古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
いよいよ始まる恐竜グランプリ。一体勝利を収めるのはどの恐竜なのか…。
ぜひ最後までお楽しみ下さい。
スコミムスが水族館に乱入した少し後
1台のトラックが海沿いの橋の上を通過していく。その荷台には、何箱かの魚と共にレックスとエースが乗っていた。
どうやら魚を餌にスコミムスを誘い出す作戦のようだ。
「ほ…本当に大丈夫なんだろうな…?」
運転席に座っている髭面の漁師が不安そうな声を上げる。もう片方の漁師はリュウタ達を見張るために港に残してきたのだ。
一方で、港に残ったレックス以外のDキッズや漁師は、今レックスがいる方向へ目を向けていた。
「うまく誘き出せるかしら?」
「やれるだけのことはやったよ。あとはスコミムスがどう出るか、ってところじゃないかな?」
「やっぱりオレが行けば良かったかなー…」
「まだそんなこと言ってる。俺達で話し合ってエースが1番適任だって決めたんじゃないか」
「そうよ! レックスとエースなら大丈夫よ!」
「いや、分かんねぇぞ? エースの奴スコミムスと一緒になって魚食うんじゃないか?」
リュウタの言葉を聞き、オウガとマルムはエースとスコミムスが仲良く魚を貪り食う光景を想像してみた。
少し…どころではなくかなりカオスな図である。
「…そんなことないと思うけど…」
「…確かにさっきは食べてたけど…今は状況も違うんだし大丈夫だよ。…多分」
オウガとマルムが宥めるものの、リュウタはまだ不安で仕方がない…というより自分達が戦いたくて仕方がないようだった。
一方、レックス達を乗せたトラックは、海沿いの道を走っているところだった。ふとレックスが海の方を見ると、薄緑の何かが水中へと潜っていく様子が目に入ってきた。
間違いない!あれはスコミムスの背中だ!もしこちらの魚に気がついて並走しているのだとすれば、また顔を見せるはず。
そう考えたレックスは、じっと海を見つめ続ける。
しかし、いつになってもスコミムスは浮上してこなかった。
すると…。
キュイィィィィィッ!!
突如としてトラックの前にスコミムスが現れた。狡猾にも先回りしていたのだ。しかもそのままトラックに足をかけようとしているのか、片足を高く上げている…。
「うわぁぁぁっ! ホントに出たぁーっ!」
「停めて! おじさん停めて!」
エースを戦わせるために運転席の漁師にレックスが停車を呼びかけるが、彼は恐怖でそれどころではないらしい。トラックは停止するどころか、どんどんと加速していっていた。
しかしスコミムスは後ろにしっかりと付いてきている。余程魚に飢えているらしい。
「停めてってば! おじさん聞こえないの!?
…仕方がない! 行くぞエース! ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」
グォォォォォン!!
トラックが停まる気配がないため、仕方なくレックスはエースのカードをディノホルダーに通し、成体化させて召喚した。エースは地面に降り立つと、すぐさまスコミムスを追いかけ始めた。それと同時に、周囲の風景もいつものバトルフィールドに変化していく。
どうやら前回のタイムスリップしたような光景はイレギュラーだったようだ。
バトルフィールドが展開されたことは、港にいるリュウタ達もすぐに察知できた。
「バトルフィールドだ!」
「レックスがスコミムスを見つけたんだ!」
「頼むわよエース!」
そして、それを察知できたのは彼らだけではなかったようだ。
裏路地から出てきたウサラパ達アクト団の3人は、目の前の道路をトラックとスコミムス、そしてエースが駆け抜けていくのを目撃したのである。
「あぁ…あぁ…ああぁ…? あいつだねー?」
「しかもあれはあのガキンチョ共の恐竜ッスよ!」
「負けてられないザンス! こっちも恐竜を出すザンス! 行くザンスよ! スピノ!」
グァギュオオオオッ!!
ノラッティ〜がブリーフから取りだしたアクトホルダーにスピノのカードをスキャンし、成体化させて召喚する。そのスピノへ、ノラッティ〜はすぐに指示を出した。
「スピノー! あいつらを追いかけるザンス!」
その言葉に従い、スピノはスコミムスとエースを追いかけていく。直線を走り抜け、コーナーを鋭く曲がり、3体の恐竜が競う様はまさにカーレースのようである。
だが、トラックを運転している漁師にはたまったものではなかった。
「なっ、何だぁ!? 3匹に増えてるじゃねぇか! 追いつかれたらおれまで食われちまう!」
そして更に強くアクセルを踏み込んだ。
やがてトラックと3体の恐竜の追跡劇は、港からでもよく見える場所に差し掛かった。
「すっげー! まるで恐竜グランプリだ!」
「後ろにいるのは…アクト団のスピノか!
でも大分疲弊してきてる…。巨大肉食恐竜だし燃費が悪いのかもしれないな」
「エースー! オバさん達のスピノに負けちゃダメよー! しっかりー!」
その間にもレックスはスコミムスが逃げないように魚をばら撒いては彼の意識を向けさせていた。
同時刻 アクト団
「キィーッ! また誰かアタシのことオバさんって言ったわねーッ!?」
「もう付き合ってられないッス…」
「ミーはノーコメント、ザンス…」
またしても「オバさん」呼びを聞き取り発狂するウサラパと、付き合ってられないといった顔でかぶりを振るエドとノラッティ〜。
しかし、そうしていられない状況が迫りつつあった。遂にスピノが疲れて立ち止まってしまったのだ。
「大変ザンス! ウサラパ様! スピノの体力が…」
「何とか先回りできないのかい!?」
するとスピノは周囲を見回してから大きく跳躍し、ビルの屋上から屋上へと飛び移り始めた。
「おぉーっ! 近道してるザンス!」
「…でも、なんかズルくないッスかね?」
「あれは頭がいいって言うんだよ♪」
引き続き漁師がトラックを走らせていると、そのすぐ前に先回りしたスピノが着陸した。慌ててハンドルを切るもののトラックは横転してしまい、レックスも投げ出されてしまう。
「うわぁっ!」
追っていたトラックが停まったことでようやく足を止めたスコミムスだったが、そこへスピノが襲いかかっていく。スコミムスも迎え討とうと身構えるものの、そこへエースが乱入してスピノに体当たりをお見舞いした。
予想外の加勢にスコミムスも困惑しているようだ。
「いいぞ! エース!」
弾き飛ばされたスピノが今度はエースへ襲いかかろうと牙を剥く。しかし疲れ切ったスピノの動きは鈍く、エースの尻尾攻撃を諸に受けてしまった。
横倒しになったスピノの首筋にエースが噛みつくと大きく振り回し…勢いがついたところで海の方へと投げ飛ばした。大きな水柱を上げながらスピノが着水し、その身をカードへと戻していく…。
「やった!…あっ! エース危ない!」
そこへすかさずスコミムスがエースに体当たりを食らわせ、大きく後退させた。
そのまま2体が睨み合っていると、突如としてスコミムスが高らかに雄叫びを上げた。それと共に彼の体を青い光が包みこんでいく。
技を使うつもりなのだ!
しかし卵カプセルにはスコミムスのカードしか入っていなかったはずなのに、何をするつもりなのだろうか。
と、そこへもう1つ影が飛び込んできた。先程水族館に現れた、スピノそっくりの帆を持つあの生き物である。
予想外の乱入者に、レックスは驚きの声を上げた。
「あれは…ディメトロドン!?」
その突然の乱入者の姿は、港からでも観察できていた。
「な、何だあれ!?」
「ペルム紀の肉食単弓類・ディメトロドンだ!
でもどうしてこんなところに…」
その時、オウガは自身のディノラウザーがオレンジの反応を示していたことに気が付いた。
「この反応…まさかあのディメトロドンは…!」
そこでスコミムスが号令のように再度吠える。するとディメトロドンの帆に水が迸り始めた。それからディメトロドンは横に倒れると強烈な横回転を始め、そのままエースに突撃していく。そして水しぶきと共に回転ノコギリのような金属音を響かせ、エースの体を切り裂く『
エースがあまりの痛みに苦悶の声を上げる。
「あぁっ! エース!」
がくりと膝をついたエースにスコミムスは素早く近寄ると、その首に噛みついた。
「エースもここに来るまでに相当体力は消費しちゃってるし、あのディメトロドンから痛い一撃ももらっちゃった…。
でも、ここで君がやらなきゃ誰がやるんだ! エース! 頑張れ!」
レックスの言葉にエースは何とか力を振り絞り、スコミムスに蹴りを入れて後退させると、雄叫びを上げた。
一方でスコミムスも持ちこたえると、その横へディメトロドンを控えるかのように立たせる。
「ここしかない! 新技で一気に決めるぞ! エース! 『
レックスがディノホルダーに技カードを通し、『
体を取り巻く灰色の光と風の中で、エースは大きく大きく息を吸い込む。そして準備ができたところで口から強力な風の渦を吐き出した。風の渦に巻き込まれたスコミムスとディメトロドンは上空へと巻き上げられ、そして地面へ落下していく。
2体は断末魔の悲鳴を上げながらそれぞれカードへと戻っていった。
「やったあ! よくやったぞエース!」
最後まで頑張ったエースを労いながら、レックスはスコミムスと技カード「
「よし! 恐竜カードに技カードもいっただき! これでまた漁ができますよ!」
彼がトラックを運転していた漁師にそう呼びかけると、漁師はまだ困惑した様子だった。
「本当に恐竜ハンターだったんだな…」
「ハンターじゃありませんよ。僕達は恐竜の味方なんです!」
「はぁ? み…味方…?」
更に困惑する漁師を横目にレックスがエースに顔を向けると、エースは顔を綻ばせてから力尽きたようにカードに戻っていった。
その頃、アクト団の3人はスピノを追って再びビーチへやって来たものの、姿を見失ってしまっていた。
「うーん…。スピノの反応が…」
「どこへ行ってしまったザンス…?」
「…あーっ! あんなところにスピノのカードが!」
ウサラパが指さす先には、海上を漂うスピノのカードがあった。これを置いて帰るわけにはいかない。3人は意を決して海へ飛び込んだのであった。
その後 漁港
戦いを終えたレックスとエースは、漁師のトラックでまた港へと戻ってきた。そんな彼を、Dキッズの仲間達が暖かく出迎える。
「レックス! エース! オレは信じてたぜ!
絶対捕まえてくれるって!」
「え〜? そうだったかしら〜?」
「リュウタはエースがスコミムスと一緒に魚食ってそうとか言ってなかったっけ?」
「そ、そんな事言ってないよ!」
「でも良かった。エースのお陰だよ」
そう言ってレックスに抱き上げられたエースは、小さく鳴いた。
そんな彼らへ、漁師は詫びの言葉を述べる。
「すまなかったな、さっきは疑ったりして…。
せめてものお詫びだ。その子達に好きなだけ魚をやるよ!」
「ガブもイナズマもパラパラもアメジストも草食なんだけど…」
「レクシィは肉食だけど…魚は食べるのかな…?
食べさせたことないんだよな…」
「いいんじゃない? 今日1番活躍したのはエースだったんだし!」
この後、エースは漁師達から貰った魚をたらふく食べてから日本へ帰っていったのだった…。
一方 アジ島
「いい加減にっ、するぞい! いつまでもそんな格好をしているから、あんなガキ共にやられてしまうんだぞい!」
工作員の3人から通信を受け取り、またしても恐竜の回収に失敗したと聞いたソーノイダは怒り狂っていた。カロリディーからの依頼で絶対に失敗できない技カード作りをするのに神経を尖らせていたので、その怒りはひとしおである。
「こっちは技カード作りで死ぬほど忙しいというのに全くもう…!
罰として! お前らは自力で帰って来るがいいぞい!」
「「「えーっ!?」」」
「ドクターそんなぁ〜…」
「殺生ザンス〜…」
3人の命乞いもほどほどにソーノイダは苛立たしげに通話を切るボタンを押した。そんな彼に後ろから声をかける者がいる。
「ドクター。今日もお食事はそこに…」
「うるさいぞい!…ぞいっ…?」
苛立ちのままにソーノイダが言葉を返したが、そこに立っていたのがタルボーンヌと知り途端に青褪めた。
その言葉にタルボーンヌは一気に不機嫌になり、食事のトレイをそのまま持ち帰ろうとする。
「そうですか。ではお食事は要らないのですね。今日はドクターの好きなドリアンの納豆和えでしたのに…」
そう言い捨てて歩み去ろうとするタルボーンヌを、ソーノイダは何とか引き留めようと追いかけるのであった。
「ぞっ…ぞい…たっ、タルボーンヌ! 待って〜!」
その後 モナコ公国 ビーチ
「いらっしゃいいらっしゃ〜い!」
「ジャパニーズデリシャスビーチサイドフード! ザーンス!」
自力で帰って来いと言われたアクト団工作員の3人は、帰りの運賃を稼ぐために焼きトウモロコシと焼きそばの屋台を開いていた。
「もうすぐで焼けるから、みんな大人しく並んで待つッスよー!」
「はいはーい! こっちももうすぐ出来上がるザンスー!」
しかもかなり繁盛しているようだ。なかなかの商才である。
そんな彼らの後ろで、ウサラパは日光浴をしていた。稼いだ金で買ったのか、いつもの服からビキニに着替えている。
「ふぃーっ、この調子ならすぐ帰れそうザンスね!」
「ダメ! カジノに行ってからよ! アタシが負けた分を取り返してからじゃないと帰れないわ!」
「ウサラパ様…カジノはもうやめてほしいッス…」
「ほら、焦がすよエド」
「あっ!…ぅあちーっ!」
黒い煙が上がりだしていた焼きトウモロコシを火から下ろそうとエドが手を伸ばしたが、あまりの熱さに空高く放り投げてしまった。焼きトウモロコシは大きく弧を描いてから落下を始め…ウサラパの胸の谷間にスッポリと嵌まった。
ウサラパもあまりの熱さに悲鳴を上げ、一刻も早く冷やそうと海の中へ飛び込んだ。
「ウサラパ様ぁーっ! 大丈夫ザンスかーっ!?」
「エドォーッ! なぁんてことするのよぉーっ!
もしアタシがお嫁に行けなくなっちゃったら、アンタのせいだからねーッ!?」
「おおお嫁ッスかぁ!? 責任取れないッスぅぅ!!」
何とか帰るための資金を稼ごうとする3人であったが、ご覧の通り大騒ぎのこの始末。
はてさてこの先、どうなりますことやら…。
今回の恐竜解説!
「今回の担当は私!古代博士だ!今回解説するのは、水辺のスナイパー『スコミムス』!
名前の意味は「ワニもどき」。これは見つかった頭骨の形がワニに似ていたことから付けられたと言われているな。
アフリカ大陸のニジェールで本種の化石が見つかったんだが、推測される全長はなんと9〜11メートル!
しかもこれでまだ亜成体だというのだから驚きだな!
将来的にはティラノサウルスやギガノトサウルス、もしかするとスピノサウルスクラスのサイズに成長した可能性も大いにあるということだ!
そしてやはり特徴として挙げられるのは、やはり名前の由来にもなった細長い頭骨だな!。これはワニ…特に魚食性のガビアルに似た構造で、歯も突き刺すためのつくりになっていたのだ。加えて、近縁のバリオニクスやスピノサウルスには魚食性を示す痕跡が見られたことから、スコミムスもまた魚食性であったと考えられているぞ!
更に背中には太い神経棘が通っていたのだ。だからスコミムスもスピノサウルスほどではないにせよ、背中に帆を背負っていた可能性もあると言われているな!」
ということで、今回はここまでです。
オリジナル技「回転帆鋸」の詳細は設定の方に追記させていただきました。
前回の後書きでも述べた通り、ディメトロドンの技に問題があると判断された場合は私までお知らせ下さい。すぐに修正致します。
さて、いよいよ次回からはDキッズアドベンチャーの前半における最大の見せ場「アジ島編」になります。
このアジ島編では、原作エピソードにおける「行くぞ!恐竜島!」と「大脱出!アクト基地!」を1つの話にまとめ、それに幕間の話も織り交ぜながら5〜6パートに分けて投稿していきたいと思います。
Dキッズやアクト団、そして秘密結社Sin-D…3者の思惑が交錯する先に待つものは…。
そして、オウガとレクシィはどうなるのか…。
ぜひ次回の『風雲アクトアイランド!』楽しみにお待ち下さい!