古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

14 / 94
今回は閑話となります。
オーウェンの話を受けて、Dキッズ達は何を思うのか…。
いつもよりかなり短いものとなっておりますが、どうか今回もお楽しみ下さい。


閑話:オウガの葛藤

「…つまり、こういうことかな?」

 

 オーウェンが話し終わったところで、古代博士がまとめに入る。

 

「オーウェン君達の世界の恐竜は、琥珀に閉じ込められた蚊から抽出した血液のDNAを素に作り出したクローンであること…。

そして彼らを作った、ジョン・ハモンドという男は、恐竜のテーマパーク『ジュラシック・パーク』を作ろうと試みたものの頓挫してしまい、以来恐竜達は島で野放しになったと。

そしてその時に作り出されていた恐竜達は脱走防止策としてリジンを合成できる遺伝子を人為的に抜かれていた…。だからレクシィはリジン欠乏症で一度倒れてしまった…。

そういうことで、間違いないかね?」

 

「あぁ、そうだ。この話はまだ先があるんだが…まあそれは追々話していくよ」

 

「そ…それじゃあ…あのカルノタウルスがアタシ達に襲いかかってきたのって…もしかして…」

 

「君が想像した通りだ。

パークが閉鎖された時に脱走した肉食恐竜の殆どは人間に牙を剥き、そして食らった。

あのカルノタウルスはパーク本部のあるヌブラル島ではなく恐竜生産施設のあるソルナ島で捕獲された恐竜だから、恐らくはパークの職員を…」

 

 オーウェンがそこまで言いかけたところで、マルムが両耳を手で塞ぐ。これ以上は聞きたくないという意思表示だった。

 

「あの…俺のレクシィは…そうじゃないですよね?

そりゃ人間を恨んではいるみたいだけど、流石に食べてまでは…いませんよね?」

 

 張り付けたような笑顔を浮かべたオウガが、縋るようにオーウェンに尋ねる。

 彼は少し躊躇ってから、口を開いた。

 

「…残念だが、レクシィにも人を捕食した記録はある。

オレ達の世界で一般的な暦で言うと…1993年にパークの視察に来た弁護士のドナルド・ジェナーロを、2018年にはヌブラル島から連れ出された後に、ロックウッド財団のイーライ・ミルズを捕食した記録が残されているな。

記録されていないだけで他にも被害者はいるとは思うが…」

 

 その時、オウガはついレクシィを見てしまった。

これまでのような憧れや親愛、愛情の篭った目ではなく、恐ろしいものを見つめる目で見てしまったのだ。

 すぐに視線を逸らしたものの、当のレクシィは見下げたように鼻を鳴らした。

 

「…やはり、知らせない方が良かっただろうか…」

 

 オーウェンがかぶりを振りながら呟いたが、それにレックスがすぐさま反論した。

 

「オーウェンさん。そんなこと言わないで下さい。

少なくとも僕はこの話を聞くことができて良かったと思っています。

恐竜は決して無害なだけの存在じゃない。僕達が接し方を誤ればとんでもない事態を引き起こす可能性もあるんだということを教わりました」

 

「オレも、ここまでアクト団との恐竜争奪戦をゲームみたいに考えちゃってたところもあったかもしれないや。

これからはまた厳しい戦いも増えてくるだろうし、オレも一層気を引き締められたよ。

オーウェンさん。話してくれてありがとう」

 

「…話を聞いた君達がそう言ってくれるなら、オレも本望だよ」

 

 オーウェンはそう言い、軽く笑みを浮かべた。

 そこで古代博士が、さて、と言って締めに入る。

 

「さあ、もうこんな時間だ。私の車でお前達を家に送っていこう。オーウェン君は、今夜も是非ここに泊まっていってくれ」

 

「それじゃ、そうさせてもらおうか」

 

 

 その後、オウガは自宅へと送ってもらい、Dキッズや古代博士たちと別れた。

 それから入浴して自室に戻ってくると、レクシィとアメジストは既に犬用ベッドで眠りについていた。

 その様子を眺めながらオウガもベッドに腰掛け、オーウェンから聞いた内容について考えることにした。

 

 ティラノサウルスは肉食恐竜である。そうであるからには他者の命を奪わなければ生きていけないということは、ティラノサウルスが大好きであらゆる情報を収集してきたオウガも嫌と言うほど分かっていることだった。

 分かっていたとしても…人間である以上人食いに生理的な嫌悪感を抱いてしまうことは避けようがないことであった。

 

 これから、レクシィとどう向き合っていけばいいんだろうか…。

 そうオウガが考えていた時、ディノラウザーから声が聞こえてきた。

 

『…オウガ君。聞こえておるかね?』

 

「【伝説(レジェンド)】さん?聞こえてますよ」

 

 ディノラウザーの中のジュラシック・アンバー【伝説(レジェンド)】が声をかけてきたのだ。

 

『それならば良かった。…それで、どうかね?』

 

「どうかねって…どういうことなんです?」

 

『レクシィが怖くなってしまったかね?』

 

「…そんな、ことは…」

 

 オウガの内心を見透かしたかのように語る【伝説】。

 さらに言葉は続いた。

 

『どうやら、そのようじゃな。

無理もないことじゃ。わしが契約前に言ったことが現実になる可能性が上がってしまうことじゃしのう』

 

「…覚悟は、していたつもりだったんです。

それにオーウェンさんからあの話を聞いた後、恐怖を覚えなかったのかと言えば嘘になります。

それでも、これだけは本当です。

ずっと大好きだったティラノサウルスと一緒に戦うことができて、更には一緒に暮らすことまでできるということを優先して、あなたと契約したことを俺は後悔していません。ただ…」

 

『ただ?』

 

「これは、誰かから聞かされて知るのではなく、レクシィの口から直接聞きたかったんです…」

 

『…なるほどのう』

 

「レクシィと会話ができたのは俺が初めて彼女と話したあの時だけです。翻訳機はディノラウザーに組み込んでもらって学校でも手放さないようにしてるんですが…あれ以来一度も彼女が話してくれたことはありません。俺から話しかけても同じです。

周りからの話や情報で俺はある程度彼女を知ることはできましたが、本人から得られたことは、「人間を強く憎んでいる」ということだけ。

他の皆は、パートナー恐竜の個性や性格を相互に理解しあって、もう十分すぎるくらい絆を結んでいるのに、俺とレクシィはまだそこまで至っていない。それを考えると、焦りと不安が湧き起こってきてしまうんです。

…俺は、レクシィからどう思われているんでしょうか?

ただのビジネスパートナーなのか、それとも殺したいほど憎む人間のうちの1人なのか…それすらも分からないのが、不安で怖くて仕方ないんです…」

 

 【伝説】はじっくりとオウガの話を聞き、それから言った。

 

『…レクシィが君をどう思っているのかについて、詳しいところはわしにも分からん。

しかしな、彼女が君を拒絶しているということはないと確信しておるよ。

確かに彼女が人間を強く憎んでおることは事実じゃ。

だがいくらパートナーだからと言っても、嫌いな相手といつも共に過ごすことができるものかのう?』

 

「…それは、必ずしもそうではないでしょうが…」

 

『恐らくレクシィも自分の心の整理がついておらんのじゃ。

そうだとすれば君にできることは、いつか彼女が自分から話してくれるようになるまで、彼女に心を砕き、少しでも寄り添えるようにすることではないかね?』

 

「…気安く言ってくれますね。

まあそうするしかないだろうな、とは俺も薄々思ってはいましたが」

 

『ハッハッハ、それならもう契約はやめにするかね?

君からの提案ならばまだクーリングオフは適用できるかもしれんぞ』

 

 【伝説】から投げかけられたからかいの言葉を、まさか、と否定すると、オウガは続けた。

 

「この道は俺自身が選んだ道です。レクシィの隣に立ち、共に戦い、共に分かり合うことを決意したのは俺自身なんです。

それに…俺はティラノサウルスが…いや、レクシィが大好きですから。

俺だってまだ小学生ですけど、1人の男であるからには一度決めたことは最後まで貫きますよ!」

 

『…どうやら、覚悟は決まったようじゃな?』

 

「はい。俺はこれからもレクシィと共に生き、共に戦い続けてみせます。

そしていつかはレクシィに俺のことを、他の人間とは違う、俺なら信用できると思ってくれるように努力していきます!

…まあ、ここまで見てきた感じだと、レクシィにはあまりガツガツ迫り過ぎず、一定の距離は保った方が良さそうですね」

 

『うむ!それでこそわし【伝説】の保持者に相応しい志じゃ!

君の歩む道は限りなく長い。しかしその先に必ず君の目指す目標は存在するじゃろう。

腐らず挫けず、夢に向かって歩き続けるのじゃ!』

 

「ありがとうございます、【伝説】さん。俺も本当は誰かに自分の本心を話して、気持ちを整理することを望んでいたのかもしれません。聞いて下さって、相談に乗って下さってありがとうございます」

 

「なぁに、礼には及ばんよ」

 

「それにしても…レクシィたち恐竜のクローンを作り出すことに成功したなんて、ジョン・ハモンドって方はすごい探究心と志の持ち主だったんでしょうね」

 

 オウガがジョン・ハモンドの話を持ち出すと、何故か途端に【伝説】は静かになってしまった。

 

「俺達の世界ではDNAの半減期の関係で、恐竜を現代に蘇らせることはほぼ不可能だと言われていたんですよ。そんな夢物語みたいなことを、本当に現実にしてしまう人がいるなんて…」

 

『…ジョン・ハモンドは、そんな立派で高潔な人物ではない』

 

「…え?」

 

『彼は恐竜を作れるかどうか、その一点に心を奪われていた。それを本当にすべきかどうかを一切考えずにのう…。そして結果的に、作り出した恐竜達の運命は滅茶苦茶になってしまった。

ジョン・ハモンドという男は、ただただ向こう見ずで愚劣で、善人気取りの詐欺師そのものじゃよ…』

 

「そ、そこまで言わなくても…」

 

 あまりの言い草にオウガが諌めると、【伝説】は大きくため息をついてから続けた。

 

『…すまんな。変なことを言ってしまった。

もう夜も遅い。それに明日は学校じゃろう?早く寝た方がよいのではないかな…?』

 

 そこまで言うと、【伝説】は沈黙してしまった。

 

(何だろう…。何か気に触ることを言ってしまったのかな…?)

 

 オウガは頭を捻りながらも、寝る前に歯を磨こうと部屋を後にした。

 部屋には、熟睡しているアメジストと…始めから寝たふりをしてオウガと【伝説】の会話を聞いていたレクシィの2匹が残されていた。

 

 

 




今回はここまでです。
レクシィと少しでも距離を詰めていくことを決意したオウガ。
彼の歩む先に、果たして希望はあるのだろうか…。
第5話以降をご期待下さい。

アンケートは次話前編投稿後に締め切りたいと思っております。
引き続きご協力よろしくお願いいたします。

第6話に登場させるJP・JW恐竜について考えています。以下の恐竜ならどれを登場させるのがよいか、または登場させてほしいか、是非皆様のお考えをお聞かせ下さい。

  • ディロフォサウルス
  • パラサウロロフス・ワルケリ
  • スティギモロク(お助け恐竜)
  • ディメトロドン(お助け恐竜)
  • メトリアカントサウルス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。