古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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 前回の恐竜キング!

 不慮の事故によってレックスの掘り当てたアンモナイト化石を壊す原因を作ってしまい、喧嘩になってしまったリュウタとレックス。
 そんな中、中国の万里の長城にカルカロドントサウルスが出現するも、またしても2人の意見が割れてしまう。
 そんな中カルカロドントサウルスの『爆炎大砲』によって長城の一部が崩れ、マルムが生き埋めになってしまった。更にはカルカロドントサウルスに加えてシノケラトプスまで乱入し、現場は混沌としていく。
 そんな中リュウタとレックス、そしてオウガも協力してマルムの救出とカルカロ・シノケラ両方の鎮圧にも成功した。
 かくしてマルムを助けて恐竜達も保護し、リュウタとレックスも仲直りすることができたのだった。




第6話:母は強し!マイアサウラの底力!
前編


 ここはヨーロッパのスイスにあるアルプス山脈。

 かの世界的名作「アルプスの少女ハイジ」の舞台にもなった地域である。

 そんな山脈の一角で、放牧中のヤギたちが草を食んでいた。その群れから少し離れたところにいる1匹の小ヤギが崖の途中にある何かを取ろうと懸命に首を伸ばしている。そこには、あの卵型カプセルがあった。そのうちカプセルはモゾモゾと動き出し、小ヤギのすぐ目の前に落ちてきた。小ヤギは驚いて飛び退くも、すぐに近づいて匂いをかぐ。餌ではないことが不満だったのか、小ヤギは後ろ足でカプセルを蹴り上げた。カプセルは大きく宙を舞って草むらに落ち、2つに割れると中から2枚のカードが出てくる。

 そこへ風で草がそよぐとカードは緑色の光に包まれ、実体化していく。そして光の中から現れたのは、かの集団営巣化石で有名になった鳥脚類・マイアサウラだった。

突如現れたマイアサウラに、ヤギたちは困惑の鳴き声をあげるのだった…。

 

 

その頃 アクト団の基地 アジ島

 

 恐竜が出なければやることもないので、アクト団工作員の3人組は各々やりたいことをしてのんびりと過ごしていた。

 ウサラパはネットショッピングの真っ最中のようである。

 

「ス・テ・キ〜♪ アタシのためにあるのかしらこの服〜!

…あら、これもいいわねぇ…これも…これも…!

アタシが着たらもっと美しくなるわよぉ〜ん! ご購入っ♪」

 

 ウサラパが様々なおしゃれ服を買い物カゴに入れたところで決済ボタンを押そうとすると、背後から伸びた何者かの指がブラウザページを閉じてしまった。

 

「キャンセルぅ? 何すんのよ! …あっ」

 

 なんと、キャンセルしたのはあのロボ家政婦のタルボーンヌだった。

 

「ムダ遣いはダメだと言ったはずです!」

 

「だってだってぇ〜…こーんな離れ小島にいたら流行に乗り遅れそうで…うえ〜んごめんなさ〜い…」

 

「泣き真似しても許しません」

 

「ぶぅ〜…」

 

 泣き真似でお叱りを逃れようとするウサラパであったが、タルボーンヌにはとっくにお見通しであった。

 そんなみじめなウサラパの姿を見て、ノラッティ〜とエドはクスクスと嘲笑う。しかし、そんな2人のもとにもタルボーンヌは近づいてきた。

 

「食事前にお菓子はダメです!」

 

「散らかすのもダメです!」

 

 エドからはお菓子を、ノラッティ〜からは製作途中のプラモデルを取り上げ、机の上を綺麗に掃除してしまう。

 キラキラの机とは裏腹に、2人の心は雨模様そのものになってしまった。

 そんなところへ、元気にDr.ソーノイダがやってきた。…顎髭にティラノをぶら下げながら、である。

 

「ぞいぞいぞい! 現れたぞい! 次の恐竜ぞい!」

 

 その一声に、ウサラパ達もすぐさま反応し、ソーノイダについていく。

 

「今度はどこ? パリ?? ミラノ???」

 

 ウサラパは買い物目的としか思えない目的地を期待しているようだ。

 

「いやぁ…ヨーロッパはヨーロッパザンスけど…」

 

「ここはスイスの…アルプスの山の中ッスね」

 

 その言葉にウサラパは露骨にガッカリとした様子を見せる。

 

「山ぁ〜? 今度は何で行くのぉ〜? 飛行船はもう嫌よぉ…?」

 

「フホホホホホ…」

 

 それを聞いたソーノイダは、何故か笑い始めた。

 

「心配するでないぞい! 今回"は"ゴージャスぞい!

ワシは…太っ腹っぞい!」

 

 カッコよく決めたつもりのようだが、顎髭にティラノがぶら下がっているせいでどうも威厳が足りない、そんなソーノイダであった。

 

 

一方 三畳紀市 リュウタ宅

 

「信じられな〜い! 何よこれ〜!」

 

 マルムの叫びが家中に轟く。

 リュウタ宅の居間が、酷い有り様であったためだ。

 ゲーム機は遊んだらそのまま。脱いだ服もソファーにかけっぱなし。食器もテーブルに置きっぱなし。そんなあまりに粗雑な風景に、マルムは耐えられなかった。

 

「こんなに散らかして〜…。うううう…リュウタ〜!」

 

 我慢できなくなったマルムがリュウタの部屋へ怒鳴り込む。そこでリュウタはマンガを読んでいる真っ最中だった。更には彼の自室までもが居間同様に散らかっている。

 

「なんだよ、うっせぇなぁ…」

 

「ちょっとどういうつもり!?

おばさんがたった3日仕事の旅行に出ただけで…。あまりにも酷すぎるわ!」

 

「マルムには関係ねぇじゃん…」

 

 そう言って、リュウタは口を尖らせる。そして、そこへ騒ぎを聞きつけたレックスもやって来た。

 

「何騒いでるんだ?」

 

「レックス!…まさかあなたの部屋も?」

 

 そう言うが早いか、マルムが今度はレックスの部屋へと向かった。扉を開けて中を確認すると…部屋はとても綺麗に整頓されていた。

 

「どうだい?綺麗だろ?」

 

「確かにそうだけど…だったらどうして片付けてあげないの!?」

 

「えっ…何で僕が…?」

 

 それからマルムはレックスを再びリュウタの部屋へと連れて行き、リュウタと並ばせた。2人並んだところへ、マルムが次々と使用済みのタオルやら服やらを投げかけていく。

 

「ほらほらほら、片付けなさーい!」

 

 それを見たリュウタとレックスは、思わず互いの顔を見合わせるのだった…。

 

 

一方その頃 

 

 空港に到着したアクト団工作員の3人は、いつもと一風違う服装だった。ウサラパはドレスを、ノラッティ〜とエドはスーツに洒落た帽子まで身につけていたのである。

 

「流石、ドクターの言う通りゴージャス気分ッスね」

 

「みんな見てるザンス…!」

 

 着飾った3人は、そのまま空港の搭乗受付の窓口へ向かっていく。ウサラパが先陣を切り、カウンター越しの若い男性スタッフに流し目を送る。

 

「ねぇ…責任者の方、いらっしゃる…?」

 

「…は、はいっ!」

 

 若いスタッフはウサラパに魅せられたようで赤面して奥へ引っ込むと、上司を呼んできた。こちらは少し年配の、眼鏡の男である。

 そこから搭乗手続きが始まる…かと思われたのだが…。

 

「そうは言われましても…」

 

「あらぁ〜いいじゃなぁい? ねぇ?ちょっとくらい…」

 

「いや、困ります…」

 

 何かで話が纏まらないのか、随分と長話になっているようだ。

 ウサラパと空港スタッフの会話を聞いていたノラッティ〜とエドが、こっそりと耳打ちをする。

 

「ちょっとどころじゃないザンス…。

航空券代を100分の1にしろだなんて正気じゃないザンスよ…」

 

「せっかくドクターから多めに資金も貰ったのに、まさか値切り交渉を始めるなんて…全然ゴージャスじゃないッスよ…」

 

 なんと、ウサラパは航空券を値切ろうとしていたのである。とんだケチがいたものだ。ノラッティ〜とエドが呆れた様子でウサラパを見ても、本人はどこ吹く風といった感じで、しつこく値下げを迫っている。

 と、そこへ1人の老人が通りかかった。見た目の年齢の割にはしゃんと背筋を伸ばして歩みを進めており、服装は古風なパイロットのようにも見える。さらに奇怪なのが、その頭であった。頭部は禿げ上がっているが、口髭も顎髭もたっぷりと蓄えていて、なおかつ綺麗に整えられている。なんだか上下逆さまにしても顔として成り立ちそうなくらいであった。

 

「あの人に頼んでみてはどうですか?」

 

「え?」

 

 空港スタッフにそう言われ、ウサラパが老人の方を見ると、それに応えるかのように老人は目を見開いた。

 

 結局老人の飛行機に乗せてもらえることになったのだが、小型のプロペラ機なのはまだよいとしても、その機体はオンボロ極まりなかった。

 不安そうな様子でウサラパが老人に声をかける。

 

「あのー! おじいさん! この飛行機大丈夫ですよね?

落ちたりしないですよねぇー?」

 

「さぁ…分かんねぇ…」

 

 老人の口から出てきた言葉に、アクト団の3人組は驚愕する。もう飛行機は離陸しているので逃げ場がないことも彼らを焦らせるには十分だった。

 さらにはこんなことまで言い出した。

 

「おらぁ悔いはねぇよ。例えこれが最後のフライトになってもな…」

 

 まるで飛行機と心中でもするかのような物言いである。当然アクト団の3人は反発した。

 

「例えアンタに悔いがなくても! アタシには悔いありまくりなんだよぉーっ!」

 

「ん〜?」

 

 ウサラパが必死に訴えるものの、老人はピンときていないようだ。

さらにウサラパがまくしたてる。

 

「ちょっと! 行き先分かってるんでしょうねぇおっさーん!?」

 

「すーいすい、すいっとな」

 

「スイスよス・イ・ス! 本当に大丈夫なんでしょうねぇ!?」

 

「1つ問題が…」

 

「何よ?」

 

「燃料が…」

 

 老人がそう言うと、途端にプロペラの勢いが弱まり、機体が緩やかに落下していく。落下と上昇を繰り返す飛行機に振り回され、アクト団の3人組は恐怖と絶望のフライトを続ける羽目になってしまったのだった…。

 

 

一方 三畳市のリュウタ宅

 

 リュウタ達が掃除をしている間、ガブをはじめとするチビ恐竜達は居間に集められていた。彼らはテーブルの上に置かれたCDプレイヤーが気になっているのか、そこへ集まっている。

 ガブがテーブルに飛び乗ってCDプレイヤーによじ登ると、どこかでボタンを押したのかCDプレイヤーの電源が入り、音楽が再生され始める。それに驚き、ガブがテーブルから転げ落ちた。音楽に合わせて2匹は体を揺らし始める。ガブもすぐさま起き上がるとそこへ加わった。

 

『クゥ…コーン!クゥー!コーン!』

 

 ついには元々音楽が好きなパラパラが鳴き始めた。パラパラ本人は楽しそうだが、ガブとエースは喧しいパラパラを苛立たしげに睨む。

 

『ガァ…ガブッ!』

 

『キュオオッ!?』

 

 遂に我慢の限界に達したガブがパラパラの尻尾に噛みつく。

 パラパラのあげた悲鳴を聞きつけ、マルムが様子を見にやって来た。

 

「パラパラ! どうしたの!? …ってガブ! なんてことするの! 離しなさい!」

 

 マルムが慌ててガブを引き離すと、ガブは不満そうな声を上げた。エースはその隙にこっそり逃げ出そうとするものの、マルムに見つかってしまう。

 

「ホントにもう! 飼い主共々どうしようもないんだから! …こらっ、エースも!」

 

 マルムがエースの尻尾を掴んで持ち上げる。その様をパラパラは黙って見上げていた。

 

「せっかく片付けてるのに、これ以上散らかされたらたまったもんじゃないわ!

あなたたちもここで大人しくしてなさい!」

 

「はあーっ!」

 

 マルムがそう言いかけていた時、庭から威勢のいい掛け声が聞こえてきた。気になった彼女が外を見ると、そこでは古代博士が投げ縄の練習をしていた。よく見ると庭のあちこちに投げ縄が引っかかっていて、今しがた投げた縄は古代博士の後ろの木に引っかかっている。

 

「とりゃーっ! …うーむ、ダメか…もう少しなんだがなぁ…」

 

 ちなみに的は古代博士から少し前方に立てられている。いくら何でもノーコンが過ぎる惨状であった。

 

「いよしっ! 今度こそ! たぁーっ!」

 

再び掛け声と共に放たれた投げ縄は、窓を開けて様子を見ていたマルムにスッポリとかかってしまった。

 

「ひゃあっ!?」

 

「あっ…えっ? マルム! いやあ、すまんすまん…」

 

「博士、何をやってるんですか?」

 

「何って…投げ縄の特訓だよ。オーウェンさんが以前これでパラサウロロフスを保護したという話を聞いてね、これなら恐竜を傷つけずに捕獲できると気づいたんだ! どうだ! 名案だろう! ハッハッハ!」

 

 そう言って呑気に高笑いをする古代博士を見て苛立ちがピークに達したのか、マルムが女の子とは思えないような低い声を発した。

 

「…博士。ちょっと来てくれます…?」

 

「ハッハッハ…ん?」

 

 結局古代博士もマルムから小言を貰い、リュウタやレックス共々掃除をさせられることになってしまったのである。

 

「全くもう! おばさんが帰ってくるまでにきっちり綺麗にしてもらいますからね!」

 

「「「はーい…」」」

 

 しょげ切った3人の返事を聞いてから、マルムはパラパラへと目を向ける。パラパラはパラパラで、ガブとエースが好き勝手に歩かないように尻尾を踏んで抑えていた。

 

「ガブ達は大人しくしていること! いいわね!

アタシはキッチンを片付けてくるから、みんなもサボらずしっかりやるのよ!」

 

 そこまで言ったところでマルムは台所へと向かい、リュウタ達は大きくため息をついた。

 

「あーあ…マルムのやつ、母さんより怖いや…」

 

「いや。昔は母さんも結構怖いところもあったんだぞ?」

 

「そうなんですか?」

 

 いつも大らかさ過ぎてどこか抜けてるように感じてしまうリュウタの母にもそんな時期があったと知り、驚くレックスであった。

 

「だけどさぁ…女の子って何であんなに母親ぶるんだ?」

 

「さぁ…? ただ真似しているだけなんじゃないか?」

 

「いやいや、マルムだって今は子供だが、いつかは母親となるんだからな」

 

「あんなに気の強いやつ貰ってくれる奴なんているのかなぁ…」

 

「いいかリュウタ。母親は強くなければいけないんだ! 強くならなければ子供を守れない!

だからこそ、マルムもああまでの気の強さを備えているというわけなのだな」

 

 そう語りながら古代博士は然りげなくリュウタにホウキを持たせ、玄関へ向かおうとする。

 

「さぁて、父さんはそろそろ研究所に戻らなければ…」

 

「あっ! まさか父さん逃げるの!?」

 

 リュウタから咎められ、古代博士がギクリと肩を震わせてそちらを振り返る。

 

「に、逃げるとは人聞きが悪いな。

父さんは…その…大事な研究を進めなければならなくてだな…」

 

「そ、そうだよ! オレ達Dキッズにだってすぐ取り掛からないといけない大事な研究があるんだよ!

だよな! レックス!」

 

「え? あっうん! そうなんですよ!」

 

「ふむ、ならば…おいリュウタ、それにレックス。

少し耳を貸しなさい…」

 

 利害が一致した3者は、どのようにしてこの状況から逃げ出すかの相談を始めたのだった。

 

「キャウウウウッ!!!」

 

 その頃台所の掃除をしていたマルムだが、パラパラの悲鳴を聞いて急ぎリビングへと駆けつける。そこには、信じがたい光景が広がっていた。

 なんとパラパラが、リビングテーブルの足に繋がれていたのである。更に掃除を任せていたはずのリュウタ達3人や、大人しくさせていたガブとエースの姿はどこにもない…。

 慌てて辺りを見渡すと、そのリビングテーブルに置き手紙があるのを発見した。

 

「『大事な研究があるので掃除は後で』…って、もう! 本っ当にどうしようもないんだから!」

 

 掃除を放棄して逃げ出した上にパラパラにまでこんな仕打ちをした3人に、マルムは怒り心頭だった。

 そんな時、チャイムが鳴った。マルムがモニターを確認しに行くと、そこにはオウガが立っていた。腕にはアメジストを抱え、肩掛けバッグからはレクシィが顔を覗かせている。

 すぐさま彼女は玄関に向かい、オウガを迎え入れた。

 

「やあリュウタ。この前言ってた恐竜博のチケット、父さんが貰ってきたみたいだから渡しに来たんだけど…

あれ? マルムもいるのか。それなら渡しに行く手間が省けたよ…」

 

「オウガ! リュウタ達見てない!?」

 

 すごい剣幕のマルムにオウガは一瞬たじろぐも、特に誤魔化す理由もないので素直に答えた。

 

「いや、少なくとも俺がここに来るまで一度も見てないけど…」

 

「ということは…あっちね!

オウガ!一緒にリュウタ達を連れ戻すのに協力してもらうわよ!」

 

「え、えぇ…まあいいけどさ…」

 

 

その頃 スイスのアルプス山脈

 

 先程現れたマイアサウラは、ちょうどいい広さの草地を見つけ、そこで横になっていた。その上、いつの間にやら卵を抱えている。どうやら彼女が産んだもののようだ。その卵を愛おしげに見つめるマイアサウラを、周囲のヤギ達も不思議そうに見つめていた。

 そんな時、聞き慣れない音を聞きつけたマイアサウラが空を仰ぎ見ると、フラフラと上空を飛ぶ小型飛行機を見つけた。

 どうやら老人とアクト団の3人組が乗った飛行機は何とかアルプスまで到着できたようだ。しかしみるみる高度が下がっており、このままではいつ墜落するかも分からない。

 上空では怯えるアクト団の3人に、老人がパラシュートを1つ投げ渡していた。

 

「「「えっ?」」」

 

「それじゃあ、お先に」

 

「えっ!? ちょっと!」

 

 一言言い残すと、老人は1人パラシュートを広げて降下していった。当然残されたアクト団の3人は恐怖に青褪める。

 

「何てことしてくれるのよあのジジイ!

なーにが「悔いはない」よ! 1人だけ脱出するなんて悔いありまくりじゃないの!

…って、それよりどうするのよ! パラシュート1個しかないじゃない!」

 

「どうするって…そんなの飛び降りるしかないザンスよ! ここまで来られたのが奇跡ザンス!」

 

「…じゃ、お先に失礼するッス」

 

 ウサラパとノラッティ〜が泣き喚いている隙に、エドがこっそりパラシュートを着込んで降下しようとする…が、すぐさま2人は必死で引き止めた。

 

「エド! 何やってるザンス! それはミーのものザンスよ!」

 

「黙ってなさい! こーいう時はレディーが先よ!」

 

 1個のパラシュートを巡って醜い争いを繰り広げる3人組。その間に飛行機の状態は更に悪化し、ついにエンジンから出火し始めていた。

 やがてその中でウサラパが素早くパラシュートを掴み取って装着し、飛び降りた。しかもいつの間にやらドレスを脱ぎ捨て、いつもの服装に戻っている。

 

「さよならオホホホホー!」

 

 見事ウサラパが出し抜いた…と思われたが、後を追って飛び降りた2人は彼女の両足に縋り付く。

 

「置いてかないでほしいッスー!」

 

「見捨てるなんてひどいザンスーッ!」

 

「えーいやめんか! このままだとアタシも助からなくなっちゃうじゃないの! 離せーっ!」

 

「嫌ザンス! 死んでも離さないザンスーッ!」

 

 空中で揉み合っているうちにパラシュートが開いたものの、3人分の負荷がかかっているせいで落下速度は殆ど和らがない。

 

「エド! 重量オーバーザンス!」

 

「1人用を3人で使ってるんだから当たり前ッスよぉ!

何で俺に言うザンスか!?」

 

「ザンスはミーの専売特許ザンスぅぅ!」

 

「もーっ! どっちでもいいーっ!」

 

 そのまま3人を吊り下げたパラシュートは、アルプスの山々へ落ちていったのであった…。

 

 

その頃 三畳市

 

 マルムとパラパラを出し抜いてリュウタ宅を脱出したリュウタ達3人は、取り敢えずの避難所としてDラボを選んだようだった。

 途中オウガとすれ違ったが、何とか色々なやり方で隠れてやり過ごしたため、見つからずに済んでいた。

 

「いやぁ、深く考えずに出てきちゃったが…マルムに悪かったかな…?」

 

「いいっていいって! 今日会わなければあいつも諦めて帰ってくれるよ!」

 

 すると、リュウタとレックスのディノホルダーが甲高い通知音を響かせ始める。恐竜が出現したのだ。

 

「急ごう!」

 

 それを見たリュウタとレックス、そして古代博士は互いに頷き合い、急ぎDラボへと向かったのであった。

 

 

Dラボ

 

「リアスくん! 恐竜が出たそうなんだが、確認できたかね!?」

 

「はい、博士。今回はアルプス山麓のようですね」

 

「よし! じゃあ早速行こうぜ!レックス!」

 

 早速出発しようとするリュウタを、レックスが引き止める。

 

「待てよリュウタ! オウガとマルムはどうするんだよ?」

 

「一刻も早く行かなきゃ! 待ってらんないよ!

父さん! 後で2人が来たら、先に行ったって言っといて!」

 

「あ、あぁ、分かった…。そうだ!2人とも! 投げ縄は使うか!?」

 

「うーん…いらないや! それじゃ!」

 

 そう言ってリュウタとレックスはさっさとテレポート台に向かうと、そのままテレポートしていったのであった。

 

 それから間もなく、マルムとオウガもテレポートルームへ駆け込んでくる。かなり急いで来たようで、オウガはすっかり息が上がっていた。

 

「えーっ! もう行っちゃったのー!?」

 

「あぁ、ついさっきな。ところで、2人とも…」

 

 もう一度古代博士が投げ縄を勧めようとしようとしたが、マルムは怒り心頭で言葉が入ってこないようだ。

 

「信じられない! Dキッズの仲間を置いていくなんて!

さっさと行きましょ!パラパラ!オウガ!」

 

 そう言ってマルムは足音荒くテレポート台に向かっていった。

 残ったオウガにも、古代博士が投げ縄を勧める。

 

「オウガ君。君は投げ縄、使う?」

 

「ハァ…ハァ…すみません、博士…。俺、投げ縄の心得がないので…多分持っていっても使えないかと…」

 

「オウガー! 早く行くわよーっ!」

 

「すみません博士。俺、もう行きます…」

 

 そう言い、オウガもテレポート台へ向かうのを見送る古代博士。

 2人がテレポートしていった後、彼は寂しそうに呟いていた。

 

「みんな…投げ縄嫌いなのかなぁ…」

 

 そんな古代博士を尻目に、リアスは軽く咳払いをしてその場を後にするのだった。

 

 




今回はここまでです。
今回もご愛読いただきありがとうございました。
Dキッズはマイアサウラを保護することができるのか。
また、リュウタ達はマルムと掃除から逃げ切ることができるのか…。
後編をご期待下さい。
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