古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

 恐竜出現を確認し、アマゾンの熱帯雨林地帯へとテレポートしたDキッズ一行。
 しかしその最中ガブがはぐれてしまい、さらにガブの捜索中にリュウタもはぐれてしまっていた。
 それでも何とか再会し、共にサルタサウルスを打ち破ったリュウタとガブ。
 これで万事解決…と思ったDキッズの前に驚異的な擬態能力を持つカルノタウルスが現れる。
 海洋性軟体動物並の擬態能力と『恐竜幻影』のデコイに散々苦しめられたものの、オーウェンとブルーの助力もあって何とか撃破することに成功した。
 しかしそのカルノタウルスが恐竜ではなくDキッズを狙っていたことから、人の味を知っているとオウガは判断し、オーウェンに問いただす。
 すると彼は、彼の世界の恐竜達が抱える秘密について、躊躇いつつも話し始めた。
 その内容にショックを受けたオウガだったが、【伝説】との話し合いを通して、改めてレクシィと共に生きる決意を固めたのだった…。



第5話:史上最大の陸ザメvs矛盾恐竜!?
前編


中国 万里の長城

 

 中国の首都北京には、明の時代に北方騎馬民族の侵攻を防ぐために作られた、世界最大の長城がある。

 そんなある夜、その付近の森で山火事が発生した。

 まだ規模はそこまで大きくないが、決して軽視することはできないレベルだ。

 その最中、1つの卵型カプセルが木から落ち、2つに割れた。そして中から出てきた2枚のカードに炎が延びた瞬間、赤い光に包まれて緑色の鱗の巨大肉食恐竜が姿を現した。

 アフリカ原産の肉食恐竜、カルカロドントサウルスだ!

 カルカロドントサウルスは目覚めるや否や、口から燃え滾る火球を放ち、更に火事の範囲を拡大させていくのであった…。

 

 

その頃 アクト団基地 アジ島

 

 この日、ノラッティ〜はロトが製作したジャンピングシューズを履き、高く飛び上がる快感を存分に楽しんでいた。

 1跳ねごとに大きく体が宙を舞い、普段では見られないところから周囲を見渡せる。

 ノラッティ〜は大興奮であった。

 

「すっごいザンスー! まるで宇宙遊泳でもしているかのようないい気分ザンスー!」

 

「そうだろ? 今回はかなりの自信作なんだぜ。

なんと、これを使えば100メートルもたったの5歩で歩けるんだ!」

 

 ロトが得意げにそう答える。

 すぐ隣ではエドがピョンピョンと飛び跳ねるノラッティ〜を羨ましそうに眺めていた。

 

「楽しそうッス…。ノラッティ〜、そろそろ交代してほしいッスよー!」

 

「もう、それ何回目ザンスか…。

分かった、分かったザンス。今靴を脱ぐザンス」

 

 エドに急かされ、渋々シューズを脱ごうとするノラッティ〜。

 だが、どうやって脱げばいいのかが分からない。

 おまけにバランスを崩したせいか、シューズはあらぬ方向へノラッティ〜を導き出した。

 

「ち、ちょっとロト! どうすればいいザンスか!

どうやったら止まるザンスー!?」

 

「あー…言い忘れてたけど、それは試作品なんだー。

ちゃんとどこかに止めるボタンは付けたはずだから、自分で探してよー」

 

 そう言ってイタズラっぽい笑みを浮かべるロト。

 この時ノラッティ〜は初めて、自分が試作品の実験に付き合わされたのだということを知った。

 その姿を見て、やっぱり履かなくて良かったとエドは胸を撫で下ろすのであった。

 

「実験体扱いなんてあんまりザンス! ひどいザンス!

うわあっ、あーっ!」

 

 やがてノラッティ〜は地下へと落下し、基地の内部へと入り込んでしまっていた。

 

「ふんふんふふ〜♪」

 

 上機嫌で化粧をしていたウサラパに、ノラッティ〜は後ろから突撃していってしまった。

 ウサラパが前へつんのめり、リップスティックが鼻穴に突き刺さってしまう。

 

「ちょっと何すんのよ!

あぁ…アタシの美しい顔がぁ…。ノラッティ〜! お待ち!」

 

「そうは言われても、止まれないんザンス〜!」

 

 コンパクトミラーで自分の顔の惨状を確認したウサラパが、滅茶苦茶に跳ね続けるノラッティ〜を追いかける。

 外からノラッティ〜を追ってやって来たエドも加わり、ますます状況はカオスになっていく。

 

「エド! 着地した瞬間に捕まえるのよ!」

 

「無理ッス! まるでウナギみたいにヌルヌル避けていくッス! これじゃ捕まえられないッスぅ〜!」

 

 部屋を荒らし回りながら跳ね続けるノラッティ〜を2人が確保したのは、それから数分も後のことであった。

 あまりの騒騒しさにうんざりしたのか、3人のいる部屋にソーノイダが怒鳴り込んでくる。

 

「お前達! 一体何をやっとるんじゃ! 静かにしろぞい!」

 

「も、申し訳ありませんドクター…」

 

 すると、まだ怒りが収まらない様子のソーノイダのもとにロトとロアの兄妹がやって来た。

 

「お爺さま! 恐竜が出たのよ!」

 

 途端にソーノイダが上機嫌になる。

 

「なっ、何じゃと!? どこじゃぞい?」

 

「場所は中華人民共和国…通称中国の北部にある万里の長城の近くみたい。

この万里の長城は人類史上最大の建造物だって言われてるのよ。お爺さまは知ってた?」

 

「くぅーっ! 我が泣く子も黙るアクト団を差し置いて人類最大とはナマイキぞい! そうならば、ワシの恐竜王国はそれよりももっともっと壮大なものにするぞい!」

 

「「「ら、ラジャー!」」」

 

 夢を語るソーノイダの言葉に、アクト団工作員の3人組も姿勢を正して答える。

 

「ならば、そのためにはぁ…?」

 

「はいっ! どんな卑怯な手段を使ってでも、恐竜をゲットしてごらんに入れます!…げっ、レッツゴー!!!」

 

 ノラッティ〜の触覚のようなアホ毛を引っ張りながらそう答えるウサラパ。

 だが、何かに気づいたのか青褪めると、3人は掛け声と共に揃って出撃していった。

 

「あっ…そろそろ勉強しなくちゃ…」

 

「あ、あたしも…」

 

 何故かロトとロアもそそくさと部屋を離れる。

 不思議そうな様子のソーノイダがゆっくり振り返ると…そこには憤怒の形相を浮かべたタルボーンヌが仁王立ちしていた。

 

「ドクター! 隣の部屋を片付けていただきますよ!」

 

「そっ、それは誤解なんじゃ…。

散らかしたのはワシではなくあいつらで…」

 

「お片付けに言い訳は必要ありません!

さっさとやって下さい!」

 

「トホホ…ぞい…」

 

 こうして、タルボーンヌに見つかったばっかりに部下の尻拭いをすることになったソーノイダなのであった。

 

 

その頃 日本 三畳市

 

 この日、Dキッズのメンバーはパートナーのチビ恐竜たちを連れて裏山へ遊びに来ていた。

 ガブとエースは追いかけっこに興じ、パラパラはマルムと一緒に木陰で休んでいる。

 オウガはそことは違う木の陰で何やらメモ帳に何かを書き込んでおり、その隣ではアメジストがジャムパンを、少し離れた場所ではレクシィが鶏の骨を齧っていた。

 リュウタはと言うと、草藪の中に潜り込み、何かを探している。ややあってから、リュウタは土の塊を掴み出してきた。

 

「やった! カプセルはっけーん!」

 

 どうやら恐竜カードが入っている卵型カプセルがないか探しに来たらしい。

 早速嬉々として土を剥がすと中から出てきたのは…!

 ただの青いゴムボールだった。

 

「え〜…何だよ…。違うじゃんか…」

 

「そんな簡単に見つかるわけないでしょー?」

 

「恐竜を救うためにもカードの入ったカプセルを探し出す! それこそがオレ達Dキッズだろ!

お前らも休んでないでもっと真剣に探せよ!」

 

「何言ってるのよ。カプセルは世界中に散らばってるんでしょう?

都合よくこんなところにある訳ないじゃない」

 

「現状、俺達は恐竜が出現してからしか確認できないからリュウタの気持ちも分からなくはないけどね。

でも無闇矢鱈に探しても見つかるはずないよ。ましてやここの裏山ではもうリュウタがガブを見つけたじゃないか」

 

「そういや、そっかぁ…」

 

 オウガからの指摘を受け、リュウタはがっくりと肩を落とした。

 

「っていうかオウガは何してるんだ?」

 

「俺? 昨日見た恐竜特番のメモを見てるんだよ。

色々と新しい発見を得られたかどうか、過去のメモと見比べてチェックしてるのさ」

 

「へぇ〜、そうだったんだ。それでどうだったの? 何か新しい情報は得られた?」

 

「いや、今回はあまりなさそうだね。時代考証や同時代同地域の生物も滅茶苦茶だし、やっぱりあの放送局が出す恐竜特番はダメかもしれないな。

それに未だに全身羽毛のティラノサウルスを擦り続けてるようじゃ話にならないよ」

 

「大体どこの局か分かったわ…」

 

 この間にレックスは何をしていたのかと言うと、すぐ近くの崖で化石探しをしていた。

 表情は真剣そのもので、小さなスコップで慎重に地層を掘り進めている。

 そんな彼のところを、追いかけっこ中のガブとエースが通り過ぎていく。

 

「こらエース! ガブも静かにしててくれよ!」

 

「レックス、そんな神経質になるなって。

ガブもエースも楽しく遊んでるだけなんだからさ」

 

「遊ぶのはいいけど他でやらせてくれよ!

僕は今集中してるんだからさ!」

 

「わ、分かったよ…。ガブ! エースと向こうで遊んでなー!」

 

 そう言ってリュウタがさっき拾ったゴムボールを投げると、ガブとエースはそれで遊び始めた。

 ようやく周りも静かになったところで、レックスは傍に置いておいたアンモナイトの化石を手に取った。

 これは彼が先程掘り出したものなのだ。

 

「うわぁ…完璧だ! アンモナイトの化石がこんなに完成度の高い状態で見つかるなんて…」

 

「えっ、オレにも見せてくれよレックス!

うわぁ、スッゲェー…。こんな綺麗に残るものなんだなぁ…」

 

「レックス。それ、君が掘り出したの?

すごいな…。ここまで綺麗となると学術的・芸術的価値はかなり高そうだよ。大事に飾っておくといいんじゃないかな」

 

「すごぉい…! やったじゃんレックス!」

 

 レックスが見つけたアンモナイトの化石を覗き込み、皆が称賛の言葉を口にする。

 レックスも自身の大発見の喜びを噛み締めていた。

 のだが…。

 離れたところでガブとエースが遊んでいたボールが大きく弾んでレックス達のところへ飛んでいく。

 そのボールはよりにもよってレックスのアンモナイト化石にクリーンヒットし、そのまま地面に叩き落としてしまった。

 元々スコップで掘れるほどの柔らかい地層に埋まっていた化石ということもあり、驚くほどあっさりと、アンモナイトは粉々になってしまった。

 Dキッズ達の間に気まずい沈黙が流れる。

 

「せっかくの化石が…」

 

 レックスが呆然とした様子で粉々になった化石を眺める…かと思えば、ボールをガブ達に渡したリュウタを睨みつけて言い放った。

 

「あんな完璧なアンモナイト、滅多に見つからないんだぞ! どうしてくれるんだ!」

 

「わ、悪気はなかったんだよ…」

 

 多少理不尽さを感じながらもリュウタが弁明する。

 レックスは憮然とした様子で足元に広がった化石の残骸をかき集め始めた。

 リュウタも慌てて手伝おうと手を伸ばしたのだが…。

 

「あっ、お、オレも…」

 

「いいから! リュウタは触らないでくれ!」

 

 レックスから強い語気で言葉を浴びせられ、ついにリュウタの堪忍袋の緒も切れてしまった。

 

「…なんだよ! そんなにムキになって! 手伝おうとしただけなのにそんなこと言わなくてもいいだろ!?」

 

「ちょっとちょっと二人とも! ケンカなんかしないでよ!」

 

「だってレックスが…!」

 

「…フン!」

 

「なあレックス。リュウタだってガブ達に遊んでもらおうとボールを渡したんだし、完全に事故だったじゃないか。

リュウタに当たったところで仕方ないだろ?」

 

「うるさいな! オウガは関係ないだろ!

黙っててくれよ!」

 

「…こりゃ、どうにもならなそうだな…」

 

「時間が解決するのを待つしかないのかしら…」

 

 オウガとマルムが2人を宥めに入るも、怒った2人は聞く耳すら持とうとしない。

 結局昼食を摂りにDラボに向かうまで、リュウタとレックスは一言も口を聞かなかったのだった…。

 

 

その頃 中国

 

 タルボーンヌから逃げるように出撃したアクト団工作員の3人組は、3人乗りのハンググライダーで上空から恐竜を捜索していた。

 

「ヤッホーッ!」

 

「いやぁ、思ってたより快適ッスね!」

 

「あぁ…この爽快感…まるでお姫様が空中ブランコに乗っているかのようだわ~…」

 

「なんというか、ピースフルでワンダフルで…とにかく、いつもとは違うザンス、フル!」

 

 今まで移動手段で散々な目に合ってきた彼らだが、今回は快適な旅を楽しんでいるようである。

 

「あっ、いよいよ万里の長城が見えてきたッス!」

 

「どうだい? 今回の獲物は見えるかい?」

 

「うーん…あんなに長いとどこにいるのやら分からないザンス…」

 

「…ん? 何スかあれ…」

 

 万里の長城まであと少しというところで、エドが前方から何かが接近しているのを発見した。

 それは、夥しい数の鳥の群れであった。

 

「このままだとヤバいッス…あぁ…来た来た来た…来たッスよぉぉぉぉ!」

 

「もう、いきなりどうしたんだいエド。何がどこに来たってのさ?」

 

「もう…遅いッス…」

 

 エドが絶望した様子で呟いた直後、彼らのグライダーを鳥の群れが襲った。

 群れが通過していった後、彼らのグライダーは穴だらけのボロボロになっており、空中分解してしまう。

 そのままアクト団の3人組は哀れ地面の染みになる…かと思われたが、例のジャンピングシューズを履いていたお陰で何とか助かることができたようだ。

 本当に悪運の強い連中である。

 

「こんなことも、あろうかと、履いてきたのが、役に立ったザンス〜!」

 

「でも…これは…跳ね過ぎッス!」

 

「いい加減! 止めなさーい!」

 

「そんなこと言われたって、止めるボタンが、見つからないザンス〜…」

 

 どうやっても跳ねられるのを止められないので、3人は仕方なくそのまま移動することにした。

 

 

その頃 Dラボ

 

 昼食の後、レックスは1人黙々とアンモナイト化石の修復作業を進めていた。

 バラバラになった化石をピンセットで1つ1つ摘み、慎重に組み立てていく。

 そこへリュウタがやって来ると、レックスに声をかけた。

 

「オレも手伝うぜ」

 

 そう言って化石の半分を自身の方へ寄せ、組み立て始める。

 リュウタなりに気を遣っての行動であったのだが、それでも今のレックスにとっては気分を逆撫でする行為でしかなかった。

 

「そんなんじゃダメだって…。ちゃんと断面を合わせてからやらないと…」

 

「そうかぁ?けっこういい感じだけどな〜?」

 

「ハァ…」

 

 レックスは大きくため息をついてから、こう口にした。

 

「手伝ってくれるのはありがたいけど…はっきり言ってジャマ」

 

「何でだよ? 2人でやった方が早いじゃん…」

 

 2人の間に再び険悪な雰囲気が流れるのを、物陰から見ていたオウガとマルムも感じ取った。

 

「リュウタを唆して仲直りの切っ掛けを作ってもらおうと思ったんだけど、やっぱりダメだったみたいね…」

 

「どうしたらいいんだろうか…。

このままじゃ、明日の学校にも響きかねないぞ…」

 

 オウガとマルムがそんな相談をしている時だった。

 各々のディノホルダーやディノラウザーが甲高い通知音を放ち始めた。液晶を見ると、中国のマップに赤い点が表示されている。

 恐竜が現れたことを知ったDキッズ達は、急ぎリアスのもとへと向かったのだった。

 

「リアスさん! 恐竜が出たみたいなんだ! 場所は?」

 

「ええ、こちらでも確認できたわ。

今回は中国の北部…ちょうど万里の長城の辺りに出現したみたいね」

 

「うーむ、万里の長城か…」

 

「よし!」

 

 それを聞くや否や、リュウタとレックスが駆け足でテレポート台へと向かう。

 

「ち、ちょっと二人とも!」

 

「古代博士がまだ何か言いたそうだよ!

せめてそれは聞いていかないか!?」

 

 マルムとオウガもやむなく2人の後を追いかける。

 だが、古代博士はそれに気づいていなかった。

 

「万里の長城は日本列島2つ分ほどもある長い建物だ。しかも高低差も激しい。

出発前に、場所の特定や絞り込みをした方がいいんじゃないか?」

 

 古代博士が振り返ると、そこにはもうDキッズはいない。

 

「もう行ってしまいましたよ?」

 

「なっ…何ーっ!?」

 

 

その頃 アクト団工作員3人組は…

 

 彼らはジャンピングシューズで大ジャンプを繰り返しながら万里の長城に接近していた。

 大ジャンプの繰り返しで脳が何度も揺さぶられたせいか、皆顔をげっそりとさせていて、気分も悪そうである。

 

「だっだいぶ、見えてきた、ザンスっ…」

 

「脳がっ…揺れてっ…気持ち悪いッスっ…」

 

「それでぇ…あれを登れって言うの…?

イヤだよ、アタシは…」

 

 ウサラパが不満を漏らすと、何かを見つけたノラッティ〜が弱々しく指をさした。

 

「あっ、あそこにっ、ロープウェイが、あるザンスよ…」

 

「どこ? どこぉ…?」

 

「…あら? 何事かしら?」

 

 ふと前を見ると、凄まじい砂埃が近づいてくる。よく見ると、それはこちらへ向かって走ってくる大勢の人々であった。

 ジャンプでグロッキー状態の3人が避けれるはずもなく、人々に巻き込まれ、踏みつけられてしまった。

 人々がすっかり通り過ぎた後、そこにはカートゥーンアニメのようにペラペラに踏み潰された3人の姿があった。

 

「い…痛いザンス…」

 

「一体…おれ達は今日1日で何回揉みくちゃにされればいいんスか…」

 

「もうイヤ…。おうちに帰してぇ…あら?」

 

 その時、一際大きな足音が近くから聞こえてきた。

 3人が何とか起き上がり、音のする方向を見ると、そこにはカルカロドントサウルスの姿があった。

 

「あっ…あれは…!カロカレ…カルカラドンドン…」

 

「カツカレー…カラアゲド…ドンブリ…?」

 

「ブブーッ! 正解は、カルカロザンスサウルス!…あれ? なんか違うザンスね…」

 

 聞き慣れない上にややこしい名前を思い出せず、カルカロドントサウルスの名前を間違え続ける3人であった。

 まあエウストレプトスポンディルスやオピストコエリカウディアなんかよりはまだマシな名前なのだが。

 

 一方その頃、Dキッズも万里の長城の内部にテレポートで到着したところだった。

 窓から顔を出し、彼らもカルカロドントサウルスの姿を認める。

 

「いたぞ! ありゃあデケェな…!」

 

「薄くて鋭い歯に3本指の腕…。

あれはカルカロドントサウルスね!」

 

「ティラノに匹敵する最大級の肉食恐竜だ!」

 

「俺にも見えた。多分カルカロドントサウルスだと思う。

まあ姿が似ているギガノトサウルスかマプサウルスの可能性もあるけど…。

流石にエオカルカリアにしては大きすぎるな」

 

 遠くで闊歩するカルカロドントサウルスの姿を目にし、各々の感想や推測を述べるDキッズ達だった。

 と、そこでマルムが思い出したかのように言う。

 

「そういえば…あのオバさん達まだ来てないのかしら」

 

「ゴラーッ! オバさん言うのは誰じゃーっ! どの口じゃーっ!」

 

「あっ、噂をすれば」

 

 マルムの呟きに反応したウサラパの怒声にDキッズがそちらを見ると、ウサラパ達はロープウェイに乗っていた。

 

「オバさん呼ばわりするんじゃないよ! 遠足気分のガキンチョ共め! さっさとおうちにお帰り!」

 

「とっとと帰れッスー!」

 

「プププのプー! ザーンス!」

 

 安置のロープウェイの中から煽るアクト団工作員の3人組に呆れた様子を見せるDキッズ達だったが、その航路を見て途端に焦り出す。

 何故ならそのロープウェイは、今カルカロドントサウルスがいる辺りへまっすぐに向かっていたからであった。

 

「まずいぞ! あのままだとアクト団の奴らが先にカルカロのところへ到着するかもしれない! 何としても先回りしないと!」

 

 オウガの一声に皆が頷き、万里の長城を辿って走り始める。

 それを自分達を追いかけているのだと勘違いしたアクト団の3人組は車内から彼らを煽り続けるものの、カルカロドントサウルスがロープウェイに興味を抱いたのか、近寄ってきたではないか。

 

「なッ…! カラカリカルカロ…!?」

 

「ドドド…ドーン!?」

 

「サシミ…スシぃ〜?」

 

 そこで3人同時に名前を思い出したのか、一斉に叫んだ。

 

「「「あっ!カルカロドントサウルス!!!」」」

 

 その呼びかけに応えるように、カルカロドントサウルスがロープウェイに思い切り頭突きを食らわせた。

 窓ガラスにクモの巣状のヒビが入り、車体も激しく揺れ動く。

 あまりの衝撃にひっくり返った3人だったが、すぐさま起き上がり、カルカロドントサウルスを睨みつけた。

 

「いったーい! よっくもやってくれたわね!

さぁ覚悟してちょうだい!アタシ達はー!」

 

「「「泣く子も黙ーる!!!」」」

 

 そう言いかけたところで、カルカロドントサウルスがロープウェイの扉を壊して開け放った。

 重力に従い、3人の体がカルカロドントサウルスの口の中へと滑り落ちていく…。

 そのままカルカロドントサウルスのランチになるかと思われた3人だったが、ジャンピングシューズのお陰で寸でのところで命を拾うことができた。

 さっきまでの強気な態度はどこへやら、命の危機に直面した3人はすっかり怯えきっていた。

 

「は…履いてて本当に良かったザンス…!」

 

「い、今のはマジで危なかったッス…!

もう少しでおれ達、あいつの餌になるところだったッス!」

 

「こ、ここここここの私に、恐竜ごときが唾を付けようだなんてしゃく億6しぇん万年早いわ!」

 

「カミカミッスよウサラパ様…」

 

「そうザンス…。迫力皆無ザンス…」

 

「お黙りっ! こうなったら…ティラノちゃんに出てきてもらうわよーん!」

 

 そう言ってウサラパは、躊躇いもなくティラノのカードをアクトホルダーに通した。

 そう、ロープウェイに乗ったままの状態で、である。

 

「ウ…ウサラパ様ぁ…」

 

「ここでそれをやったら…」

 

 エドとノラッティ〜の心配は現実のものとなった。

 ロープウェイの中でティラノを召喚したのでたちまち車体が内側からバラバラに弾け飛んでしまう。

 そのまま3人は下へと落下し…つま先から着地した。

 しかし、何故かジャンピングシューズが発動しない。

 

「止めるボタンを偶然つま先にて発見!ザンス!」

 

 しかしその直後にティラノが轟音を立てて着陸し、その衝撃で3人は吹き飛ばされてしまった。

 周囲がいつものバトルフィールドの状態へ変化していく中、ティラノとカルカロ…2頭の巨大肉食恐竜は互いに威嚇し合っていた。

 

 

 一方のDキッズ達も、そのことは確認していた。

 

「あっ! バトルが始まっちゃったわ!」

 

「ゼェ…ハァ…あ、あそこにカルカロと…」

 

「ティラノだ!」

 

「くっそー、先を越されちまったか…。こうなったら…!」

 

 ティラノとカルカロが睨み合っているのを見たリュウタは、ガブと共に最寄りの階段を駆け下りようとした。

 そんな彼にレックスが声をかける。

 

「おいリュウタ!どこに行くんだ!」

 

「決まってんだろ! ここから降りてあそこまで行くんだよ!」

 

「何言ってるんだ! この上のロープウェイ乗り場から行ったほうが早いって!」

 

「いーや、こっちの方が近道だね!」

 

 そう言うと、リュウタは足早に行ってしまった。

 それを見たレックスも吐き捨てるように言う。

 

「おいリュウタ!…チッ、勝手にしろ!」

 

 そしてレックスはそのままロープウェイ乗り場へと向かってしまった。

 

「ちょっと待ってよ、2人とも! オウガ、どうしよう?」

 

「ハァ…ハァ…あの2人のどっちかを孤立させてしまうのはマズい…。

マルムはレックスを追いかけてくれ…。

俺は、息を整えてからリュウタと合流する…」

 

 ここまで走りっぱなしで疲れ切ったオウガがそうマルムに言うと、マルムは戸惑いつつも頷いてレックスを追いかけていった。

 

 ある程度体力も回復できたところで、再びオウガは立ち上がり、レクシィとアメジストを連れてリュウタを追いかけて外に出た。

チラリと様子を窺うと、ティラノとカルカロの戦いは噛みつき合いに発展していた。

 しかし互いに相手の攻撃を避け続けており、大した手傷を負わせられていないようだ。

 痺れを切らしたカルカロが一声吠えると、その全身を赤い光が包み込む…技を発動しようとしているのだ!

 そのままカルカロは口の中に炎を溜め、それを大砲のように撃ち出す超技『爆炎大砲(ビッグファイアキャノン)』を繰り出した。

火球はティラノに向かって真っ直ぐ進んでいくが、当のティラノは素早く身を屈めて回避することに成功した。

 そのまま火球は直進を続け…ちょうどマルムが通りかかっていた部分に直撃した。

 

「キャアーッ!」

 

 長城の一部が崩落する轟音と共に、マルムの金切り声が3人の耳にもしっかりと届いていた。

 

「「「マルムー!」」」

 

 




今回はここまでです。
果たしてマルムは無事なのか…。
リュウタとレックスは仲直りすることができるのか…。
後編をご期待下さい。
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