古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

12 / 94
今回は中編になります。
サルタサウルス戦なので、あまり流れに変わりはないかもしれませんがご容赦下さい。


中編

その頃 オウガ達は…

 

 引き続きリュウタを探していた彼らは、遥か先にサルタサウルスがいるのを目の当たりにした。

 

「あっ、いたぞ!」

 

「竜脚類にしては小柄な体格で、背中には鋲のような鎧…。あれはサルタサウルスで間違いないと思う!」

 

「リュウタやガブより先に見つけられたわね」

 

 3人で話していると、何故かサルタサウルスがこちらの方へと向き直り、歩いてきていた。

 

「よし、エース。お前の出番だぞ…」

 

「ま、待ってレックス…」

 

「どうしたんだマルム?それにオウガまでそんなに青くなっ…」

 

 レックスは振り返ると、思わず息を呑んだ。

 サルタサウルスがこちらへ迫ってきていたのだ。

 

「みんな!退避だ!」

 

 オウガの掛け声で3人はばらばらに分かれる。

 そしてさっきまで3人がいた場所を、サルタサウルスは木々を薙ぎ倒しながら走っていく…。

 と、そんな中突然サルタサウルスの目の前に青い光が現れたかと思うと、その中からスピノが姿を現した!

 

「スピノサウルス! ってことは…」

 

 レックスが苦々しげに顔を歪める。アクト団も来ていたことに気付いたのだ。

 そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、木々の間からアクト団工作員の3人組が躍り出た。

 

「オーッホッホッホッホ! 悪いわねあんた達!

今回も恐竜はアタシ達アクト団がいただくわよ〜!」

 

「やーっぱりオバさん達だったのね!」

 

「キーッ! だーれがオバさんじゃゴラァーッ!」

 

 いつものようにマルムが挑発してウサラパがそれに乗っかり、エドとノラッティ〜が2人がかりでウサラパを宥める。

 最早恒例となった絵面であった。

 

「落ち着くザンス! ウサラパ様!

今は目の前の恐竜を確保するのが先決ザンス!」

 

「そうッスよ! だから鎮まってほしいッス!」

 

「ハァーッ、ハァーッ…そうだったね。怒りで忘れるところだったよ…。

さぁスピノ! 思う存分やっておやりーっ!」

 

 ウサラパの掛け声と共にスピノが駆け出し、サルタサウルスに飛びかかる。

 だがサルタサウルスの背の装甲に阻まれ、攻撃は失敗に終わってしまったようだった。

 再びスピノとサルタサウルスは睨み合いの態勢に入った。

 

「行け行けー! スピノー!」

 

「そこザンス! 思いっきりぶちかますザンス!」

 

「…なんか攻撃が通ってないように見えるのは気のせいッスかね…?」

 

 アクト団はエド以外戦況がわかっていないようで、スピノが攻めていると見て声援を送っている。

 その様子を観察していたオウガが、レックスとマルムに声をかけた。

 

「…どうやら今のところは大丈夫そうだ。

しばらくは様子を見て、サルタサウルスの情報収集に努めよう」

 

「もう、こんな大事な時なのにリュウタったら…」

 

「いざとなったら僕のエースにオウガのレクシィやアメジストはいるけど…アクト団のことも考えるとガブもいてほしいね。でも…今はどうしようもないか…」

 

 取り敢えずオウガ達は、今は様子見に努めることにした。今の様子ではただいたずらに恐竜達を疲れさせるだけだと判断したのである。

 

 

その頃 リュウタは…

 

「はあ…ガブも新しい恐竜も、挙句の果てにはレックス達までどこにいるのかさっぱり分からないや。コイツさえ動いてくれれば…」

 

 何とかディノホルダーを再起動させようとするリュウタだが、その努力虚しくディノホルダーはうんともすんとも言わなかった。

 それを見てリュウタはまた大きなため息をつき、すぐ近くの倒木に腰掛ける。

 気分が更に沈み込むと同時に腹の虫が鳴った。

 

「…やっぱり、母さんのハンバーグ食べてくれば良かったな…。ガブも今頃、このジャングルのどこかでお腹空かせてるのかな…?」

 

 その頃ガブは水辺で出会ったワニと睨み合いをしていたのだが、当然それはリュウタにも、オウガ達にも分かるはずはなかった。

 

 

 リュウタがすっかり項垂れている頃、オウガ達の目の前ではまだスピノとサルタサウルスが戦い続けていた。

 だが戦況はサルタサウルスの方に分があるようで、首に噛みついたスピノを薙ぎ倒し、そのまま引きずり回している。

 その光景に、オウガ達は感嘆の声を漏らさずにはいられなかった。

 

「すごいな…あのサルタサウルス…」

 

「スピノと互角に戦ってるわ!」

 

「小型とはいえ流石竜脚類。パワーとタフネスは折り紙付きだな」

 

 一方ウサラパ達も、予想以上に粘るサルタサウルスに頭を悩ませていた。

 

「あの恐竜、案外やるザンスね…」

 

「どうするッスかウサラパ様! このままだとスピノがスタミナ切れになっちゃうッスよ!」

 

「ええい狼狽えるんじゃないよ! こっちにはドクターがまた新しく作った技カードがあるじゃないの!」

 

「…そういえば、あったザンスね」

 

「でも、もう使ってもいいんスか?」

 

「今使わなくていつ使うってのさこのアンポンタン!

さっさと発動おし!」

 

 そう言ってウサラパがノラッティ〜に技カードを叩きつける。ノラッティ〜はのけぞりながらもカードを手に取り、アクトホルダーに通した。

 

「わ、分かったザンスよ! いくザンス!

『テイルスマッシュ』!」

 

 技を発動するとスピノの目が鋭く光り、サルタサウルスへ尻尾で往復ビンタを食らわせる。これまでの戦いとは違い、サルタサウルスはしっかりとダメージを食らい、横倒しになってしまった。

 

「あらあら上出来じゃなーい!

さぁ、最後の一発を決めておしまいなさいスピノちゃん!」

 

 これにはオウガ達も慌てる。このままではサルタサウルスが倒されてしまう。距離的にもカードを回収しやすい位置にいるのはアクト団だ。

 

「まずい…サルタサウルスが!」

 

「このままだとやられちゃうわ!」

 

「ここはレクシィかアメジストを出した方がいいかもしれないな…」

 

 そう言い、オウガがディノラウザーにカードを通しかけた時だった。

 

 トドメの一撃を与えるため、大きく口を開けて迫ってきたスピノへ、サルタサウルスが尻尾での連続打撃を浴びせたのだ。

 ダメージを受け、スピノが大きく後退する。

 

「もーっ、あと1発だったのに何やってるんだい!

さっさと決着をつけるんだよ!」

 

 ウサラパが地団駄を踏んで悔しがる。

 しかし、無情にもアクトホルダーから甲高い警告音が流れ出した。スピノの体力が尽きたのだ。

 

「あぁ…いいところザンしたのに…」

 

「スタミナ切れみたいッスね…」

 

「ええ〜? こんないいところでかい?」

 

 スピノが青い光に包まれ、カードへと戻っていってしまった。

 バトルフィールドも解除され、サルタサウルスはそそくさとどこかへ歩み去ろうとしている。

 

「あっ、サルタサウルスが!」

 

「すぐに追いかけよう!」

 

「今度は俺達が先に見つけないと!」

 

 オウガ達もサルタサウルスの後を追いかける。

 一方のアクト団工作員の3人組は、がっくりと肩を落としていた。

 

「何でこうなっちゃうのさ…」

 

「ここは本人に聞いてみるのが1番ザンス!」

 

 ノラッティ〜がアクトホルダーにカードを通し、スピノをチビ恐竜形態で召喚すると、出てくるなりエドの足に噛みついた。

 

「いたたたたっ! おれは餌じゃないッスよぉ!」

 

「どうやら腹ペコだったからみたいッスね!

ナーッハッハッハ!」

 

「しっかり飯食わせておかんかい!」

 

 けらけらと笑うノラッティ〜にウサラパは思い切りげんこつを食らわせたのだった…。

 

 

 その頃、リュウタは依然としてガブやDキッズの仲間たちを探していた。

 故障したディノホルダーはサンバイザーの角のところに引っかけ、更に紐で固定して止めてある。

 さらにどこで採ったのか、大きな葉っぱを団扇代わりに使って扇いでいた。

 

「おーいレックス! マルム! オウガー! どこ行きゃいいんだよー!

おーいガブー! どこ行ったんだよー! …ったく、あんだけ世話してあげてたのに何で戻ってこないんだよー!

ガァーブー!」

 

 独りよがりな言葉が出てくるものの、心の中にもう会えないのではないかという考えが頭をもたげてくると、一転して気持ちが沈み始める。

 

「…もう、会えないのかな…?」

 

 そんな気持ちでぼんやりと前を見つめていると、突如として目の前の草むらが騒ぎ始めた。

 

「ガブ! ガブなのか!? もう、心配したんだぞ!」

 

 急いでそこへ駆け寄るものの、草むらからはチョロチョロと緑色のトカゲが飛び出してきただけだった。

 

「…なんだ、トカゲかよ…」

 

 がっくりと肩を落とすと、今度は何かが水をかき分けて近づいてくる音が聞こえてきた。

 しかも、音からしてかなり大きな生き物だ…!

 河の方を振り向くと、そこには激流の中をサルタサウルスがこちらに向かって歩いてきているではないか。

 すぐさまリュウタが逃げ出すが、その後ろからサルタサウルスが迫ってくる。

 

「うわぁぁぁぁ! サルタサウルスだ!

た、助けて! オレは餌じゃないよー!」

 

 

 その頃、サルタサウルスの後を追っていたオウガ達はジャングルを抜けて河に出た。

 降雨後間もなくということで河は増水し、ごうごうと凄まじい音を立てて流れている。

 

「サルタサウルスは一体どこへ行くつもりなんだ…?」

 

「なんだか何かを追いかけているようにも見えるけど…」

 

 その時、彼らの耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「助けてーっ!」

 

 3人が河の対岸を見ると、リュウタが全速力で走っているではないか。

 しかも何故かサルタサウルスに追いかけられている。

 

「り、リュウター!? 何でサルタサウルスに追いかけられてるんだ!?」

 

 オウガが声の限りに呼びかけると、リュウタも叫んで手を振ってきた。勿論、走ったまま。

 

「どうする? リュウタと合流するには向こう岸に渡るしかない!」

 

「それは僕も分かってる! でも、どうやって…?

これほどの増水なら例え橋があっても流されちゃってるだろうし、渡れる場所なんて…」

 

「レックス! オウガ! あれを見て!」

 

 マルムが何かに気づいたようにまっすぐ指を指す。

 そこには、わっせわっせとカヌーを漕ぐアクト団3人組の姿があった。

 増水した河の中、なかなかの操縦でスムーズに進んでいる。

 

「「イヤッホォォォ!!」」

 

「お誂え向きに見つけたカヌーが役に立ったザンスね!」

 

「ん? あーら、あれはガキンチョの片割れ共ね!

悪いけどあんた達に獲物は渡さないからね! おあいにくさま…」

 

 そうウサラパが言いかけた時だった。

 なんとオウガ達3人がカヌーに飛び乗ったかと思うと、オールを奪い取って対岸へと寄せ始めたのだ。

 

「おっとっと…失礼!」

 

「な、何するんスか!?」

 

「すみません! でもこれしか方法がないんです!」

 

「重いザンス! 定員オーバーザンスよぉ!」

 

「ごめんなさい! すぐ降りるから許してね、オバさん達!」

 

 対岸に十分近づいたところでオウガ達はオールをアクト団たちに投げ渡し、次々に飛び移った。

 運動神経が比較的悪いオウガだけは河岸の土に足を取られて河に落ちかけたが、何とか堪えて2人と合流する。

 

「おっ、オバ…! またアタシを愚弄したねあんた達!

特にあんたなんかまだ色気の欠片もない子供のくせしてさぁ…」

 

「う、うううさうさウサラパ様あ…」

 

「何だいウサウサうるさいよ! 何の用なの…」

 

 そう言ってエド達に向き合ったウサラパの顔が真っ青になった。目の前で河は途切れ、轟々と流れ落ちる滝に変わっていたのである。

 

「「「ハラホレヒレハレ〜…!」」」

 

 哀れアクト団3人組は、流れに乗って滝から落下していったのだった。

 

 一方リュウタはサルタサウルスから逃げ続けていたものの、どこで道を間違えたのか崖際へと追い込まれてしまっていた。

 背後からは変わらずサルタサウルスが迫ってきており、万事休すといった状態だった。

 それでも一縷の望みを賭け、ガブの名前を叫ぶ。

 

「ガブーーーッ!」

 

『…!ガブガブガブガブ!!』

 

 その声は、ガブに届いていた。

 しかしガブもまた先ほどのワニに行く手を阻まれており、二進も三進もいかない状況だったのである。

 それでも、ガブは奮起した。

 近くにリュウタがいるならば、すぐにでも駆けつけようと勇気を振り絞ったのである。

 食らいつこうと大口を開けて襲いかかったワニの攻撃を躱し、腹に自分の角を入れて投げ飛ばした。

 小さくとも恐竜だと誇るには十分な活躍だった。

 そのままガブは全速力でリュウタのもとへ向かう。

 

 その頃、リュウタにようやく追いついたオウガ達は、彼が今にもサルタサウルスに襲われそうになっている現場に直面した。

 

「あのままじゃリュウタが危ない! 俺達の恐竜で助けないと!」

 

「そうだな、リュウタを助けよう!」

 

「お願い、パラパラ!」

 

 それぞれがカードを手にディノホルダーやディノラウザーにスキャンしようとした…その時。

 すぐ側の草むらがガサガサと動いたかと思うと、ガブが飛び出してきたのだ。

 そのままガブはまっすぐリュウタのもとへ向かっていく。

 

「ガブ! お前…来てくれたのか!」

 

 ガブと再会できたことに安堵し、涙ぐむリュウタ。

 しかし目の前には依然としてサルタサウルスが立ちはだかっていた。

 

「お前がここまで頑張ってくれたんだ。

今度はオレも頑張らなくちゃな…。頼む! 動いてくれ!」

 

 再度リュウタがディノホルダーの再起動を試みる。

 すると、今度は液晶画面が点灯し、ディノホルダーが蘇った。

 

「やった! 起動したぞ!

いくぜ! ガブ! ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス!」

 

ゴオォォォォォォ!!!

 

 リュウタがカードをディノホルダーにスキャンし、ガブを成体の姿で召喚する。

 降り立ったガブは、早速眼前のサルタサウルスへ突進していった。

 しかしサルタサウルスはたくみに背の装甲で攻撃を防ぎ、鍔迫り合いへと持ち込む。

 互いに押し合う中、サルタサウルスはガブの顔へ噛みついた。

 竜脚類は咀嚼するための歯は持っておらず、クシのように葉を漉き取るための歯なので、噛まれると存外に痛そうである。

 

「負けるな! 頑張れガブ!」

 

 ガブも懸命に角で反撃を試みるも、ことごとくを装甲で防がれてしまう。

 

「ダメだ! 真正面から戦ってたんじゃ勝ち目がない…」

 

「! 後ろを向いた! リュウタ、気をつけて!

尻尾攻撃が来るわ!」

 

「な、何だって!? ガブ! よけろ!」

 

 マルムのアドバイスに従いリュウタが指示を飛ばすも、一足遅かった。

 素早く方向転換したサルタサウルスが鞭のような尻尾を振るってガブを弾き飛ばす。

 いつの間にかリュウタの持つディノホルダーは警告音と共に液晶が赤く点滅しており、ガブの残り体力が僅かであることを知らせていた。

 

「ここまで来て…やられてたまるか!」

 

 リュウタの声にガブがもう一度起き上がり、またサルタサウルスに突進していく。

 しかし今度は少し違う…。なんと真正面でかち合った瞬間素早く角を相手の腹の下へ差し込み、思い切り投げ飛ばしたのである。

 まるで、先ほど撃退したワニの時のように!

 

「やったわ!」

 

「サルタサウルスは腹にまで装甲はない!

今が絶好のチャンスだ!」

 

「よっしゃー行くぜ! 『来電蓄電(エレクトリックチャージ)』!」

 

 リュウタが技カードをディノホルダーに通すと、雷がガブのもとへ落ちる。雷の力を得たガブはそのまま自由落下中のサルタサウルスの腹目掛けて一直線に飛び上がり、両角間に蓄えた雷エネルギーを炸裂させた。

 水属性であるサルタサウルスは弱点属性の攻撃を受けて激しく痙攣しながら河へ落下し、カードに戻っていった。

 それを見届けたところで、力を使い果たしたガブもカードへ戻っていく。

 

「すごい…。流石ねリュウタにガブ…」

 

「あぁ、まさかあのサルタサウルスを倒しちゃうなんてな…」

 

「こりゃあ、最初から僕達の出番はなかったかな?」

 

 オウガ達が口々にリュウタとガブを讃える中、リュウタは足元のガブのカードをゆっくりと拾い上げた。

 

「ガブ…カードになっちまうまで、よく頑張ったな…」

 

 そう労いながら、ディノホルダーにカードを通し、ガブをチビ恐竜形態で召喚する。

 

「ガブ、お前が勝ったんだぜ?」

 

『ガブ〜…ガブッ!』

 

「ごめんなガブ! もう二度と離さないぞ!」

 

 互いに熱い抱擁を交わし、笑い合うリュウタとガブ。

 そこへサルタサウルスのカードを回収し終えたオウガ達が合流した。

 

「はい、リュウタ。このカードはリュウタとガブの手柄だよ」

 

「おっ、サンキューな」

 

 と、そこでリュウタの腹の虫が鳴った。

 

「あー…そういえばオレ、すっごい腹減ってたんだった…」

 

「ようやく安心できたせいもあるかもしれないね。

…ところでリュウタ。そのトカゲは?」

 

「え?あれ?いつの間に…?」

 

 リュウタの足元には既視感のあるトカゲがいた。

 そのトカゲにガブが飛びかかり、おいかけっこを始める。

 

「そう言えばこいつ、サルタサウルスから逃げてる感じだったな」

 

「えっ…?それじゃあサルタサウルスが探してたのって…」

 

「このトカゲって…コト?」

 

「…だからなのかしら。サルタサウルスが時々舌を出し入れしてて、変だと思ったのよね…」

 

「こぉらぁぁぁ! ガキンチョ共ぉ!」

 

「今の声って…」

 

 突如頭の上から降ってきた声にDキッズ達が目を向けると、上空をアクト団3人組がボロボロの手動飛行船で帰ろうとしているところだった。

 

「今日のところはこのくらいで勘弁してあげるわー!

でも覚えておきなさーい! 次こそはアタシ達泣く子も黙るアクト団がー!」

 

「ギッタンギッタンのボッコボコにしてやるザンスー!」

 

「それにこのジャングルにはまだ得体の知れない奴が潜んでるッス!

せいぜい帰りに足を掬われないようにすることッスねー!」

 

「「「あっそーれキャッチ・アンド・ロー!

キャッチ・アンド・ロー!」」」

 

 わざわざDキッズ達に聞こえるよう大声で捨てゼリフを吐いてから退散するアクト団3人組であった。

 

「もう、ほんっとしつこいわね! あのオバさん達!」

 

「オバさんって言うな! ガキンチョーッ!」

 

 遠ざかりつつもオバさん呼びはしっかり聞いているウサラパなのであった。

 

「でも…あのエドとかいうやつが言っていたことが気になるな。

得体の知れないものって何のことなんだ…?」

 

 考え込むレックスに、オウガはもしかすると、と前置きした上で、個別探索中に自分が見たことを伝える。

 それを聞いた瞬間、リュウタ達は青くなった。

 

「ち、ちょっと待てよオウガ。オレたちが今倒したのってサルタサウルスだよな?

サルタサウルスは竜脚類だから三つ指の足跡なんてつかないよな…?」

 

「それに、襲われていたのは鶏舎…だったわよね?

それってレクシィちゃんと同じく、リジンを必要としているってことなんじゃないの?」

 

「…ってことは…」

 

 ようやくここでオウガも気がついた。

 

「まだこのジャングルに、オーウェンさんの世界から迷い込んだ恐竜がいるってことなのか…?」

 

 その瞬間、ガブが追いかけていたトカゲが一瞬で消えた。

 どこか茂みへ飛び込んだとは考えられない。

 そして何より、今しがたトカゲがいた場所には、あの三つ指の足跡がついていた。

 やはり、ここにはもう1頭恐竜がいる。しかも今の襲撃を誰も目にすることができなかったということは、恐ろしく素早い恐竜だということなのだろう。

 Dキッズ達は自然と互いに背中合わせで集まる。

 

「どうやら…俺達はまだ帰れないみたいだね…」

 

 

その頃 Dラボ

 

「恐竜の反応が途絶えました。

どうやらリュウタ君たちかアクト団かは分かりませんが、恐竜がカードに戻されたようです」

 

「うーむ、何とか無事ならいいんだが…。

さっきからずっとリュウタに連絡を取ろうとしているんだが、一向に出てくれないから父さんは心配で仕方がない!

うーん…やはり私も別の手段で行くべきだったのだろうか…」

 

「そりゃあ過保護かもしれんな。あの子たちはあんたらが思ってる以上にタフだと思うぜ」

 

 後ろから聞こえた声に古代博士とリアスが振り返ると、そこにはオーウェンが立っていた。

 

「おお、これはオーウェン君。

なんだか久しぶりな感じがするな」

 

「すまないな。いつもここに居られると1番いいんだろうが、色々関係各所との連絡があるんで」

 

「いやいや、そちら側の都合は仕方がないものだろうし…」

 

 と、会話をしている時…着信が入った。

 着信元はリュウタのディノホルダーからだ。

 

「おっとオーウェン君、失礼。

おおリュウタ! 恐竜は保護できたか?」

 

『うん。サルタサウルスを保護できたんだけど…まだ恐竜がいるみたいなんだ』

 

「まだ恐竜が…? リアス君。本当に反応はもうないのかね?」

 

「? ええ、こちらをご覧になれば分かると思いますが、ほら、この通り。もう恐竜出現の知らせはどこからも来ていませんよ」

 

古代博士はリアスからモニターを見せてもらうも、やはりそこに赤い点はなくなっていた。

 

『映ってる…』

 

『え?どうしたんだオウガ?』

 

『映ってるんだよ、俺のディノラウザーに…。

俺達のすぐ近くに、オレンジ色の点滅が…!』

 

『えっ、本当か!?オレにも見せてくれよ!』

 

 そこで少し画面が乱れる。またリュウタのディノホルダーの調子が悪くなってきているようだ。

 そこで、オーウェンがリアスへ何かを差し出した。

 彼のジュラシック・アンバー【喪失(ロスト)】だ。

 

「リアスさん。オレのこのアンバーを、その装置に入れてからもう一度サーチをかけてみてくれ」

 

「これを?分かりました…」

 

 リアスがオーウェンのジュラシック・アンバーを受け取り、装置に組み入れてからもう一度サーチ機能を使用する。

 するとサーチ機能が…反応した。場所はアマゾン熱帯雨林地帯…。

 リュウタ達の座標ともほぼ重なる位置だ!

 

「リュウタ君! 聞こえる?

こちらでも反応を確認したわ! あなた達のすぐ近くに恐竜が潜んでるわ! 特定のヒントになりそうなものはある?」

 

『う、うん! まず足跡は三つ指の獣脚類特有のやつで、オウガの見立てでは全長8メートルくらい。

あと、オレ達も見たんだけどすごい敏捷性だった…。

姿すら認識できなかったくらいだったから…』

 

「姿が認識できないほどとは…厄介そうな相手だな…」

 

 古代博士がそう言いかけたところでオーウェンの方へ振り返ると、彼は少し離れたところで誰かと連絡を取ろうとしていた。

 

「クレアか? オレだ! アマゾンの熱帯雨林地帯に反応が現れた! アンバーにしか反応しない恐竜…つまりオレ達のところの恐竜に間違いない!」

 

『そう、良かったわ…。それで、姿は確認できたの?』

 

「いや、それができなかったらしい。

現地で遭遇したDキッズ達によると、姿は見えないがどこからか攻撃されたとのことだ。

恐らく凄まじい敏捷性の持ち主だと…」

 

『姿が…見えない…?

ちょっと待って。それなら心当たりがあるわ…。

あなたに渡した要回収恐竜のリストは、手元にあるわよね?』

 

 クレアからのこの問いかけに、オーウェンは資料をめくりながら答える。

 

「あぁ、勿論」

 

『その中に、「カルノタウルス・サストレイ」がいるでしょう?

それが恐らく今回のターゲットよ』

 

「…カルノタウルス?確かにあの恐竜は大型肉食恐竜の中では随一の敏捷性の持ち主だが、姿が見えないほどではなかったはずだぞ」

 

『そうね、確かに敏捷性が高いとはいえ姿を追えなくなるほどではないわ。

でも、今回の標的である…「InGen製プロトタイプ」にはある特殊能力があるのよ』

 

クレアから告げられた言葉に、オーウェンは眉をひそめた。

 

「特殊能力だと…?何だそれは?」

 

『この内部資料によると…彼らの表皮には特殊な構造…例えるなら、海洋性軟体動物の色素胞と非常によく似た構造が存在するのよ。そのお陰で素早くかつ正確に周囲の風景に擬態し、溶け込むことができるの。

だからカルノタウルスの姿が見えなかったのは素早いからじゃない。視覚では認識できないほど正確な擬態をして襲いかかってきたからなのよ』

 

「そんな高精度の擬態能力だと…? そりゃあまるで…」

 

『そうよ。それほど危険な能力を保持していたにも関わらずソルナ島で生かされたままにされていたのは…恐らくインドミナス・レックス開発の参考にするためだったのでしょうね』

 

「まずいな…。そんな特異体質持ちが相手となるとDキッズが危ない!」

 

『私もそう思うわ。人間の目でも認識できないほどの擬態を彼らの恐竜たちも見抜けるとは思えない。

見つけられないまま各個撃破されれば戦う手段を失ってしまう。そうなればあとはカルノタウルスの餌食にされるのがオチよ。

オーウェン。もし手が空いているのなら直ぐにでも彼らの救援に向かった方がいいわ』

 

「言われなくても…そのつもりさ!」

 

通話を切ると、オーウェンはすぐさまモニターへ向かった。

 

「聞こえるかリュウタ君!

今からオレもそっちへ向かう! 君達は身の安全を最優先に行動してくれ!」

 

『わ……た…。い……ら…ザザッ…』

 

遂にリュウタのディノホルダーが限界を迎えたのか、音声が途切れ途切れにしか聞こえなくなってしまう。

だがその最中、明らかに彼らの恐竜ではない何かの声が聞こえた。

 

『クフゥゥゥゥ…』

 

「まずい! すぐ近くまで来ているのか!」

 

オーウェンはそう呟くとモニター前のマイクを引っ掴み、大声で叫んだ。

 

Get away(逃げろ)! He's coming(ヤツが来る)

 

 




今回はここまでです。
オウガ達Dキッズは、カルノタウルスを撃破することができるのか…?
次回をお待ち下さい。

第6話に登場させるJP・JW恐竜について考えています。以下の恐竜ならどれを登場させるのがよいか、または登場させてほしいか、是非皆様のお考えをお聞かせ下さい。

  • ディロフォサウルス
  • パラサウロロフス・ワルケリ
  • スティギモロク(お助け恐竜)
  • ディメトロドン(お助け恐竜)
  • メトリアカントサウルス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。