古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

 世界で2番目に小さな国・モナコ公国に恐竜が出現した反応を確認し、今日も今日とて現地へ赴いたDキッズとパートナー恐竜達。
 しかしエースが魚を食べてしまったことで漁師達から誤解され、船室に監禁されてしまう。
 ディノホルダーにたまたま連絡を入れてきた古代博士の口添えもあり、1匹だけとの条件付きでスコミムスと戦うことになったDキッズは、レックスとエースのコンビに任せることにする。
 グランプリかと見紛うほどの大激走の末、戦いにはディメトロドンも乱入してきたが、エースの新技『爆風大渦』でスコミムスとディメトロドンを纏めて撃破することに成功したのだった…。




第12話:風雲アクトアイランド!
Part.1


アクト団基地 アジ島

 

 ここはアジ島地下階層。

 ここでは以前からあるマシンの修復作業が行われていて、この日もその真っ只中だった。

 そのマシンを上から下へと動くリフトに乗って見ているのは、ノーピスとロトの2人である。

 ノーピスはここと自分の研究室を往復する毎日を送っているのだ。

 

「なーんだ…。まだまだダメだね…」

 

「あぁ。部品を調達しない限り完全な修理は不可能だ…」

 

「今お爺ちゃんが例のカロリディーにカードの納品をしているところだから、その報酬の10万ドルを当てにするしかなさそうだね。

まあでも…使えるシステムを入れ替えれば横移動はできそうだよ? …ほら!」

 

「…なるほど。その方法があったか…」

 

「取り敢えず移動ができるだけでも、お爺ちゃんは喜ぶと思うよ」

 

「…そうだな。助言ありがとう」

 

「どういたしまして。また分かんない事があったらいつでも呼んでよ」

 

 そう言ってロトは降りきったリフトから降りていく。その後ろ姿をノーピスは見送りながらボソリと呟く。

 

「あぁ、そうさせてもらうよ…」

 

 

その頃 アジ島外周部

 

 森の中にある池で、チビ恐竜形態のアクト恐竜達は思い思いに過ごしていた。スピノは池の魚を食べ、サイカは悠々と泳いでいる。

 そんな時、低い唸り声を聞きつけた2匹は、静かに水の中へと潜っていく。何故身を隠すようなことをしたかというと、そのすぐ近くを、ティラノが通りかかっていたのだ。しかもティラノは、何故か成体化された状態だった。

 

「エサダゾ、エサダゾ、エサダゾ、エサダゾ…」

 

 そのティラノの前を、マンガ肉を背負ったアクトロイド達が「エサダゾ」と連呼しながら走っていく。

 どうやらティラノはそれを追いかけているようだった。

 

 森林の別の場所では、ウサラパ達アクト団工作員の3人組がアクトロイド達に指示を飛ばしていた。

 

「いいかいアクトロイド共! よくお聞き!

ティラノをこのアクトカーゴに誘導して、捕獲するんだよ!」

 

「トロイド! トロイド! トロイド!」

 

「油断するんじゃないザンスよ!」

 

「トロイド! トロイド! トロイド!」

 

 ウサラパ達が何の指示を出しても、アクトロイド達は「トロイド」という声と共に変なポーズを取るだけである。本当に命令を理解しているのだろうか。

 3人もそこが不安で仕方がないようだ。

 

「トロイ、トロイって本当に大丈夫なんだろうねぇ…」

 

 その時、地響きが聞こえてきた。ティラノが接近してきているのだ。

 

「き、来たッスよ!」

 

「それっ! かかれーっ!」

 

「トロイド! トロイド! トロイド!」

 

 指示を出すもののアクトロイドは好き勝手に歩き回るだけでまともに機能できる状況ではない。そうしている間に、誘導役のアクトロイドがウサラパ達の方へ走ってくるではないか。

 

「「「ひぃーーっ!」」」

 

 ティラノから3人が逃げ惑ううちに他のアクトロイド達も集まってきた。だがどのアクトロイド達もティラノに向かうことなどはせず、3人と一緒に逃げ続けるだけだった。

 

「なーんでこうなるのぉーっ!?」

 

「お助けザーンス!」

 

「「「いやーーっ!」」」

 

 そうして追い立てられるうちに、3人はアクトロイドと共にアクトカーゴの中へ駆け込んでしまい、逆に自分たちが捕獲される羽目になってしまった。しかも周囲をティラノが徘徊し始めたため、出るに出られなくなってしまう。

 

「これじゃ逆ザンスッ!」

 

「ったく! 何がアクトロイドよ! マジにトロいロボット達だよーっ!

うるさーいっ! やかましーいっ!」

 

 トロイドトロイドとしか言わないアクトロイド達に囲まれ、苛立ちの絶頂に達したウサラパは怒りの咆哮をあげたのだった。

 

 そんな彼らを、近くの物見塔からロアが見ていた。そこへノーピスと別れたロトもやってくる。

 

「バッカみたい…」

 

「どうした?」

 

「ウサラパ達がお爺さまの作ったアクトロイドの訓練をしてたんだけど、ちっとも役に立たなくて…」

 

「お爺ちゃんの作るものは欠陥品が多いから〜…」

 

「このままじゃ使い物にならないし、直してあげれば?」

 

「…そのうちね。ボクにだってやりたいことはあるし」

 

 アクトロイドの改良にはあまり気が乗らない様子のロトであった。

 

 

 一方、Dr.ソーノイダはカロリディーに4枚の技カードを納品しているところだった。カロリディーは1枚1枚カードを確認してから、ソーノイダにジュラルミンケースを差し出す。

 

「どうぞ、ご確認下さい。お約束していた10万ドルです」

 

 その言葉を聞くやいなやソーノイダはケースを開き、中にぎっしりと詰められた米ドル札をこれまた1枚1枚確認していく。きちんと10万ドル、それも本物であることを確認したところで、ソーノイダはゆっくりとケースを閉めた。

 

「…うむ。確かに受け取った。これで取引は成立じゃぞい」

 

「この度はどうもありがとうございました。

これで私共の恐竜は更なるパワーアップを果たすことができます。

更に報酬は弾みますので、もし可能であれば次もまたお願いしたいのですが…」

 

「まあ、その時が来れば…やってやるぞい」

 

「それは良かったです。それでは、私共はここの皆さんにご挨拶をしてから帰ろうかと思います。

返す返すにはなりますが、この度は本当にお世話になりました…」

 

 そう言うとカロリディーは立ち上がり、後ろに待機させていたジェイソンとイシドーラを伴ってソーノイダの研究室から出ていった。彼らの姿が扉の向こうへ消えたところでソーノイダはジュラルミンケースに顔を寄せ、頬をすりつけた。

 

「ふぃ〜…疲れたぞい…。いつもの研究とは違って失敗できぬ場面の繰り返し…。

ここまで苦労したのも、全てこの10万ドルのためぞい。これでようやく、マシンの修復へ向けて大きく前進することができるぞい…」

 

 それからソーノイダはジュラルミンケースを丁重に金庫へしまうと、代わりにカードを机の上へ並べた。

 …とは言っても、その中の恐竜カードはスピノやサイカ以外だと、カスモサウルスとアロサウルスだけなのだが。

 

「グフフ…ぼくちゃんのカード! 嬉しいぞい!

仕事も一段落したところで、ようやくこの恐竜達に手入れをすることができるぞい!」

 

 そう言うとソーノイダはカスモサウルスのカードを手に取り、あのアクトコントローラーにセットした。

 

「グフフ…カスモサウルスちゃーん! これで言うことを聞く賢い恐竜になれたでしゅぞい! 良かったでしゅぞいね〜…チュッ!」

 

 赤ん坊に話しかけるかのようにカードに語りかけ、最後に軽くキスをしてからソーノイダは机の方へと戻っていった。

 

「さーて、次はどの子にするぞいでしゅかねぇ〜?

Dr.ソーノイダのー…スーパーイリュージョン! なーんつってぞーい!…ありゃりゃ~? ぞぞーい…ぞい!」

 

 あまりに気分が昂ぶりすぎたのか、ソーノイダはカードで遊び始めたが、手元が狂ってカードを床に散らばしてしまった。

 そこへ間が悪いことに掃除機を片手にタルボーンヌが近寄ってくる。このままではせっかく集めたカードが掃除機に吸い込まれてしまう。

 

「あっ! ぼくちゃんのカード! ダメダメぞい!」

 

 カードを掃除機から守るように飛びついたソーノイダだが、代わりに自分の頭が掃除機へ吸い込まれてしまった。

 

「んぎゃあぁ〜!」

 

「ドクター! またこんなに散らかして!」

 

「こ…こりゃっ! 何をするぞい! これは大事なカードなんだぞい…フゴゴゴ…」

 

「大事ならちゃんと片付けなければいけないでしょう!」

 

 ソーノイダが頭から体へと、次々に掃除機に吸い込まれていく。一体どんな構造になっているのだろうか。

 そしてその状況になっても掃除機を一度も止めようとしないタルボーンヌもまた実に恐ろしい。

 そんなカオスな状況の中、ソーノイダの手から1枚のカードが落ちる。それは掃除機の排気口から出る風に当たり、みるみるうちに実体化していった。

 灰色の光に包まれて姿を現したのは、ジュラ紀の王・アロサウルスだった。目覚めたアロサウルスは、タルボーンヌの背後で雄叫びを上げるのだった…。

 

 

その少し前 三畳市 Dラボ

 

 この日、Dキッズのメンバーはそれぞれのパートナー恐竜達と一緒にDラボへ遊びに来ていた。そんな中、オウガはちょうどDラボに来ていたオーウェンに、最近のレクシィについて話をしていた。

 

「…なるほど。レクシィが成体状態でカードから出てきてくれないのか」

 

「どういうことなのか、どうすればいいのか分からないんです。俺の何が問題だったんでしょうか…」

 

「ふーむ…つかぬことを聞くようだが、君のレクシィはそのデバイスのスキャン機構を使わなくても自由に出入りすることができたりするのかな?」

 

「…そういえば、カンボジアに行った辺りから既に好きな時に出てきたり戻ったりしていました。

特に成体化状態で戦闘が終わった後は、いつも自分からカードに戻っていってたんですよね」

 

「なるほど…。これはあくまでオレの予測に過ぎないんだが…もしかするとレクシィはアンバーの支配から抜け出そうとしているのかもしれないな…」

 

「支配…から?」

 

 オウガがそうオウム返しに尋ねると、オーウェンは頷いた。

 

「アンバーと契約すれば契約者は恐竜から危害を加えられない…という規則があるらしいのだがな。それを知り合いのとある数学者に話したら鼻で笑われたよ。その上でこう言われた。『生命は必ず、道を見つける』ってね。

つまりレクシィは道を見つけるため…アンバーの支配から逃れる方法を見つけ出すために色々と試しているのだと考えることもできないか?」

 

「そう、なんでしょうか…」

 

「勿論確証はない。しかし最初に君へ話した通り、レクシィは強く人間を憎んでいるようだからな。

もしかすると人間の下につくのは我慢ならないと思っているのかもしれないな」

 

「そ、そんな…! 俺はレクシィを下に見てなんか…。

むしろアメジストに対しても、俺自身と対等になるように接してきたつもりだったのに…」

 

「君はそうしていたつもりでも、レクシィはそう受け取っていなかった可能性もある。オレ達人間と彼ら恐竜だと価値観も違うからな」

 

 オーウェンの言葉を聞き、オウガは項垂れてしまった。

 自分がやってきたことは全部無駄だったんだろうか?

 レクシィの気持ちを逆撫でしているだけだったんだろうか?

 …このまま、レクシィとパートナー関係を継続することは彼女のことを考えればやめた方がいいんだろうか?

 そんなことを考えているうちに、オウガは自分の心が何か黒いものに覆われていくような陰鬱とした感覚に陥っていく。そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、オーウェンは言葉を続けた。

 

「…まあ、これはあくまで憶測の話だ。さっきも言っただろ? オレ達人間と恐竜じゃ持っている価値観が違う。ということはオレが今言ったことが全くの的外れな可能性もあるってことだ。

何とかレクシィが君に本心を明かしてくれればどうなのかも分かるんだが…。

…そうだ! 今日ここに来たのは君にそんな厳しいことを言うためじゃなかったんだ」

 

 そう言うと、オーウェンは1枚のカードをオウガに差し出した。見ると、土属性の技カードのようだ。

 

「以前カンボジアで保護したステゴサウルスがいただろ? そいつをサンクチュアリに連れ帰って様子を見ていたんだが、いつの間にかこの技カードを持っていたみたいなんだ。一体どこに隠し持っていたのかは分からないが…できれば是非君とアメジストに使ってもらいたいんだ」

 

「そうなんですか? ありがとうございます…」

 

「念の為リアスさんにも分析してもらったんだが、かなり強力な技カードらしい。その代わりエネルギーの消費も激しいそうだから使い所には気をつけた方がいいだろうな。

…オレが言えた口じゃないかもしれないが、あまり深刻に考えすぎるなよ。君とレクシィは間違いなくいいコンビなんだ。それは確信してるよ」

 

「はい…。相談に乗っていただいて…あと、技カードもありがとうございました…」

 

 オウガはゆっくり立ち上がると、レクシィが寝ている椅子の側に座り、彼女に小さな声で何かを話しかけているようだった。しかし、レクシィは特に反応を示していない。

 そこへリアスがやってくるとオーウェンに話しかけた。

 

「オーウェンさん。私が口を挟めることではないかもしれませんが…少し、厳しすぎるんじゃないですか?」

 

「オレだってこんな厳しいことを言いたくはないさ。

でも、ここが彼とレクシィの今後を考える上での分水嶺なんだ。何とか乗り切ってもらわなきゃいけない。

でないと…」

 

 そこで一度言葉を切ってから、オーウェンはこう続ける。

 

「アンバーが、彼との契約を破棄する可能性も出てくるだろうからな…」

 

 その頃、Dラボの別の場所で、リュウタはガブやイナズマと共に追いかけっこをして遊んでいた。

 

「アハハハ! ハハハ! ガブ〜! イナズマ〜! こっちだぞ〜!」

 

 追いかけてくるガブやイナズマの方を向きながらリュウタが後ろ歩きをしていると、何かにぶつかってしまった。そのはずみでディスクが落ちてしまい、そこへ間が悪く通りかかった自動掃除機がそのディスクを轢いてしまう。

 

「あぁ…。やっちまった…」

 

 とんでもないことをしてしまったと青褪めるリュウタだが、そこへ父である古代博士の声が聞こえてくる。

 

「リュウター! そこに今度の学会で使う資料データのディスクが…」

 

 そう言いかけたところで、古代博士は下に落ちていた壊れたディスクを目の当たりにしてしまう。

 

「あーっ!」

 

「あ、あーそれは…ガブとイナズマがガブガブやっちゃって…やっちゃって…」

 

 ディスクを拾い上げた古代博士は、これまでよく見せていたひょうきんな顔が嘘のように怖い表情になっていた。

 

『ガブぅ?』

 

『ゴロロ?』

 

 その後、リュウタは古代博士に研究室へと連れて行かれ、そこで説教を受けていた。

 

「…だから謝ってるじゃんか…」

 

「謝ればいいってもんじゃない!」

 

「でも大事なデータはバックアップしてたんでしょ?」

 

「父さんが怒ってるのはそこじゃない。ディスクを壊してしまったならすぐ素直に謝ればそれで良かったんだ。なのにお前がガブとイナズマのせいにしたから、父さんは怒っているんだ。

謝りたいというのなら謝る先が違う! まずはガブとイナズマに謝れ!」

 

「あ…うう…」

 

 古代博士から叱りつけられ、リュウタは足元のガブとイナズマを見つめる。2匹は今の状況をよく理解できていないのか、目をパチクリとさせているだけだった。そんな2匹を抱きしめ、リュウタは謝罪の言葉を口にした。

 

「ガブ…イナズマ…ごめんよ。お前達のせいにして…」

 

「…とにかく、罰として3日間Dラボのトイレ掃除をするように!」

 

「そ、そんなぁ!」

 

 

 …と、いう話をオウガ達3人はリュウタから聞かされていた。当のリュウタは今ブラシで大便器を磨いているところである。

 

「…ふーん、それでトイレ掃除か…」

 

「ったく! 父さんったら酷いと思わないか? 何でこんなことしなきゃいけないんだよ…」

 

「すぐに謝らなかったリュウタが悪いんでしょ?」

 

「それにガブやイナズマのせいにしたのが1番良くなかったと俺は思うよ。

特にイナズマはリュウタの力になりたいって言って付いてきてくれたのに、その信頼を裏切るようなことをしたから古代博士はあんなに怒ったんじゃないかな」

 

「そうだよ。そうやって君が間違った時は叱ってくれる父さんがいてくれて幸せじゃないか?」

 

「何だよそれ! 意味分かんねぇ!

手伝ってくれないなら、邪魔だから向こう行ってろよ!」

 

 反省どころかDキッズの仲間に逆ギレするかのような言動を見せるリュウタに、3人は呆れの視線を向けた。

 そこへ遊んでいたガブにエース、パラパラ、イナズマ、アメジストがやって来る。彼らは遊んでいるうちにガブがリュウタへと突撃していってしまった。リュウタが派手にすっ転び、掃除用バケツに入っていた水を頭から被ってしまう。

 

「うわっ!?…ガブ! 何やってんだよーっ!」

 

 リュウタが自分の身に降りかかってきた理不尽に耐えられずそう叫んだ時、彼らのディノホルダーやディノラウザーが通知音を鳴らし始めた。今日も今日とて、恐竜が現れたのだ。

 それを確認した4人は、すぐさまテレポートルームへと向かったのだった。

 

「反応は太平洋の中央部から出ているようね…」

 

「またハワイなの?」

 

「いいえ、ハワイじゃないわ。でも…ここは…」

 

そう呟きながらタイピングを続けるリアス。

と、そこへ古代博士がやって来た。どこか怒っている様子である。

 

「リュウタ! トイレの掃除はどうなってるんだ! トイレが水浸しだったぞ!」

 

「それどころじゃないんだ! また恐竜が現れたんだって!」

 

「なぬっ!?」

 

「じゃあ早速行ってくるよ!」

 

 そう言うが早いかリュウタはテレポート台に乗ると、すぐさまテレポートを発動した。よほどトイレ掃除から逃れたかったようだ。

 それに続いてレックスとマルム、最後にオウガがテレポートしていく。

 

「あっ! 待って…」

 

 リアスが引き留めようとしたものの、最後にテレポートしようとしたオウガが気付いただけで既にDキッズは全員テレポートを完了してしまった。

 

「どうしたんだリアス君!」

 

「何度も調べてみたんですが…太平洋のあんな場所に島なんてないんです!」

 

「なっ…何だって!?」

 

 

太平洋の島

 

 Dキッズ達がテレポートしてきた先は、いかにも南国の森林地帯といった感じのエキゾチックな風景だった。ただ1つ違うのは、到着した時から既にバトルフィールドが展開されていたところだった。

 

「なっ…? これはバトルフィールド!」

 

「ってことはアクト団がもう来てるのか!でもいつにも増して早いな…」

 

「なあ3人とも。さっきリアスさんが俺達を引き留めようと声をかけてたんだけど…」

 

「お姉ちゃんが?」

 

「うん。それにテレポートしていきなりバトルフィールドが展開されてるなんておかしいよ。

ここは一度Dラボに帰った方がいいんじゃ…」

 

 その時、近くから恐竜が争う音が聞こえてきた。

 

「取り敢えずそれは今はいいだろ! 早く恐竜を助けに行こうぜ!」

 

 そう言うとリュウタが走り出す。そこへレックスとマルムも付いていき、オウガも不承不承といった感じでついていった。音の方へ近づくと、そこではアロサウルスがアクト恐竜達に3体がかりで袋叩きにしていた。もうアロサウルスはフラフラで、立っているのもやっとという状態である。

 そこへティラノが走り寄ると、追い討ちの『テイルスマッシュ』をお見舞いした。

 

「アロサウルスがやられてる! くっそー、アクト団の奴ら…」

 

「待て! リュウタ! あれを…」

 

 そう言ってレックスが指さした先にいたのは、いつもの3人だけではなかった。Dr.ソーノイダやロトロア兄妹と、ノーピス以外のアクト団メンバーが揃い踏みだったのである。

 

「誰だろう…。いつもの3人以外は見たことがない人ばかりだな…」

 

「子供までいるわ!」

 

 そう言うなりマルムはゴーグルに内蔵されたカメラ機能でソーノイダやロトロア兄妹を撮影し、更に彼らの様子を詳しく観察する。

 そんな中、ソーノイダがアクトホルダーに技カードを通してティラノに技を使わせる瞬間を目撃した。

 

「あーっ!」

 

 すると赤い光に包まれたティラノはアロサウルスを掬い投げ、落ちてきたところを尻尾で打ち据える『ネッククラッシャー』を発動した。アロサウルスは吹き飛んでいくとそのままカードに変わり、風に乗ってどこかへと飛んでいく…。

 

「わはははは! やったぞい! 流石は我が泣く子も黙るワシのアクト恐竜ぞい!」

 

 高笑いをするソーノイダの後ろでは、工作員の3人が万歳三唱をしている。そんな調子に乗りまくったソーノイダへ、飛んでいくカードを指さしながらロアが話しかけた。

 

「でもお爺さま、肝心のカードが飛んじゃったわよ?」

 

「…ウスラバカ! 何をボーっとしとるぞい! ワシのカードを回収してこんかぞい!」

 

 すぐさまソーノイダは横の工作員3人に指示を飛ばす。それにいち早く反応したのはウサラパだった。

 

「はぁーい! ただいまー!

…オルルァ、とっとと行ってこんかい…!」

 

 更にウサラパはエドとノラッティ〜に取ってくるよう指示を与えた。

 

「「えぇ〜…」」

 

「ミー達ザンスか?」

 

「…ぶつよ?」

 

「「ヘイヘイホー…」」

 

 不平を述べる2人だったが、ウサラパに脅され、力なく項垂れながらカードの回収へと向かったのであった。

 

「ふぃーっ…ったく人使い荒いザンスねぇ…」

 

 そうボヤきながら2人がアロサウルスのカードのもとへ歩いていると、目と鼻の先でそのカードを拾い上げた人間がいた。レックスである。

 

「「あーっ! お前はーっ!?」」

 

「ヤバい! 逃げろ!」

 

 その声にレックスだけではなく、近くの茂みに隠れていた他のDキッズメンバーも飛び出して逃げていく。

 しかし、驚いたのは彼らだけではない。エドとノラッティ〜も驚いていたのだ。

 

「な、何でガキ共がここにいるザンスか!?」

 

「もしかしたらおれ達の基地がここにあることに気づいて、攻め込んできたんじゃ…」

 

「た、大変ザンス! すぐウサラパ様に報告ザンス!」

 

「そうッスね!」

 

 そして2人はソーノイダ達のところへ蜻蛉返りしていった。

 

「ウサラパ様ー!」

 

「ソーノイダ様ー! 大変ザンスよー!」

 

「どうしたのよ2人とも慌てて…」

 

「あのガキ共がこの島にいたザンス!」

 

「きっとおれ達の基地に気づいて攻め込んできたんスよ!」

 

「な、なんじゃとぞい!? そいつらはどこにおったのだぞい!?」

 

「こっちザンス!」

 

 

 その頃、Dキッズ達は少しでも遠くへ行こうと各々のパートナー恐竜を抱えて走っていた。そんな彼らの後ろから、成体のティラノが猛追してくるではないか。

 成体のティラノの走る速度はよくママチャリ位だとバカにされがちだが、その程度の速度でも未舗装の道なら殆どの人間は逃げ切れないのである。

 

「来たわ!」

 

「このままだと追いつかれるぞ!」

 

「うわぁぁぁぁ…がっ!?」

 

 その時、後ろを振り返りながら走っていたリュウタが目の前の木に気づかずに激突してしまった。

 

「バカ! 何やってんだよ!」

 

「いってぇ…鼻血出そう…」

 

 更に悪いことに、ティラノの後ろからスピノとサイカも加勢してきているではないか。

 

「まずい…。これ以上走って逃げるのは無理だ!」

 

「あっ…ここなら! みんな! こっちへ!」

 

 そこで、マルムが通気口を指し示した。人1人なら通れそうな広さがありそうである。そこへマルム、レックス、オウガ、リュウタの順で飛び込んでいく。

 そしてリュウタが飛び込んだ直後にティラノが通気口に激突して壊してしまう。よほど痛かったのか鼻先を短い手で抑えようとしている。

 そして通気口がなくなったところには、ぽっかりと穴が空いていたのだった。

 

 その頃、Dキッズ達は通気口の中を滑り台のように滑り落ちていっていた。やがて彼らは出口へと到達し、そこからどこかの建物の内部へと排出された。

 

「キャッ!?」

 

「クッ!」

 

「グハッ!?」

 

「ギャッ! いってぇ…」

 

 リュウタ以外は尻から着地したが、リュウタだけは仰向けで落下し、潰れたカエルのような声を上げた。何とか窮地は脱したものの、まだ危ない状況であることに変わりはなかった。

 

 

その後 地上

 

「トロイド、トロイド、トロイド、トロイド…」

 

 ティラノらアクト恐竜に追いついたソーノイダ達は、Dキッズ達が逃げていった通気口にアクトロイド達を投入していた。

 アクトロイドが全部入っていったところで、ウサラパが暇そうにしていたチビ形態のアクト恐竜達に指示を飛ばす。

 

「ほら、お前達も行くんだよぉ!」

 

「しっかりガキ共を捕まえてくるザンス!」

 

 続けてアクト恐竜達も通気口へ飛び込むものの、一斉に飛び込もうとしたので詰まってしまった。実に間抜けな構図である。

 だが、ウサラパ達が他人事でいられたのもここまでだった。

 

「バカタレーッ! お前らもぞい! ぞい! ぞい!」

 

 すっかり油断していた工作員の3人組もソーノイダの足によって通気口へ蹴り入れられてしまう。ちなみにアクト恐竜達の詰まりはウサラパが蹴り入れられた時に一緒に解消され、3人と3匹は諸共に通気口を滑り落ちていったのであった…。

 

 

その頃 アジ島内部 ノーピスの研究室

 

 この時、ノーピスの研究室にはノーピスだけではなくカロリディー達『Sin-D』の3人組がいた。わざわざ他のアクト団員に挨拶をしてから帰る、とカロリディーが言ったのは、誰にも不審がられることなくノーピスと会うための方便だったのだ。

 

「それで…『弐撃必殺』のカードが出来上がったとお聞きしたのですが…」

 

「慌てるな。まずは後払いの75万ドルを見せてもらおう」

 

 ノーピスの言葉に応じ、カロリディーはジェイソンからもう1つのジュラルミンケースを受け取ると、静かに机の上に置いた。すぐさまノーピスがケースを開いて中を確認する…。

 偽造の痕跡のような不審な点もなく、紛れもなく全て本物の米ドル紙幣だった。

 それを確認できたところで、ノーピスは金属製の小箱に入れたカードを差し出した。

 

「では、これを」

 

 その言葉にカロリディーが興奮しながら小箱を開くと、中には1枚のカードが入っていた。

 

「そのカードが、あんたの求めていたものだ。

技の内容としては、黒い炎を吐き出して相手に纏わりつかせる。その後何でもいいから相手に攻撃を当てればその炎が一斉に炸裂し、致命的なダメージを与えるというものだ」

 

「素晴らしい…。これこそ私の最強の肉食恐竜に相応しい技ですよ…。それで、技名はあるのですか?」

 

「いや、作ったばかりだから特に考えていない。

あんたが好きな名前を付けてやればいいだろう」

 

「なるほど。ならば今から考えましょう…」

 

 そう言うとカロリディーはしばらく考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。

 

「…では、『終焉冥火(エンドオブバーン)』と名付けましょう。

文字通り相手に終焉をもたらす冥府の炎…というイメージですよ」

 

「…好きにすればいい」

 

 と、その時ノーピスのモニターに通信が入った。通話相手はソーノイダであるようだ。

 

「失礼。…ノーピスです。どうしましたドクター?」

 

『ノーピス! 一大事じゃぞい! アジ島にあのガキ共が乗り込んできたのだぞい!』

 

「なんと…。それは確かに一大事ですね。それで侵入者はどこへ?」

 

『通気口から基地の内部へと入り込んだようじゃぞい!

ノーピス! お前はマシンに繋がる通路を塞げ! 絶対に奴らをそこへ入れるでないぞい!』

 

「了解しました。…む?」

 

 と、それまで映らない場所に移動していたカロリディー達がカメラの前に姿を現した。

 

「ご機嫌麗しゅうございます。Dr.ソーノイダ」

 

『おっ、お主はカロリディー! 何故ノーピスの研究室におるのじゃぞい!?』

 

「先程も申し上げた通り、アクト団員の皆様にご挨拶を、と思いまして…。ちょうど今ノーピス殿のお部屋にお邪魔させていただいていたのですよ。

どうやら島に侵入者が現れたようですね。よろしければ私共もお手伝い致しましょうか?」

 

『ぬう…。しかし…』

 

「貴方にカードを作っていただいたその恩返しだと思っていただければ良いのです。

私の部下であるホスキンスとミルズも捜索に協力いたしますよ」

 

『そ、そうは言ってもお主らは石版なぞ持っとらんではないかぞい! どうやって奴らの恐竜に対抗するつもりぞい!?』

 

「…ご心配なく。我々に石版はありませんが…この、ジュラシック・アンバーがありますから」

 

 そう言うと、カロリディーら3人はそれぞれのアンバーを見せつけた。

 ジェイソンはベルトのバックル、イシドーラは胸のカフスピン、そしてカロリディーは指輪にアンバーを嵌め込んでいた。

 

「これまで説明できておりませんでしたが…我々はこのアンバーの力で恐竜を実体化させることができるのです。ですから問題なく戦えますよ」

 

『なっ…何じゃと…? 石版以外にも…その琥珀で恐竜の召喚ができると言うのかぞい…?』

 

「その通りです。もし手が必要でしたら、私共がご協力致しましょう。…ですが…」

 

『…何ぞい?』

 

「その子供らの中に、私と同じくアンバーを持った、ティラノサウルス使いの子供がいるはずです。その相手は私にさせていただきたい」

 

『それは別に構わんが…どうしてぞい?』

 

 ソーノイダからそう問いかけられると、カロリディーはあの…歓喜と怨嗟が入り混じったような醜悪な笑みを浮かべた。

 

「ティラノサウルスなど私の…ギガノトサウルスの足元にも及ばない弱小恐竜であることを、その子供に思い知らせなければならないと思いましてね…」

 

 




今回はここまでです。
アジ島編は、まだまだ始まったばかりです。
ぜひ次回以降もご期待下さい!
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