古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
これは、オウガとレクシィが出会う少し前のお話…。
異次元との交差
「君がここへ帰ってくるだなんて久々じゃないか、クレア」
「ようやくバイオシン・サンクチュアリの管理が一段落ついたから帰ってこれたのよ。
これでも早く終わらせてきた方なのよ?オーウェン」
ここは、シエラネバダにあるオーウェンの牧場…その一角にあるオーウェンのマイハウスである。
そこでオーウェンは、事実婚状態のクレア・ディアリングと、養娘のメイジーと3人で暮らしていた。
だがそんな生活も、先日の「古代イナゴ事件」及び「メイジー・ベータ誘拐事件」に巻き込まれ、バイオシン社がイタリアの山中に設けた恐竜保護区「バイオシンサンクチュアリ」で一悶着起こしてきたせいで大いに乱されてしまった。
結局バイオシン社が行おうとしていた悪事は世間に露見することとなり、多額の賠償金と規模の縮小を迫られたバイオシン社は、驚くほどあっさりとバイオシンサンクチュアリの管理権を手放した。
その後その管理権をクレアの所属する恐竜保護組織DPGが取得し、現在に至るというわけである。
「恐竜たちの中には火傷や一酸化炭素中毒になっていた子たちもいたからその治療を行なって、それから体内に埋め込まれた管理用チップを取り外す手術も終わって、あとは新設した囲いに戻して…」
「オーケー、オーケー。
つまり相当大変だったってことなんだな?よくわかったよ」
「もう、本当に分かってるのかしら…。
とにかく、今現場はラムジーさんに任せて私は戻ってきたの。これからはまた忙しくなるだろうから、今は小休止といったところね」
「なるほど、そういうわけか」
「ところで、メイジーはどうしたの?」
「あぁ、ブルーとベータの様子を見に行くと言って外へ行ったところだよ」
「ブルーならもしものことはないと思うけど…大丈夫かしら?」
「大丈夫さ。何せあの子のことだし…」
その時、クレアのスマホが着信を知らせた。
「ラムジーさんが…?どうしたのかしら」
「密猟者が侵入したのかもしれない。早く電話を取った方がいいぞ」
「そうね。…クレアよ、どうしたの?ラムジーさん」
『クレア!一大事だ…とは言っても、真実を伝えたところで信じてくれるかどうか…』
「何があったの?教えてちょうだい」
『そ、それが…朝から職員たちに恐竜たちの様子をモーションセンサーで確認してもらっていたんだが、数が合わなかったんだ。
それで現地まで赴いて目視で確認してきてもらったところ…10数種各1体ずつ、恐竜たちがカードになってしまっていたというんだ』
「…ちょっと待って。ラムジー、あなた私をからかっているの?」
『そんなことのためにわざわざ電話なんかかけるものか。どうすれば戻るのかも分からないし、このカードもどう扱ったものか…。
ん?ちょっと待ってくれ。なんか空中に妙なものが浮かんでいるような…うわぁっ!?
な、なんだこれは!?すごい勢いで周りのものをどんどん吸い込んでいく…あっ!恐竜たちのカードが!』
「ラムジー?ラムジーどうしたの!返事をして!」
『クレア…すま…い…カー…が……部吸い…ま……くなって…』
「ラムジー!ラムジー!…切れちゃったわ…」
「事情はよく分からないが…どうやらまたしてものっぴきならないことが起こってるみたいだな」
「まだ頭が混乱していて何とも言えないけれど…どうやらそうみたいね…。
でも…恐竜がカードになるなんて話、聞いたことがないわ…」
「オレだってそうさ。まずは状況を把握しに行こう。
取り敢えず今からイタリアに飛んで…」
オーウェンがそう言いかけたところで玄関の扉が勢いよく開き、少女が飛び込んできた。メイジーだ。
「オーウェン!オーウェン大変よ!」
「メイジー!そんなに息を切らしてどうしたんだ?」
「ブルーとベータを見つけて眺めていたんだけど…私の眼の前でブルーが眩しい光に包まれたと思ったら…カードになっちゃったの!」
そう言い、メイジーが差し出したカードには確かにブルーの1枚絵と、「ヴェロキラプトル・スピルバーグ」という文字が刻印されていた。
震える手でオーウェンはそのカードを受け取ると、不思議とブルーの肌や質感、そして心臓の鼓動まで聞こえるような気がした…。
プロローグはここまでです。
ここから本格的に物語が始まっていきます。