古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
それでは、最後までお楽しみ下さい。
アジ島 食堂
アジ島内の施設へと連行された中生は、しばらく食堂で待たされていた。
やがて部屋の扉が開くと、電動歩行器を手にしたソーノイダがウサラパ達に付き添われる形で現れる。
「お主が竜の医者ぞいか。今日はよろしく頼むぞい」
「いやぁ、お世話になります。それで、恐竜はどちらに?」
「そこにおる3匹ぞい」
ソーノイダの指さす先には、鼻水を垂らしながら体を震わせるティラノ達の姿がある。彼らは医者を見るのが初めてのようで、どこか不思議そうな顔で中生を見ていた。
「おお、これは可哀想に…。待っていなさい。今治してあげるよ。…これでね!」
そう言いながら中生は特大注射器を両手で構える。その瞬間、3匹の表情が恐怖と絶望に塗り替えられ、一目散に彼から逃げ始めた。
「こらこらお前達! 風邪を治してくれるのじゃから大人しくするぞい!
…おい、ウサラパ! エド! 何をやっとるか! 奴らを取り押さえるぞい!」
「は、はいな!」
ソーノイダに指示を飛ばされてウサラパ達もティラノ達を確保するべく動き出すが、ちょこまかと動き回る彼ら相手では追いつくことすら難しそうだ。
そんなことをしている内に、食堂の扉が開いてタルボーンヌが入ってくる。これを好機と見たティラノとスピノは素早く駆け出し、彼女の股下をくぐり抜けて部屋から逃げ出していった。
「おいこらーっ! どこに行くぞい!
タルボーンヌ! せめてサイカだけは捕まえるぞい!」
「むんっ!」
ここ最近では珍しく、タルボーンヌはソーノイダの指示に正確に従ってサイカを確保した。身動きの取れなくなったサイカに中生が躙り寄り、注射を開始する…。
「こんなに早くまたこの注射器を使える機会が巡ってくるなんて夢みたいだ…。
でもこれで、風邪もすぐに良くなるよ」
「「あわわわ…」」
注射の針の痛みか、薬剤の染みる感覚が嫌なのかは分からないが、注射をされたサイカは大粒の涙を流す。
その光景を前に、ウサラパとエドは思わず自分達も同じ目に遭ったかのような気分になってしまったのだった。
「さぁて、この子はこれで大丈夫。あとはどこかに行ってしまった2匹も探さないとなぁ」
そう口にしながら中生が食堂を退出していく。それを見送ったソーノイダは、寄り添って震えているウサラパとエドに檄を飛ばした。
「おいお前達! ここはこの医者に協力してティラノ達を探し出してくるのだぞい!」
「「ヘイヘイホー!」」
かくして、アジ島を舞台にした追いかけっこが幕を開けたのだった…。
アジ島 ビーチ
一方こちらでは、ノラッティ〜とリアスが並んで波打ち際を歩いている。昂る気分を抑えきれなくなったのか、そこで唐突にノラッティ〜が歌い出した。
「ディ〜ノディ〜〜ノ〜♪ アモーレ許してム〜チョ〜♪ こ〜れ〜か〜〜ら〜♪ 愛に生きるか〜ら〜♪」
「今の歌って…もしかしてあなた、あの時の…?」
「やっと思い出してくれたザンスね! ミーはノラッティ〜というザンス」
「あなた、確かアクト団なのよね?」
「えっ…そ…それは…」
リアスの問いかけに、ノラッティ〜は思わず口ごもる。正直に言ってしまえばリアスに嫌われてしまうかもしれない…そんな心理が働いたのだろう。
だが彼女を前に嘘をつくことはできないと思い直し、ゆっくり口を開く。
「…そうザンス。ミーはここで工作員メンバーの1人として働いているザンス」
「それなら教えて。あなた達は私達の家をどうやってここへ持ってきたの?」
「それは…瞬間…移動? 装置を使ったザンスよ」
「瞬間移動…? あんなに大きなものを?」
「我が泣く子も黙る秘密結社アクト団驚異のテクノロジーを使えば、この程度簡単なものザンス」
「その装置を見せて!」
「えっ、いやでも部外者をマシン区域に入れる訳には…」
「お願い…ノラッティ〜さん…」
組織に所属する一員として、ノラッティ〜はアクト団の技術を死守しなければならない立場にある。だからと言って、惚れた弱みに抗えないのがノラッティ〜という人間の性質だった。
「…リアスさんのお願いなら、聞かない訳にはいかないザンス…。
でも、みんなには秘密ザンスよ? もしバレたらドクターにタルボーンヌより怖ーいおしおきされちゃうザンスから」
「ありがとう、ノラッティ〜さん!
…でも、連れて行ってもらう前に1ついいかしら?」
「何ザンス?」
「その…着替えてきてもいいかしら? パジャマ姿のままノラッティ〜さんの前じゃ恥ずかしいわ…」
「のわーっ!?」
リアスの羞恥に満ちた表情や思わせぶりな態度で、ノラッティ〜の心からソーノイダへの申し訳なさや恐怖といった感情が纏めて消し飛んでしまう。これもまた、彼の人となりがよく分かる場面であった。
「も、もももも勿論ザンス! むしろここまで気が利かなくて、申し訳ないザンス!」
「いえ、こちらこそ…。それじゃあ着替えてくるから、家の前で待っていてもらえるかしら…?」
「合点承知! ザンス!」
こうしてリアスは、ノラッティ〜に見送られながら家の中へ戻ることに成功した。玄関を通り抜けて2階に上がったところで、彼女の表情は一瞬でいつもの冷静なものへ戻る。それからまず彼女が向かったのは、妹マルムの部屋だった。
「マルム!」
「あっ、お姉ちゃん! 良かった…無事だったのね」
「それはこっちのセリフよ。よく見つからなかったわね」
「パラパラ達と一緒にタンスの中に隠れて難を逃れられたの…。あっ、そうだ! 古代博士達に助けを求めようとしたんだけど、ディノホルダーが繋がらないの! これって…」
「きっと前と同じように妨害電波が出ているのね。大丈夫。ここは私に任せて。必ず脱出方法を見つけてくるわ」
「お姉ちゃん…うん! アタシ待ってるからね!」
それからリアスは自室でいつもの白衣姿に着替えると、今度は病院区画へと向かう。そこの一室には、根鳥と彼が連れてきた猫の姿があった。
「根鳥さん、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」
「いやいや、どうせ仕事もないしそれは別に構わないんだが…一体あいつらは何者なんだ? 恐竜が何とか言ってたが、もしかして最近よくニュースで言われてた、世界各地に出てる恐竜らしきものと関係があるのか?」
「結論から言えば…そうよ。彼らは世界各地に出現した恐竜を捕獲しようとしていて、私の所属するDラボでは彼らから恐竜を守る活動をしているの」
「そいつは…驚いたな…。何てこった。おれは今の今まで、全部AIとかのフェイクかと思って冷笑してたんだが…」
「今ここは彼らの基地の中なの。だからあなたはここで静かに待っていて。私が必ず帰る方法を見つけてくるから」
「わ、分かった。正直理解が及ばないことばかりで頭が混乱してるが…あんたの言葉を信じるぜ」
「ありがとう。それじゃあその猫ちゃんも…あら?」
と、そこでリアスの視線が猫に固定される。
「…なんだかその猫ちゃん、少し大きくなったんじゃない?」
「やっぱりそうなのか? おれもチョコバーを食い終わったところで思ったんだが…てっきり見間違いかと…」
「それにしても、この子まるで…」
その時リアスの脳裏に過ったのは、以前シベリアで見つかったとある新生代哺乳類だった。あの時見つかったミイラ死体に、この猫はよく似ている気がする…。
「…いえ、何でもないわ。それじゃあ、ここをお願いね」
「…? お、おう。任されたぜ」
心に浮かんだ疑念を振り払うように頭を振り、リアスはその場を後にする。そして玄関前で待つノラッティ〜のもとへ向かったのだった…。
アジ島 とある一区画
「う〜ん…ここはどこかなぁ? 恐竜を追いかけているうちに、私が迷子になってしまったぞ」
その頃、中生は広大なアクト団基地の中で迷子になってしまっていた。ティラノとスピノを追って単身飛び出した彼が悪いのだが、このままでは追跡どころではない。
あてもなく彷徨い歩き始めた中生は、通路の曲がり角を右に折れようとしたところ…。
「うわっ!?」
「おっと、ごめんねボク。大丈夫かい?」
ちょうどその方向からやってきたロトとぶつかってしまったのだ。助け起こそうと中生は手を差し出すが、ロトは意に介さず自分で起き上がった。
「あんた…誰?」
「おっと紹介が遅れたね。私は竜野中生。三畳市で獣医師をやっている者でね、今日はソーノイダさんという人に頼まれて恐竜の治療にやってきたんだよ。
君もここで生活しているのかい?」
「…それは?」
ロトが指さしたのは、彼が背負っている巨大な注射器だった。流石に持ち歩き続けるのは疲れたらしい。
「これは恐竜用に特注した注射器さ。見た目こそ仰々しく感じるかもしれないけど、効き目は保証するよ」
中生の言葉を聞いたロトはしばらく黙りこくった後…躊躇いがちに口を開いた。
「…あのさ」
「おや、どうしたんだい?」
「もし、本当に治療できるなら…助けてほしい恐竜がいるんだけど…」
「おお、まだ風邪を引いている恐竜がいたのか! 是非とも案内してくれ!」
「…こっち」
それからロトは、寝込んでいるカスモサウルスの元へ中生を案内した。
「おお、これはカスモサウルスかな? 立派なものだねぇ。
さぁ、それじゃ早速注射をしようねぇ…」
その言葉と共に中生は注射器を構え、カスモサウルスの右前脚に突き刺した。カスモサウルスはビクリと体を震わせたが、最早抵抗する力もないのかされるがままである。やがて薬剤を注入し終わり、中生は注射器を引き抜いた。
「これでよし。呼吸も安定してきたようだし、一眠りすればきっとすぐ良くなるよ」
「え…本当だ…」
ややあってからカスモサウルスが安らかな寝息を立て始めたのを見て、ロトの体から一気に力が抜ける。
彼なりにかなり気を張っていたようだ。
「なるほどなるほど…君はこの子をとても大切に思っているんだね」
「大切に…? でもこいつは、ボクにとって…」
そう言いかけたところで、ロトは言葉に詰まる。確かに最初は、アクト団から『Sin-D』の影響力を排除するための手段…つまるところただの道具としてカスモサウルスを使うことに決めただけのはずだった。
(それなら…どうしてボクは、こんなにカスモサウルスを心配しているんだ? どうしてここまで一生懸命看病までしてきたんだ…?)
「私も恐竜のことを全て知っている訳ではないからはっきりとは言い切れないけど…きっとカスモサウルスは、君のことを信頼しているんだと思うよ。
そうでなければ、こんな無防備な姿を晒し続けるはずがないだろう?」
「……」
「さぁて、それじゃあこのカスモサウルスの治療も終わったし、残りの子達も…」
「…ここから出て2つ目の角を右方向へ」
「ん?」
「そうすれば地上部分に出られるよ。ティラノもスピノも外で遊ぶことが多いから、多分ジャングルのどこかに潜んでるはず」
「おや、これはどうもありがとう! さぁて恐竜ちゃん達…検診のお時間だよ〜!」
意気揚々と駆け出していく中生を見送り、ロトはカスモサウルスに寄り添うようにして座り込んだ。
(…あの医者が言ってることに根拠なんかない。何よりカスモサウルスには、超アクト化の改造を施した時に感情にストッパーをかけてるんだ。
信頼だとか、そんなものを抱くことはない…はずだ)
自分に言い聞かせるように、ロトは心の中でその言葉を反芻する。
(でも…この気持ちは何だろう。
なんだか久しく忘れていた…大切な何かを拾い上げることができたような気がする…)
アジ島 地上部分
「「ぬぎぎぎぎ…」」
『ギャーッ! ギャーーッ!!』
「あの医者が来るまで大人しくしてるッス!」
「こんのぉ…逃げるんじゃないわよぉ…」
地上部分では、スピノがウサラパとエドに2人がかりで取り押さえられていた。必死に抵抗するスピノを取り押さえるのは、大人2人でもなかなかキツそうである。
「さてさて、恐竜ちゃんは…おっ! 早速あそこに発見!」
そこへ中生が駆けつけると早速彼らの姿を発見し、注射器を手に突進した。
「ふンっ!」
「え? ちょっと…」
しかしその時、脇から割り込んだタルボーンヌが突然ウサラパを抱え込んだのだ。スピノ目がけて突き進んでいた注射器の針は、ウサラパの尻に突き刺さってしまう。
「イヤーーーッ!!」
「あっ…ごめんね」
幸い薬剤が注入されることはなかったが、想像を絶する痛みを味わったウサラパは絶叫と共に走り去っていった。どこか足取りがぎこちないのは尻を押さえているからだろう。
「あと1匹ッ!」
「お、おれは違うッスよ!?」
タルボーンヌがスピノをよそにエドを押さえつける一方、中生はしっかりスピノに注射器を刺し直した。
薬剤がみるみる内に注入されていき、スピノが声にならない悲鳴を上げる。やはり薬剤が浸透していく感覚が嫌いなようだ。
「よし、これで後は1匹だな。早速探しに行くぞぉ」
揉み合うエドとタルボーンヌをよそに、中生は意気揚々と残るティラノを探しに向かったのだった…。
アジ島地下 マシン区画
ノラッティ〜に連れられてリアスが入った部屋には、高くそそり立つ巨大なマシンが鎮座していた。
「す、すごい…こんな機械見たことがないわ…。
これはノラッティ〜さんが作ったの?」
「え? い、いや…あいにく自分はハードウェア開発は専門外ザンして…これには関わっていないザンス。
これはドクターのお知り合いの博士が作られたものだと聞いているザンスよ」
「そうなのね…あら? あそこにあるマシンは何なのかしら」
そこでリアスが、巨大マシンの横に並べられた小さめの機材の1つを指さす。
「あれは通信機ザンス。もっとも今は使えないみたいザンスね」
「使えない? どうして?」
「誰がやったのか分からないザンスけど、通信妨害のバリアが展開されてるザンスから」
「隣のあれは?」
「それが件のバリア発生装置ザンス。
ええとそれで…これザンスよ! リアスさんが見たがっていた瞬間移動装置は! 見た目はシンプルザンスけど…」
ノラッティ〜が得意げに解説を始めたのを見計らってリアスは彼から距離を取り、バリア発生装置へと躙り寄る。そして…後ろ手でそのスイッチを切った。
(マルム…後は任せたわよ)
その頃 三畳市 Dラボ
ちょうどその頃、オウガ達3人はDラボに戻ってきたところだった。
「ただいまー!」
「おおリュウタ! マルムのお母さんが言っていたことの意味、分かったのか?」
「それなんだよ父さん! 何でか分からないんだけど、マルムの家が病院ごと消えちゃったみたいなんだ!」
「警察が捜査してるみたいですけど、手がかりが何も見つからないらしく…。
肝心のマルムのお母さんの証言も、電話で教えてもらえたこと以上のことはありませんでした」
「ううむ、そういうことだったのか…。
それで、マルムに連絡は取れたかね?」
「未だに繋がりません。前に俺達がアクト団の島に行った時みたいに、いくら呼び出してもノイズばかりで…」
「…ん? アクト団の島…そうか! それだ!
きっとリアス君達は、家ごとアクト団に誘拐されたんだ!」
いかにも名案、といった感じで古代博士は胸を張るが、それに対してオウガ達の反応は冷ややかだった。
「えぇ…いきなり何言い出すんだよ父さん」
「古代博士、何でもかんでもアクト団のせいにするのはどうかと思いますよ」
「…いや、でもリュウタ、思い出してみてくれ」
が、そこでレックスが待ったをかける。
「僕達があの基地の奥深くに降りた時、あそこにはすごく大きくてハイテクそうな機械が鎮座してた。あれくらいのものを作れる技術力があるなら、こんな常識外れの現象も実現できるんじゃないのか?」
「そうかなぁ…」
いまいち納得いっていないリュウタが首を傾げた…その時。
彼らのディノラウザーやディノホルダーが一斉に着信を知らせた。相手は…マルムであった。
「マルムだ!」
「すぐに出るんだ!」
古代博士の言葉とほぼ同時に3人は通話ボタンを押す。
「マルム、無事か!」
『みんな! 良かった、やっと通じたわ!』
「一体何があったんだ?」
『分からないの。気がついたら家ごとアクト団の島に連れてこられてて…』
「やはり私の予想通りだったか…! しかしアクト団め、そんな技術を握っていたとは…侮れんな」
「そこにリアスさんはいるの?」
『今お姉ちゃんは脱出方法を探しに行ってくれてるわ。でもまだ戻ってきてなくて…』
「そうか…ならリアスさんを待ったほうがいいのかな…いやでももしその前にまた通話できなくなったことを考えると…。
そうだ! マルム、パラパラかランランを召喚するんだ! そうすればその反応を追って俺達も現地に行けるはず!」
「おっ、いい考えじゃんオウガ!」
「確かに…それならまた妨害電波を流されても僕たちで救出に向かえるね。
マルム、今のオウガの話、聞いていたか?」
『勿論よ! それじゃあ早速家から出て身を隠せる場所を探すわね!』
「くれぐれも気をつけるんだぞ!」
そこまで会話をしたところで、通話は切られたのだった。
アジ島 マルムの部屋
「…よし! そうと決まればすぐ行動を起こさなくちゃ!」
とはいえ、今は敵地のド真ん中にいるという事実は変わらない。そこでマルムはまずパラパラとランランをカードに戻し、部屋の扉を少しだけ開けて様子を窺った。
(誰もいないわね。これなら…)
アクト団の姿がないことを確認したところで、彼女は静かに階段を降り、玄関を目指す。そして開け放たれた玄関から周囲に注意を払いつつ、素早く茂みの中へ飛び込んだ。
「ここまでは順調ね。それじゃあ…頼むわよ、パラパラ」
そう囁くように口にすると、マルムはパラパラのカードをディノホルダーにスキャンしたのだった。
ノーピスの研究室
その頃、ここノーピスの研究室には妨害電波のバリアが解除されたことの通知が来ているはずだった。
しかし、その通知は無視されてしまっていた。それは何故なのかというと…。
「フフフ…なるほどな。このプログラムを作った奴はなかなかできる奴と見える。それでいて性格も悪い、俺好みの開発者だな」
『笑ってねぇでそのプログラムを何とかしてくれねぇか?
このところずっーと社内のあらゆるパソコンからその『ハッハッハー』が響き続けるせいで頭がおかしくなりそうなんだよ』
「いや、失礼。だがこの問題を解決するにはプログラムのソースコードを1つずつ片っ端から調べないといけないな。恐らく一生かかっても終わらないだろう。
もっともそれは…この時代の技術力なら、という話だがね」
『てぇことは…』
「あぁ。我がアクト団の技術力を使えば数日で完全復旧させることが可能だ」
『それでも数日はかかるってのかよ…』
「そこに文句を付けられても困る。それでもこの時代のそれと比べれば圧倒的に高速化ができているのだ。
それともどうする? お前達のところで大量リストラした元社員を1人1人洗って、このプログラムを仕込んだ犯人を探すか?
それとも、全てのデータを喪失するリスクを負って社内のシステムを一度リセットするか?」
『…そんなこと、実現不可能なことぐらい分かるだろうが』
「ならば大人しく待っていろ。心配するな。件の『Xデー』にさしたる支障はない」
『…分かった。ボスにはそう報告させてもらうぜ』
「好きにしろ。では、俺もプログラムの解析を始めるとしよう」
という訳で、ジェイソンから送られてきた別件の対応に集中していたため気付かなかった様子であった。
アジ島 マシン区画
「ねぇ、ノラッティ〜さん。その装置、少し触らせてもらってもいいかしら?」
「へ? 勿論ミーの見てる前でなら大丈夫ザンスけど…くれぐれも壊さないようにお願いするザンス」
「ありがとう、それじゃあ…」
早速瞬間移動装置を操作してみようとしたリアスだったが、装置はうんともすんとも言わない。
「どうしてかしら? 全然動かないわよ」
「動かない? えーっと…そういえばノーピスはその装置を使う前にアクトホルダーをセットしていたザンス。もしかしたらそれが起動キーになってたのかもしれないザンスね」
(アクトホルダー…ディノホルダーと同じく、石版を核に用いたデバイスのことかしら?
それならここにマルムを呼べば…)
「さて、それじゃあもうこの辺でいいザンスか?
そろそろリアスさんのお父さんも診察を終える頃だろうし、家に戻った方がいいかもしれないザンス」
「…そうね。ありがとう、ノラッティ〜さん」
「い、いいいいやいやいや! お褒めに預かり光栄ザンス!」
すっかり浮かれた様子のノラッティ〜をよそに、リアスは頭の中で脱出のための算段をつけていたのだった。
アジ島 浜辺
浜辺の一角で、ウサラパとエドは流木にもたれかかって暫しの休憩を取っていた。
「はぁ…タルボーンヌのせいで酷い目に遭ったよ…」
「ほんと。お陰で余計に疲れたッス…」
「もうあれじゃ1回ぶん殴ってでも機能停止させて、もう一度修理した方がいいんじゃないのかい?」
「でも相手はタルボーンヌッスよ? そもそも殴れる間合いまで近づけるッスかね」
「…やっぱ無理かぁ」
そんな会話をし、2人は大きくため息をつく。するとその時、彼らのアクトホルダーから恐竜出現のアラームが鳴り響いた。
「あれ、恐竜が出たみたいッス」
「よりにもよって今かぁい? 一応スピノとサイカは出せなくもないけど、治りかけなのに無理させるなってドクターに怒られそうねぇ」
「ここから近けりゃいいんスけどね。えーっとここは…太平洋のド真ん中ッスね」
「太平洋のぉ? そんなとこにある島なんて…」
アタシ達の島くらいじゃない?…そうウサラパが言おうとした時、彼らの眼前に摩訶不思議な光が差し込む。
あまりの眩さに2人は目を覆っていたが、やがて光が止むといつの間にかそこにはオウガ達Dキッズの3人が立っていた。
「よし、到着…ってええっ!? いきなりオバさん!?」
「だぁれがオバさんじゃゴルルァァッ!!」
「そ、そんなことより! お前ら一体どうやってここに入ってきたんスか! この周りには海しかないんスよ!」
「そぉぉんなことこそどうだっていいだろうエド!
相変わらずクソ生意気な無断侵入ガキンチョには相応の制裁をしなきゃねぇ…出てらっしゃいスピノ!」
グァギュオォォォォッ!!
先程まではあれほど理性的だったというのに、一気に沸騰してしまったウサラパは躊躇いもなくアクトホルダーでスピノを召喚する。
そして、それに応じる形でオウガ達もディノラウザーやディノホルダーを構えた。
「ディノスラーッシュ! 轟け! スティラコサウルス!」
ギュオォォォォッ!!
「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」
グオォォォォン!!
「ディノスラーッシュ! 揺るがせ! ステゴサウルス!」
ケエェェェェ…!!
Dキッズの恐竜達も召喚され、スピノと相対する形で降り立つ。ウサラパはそれを見て数上の不利を察したようで、エドを叱咤する。
「ほらほらエド! お前もサイカを出すんだよ! スピノ1匹に負担をかけるつもりかい?」
「さっきと言ってることが違うじゃないッスか…。
でもこうなっちゃったからには、やるしかないッスよね。
アクトスラーッシュ! 揺るがせ! サイカニア!」
ウオォォオォォォォッ!!
サイカも召喚され、スピノと並び立つ。かくして、ここ最近では久々のDキッズvsアクト団工作員の恐竜バトルが始まったのだった…。
その頃 竜野動物病院
グルルルル…
「ん? どうした?」
浜辺で恐竜バトルが始まった頃、根鳥の側で眠っていたはずの猫が突然目を覚ました。それから突然駆け出すと、部屋から外へと出ていってしまったのである。
「おっ、おい! どこに行くんだよ!」
根鳥が声をかけるものの猫は足を止めることなく、開け放たれた玄関から外へ走っていく。
「! くそっ、外に…! 外にはあいつらの恐竜が闊歩してるかもしれないってのに…だが、だからと言って見てられねぇよ!」
まるで自分に言い聞かせるかのようにそう口にすると、根鳥は猫の後を追っていったのだった。
一方浜辺でのDキッズvsアクト団の戦いは、意外にも数で勝っているはずのDキッズが押し込まれる形となっていた。
アメジストはサイカと五分五分の競り合いを繰り広げているのだが、イナズマとエースは2頭がかりにも関わらずスピノに圧倒されていたのだ。
それも無理はない。ただの腹痛だったアメジストとは違い、イナズマとエースは風邪を引いたにも関わらず中生謹製の注射を受け入れなかったためだ。勿論飲み薬ですぐ体調が改善できるはずもないため、泣きながら注射を受け入れたスピノとサイカとはパフォーマンスに差が出るのも無理のないことだった。
「くっそぉ…イナズマもエースも、体がついていってない…」
「やっぱり無理矢理にでも注射を受けさせるべきだったかな…。オウガ、アメジストは…」
「サイカニアが全力でガードしてきてるから無理だよ。それに今日レクシィは家で安静にしてもらってるし…」
とは言え、このままではイナズマとエースがスピノに倒されかねない。そうなってしまえばアメジストに負担をかけてしまうことになると判断したのか、リュウタが『
しかしイナズマが放った電撃は実に弱々しく、スピノに届く前に霧散してしまった。
「ダメだ…技でもどうにもならない…」
「こうなったら、俺とアメジストで活路を切り開くしかないか…」
そう呟き、オウガがディノラウザーからカードを取り出そうとした…その時だった。
突然横のジャングルの中から深緑の風が吹き込んだかと思うと、イナズマとエースを包みこんだ。
すると、どうしたことだろうか。たちまち2頭の体に活力が漲り、すっかり元気になったのである。
「これは…まさか『
「ってことは…」
オウガ達と、ついでにウサラパとエドの視線がジャングルの方へ向けられる。そこにいたのは、マルムとパラパラだった。オウガの想像通り、パラパラが『
「お待たせ! これでイナズマもエースも元気になったはずよ!」
「「「マルム!」」」
「思わぬ伏兵ッス!」
「キーッ! あんた一体どこから湧いて出てきたのよ! さっきはいなかったじゃない!」
「オバさん達がここに拉致してきた竜野動物病院はアタシん家なんだから、アタシがここにいるのは当たり前よ!
さあ、パラパラ! オバさん達に一矢報いるわよ!」
「何度も何度もオバさん言うなーッ!
スピノ! サイカ! 返り討ちにしておしまーいッ!」
顔を真っ赤に染めて激怒しながら、ウサラパがそう指示を出す。しかし既に2頭は体調上でのアドバンテージを失った上、更に数の差も広げられてしまっていた。
この機会を逃さず、レックスが再び技カードを発動した。
「決めるぞエース! 『
エースの周囲を風が渦巻き、やがてそれは口の中ほと集まっていく。そしてエースが風のブレスを吐き出そうとした時、その場へ1つの影が飛び込んだ。それは、根鳥が持ち込んだあの子猫だったのである。
更にそれを追って、根鳥もその場に現れる。
「えっ? うそ!? あれって…!」
「根鳥さんに…あの時の子猫も! このままじゃ『
「おいレックス! エースの技を止めさせろ!」
「そんなこと言われても…今更無理だよ!」
エースの『
だが、その時不思議なことが起こった。
子猫は荒れ狂う風の中で苦しむどころか風を取り込み、その体を光り輝かせて始めたのだ。
やがて光が晴れると…子猫の姿はどこにもなかった。代わりにその場に現れたのは、筋骨隆々とした体格と枯れ草色の毛皮、そして大きく発達した1対の犬歯を備える哺乳類だった。
グルオォォォォッ!!
「あれって…」
「間違いない…サーベルタイガーの代表種、スミロドンだ!」
「嘘だろ…ただの猫にしては少し変だと思ってたが…スミロドンだって…!?」
その哺乳類の名は、スミロドン。マンモスと並ぶ知名度を誇る氷河期のスーパースターだ。
そして、スミロドンの顕現と共にオウガのディノラウザーも異次元恐竜出現を検知した旨のアラームを響かせる。
「あの子、オーウェンさんの世界の生き物だったんだ…」
そして彼らが見守る中、スミロドンは攻撃態勢に入った。力強く地を蹴って駆け出すと、その逞しい前脚でスピノの横っ面に猫パンチを浴びせたのだ。更にスピノが怯んだ隙に再び飛びかかり、2発目をお見舞いする。
この連撃にたまらずスピノは倒れ込んでしまうが、そこでスミロドンはその首筋へ取り付くと、自慢の犬歯を深々と突き立てた。これがトドメとなり、スピノの体はカードに戻っていった。
「あわわわ…見た目の割にけっこう強いッス…」
「どういうことぉ…? 何で恐竜ですらないサーベルタイガーまでいるわけぇ…?」
突如現れたスミロドンに瞬く間にスピノを沈められ、ウサラパとエドは呆然としていた。
更にそこへ、たまたまノラッティ〜とリアスもやって来る。
「なっ、何ザンスこれは!? 何でガキンチョ達に…スミロドンまでいるザンスか!?」
そしてノラッティ〜が目の前の出来事に気を取られている隙に、リアスはマルムのそばへ駆け寄り、声を潜めて話しかけた。
「マルム。脱出するための方法が分かったわ」
「ほんと!?」
「ここの基地の最深部に瞬間移動装置があるの。石版を使えば、それを起動キーにして家を戻せるかもしれないわ。あなたのディノホルダーを使いたいから一緒に来てちょうだい」
「えっ? でも…」
戦線を投げ捨てても大丈夫だろうか…そう考えたマルムの背を、オウガ達が言葉で押した。
「行ってこいよ、マルム!」
「そうだよ。もう残りはサイカニアだけだし、僕たちで大丈夫だ」
「だから安心してリアスさんと行ってきて。そして…みんなで三畳市に帰ろう!」
「みんな…ありがとう!」
「決まりね。…それじゃあリュウタ、レックス君、オウガ君。ここは任せたわよ」
「「「了解!」」」
オウガ達に見送られ、リアスとマルムがその場を離れていく。
「さぁ…フィニッシュといこう! アメジスト!」
「最後もしっかり決めるぞ! エース!」
そして残るサイカに向け、オウガとレックスはそれぞれ技カードを発動させた。
「『
「『
それぞれの属性の色の光に包まれ、アメジストとエースが雄叫びを上げる。まずアメジストがサイカの周囲に流砂の蟻地獄を作り出し、身動きを取れなくさせる。そこへエースが竜巻を引き起こし、サイカを砂と共に風の中へ巻き込む。2つの技によって作られた砂塵の大竜巻の責め苦を受けたサイカはカードへと戻され、砂と共にアジ島のどこかへ吹き飛ばされていってしまった。
「あーっ! サイカのカードが!」
「何してんだい! 早く追いかけるんだよ!」
「ヘイヘイホー…」
ウサラパ達3人もカードを追いかけてジャングルの中へと消えていき…その場にはオウガ達が残された。
「やったね、レックス!」
「あぁ、エースもすっかり本調子に戻って一安心だよ」
「何とか勝てたのは良かったけどさぁ…あいつ、どうする?」
リュウタの指さす先には、あのスミロドンがいた。もし襲いかかってきたら…そんな最悪の事態が想定されては、オウガ達も迂闊に恐竜を戻せないのだ。
と、そこへ根鳥がスミロドンに歩み寄った。
「お、お前すごいな。あんなデカい恐竜を倒しちまうなんてさ。
で…でもさ、ほら、お前まだ元気になったばっかりだろ? 無茶すると体に毒だし、今日はもう帰って休もうぜ、な?」
身振り手振りを交えつつ、病院に戻るよう根鳥は必死で説き伏せようとする。
そんな根鳥の言葉に耳を貸したのか、スミロドンはクルリと踵を返してマルムの家の方へ戻っていった。
「「「ホッ…」」」
手を貸してくれたスミロドンと交戦する事態にならずに済み、3人は胸をなで下ろしたのだった。
アジ島 マシン区画
「さあ、ここよ。まずはここの窪みにディノホルダーをセットしてちょうだい」
「分かったわ、お姉ちゃん」
マルムがディノホルダーを嵌め込むと、モニターに光が宿り操作可能な状態となる。続けてリアスがコンソールに向き合い、転送準備を始めた。
「不思議ね…。私達が作ったテレポートシステムと似たような構造だわ。
あとはこれで…転送待機時間は5分もあれば大丈夫よね?」
「うん!」
「それじゃあ…いくわよ!」
リアスが転送決定のコマンドを入力し、装置を起動する。
『瞬間移動装置を起動します。転送5分前…』
マシンから機械音声によるカウントダウンが響く中、マルムとリアスは速やかにその場を後にしたのだった…。
アジ島 ジャングル地帯
一方その頃、中生から逃げ惑っていたティラノは単身ジャングルの中を突き進んでいた。中生から逃げるうちに、彼ですら知らないジャングルの奥地に入り込んでしまったようだ。
それでも進み続けるティラノだったが、唐突に視界が開ける。見るとそこは小さな空き地になっていた。
更に彼の目を惹いたのは、土を盛り上げた塚の周りでじゃれ合う赤ん坊の恐竜達の姿だった。ディーノ達とよく似た姿ではあるものの、彼らよりも更に小さい。
どうして今まで一度も見たことがない恐竜達がここにいるんだろう…。
そんなことを考えていたティラノの目の前に、鋭い鉤爪を備えた足が振り下ろされる。恐る恐る彼が視線を上げると、そこには…逆光の中に4体の恐竜の姿が浮かび上がっていた。先程の赤ん坊を守るように立ちはだかるその姿からは、自身に対する明確な敵意が迸っている…。
キシャアァァァァッ!!
『ギャーッ!?』
その内の1頭…白い個体から威嚇の咆哮を浴びせられ、驚いたティラノは転がるようにその場から逃げ出した。風邪で調子が落ちているだとかそんなことをまるで感じさせないほどの凄まじい速度で走りに走りに走り続け…ようやく見覚えのある海岸に辿り着いた。
ホッと一息つくのと同時に、体から一気に力が抜ける。それから疲労感の赴くままに砂の上に横になり、少し休もうとしたその時…。
「おやおやおや、こんなところにいたのか。さぁ、お注射しようねぇ」
悪魔の声が、聞こえた。
転送準備を終えたリアスとマルムが自宅へと戻る道中、辺りに悲痛な悲鳴が響き渡る。そちらへと2人が歩みを進めると、ティラノに注射器を突き刺す中生の姿があった。
「やったぞ…これでこの島の全ての恐竜に注射を打てた…。感無量だ…」
「お父さん! もう帰るから、早く家の中に入ってちょうだい!」
「おお、それは良かった。ちょうど今最後の恐竜を治療したところだったんだよ」
「そ、そうなの。満足できたみたいで良かったわ。
さぁ、早くしないと帰れなくなっちゃう。急いで!」
マルムに背中を押され、中生は家へと戻っていく。それを見送っていたリアスの前に、一輪の花が差し出された。
「あ、ノラッティ〜さん…」
「リアスさん。赤い糸がある限り、また会えるザンスよ」
「あ、ありがとう。それじゃあ、さようなら…」
「またお会いしましょう、ザンス」
リアスはノラッティ〜が差し出した花を躊躇いがちに受け取り、家の中へと入っていった。
『転送開始まで、10秒前。9、8、7、6、5、4、3、2、1、転送、今!』
カウントダウンの終了と共に、マルムの家が眩い光に包まれ、元の場所へと転送されていく。
光の中へ消えていくマルムの家を、ノラッティ〜は手を振りながら見送ったのだった。
その後 三畳市 Dラボ
ようやくDラボへと戻ってきたリアスを、古代博士とミサは暖かく出迎える。
「博士。今回はご心配をおかけしました。
ミサさんも、負担をかけてしまってごめんなさいね」
「いやいや、気にすることはないよリアス君。君達一家が無事に帰ってこれて、私も一安心だ!」
「一時はどうなるのかと思いましたけど、何事もなく帰ってこれて本当に良かったかもね」
「ほんと! 家も無事に元の場所に戻ったし!」
「にしても、まさかアクト団があんな技術を持ってたなんて驚きだよな!」
「あれほど大きなものでも好きに引っ張ってこれるなんて…とても危険な技術だと思いますよ」
「ううむ。私もそれには同意せざるを得んな。
しかし、テレポートなら君達もいつもやってるじゃないか」
「博士。今回アクト団が使った物質移動は石版のパワーを増幅させて発動したもののようです」
「また石版か。未だに分からないことばかりのアイテムだが、ここに来て更に謎が増えてしまったな。
一体誰が何のためにこんなものを作ったのやら…」
彼らがそんな会話をしている横では、リアスがノラッティ〜から貰った花をパラパラが狙っていた。そして勢いをつけ、花に食らいつこうとしたその時…。
「パラパラちゃん。それはリアスさんが貰ってきたものなんだから、食べたらダメかもね」
『クゥン…』
ミサに阻止されてしまい、パラパラは残念そうに頬を膨らませたのだった…。
アジ島 ソーノイダの自室
その頃、ウサラパとエドはソーノイダのもとへ報告に訪れていた。もっともアジ島にまたしてもDキッズの侵入を許したとなってはまた彼から怒られかねないため、当然そのことは伏せているが。
「なるほど。恐竜達が全員治療できたのならワシから言うことは何もないぞい」
「ご尤もですわ〜」
「ご尤もッス〜」
「にしても、ノラッティ〜はどうしたぞい。何故奴だけ報告に来ないのだぞい」
「それが…分からないんですわ」
「気づいたらおれ達とは離れて行動してて…今島のどこにいるかも分からないッス…」
「一体どうしたぞい…。いつもは3人連れ立っておるくせに、変な奴ぞいなぁ…」
アジ島 ビーチエリア
「ディ〜ノディ〜〜ノ〜♪ 忘れ〜られ〜な〜い〜♪」
さてその頃ノラッティ〜はというと、また波打ち際であの奇妙な歌を口ずさんでいた。しかし、その表情には以前のような暗さはなく、むしろ希望と恋慕に満ち溢れている。
リアスと再会できたことが、彼の心の大きな支えになったようだ。
「その瞳〜♪ 愛してたもれ〜♪ ディ〜ノディ〜ノミ〜〜〜〜♪」
果たして彼の想いが成就する時は来るのだろうか…?
戻って三畳市 竜野動物病院
「それじゃあ先生。今回はお世話になりました」
「いやいや。むしろあんなことに巻き込んでしまって悪かったね」
「いえ、構いません。むしろおれにとっては、色々と世界が広がる体験でしたから」
「そうかい? それなら良かったんだけど…。
でも、良かったのかい? あの子をDラボに預けてしまって」
「はい。スミロドンの知識のない今のおれが飼ったところで、あの子を幸せにできる自信がないので。
代わりにあの子達は『Dラボに来てくれればいつでも会わせる』と約束してくれましたしね」
「そうだったのか。それは良かったねぇ。
ええとそれで、その子に名前とかは付けてあげたのかな」
「ええ、とびっきりのやつをね」
そこで一度言葉を区切り、根鳥はこう口にした。
「あの子の名前は…ディエゴ。おれの好きなサッカー選手の名前を付けることにしたんです」
恐竜図鑑コーナー!
「今回の恐竜…っていうか古代生物は、双剣の猛虎『スミロドン』!」
「名前の意味は『ナイフの歯』。上顎の犬歯がとても太く大きく発達していたことからその名前が付けられたんだよ。
体長は2メートル前後で、南北アメリカ大陸の新生代第四紀更新世から化石が発掘されているんだ」
「名前のモチーフになっただけあって、すごく大きな歯を持ってるのね〜」
「本種最大の特徴でもあるこの巨大な犬歯は強度と鋭さを兼ね備えた構造になってて、突き刺すのが得意な形状だったんだ。それに顎はなんと120°も開くから、相手の急所にこの牙を突き立てて攻撃していたと考えられているよ。
前脚や肩の筋肉が発達していたことからも、この説はかなり有力視されているね」
「見た感じすっげぇ強そうなのに、何で絶滅しちゃったんだろうな」
「実は上半身を発達させすぎたせいで後ろ脚が短くなって、速く走りにくい体になっていたんだ。
それでも当初は足が遅いマンモスやマクラウケニアのような大きな動物を獲物にしていたから何も問題はなかったんだけど…氷河期の終焉と共にそういった大型生物が激減し、その結果餌が足りなくなって絶滅したと考えられているんだよ」
「特定の分野に特化しすぎると、些細な環境の変化で一気に種の存続の危機に陥ってしまう…そんな典型例とも言えるのがこのスミロドンだね」
ということで、今回はここまでです。今回のエピソードでは、オルペウスさんから提案していただいた、スミロドンとその超技『剣歯牙突』を採用させていただきました。
2連猫パンチ→急所に牙を突き立てて稀に一撃必殺を狙える…という設計にしてみたのですが、いかがでしょうか。是非コメント等で感想をお寄せください。
ちなみに根鳥がスミロドンに付けた名前の元ネタは…勿論サッカー選手などではなく、某氷河期アニメーションから取りました。
しかし…前編に根鳥の描写を入れたせいで長くなりすぎてしまったため、原作Aパートの後半を後編に回した結果まさか更に長くなってしまうとは…読めなかった…このr(以下略)
そのため、少しとっ散らかって読みにくい文章になっていたら申し訳ありません。ご指摘が多い場合はもっと推敲してみたいと思います。
そういえば、もう日本でもプリミティブ・ウォーが公開されましたね。自分は必ず見に行く所存ですが、できればオークストリートの異変と一緒に観てきたいと思っています。
それでは次回第43話『あなや!京の都にフクイサウルスどすえ〜!』…原作のこの話は最後の恐竜フクイサウルスが登場する回のはずなんですが、何故か自分の記憶からすっぽり抜け落ちていたんですよね。
それ故いつも以上に組み立てが雑になる可能性もありますが…どうか楽しみにお待ち下さい。