古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回は後編です。
カルカロドントサウルスの『爆炎大砲』で生き埋めになってしまったマルム。
果たしてオウガ達は彼女を救うことができるのか…。
後編をお楽しみ下さい。


後編

 崩落した瓦礫の中、どこからかマルムを呼ぶ声が聞こえる。

 

『マルムー!』

 

『大丈夫かー!聞こえたら返事しろー!』

 

『頼むマルム…応答してくれ!』

 

 ディノホルダーから聞こえてくるオウガ達の声で、マルムの意識も徐々に鮮明になってくる。

 目を覚ますと、そこは瓦礫の中にできた空洞のようだった。ディノホルダーは手元になく、瓦礫のどこからかオウガ達が呼びかける電子音声だけが聞こえてくる。

 マルムはゆっくりと体を起こし、辺りを見渡すが、出られそうな所は1つもない。

 完全に、瓦礫で閉じ込められてしまっていたのだ。

 

 

 一方その頃、ティラノの戦況を見守っていたウサラパ達アクト団工作員の3人組は、カルカロドントサウルスが技を使ったことに驚きを隠せない様子だった。

 

「何なんだいあいつ…。技を使ってきたよ?」

 

「カプセルの中に、技カードも一緒に入ってたんじゃないッスかね?」

 

「あのガキンチョ共の恐竜達もそれで技を使えてたザンスね!

それにしても…あんなの食らったら一溜りもないザンス!」

 

 驚きで力みすぎてしまったのか、それともわざとなのか、ノラッティ〜が放屁してしまう。

 それを近距離で受けてしまったウサラパは、あまりの匂いに卒倒してしまったのであった。

 

 

 場所は戻り、マルムが生き埋めになった場所では、崩落に気付いたオウガ達が集まってきていた。

 パラパラと合流したレックスは内部から助けようとするものの、瓦礫に行く先を塞がれていてそれ以上進むことができなかった。

 

「くそっ…これじゃ前に進めない…」

 

 一方オウガとリュウタは、外から崩落現場へと駆けつけていた。

 

「マルム…! どうしよう…。俺が手分けしてリュウタとレックスを追おうなんて言い出したからこんな事に…」

 

 眼前の出来事に呆然とするオウガ。

 リュウタも瓦礫に向かって叫んだ。

 

「マルム! いたら返事してくれ!」

 

 その時、ディノホルダーとディノラウザーからマルムのか細い声が聞こえてきた。

 

『…助けて…』

 

 その声にオウガ達も全員反応する。

 

「マルム! 大丈夫か!?」

 

『ええ…何とか…』

 

「ケガはないか?」

 

『うん、大丈夫みたい…』

 

「マルム、本当にごめん!こんなことになるなんて…」

 

『オウガ、そんなに謝らないで。

全く動けないわけじゃないんだから』

 

「そっか…。待ってろ! 今オレ達が助けてやるからな!」

 

 レックスもマルムの無事を知り、一安心する。

 と、そこでパラパラとエースが瓦礫を1つずつ退かしているところが目に入ってきた。

 一見途方もない作業に見えるが、こうでもしなければ中に閉じ込められているマルムにどんな被害が及ぶか分からない。

 そう考えたレックスは、リュウタとオウガにも助力を求めることにした。

 

「リュウタ! オウガ! 瓦礫で出入り口が塞がってるんだ! 退かすのを手伝ってほしいから上がってきてくれ!」

 

「わ、分かった! 今そっちに行く! じゃあリュウタも…」

 

 そう言いかけてオウガがリュウタを振り返ると…。

 

「それなら一気にガブにやらせる!」

 

 なんと、リュウタはガブを成体化させて瓦礫を突き崩させるつもりのようだった。

 

「よすんだリュウタ! もし中で崩れたりしたら…」

 

「そうだリュウタ! 危険だ!」

 

 2人が制止しようとするものの、もう遅い。

 リュウタは既にガブをカードに戻し、ディノホルダーに通していた。

 

「いくぞガブ! ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス!」

 

ゴオォォォォォォ!!

 

「頼んだぞ! ガブ!」

 

 成体化したガブが召喚されると同時に、リュウタが指示を出す。

 指示を受けて、ガブは崩落場所へ歩み寄っていく。

 

「無茶だリュウタ! やめさせろ!」

 

「リュウタ、考え直してくれ! ここは慎重に進めるべきだ!」

 

「大丈夫だって! オレとガブに任せときな!」

 

 オウガとレックスが2人で説得を試みるものの、リュウタは聞く耳を持たない。

 ガブは一度瓦礫を角で払い除けてから、一気に角を瓦礫に刺し込んだ。するとガラガラと瓦礫が崩れ始め、中にいるマルムの頭上からも大小様々な石が降り注ぐ。

 

「ガブやめろ!」

 

 レックスの金切り声でようやくリュウタも状況を理解したようで、すぐにガブに静止の指示を出す。

 

「しまった! ガブ! 動くな!」

 

 ガブもその言葉に従い、角を瓦礫から抜かずにそのままの姿勢を保った。

 

「まずいぞ…。中でも少なくない崩落があったようだ。

慎重に事を進めるつもりだったけど、それでかつ急がないとマルムが危ない…」

 

 と、その時。ディノラウザーがこれまでとは違うアラームを出し始めた。

 オウガが画面を覗き込むと、オレンジ色に点滅する点が、こちらへまっすぐ向かっているではないか。その方向と目を向けると、茂みから何かが飛び出し、睨み合っていたティラノとカルカロを纏めて突き飛ばした。

 

「ッ! こんな大変な時に…新手が来るなんて!」

 

 その場に乱入してきたのは、立派な装飾のフリルと1本の立派な鼻角が特徴的な大型の角竜…シノケラトプスだった。オレンジの反応ということからも、オーウェンの世界から迷い込んだ恐竜に間違いない。

 シノケラトプスはやがて瓦礫に角を突っ込んでいるガブを見つけると、突進の前準備のように片方の前足で地面を蹴り始めた。

 

「やばい…。あいつここに突進してくるつもりだ…!

リュウタ! レックス! ここは2人に任せる!

俺はあのシノケラトプスを止めないと!」

 

 2人にそう叫ぶと、オウガはアメジストをカードに戻し、ディノラウザーにスキャンした。

 

「頼んだぞアメジスト! ディノスラーッシュ! 揺るがせ! ステゴサウルス!」

 

ケエェェェェ…!!

 

 成体化したアメジストが地面に降り立つのとほぼ同時に、シノケラトプスはスタートを切った。

 

「アメジスト! あいつに正面からぶち当たるな! 横から尻尾で薙ぎ払ってやるんだ!」

 

 アメジストはオウガの指示通り、猛然と向かってくるシノケラトプスの横っ腹を、冷静に尻尾のサゴマイザーで薙ぎ払った。攻撃を諸に受けたシノケラトプスは横様に倒れ、勢いのまますぐ近くの木に激突する。

 再び立ち上がり、怒りの雄叫びを上げるシノケラトプスに、オウガとアメジストは対峙していた。

 

 一方残されたリュウタとレックスは、マルムの安否を確認するためディノホルダーに呼びかけていた。

 

「マルム! マルム返事しろ!」

 

「大丈夫か!? マルム!」

 

 リュウタとレックスが必死に呼びかける。

 だがマルムから返ってきた言葉は、これまでとは一風違うものだった。

 

「…ダメかもしれない」

 

 その言葉に、2人は仰天する。

 

「な、何言ってるんだよマルム! 諦めるな!」

 

「もういい! あんた達2人には期待してないから!」

 

 マルムはそう言い、内部で移動を始めていた。

 

「何でだよ! どうして…」

 

「…自分勝手なダメキッズだからよ!」

 

 その一言に、リュウタとレックスはショックを受けた。

 

「オウガにこれ以上負担はかけさせられない。

それにあんた達なんかに頼らずに、アタシはここから脱出してみせるわ…!」

 

 そう言い捨て、マルムは更に進んでいくのだった。

 

 

 一方、場面はアクト団の方に戻る。

 あれからしばらく戸惑っていたティラノとカルカロだったが、また2頭で攻撃し合っていた。

 

「今度は何なんだい、さっきの恐竜は…」

 

「ティラノとカルカロドントを吹き飛ばして、あっちにいっちゃったザンス…」

 

「今はあそこでステゴと戦ってるッスよ」

 

 エドが指差す先では、アメジストとシノケラトプスが激しい鍔迫り合いを繰り広げていた。

 

「あんな恐竜いたかしら? 見たことのないやつだわ」

 

「それは後でドクターに聞いてみるとして…あの恐竜も持ち帰れば、きっと喜んでくれるザンス!」

 

「ひょっとしたら、ご褒美も貰えるかもッスよ!」

 

「ふむふむ、それもいいねぇ…。でもまずはティラノちゃんが相手をしてるカルカロドントサウルスに集中しな!」

 

「二兎追うものは一兎も得ずザンスからね!」

 

 

 戻ってDキッズ側

 

 しばらくリュウタとレックスはマルムの言葉に呆然としていたものの、現状を打破する方向に舵を切ることにした。

 

「…そうだな。オウガだけに負担はかけられねぇな…。

こっちはオレとガブが何とかする! レックスとエースはカルカロドントサウルスやシノケラトプスの相手を頼む!」

 

「分かった! マルムを頼んだぞ! …いくぞ!エース!」

 

 レックスがエースをカードに戻し、ディノホルダーにスキャンする。

 

「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

グォォォォォン!!

 

 エースが風に包まれて成体の姿で召喚され、地面に降り立った。

 

「エース! 他の恐竜をここへ絶対に近づけさせるな!」

 

 レックスの命令に低い唸り声で返したエースは、早速飛んできた瓦礫を頭で打ち返した。

 

「あら、ガキンチョの方でもう1体出してきたみたいね」

 

「今度こそミー達の邪魔をする気ザンス!」

 

「でも…あれ? あのカルノタウルス、こっちに来ないッスよ?」

 

「変ねぇ…。戦う気がないのかしら? どう思う? ノラッティ〜?」

 

 エースがティラノとカルカロの戦闘に乱入しないのを見て、不思議がるアクト団の3人組。

 ウサラパから問われたノラッティ〜はしばらく考え込んでから、ポンと手を打った。

 

「分かったザンス! あれはウンコをしているポーズザンス!」

 

「…そうッスかねぇ…?」

 

「それならもっと深く座ってるんじゃないかい?

…じゃあ、あっちのトリケラトプスは?」

 

 今度はウサラパが瓦礫に角を突っ込んだまま動かないガブを指差す。

 それに対しても、ノラッティ〜は自信満々で答えた。

 

「あれは反省を促す…じゃなくて、反省しているポーズに違いないザンス!」

 

 ノラッティ〜の珍推理に、ウサラパとエドは首を傾げたのであった。

 

 

 エースが召喚された様子を見ていたオウガは、内心安心していた。

 

(良かった。レックスがエースを護衛に置いてくれたお陰で、最低限の防衛は何とかなりそうだ。

でもここは念を入れて、俺もレクシィを護衛に立てておくべきか…)

 

 そう考え、オウガはレクシィのカードをディノラウザーに通した。

 

「ディノスラーッシュ!

燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!」

 

ゴガァァァァァァァァッ!!

 

 赤い光と業火に包まれ、レクシィが顕現する。

 

「レクシィ! 君もエースと一緒にここに誰も近寄らないように見張るんだ!」

 

 オウガがそうレクシィに指示を与える。

 だがレクシィは顔をチラリともこちらへ向けず…ティラノとカルカロが戦っているところへ突撃していった。

 

「え…? れ、レクシィ…?」

 

 これに驚いたのは、他ならぬオウガであった。

 レクシィには色々と悩まされることも多かったが、指示を無視されたのは流石に初めてだったからである。

 

「…何でだよ、レクシィ…」

 

 唖然としながら、オウガはそう呟いたのだった。

 

 

 一方アクト団3人組はティラノとカルカロの勝負の行方を見守っていたが、突如としてティラノに突進し、大きく吹き飛ばしてきたレクシィに驚かされていた。

 

「ヒエーッ! あの時の凶暴なティラノザンス!

ウサラパ様ーッ! お助けザンスゥー!」

 

「あいつはマジでヤバいやつなんス!

早く勝負を決めた方がいいッスよ!」

 

「だからどうしたんだよそんなに慌ててさあ…。

まあ決着が早いに越したことはないねぇ! さあいきなさいティラノちゃん! お遊びはここまでよ! 『ネッククラッシャー』!」

 

 ウサラパが技カードをアクトホルダーに通すと、ティラノが高らかに雄叫びを上げ、カルカロを掬い上げた。そしてその場でクルクルと回転を始め、落ちてきたカルカロの首に強烈な回転打を叩き込んだのである。

 そのままカルカロはレクシィの横を通過し…ガブの方へと一直線に飛んでいくではないか!

 

「まずい! 止めるんだエース!」

 

「アメジスト! 一度シノケラトプスを退けて、君もガードに入るんだ!」

 

 2人の指示に従い、エースは地面を滑っていくカルカロへ向かって走り、アメジストもシノケラトプスを尻尾の回転打で大きく跳ね飛ばしてからエースの加勢に加わった。

 2体の必死の努力の甲斐あって、ギリギリでカルカロが長城に激突することは避けられたのだった。

 だがこれに激怒したのがウサラパ達アクト団である。

 

「何がウンコのポーズさ! 結局あいつらもグルじゃないかい! ティラノちゃん! 3体纏めてやっちまいな!」

 

 その指示を受け、ティラノが3体へ突撃していく。

と、そこでカルカロが『爆炎大砲(ビッグファイアキャノン)』をティラノに向けて撃ち込んだ。

 またしてもティラノは身を翻して避けたものの、その先にはあのシノケラトプスがいる!

 直撃はしなかったものの、地面に着弾した衝撃がシノケラトプスを襲う。するとシノケラトプスはギロリとカルカロを睨み、体に雷の力を溜め始めた。シノケラトプスも技カードを持っていたのである!

やがて雷エネルギーは角に収束すると、長大な槍のような形状となった。するとその角を高く掲げてから突撃する超技『雷撃一閃(バスタードスピア)』を繰り出してくる。

 アメジストやエース、そして標的のカルカロも回避することができたが、『爆炎大砲(ビッグファイアキャノン)』を避けたばかりのティラノにはどうすることもできなかった。

 シノケラトプスはティラノを雷の槍で貫くと、そのまま諸共に長城へと突撃していった。

 決して小さくはない振動が崩落部分にも伝わり、マルムが悲鳴を上げる。

 

「キャアアア!」

 

「頑張れ! ガブ! もう少し踏ん張ってくれ!」

 

 瓦礫を支えているガブにかかる負荷も増し、辛そうな様子を見せている。そんなガブをリュウタは応援すると共に、少しでも負荷を軽減できるように瓦礫をどかし始めた。

 

 一方、シノケラトプスの技を諸に受けたティラノはその場に崩れ落ち、カードに戻ってしまっていた。そんなところへ不幸にも強い風が吹きつけ、カードをさらっていく。

 

「か、カードが飛んでいくッス〜!」

 

「ひえぇぇぇぇ! 待ってぇ〜!」

 

 最早カルカロドントサウルスだのシノケラトプスだのを気にしている暇はない。一刻も早くティラノのカードを回収しようと、アクト団の3人はカードを追いかけていってしまった。

 

「見てくれ! 2人とも!

アクト団の連中が逃げていくぞ!」

 

 そんな彼らの後ろ姿を指差しながら、オウガがリュウタとレックスに告げる。

 

「ほ、ホントだ!」

 

「よし、これで後はカルカロドントサウルスとシノケラトプスを諫めれば…」

 

 しかし、事はそう簡単には進みそうになかった。

 カルカロは標的をシノケラトプスに、シノケラトプスもまた標的をカルカロに変えていたのである。

 まずはカルカロがシノケラトプスのフリルに噛みつく。するとシノケラトプスは体を大きく揺さぶってそれを振りほどき、お返しとばかりに角でかち上げようとする。

 カルカロはそれを躱すと、今度は『爆炎大砲(ビッグファイアキャノン)』を浴びせようと火球を吐き出す。だがそれをシノケラトプスは『雷撃一閃(バスタードスピア)』の雷槍で打ち砕いた。

 目の前で激しくぶつかり合い、しのぎを削る2体の恐竜。このままこちらへ近づいてくれば、何かのはずみで崩落部分を更に壊してしまうかもしれない状況であった。

 この激闘を前にしては、流石のレクシィも迂闊に手出しができないようで、少し距離を取って様子見を続けている。

 一方でアメジストは、既にエースと共に崩落現場の防衛に入っていた。

 

「2人とも、どうしようか…?

マルムを優先するべきか、それともあの2体の対処をすべきか…」

 

 オウガがリュウタとレックスに尋ねると、リュウタから威勢のよい答えが返ってきた。

 

「決まってるだろ! ここは役割分担だ!

オレはあの2体が互いに夢中になってる間に少しでも瓦礫をどけて、マルムを助けるぞ!」

 

 そう言いつつ、リュウタは引き続き瓦礫を取り除く作業を地道に続けていた。

 

「僕とオウガはカルカロドントサウルスとシノケラトプスの動向に注意を向けよう!

あの乱戦だと何が起こるか分からない…。常に最悪を考えて行動するんだ!」

 

 レックスの言葉を受け、オウガは大きく頷いた。

 そして、2人が2体の恐竜の戦いを観察していると…唐突にその時は訪れた。

 カルカロの放った『爆炎大砲(ビッグファイアキャノン)』を遂にシノケラトプスはいなし切れなくなり、大きく体勢を崩す。そこを見逃さなかったカルカロはシノケラトプスを横倒しにして首に食らいつき、大きく投げ飛ばした。高く宙を舞い、地面に落下したシノケラトプスが2枚のカードに戻っていく。

ようやく決着がついたのだ。

 

「よし! これでひとまず安心だ!」

 

 しかしカルカロはエースとアメジストの方へ向き直ると、低く唸り声を上げた。

 どうやら彼らを次のターゲットに定めたようだ。

 これ以上カルカロと事を荒立てたくないレックスは、困惑した様子を見せた。

 

「何でだよ…! 僕達は君の敵じゃないんだ! やめてくれ!」

 

 その傍で、リュウタは引き続き瓦礫の撤去を進めていた。時折大量の瓦礫を支えているガブへの声掛けも忘れていない。

 

「頑張れ! ガブ!」

 

 そして、瓦礫の内部ではマルムもまた外へ出るために1つ1つ瓦礫をどかして進んでいた。

 やがて、マルムは瓦礫の山から突き出ている1対の突起物に気づく。それは、瓦礫に突き立てているガブの角だった。ようやくここまで進むことができたのだ!

 

「ガブ…ありがとね。アタシも頑張るから…」

 

 そう呟き、マルムは角を抱き締めてガブに感謝の意を伝えた。

 

 一方、レックスは『疾風無敵(サイクロン)』のカードを手に取りながらも、まだカルカロを迎え撃つ決心がついていなかった。

 

(アクト団は撤退したし、もう戦う理由はないじゃないか…。

どうしても…戦わなきゃいけないんだろうか…)

 

 レックスが迷っている間に、カルカロはくわっと牙を剥き、エースに迫ってきていた。

 

「しまっ…!?」

 

 咄嗟にレックスがエースに指示を出そうとした時だった。

 横からレクシィがカルカロの首筋に食らいつき、地面に引き倒したのである。更にそれと同時に、レクシィの口に炎が溜まっていく…。

 レックスは確信した。これは『狙大爆砕(クリティカルエクスプロード)』だ!そしてすぐ下のオウガを見ると、ディノラウザーと技カードをその手に握っていた。彼が技を発動したのだ。

 

「オウガ! どうして…」

 

 レックスがそう尋ねると、オウガはまっすぐにレックスの目を見つめて言った。

 

「レックス。相手はカルカロドントサウルス。

ティラノサウルスやギガノトサウルスに並ぶ史上最大級の肉食恐竜なんだよ。その危険度が一際高いってことは、レックスもよく知ってるよね?」

 

「でも…オウガだってアメジストと仲良くなってカードに戻すことができてたじゃないか…」

 

「なるべく恐竜を傷つけたくない。その気持ちは俺だって一緒さ。

でも、アメジストは大型とはいえ草食恐竜で、性格も温厚で食いしん坊だったから、餌付けでうまくいったんだと思う。

恐竜を無力化するにはカードに戻すしか方法はなさそうだし、彼らと俺達じゃ言葉も違うから、説得なんてできやしない。

だから、今回のカルカロドントサウルスみたいに手が付けられない相手に対しては…」

 

 そこでレクシィがとどめの爆発を炸裂させた。

 十分に距離を離してから炸裂させたお陰で、オウガ達のいるところまでは髪がそよぐ程度の爆風しか届かなかった。

 

「戦って倒して、カードに戻す。

その覚悟の上で望まなきゃいけない場面が多くなると思うんだ。

オーウェンさんの話だって聞いたでしょ? 恐竜達だって俺達と同じ生き物…決して無害なだけの存在じゃないんだから」

 

 オウガの言葉に、レックスも迷いを振り払うように頷いた。

 彼らの後ろでは、2枚のカードに変わったカルカロドントサウルスと、自主的にカードに変化してオウガの手元に戻っていくレクシィの姿があった。

 

「よし、それじゃあ俺はシノケラトプスとカルカロドントサウルスのカードを回収してくる。

レックスはリュウタの手助けをして欲しいんだ。

俺もカードを拾ったらすぐ加勢するよ」

 

「…分かった! 頼んだよ!」

 

 会話が終わるとオウガはアメジストを連れ、カードの落ちた方へ走っていった。

 レックスもリュウタと共に瓦礫をどかしていく。それにカードを回収し終えたオウガも加わり、遂に瓦礫の内と外が繋がる時がやってきた。

 

 マルムが瓦礫をどかしていると、目の前の石が崩れた穴から太陽の光が差し込み、そこからパラパラが顔を出したのだ。

 

「パラパラ!」

 

 更に穴が広がると、リュウタやレックス、オウガに他のパートナー恐竜達の姿も見えてくる。

 

「よっ!」

 

「お待たせ!」

 

「無事で良かった!」

 

 そう言って3人がマルムに笑いかけると、マルムも感極まった様子で嬉し涙を流しながら感謝の意を伝えた。

 

「みんな…本当にありがとう!」

 

 それからマルムは3人の手を借りて瓦礫の中から脱出し、無事外に降り立った。それからリュウタは忘れないようにガブに声をかけ、ディノホルダーを弄ってカードに戻す。

 

「よし…ガブ! もういいぞ!」

 

 ガブがカードに変わってリュウタの手元へ戻ると、支えを失った瓦礫は崩れ、彼らが頑張って空けた穴をあっという間に埋め尽くしてしまった。

 

 ようやく一段落したところで、オウガが3人に回収したカードの確認をしてもらう。

 

「カルカロドントサウルスに『爆炎大砲(ビッグファイアキャノン)』、それからシノケラトプスに『雷撃一閃(バスタードスピア)』…。

色々大変なことはあったけど、今日は大収穫だったね」

 

「これでレクシィやガブは使える技カードも増えたから、戦いの幅を更に広げられそうだね。

僕も前回回収した『恐竜幻影(ダイノイリュージョン)』はディノホルダーに入れているし、2人もそうした方がいいと思う」

 

「にしてもガブも勿論だけど、このシノケラトプスもカッコいいなぁ…。

矛みたいな角に大盾みたいなフリル…まさに矛盾恐竜だな!」

 

「なんか言葉の使い方が違う気がするけど…ま、いっか!」

 

 そんな風に談笑している中、リュウタがレックスに近づくと、頭を下げて謝った。

 

「レックス、オレが見つけてきたボールのせいで化石ダメにしちゃって…本当にごめん」

 

「いいんだよリュウタ。僕も冷静になったら、八つ当たりが過ぎると考え直したからさ。

それに…化石はまた見つけられるけど、リュウタの代わりはどこにもいないもんな」

 

「レックス…! うおーっ! オレ達ずっと親友だぜ!」

 

「あぁリュウタ。僕も同じ気持ちさ!」

 

 すっかり仲直りした2人の様子を見て、オウガとマルムも一安心といった表情を見せる。

 かくして亀裂が入りかかったDキッズは、再び元通りになったのだった。

 

 

そんなDキッズに対して…

 

「あーんた達ぃ、早く何とかしなさいよぉ〜!

ティラノだけでも持って帰らないと…ソーノイダ様の逆鱗に触れちゃうわよぉ!」

 

 アクト団工作員の3人組は、高い木の枝に引っかかってしまったティラノのカードを取ろうと四苦八苦していた。

 

「でもっ…届かないッス…」

 

 ジャンピングシューズで跳ねても取れそうにないので困り果てていると、ノラッティ〜が溜めジャンプで取ろうと勢いをつけ始める。

 

「もっと高く跳べばいいザンスぅ〜!」

 

 そしてノラッティ〜は一気に力を解放して高く高くジャンプし…空の彼方へ消えていった。

 

「ちょっと! カード置いてどこまで行くのよぉ!」

 

「ウサラパ様、おれ達も跳ぶッスぅー!」

 

「えっ、ちょっ、イタタタタ…ぴょいーんーっ!」

 

 その後今度はウサラパとエドが少し勢いを抑えながら溜めジャンプをする。ウサラパはエドに腕を引っ張られながら、枝葉を突き抜けてどんどん上昇していく…。

 そして林冠をくぐり抜けたところで、ウサラパの鼻穴に何かが刺さった。

 

「ん?」

 

 なんとそれは、ティラノのカードであった。

 

「ウサラパ様、やったッスね!」

 

「ナ〜イスキャッチ!ザーンス!」

 

 ようやくカードを取り戻せて喜ぶ3人組。しかし、その安寧も長くは続かなかった。

 

「あぁ…また来たッス…」

 

 間もなく、彼らはまたしても前方から現れた鳥の群れに揉みくちゃにされてしまったのであった…。

 

 

 




 今回の恐竜解説!

「今回の担当は私!古代博士だ!
今回解説するのは、地上の人食いザメ『カルカロドントサウルス』!
白亜紀後期の、現在で言う北アフリカに生息していた大型肉食恐竜で、その全長はなんと12〜13メートル!ティラノサウルスに匹敵する大きさだな!
名前の意味は「ホホジロザメトカゲ」という意味だ。これはこいつの歯が薄く鋭くなっていて、まるでホホジロザメの歯のようだったから、というものだな!
この歯はティラノサウルスのように獲物を骨まで噛み砕くことはできなかったが、切れ味はより鋭かった。
そのため、この恐竜は噛みつきで獲物に裂傷を与え、出血多量で倒れるまで追い回す狩りをしていたのではないかと言われているぞ!
この特徴はギガノトサウルスやマプサウルスといった近縁種と共通している点で、彼らが同様の進化を遂げていったということが窺えるな!
ちなみに、同時代同地域にはスピノサウルスが生息していたんだが、カルカロドントは肉、スピノは魚といった感じでメインの食物が違うから争いに発展したことはほぼなかったと考えられているぞ!
とは言え、背中の帆をカルカロドントに噛み取られたと思われるスピノの化石が見つかっていることからも、全く争わなかったというわけではなさそうだな」


ということで、今回はここまでです。
いつも応援していただき、本当にありがとうございます。
ではまた次回、『母は強し!マイアサウラの底力!』でお会いしましょう。
アンケートで最も得票数を得た彼女も参戦する予定です。
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