古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
パラパラが破いてしまったスカーフの代わりを買うため、原宿にやってきたDキッズ一行。しかしそこで大量の恐竜カードを売っていた謎の老人と遭遇する。
後からやってきたアクト団と購入権を争うものの、老人はDキッズに恐竜カードを譲ってくれた。
しかしアクト団にカードが入ったホルダーを奪われてしまう。その後取り戻して公園まで逃げ込んだもののアクト団に追い詰められ、戦うことになる。
レクシィが出てこないアクシデントはあったものの、マルムが拾った『朋鋼翼撃』で危機を脱した。
カードホルダー自体はアクト団に奪われたものの、恐竜カードや水属性以外の技カードは全て逃走中に引き抜いていたため、ほぼノーダメージに抑えることができたのだった…。
前編
ヨーロッパ地中海 モナコ公国
ここは地中海に接するモナコ公国。世界で2番目に小さな国として知られており、リゾート地としても有名なところである。
そんなモナコの海を、いつもの卵型カプセルが漂っていた。そこへヨットが通りかかり、カプセルにぶつかって割ってしまう。中から出てきた1枚のカードが海中へと沈んでいったかと思うと、青い光を放って恐竜の姿へと変化した。その恐竜は水中を器用に泳ぎながら、港の方へと向かっていく…。
その頃港では、朝の漁を終えて港へ帰ってきた漁船が停泊していた。なかなかの成果だったようで漁師達が高笑いをしていると、突然背後の海から恐竜が姿を現した…。
スピノサウルスの近縁種でワニ顔の大型肉食恐竜、スコミムスだ!
慌てて飛び退く漁師達には目もくれず、スコミムスは船の生け簀に入れられた魚を貪り食い始めた。
「なんだこりゃあ!?」
「さ…魚が!」
ある程度魚を食べたところで、スコミムスは再び海中へと戻っていく。後に残されていたのは、随分と魚が減ってしまった生け簀と、呆気にとられた2人の漁師だけだった。
三畳市 リュウタ宅
この日、リュウタとレックスは新しく買ってきた大きい餌皿にドライフードを入れ、庭でガブやエース、イナズマ達に食べさせていた。みるみるうちにフードはなくなっていき、食べきってしまうと、まだ足りないと言わんばかりにチビ恐竜達は飼い主達を見上げた。
「もっとか? もっと欲しいのか?」
「よく食べるわね〜」
「食べ盛りだもんな。ガブにエース、それにイナズマも」
「本当ね。毎日こんなに食べてるんだもの、ドッグフード代だってバカにならないはずよ? あの人がいつも買ってきてるから詳しいところは分からないんだけど…」
「アハハ…」
亜紀からの指摘に、思わずリュウタは苦笑いを漏らす。
ちなみにDキッズ達の恐竜達が食べるドッグフード代は、古代博士が肩代わりし、Dラボの経費で落としている。そのためDキッズやそれぞれの家庭は恐竜が増えてもそこまで経済的に困っている訳ではないのだが…。
それでも、いつもドライフードを買ってくる夫の懐事情を心配するのは、妻である亜紀にとっては当然のことであった。
「それにしても…この子達、普通の犬よりもよく食べるように感じるのよね…」
「そりゃそうだよ! デカくなった時はこんなもんじゃ…」
「リュウタ!」
「えっ、この子達まだ大きくなるの?」
うっかり口を滑らせたリュウタの口を素早くレックスが塞ぐが、もう亜紀には聞かれてしまっていた。
訝しげな表情を浮かべる亜紀を何とか誤魔化そうとレックスは即座に否定した。
「いやいや! これ以上大きくなりませんよ! ママさん!」
「そうなの? それなら良かったわ〜。今おかわりを持ってきてあげるから待っててね〜」
思った以上にあっさり納得した亜紀は、おかわりのドライフードを取りに部屋の中へ入っていった。
その姿を見送ってから、レックスはリュウタの口から手をどけた。どうやら鼻まで塞いでいたらしく、すっかり青い顔になっていたリュウタは荒い呼吸をしている。何とか死なずには済んだようだ。
その時、2人のディノホルダーがあの通知音を発し始めた。
「あっ! 現れた!」
「行くぞ! ガブ! イナズマ! エース!」
2人が呼びかけると、3匹もすぐさま応じて付いていく。そして誰もいなくなった庭に、ドライフードを抱えた亜紀が戻って来た。
「…あら?みんなどこへ行ったのかしら?」
そう言って亜紀は庭を見渡し、首を傾げるのであった。
Dラボ
途中でマルムやオウガと合流し、リュウタとレックスはDラボへと駆けつけた。今は全員でモニターを見ながら、今回恐竜が出た場所を確認しているところだ。
「ここは地中海…フランス? いやイタリアか?」
「いいえ。そこは世界で2番目に小さな国・モナコ公国です」
「なるほど、モナコか! 小さくてもモナコといえば、世界有数のリゾート地だ!」
「モナコでもモナカでもいいよ! 早く行こうぜ!」
「恐竜次第だけど、リゾートなんて満喫してる余裕はなさそうだしね」
そう言ってDキッズ達がテレポート台へ向かおうとすると、そこへ古代博士が呼びかける。
「私も後から行くぞ! 待っていてくれ!」
「父さんが来るまでには帰ってきちゃうよ!」
「今からチケット取って飛行機で向かっても間に合わないわよね…」
「ええっ!? そ…そうか…。じゃあ、せめてお土産を頼む!」
「うん! お土産は恐竜カードね!」
古代博士の言葉を適当にあしらい、Dキッズはモナコへとテレポートしていく。そんな彼らを見送りながら、古代博士は大きくため息をついたのだった。
その頃 モナコ公国
眩い太陽が照りつけるビーチで、ウサラパはビーチチェアで横になっていた。そんな彼女を大きな葉っぱでエドが扇ぎ、ビーチパラソルをノラッティ〜が支えていた。エドとノラッティ〜は水着のようだが、なんだか水着にしては妙な姿である。
「ん〜♪ エド〜、なんかトロピカルなドリンク買ってきておくれよぉ〜♪」
「…そんなの無理ッスよ…」
「何でよぉ?」
「モナコのカジノで全部スッてしまったザンス…」
「ええっ!?」
「帰りの運賃すらないんスよ…?」
「金目のものは全部売ってしまったザンスからねぇ…」
「ウサラパ様ったらアツくなって、危うくアクトホルダーすら売りに出すところだったッス…」
そう言いながらエドは数時間前の出来事を思い出す。
『くっそーっ! ノラッティ〜! エド! 早くコインをーっ!』
なんと今回のアクト団工作員の3人組は、恐竜が出るのを待っている間カジノで豪遊の末散財してしまったようなのだ。そして今エドとノラッティ〜が着ているのは、水着ではなく下着だったのである。
それにしても2人の服を売り飛ばすだけでは飽き足らずアクトホルダーすら売ろうとしたウサラパが自分の服は売りに出していない辺り、最低限の理性は残っていたようである。
忘れたかった苦い過去(数時間前の)を思い出し、思わずウサラパは引き笑いを浮かべた。
「へ…へへ…へ…」
「とても海水パンツには見えないザンスよ?」
「何を情けないこと言ってるんだい! アタシ達は泣く子も黙るアクト団だよぉ?」
そうは言ってみたものの、やはりノラッティ〜とエドが履いているのは下着であることは周囲の人間には見抜かれているようで、あちこちから嘲笑う声が聞こえてくる。彼らは今まさに針の筵に座っているようなものだった。
「こっちが泣きたくなるザンスーッ!」
「ひん…」
その時、アクトホルダー…エドのステテコパンツに挟んでいるものだが…が反応した。アクトサーチ機能が恐竜の出現を感知したのだ。
これには恥ずかしさから顔を伏せていたエドもすぐさま反応した。
「あぁーっ! ウサラパ様! 近くに恐竜が出たッス!」
「またジイさんの占いが当たったのかい?」
「みたいザンスね! ウサラパ様!」
すると、それに続けてアクトホルダーに通信が入る。相手は…珍しくロトとロアの兄妹だった。
『やあ3人とも。またお爺ちゃんの占いが当たったみたいだね』
「ロト!?」
「それにロアも! 何してるんスか?」
『何してるのかって…忘れたの?
お爺ちゃんは今あのカロリディーとかいう男に依頼された技カード作りで手が離せないんだよ。
だから今回君たちへの連絡係は、ボクらの役目になったって訳さ』
『えーっとこっちはスターフルーツとコウイカにアマガエル、そっちはレインボーキウイに吸血コウモリの牙、それから煙幕弾…そしてあっちは唐辛子と模造刀にマッチ…。
ん? どうしたロト! もしやワシの占いがまた当たったのかぞい?』
『そうみたいだよ。3人も出現を確認できたって』
ロトの言葉を聞き、ソーノイダも通話画面に現れた。
『おいお前ら! 恐竜が出たからにはもうガキ共に出し抜かれるではないぞい!
絶対に今回こそは恐竜を回収して…って何ぞい、その格好は』
「あっ、これは…そのぉ〜…」
「は、反応があるまで待機してたんッス!」
『待機してたような格好には見えないけど…』
『どっちかというとバカンス気分に浸ってた感じー』
ロアはバカンス気分だと言ったが、エドとノラッティ〜が下着しか履いていないことはその場にいる全員が認識している様子である。
「目立たないように周りの客と同じ格好をしてるんザンスよ!」
『そんな下着みたいな水着じゃ余計目立ちそうだけど…』
「ドクター! ご心配なく! すぐ捕まえに行きますーっ!」
そこまで言うと、ウサラパ達は一方的に通話を切った。
「さあ行くんだよお前達! 恐竜を捕まえさえすればジイさんが迎えをよこしてくれるかもしれないからね!」
「「ヘイヘイホー!」」
「…って、ウサラパ様は行かないんスか?」
「えっ…だってアタシはトロピカルで忙しいから…」
「そんなのズルいザンス!」
「なによ…。スピノかサイカがいれば十分だろ?」
「念のためティラノもいた方がいいザンス!」
「そうッスよウサラパ様! どんな恐竜がいるのか分からないッスから…」
「何だよ全く…仕方ないねぇ…」
エドとノラッティ〜に説得され、仕方なく自身も赴くことにしたウサラパなのであった。
一方、通話を切られたソーノイダ達は3人に呆れた様子だった。
「せっかくすぐそばに恐竜が出たのにあのだらけようじゃ、今回もダメそうだな」
「せっかくお爺さまの占いが当たったのにね」
「ぬぅーっ! ワシの占いを無駄にしよったら許さんぞ! あいつらめ!」
ソーノイダがその場で地団駄を踏んで怒っていたが、そんな彼に孫の2人は冷たい目を向けた。
「ま、いつまでも占いに頼ってるお爺ちゃんもお爺ちゃんだけど…」
「…ぞい?」
「そうね〜…。あのリュウタとかいう子達より先に恐竜カードを見つけるにはカンぐらいにしか頼れないってことは分かってるけど…」
そう呟きながら研究室から出ていく2人をソーノイダは見送りながら捨て台詞を吐いた。
「…フン! カードさえ手に入れば何でもよかろうなのじゃ…ぞい!」
その時、警告音と共にカード製造マシンが赤く点滅した。
「おっと! いかんいかん、カードの製作に集中せねば! このカードには10万ドルの価値があることを忘れるでないぞい!」
すぐにソーノイダがカード製作を再開したお陰で、いつものような大爆発は起きずに済ませることができたようだった。
その頃 モナコ公国
アクト団の3人が恐竜の捜索に取り掛かった頃、Dキッズもまた現地に到着していた。彼らが降り立ったのはモナコの漁港。ちょうどスコミムスが現れた辺りである。
「この辺りに現れたんだな…」
「モナコといえば、熱帯公園や海洋博物館、それに有名な水族館だってあるんだよ」
「レックス、すごい物知りだな…。
俺はそもそもモナコって国自体あんまり知らなかったよ…」
「ねぇねぇ! それに世界中のセレブやスターも来るんでしょー?」
「うん。でも1番有名なのは公道を利用したグランプリかな」
レックスの肯定の言葉にマルムは目を輝かせる。普段は画面の向こうにいる存在に会えるのだからまたとない機会なのは間違いないだろう。
しかしオウガはグランプリという言葉に聞き覚えがないようで、首を傾げている。
「グランプリ? 何のグランプリなんだ?」
「F1カーレースの世界大会だよ。でも今は…」
レックスがグランプリの解説をしようとしたところだった。向こうから漁師と思しき男性達が銛を片手に桟橋へと駆けていく。
「どうしたんですか?」
「現れたんだよ怪物が! このままじゃせっかく獲った魚を全部食われちまう!」
「「「「えっ!?」」」」
「怪物って恐竜のことですか?」
「なんだ? お前達何か知ってるのか?」
「僕たちはそいつを捕まえに来たんです!」
「何? 捕まえるだと?」
見るからに子供にしか見えない4人が怪物を捕まえると聞き、漁師は当惑した様子を見せた。
やがて彼の視線は、Dキッズの足元にいる6匹のチビ恐竜達に注がれる。
「…なんだ? そいつらは?」
「あぁ! ペットの犬よ…」
「俺のとこのはトカゲです…」
「犬ぅ? トカゲぇ??」
と、そこへ先ほど桟橋へ向かった漁師達が逃げ帰ってくるのが見えた。そのうちの1人が途中で転んでしまう。
「大丈夫ですか!?」
「うう…あんなバケモノ、おれ達の手に負えねぇ…」
「どこにいるんですか!?」
「あっちの…おれ達の船だ! でももう海に飛び込んじまった! あんなのがここに居座ってたんじゃ、漁なんかできっこねぇ!」
「任せろ! 今オレ達が捕まえてやるよ!」
リュウタがその男にそう言った時だった。先程Dキッズが会話していた男の悲鳴が聞こえたのだ。
すわ一大事か、と思い4人が駆けつけると…エースが箱詰めにされた魚を貪っていた。こんな時になんとタイミングの悪いことであろうか。
「エース食べちゃダメ!」
「み、見ろよ! こいつ逃げてったバケモノにそっくりだ!」
「おいお前ら! 恐竜恐竜言ってたけど、こいつらも恐竜の子供じゃないか!」
「ええっ…違いますよ!」
「怪しいなぁ…」
「な…何だよ! うわぁっ!」
かくして、ほぼエースのせいでDキッズとチビ恐竜達共々拘束されてしまった。
「なんだ? この奇っ怪なマシンは?」
「おい! こいつ拳銃なんか持ってやがったぞ!」
「違います! それは拳銃の形をしてるだけです! 弾なんか出ませんから!」
「…とにかく! こいつは預かっておく! そこで大人しくしてろ!」
その言葉と共に船室のドアが閉じられ、Dキッズはディノホルダーやディノラウザーを没収された上で船室に閉じ込められてしまったのだった。
「出せーっ! オレ達は関係ない!」
「恐竜を捕まえに来ただけなんだ!」
「そのディノ…電子機器には大切なものが入ってるんです! 持って行かないで下さい!」
「それが怪しいってんだよ! それにこんな拳銃型のマシンなんか怪しさの極地だろうが!」
「だからぁ、日本のDラボってところに連絡してもらえれば分かるってば…」
「Dラボぉ? ますます怪しい! …そもそも何なんだこれは…え?」
そして、チビ恐竜達も別の檻に閉じ込められてしまっている。ガブやイナズマ、パラパラは大人しくしているが、エースは檻をガジガジと齧っており、アメジストは悲しげな声を上げている。だがレクシィは、そんな彼らを尻目に独り檻の奥で背を向けていた。
そして、その一部始終を物陰から見ていた連中がいた。アクト団工作員の3人組である。
「ウサラパ様、あいつらッス!」
「悪いことでもして捕まったザンスかねぇ?」
「でもこれは絶好の機会だよ。邪魔者がいない内に恐竜を見つけるんだよ!」
「それにしても…浜辺ならともかく、町中でこの格好は目立つッス…」
「うーん…いやん!」
そう。エドとノラッティ〜はまだ下着のみの状態だったのだ。これでは恐竜を見つける前に変質者としてしょっ引かれるのがオチである。
そのため彼らは人目を気にしながらこっそりと移動するより他に方法はなかった。
「ガブとイナズマはどうしたんだよーっ!」
「エースはー?」
「パラパラ大丈夫ー?」
「レクシィ! アメジストー! どうか無事でいてくれー!」
漁師達は彼らの訴えに耳も貸さず、また港の方へ戻っていく。
しかしチビ恐竜達の檻は割と近くにあったのか、彼らの返答が聞こえてきた。
『ガブッ!』
『ゴロロッ!』
『コォーン!』
『キューッ!』
『ガジガジ…』
『…グルル』
その声を聞き、パートナー恐竜達が無事であることに4人は取り敢えず安堵した。
「無事みたいだ。良かった…ったく、エースが魚なんて食べるからあのおっさん達に誤解されるんじゃないか!」
「そんなこと言ったって! エースだって毎日ドッグフードばかりじゃ飽きちゃうよ!」
「2人とも落ち着いて! ここで2人が喧嘩したところで状況は好転しないよ!」
「それより、このままだとリュウタのお父さんが来るまでここから動けないじゃない!」
「せめてディノホルダーやディノラウザーを返してくれれば何とかなるんだけど…」
「何とかどこかから抜け出せないかなぁ…」
リュウタがそう呟いた時。
突然船全体が大きく揺れ出したのだ。するとすぐ近くの海中からスコミムスが姿を現し、町中の方へ走り抜けていった。巨体ではあるがスリムな体つきのせいか、凄まじい敏捷性である。
その光景を、リュウタ、レックス、オウガの3人が目撃していた。
「…見たか今の? スピノサウルスに似てたな!」
「いや、でもあれはスピノサウルスにしては小さい…」
「それに背中はスピノほど高くは盛り上がっていなかった。恐らくあれはアフリカ原産の肉食恐竜・スコミムスだろうね」
「…スコミムス?」
聞き慣れない名前にマルムが首を傾げると、オウガが補足の説明を始めた。
「白亜紀後期のアフリカ大陸で生活していた肉食恐竜だよ。名前の意味は『ワニもどき』。
近縁種のバリオニクスやスピノサウルスから魚食性を示す化石証拠が見つかったから、本種も同じように魚食性だっただろうと考えられているんだ」
「魚食性…? それじゃああの子が魚泥棒の犯人ってことなの?」
「そういうことになる。だからあいつを確保しないことには、僕たちの無実が証明されることはないだろうね…」
その時、まだ扉の窓に張り付いて外を伺っていたリュウタが声を張り上げた。
「あっ! オバさん!」
その時 アクト団達
「キィーッ!オバさんですってえーッ!?
アタシはまだガールよ! ヤングなガールよ! ヤングなガール…」
「どうしたんスか? ウサラパ様?」
「…べ、別に何でもないよ!」
突然発狂しだしたウサラパにエドが声をかけるも、彼女はあくまで平静を装おうとした。そんな彼女を横目で見つつ、エドとノラッティ〜は声を潜めてささやき合う。
「またウサラパ様が幻聴にキレてたッスね…」
「やっぱりこれは更年期障害ザンス…」
戻って船室内のDキッズ
「早く捕まえなくちゃ!」
「このままだとアクト団に先を越されてしまう!」
「あぁ!…開けて! 開けてよー!」
「うるさいっ!」
意外とすぐ近くで漁師達は見張っていたようで、静かにするよう咎めてくる。
その時、彼らが側に置いてあったディノホルダーに通信が入った。古代博士からだ。
『リュウタ! 恐竜は見つかったか?』
「な、何だこれは!?」
突然ディノホルダーに古代博士の顔が表示されたのを見て、漁師達は驚く。しかしそれは、通話元の古代博士も同じであった。
『だ、誰だアンタは! リュウタはどうしたんだ!
そのディノホルダーやディノラウザーを持っていた子供達をどうしたんだ!』
「そいつらなら今船の中だが…そういうアンタは何者だ?」
『ウオッホン! 私はDラボ所長にして古生物学者の古代剣竜博士だ!』
「…知らん!」
漁師からの返答に思わず古代博士はずっこけた。
しかしそれも無理のないことである。日本からは遠く離れたモナコの、それも漁師が古代博士のことなど知っているはずがないのだから。
『…とにかく! 子供達と話がしたい! 会わせてくれ!』
古代博士からそう要望された漁師達は、互いに顔を見合わせて相談を始めたのだった…。
その頃 Dキッズ達は…
「開けろ! 開けろったら!」
何とか外へ出ようと抵抗を繰り返していたDキッズ達だったが、唐突に扉が開かれた。外には、さっきの漁師達が立っている。
しかし扉を叩き続けていたリュウタは急には止まれない。扉の先にいた漁師の股間を思い切り殴りつけてしまった。
「グエッ…!?」
「あっ…ご、ごめんなさい…」
「お…お前の…父親だっていう奴が呼んでるぞ…」
「父さんが?」
というわけでようやく船室から出してもらえたDキッズは、リュウタのディノホルダーで古代博士と会話をし始めた。
「父さん! スコミムスだよ! 漁師さん達が獲った魚を食べてたみたいなんだ!」
『おお、そうだったのか!…よし、リュウタ! お前が恐竜を捕まえに来ていることをそいつらに証明してやるんだ!』
「分かった! でも…大丈夫なの?」
『やむを得まい。しかし、ちょっとだけだぞ!』
「よし!」
どうやら、漁師達から信用を勝ち取るために恐竜を召喚して見せることにしたようだ。
「どうだ? 話はついたのか?」
「うん。今からオレ達が恐竜と戦える力があることを証明するから!」
そう言うと、まずリュウタはガブをカードへ戻してみせる。チビ恐竜がカードに変化したことに、漁師達は既に驚いている。
それからリュウタはガブのカードをディノホルダーにスキャンしてみせた。
「見ていて! こいつでスコミムスを捕まえるんだ!
ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス!」
黄色い光と電撃に包まれ、ガブが成体化して港に降り立つ。その雄々しき姿に漁師達も思わず驚きの叫びを上げた。
そこでリュウタがすぐにガブをカードへと戻してみせる。
「お…お前達…」
そこへまた古代博士が漁師達へと呼びかける。
『どうです? 信用してくれましたか?』
「あ、あぁいや、それは…」
『どうかその子達に任せて下さい!』
「うーん…どうする? この子達しかあのバケモノは倒せなさそうだぞ?やらせてみるか?」
「それはそうだが、こいつら全員あんなに大きくなるのか?町中恐竜だらけになったら大変だぞ!」
「それもそうだな…。
よし、分かった。お前達に任せよう」
「「「「ありがとうございます!」」」」
「ただし、お前達が出していいのは1体だけだ。それ以上は譲れん!」
ということで、1体だけという条件付きでDキッズとチビ恐竜達はスコミムス討伐を任されたのであった。
続いてDキッズは4人で、誰がスコミムス討伐に向かうのかの相談を始める。
「よし! じゃあオレが行くぜ!」
「いや、僕が行くよ!」
「何言ってんだよレックス! オレとガブ達に任せとけって!」
「いいや! 僕とエースならうまくやれるよ!」
出撃するメンバーを決める上で、リュウタとレックスが言い争いを始めてしまった。しかしその間にオウガとマルムは話し合ってから、それぞれ2人へ呼びかける。
「2人とも喧嘩はやめてよ。それより俺達の考えを聞いてほしいんだ」
「アタシ達は、レックスがいいと思うの」
「えっ! 何でだよ!」
「さっきのスコミムスが逃げていくのを見たでしょ?
あんなに素早い恐竜に追いつけるのはエースしかいないわ」
「確かに属性相性ではガブやイナズマの方が有利かもしれないけど、流石にあの速さには追いつけないと思うんだよね。
俺の恐竜でもアメジストは絶対に追いつけないし、レクシィは…」
出てきてくれるか分からない、と言おうとしたがオウガは口を噤んだ。何となく言ってはいけないような気がしたのだ。
「とにかく、あのスコミムスを追いかけて倒すならエースが1番適任だと俺達は思うんだ」
「…スピードかぁ。それはそうだけど…」
「っし! 決まりぃ!」
「チェッ、仕方ねぇなあ…」
ようやく出撃するのがレックスに決まった所で、Dキッズは漁師達に向き合った。
「おお、決まったか?」
「はい。このレックスと、彼の相棒のエースに出撃してもらうことになりました」
「頼んだわよ、レックス!」
「任せとけって!」
そういうわけで、ようやくDキッズもスコミムス確保に向けて動き出したのであった。
一方 モナコ海洋博物館
町中へ逃げ出したスコミムスを追い、アクト団の3人は海洋博物館に併設された水族館へと入り込んでいた。
…勿論、男2人は下着だけの格好で、である。
「ここらで見失ったッスよ。ウサラパ様〜…」
「いつまでもこんな格好してるのは恥ずかしいザンス〜…」
「んもう! だったら早く見つけ出すんだよぉ!」
他の来場客に笑われながらもスコミムスの捜索を続けるアクト団の3人だったが、そんな彼らの目の前の大型水槽を巨大な影が泳いでいく。
スコミムスだ!魚を追っていつの間にか水槽の中へと入り込んでいたらしい。
「あぁっ! あんなところに!」
そしてスコミムスが泳ぐために振っていた尻尾が水槽の強化ガラスを破壊してしまい、そこから溢れ出た水流が来場者達を飲み込んでいく…。更には空いたガラスの穴からスコミムスが館内へ侵入してきてしまったではないか。
ちなみにアクト団の3人は流されたものの、運良くホッキョクグマの剥製に掴まったようで助かったようだ。
「こんな格好で良かったッス…」
「ザーンスねー…」
そんな会話をしていると、スコミムスに続いて何かが泳いで入ってきた。
「あれ? 何ッスかねあれは?」
「うちのスピノちゃんに似てるザンスね」
「バカだねぇ…。うちのスピノちゃんはあんなに四つん這いじゃないだろう?それに頭の形も全然違うじゃないのよ」
「ここに住んでる珍しいトカゲとかなんすかね?
少なくとも恐竜には見えないッスよ」
アクト団達がそんな会話をしているうちに、スピノに似たトカゲはどこかへと泳ぎ去っていってしまったのだった…。
今回はここまでです。
今回のJP・JW恐竜は技カードのお助け恐竜なのですが、以前私が見た恐竜キングクロスものの小説(現在削除済)のオリジナル技から着想を得たものです。
もし今後の描写等で問題がありそうでしたら、ぜひご指摘をお願いしたいです。すぐに対応および修正致します。
では、次は後編でお会いしましょう。