古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
家前の工事のせいでまともに眠ることができなかったレックス。しかしリュウタは全く気にしていなかったようで、その価値観の違いから2人は大喧嘩してしまう。
そんな中都心地下鉄のトンネル内にアンキロサウルスが現れ、今日も今日とてDキッズは出撃する。しかしレックスは単独行動を始めてしまい、その末乗っていた地下鉄車両がアンキロサウルスに襲われてしまった。
しかしその後もアンキロサウルスの後を追ったレックスは、彼が自分同様やかましい音から逃げていることに気づく。
アンキロサウルスを鎮めようにもディノホルダーを落としてしまっていたレックスだったが、リュウタからディノホルダーを投げ渡され、それでエースを成体化させてアンキロサウルスと戦うことに。
予想以上に苦戦させられる強敵であったが、オウガが連れてきたもう1頭のアンキロサウルス・バンピーの加勢もあり、見事撃破しカードに戻すことができた上にリュウタと仲直りすることもできたのだった。
前編
三畳市 竜野家
ある日のこと、マルムはパラパラにおめかしをさせていた。フリフリの服に水色と白の色鮮やかなスカーフで着飾らせており、とても可愛らしい様子であった。
「ほ~ら! 可愛いわ〜パラパラ〜! そのスカーフ絶対似合うと思ったのよね〜!」
満足げなマルムとは裏腹に、当のパラパラは不快極まりないといった表情であった。
「クウゥ…キャウッ!」
「あぁー…せっかく可愛かったのに…」
遂に我慢できなくなったパラパラが首に巻かれたスカーフをズタズタに引きちぎってしまった。
がっかりするマルムだが、そこへ姉のリアスが入ってきた。しかも何故かいつもの白衣姿とは違い、綺麗に着飾っている。
「あっ、お姉ちゃん。どうしたの?」
「やっぱりここにいたのね。丁度良かったわ。
ねえマルム。ここにスカーフを置いておいたはずなんだけど…白と水色の柄のやつ、知らないかしら」
その言葉に、マルムは青褪める。何故ならそのスカーフは、今まさにパラパラがズタズタにしてしまったものだったのだ。
今そのスカーフの残骸はマルムが背後にかき集めて見られないようにしている。
「し、知らない知らない! 全っ然知らないわ!」
「そうなの…。それにしても困ったわね…。あれ買ったばかりのお気に入りなのよね…。値段も結構したし…」
そう呟きながらリアスが別の部屋へ向かっていくのを見送ったところで、マルムはガタガタと震えだした。まさかそんなに大事なスカーフだったとは思わなかったのだ。
「アハハハ…ど…どうしよう〜!」
その頃 アクト団の基地 アジ島
この日、とある1室でウサラパとノラッティ〜は、ロト&ロアの兄妹とゲームをしていた。そのゲームというのがロト自作の「バードファイターズ」であり、鳥を操って戦う格闘ゲームである。
「よし! 行けっイーグル!」
「やっちゃえー!」
ロトとロアが使っているのは、ハクトウワシをモチーフにした「イーグル」。見た目のカッコよさもさることながら、出が早く威力の高い攻撃を繰り出せる強キャラである。
「かっこ悪ぅ…」
「ゲエッ! なんておバカなアホウドリなんザンしょ…」
一方ウサラパとノラッティ〜が使わされているのは何の捻りもない名前の「アホウドリ」。当たり判定が大きい上に攻撃の出が遅い、素人目から見ても強いとは言い難いキャラだった。
というより工作員の3人組に使わせるためにロトがデザインしたので弱いのは当たり前なのだが。
勿論そんな有り様なので、戦況は圧倒的にロトとロアが優勢だった。
「トドメだ!」
ロトがトドメに滑空攻撃のコマンドを入力する。
「もうダメザンスー!」
頭を抱えて天を仰ぐノラッティ〜とは対照的に、ウサラパはそこでギラリと視線を光らせた。
「フッ! この時を待っていたのよ! 食らいなさい! アルバトロス・キーック!」
イーグルが接近してきたのを見て、すかさずウサラパがアホウドリ最大の技「アルバトロスキック」のコマンドを入れた。
しかし、普通に躱されてしまい、勝負に負けてしまった。
「「あー…」」
「うるさいぞい! 何を騒いでおるのだぞい!」
そこへ喧騒を聞きつけたソーノイダがやって来た。そんな彼へロトが事情を説明する。
「ボクが作ったゲームで遊んでるんだよ」
「ウサラパ達ったらこれで98戦98敗! めちゃくちゃ弱いのよ〜?」
「アタシ達が悪いんじゃないわ! アホウドリが悪いのよ!」
「次はイーグルに交代してほしいザンス! そうじゃなくてもせめて他の鳥を使いたいザンス!」
「ダメ」
「ダメ〜!」
「ダメぞい!」
「「ぐぬぅ〜〜〜!!」」
プレイキャラの交換を申し出たウサラパとノラッティ〜だったが、ロトとロア、ついでに2人の祖父のソーノイダにも断られ、悔し涙を流した。
と、そこでソーノイダがエドがいないことに気づく。
「ん? そういえばエドはどこにおるのだぞい?」
「大事なマシンのパーツをネットで探してみるって言ってたけど…」
その頃、エドは自室で1人パソコンのモニターに向き合っていた。その画面には、日本の秋葉原の様子が映し出されている。
どうやら監視カメラをハッキングしてその映像を盗み見ているらしい。
「あんなゲームより、こっちの方が断然面白いッス!
…やっぱりアキバはいいッスねぇ…。
ん? 原宿…? うわぁ~…濃いッスねぇ〜…。なかなかいいッス…」
なんと、エドは監視カメラの映像に映る美少女や美女達の姿を見て悦に入っていた。やっていることが変態のそれである。
しかしそれに夢中だったせいか、部屋への侵入者が迫ってきていることにも気付けなかったようだ。
様子を見に来たロアがモニターを覗き込んできた。
「あぁ〜! 変な女の子見てる〜!」
「ドキッ!」
それに続いて、次々と他のメンバーもモニターを覗き込み始めた。
「何じゃらぞい?」
「ンまぁーっ! こんなもの見て!」
「パーツ探すなんてウソついたなぁ〜?」
「あぁ…いや…その…」
エドがしどろもどろになりながらも弁明しようとした時、ノラッティ〜が何かに気づいた様子でモニターに張り付く。
「あれー? この爺さんどこかで…」
ノラッティ〜がマウスを手に拡大してみると、そこにはバザーエリアに陣取る見覚えのある老人の姿があった。
「「「あーっ!?」」」
そう、以前アルプスへ向かおうとしたアクト団工作員の3人を酷い目に遭わせたあの老人にそっくりだったのだ。
「どうしたぞい!」
「あぁぁぁ! あの時のトボけた爺さん!」
「あのオンボロ飛行機を運転してた…」
「1人で逃げやがった奴ザンス!」
「うー…あんな所で何してるのかしら…?」
「…ぞい? あーっ! ぞい!」
今度はソーノイダが何かに気づいたようで大声を張り上げた。
「どうしたのお爺さま?」
「入れ歯でも外れたの?」
「見るぞい!これを!」
ソーノイダが指さす先には老人がバザーに出品している品々が並んでいたのだが、その中にカードが綺麗に詰められたカードホルダーが置かれていた。しかもそのカードは、恐竜カードや技カードにそっくりなのである。
「恐竜カードだわ!」
「しかもあんなに沢山!」
「だけど…偽物かもしれないよ?」
「そうは思えんぞい! あのデザインを今の時代の人間が完全再現できるはずがないぞい!
…いやしかし、あの『Sin-D』の連中もカードについて知っておったし…事情を知る人間があやつらだけとは思えないぞい…」
しばらくソーノイダは考え込んでいたものの、ようやく決心を固めたようだった。
「と…とにかく! 行って確かめてくるのだぞい!
お前ら! 出発だぞい!」
「「「おーっ!」」」
かくして、大量の恐竜カードを確かめるべくいつもの3人組は出撃していったのであった…。
その頃 リュウタ宅
先程リュウタ宅へ突然マルムがやって来ると、原宿へ行かないかと誘いをかけてきたのである。この後オウガの家へも行くつもりだったようだが、たまたま彼もその場にいたので丁度良かったとも言っていた。
「原宿ぅ?」
「そうよ。アタシ達Dキッズでたまには遊びに行ってみない?恐竜フィギュアだったりとか、とにかく色々あるらしいわよ?」
「別に構わないけど…」
「マルムにしては随分いきなりな提案だね」
「そ、それは別にいいじゃない! じゃあ決まりね! それじゃあ…ガブー! イナズマー! エースー! アメジストー!」
チビ恐竜達を呼び寄せると、マルムは彼らに持ってきたペット用の服を着せ始めた。
ガブには貴婦人のような服を、イナズマにはその対になる英国紳士のような服、エースには幼稚園児の制服のような服、アメジストには白シャツに釣りズボンとホン◯ャマカのよく食べる方のような服を着せられた。
ちなみにレクシィは何かを悟ったのか、マルムがやってきた瞬間にカードへと戻ってしまっていた。
「うん、やっぱり可愛い〜!」
「みんな結構似合ってるじゃん!」
「気に入ってるかどうかはともかく、それほど嫌がってるようには見えないな」
「レクシィがカードに戻っちゃったのはこうなるのを嫌がったからなのかな…。
でも、アメジスト達は割と気に入ってるみたいだね。俺から見ると結構動きづらそうだけど…」
Dキッズ達もそれぞれの感想を述べる。
ここに来てオウガは、ようやく何故レクシィがカードに戻ったのかの理由を察することができたのだった。
「ほーんと! みんな気に入ってくれて良かった!
…何でパラパラだけ…」
そう言いながらマルムがパラパラを見つめたが、当のパラパラはプイと顔を背けてしまった。
「だけど、何でガブ達がこんなの着ないといけないんだ?」
「俺もそこが気になるんだ。家で着るならまだしも、外出するとなるとアメジストも歩きづらいと思うんだけど…」
「だって原宿よ? 恐竜達だっておしゃれしないとね!」
「そんなものなのかな…?」
「おしゃれ、ねえ…」
オウガは頭を捻りながらも納得することにしたが、レックスはまだ納得できていないようだ。
「パラパラは着ないのか?」
「ぱっ、パラパラはこれから買うからいいのよ!
さぁ早く行くわよ! しゅっぱーつ!」
リュウタの言葉を慌てて遮ると、マルムは3人の背中を押して外出を促した。
それから電車に乗ったDキッズ達だが、ガブ達チビ恐竜はみんな服は脱いでしまっていた。代わりに彼らの体には首輪やハーネスが付けられていて、そこからのびるリードがそれぞれの飼い主の手に握られている。
そして電車の車内で、マルムはようやく今回の遠出の目的について語り出してくれた。
「え? スカーフぅ?」
「うん…実は、お姉ちゃんが大切にしていたスカーフをパラパラが破いちゃって…本物はすっごく高いと思うから似たものを原宿で探そうと思って…」
「なぁんだ! だったら素直に謝ればいいじゃん!」
「ダメよ…。うちのお姉ちゃん、怒るとめちゃくちゃ怖いのよ…?」
その言葉に心当たりがあるのか、レックスとオウガが体を震わせた。
「確かに…そうかもね…」
「俺も…それには同意せざるを得ないな…」
「ん?」
「ほら、この前…僕とリュウタがラボでガブ達と遊んでたら、怒ったリアスさんに火のついた爆竹を投げ込まれたじゃないか」
「あっ…そうだった…。
でもオウガも他に何か心当たりがあるのか?」
「うん…。ここに越してきてDキッズに入れてもらった時にリアスさんとも会ったんだけど、すごく綺麗な人だなって思ったってのは前にも話したよね?」
「そうだったよな。その時マルムが1番びっくりしてたのが印象的だったよ」
「だってオウガが年上のお姉さんに憧れてるってのもその時聞いたし、お姉ちゃんを好きになる人なんて見たことなかったから…」
「それからしばらくした後に買い物に来てるリアスさんを見かけたことがあったんだよね。
その時なんかナンパ男にしつこく話しかけられてたみたいでさ、その…手助けできればお近づきになれるかなって思って後をついていったんだよね」
「うわっ、思い切り下心ありありじゃない…」
「とにかく、それでついていったんだけど…ゴミ捨て場の前を通りかかったところでリアスさんがハンドバッグのフルスイングでナンパ男の顔をはたいてゴミの山の中に埋め込んじゃったんだ…。
あれを見た時は、ビックリするのと同時にゾッとしちゃったよ…」
「それは…すげぇな…」
「そんなの見せられたら100年の恋も冷めるね…」
「そういえばあのバッグ、いつの間にか持ち手が千切れてたからどうしたのかと思ってたけど…そういうことだったのね…」
「そこからリアスさんは恐ろしい人だと認識するようになっちゃったのかもね。
この前の爆竹を投げ込んだところも俺とオーウェンさんが目撃してたし…」
「オーウェンさんも見てたんだ…」
このように、怒ったリアスはとても恐ろしいということをDキッズの面々は皆熟知していたのである。そんな彼女がお気に入りのスカーフをバラバラにされたとなれば、どれほど荒れるかは予想できない。
『次はー、原宿〜。原宿〜。お出口は右側です』
その時、原宿への到着を知らせるアナウンスが流れた。
「ま、オレ達は恐竜グッズ買いたいからいいけどさ」
「特に協力しない理由もないしね」
「Dキッズの仲間を見捨てるほど俺も薄情なつもりはないよ。似たようなスカーフ、絶対に買って帰ろう!」
「みんな…!ありがとう!」
オウガ達からそう声をかけられ、マルムはようやく笑顔を浮かべたのだった。
原宿
「うわぁ~、色んなお店があるなぁ〜!」
「これなら案外すぐに見つけられるかもしれないね」
ということで人でごった返す原宿の街で各々チビ恐竜を連れながら買い物を始めたのだが…。
初めて見る風景に興奮しているのはDキッズだけではなかった。
『ガブぅ!? ガブガブガブ!』
『ゴロゴロロロロ!』
「こら! やめろってガブ! イナズマも!」
おもちゃ屋さんの前に立てられていたロボットの置物にガブとイナズマが食らいつき…。
『ガァウ!…ギャッ!?』
「エース! 大丈夫か?」
某タイヤ会社のマスコットに似たバルーンにエースが突っ込んでは跳ね返され…
『キューッ! キューッ!』
「待てってアメジスト! 用事が終わったら食べさせてやるから! 今はやることがあるだろ?」
メレンゲホットケーキ専門店の前から動かないアメジストをオウガが何とか宥めすかして動かそうとするなど、彼らは終始チビ恐竜達に振り回されていた。
「うひゃ~っ、こいつら目が離せないなぁ…」
「ん…? おいリュウタ! あそこに化石が置いてある!」
「おっ! マジだ!」
「オーパーツなんかもあるみたいだぞ!」
化石ショップを見つけたリュウタとレックスがそちらへと駆け出していく。どうやら彼らも興味があるものには目がないようだ。
「ちょっと2人とも! まずはマルムのスカーフを探した方がよくないか? 店巡りはそれからでも…」
「あっ! ティラノの歯の化石だってよ!」
「何ッ!?」
ティラノサウルスと聞くとその他のことを考えられなくなってしまうのがオウガの悪い癖である。当然彼もリュウタ達同様化石ショップへ駆け込んでいってしまった。
「もー…目を離せないのはどっちだか…。
あっ! 可愛いアクセサリー…!」
化石に目がない男共を愚痴りつつも、マルム本人も可愛らしいものには目がなかった。
ここへ来た目的も…たった今パラパラのリードを手放してしまったことも忘れて彼女はアクセサリーに夢中になっていた。
自由の身になったパラパラは暫し困惑した様子を見せていたが、やがてどこかへと歩み去ろうとしていた。
「わぁ〜、どっちも可愛いなぁ〜…。あら?」
そこでマルムはようやく自分の手からリードがなくなっていることに気づいたようだ。
慌てて周囲を見渡すと、人混みの中に消えていくパラパラの後ろ姿が見えた。
「待って! パラパラ!」
すぐさまマルムはパラパラの後を追いかけていった。
しばらく後…
原宿の一角にあるバザーエリアで、例の老人が自身の顔ほどもある巨大なハンバーガーに食らいつこうとしていた。
だがそこへやって来た何者かがハンバーガーを奪い取っていく。ハンバーガー泥棒の正体はパラパラだった。パラパラはハンバーガーから素早くパティだけを投げ捨てると、残った野菜をがっつき始めた。
そこへようやくマルムが追いついてくる。
「あぁぁぁ…ダメじゃないパラパラ…。すみません! 弁償します!」
「なぁに、いいっていいって」
マルムが老人に頭を下げて謝るが、老人は特に咎める気はないようで、笑顔で応対した。
一方ハンバーガーの食べたいところを食べ終えたパラパラは老人のもとへすり寄っていく。老人はそんなパラパラを慣れた手つきで撫でてやっていた。
「おお、よしよし。可愛い恐竜だなぁ」
「あ、どうも…って! その子は恐竜じゃありません! 犬です犬!」
「はあ?」
「恐竜だなんてまさかそんな…アハハ…」
何とか誤魔化そうとはしたものの、マルムは内心とても動揺していた。これまで自分達はパラパラ達を犬だとしてきたし、それで大方は騙し通せて来たのだ(オウガの両親は除く)。
しかし目の前の老人は、少しの迷いもなくパラパラを恐竜だと見抜いた。オウガや自分の両親は身内だからまだいいが、ここで赤の他人に知られてしまうのはまずい。
なんとか話題を変えようと老人がバザーに出品している商品を見渡していると…ふと、その中の1つに目が留まった。そこには、恐竜カードや技カードがたくさん収められたカードホルダーがあったのだ!
「お、おじいさん! これ…」
「あぁ、それも恐竜だな」
「何でこんなところに…すみません! ちょっとパラパラをお願いします!」
「あいよ〜」
老人の間延びした声を背中に受けながらマルムは先程までアクセサリーを見ていた場所へ戻りながら、ディノホルダーを手に取った。先程分かれたオウガ達に連絡を入れようとしたのだ。
「お願い…早く出て…!」
その頃 原宿駅
恐竜カードを確認するため、アクト団達も長時間電車に揺られてはるばる原宿までやって来ていた。
「なんで電車なのぉ…?」
「立ちっぱなしで疲れたザンス…」
「座りたかったッス…」
疲れ切った3人が立ち尽くしていると、そんな彼らに声をかけてくる集団がいる。
「オバちゃん邪魔!」
「あぁん!? 誰がオバさんだっ…て…?」
いつもの口調でオバさん呼びを咎めようとしたウサラパの声は尻すぼみに消えていった。そこにいたのはいつものガキンチョ達ではなく、全身をゴスロリ衣装で整えた少女たちだったからだ。
「なに?」
「文句あるぅ?」
仮にも大人の3人に対し不遜な態度を崩さない彼女達に、ウサラパは思わず面食らってしまう。
だが、エドとノラッティ〜はそうではないようだ。
「うわぁ…本物ッス…!」
「ささっ、どうぞどうぞお先にザンス!」
途端にへりくだる2人の前を、少女達は不機嫌な様子で通り過ぎていく。そんな彼女達を見送りながら、呆気にとられた様子のウサラパが、ポツリと呟いた。
「んん? なぁにあれ? ハロウィン?」
「ところでウサラパ様…ホントにこの切符でいいザンスか?」
そう心配そうに話しかけるノラッティ〜の手には小児用の切符が握られていた。どうやらウサラパは単に安い方の切符を購入したようだ。
「いいのよ! 安かったんだから!」
「でも…小って書いてあるザンス…」
「半額の印よ! 行くよー!」
とは言え疚しい気持ちはあるようで、3人は抜き足差し足忍び足で改札に切符を通し、通過しようとする。
しかし…。
ピンポーン!
「コラーッ! ダメダメ!」
「…やっぱり?」
当然の如く駅員に見つかり、原宿を前にして駅員室へしょっ引かれることになった3人であった。
その頃 原宿 バザーエリア
マルムはオウガ達を呼び寄せ、もう一度老人のもとへと駆けつけていた。そして3人にも確認させるためカードホルダーを開いて見せる。
「すごいな…! 恐竜カードがこんなにたくさん!」
「『大地激怒』に『爆炎突撃』…! 技カードのラインナップも凄いな!」
「確かにすごいけど、本物かどうか…」
「よし、ちょっと試してみるか…。
おじいさん! これ1枚見せてもらっていい?」
「いーよ」
老人から許可を貰い、リュウタはカードホルダーから1枚、『ケラトサウルス』のカードを引き出した。すぐさまディノホルダーに通してみる…ものの、何も反応はない。
「なぁんだ、やっぱりニセモノ…あっ!風だ…!」
リュウタががっかりした様子でカードを裏返すと、その表情が変化する。そこには風の紋章が刻まれていたのだ。
「レックス。ちょっとやってみてよ」
「あぁ、分かった…」
リュウタからカードを受け取ったレックスが自身のディノホルダーに通してみると、途端に液晶画面にカードイラストが表示され、カードは灰色の光と風に包まれて実体化していく…。
その中から出てきたのは、鼻先の角が特徴的な中型肉食恐竜『ケラトサウルス』だった。
同時刻 原宿駅 駅員室
小児用の切符で通過しようとして失敗したアクト団の3人は、駅員室で駅員から説教を受けていた。
「まったく、いい年して子供料金で乗るなんてもう…」
「いい年って言われても…」
いじけた様子でウサラパが呟く。
そんな彼らの後ろについていた窓にケラトサウルスの姿が映ったのを見て、駅員は驚きと恐怖の声を上げた。
「あぁっ…ば、バケモノ…!」
「だぁれがバケモノよ!」
「あっ…あぁぁぁ…」
駅員が声に詰まっている間に、背後のケラトサウルスの姿が消えていく。レックスがカードに戻したのだ。
「きょっ、恐竜が今…!」
「「「恐竜っ!?」」」
戻ってバザーエリア
つい先程恐竜が現れたかと思えばすぐさま姿を消したということで、この場は喧騒に包まれていた。
「本物だ…!」
「うん、間違いないね」
「でも、だとしたらこのおじいさんはどこでこのカードを手に入れてきたんだろう?」
「あの、おじいさん!」
「ん?」
「これ、どうしたんですか? 一体どこで?」
「えーっと…」
老人の顔が途端に真剣になる。Dキッズも固唾をのんでその答えを待っていると…。
「…忘れた」
あまりに気の抜けた返答に4人は思わずずっこけてしまう。とは言え、この宝の山を見逃すDキッズではない。
すかさずレックスが老人に値段交渉を持ちかけた。
「あの! これ全部売っていただくとしたら、おいくらですか?」
「うーん…。そうじゃなぁ…」
いよいよ商談が始まろうとしたその時…。
「ちょっと待ったー!」
駅員室から飛び出してきたウサラパが割り込んできた。
「あっ! いつものオバさん達!」
「だからオバさんって言うなーッ!」
「そんなのどうでもいいじゃないッスかぁ…」
「良くないーッ!」
ウサラパはいつも通りオバさん呼びに反応してしまい話にならないので、ノラッティ〜が代わりに商談に参加しようとする。
だがウサラパもすぐに平静を取り戻した。
「おじいさん! ミー達のこと覚えてるザンしょ?」
「ほぉら、この間ジジ…お爺さまの素敵な飛行機で、スイスまでデンジャラスなフライトを楽しんだじゃないですかぁ?」
「…知らん!」
「またまたぁ〜…」
「とにかく! そのカードは全部ミー達が買うザンス! 売って欲しいザンス!」
これに黙ってないのがDキッズの4人だ。何せ先に商談を持ちかけていたのは彼らなのである。
「何言ってるんだよ!」
「僕らが先に交渉してるんだ!」
「横入りして掠め取ろうなんて大人として恥ずかしいと思わないんですか!」
「そうよそうよ!」
「うっさいわねぇ!ガキンチョ共はお家に帰ってアニメでも見てな!
ねぇお爺さま!アタシ達の方がより高額で買わせていただきますわ!」
「僕たちに売ってください!お願いです!」
「うーむ…」
Dキッズとアクト団に同時に迫られ、老人は考え込んでしまったのだった…。
ウサラパとリュウタに同時に詰め寄られながらも、老人は一切動じずに髭をいじっていたのだった。
今回はここまでです。
第2回アンケートのご協力ありがとうございました。
今後の方針と致しましては、あまりに長くなりすぎた場合は前中後編と分けることにし、2万字を少し超えたくらいなら極力前後編にしていこうと思います。