古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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 前回の恐竜キング!

 ある日急に元気と食欲がなくなってしまったガブ。
 リュウタはガブを心配して病院にも連れて行くが、原因はわからずじまいだった。
 そんな時ハワイに恐竜が現れ、現地へ向かったDキッズとオーウェンはスティラコサウルスに出会う。スティラコサウルスのお陰でガブの問題も解決し、共にビーチで遊ぶことにした5人。
しかしそこへアクト団が襲来してきた!
 5人と7匹の奮戦の甲斐あってアクト団を撃退できたが、戦いを通してスティラコサウルスはリュウタ達と戦い続けることを望むようになる。
 だがリュウタは既にガブをパートナー恐竜としている身。どうするかを考えていると、突如としてオウガとオーウェンのアンバーが共鳴して光を放ち、リュウタの石版に力を与えた。
 それによりリュウタはスティラコサウルス、改め「イナズマ」を第2のパートナー恐竜として迎えることができたのであった…。




第9話:眠れぬ地下迷宮のアンキロサウルス達!
前編


東京都 地下

 

 深夜、皆が寝静まった東京の地下では、地下鉄の延長工事が行われていて、絶えず重機の音が響いていた。

 そんな中、掘り出された盛り土から少しの土砂と共に、例の卵型カプセルが転がり落ちてくる。カプセルは2つに割れると、中から2枚のカードが飛び出てきた。そこへ更に土砂が滑り落ちてそのカードに触れたかと思うと、紫色の光を放ちながら恐竜が実体化した。

装盾亜目の鎧竜では最大の種類、アンキロサウルスだ! しかしピクリとも動かない。どうやら眠っているようだ。

 そんなアンキロサウルスを覆い隠すように、上から土砂が積み重なっていくのだった…。

 

 

同時刻 リュウタ宅

 

「…くあぁっ、お前も眠れないのか? エース…」

 

『クガァ…』

 

 この日の夜、リュウタの家の前で道路工事が行われていた。その騒音のせいで、レックスとエースはなかなか寝付けずにいたのである。

 何とか音を遮ろうと枕を被るものの、それでもなかなか寝付けずに時間ばかりが過ぎていった…。

 

「もーっ!」

 

 

翌朝

 

 目を覚ましてリビングへとやって来たリュウタにガブとイナズマ。どうやら3者とも昨日の騒音に関わらずぐっすりと眠れたようだ。

 

「おはよ〜…よっ! レックス! 今日もいい天気だな!」

 

 リュウタが陽気に言ってレックスの背を叩くも、彼からの反応はない。不審に思ったリュウタは彼の顔を覗き込み…思わず驚いた。彼の目の下にはくっきりと隈ができていたからである。

 

「うわっ! 何なんだよその顔!」

 

「おはよー…。全っ然眠れなかった…。うるさくて…」

 

 その言葉を肯定するかのように、レックスの足元で寝ているエースも欠伸をする。どうやら眠れなかったのはエースも同じなようだ。

 …しかし、リュウタにはそれが分からなかった。

 

「うるさくてって…何が?」

 

 その言葉に、思わずレックスもがっくりしてしまう。自分があれほど苦しんでいた騒音を、目の前の男は何とも思わなかったと言っているからである。

 

「ってお前! 聞こえなかったのか? 夜中の工事の音!」

 

「工事なんかしてたか? なぁガブ、イナズマ?」

 

 まるで覚えのない様子のリュウタがガブとイナズマに尋ねるも、両者共に同じ反応を示した。

 その光景を目にして、レックスはゾッとした様子を見せる。

 

「信じられん…。お前どういう神経してんだ…?

あんなうるさい中で眠れたってのか?」

 

「あぁ! ガブもイナズマもぐっすり寝てたよな?」

 

 2匹の様子を見ようとレックスが振り返ると、2匹は元気にボール遊びに興じていた。

 イナズマがリュウタ家に来てから1週間ほどになるが、ガブ達の助力もありすっかり適応できたようだ。

 どちらにせよ、2匹ともエースとは違ってしっかり眠れていたようである。

 

「大体レックスは神経質過ぎるんだよ。たかが音くらいで…」

 

 そんなさり気ないリュウタの一言が、寝不足で苛立っているレックスの逆鱗に触れた。勢いよくレックスが椅子から立ち上がり、リュウタに怒鳴る。

 

「たかが…? リュウタ達が鈍感すぎるじゃないか!?」

 

「何ぃ!? オレ達のどこが鈍感なんだよ!?」

 

「それが分からないのが鈍感の証拠だって言ってるんだ!」

 

 売り言葉に買い言葉。

 2人は朝から早々大喧嘩に発展してしまっていた。そのように言い争う彼らのところへ、リュウタの母亜紀が朝食を持っていく。

 

「朝ご飯できたわよ〜」

 

 だが、それでも2人の口論は止まらなかった。

 

「ぐっすり寝すぎて何が悪い!?」

 

「寝過ぎても頭が腐るぞォ!」

 

「あのな、お前知らないのか? 寝る子は育つって言うだろ!?」

 

 

その少し後 オウガ宅

 

「うーん…。そろそろ起きるか…」

 

 時計が9時を回ってから、オウガはようやく目を覚ました。

 朝早くから見たいテレビ番組やライブ配信がない休日、オウガはいつもこのくらいまで寝てからようやく起きるのである。

 

「おはよう。レクシィ、アメジスト…」

 

 既に起きていた2匹を連れてオウガがリビングへと降りていくと、母の蘭々美が台所に立っていた。リビングでは父の帝牙がコーヒーを片手に新聞を読んでいる。

 

「おはよう、王牙。やっぱり今日も遅かったのね。

もっと早く起きればいいじゃないの」

 

「せっかくの休みだし、少しでも多く寝ていたかったんだよ。

それより母さん。レクシィのドライフードってもうないの?」

 

「もう1袋物置に入ってるわよ。取ってきなさい」

 

 蘭々美からそう言われ、オウガは素直に物置へドライフードを取りに行った。これは事情を知っているオーウェンに掛け合って持ってきてもらった、リジン補給に適した旧パーク恐竜用フードなのである。

 それとアメジストに食べさせる普通のフードを手に取り、リビングへと戻ると、彼らの餌皿にそれぞれフードを注ぎ入れる。

 更にレクシィの皿には鶏もも肉を少し、アメジストの皿にはブルーベリージャムをスプーン1杯。これがいつものレクシィとアメジストの食事だった。

 

「ほら、2匹とも食べな!」

 

『グルル…』

 

『キュッキュー♪』

 

 オウガがそう言うと、2匹とも食事を始めた。

 3食しっかり食べているのにどちらも空腹なようで、すごい勢いでフードがなくなっていく。

 

「やっぱり2匹ともお腹減ってたんだな…。

よしよし、いっぱい食べるんだぞ〜」

 

「王牙ー! あなたもご飯食べちゃいなさーい!」

 

「うん、分かったよ母さん。いただきます」

 

 そうしてオウガも朝食を摂ることにしたのだが、そこでオウガは先週【伝説(レジェンド)】から聞いた言葉を思い返していた。

 

(【伝説(レジェンド)】さんは、アンバーが全て集まれば何でも願いを叶えてくれるほどの力を発揮するかもしれないと語っていたな…。本当にそんなことが可能なんだろうか…)

 

 

オウガが目覚めた少し後 東京地下 地下鉄工事現場

 

 夜が明けたのでここにも作業員達が戻り、本格的に工事を再開した。

 シールド掘削機が回り、土を運ぶトロッコが音を立てて移動し、工具が唸り出して作業を始める。

 すると、目の前の盛り土が突然膨張し…中からアンキロサウルスが現れた!工事の音で叩き起こされてしまったようである。アンキロサウルスは作業員達を追い散らしながら地下鉄のトンネルを走っていき、どこかへ姿を消してしまった。

 

 

その頃 リュウタ宅

 

 あの後大喧嘩したリュウタとレックスは朝食を摂っていたが…互いにそっぽを向いていた。見かねた亜紀が2人に声を掛ける。

 

「もう…。2人とも食事の時くらいそんな顔しないの」

 

「だってレックスが!」

 

「リュウタだろ!?」

 

「…いいから食べなさーい」

 

 それでもまだ啀み合いをやめない2人に呆れ、亜紀は台所へ引っ込んでいってしまった。

 

「「フン!」」

 

 その時、2人のディノホルダーからいつもの通知音が鳴り始めた。恐竜の出現を感知したのだ。その液晶画面には、東京都の地図の1点で点滅する赤い光が灯っていた。

 

 

 一方、オウガも食後のヨーグルトを食べていたところで、恐竜の出現を受け取った。

 

「この前もテレビ局に出たけど、今回も日本、しかも東京のどこかか…。どちらにせよまずはDラボで詳しい場所を聞くべきだな」

 

 そう考えながら急いでヨーグルトを頬張り、レクシィとアメジストに声をかけて抱き上げると玄関へと向かう。

 

「父さん、母さん。ちょっと行ってくるよ」

 

「また恐竜? 何度も言うようだけど…気をつけてね」

 

「うん、分かってるよ」

 

 そう言うとオウガは自転車に飛び乗った。前カゴに肩掛けカバンを入れると、そこへレクシィとアメジストもピョンと飛び乗る。

 

「さあ、行くぞ!」

 

 

その頃 東京都地下 地下鉄トンネル内

 

 暗い地下鉄トンネルの中を、懐中電灯で照らしながら進む何者かの影があった。皆さんも大体お察しのこととは思うが、いつものアクト団工作員の3人組である。

 

「んもーう、まだ獲物の姿は見えないのかい?」

 

「アクトホルダーの反応は確かにこの近くのはずなんザンスけど…」

 

「あのガキンチョ達に先を越されないように、早く尻尾を掴むんだよ! あのジェイソンとかいう男にこれ以上貸しを作らせる訳にはいかないだろ?」

 

「「ヘイヘイホー!」」

 

「恐竜ちゃーん! 出てくるザーンス!」

 

「…あれ?ウサラパ様、これなんスかね?」

 

 恐竜を探している最中、エドが線路脇の盛り土の中から飛び出している何かを見つけたようだ。そして軽くポンポンと叩いてみると、突然その何かが持ち上がったではないか。

 

「どわぁぁぁぁ!?」

 

 当然驚くアクト団3人。そんな彼らの目の前で盛り土の中から姿を現したのは、あのアンキロサウルスだった。勢いよく振るわれた尾先のハンマーを回避するため、3人が慌てて飛び退く。

 

「い…岩だと思ってたら尻尾掴んでたッス!」

 

「えーい! バカなこと言ってんじゃないよ!

ほら! 獲物が逃げてくよ!」

 

 ウサラパの指さす先では、先程のハンマーの一撃で空いた穴から逃げていくアンキロサウルスの姿があった。それを追いかけ、アクト団の3人もその穴へ飛び込んでいったのだった。

 

「「「待てーっ!」」」

 

 

その頃 Dラボ

 

 Dラボ前で合流したDキッズの4人は、早速テレポートルームのリアスのところへ駆けつけた。

 

「リアスさん! 今度はどこ?」

 

「都心の地下のようね」

 

 そこでオウガとマルムが辺りを見渡してリアスに尋ねる。

 

「あら? 博士は?」

 

「オーウェンさんもいないけど…帰っちゃったんですか?」

 

「博士は朝から大事な用があると言って出かけているわ。それとオーウェンさんはオウガ君の言う通り、昨日の晩に向こうの世界へ戻っていったわ」

 

「やっぱりそうでしたか…。オーウェンさんもブルーも頼りになるし、今回も助けてほしかったな…」

 

「まあそれは仕方ないじゃん! オーウェンさんにだってやることはあるんだからさ!

…にしても、そういえば父さん、朝からいなかったな…」

 

「今頃気づいたのか? ハッ、流石は超鈍感なリュウタ君だな」

 

 今思い出したかのように語るリュウタの言葉をレックスは聞き逃さず、すぐさま嫌味を言ってのけた。

 

「何ぃ!? まだそれを言うか!」

 

「だってその通りだろ?」

 

「ちょっとやめてよ2人とも…」

 

「マルムの言う通りだよ。2人とも今日はどうしたのさ。ここに集合した時からずっと喧嘩しっぱなしじゃないか。

理由を話してくれないと俺達もどうすればいいか分からないよ」

 

「だってリュウタが鈍感で能天気だから…」

 

「それを言うならレックスが神経質で過敏だから…」

 

 マルムとオウガが何とかリュウタとレックスを宥めようとするものの、2人の口喧嘩はますますヒートアップしてしまった。このまま行けばどちらかが手を出してもおかしくない。

 

「もーう、分かったから早く行きましょ!」

 

 マルムが強引にその場を収め、2人をテレポート台に向かわせる。その後ろからオウガも付いていき、4人と6匹は目的地へとテレポートしていった。

 

「それにしても、博士の大事な用事って…? まあ、いいか…」

 

 リアスはそう呟きながら、またモニターへと向き直ったのだった。

 

 

都心 デパート屋上

 

 Dキッズ達がテレポートしてきたのは、地下鉄のトンネル工事現場の真上にあるデパートの屋上だった。

 下を見渡すと、道路が大きく陥没していて、そこで作業をしていたのであろうクレーン車も横転してしまっている。

 

「あれか?」

 

「もうどこかへ逃げたみたいね…」

 

「道路に穴が空いてる。あそこから地下へ逃げたのかな?」

 

「いや、地上に恐竜が出たという情報はないし、ずっと地下から出てきてないはずだ」

 

「よし、探そうぜ!」

 

 リュウタの一声で、Dキッズ達は地下へと向かうことにした…のだが…。

 

「待て! リュウタはそっち! 僕はこっちだ!」

 

 突如レックスが分担して捜索を始めようと言い出した。これにはオウガとマルムも驚く。

 

「えっ? 一緒に探さないの?」

 

「そうだよ。前の大英博物館の時とは状況が違うんだよ。それに都心地下鉄のトンネルは迷路そのものだ。

まずは大方の場所を特定できるまで全員で行動した方が…」

 

「神経質な僕と一緒じゃ、リュウタが嫌だろうからね」

 

 そう言い、レックスが鼻を鳴らす。

 

「勝手にしろ! 行くぞガブ! イナズマ!」

 

「エース行くぞ!」

 

 またしても意地の張り合いにより、結局レックスはDキッズから1人分かれて捜索をすることになってしまった。

 

「どういうことなの…?」

 

「一体何がどうなってるの…?」

 

 残されたオウガとマルムは、困惑しきりだった。とは言えとにかくどちらかを追わねばならないので、ひとまず2人はまだ姿が見えていたリュウタを追いかけることにした。

 

 

一方その頃 デパート地下エリア

 

『ようこそ冒険野郎の皆様! 本日は年に1度の大バーゲンセール! レアな冒険グッズを特別価格で提供いたしまーす!』

 

 アウトドアショップ『冒険野郎』の前に長蛇の列ができている。その列の中に、86番の整理券を握りしめた古代博士がいた。それも、いつになく真剣な表情である。

 

「くぅ~…。この日をどんなに待ったことか…!」

 

 そんな彼の耳にファンファーレが聞こえてくる。顔色が変わったところを見るに、どうやらこれが開店の合図らしい。

 

『それでは開店でーす!』

 

 店員の声と共に自動ドアが開くと、並んでいた人々が次々に店内へなだれ込んでいく。その中には勿論古代博士の姿もあった。

 

「おおっ! 強力ビーム付飯盒! 恐竜型テント! 恐竜の卵型抱き枕!! これが欲しかったんだぁ…!」

 

 …なんだか冒険要素に欠けたラインナップに思えなくもないが、古代博士はこれで大満足だったようだ。

 その後も次々と気に入ったアイテムを買い漁り、古代博士は上機嫌で店を後にした。

 

『ありがとうございましたー!』

 

「フッフッフ…大収穫…」

 

 その時だった。突然彼のすぐ横の壁が弾け飛んだのだ。壁に大穴が空き、そこから顔を出したのは…あのアンキロサウルスだった。

 突如現れた恐竜に人々は逃げ惑う。その混乱の中、先程の店員が手に持っていた拡声器を落としてしまった。キーンという耳障りな音が辺りに響き、アンキロサウルスが嫌そうに頭を振る。そして尾先のハンマーを振りかぶるとまた壁に穴を開け、その向こうへと足早に歩き去っていった。

 

「あ…あ…アンキロサウルス!」

 

 しばらく呆気にとられていた古代博士だったが、その恐竜の正体に気づき、瞳を輝かせた。

 

 

その頃、リュウタ達は…

 

「どこだー? 恐竜ー! おーい!」

 

 リュウタ・マルム・オウガの3人は地下下水道の中を進んでいた。下水道というだけあり、周囲には凄まじい悪臭が立ち込めている。

 

「下水道ってけっこう臭うわね…」

 

「そうだな…。レクシィもここに入った瞬間カードに戻って出てこなくなっちゃったよ…」

 

 マルムは鼻を摘みながら、オウガは顔半分をパーカーの中に埋めながら会話をしている。

 しかしリュウタはまるで何も対応していない。この臭いを感じないのだろうか。

 

「そうか? あんま感じねぇけどな?」

 

 クンクンとわざわざ臭いを嗅いでからそう言ってのけるではないか。これには思わずオウガとマルムも顔を見合わせた。

 

「ウソだろ…? この悪臭の中にいるのに不快感すら感じないなんて…」

 

「やっぱレックスの言う通り、鈍感かもね…」

 

 そうひそひそ声で言い合っていると、リュウタが振り向いてきた。こういう時は敏感である。

 

「ん? 何か言ったかー?」

 

「いえっ、何も!」

 

「あ、あー、なーんにも…」

 

 即座にすっとぼける2人であった。

 その時、震動と共に目の前をあのアンキロサウルスが横切っていく。

 

「あーっ! いたーっ!」

 

「アンキロサウルスかしら?」

 

「それで間違いないと思う。アンキロサウルスは最大10メートルにもなる鎧竜最大の種類だからね。いかんせん発見されてる化石が少ないから断言はできないけど…」

 

「よっしゃあ! 早く捕まえに…」

 

 そう言ってリュウタが駆け出そうとすると、アンキロサウルスの後ろからついてきたアクト団の3人もいるではないか。

 

「「「待てぇー!」」」

 

 そこでノラッティ〜がオウガ達の存在に気づいた。

 

「あっ! またガキンチョザンス!」

 

「ダァメ! ここから先には行かせないよぉー!」

 

 ウサラパの姿を認めるなり、マルムもすぐさま反応した。

 

「どいてよオバさん!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、気取ったウサラパの端正な顔が怒りに歪み、今にも殴りかからんばかりの勢いで怒り出す。そんなウサラパを、エドとノラッティ〜が2人がかりで抑えにかかる。

 いつもの光景であった。

 

「おんどりゃぁぁあ! 誰がオバさんだっつってんだぁ!?」

 

「ウサラパ様抑えるッスー!」

 

「あの獲物はミー達のものザンス!」

 

「こうなりゃ無理矢理通るしかないな…。いくぞ! ガブ…」

 

 リュウタがガブをカードに戻そうとディノホルダーを持ち直した、その時をアクト団達は見逃さなかった。

 

「させるか! お前達!」

 

「「ヘイヘイホー!」」

 

 ウサラパの掛け声と共にエドとノラッティ〜がすぐ傍のバルブを緩め始めた。間もなくそこから勢いよく水が吹き出し、オウガ達とアクト団の間に水の壁を作ってしまったのだ。

 ここに来たのは初めてのはずなのに随分と用意周到なアクト団である。

 

「くっそぉ…。汚えぞ!」

 

「汚いのはお前の顔だよーん! オーッホッホッホ…いくよっ!」

 

 水の向こうから煽るだけ煽ったところで、ウサラパ達はアンキロサウルスが向かった方向へ素早く移動していった。

 

「あっ、待て! くっそ〜…他の道探さなきゃ…」

 

「でもリュウタ。ここまで1本道だっただろ?

俺達どこまで戻ることになるんだ?」

 

「そ、それは…うーん…あれ?」

 

 リュウタが何かに気づいたように水の向こうへ視線を向ける。

 

「おーい!アンキロサウルスー!」

 

 何故か買い物袋を大量に提げた古代博士が走り去っていくのが見えた。

 

「…父さん?」

 

「え? 古代博士が? どうしてこんな地下に…」

 

 その時、オウガのディノラウザーが鳴り出した。すかさずオウガが画面を確認すると、そこにはオレンジ色の反応が現れていた。オーウェンの世界の恐竜だ! しかも、自分達が進んできた道…すぐ後方にいる!

 

「2人とも! 俺達の後ろからもう1体恐竜が来てる!用心するんだ!」

 

「えっ!?」

 

「用心しろって言ったって…」

 

 アクト団が起動した水流のせいで退路は絶たれている。その上で危険性の高い別世界の恐竜を相手取らなければいけない緊張感に包まれながら、リュウタはヘッドライトを後ろへ向けた…。

 

 

その頃 地下鉄駅

 

 リュウタ達と分かれて捜索をしていたレックスは、1人地下鉄に乗ろうとしていた。

 車内から地下を見て回り、恐竜を見つけようと考えたのだ。

 

「大人しい犬だなーエースはー。さ、乗ろうかエース。わんわん吠えるんじゃないぞー?」

 

 若干頬が赤らんで見えるのはきっと見間違いではないのだろう。しかしこうしなければ周りの人は恐竜だと大騒ぎしてしまう。だから恥ずかしさを押し殺してこのように演技をしているのであった。

 

「ふう〜…」

 

 席につき、ようやく一息ついたレックス。そして窓の方を向き、そこから恐竜を探そうと考えるものの…。

 

「ふぁぁぁぁ…」

 

 寝不足から来る眠気には勝てず、エース諸共そのまま意識を手放したのだった。

 

 

 それからどれほどの時間が経っただろうか。

 レックスとエースは突然の急ブレーキによる揺れで叩き起こされた。

 

「うわぁっ!? …どこだここ…?」

 

 一方車両前方では、地下鉄の運転手が前方で横たわる何者かの存在に気づき、ブレーキをかけたところだった。

 

「ん? なんだぁ? トンネルが崩れたのか」

 

 地下鉄車両のヘッドライトに映し出されていたのは、アンキロサウルスの後ろ姿だった。

 するとアンキロサウルスは大きく尻尾のハンマーを振りかぶり…そのまま車両の前方を殴りつけた。驚いた運転手は車両から飛び出して一命をとりとめたものの、この一撃によって先頭車両が破損し、車両全体の電気が落ちてしまった。

 

「うわぁぁぁっ!? な、何だ?」

 

 凄まじい衝撃に慌てたレックスがドアから前を見ると、車両前に立ちはだかるアンキロサウルスの姿があった。

 

「あっ! アンキロサウルスだ!」

 

 何故かアンキロサウルスが後ずさりしていくのを見てからレックスは車内へ戻り、エースを成体化させようとディノホルダーを手に持つ。

 すると、車体全体に凄まじい衝撃が走り、ディノホルダーを取り落としてしまう。ディノホルダーはそのまま車外へと滑り落ちていってしまった。

 

「しまった! ディノホルダーが…」

 

 拾いに行こうとするものの、またしても車両に衝撃が走る。

 そう。アンキロサウルスは逃げようとしていたのではない。目の前の車両を排除するために体当たりをしようと勢いをつけていたのだ。

 繰り返し車体が揺さぶられ、レックスとエースは立っていることすらままならない。

 

「掴まってろ! エース!」

 

 片手でエースを抱き込み、もう片手で手すりを掴んでレックスは必死に衝撃に耐えていた。

 すると、どこからか…車両の後方からやかましい音楽を響かせながら何かが近づいてくる。

 

「な…何だあれ…?」

 

 それは、アクト団の手漕ぎトロッコだった。エドとノラッティ〜がハンドルを握って動かし、中央にはウサラパが鎮座している。そして彼女の両隣には特大のスピーカーが備え付けられていた。どうやら騒音はここから流されているらしい。

 

「オーッホッホッホ! かわいい獲物アンキロサウルスちゅわ〜ん!」

 

「あっ! アクト団!」

 

 車両から顔を出したレックスを、ウサラパは見逃さなかった。

 

「あらま、もう1匹みーっけ〜」

 

「これは何たる好都合ザンッス!」

 

「チャンスッス! 両方とっ捕まえるッスよ!」

 

「ほんじゃ、この景気のいい音楽に乗って捕獲作戦開始だよー! エド! やっておしまい!」

 

「了解ッス! 行くッス! サイカ!」

 

ウオォォォォォ!!!

 

 エドがカードをアクトホルダーに通し、サイカを成体にして召喚した。サイカは降り立つなり目の前の地下鉄車両に思い切り突進して押し戻したのだ。一方、押し戻された側のアンキロサウルスは、すぐさま体当たりをして押し返す。

 

「まずい! 恐竜に挟まれた! うわあぁぁぁぁ!」

 

 前へ後ろへ交互に突き飛ばされる車内で、レックスとエースは必死に耐え続けていた。

 

 

少し前 リュウタ達の場所では…

 

 リュウタのヘッドライトに映されたのは、先程の個体より1回りくらい小さな鎧竜だった。鎧部分は鮮やかな水色、それに対し腹部は黄色ととてもカラフルな色合いだった。また、頭の角は左側だけが小さくなっている。

 そして、何より最大の特徴は…。

 

「ねぇ2人とも、見て。この子全然アタシ達のこと怖がってないのよ」

 

 マルムがそう言ってその鎧竜を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。かなり人に馴れているようだ。

 鎧竜をじっくりと観察していたオウガが、2人に向けて言う。

 

「この鎧竜…鎧の印象こそ違うけど、それ以外はアンキロサウルスの特徴と合致するよ。

だから…つまり、アンキロサウルスで間違いないと思う」

 

「そうなのか? うーん…それにしてはさっきの奴と違って鎧が随分トゲトゲしてるよなぁ…」

 

「俺もそこが気になってたところなんだけど…こればかりは別世界の恐竜だから、ということで納得するしかないと思うな。

ほら、タコ並に擬態が得意なカルノタウルスとか、2倍くらい大きいピロラプトルとかいたんだし」

 

「それは確かにそうだけどさ…」

 

 オウガとリュウタがそう話し合っていると、そのアンキロサウルスはノソノソと放水部分へと歩いていく。すると、水が放出されている部分で立ち止まり、水のカーテンを遮ってくれたではないか。

 

「君…もしかして俺達の手助けをしてくれたのか?」

 

 オウガがそう尋ねてはみたが、青いアンキロサウルスは首を傾げるだけだった。

 まあ無理はない。人間の言葉が通じるはずもないんだから。

 そうは思いながらもオウガ達が放水部分を通り抜けてアンキロサウルスが進んでいった通路に渡ると、青いアンキロサウルスは前へと進んだ。元のように水のカーテンが展開されるが、オウガがすぐさまハンドルを握り、力を込めて栓を締め始める。子供の、それも運動神経があまり良くないオウガの力では限界があったが、何とか放水の勢いを弱めることはできた。

 

「レックスが合流できるように、ここは通りやすいようにしておかないとね」

 

「ねぇ、リュウタ、オウガ。どうしてかは分からないけどこの子、アタシ達と一緒に来たいみたい。

連れていきましょう?」

 

 マルムの声に振り返ると、青いアンキロサウルスは彼らに近づいて、彼らを見上げているのが2人の目にも入ってきた。

 

「いいんじゃねぇか? どうせカードには戻ってもらわないといけないんだし、連れて行ってやろうぜ」

 

「そうだね。君! 俺達の後に付いてきてくれるかい?」

 

 オウガがそう問いかけると、その言葉が分かっているのか青いアンキロサウルスは大きく頷いた。

 その時、周囲の風景が変化していくのに3人は気がついた。

 

「これは…バトルフィールドだ!」

 

「レックス?それともアクト団かしら?」

 

「くそっ!どこだ!?」

 

 3人は困惑しつつも、アンキロサウルスを探して暗い地下世界を走り始めたのであった…。

 

 




今回はここまでです。
レックスはこの絶体絶命のピンチを切り抜けることができるのか…。
そしてリュウタとレックスは仲直りできるのか…。
次回、後編をご期待下さい。

今は2万字以下を前後編、それより多い場合は前中後編としていますが、今後どのような形式の方がよいでしょうか。皆様のご意見をお聞かせ下さい。

  • 文字数に関わらず前後編にすべき
  • 現状路線でよい
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