸みを帯びた頭部に背中を覆う装甲…となれば、あれはアンペロサウルスかな?」
「アクト団が介入してくる前にカードに戻すにしても、まずはここから離さないとね」
ということで、Dキッズ一行はまずはアンペロサウルスを追跡することにしたようだ。街中を抜け公園を通り、アンペロサウルスが辿り着いたのは、シベリア鉄道モスクワ駅近くに存在する車両基地だった。
早速アンペロサウルスはそこへ足を踏み入れると、1台の貨車に目をつけた。その周囲をじっくり見回してから体当たりで揺らし、中にいた牛達を全て追い出してしまったのだ。
「何やってるんだあいつ…」
「あっ、見ろよ! 中の飼い葉を食べてるぜ!」
「ホント。よっぽどお腹が空いてたのかしら」
そう。アンペロサウルスは貨車の中の飼い葉を貪るために、邪魔な牛達をどかしたのだ。
しばらく見ていると、彼らの目の前でアンペロサウルスは貨車へと入り込んでいく。意外と器用なもので、推定10数メートルはある体を詰め込んでしまった。
ちょうどこの時、敷き藁の中に紛れていた1枚のカードをアンペロサウルスが踏みつけた。たちまちカードは溶けるようにアンペロサウルスに吸収されていったのだが、Dキッズが気づくはずもない。
「何で貨車の中なんかに…?」
「さぁ…」
「どっちにしろこのまま放っておけないぜ! オレ達も列車に乗り込むぞ!」
そう言うが早いかリュウタが貨車へと駆け出していき、他の面々も後に続く。そして貨車の扉を開けると…そこでは、大きな寝息を立てるアンペロサウルスの姿があった。
「へへ、いびきかいてらぁ」
「お腹いっぱいになったから寝ることにしたみたいだね」
「ここまで結構な距離歩いてきたんだし、仕方ないわよね」
「そんな悠長なことしてる場合じゃないよ。早くここから出さないと…」
その時、彼らの背後で貨車の扉が閉められた。それとほぼ同時に、アンペロサウルスが入ってきた後方の扉も自動で格納されていく…。
それから間もなく貨車全体に衝撃が走ったかと思うと、高らかに汽笛が響いた。
「これって…閉じ込められちゃったってコト?」
「それだけじゃない! この列車…動くぞ!」
「おいおい…やっべぇぞこいつは…!」
かくして、4人を乗せた列車は車両基地を発ち、最初の駅…ヤロスラフスキー駅へ進んでいったのだった…。
その頃 アジ島 食堂
「そこっ! コタエ間違ってるザマス!」
「す、すみません…」
何故かウサラパは、タルボーンヌの厳しい指導のもと勉強をさせられることになってしまっていた。そんな彼女を置いて、こっそり出撃しようとする人影が2つ…エドとノラッティ〜である。
「今のうちに…」
「バックレるザンス…」
「ドコへ行くんデス!?」
「「ひぃぃぃぃっ!」」
しかし敢え無く捕まり、机へと引きずり戻されてしまった。
(まったく…ソーノイダとロトではこの程度が限界か。呆れたものだな)
そんな彼らを内心嘲笑いながら見ているのは、ノーピスだった。ちょうど休憩がてらコーヒーを淹れに来たようだ。
彼はそのままカップを手にし、食堂から退出しようとしたのだが…そこでふと、テレビのニュース映像が目に入った。
『それでは、モスクワと中継が繋がっております』
『はい、こちらモスクワのヤロスラフスキー駅前です。先程ここで恐竜が目撃されたとの情報があり、こうして駆けつけたのですが…あっ、ちょうどいいところに! すみません、ちょっとお話よろしいですか?』
『はい、何でしょう?』
そこでテレビに映った人物を目の当たりにし、ノーピスの顔は驚愕の色に染まった。そこにいたのは、かつてスイスや原宿やバリバリ島、パリに忍者村、そして前回は横浜中華街に現れた、あの老人だった。今回は誰がどう見ても車掌と見て取れる恰好をしている。
「こいつは…!」
『この近くに恐竜が現れたとの情報があったのですが、シベリア鉄道の運行に影響はありますか?』
『いえ、スケジュールに変更はありません。列車は定刻通り出発致しますので、ご安心ください』
「んぎゃーっ!」
と、そこへタルボーンヌと揉み合っていたノラッティ〜が投げ飛ばされ、テレビともつれ合うようにして地面に落ちる。逆さまになった老人の顔を見たノーピスの顔に、隠しきれない愉悦の色が浮かんだ。
「ついに…ついに見つけたぞ…!」
そう呟くや否や彼はせっかくのコーヒーをその場へ置き去りにし、足早にどこかへ去っていったのだった…。
戻ってモスクワ ヤロスラフスキー駅
「ご乗車の方はお早めにお乗りくださーい! シベリア鉄道ヤロスラフスキー駅発ウラジオストク駅行の列車が間もなく出発しまーす!」
Dキッズとアンペロサウルスを乗せた列車は、駅で乗客と件の老人を乗せ、真っ白の雪原の中を突き進んでいく。
先頭車両のすぐ後ろに連結された貨車の中では、眠りこけるアンペロサウルスの前でDキッズが途方に暮れていた。
「参ったなぁ…。寝てたらカードに戻せないじゃん」
「こんな狭いところで戦うことなんてできないしね」
「それだけじゃないわ。もしこんなところで目を覚まして暴れ出したら…」
目覚めたアンペロサウルスが暴れ、列車の何もかもを破壊してしまう…そんな光景が4人の頭を過る。
もしそんなことになってしまえば、死者は数え切れないものになるだろう。
「そんなことになったら間違いなく一大事だし、俺達も無事じゃすまない。それだけは避けないようにしないと」
「よし…それじゃあ、次の駅に着いたらどんな手を使ってでもアンペロサウルスを降ろそう。それまではなるべく刺激しないよう静かに過ごして…」
そう言いかけたところで、レックスが息を呑む。なんとガブとエースがアンペロサウルスにちょっかいをかけていたのだ。
慌ててリュウタとレックスで2匹を引き離すものの、轟音と共に貨車の天井がアンペロサウルスの尻尾で突き破られる。目を覚ましてしまったのだ。
「お、遅かったみたい…」
「何とか落ち着かせるんだ! さもないと列車が…」
レックスがそう言いかけたのも束の間、アンペロサウルスは4人に顔を近づけると、凄まじい鼻息で吹き飛ばしてしまう。そして更に天井に頭や背中の装甲をぶつけて破ろうとするが、破れないと見るや壁に体当たりをし始めた。轟音と共に車体が大きく揺れており、このままでは脱線しかねない。
「いてて…」
「何とかって言ったって、この状況じゃどうにもならないよ…」
「でもこのままじゃ貨車が壊れちゃうわ。どうにかして鎮めないと…」
その時、パラパラとランランがアンペロサウルスの前へ飛び出した。品定めをするかのように再び顔を近づけてきたアンペロサウルスに対し、2匹が取った行動は…
『クゥ〜ンクゥ〜ンクゥ〜ン♪ クゥクゥ〜クゥクゥ〜ン♪』
『ララ〜ラ〜ラ〜ラ〜♪』
なんと、子守唄のようなメロディを口ずさみ始めたのだ。しかもこれが効果てきめんだったようで、アンペロサウルスの瞼がみるみるうちに重くなっていく。やがてアンペロサウルスは暴れるのをやめ、元のように床に伏せると眠り始めたのだった。
「…どうやら、また寝てくれたみたいだ」
「はぁ…パラパラとランランのお陰で助かったわ」
「ヒヤヒヤさせるぜ…」
『子どもらのせいで大惨事になるところだったな。
おい、オウガ。奴がまた寝た隙に私たちをカードに戻しておいた方がいいのではないか? また眠りを妨げるようなことがあれば、今度こそ終わりだぞ』
「…そうだね。ねぇみんな。またさっきみたいなことがあると大変だし、今のうちにレクシィ達をカードに戻しておこうよ」
「そうだな。またエースやガブがちょっかいかける可能性もあるし…」
「こんな状況だもの、仕方ないわよね」
ということで4人はパートナー恐竜達をカードに戻してディノラウザーやディノホルダーにしまうと、貨車の隅に座り込み、次の駅に到着するのを待つことにしたのだった…。
ちょうどその時、列車を追うような形で飛ぶ小型飛行機が現れた。ロトの駆るアクト団のメカである。
「…あれか。多分あの列車の…穴があいてる貨車に恐竜がいるんだな。よし…」
早速降下の準備を…しようとしたところで、彼ははたと手を止めた。
「…って、こんな猛スピードで飛んでる飛行機からどうやって列車に降りるんだよ…」
一応自動操縦で列車に追従させるように飛行させることは可能だが、この速度では降下するのも危険極まりない。
「…仕方ない。どうせこの状況ならDキッズも手は出せないだろうし、次の駅に着くまで追っていくしかないか」
結局ロトは降下を諦め、列車の後を追うことにしたのだった。
一方、すぐ頭上から聞こえてくるジェットエンジンの音を聞き逃すほどDキッズも油断している訳ではなかった。こっそり窓の格子からリュウタが外を伺い、オウガ達に見てきたことを伝える。
「リュウタ、どうだった?」
「間違いない。アクト団の飛行機だぜ。アンペロサウルスを狙ってやって来たんだ」
「リュウタ。奴らが降りてくるような気配はあったか?」
「いや? ずっと追いかけてくるだけみたいに見えたけど…」
「となると、今は向こうからも手出しができない状況なのかもしれないね。となれば、駅に着いた時がアクト団と対峙する時、か」
「その時は迎え討ってやりましょ! オバさん達にアンペロサウルスを渡してなるもんですか!」
その時 アジ島
「キィーッ! 今誰かオバさんって言ったわねー!?」
「誰も言っとらんぞい。だからそのキーキー叫ぶのをやめんかぞい」
「ウサラパ様はいつものことッスから…」
こちらでは何故かロシアでのオバさん呼びを聞き取ったウサラパが、いつものように発狂していたのだった…。
それから数時間後 ロシア連邦 キーロフ州郊外
列車は、いよいよキーロフ州のキーロフ駅に接近しつつあった。そんな列車の進行する先に、1人の男が立ちはだかる。
それは、ノーピスであった。その存在に気づいた列車が何度も汽笛を鳴らすものの、彼はそこから一歩も引く様子がない。
それどころか、手に持ったアクトホルダーに恐竜カードを通したのである。
「出でよ、サウロファガナクス! 列車を止めろ!」
グゴオォォォォ…!!
業火と共にサウロファガナクスが姿を現し、列車に向かって特大の咆哮を上げる。ただでさえ自分を撥ねないように減速しかけていたのだから、これで完全に停止するだろう…ノーピスはそう考えていたのだ。
しかしどういう訳か、列車は減速どころか急加速しながら彼らへ向かってくる。実はこの時、運転士はサウロファガナクスに驚いた拍子に、運転ハンドルを目一杯アクセルに入れたまま気絶してしまったのだ。
だがそんなことなどノーピスは知るはずもない。
「チッ! 戻れサウロファガナクス!」
このままでは撥ねられると判断したノーピスはサウロファガナクスをカードに戻すと横に飛び退き、猛スピードで通過していく列車にフックショットを撃ち込んだ。
フックがかかったのを確認したところでワイヤーを巻き上げ、列車の連結部近くに降り立つ。
「ム?」
ちょうどその時、ノーピスの目の前の扉が開き、そこからあの老人が姿を現した。そんな彼にノーピスは不敵な視線を向け…こう口にした。
「久しぶりだな、ジュラサン…エンシェントの小間使いよ」
それに対し、老人も片手を差し出してこう返す。
「…切符を拝見いたします」
「知らないふりで誤魔化すつもりか。悪いがその手には乗らんぞ」
その言葉と共にノーピスは薄ら笑いを浮かべ、列車の連結操作レバーに手をかけたのだった…。
ということで、今回はここまでです。
活動報告の方に多数の提案をお寄せいただき、本当にありがとうございます。どれもしっかり目を通しております。
私ではとても思いつかなかったような画期的な案や、面白そうだし採用はしたいけれど基本設定的に難しそうかな…な案など、様々な考えを見ることができてとても刺激になります!
流石に恐竜キングやジュラシックシリーズはおろか、恐竜とすら何の関連性もない案を採用するのは困難ですが…提案していただけることはありがたいので、皆さん是非これからもご協力いただけたら幸いです。
それでは、後編を楽しみにお待ち下さい!