古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
Dキッズとオーウェンは彼の運命を変えることができるのか…。
是非最後までご覧ください。
少し離れた砂浜
ここに来て、ようやくオウガはレクシィに追いついた。しかし、スピノの姿はどこにもない上、何故かレクシィは波打ち際でじっと佇んでいた。
「ハァ…ハァ…やっと追いついた…。
レクシィ、ここで何をしてるんだ?スピノは、どこに…」
そう言いかけた時だった。
遥か先の水面が揺れたかと思うと、スピノが口先を水上に突き出し…また水中へ消えたのだ。
どうやらスピノはフィジカルでは敵わないレクシィから逃げ切るため、自分が圧倒的に有利な水中に籠城することに決めたようだった。水中なら自分の方が息は長く続く上、陸上のレクシィ側から手出しはできない。もし不用意にレクシィが水中へ踏み込めば自身の独壇場で嬲り殺しにできる。
極めて合理的な作戦だった。
…超技カードの存在を除けば、の話だが。
「レクシィ。『
オウガがそう囁くと、レクシィは不機嫌そうに鼻を鳴らした。オウガの助力がないとスピノに手出しできない状況が不愉快らしい。だが、案には乗ってくれるようだった。
後はじっと、その時を待つ。眼前の海に全神経を集中させ、見張り続けた。どれほどの時間が経過したのかは分からないが、ふいに目の前の水面が揺れた。スピノが水面へ上がってこようとしているのだ。
「『
オウガがそっと技カードをディノラウザーに通すと、レクシィの体が赤い光と炎で包まれる。それからレクシィは口の中に炎を溜め始め…スピノの口先が見えた瞬間にその火球を吐き出した。
ドオォォン!!!
水面に火球が着弾して爆発し、巨大な水柱が上がる。そして水中から叩き出されたスピノが手足をばたつかせながらこちらへ落下してきていた。
ここまで来ればあとはレクシィの独壇場だ。
レクシィはスピノを鋭い視線で睨むと、大きく尻尾を振りかぶり、落下してきたスピノの首筋を全力で打ち据えた。スピノはまた海の方へ大きく跳ね飛ばされ…カードになりながら海の彼方へ消えていった。
「やったぞ! レクシィ!」
オウガがそう言ってレクシィにサムズアップをしたところ、何故かレクシィがひとりでにカードに戻っていった。それを見たオウガが首を傾げていると、巻き上げられた海水が雨のように降り掛かってくる。
当然ながらオウガだけがびしょ濡れになってしまった。
それを確認したところで、レクシィがひとりでにチビ恐竜の姿で出てくる。どうやらこうなることが分かっていたらしい。
「あーあ、せっかく着替えたのに…。まあ、無事勝てたからいいか。
それより早くみんなのところへ戻らないと…」
その時、上から1枚のカードがひらひらと舞い降りてきた。そのカードを拾い上げたオウガが、ハッとしたような顔をする。
「このカード、もしかして…」
一方 スティラコサウルス防衛戦側は…
「キーッ! こっちは2体しかいないのに向こうはスティラコも含めて4体なんてズルいじゃない!
エド! ノラッティ〜! 何とかおし!」
「そ、そんなこと言われても困るッスよ…。
スピノはあの凶暴なティラノに追いかけられてどこかに行っちゃったし…」
「こうなったらティラノとサイカにスティラコを集中攻撃させるザンス! カードにしてミー達が先に奪っちまえばこっちのもんザンスよ!」
ということでスティラコサウルスに集中攻撃させることにしたアクト団だった。しかしガブやアメジストのガードが硬く、2体がかりでもなかなか突破できない。特にガブの覇気は並大抵のものではなかった。
そうこうしているうちに…。
「パラパラ! 『
スティラコサウルスを元気にしてあげて!」
マルムがパラパラに回復技を使わせようとしていた。これにはアクト団達も大慌てである。
「まずいザンス! ここで回復されたらもう倒せなくなっちゃうザンス!」
「何とか妨害させるッス!」
「それならティラノちゃんに何とかさせるしかないね…。行きなティラノちゃん! 『
ウサラパがアクトホルダーに技カードを通す。するとティラノの体が赤い光と炎に包まれ、口に炎を蓄え出した。
その炎を前に身構えるガブとアメジストだが…ティラノはふっと向きを変えると、無防備なパラパラに向けてその炎を吐き出した。
「パラパラ! 危ない! 避けて!」
マルムがそう叫ぶも、パラパラは既に『
このままではスティラコサウルスを回復させるより先にパラパラが倒されてしまう!
「行けっ! ブルーッ!」
そこで助け舟が入った。オーウェンのブルーが猛スピードで走り寄ると高く跳躍し、ティラノの顔面に強烈な蹴りを入れたのである。ティラノが仰向けに水の中へ倒れ、『
「オーウェンさん!」
「君達すまない! 遅くなった!」
レンタル品を返し、ようやく戻ってきたオーウェンとブルーが加勢したのだ。
最初は突然現れた新手に苛立たしげな視線を向けたウサラパだが、オーウェンの姿を見た瞬間目をハートにして歓喜した。
「あら~! あの男すごいイケメンじゃな〜い!
ね〜え〜そこのアナタ〜! もしアタシの彼氏になってくれるなら見逃してあげるし、アクト団に入れてもらえるよう掛け合ってあげてもいいわよ〜ん!」
それを聞いたオーウェンは鼻で笑い、こう返す。
「あいにくオレには…もう彼女も娘もいるんでな!
何より、お前達のように恐竜を物のように思っている連中の仲間になるなんてまっぴらごめんだね!」
真正面から断りの言葉を叩きつけられたウサラパはショックのあまり、目が点になって黙りこくってしまう。その傍ではノラッティ〜とエドが笑いを堪えるのに必死になっていた。
「ブッ…プププ…あんなアピールして呼びかけたのに…断られてるザンス…!」
「それに…プクススッ…相手がコブ付きなことにも気づいてなかったッス…!」
しばらくフリーズしていたウサラパだが、正気に戻ると同時に2人にげんこつを食らわせ、烈火のごとく怒った。
「キーーーーッ! ガキンチョだけじゃなくあのイケメンまでアタシ達をバカにしてくれちゃってぇ!
こうなったら、スティラコサウルスもあのイケメンもまとめてアタシ達が奪ってやるわ!
行きなさい! ティラノちゃん! サイカちゃん!」
ウサラパは怒りのままにティラノとサイカに突撃させた。しかしスティラコサウルスは『
ほぼ勝ち目のない戦いを、怒りの赴くままに押し通そうとしていたのだ。
「このまま行くわよパラパラ!『
だがDキッズ側の勢いは止まらない。
続けてマルムがディノホルダーに技カードをスキャンしたのだ。パラパラが高く嘶きを上げると、どこからともなくオヴィラプトル達が現れた。しかし以前パラサウロロフス・ワルケリが呼び出したものと比べると、色がカラフルなように見える。
続けてパラパラが号令を出すと、オヴィラプトル達は一斉に口から卵を吐き出し始めた。無数の卵の弾丸が、サイカへ向かって飛んでいく!
「サイカ! 逆立ちッス! 逆立ちして背中で受け止めるッスよ!」
咄嗟のエドのアドバイスが功を奏し、サイカは背中で卵の弾丸を何とか受け切った。とは言え弱点属性の攻撃なので、ダメージを受けなかったわけではないようだ。
「そんな!」
「大丈夫だマルム君! 後はオレがやる!
その体勢ならこれが効くぞ! 『
すかさずオーウェンが技カードをジュラシック・アンバーに押し当てると、ブルーの体が灰色の光と風に包まれる。するとブルーは小さな竜巻を巻き起こし…それを逆立ちのサイカの両前足にぶつけた。
「鎧竜の弱点は腹だ! 竜巻でひっくり返してやれ!」
竜巻に足を取られたサイカが前へと倒されてしまう。それをすかさず竜巻で捉え、サイカを腹を上にして浮かせることに成功した。
必死に足をバタつかせるサイカだが、もう逃れることはできない。
ブルーはすぐさま跳躍すると、サイカの腹へ怒涛の連続蹴りを入れ始めた。
そしてトドメにサマーソルトキックを放ってサイカを水面に叩き落とすと、サイカはぐったりと脱力し、そのままカードへ戻ってしまった。
「あぁっ! サイカもやられちゃったッス!」
「こうなったら何が何でもティラノに頑張ってもらうしかないザンスよ! ウサラパ様!」
「そんなのアタシが1番分かってるよ!
今回も恐竜を回収できなきゃどんな罰を食らうか分かったもんじゃない…。
だから絶対にこのスティラコは回収させてもらうよ! 『ネッククラッシャー』!」
ティラノの体に再び赤い光が巻き起こったかと思うと、素早くガブとアメジストの間をすり抜け、スティラコサウルスを掬い投げた。さらにその場で回転を始め、落下してくるスティラコサウルスの首を打ち据えようとしている。
「まずい! スティラコサウルスが…」
が、そこへ横槍を入れたのがアメジストだった。ティラノに体当たりをし、ティラノの体勢を崩したのだ。さらにガブが落ちてきたスティラコサウルスをしっかりと受け止め、ダメージを最小限に抑える。
しかしアメジストはその尻尾に吹き飛ばされ、ビーチの方へかっ飛んでいく。
「エース! アメジストを助けるんだ!」
ここでエースが飛んできたアメジストを受け止め、こちらでもダメージをある程度抑えることに成功した。
しかし、アメジストは立ち上がれなかった。先程までの競り合いを含めて体力が大きく削られてしまったようで、これ以上前線で戦うことはできなさそうだ。
「大丈夫か!? アメジスト!」
と、そこへオウガが帰ってきた。後ろにはチビ恐竜形態のレクシィも付いてきている。
「俺なしでここまでよく頑張ってくれたな…。ありがとう、アメジスト…」
オウガがそう言ってアメジストの頭を抱き締めると、アメジストも弱々しい声を返し、安心したのかカードへと戻っていった。
そこへリュウタが駆け寄ってくる。
「オウガ! スピノは?」
「心配いらない。レクシィが倒してくれたよ!それより、これを見てくれ」
そう言ってオウガがリュウタへ差し出したのは、超技『
「これは…?」
「海の中から出てきたのを拾ったんだ。
多分これがスティラコサウルスの技カードなんじゃないかと思う。
リュウタ。これを使ってあのティラノに一矢報いてやるんだ!」
オウガの言葉に、リュウタは大きく頷き、そして…。
「スティラコサウルスー! お前の技カードだぜーっ!
受け取ってくれー!」
『
途端にスティラコサウルスの体を黄色の光と電撃が包み込み、鼻先の1本角に巨大な雷槍が出来上がっていくではないか。
「エネルギーチャージ完了、ってところだね」
「よっしゃあガブ! お前も行くぞ! 『
今度はディノホルダーにガブの技カードを通す。するとガブの体も同じように黄色の光と電撃が渦巻き、長い2本の角が雷槍へと変わっていく。ガブはその角を高く掲げると、ティラノに向けて突進していった。そして雷槍でティラノを突き刺してもその勢いは止まらず、更には高く跳躍した。着地点では、既にスティラコサウルスが雷槍を構えて待機している。
そのままガブとスティラコサウルスで挟み込むようにして、合計3本の雷槍をティラノの体に深々と突き刺した。体を流れる凄まじい電撃にティラノが苦しみ悶えながら、遂にカードへと戻っていく。
最後の1体であるティラノがダウンしたことで、アクト恐竜は全滅したのだった。
「さ…最後の要のティラノがやられちゃったッス…」
「もうダメザンス…おしまいザンス…。行くも地獄、帰るも地獄ザンスよぉ…」
「あ…アタシ達のアクト恐竜達が…ぜ……ぜん…め…めつめつめつ…!?」
戦える恐竜を全て失い、絶望するアクト団の3人の前に、ガブとスティラコサウルス、そしてブルーの3体が立ちはだかる。
まるで、「早くここから去れ」と言っているようだった。
「ウサラパ様…」
「悔しいのは分かるザンスが…ここまでザンス…」
そう言葉をかけられたウサラパは、悔しさのあまり歯ぎしりをしながらも転覆したヨットを元に戻し始めた。そこへティラノ達のカードを回収したエドとノラッティ〜も合流する。
ヨットを元に戻せたところで、ウサラパはDキッズ達の方を振り返って大声を張り上げた。
「覚えてなさい! ガキンチョ共とそこのイケメン!
この屈辱は絶対に忘れないわ! 必ず100倍…いや6600万倍にして返してあげるんだから覚悟してなさい!」
「覚悟しておけッス〜!」
「せいぜい首を洗って待ってろザンスよ〜!」
そう言い捨てると、アクト団の3人はバタ足でヨットを押しながら帰っていった。そんな彼らを見送りながら、マルムが大声で叫ぶ。
「オバさーん! そんな年増の顔に涙浮かべてもシワが目立つだけだからやめた方がいいわよー!」
「誰がオバさんよ! 誰が年増でシワだらけなのよ!
ガキンチョーっ!」
もう大分沖合までヨットを押していたはずなのに、何故かウサラパにはマルムの罵倒が聞こえていた。一体どんな耳をしているのだろうか。
そうしているうちにどんどんアクト団の背中は遠ざかり、ハワイの夕日の中へと消えていったのであった。
その後、Dキッズは各々のパートナー恐竜達をチビ恐竜に戻し、スティラコサウルスとの最後の交流を楽しんでいた。
「それにしても、あいつらにスティラコサウルスが連れて行かれなくて本当に良かったね。
レクシィは勿論だけど、アメジストもエースのお陰でノックアウトは免れたみたいだし…」
「そうね。アタシもオーウェンさんには2回も手助けしてもらっちゃったわ」
「今回の勝利は、誰かのお陰じゃない。オレと君達全員の協力がなければ勝ち取れなかったものだな。
手助けするつもりで付いてきたのにバカンスになってしまって少し申し訳なかったんだが、最終的には君達の力になれて何よりだよ」
「よーしっ! もう夕暮れだし、オレ達も帰ろうぜ!
それじゃあスティラコサウルス! カードに戻ってくれるか?」
そう言ってリュウタが手を差し出すと、何故かスティラコサウルスは首を横に振った。
「え? 何でだよ?…ってあれ? ディノホルダーが…」
その時、リュウタのディノホルダーが輝き出したのだ。石版の声やマイアサウラの時と同じように、スティラコサウルスが何かを伝えようとしている証だった。
そして、ディノホルダーからスティラコサウルスの声が響いてくる…。
『私は…リュウタやガブの力になりたい…。
守られるだけではなく…これからも君達と一緒に戦いたい…!』
「スティラコサウルス…」
『ガァブ…』
ディノホルダーの光が収まったところで、オウガはリュウタにどんな声を聞いたのか尋ねた。
「…なぁリュウタ。スティラコサウルスは何て言ってるんだ?」
「守られてるだけは嫌だ、オレ達と一緒に戦いたい…そう言ってたんだ」
「そうだったのね…。スティラコサウルスがこれからも一緒にいてくれればガブも寂しくないでしょうけど…」
「オウガのジュラシック・アンバーとは違って僕達のは石版だからな…。複数体の恐竜をチビ形態で出しておくことができるんだろうか…」
Dキッズが4人でどうするべきかを考えていた…その時だった。
突然オウガのディノラウザー…その内部にあるジュラシック・アンバーが激しく点滅し始めたのだ。すぐ横では、オーウェンがロケットに入れているアンバーも点滅を始めている。最初はバラバラだった2つの光の点滅は段々と波長をあわせ始め、やがてその点滅が完全に一致した時…。
彼ら5人を凄まじい光が包みこんだ!
「うわぁっ! な、何だ!?」
「きゃああっ!」
「こ、これは…!?」
その後 アジ島
何とかアジ島まで帰り着いたアクト団工作員の3人だが、基地の中に入らずにウロウロしていた。彼らの表情はどれも沈んでいる。
当然である。Dキッズとオーウェンの恐竜に叩きのめされた挙げ句スティラコサウルスのカードも持ち帰ることができなかったため、約束通りのとてつもないお仕置きが待ち受けていることを分かっていたのである。
「「「はぁ…」」」
「どうするザンスか…」
「どうするったって…どうしようもないッスよ…」
「諦めてお仕置きを受けるしかないのかねえ…」
このように落ち込んでいる3人のもとに、何者かが歩み寄ってきた。
「ようテメェら!随分シケたツラしてんなぁ…」
『Sin-D』の一員、ジェイソン・ホスキンスだった。
「あ、アンタ! 何でここにいんのよ!」
「何でだとぉ? おれ達のボスがあんたらのボスとの商談をするってんで護衛に付いてきただけよ。
そんなことより…」
ジェイソンはそこで3人の姿をまじまじと見てから、低く笑った。
「その様子じゃあ、また任務に失敗したみてぇだな?
まったく情けない連中だぜ」
その言葉を聞き、3人は怒り出した。
「情けないって何よぉ! アタシ達だって頑張ったのよぉ!?」
「そうザンス! ミー達は間違いなくベストは尽くしたザンス!」
「何も知らない部外者のクセに、あれこれ外から言わないでほしいッスね!」
Dキッズに負けた苛立ちもあってか、ほぼ八つ当たりに近い状態で言い返すウサラパ達3人。しかし、当のジェイソンはその不敵な笑みを止めることはなかった。
「おいおい、おれにそんなことを言っていいのか?
テメェらの態度次第では助けてやらんこともないんだぞ…?」
「どういう意味よ…って! それは!」
ウサラパ達の視線が、今しがたジェイソンが懐から取り出したものに釘付けになる。
それは、1枚の恐竜カードだった。
「この『カスモサウルス』とかいう恐竜、ちょうどここに来る道中で倒してカードにしたのさ。
おれは使わないしDr.ソーノイダへの手土産に持っていってやろうとしてたんだが…」
それを聞くが早いか、ウサラパ達3人は土下座してまでジェイソンに縋り付いた。もうここしかチャンスがないので当然とも言える。
「おっ、お願い! それアタシ達にちょうだい!」
「雷属性で角竜のカスモサウルスなら、ソーノイダ様にも誤魔化しが効くザンスー! お願いザンスー!」
「それがないとおれ達3人ソーノイダ様にとてつもないお仕置きされちゃうんス! 譲ってほしいッスよー!」
それを見たジェイソンは少し驚いた様子を見せたが、すぐにまたあの不敵な笑みをたたえた顔に戻った。
「ククク…。『欲しけりゃ誠意を見せろ』と言うつもりだったんだが、まさか言葉より先に行動で示してくるとは思いもしなかったぜ。
…いいだろう。ほら、やるよ」
そう言ってジェイソンが投げ渡した恐竜カードを、3人は餌に群がる鯉のように追いかけ、そしてその手に掴んだ。
「やった…やったわ! これでお仕置きはなしよぉ!」
「良かったッス! 今日は安心して飯が食えるッス!」
「助かったザンス! ありがとうザンス!」
「ただし!」
ジェイソンの言葉に、3人はビシッと姿勢を正す。
「これでテメェらはおれに貸しを1つ作った訳だ。
そのことは忘れるなよ。いずれおれがテメェらに何か命令を下す時は素直に従ってもらうぜ」
「はっ、はいぃ! そうさせて頂きます!」
「覚えておくザンス!」
「肝に命じるッス!」
「ククク…それでいい。
…おれはここでもう少し風に当たっておく。その間にあんたらのボス…Dr.ソーノイダに帰還のあいさつでもしてくるんだな」
「「「はっ、はい! ありがとうございました(ッス)(ザンス)!」」」
口々にウサラパ達3人はジェイソンに感謝の言葉を伝え、基地の中へいそいそと入っていった。彼らの姿が消えたところで、物陰に隠れていたイシドーラがジェイソンに話しかける。
「良かったのか? あのカードがあればDr.ソーノイダからの覚えがよくなったかもしれんのに」
「ククク…。あんなジジイから覚えが良くなったっておれには何のプラスにもならねぇさ。
でも、これでおれは恐竜カード1枚をコストに、いつでも言うことを聞く兵隊を3人も確保したってわけだ。
それもうちの所属じゃねえ、アクト団の内部にだ。これが何を意味するのか、分からねぇお前じゃねぇだろ?」
そう言って低く笑い続けるジェイソンに、イシドーラは肩をすくめて言葉を返した。
「やれやれ…本当に、お前は大した奴だよ…」
場所と時間は戻り、ハワイの砂浜
眩い光が止んで、Dキッズ達とオーウェンは互いの顔を確認したが、特に変わった所はなかった。
「何だったんだ? 今の光…」
「分からない…って、リュウタ! お前のディノホルダーがまた光ってるぞ!」
「えっ…ホントだ! でも、何も声は聞こえてこないぞ…? それに光もちょっと弱いし…」
それを見たオウガは、直感的に思いつき、口に出した。
「リュウタ! スティラコサウルスをカードに戻して、いつもガブをチビ恐竜で出す時みたいにスキャンしてみてくれ!
もしかしたら…もしかするかもしれないぞ!」
「わ、分かった! スティラコサウルス! 大丈夫か?」
リュウタからの問いかけにスティラコサウルスは頷き、カードへと戻っていった。そしてそのカードを、チビ恐竜召喚の時と同じ方向でスキャンすると…。
ガブのすぐ隣に同じくらいの大きさの黄色い光が現れたではないか。そしてその光は徐々に形を変え…。
『…ゴロ?』
スティラコサウルスがガブと同じようなチビ恐竜へと変化したのだ。鼻先の角やフリルのホーンレットは小さくなっていて、瞳も同じようにつぶらになっている。そして、その体には稲妻を模したような模様が入っていた。
「すごい…! スティラコサウルスが…」
「ちっちゃくなっちゃったわ!」
スティラコサウルスが自分の姿を確認し、小さくなったことを認識すると、ガブと一緒に飛んだり跳ねたりして喜び合っていた。
それを見たリュウタも、目を潤ませてスティラコサウルスに話しかける。
「すっげぇ…スティラコサウルスも小さくなれちゃった…。
よし! これでお前も晴れてオレ達の新しい仲間だ!
とは言ってもいつもスティラコサウルスだと呼びづらいよな…よし! 名前も付けよう! そうだな~…」
リュウタがあれでもないこれでもないと考えているのを、ガブとスティラコサウルスは並び立って見つめていた。
やがて、リュウタが手を打って立ち上がる。
「よし、決めた! お前の名前はイナズマだ!」
「イナズマって…これまた随分と安直じゃないか?」
「そうかぁ、レックス? だってこいつの鳴き声『ゴロゴロ』って雷みたいだし、体には稲妻みたいな模様が入ってるじゃん!
だからイナズマにしたんだ!…どうかな?」
そう言ってリュウタがスティラコサウルス…改めイナズマを見つめると…。
『ゴロッ!ゴロゴーロ!』
ピョンピョンとその場で跳ねて喜んでいる。どうやら気に入って入れたようだ。
「よし!じゃあこれからオレ達と一緒に戦おうぜ! イナズマ! ガブも勿論だけど、仲良くしてくれよな?」
『ガブ! ガァブッ!』
リュウタからの言葉に、ガブは勿論だというかのように答えた。
「あはは、これなら仲良くやっていけそうだね。
エース。お前もイナズマと仲良くやるんだぞ」
『ギャウ!』
「さーてと! これでイナズマも仲間になってくれたことだし、やることは全部終わったな! 遅くなる前にみんなで帰ろうぜ!」
喜び合うリュウタとガブ、イナズマを眺め、微笑みを浮かべていたオウガだったが、やはり気になるのか手元のディノラウザーに視線を落とした。
(さっき、俺のジュラシック・アンバーが、オーウェンさんのアンバーと共鳴して光を放ったように見えたけど…あれは何だったんだろう。
アンバー同士が近くにあると、何か特別なことが起こるんだろうか…? いやでもジェイソンやイシドーラが襲ってきた時は何もなかったしな…)
そう思っていると、ディノラウザーから声が響いてくる。
『ホッホッホ…どうやら驚いているようじゃな』
「【
『どういうことも何も、見ての通りじゃよ。
今の光で、リュウタ君達石版の保持者も、君と同じように2匹までパートナー恐竜を召喚できるようになったのじゃよ』
「いや、それは見たら分かりますよ…。
俺が聞きたいのは、今アンバーから放たれた光についてです。なんかオーウェンさんのアンバーと共鳴していたように見えたんですが…」
『ん?…おおそうじゃった! 伝えるのを忘れておったわい。実はわしらジュラシック・アンバーには君達が思っている以上にとても大きな力が秘められておるのじゃよ』
「大きな…力?」
『そうじゃ。このように複数個アンバーが揃うと、それぞれに少しずつ輝きが戻っていく。
そのたびに周囲に様々な奇跡がもたらされるのじゃ。
今回の場合は、アンバーがスティラコサウルスの「共に戦いたい」という願いを拾ったということじゃな』
「なるほど…。よくは分かりませんがそれで納得することにします。でも、アンバーって確かこの2つだけじゃないですよね?」
『その通りじゃ。ジェイソン・ホスキンスやイシドーラ・ミルズが持っていたもの、そして未だ行方のしれないものも合わせて、アンバーは全部で6つある。
さらにアンバーはただ集めるだけではいかん。その保持者同士が、強い信頼関係で結ばれていないといけないのじゃ。
そしてそれらアンバーが全て集まり、真の輝きを取り戻した時…!』
「取り戻した時…どうなるんです?」
しばらくの沈黙の後、『伝説』はゆっくりと言葉を続けた。
「…すまん。そこから先はわしも分からんのだ」
思わずオウガはずっこけた。
「あれ? オウガどうしたんだ? 突然躓くなんてお前らしくないじゃん」
「ご、ごめん…。ちょっと足元をよく見てなかったのかも…。
ちょっと【伝説】さん!肝心のところが分からないんですか!」
『すまんのう…。しかしこれだけは言える。
2つだけでもこれほどの影響を与えられるのじゃ。全て集まった時に発揮される力は相当なものじゃろうな。
それこそ…』
その後に続いた言葉に、思わずオウガは絶句した。
『保持者の願いを何でも叶えてくれる、なんてこともあるかもしれんのう…』
今回の恐竜解説!
「今回の担当は俺、覇轟オウガだよ。
今回解説するのは、スパイクモンスター『スティラコサウルス』!今回俺達の新しい仲間になってくれた、イナズマの種族だね。
名前の意味は、『トゲのあるトカゲ』。スピノサウルスと似た名前だね。
この恐竜を象徴する最大の特徴は、フリルから伸びている3対のトゲ、通称ホーンレットだね。これが何の役に立っていたのかはよく分かっていないけど、フリルの防御手段や敵もしくは同種の雄への威嚇用、異性へのディスプレイといった役割だというのが主流だね。
ちなみにホーンレットはこの長い3対だけじゃなく、他に短いものも生えていたんだよ。
そして鼻先から真っ直ぐに伸びる1本角もスティラコサウルスを代表する特徴だね。その長さは60センチメートル弱ほどにもなるほど長いんだ。更にこの上に角質の鞘が被さっていたと考えれば、この角が本種にとって強力な武器になったのは間違いないだろうね。
こんな仰々しい見た目に反して、全長は5.5メートルほど。角竜最大種のトリケラトプスと比べると半分程度の大きさしかないんだ。大きさだけが恐竜の魅力だなんて事は思わないけど、意外と小さくて驚く人もいるだろうね。
また、この恐竜はボーンベッド…古生物の骨を大量に含む地層から発見されることもあるんだ。これは、本種が群れで生活し、移動していたことの証拠だと言われているよ」
ということで、リュウタに新しいパートナー恐竜・スティラコサウルスの「イナズマ」が加入しました!
時期を見て、レックスやマルムにももう1匹ずつパートナーを追加していく予定ですので、是非ご期待下さい!
レックスのヒントは、「2体目の恐竜カードがない時はボタンを押してね」です。
一方で、アクト団も本家Dキッズ・アドベンチャーでは登場しなかったカスモサウルスの恐竜カードを手に入れました。
このカスモサウルスは最後までアクト団の恐竜として活躍させていくつもりです。彼がどうなるのかは、「Dキッズvsアクト要塞」をプレイしたことがある方なら予想できるかもしれませんね。
それでは、次回「眠れぬ地下迷宮のアンキロサウルス達!」ぜひお楽しみにお待ち下さい。
今は2万字以下を前後編、それより多い場合は前中後編としていますが、今後どのような形式の方がよいでしょうか。皆様のご意見をお聞かせ下さい。
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文字数に関わらず前後編にすべき
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現状路線でよい