古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回は後編になります。
難攻不落の巨躯と恐れ知らずの不沈艦の活躍をぜひご覧ください。


後編

ロシア連邦 キーロフ郊外

 

「え…? あれってサウロファガナクス?」

 

 シベリア鉄道を走る列車に追従する形で飛行していたロトの視界に、突如として列車の行く手を塞ぐようにして現れたサウロファガナクスの姿が飛び込んできた。

 

「恐竜の反応は列車の中から動いてないはずだ。ってことは、あいつは…」

 

 すると、すぐにまたその姿が赤い光と共に掻き消えたかと思うと、線路の外へ1人の男が飛び退く姿が見えた。こちらは言うまでもないが、ノーピスである。

 

「あれはノーピス!? 何でこんなところに…」

 

 そう口にする間もなく、ノーピスはフックショットで列車へと飛び移って姿が見えなくなってしまう。

 何とかその姿を視認しようと飛行機を加速させようとした…が、すぐハンドルを操作する。

 すぐ目の前にキーロフの街が広がっていることに気がついたのだ。

 

「くそっ…仕方ない! 一度高度を上げよう…」

 

 飛行機で街中を飛ぶことはできない。そう判断したロトは一旦上空へ離脱し、列車が街を抜けるまで待つことにしたのだった。

 

 

 一方、貨車の中のDキッズ達は、格子戸から外の様子を窺っていた。すると、視線の先にキーロフの街が見えてくる。

 

「街だ! 結構大きいぞ!」

 

「よし、やっとだな! それじゃあ駅に着いたらすぐにアンペロサウルスを起こすぞ!」

 

「でも、そんなことしたら駅が大混乱になっちゃうわよ! 本当に大丈夫なの?」

 

「どのみちこうしていても、いつアンペロサウルスが起きて暴れ出すか分からない。それなら、降りれる時に降りてもらうしかないよ」

 

「そうだぜマルム。大丈夫だって!」

 

「うまくいくからしら…」

 

 そして列車が止まるのを今か今かと待っていた4人だったが、列車は一切勢いを緩めることなく駅を通り過ぎてしまう。

 

「…あれ? 止まらねぇぞ?」

 

「何で? どうして?」

 

「それだけじゃない! 止まらないどころか、ぐんぐんスピードが上がっていってるみたいだぞ!」

 

 運転士が列車をアクセル全開にしたまま気絶していることなど、4人は知りようもない。だがこのままでは、アンペロサウルスが起きようが起きまいが破滅的な出来事に発展しかねないことは自明のことだった。

 

「運転席で何か起こったのかも…。レックス! マルム! 俺とリュウタで先頭車両に行って様子を見てくるから、その間アンペロサウルスの見張りを頼む!」

 

「よっしゃ! 行こうぜ!」

 

「わ、分かった! 任せたぞ!」

 

 こうして、オウガとリュウタは先頭車両へ向かっていったのだった…。

 

 

 連結操作レバーが倒れ、列車が3両目と4両目の境で切り離される。列車と共に遠ざかっていく老人へ、ノーピスは大声で呼びかけた。

 

「どうした? お前も今は車掌なら、自分の責務を果たしてみせろ!」

 

 その言葉に反応したのかは分からないが、老人はその場から大きく跳躍すると…ノーピスがいる貨車の屋根部分へと降り立った。凄まじい身体能力である。

 

「やはりな。そうでなければ困る」

 

 すぐさまノーピスもその後を追って貨車の上へよじ登ると、老人は仁王立ちで待ち受けていた。

 ノーピスはあくまで不敵な笑みを崩さず、彼へ話しかける。

 

「エンシェントのアンドロイドよ。俺の研究を完璧なものとするためには、どうしても奴のデータが必要だった。

だが奴はそのデータを、アンドロイドであるお前のメモリに隠したのだ。それを渡してもらうぞ!」

 

 そう言い放つと共に、ノーピスはその手にスタンロッドを構える。それに対し老人は、しばらく黙ったのちゆっくりと口を開いた。

 

「…あんたは、おれの何を知っているんだ?」

 

「…何?」

 

「このあいだ日本に行った後からずっと、あるビジョンがおれの頭の中から消えねぇんだ。見覚えのない夫婦と生まれて間もない赤ん坊が幸せそうにしているビジョンだ。

全く知らねぇはずなのに…その姿を思い浮かべるたび、おれの心の中に温かい感情が溢れて仕方ない。それが奇妙で仕方ねぇんだ。

その口ぶりだと、あんたは何か知っているんだろう? 良けりゃ教えてくれねぇか」

 

 老人の言葉にノーピスは少し面食らったような表情を浮かべた…が、すぐに元の顔へ戻す。

 

「…フッ、そうだな…。お前のことはよく知っているさ。そのビジョンが何かということもな。

だが、知る必要はない。何故ならお前は…ここで俺に壊されてしまうからだ!」

 

 言い終わらないうちに、ノーピスはスタンロッドを構えて老人に殴りかかる。しかし老人はごく冷静に腰に差していたハンマーを振るい、ロッドを弾き落とした。

 武器を失ったノーピスは老人の背後から羽交い締めにかかるが、なんと腕ずくで拘束を解かれた上、逆に抑え込まれてしまう。体勢の不利もあり、押し返すのは不可能に近かった。

 それでもノーピスは死に物狂いで抵抗し、その場でグルリと横へ回転して老人を投げ飛ばした。投げられた老人は列車から落ちないよう車体にしがみついていた…が、車体に指で溝を穿ちながら滑り落ちていく。

 何とか命の危機を脱したノーピスは肩で大きく息をしていたが、すぐに熱くなりすぎたと悟る。

 

「くそっ、これでは後で回収に向かわなければ…。

まったくあのアンドロイドめ。どこまでも俺の邪魔をする…」

 

 そう愚痴を溢しながら、ノーピスは貨車の上から姿を消す…。

 その直後、誰もいなくなったその場に老人が這い上がってきた。何とかしがみついて残っていたようだ。

 相手の姿がないことを確認し、一息つこうとした…その時、彼の背後にノーピスが現れ、彼の首筋に機械を押し当てた。

 すると老人の表情が急に引き攣り、手足がビクビクと痙攣し始める。ノーピスはそれでも構わず機械を押し当て続け…液晶に『100%』と表示されたところでスッと手を引いた。しかし、老人はグラグラと不安定に揺れるばかりで何も反応を示さない。

 

「データは全ていただいた。これでお前は…用済みだ!」

 

 そう言い放ち、ノーピスが老人を力強く蹴りつける。老人の体はもんどり打って列車から転がり落ち…線路の真ん中へ置き去りにされたのだった。

 一仕事ついた…とばかりに息を吐き出すノーピス。そんな彼の胸元から着信音が響く。相手はロトだった。

 

「ロトか。恐竜はどうした?」

 

『それどころじゃない! ノーピス! 今何をやったか分かってるのかよ! お前、あのお爺さんを…こ、殺し…』

 

「あいつはタルボーンヌと同じアンドロイドだ。壊れることはあっても死ぬことはない。気にするな」

 

『気にしないなんてできるわけないだろ!? そもそも何でここに来てるんだよ! ここに来るなら何でボクをここに…』

 

「君が出かけた後で野暮用ができたからな。君に頼む訳にもいかず、こうして来ることになった。

…それより、早く恐竜を回収しに行動した方がいいんじゃないか? もうDキッズとやらは、この列車にいるのだろう?」

 

 ノーピスの冷静な言葉とは反対に、ロトは燃え上がる感情を押し潰すように歯軋りをしながらこう言い残した。

 

『…分かった。でもノーピス。帰ってから詳しく教えてもらうからね』

 

「勿論だとも。それじゃあまた後で」

 

 通話を切ったのち、ノーピスはまるで嘲笑うかのように口角を上げたのだった。

 

 

 一方、運転席に何とか辿り着いたオウガとリュウタは、列車の暴走の原因が運転士が気絶したことだったと知ったところだった。

 

「ねぇ、運転士さん! 起きて! 起きて列車を止めてくれよ!」

 

「…ダメだ! これじゃあ運転士さんが起きる前に大事故に繋がりかねない!

リュウタは運転士さんを頼む! 俺は…何としてでも列車を止めてみせる!」

 

 そう啖呵を切って運転席に座ったオウガだったが、当然彼は恐竜のことは詳しくとも電車についてはまるで素人である。そのため、どれがブレーキになるのかさっぱり分からなかった。

 

(状況から考えろ…。確か運転士さんは、この2つのレバーに倒れかかるようにして気絶していた。

もしこの加速がそのせいなら、これを逆側に倒してやれば…)

 

 そう判断したオウガは2つのレバーをしっかり掴み、慎重に手前へと倒していく。それでも急減速による強烈なGがオウガの体を襲い、ブレーキのかかった車輪が甲高い悲鳴を上げる。

 

(頼む…止まれ…止まってくれ!)

 

 永遠かのような時間が流れた後…実際の時間的には数分以内の出来事であったが…列車は遂に完全に停止した。

 

「や…やった…」

 

「よっしゃあ! やるじゃんオウガ! 列車が止まったぜ!」

 

「土壇場だったけど、何とか止められて良かったよ。

取り敢えずこれで一安心だね」

 

 そうオウガが口にした直後、後ろの貨車がバラバラに壊れていく音と共に響き渡るような咆哮が轟く。

 

「…一安心もできないみたいだね。アンペロサウルスがお目覚めみたいだ」

 

「よっし! ここからはいつも通りだな!」

 

 2人が運転席から駆け下りると、そこにはアンペロサウルスと対峙するレックスとマルムの姿があった。まずはそこへ合流する。

 

「レックス! マルム!」

 

「リュウタ! それにオウガも! 首尾よくいったみたいだね!」

 

「何とかね。それじゃあここからは…アンペロサウルスの保護にとりかかろう!」

 

「「「了解!」」」

 

 4人は一斉にディノラウザーやディノホルダーを構え、それぞれ恐竜カードをスキャンする。

 

「ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス!」

 

ゴオォォォォッ!!

 

「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

グォォォォン!!

 

「ディノスラーッシュ! 芽生えよ! ランベオサウルス!」

 

プォォプオォォォォッ!!

 

「ディノスラーッシュ! 燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!」

 

ゴガアァァァァッ!!

 

 計4体の恐竜達が成体となって降り立ち、アンペロサウルスと向かい合う。そして更に、ロトもその場へ飛来してきた。

 

「あいつら、もう始めてるのか…! くそっ、負けてたまるか! 今度こそボクが回収してやる!」

 

 ロトが機体を無理矢理着陸させ、転がるように飛び出すと恐竜カードを3枚続けてアクトホルダーに通した。

 

「行ってこい! ティラノ! サイカ! カスモサウルス!」

 

 今度はロトが恐竜達を召喚し、戦いの場に加えさせる。かくして、Dキッズの恐竜VSアクト恐竜VSアンペロサウルスという三つ巴の混戦が幕を開けたのだった。

 

 その現場を、モミの林の中からノーピスが窺っていた。その表情からは、少しばかりの苛立ちと嘲りが見て取れる。

 

「なるほど…恐竜の扱い方は文句なしだが、戦いの進め方がそれでは成果も上がらない訳だ。

仕方がない。ここは俺が手本を示してやるとしよう」

 

 ノーピスは再びサウロファガナクスを召喚すると、1枚のカードを手に取った。そのカードには、イラストはおろか技名すら書かれていない。

 

「戦いの場では、屈強な兵より先にか弱い司令官を討てば早く決着がつく。よく覚えておくことだな」

 

 

「今度こそっ、今度こそカードは渡さない! やれティラノ! 『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』!」

 

「いい技を使うじゃないか。それならちょうどいい」

 

 ロトがティラノに『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』を使わせたタイミングに被せる形で、ノーピスは技カードを発動させた。するとサウロファガナクスの身をドス黒い業火が包み込み…口にその炎が溜め込まれ始める。やがて炎がごく小さな…バスケットボールくらいの大きさの球形に変わったところで、サウロファガナクスはそれを送り出した。

 その直後にサウロファガナクスは自ら生み出した炎に飲まれ、あっという間にカードへと戻ってしまったが、吐き出したドス黒い火球は目の前のありとあらゆる障害物を焼き尽くしながら直進していく。

 その向かう先は…Dキッズのもとだった。

 

 

「おおおおっ! 迎え撃ってやれガブ! 『雷撃一閃(バスダードスピア)』!」

 

 自分達が狙われていることなど知りもしないDキッズサイドでは、『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』に対抗する形でリュウタが技を発動したところだった。ガブがその三本角に電撃を纏わせて雷槍を作り上げ、向かってくる炎の波に突っ込んでいく。やがて炎を突っ切って飛び出したガブは、まっすぐティラノを貫いて諸共に大岩に突っ込んだ。

 これにはティラノも耐えきれず、カードへ戻ってしまう。

 

「よっしゃあ! やったなガブ!」

 

 喜びに湧く4人だったが、そこでオウガの耳にレクシィの叫びが飛び込んできた。

 

『オウガ! オマエ達の方に流れ弾が向かっているぞ!』

 

「流れ弾?…はっ!」

 

 その言葉にオウガは素早く周囲を見渡し…そして気づいた。ドス黒い火球が自分達の方へまっすぐ向かってきている。しかも距離的に、今から回避したのでは間に合わないところまで近づいていた。

 

「まずい…みんな! 早く逃げて…」

 

 その時だった。あの老人が猛然と彼らの前へ駆けつけると、すぐ近くまで迫っていた火球の前に立ちはだかったのだ。火球は彼の元に着弾し、大爆発を起こす。その威力は凄まじく、Dキッズは4人全員が吹き飛んで雪原の上へ転がされてしまう。

 

「…かっ…カハッ…みんな…大丈夫…?」

 

「あ、あぁ…何とか…」

 

「アタシも…」

 

「貰ったのが爆風だけで良かったよ。もし直撃してたら…そうだ! 僕たちを守ってくれた人は…!」

 

 あまりの衝撃に一瞬酸欠になりながらもDキッズは痛む身体に鞭を打って起き上がり、元の場所と向かう。そこには、雪が溶けた上その下の枯れ草まで焼き尽くされたクレーターの真ん中で横たわる老人の姿があった。

 

「やっぱりこのお爺さん…あの人よね?」

 

「間違いない。原宿からバリバリ島に忍者村、そしてこの前は横浜で汁辣参って名乗ってた、あのお爺さんだ…」

 

「それに…見ろよこれ」

 

 リュウタが老人の胴体部分を指さす。服がすっかり燃え尽き、露出した老人の胴体には複雑な機械構造が存在していた。

 

「この人も、タルボーンヌさんと同じアンドロイドだったんだ…」

 

 何故、この老人は自分達をここまでして守ってくれたのだろうか。何とも言い難い感情で4人は彼をしばらく見つめていた…。

 

 

「…チッ、あのくたばり損ないが」

 

 騙し討ちの攻撃を老人に防ぎ切られ、ノーピスは思わず舌打ちした。だがサウロファガナクスも自滅した今、技の発射地点を探られる訳にはいかないため、速やかに撤退することにしたようだ。

 

(未完成ながらも十分すぎる威力だが…反動で使用恐竜がダウンするようでは話にならん。

技もサウロファガナクスも、更なる改良が必要か…)

 

 そんな考えを巡らせながら、彼は飛行機を停めた場所まで戻っていったのだった…。

 

 

オォォォォン…!!

 

 その時、辺り一帯にアンペロサウルスの咆哮が轟いた。Dキッズが弾かれるようにそちらへ視線を向けると、アンペロサウルスはその身に荒れ狂う水流を纏っていた。技を発動したのだ。

 すると、その背後から青い光と共に巨大な影がせり出し、更に膨れ上がっていく…。

 やがて光が止むと、そこにはアンペロサウルスが子供のように見えるほどの巨大竜脚類が出現していた。

 

「あれは…!」

 

「南米原産の巨大竜脚類…ドレッドノータスだ!」

 

 それと共に、オウガのディノラウザーが甲高い通知音を響かせる。どうやら目の前のドレッドノータスは別次元の出身らしかった。

 

 一方、ロトは突然現れたドレッドノータスに困惑しきりだった。

 

「ど…ドレッドノータス…!? なんて大きさだよ…。まさか、技の破壊力も体格相応なんじゃ…」

 

 ロトの推測は正しかった。アンペロサウルスの号令と共にドレッドノータスは前へ躍り出ると、踏みつけと尻尾薙ぎ払いでDキッズの恐竜やアクト恐竜達を纏めて後退させる。

 そして距離を取ったところで、ドレッドノータスは口から猛烈な水流ブレスを吐き出したのだ。水流は綺麗に3方向に分かれ、恐竜達に襲いかかる…。

 だが、それを黙って見過ごすほどDキッズもロトも愚かではなかった。

 

「カスモサウルス! 『閃光大盾(フラッシュフリル)』! そしてサイカは『大地土盾(アースバリア)』だ!」

 

「守ることはできなくても、躱すことなら…! エース! 『恐竜幻影(ダイノイリュージョン)』!」

 

 カスモサウルスとサイカがそれぞれの属性のバリアを張り、エースは変わり身を駆使して直撃を逃れようとする。

 カスモサウルスは大きく後退しながらも耐えきり、エースも攻撃を躱すことに成功したが、なんとサイカは『大地土盾(アースバリア)』ごと押し流され、カードに戻されてしまった

 そして、守る手段がない残りの恐竜達にも水流ブレスが襲いかかった!

 

「負けるなレクシィ! 『猛炎奔流(マグマブラスター)』だ!」

 

 ここでオウガはレクシィに『猛炎奔流(マグマブラスター)』のパワーで押し返す判断を下す。元々他の恐竜より強めのレクシィの攻撃ではあったが、それでも属性不利の相性は覆せず、勢いは弱められたものの水流を諸に受けてしまう。カードに戻らなかっただけマシではあるのだが。

 しかし技を使った直後のガブは攻撃を避けることも迎撃することもできないまま水流で洗い流され、カードに戻されてしまった。

 ちなみにランランだけは幸運にも水流が当たらなかったようだ。

 

「あぁっ! ガブ!」

 

「なんて破壊力なの…強すぎるわ」

 

「しかも、ただ強いだけじゃない。まず踏みつけと尻尾で相手を退けることで、水流ブレスの射程範囲に来るように調整したんだ。とんでもなくうまいやり方だよ」

 

 一方、防御こそ成功したがかなり体力を削られてしまった様子のカスモサウルスを前に、ロトは歯軋りする。

 

「あんな攻撃をあと一発でも撃ち込まれたら、今度こそ耐えきれない…。

となれば、本丸のアンペロサウルスを叩くしか…」

 

 そう呟きかけたところで、ロトの脳裏に(だが、どうやって?)という考えが過る。あれほどの破壊力を持ち、更に踏みつけと尻尾で防衛も万全なドレッドノータス。それに守られているアンペロサウルスだけを、どうやって倒すというのか。

 ここに来てロトは手詰まりになってしまった。

 

 一方、Dキッズはこれまでの経験から活路を見出していた。それはごく単純な理論…大きさには大きさで対抗することだ。

 

「マルム! ここはスーパーサウルスの時と同じやり方でいこう!」

 

「スーパーサウルスの時…了解! あれね!」

 

 まず2人はそれぞれもう1枚の恐竜カードをスキャンし、召喚する。

 

「ディノスラーッシュ! 揺るがせ! ステゴサウルス!」

 

ケエェェェェ…!!

 

「ディノスラーッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス!」

 

キュオォォォォン!!

 

 アメジストとパラパラが追加で成体化し、大地に降り立つ。それから2人は即座に技カードを発動した。

 

「いくぞアメジスト! 『大腕震撃(ブラキオクラッシャー)』!」

 

「パラパラ、ランラン! 2頭で合体攻撃よ! 『超竜合体(ツープラトンクラッシュ)』!」

 

 アメジストが咆哮を響かせると足元からブラキオサウルスがせり上がり、パラパラとランランが高く嘶くと彼らを守るようにディプロドクス・ハロルムとスーパーサウルスが姿を現す。

 こうして、この場に4体の巨大竜脚類が揃い踏みする形となった。

 

 まず始めに動いたのは、アメジストとブラキオサウルスだった。ブラキオサウルスが足を踏み鳴らして大地を揺さぶり、アンペロサウルスとドレッドノータスの足を止める。そこから更にブラキオの首を走り抜けたアメジストが宙へ飛び出し、激しく縦回転しながらドレッドノータスに突撃をかける。

 ドレッドノータスも応戦しようと水流ブレスを放つが、足元がぐらついてるせいで狙いが定まらず迎撃できない。

 

 そうしているうちに、とうとうアメジストがドレッドノータスの脳天に強烈な一撃を加えた。これには相手も耐えきれず、轟音と凄まじい震動を響かせながら大地に倒れ込む。

 そして完全に無防備となったアンペロサウルスを挟み撃ちにする形で、ディプロドクスとスーパーサウルスが位置取る。2頭は互いに息を合わせ、両前脚を大地に叩きつけた。その衝撃波で推定10数トンはあるはずのアンペロサウルスの体が大きく宙へ浮き上がる。そこへディプロドクスとスーパーサウルスが首をしならせ、アンペロサウルスにトドメの挟み込みを食らわせた。

 

 これにはアンペロサウルスも耐えきれずにカードに戻り、それと同時にドレッドノータスもカードになる。どんなに強力な恐竜であっても、お助け恐竜のルールからは逃れられないのだ。

 巨大竜脚類達で物理的にロトが近づけない隙にリュウタが駆け出し、カードを2枚とも回収した。

 

「よっしゃあ! アンペロサウルスもドレッドノータスもいっただきぃ!」

 

「今回もうまくやれたわね! パラパラもランランも、よく頑張ったわ!」

 

「アメジストもブラキオサウルスもありがとう。君達のお陰でドレッドノータスを足止めさせられたよ」

 

 マルムとオウガの激励を受け、恐竜達は自慢げに咆哮を上げる。

 …と、その時。頭上から響いてきたジェットエンジンの音に4人が振り向くと、飛行機で去るロトの姿があった。どうやら手出しできないと判断して早々に諦めたようだ。

 

『今は君達にアンペロサウルスは預けておくよ。でもいつか必ず取り返しに行くからな!』

 

 そう言い残し、ロトの飛行機はすっかり暗くなった夜空へと消えていく。見るとその空には、美麗なオーロラがかかっていた。

 この世のものとは思えぬ幻想的な雰囲気に、4人だけではなく恐竜達も思わず息を呑む。

 

「オーロラだ…」

 

「綺麗ね…」

 

『なんと美しい…こんなものを見るのは初めてだ…』

 

「…よし! このオーロラに誓って、恐竜達のためにこれからもアクト団と戦うぞ!」

 

「「「「おーっ!」」」」

 

 オーロラが放つ淡い光の下で、Dキッズは恐竜を守るため戦い続けることを改めて誓ったのだった…。

 

 




恐竜図鑑コーナー!

「今回の恐竜は、難攻不落の巨躯『アンペロサウルス』!」

「名前の意味は『ブドウ畑のトカゲ』。これは最初に化石が見つかった場所がブドウ畑だったことに由来しているんだ。
発掘地はフランスで、白亜紀末期に生息していたと考えられているよ」

「全長は12〜15メートルくらいで、竜脚類にしてはけっこう小さめなのね」

「それでも当時のヨーロッパ地域に生息していた恐竜の中ではかなり大きい方だったらしいよ。
それと、本種最大の特徴である背中を覆う装甲は、1つ1つが最大28センチもあるものだったんだ。このことから、一時はアンキロサウルス並の守備性能を持った竜脚類として考えられていたんだよ」

「いた、ってことは今はそうじゃないのか?」

「前にサルタサウルスの時も解説してたけど、近年の研究だとアンペロサウルスを含むティタノサウルス類の恐竜が持つ装甲は、防御のためじゃなくミネラルの貯蔵庫の役割を果たしていたという学説が出てきたんだ。
だから案外そこまで硬い構造じゃないのかもしれないね」

「研究が進むと色んなことがわかってくるんだなぁ…」


ということで、今回はここまでです。
今回の話では、オルペウスさんから提案していただいた『無敵艦砲〈ドレッドイージス〉』を使わせてもらいました!
元々自分で考えていた方は『不沈艦進水〈ドレッドラウンチ〉』だったのですが、そんなものよりも遥かにセンスのよい技名にすることができました。読者の皆様も気に入っていただけたら何よりです。
ノーピスも着々と最終盤の準備を進めており、いよいよDキッズアドベンチャー編もラストが見えてくる段階になってまいりました。
それでは次回第42話『お注射ドクター竜野中生!アジ島で検診のお時間だァ!』「お注射だよぉぉ!」…ご存知マルムの父親が大暴れする回です。この回では初の新生代生物や、別次元では裏切りの末命を落としたあの人物のオマージュキャラも登場予定です。
是非楽しみにお待ち下さい!


※追記:新技『無敵艦砲』の説明を設定集に追記しました。
   エンピロが『無敵艦砲』を使えるようになりました。
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