古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回はPart.2になります。
引き続き、『風雲アクトアイランド!』をお楽しみ下さい。


Part.2

その頃 Dキッズ達は…

 

 図らずもアジ島の内部に入ってしまったDキッズの4人は、壁に描かれたアクト団のロゴを見つけたようだ。

 

「見ろよ…。アクト団のマークだ!」

 

「じゃあ、ここは…」

 

「ええ、ひょっとすると…」

 

「奴ら…アクト団の基地なんだ!」

 

「まさかさっきのアロサウルスも、俺達を誘き出すための罠だったのか…?」

 

「いや、相手も驚いてたからその線は薄い。

多分奴らとしても僕達がここに現れたのは想定外だったんだろう…」

 

 そうレックスが話していると、彼らの頭上…先程滑り落ちてきた通気口から何かの声が聞こえてくる。

 

「…トロイド、トロイド、トロイド…」

 

「まずい! あいつらが来るぞ!」

 

 レックスの言葉にDキッズ達が弾けるようにその場から離れ、近くの扉をこじ開けようと引っ張る。しかし、ロックがかけられているのか押しても引いても上げてもドアはびくともしなかった。

 

「ダメだーっ…! 開かないぞー…」

 

「どうなってるの…?」

 

「きっとロックがかけられているんだ。こういう時はキーパッドで暗号を入れたり、カードキーとかで開けるものだけど…。

それらしい構造はついてないね…」

 

「くそーっ、こういう時は…開けーっゴマっ!」

 

 最早やけくそといった様子で、リュウタがありがちな「扉を開く合言葉」を口走る。

 

「バカ…」

 

「アラビアンナイトじゃないんだから…」

 

 レックスとオウガは呆れるものの、唐突に目の前の扉が開いてしまった。本当に「開けゴマ」が合言葉だったらしい。

 

「あっ、開いたわ」

 

「いやったーっ!」

 

「まさか本当に開くなんて…」

 

「どういうことなの…」

 

 そのようにDキッズのそれぞれが喜んだり困惑している中、先程彼らが出てきた通気口からはアクトロイド達がどんどん降り積もっていっていた。そのうちの1体が彼らに飛びかかってくるではないか。

 素早くDキッズが先へ進むと、扉はすぐに閉まった。その直後に扉から轟音が聞こえたが、これはアクトロイドが扉に突撃した時の音だった。

 

「あいつら追ってこないぞ!」

 

「どうやらあそこの扉を通るためには、逐一合言葉を言わないとダメみたいだね!」

 

 そこで、マルムが不安そうな表情でDキッズの仲間達に呼びかけた。

 

「ねぇ、このままじゃまずいわよ! 恐竜カードは回収したんだし、もう帰りましょうよ!」

 

「俺も同感だよ。ここが本当に奴らの基地なら地の利は向こうにある。このままだと遅かれ早かれ追い詰められるよ!」

 

「あぁ、戻ってここがアクト団の基地だと博士に報告しよう!」

 

 マルムの提言にオウガとレックスも賛同するが、そこへ待ったをかけたのがリュウタだった。

 

「何言ってんだよ! 報告ならディノホルダーでもできるだろ!

それより奴らが何者なのか調べるいいチャンスじゃないか!」

 

「でも戻ってからまた来てもいいじゃない…」

 

「その時奴らはもうここから逃げてるかもしれないぞ! 他にもアジトがあるかもしれないし…」

 

「…そうだな」

 

リュウタの提案にレックスも乗ることにしたようだ。

さらにリュウタは続ける。

 

「それに、奴らがいつもどうやってオレ達より先に恐竜の場所に到達できているのかを調べてリアスさんに報告すれば、奴らより更に早く恐竜を探知できるようになるかもしれないぞ!」

 

「確かにそれについて調査できれば、かなりのアドバンテージを得られるかも…」

 

「言われてみれば、それもそうね…」

 

 更にオウガとマルムもリュウタの提案に賛成する。

 実際のところアクト団がいつも先に恐竜のところへ到達できているのは、天才科学者Dr.ソーノイダの科学の風上にもおけないオカルト技「恐竜の骨占い」のお陰なのだが、そんなことをDキッズ達は知る由もない。

 

 かくして、Dキッズはすぐには帰還せず、アクト団の基地の中で情報収集をするというあまりに無謀な行為をすることにしたのだった。

 

(それに、トイレ掃除なんかよりこっちの方が楽しそうだしね…)

 

 そんなことを考えるリュウタの顔に、思わず笑みが浮かぶ。

 どうやら調査というのは建前で、帰らずにトイレ掃除から逃れようというのが本音のようだった。

 

「何がおかしいのー?」

 

「いや、別にー!」

 

 

その頃 先程Dキッズが開けた扉の前では…

 

「トロイッド、トロイッド、トロイッ…ドォー!」

 

「トロイッド、トロイッド、トロイッ…ドォー!」

 

 アクトロイド達がDキッズの通っていった扉の先へ行こうとしているものの、扉を開けられずにどんどん積み重なっていく。

 そんな無様な光景を見て、さすがのウサラパも呆れ顔だ。

 

「ちょっとおどき! 本当にトロいよお前達は!

ここを開けるには確かー…開けー、コマ!」

 

 ウサラパが扉の前で合言葉を喋るものの扉は開く気配がない。合言葉は「ゴマ」なのでコマで開かないのは当然であった。

 

「あら…?」

 

「違うザンス! 開けーコンブ! ザンス!」

 

「違うッス! 確かゴマコンブだったッス!」

 

「何言ってんだい! ゴマコンブより梅じそだろぉ?」

 

「梅じそよりやっぱりミーはおかかがいいザンス!」

 

「おにぎりは梅じそだよ絶対!」

 

 いつの間にか話題が合言葉からおにぎりの具へと移ってしまっていた。やはり彼ら3人もアクトロイドほどではないが頼りにならないと分かる図式である。

 

「あのー…おにぎりの話してていいんスかね?」

 

「「え…」」

 

 エドが話を元に戻そうとすると、ウサラパとノラッティ〜は呆気にとられたような顔をした。

 

「っていうか! そもそもお前がひらけゴマとかコンブとか言うから…」

 

 そうウサラパが口にしたところで、扉が開いた。たまたまではあったものの正解の「開けゴマ」を言ったためである。

 

「あら、開いちゃったよ…。

ほら! 何をボサっとしてるんだい! さっさのあのガキンチョ共を探しに…」

 

 そう言いかけた時だった。

 廊下の先で待機していたアクトロイド達が入り口へ殺到したのである。

 アクト恐竜達は先へ進んでいたため難を逃れたが、その場に残っていた3人はそうはいかない。

 

「「「ギャーーッ!?」」」

 

 彼ら3人を踏みつけながらアクトロイドが通り過ぎていく。ようやくアクトロイドが全ていなくなった時、そこにはかつて万里の長城でそうだったようにペチャンコになった3人の姿があった。

 

「…何でアタシ達がこんな目に遭わなきゃいけないのよ…」

 

「まったくザンス…」

 

 とは言えこのままここで横になっていてもソーノイダに叱られるだけである。3人は何とか起き上がると、扉の先へ進んでいくのであった。

 通路のあちこちでアクトロイド達が調べながら進行しており、その中にチビ恐竜達もいる。しかしティラノはあくびをしながら歩き回っており、スピノは地面を平泳ぎのように這っていて、どちらも真剣に探しているようには見えない。

 しかし、サイカだけは何故か執拗に小さなシャッターを嗅ぎ続けていた。

 

「まったくあのガキンチョ共…捕まえたら絶対に泣かせまくってやるから!」

 

 そう言いつつウサラパ達3人が足音荒く廊下を歩いていく。その場に残されたサイカは何かを伝えるかのように3人へ吠えたが、結局は彼らの後に付いていった。

 そう、サイカだけは気づいていたのだ。そのシャッターの中にDキッズ達が潜んでいることに。

 彼らの足音が遠ざかっていったところで、Dキッズは示し合わせてからディノホルダーやディノラウザーを手に取った。

 

「…行ったな」

 

「今のうちに…!」

 

 そしてリュウタはディノホルダーの通信機能を使い、Dラボとの通信を試みたのである。

 

 

Dラボ

 

「なぬうっ!? アクト団のアジトだってぇ!?」

 

 Dキッズを心配していた古代博士とリアスのもとへリュウタからの通信が入ってきたので応答したところ、そこで彼らは初めてDキッズがアジ島にいることを知ったのであった。

 

「そうなんだ。オレ達奴らのことを調べてから帰るから…」

 

「何言ってる! 危ないからすぐに…」

 

 古代博士がそう言いかけた時だった。突然画面にノイズが走ったかと思うと、ディノホルダー側の接続が切れてしまったのだ。

 

「っておい! あぁっ…」

 

「博士! 妨害電波です! 何者かに通信を強制的に遮断されました!」

 

「何ッ!?…リュウタ…!」

 

 敵の本拠地の真っ只中にいる息子達と連絡が取れなくなってしまい、古代博士はいつになく不安そうな声を上げるのであった…。

 

 

アジ島

 

 その頃、アジ島上空では突如として赤黒い電撃が走り、やがて消えていった。これがロトの機転で起動された妨害電波である。

 

「…よし。島から発された電波は遮断したよ」

 

「電波の発信源はどこじゃぞい?」

 

「うん、ちょっと待ってて…」

 

 

 一方、突然ディノホルダーの接続が切れたことに、Dキッズは困惑していた。

 

「おかしいなぁ…。壊れたのか?」

 

「いや、それにしてはタイミングが悪すぎると思うんだけど…」

 

「もしかして…妨害電波かもしれないぞ。

リュウタ! 電波を消すんだ。逆探知されてるかも…」

 

「えぇっ!?」

 

 リュウタも事の重大さに気づき、すぐにディノホルダーの通信を切ったのだった。

 

 

 一方、ソーノイダやロトロア兄妹も、Dキッズの動きを捉える前に通信が切られたことを把握していた。

 

「あっ、切られた」

 

「なぬぅっ!? おのれ、悟られたかぞい…。妙なところで鋭い、ナマイキなガキンチョめ…。

それにしても、ウサラパ共はどこで何をしておるのだぞい! 追っているのではなかったのかぞい!」

 

「あの人達あんまりアテにできないわよ~?

カロリディーさん達にも情報共有しなきゃいけないのに、ホント頼りにならないんだから…」

 

「ズビズバッとぞい…ロア…。泣く子も黙るアクト団の総本部にガキンチョが侵入しておるのに、姿すら捉えることができんとは何と情けないことぞい…」

 

 悔しさに拳を震わせるソーノイダに、ロトは何か一計があるような表情で話しかけた。

 

「お爺ちゃん、心配いらないよ。誘き出す手段はあるからさ」

 

「ホントかぞい!?」

 

「うん。今から言うものを用意してきてほしいんだ…」

 

 そう言うと、ロトはソーノイダの耳元で何かをヒソヒソと囁き始め。それを聞いているソーノイダはうんうんと納得したように頷き、にんまりと笑顔を浮かべたのであった。

 

 

 その頃、Dキッズ達はシャッターから廊下へ出て、警戒しながら先へ進むことにしたようだった。

 今はマルムが曲がり角の先を伺い、安全かどうかを確かめている。

 

「…誰もいないわ。

早くここから移動しましょう? あのオバさんに見つからないうちに…」

 

 ついいつものクセで、マルムがウサラパのことをオバさんと呼んだ瞬間であった。

 何か震動が近づいてくる。

 そちらを見ると、ウサラパが尋常ならざる速度でこちらへ走り寄ってこようとしているではないか。

 

「…聞こえたわよぉぉ誰がオバさんよぉぉぉぉ!!!」

 

その表情は、般若も裸足で逃げださんばかりの憤怒で染まっていた。

 

「うわぁぁぁっ! 見つかったぁぁ!」

 

「マジで地獄耳が過ぎないかこの人!?」

 

「!こっちだ!」

 

 レックスの誘導でDキッズは間一髪すぐそばの部屋へ入ることができたのだが、そんなことで諦めるウサラパではない。

 何度かドアに体当たりをしてから齧りつき、地獄の底から響くような声で叫んだ。

 

「開けろガキンチョ共ぉぉぉぉ!!!」

 

「ハァ…ハァ…なんて勢いザンスか…」

 

「オバさんパワーはすごいッス…」

 

「なんだとぉ…!」

 

 何とか後を追ってきたノラッティ〜とエドがそう言うと、ウサラパの怒りの矛先がそちらへと向いた。渾身のげんこつが2人の頭へ振るわれ、大きなたんこぶを作る。

 それで2人に対しては気が晴れたのか、再びウサラパはDキッズが逃げ込んだ部屋の扉を叩き出した。

 

「開けろぉぉぉぉ!」

 

 扉は大きく揺れるものの、Dキッズがホウキやら段ボールやらを積んだお陰で突き破られることはなかった。

 もしウサラパ達が3人で揉めていなかったら準備が間に合わず、入ってきた可能性もあっただろう。

 

「ふぃーっ、助かった…」

 

「ごめん、余計なこと言っちゃった…。オバさんって言っちゃいけなかったわね…」

 

「アンタ達また言ったわねーッ!?」

 

「何なんだあのオバさん…」

 

「このガキンチョーッ!!」

 

 またマルムとリュウタが口を滑らせたせいで更にウサラパがヒートアップした。最早彼女が鎮まるのを待つのは無理なようである。

 

「何にせよここから出られなくなっちゃったけど…これからどうしよう…?」

 

「仕方がない。そっちに通路を見つけたからそこから降りるしかなさそうだ」

 

「…あぁ」

 

 ということで4人と6匹で傾斜のついた通路を滑り落ちていったのだった。通路というよりまるで滑り台か出撃シュートのようである。

 そして彼らが通路の先へ着くと、そこはまたしても新しい部屋だった。

 

「ここは…?」

 

「しーッ! 誰かいる!」

 

 レックスの言葉にDキッズ全員が部屋を見下ろすと、そこにはあのタルボーンヌがいた。何やら大層怒っている様子である。

 

「まったく…こんなに散らかすなんてドクターはどんな躾を受けて来られたんでしょう!」

 

「何だ?あのオバ」

 

 リュウタがウサラパを呼び寄せる魔法の言葉を口にしそうになったところで、すぐさまレックスがその口を抑えて止めることに成功した。

 その間にタルボーンヌは散らばった長椅子を1つ持ち上げると、力強く床へ投げつけた。すると衝撃で周りの椅子も浮き、全ての椅子が元の状態へ戻ってしまったのだ。とんでもない神業である。

 

「どうなってるんだあの人…。人間離れした芸当だな…」

 

 オウガが思わずそう呟く。

 するとそこでレックスが何かに気付いたようで、まっすぐ指をさす。その先には、床に何枚かのカードが散らばっているのが見えたのである。1枚だけ風属性で、他は全て水属性だった。

 

「もう! 大事なカードならちゃんとしまっておかないと捨てちゃいますって…いつも言ってるのに!」

 

 そう愚痴りながらタルボーンヌは目にも止まらぬ速さでカードを集めると、割烹着のポケットへ入れた。

 

「…見たか? リュウタ」

 

「あぁ、見たぜ。あの水属性のカードはこの前ホルダーから取り切れなかった分だ。

それに何故か風属性のカードもまじってる。何とかあれも回収して帰りたいな…」

 

「でも、あの人からはただならぬ気配を感じる。隙を狙うのは難しそうだね」

 

 そんな話をヒソヒソとしていると、どこからともなく重低音が響いてきた。その声に、唯一パラパラが反応する。

 

『クゥ?…コーン! コーーン!』

 

「あっ、パラパラ! どこ行くの!?」

 

 どこか嬉しそうに駆け出していくパラパラをマルムも追いかけていく。当然ながらリュウタやレックス、オウガもそれに続いて駆け出していった。

 

「マルムー!」

 

「何です? 貴方達は?」

 

 突然現れた見覚えのない子供達にタルボーンヌが声を張り上げる。しかしオウガ達に今反応している余裕などなかった。

 

「あっ…いやぁ、お構いなく!」

 

 そう言ってリュウタは駆け出していったものの、途中でポールを1本倒してしまった。それに続いてレックスとオウガも後を追っていく。

 

「あっ!…もう! また散らかして!」

 

 せっかく片付けたというのにポールを倒したまま去っていった彼らに、タルボーンヌは青筋を立ててそう呟くのであった。

 

 一方パラパラはまっすぐにどこかを目指してまだ走り続けていた。そして先が4本に分かれている道のうち、右前の方へ入っていく。

 

「待って! パラパラ!」

 

 そしてマルムもその後をついていく。それから間もなくリュウタとレックスがそこへ到着したものの、マルムがどの道へ行ったのかは2人とも分からなかった。

 

「どっちに行った!?」

 

「音のする方だよ!」

 

「音のする方って言ったって…どっちから聞こえてきてるのか分かんねぇよ…!」

 

 どこに進むべきか悩んでいると、ふとガブとイナズマが顔を上げた。彼らの表情もどこか嬉しそうである。

 やがて2匹が何故そんな様子になったのかはリュウタにも分かった。どこかから別の音が…恐竜の声が聞こえるのである。

 

『ガーブッ!』

 

『ゴロロッ!』

 

「おいガブ! イナズマ!」

 

 突然ガブとイナズマは、音の在り処を追って右の道へと入っていく。リュウタも2匹を追ってそちらへと進んでいってしまった。

 

「リュウタ!…くそっ、仕方がない。エース! こっちだ!」

 

 残されたレックスは取り敢えずリュウタと一緒に行動しようと決めたようだ。

 しかし、その時…。

 

「キャアーーッ!」

 

「!マルム!」

 

 マルムの悲鳴を聞きつけたレックスは、迷うことなく右前の通路へと駆け出していった。

 そして最後にそこへ、走り続けたせいかすっかりバテたオウガとアメジスト、そしてそんな彼らを呆れ顔で見つめるレクシィがやって来た。

 

「ハァ…ハァ…何だここ…。俺は…一体どこに進めばいいんだ…」

 

 リュウタ達はもういないし、彼らがどこかへ進んだことを示す痕跡も残っていない。

 進むべき先が分からず、オウガは途方に暮れてしまった。

 

 

 その頃、マルムはパラパラが走り込んだ部屋に入った瞬間、悲鳴を上げてへたり込んでいた。

 何故ならそこにはスピノとサイカが成体状態で待ち構えていたからである。更にその後ろには、ソーノイダにエドとノラッティ〜がいる。

 

「すごいザンス! ロトがセットしていったパラサウロロフスの仲間を呼ぶ周波数が完全一致してたザンス!」

 

「向こうから来てくれるなんてすごいッス!」

 

「流石はロト! ワシの孫というだけはあるぞい!」

 

 不利を感じ取ったマルムがパラパラを抱き、背を向けて逃走を図る。しかしそれを見逃すほどソーノイダは愚かではなかった。

 

「逃さんぞい!」

 

 ソーノイダのその声と共にマルムの眼前でシャッターが降りていく。そしてシャッターが降りきる寸前、その部屋へ転がり込んできた人影があった。

 レックスである。ギリギリで間に合ったのだ。

 

「マルム! 大丈夫か!」

 

「レックス!…ごめんなさい。アタシ達ここに閉じ込められちゃったみたいなの…」

 

 レックスが視線を変えると、そちらではスピノとサイカがにじり寄って来ていた。

 

「相手は2体…いけるか? マルム!」

 

「勿論! こうなったらやるしかないわ!」

 

 それから互いに頷き合うと、それぞれのパートナー恐竜をカードに戻してディノホルダーにスキャンした。

 

「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

「ディノスラーッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス!」

 

グォォォォォン!!!

 

キュオォォォォォン!!!

 

 エースとパラパラが成体状態で召喚されて降り立つ。そして敵対する恐竜同士が会敵したことで、周囲はいつものバトルフィールドへと変化していくのであった。

 そんな状況で、ソーノイダはアクトホルダーでどこかと通信をしていた。

 

「…そうじゃ。奴らを見つけたぞい。確実に仕留めるためにも、お主らにも加勢してもらいたいのじゃが…」

 

『承知致しました。ではそちらへはイシドーラを、もう片方の部屋にはジェイソンを向かわせます。

もしどちらかにティラノサウルス使いの少年がいたのであれば、彼には攻撃しないと約束して下さい』

 

「うむ。少なくともこちらにはいないぞい。

だがもし見つければ技カード実験用のコロシアムに誘導するということでよいぞいな?」

 

『はい。ノーピス殿ともそのように打ち合わせをしました。どうかよろしくお願い致しますね』

 

 

 一方、ガブとイナズマを追っていたリュウタもバトルフィールドが展開されたことに気付いていた。

 

「これは…パラパラかエースがどこかで戦ってるのか!?」

 

 リュウタがそう呟いていてもガブとイナズマは足を止めることなく、正面の部屋へ突き進んでいく。

 

「おい、ガブ! イナズマ! 待てよ!」

 

 彼らが進んだ先の部屋には、緑色の角竜がいた。四角い盾のようなフリルに短めだが鋭い3本の角が特徴的な、カスモサウルスだ。

 ガブとイナズマが先程聞いた鳴き声はこの恐竜のものであったらしい。

 

「カスモサウルス…! こんなやつもいたのか!」

 

 リュウタが驚愕した顔で見つめる中、ガブとイナズマが好意的にカスモサウルスへ話しかける。しかし当のカスモサウルスは頭を低くすると…2匹へ突進を仕掛けてきた。

 

「ガブ! イナズマ! 危ない!」

 

 すぐさまリュウタが駆け出し、2匹を抱きかかえたことで危うくカスモサウルスの突進を回避することができたようだ。

 

「何だよお前…! オレ達が何をしたって言うんだよ!…あっ!」

 

 その時、リュウタはカスモサウルスの周りをあのボール状の機械…アクトボールが回っていることに気付いた。

 

「ムダさ。そいつはもうアクトコントローラーの管理下にある。君の言葉なんか届かないよ」

 

 その言葉にリュウタが上を見上げると、そこにはロトとロア、そしてウサラパがいた。

 

「よくここまで手間を掛けさせてくれたわねぇ…。今から涙をちょちょ切らせてやるから覚悟おし!

さぁ、やるのよティラノちゃん!」

 

ガアァァァァァッ!!

 

 その言葉と共にウサラパがアクトホルダーにカードを通し、ティラノを成体化させて召喚した。

 

「ウサラパなんかに手を貸すのは癪に障るけど、お爺ちゃんの頼みだし仕方ないよね。

カスモサウルス、君も行くんだ」

 

 ロトの指示にカスモサウルスが応えるかのように大きく雄叫びを上げる。

 目の前に立ちはだかる2体の恐竜を前に、覚悟を決めたリュウタはディノホルダーを構えた。

 

「こうなったら…やるしかない! 行くぞガブ! イナズマ!

ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」

 

ゴオォォォォォ!!

 

ギュオォォォォ!!

 

 応戦するしかないと考えたリュウタはガブとイナズマをカードへ戻し、ディノホルダーにスキャンさせた。それによって2体の角竜が成体化し、ティラノやカスモサウルスを力強く睨みつけたのであった…。

 

 

その頃…

 

「おかしい…。こんなの絶対におかしいぞ…」

 

 他の仲間とはぐれてしまったオウガは、そう呟きながら1人基地の中を彷徨っていた。

 ここに来るまでに何度もアクトロイド達の影は見たものの、何故か露骨に警備が手薄な道があるのである。そこを進んでいけば安全ではあるのだが、何やら誘導されているような気がしてならないのだった。

 そうやって進んでいる内に、一際大きな扉が備え付けられた部屋の前へ行き着いたのである。

 

「ここは何だ…?『技カード実験用コロシアム』…?

アクト団で開発した技カードの実証実験をするための空間なのか…」

 

 とは言え、あからさまに誘導されてここまで来たことを思い出すと、どうしてもここへ入ることは躊躇われた。

 しかし、どうやらそうも考えていられないようだ。

 あのトロイドという声を聞きつけ後ろを振り返ると、通路の向こうから大量のアクトロイドが走ってくるではないか。

 

「これじゃあどのみち選択肢なんてないじゃないか…。

仕方ない。レクシィ! アメジスト! ここに逃げ込もう!」

 

 明らかに怪しいとは分かりつつも、アクトロイドから逃げるためにはそこへ入るしかないと判断したオウガは、技カード実験用コロシアムへ入ると扉を閉めた。すると何故か自動で鍵がかかり、戻れなくなってしまう。

 更に悪いことに、そのコロシアムの中は真っ暗であった。

 

「くそっ、暗いな…。次からこういう時のために、ディノラウザーにライト機能でも付けてもらおうかな…」

 

 そう呟くと、突如としてコロシアムの照明が灯り、眩しさからオウガは反射的に目を細めた。そして、そのコロシアムの反対側から何者かが自分の方へと歩いてきたのである。

 

「…誰だ?」

 

「それは、私に対して聞いているのですか?

伝説(レジェンド)】の保持者にして、ティラノサウルス使いの…覇轟オウガ君?」

 

(!こいつ…俺の名前を…!)

 

 どうやら相手は自分のことを知っているようだった。しかし、その声に心当たりはない。一体どこで…?

 次第にオウガの目が明るさに慣れて、しっかり相手の姿を見ることができるようになる。

 その男は、見た目は若そうだがその割に生え際は少し後退している。そして、銀縁の丸眼鏡をかけているところも印象的であった。

 

「以前貴方は、私の部下であるホスキンスやミルズと交戦したことがあるそうですね。そしてその上で勝利を収めたとか…。

しかし私はそうはいきませんよ。何しろ私…」

 

 そこで一度言葉を区切り、醜悪な笑みを浮かべた。

 

「私…カロリディー・ドジスンがこよなく愛する最強の肉食恐竜・ギガノトサウルスは、貴方の暴れるトカゲなどとは何もかもが違うのですから」

 

 

その頃 リュウタとガブ・イナズマは…

 

「はぁ…はぁ…どうだ! オレ達の勝ちだぜ!」

 

 ガブもイナズマも力は出し切ったものの、ティラノとカスモサウルスに対し勝ちを収めることができていた。

 ウサラパは悔しそうに地団駄を踏み、ロトは帽子を深めに被りながらカスモサウルスのカードを見つめている。

 

「キィーッ! ぐやじいーッ!」

 

「ちぇっ…。まだ調整が足りないのか…」

 

「見たか! オレとガブとイナズマの絆の力があれば、どんな敵にだって負けやしないんだ!」

 

「ほーう、ならおれにも勝てるってのか?」

 

 その声にリュウタが振り向くと、そこにいたのは軍服姿で恰幅の良い男だった。そしてベルトのバックルには、オウガが持っていたのと似たジュラシック・アンバーが嵌まっている。

 

「お前…! まさか前にオウガが言ってた…」

 

「ほう、あのクソガキからおれの事を聞いていたのか…。まあ念の為名乗っておこう。

おれ様はジェイソン・ホスキンス! 【世界(ワールド)】に選ばれた男だ!」

 

 名乗りを上げて高笑いをするジェイソンを相手に、リュウタは身構える。アクト団とは明らかに違う気配を感じ取ったからだった。それが具体的にどんなものか彼には分からないが、本能的に危険を感じ取ったというべきだろう。

 

「にしても、アクト団の恐竜…それも2体を相手に勝利するたぁ正直驚いたぜ。あのクソガキ同様、お前らもタダのガキじゃあねぇってこったな」

 

 だが、と一旦言葉を切ってからジェイソンが続ける。

 

「おれが来たからにはお前の快進撃もここまでだ!

おれが直々にキツイお仕置きをしてやろうじゃねぇか!

…さぁ、出て来い! インドミナス・レックス! 実力行使といくぞ!」

 

ギュアァァァァアッ!!!

 

 その言葉と共にジェイソンが1枚のカードをアンバーに押し当てる。すると虹色の光に包まれ、彼の後ろに白く巨大な肉食恐竜…インドミナス・レックスが姿を現した。

 不気味な雄叫びを上げるインドミナス・レックスを前に、リュウタは身構えるものの、少し腰が引けていた。ガブやイナズマも、珍しく怯えているように見える。

 

「ハハハ…どうしよう…。ちょっと、勝てないかも…」

 

 インドミナス・レックスから放たれる凄まじい殺気に当てられ、リュウタは思わず彼らしくない弱音を吐いていた。

 

 

 その頃、レックスとマルムの方でも、ちょうどスピノとサイカを倒したところだった。

 ノラッティ〜とエドはいつもの通り頭を抱えており、ソーノイダは眼前の出来事に愕然としている。

 

「な、なんてことザンス! スピノとサイカ2体がかりでもダメだったザンス!」

 

「おのれ…何たることぞい…。

もしかすると、ガキンチョを1番甘く見ていたのはワシだったのかもしれんぞい…」

 

 しかし、どちらかというと戦闘力で劣るパラパラをエースが庇いながら戦っていたこともあり、エースは疲労困憊の状態であった。

 

「すまない、マルム。エースに『深緑恵癒(ネイチャーズブレッシング)』をしてもらえるかな?」

 

「勿論よ! 今回復させるわね…あら?」

 

 そう言ってマルムが技カードをディノホルダーに通そうとした時だった。エースに赤いポインターが当たっていることに気が付いたのだ。

 

「ねぇレックス。なんかエースの体に赤い光が当たっているように見えるんだけど、あれって何かしら?」

 

「…!あれはレーザーサイトだ! エース!」

 

 レックスがエースに回避の指示を出そうとしたその時、アクト団達がいる場所の奥…そこのシャッターが1つ開くと、何やら甲高い音と共にそこから黒い塊が飛び出してエースへ真っ直ぐ飛びかかり、押し倒したのだ。

 そのまま黒い塊はエースの首に食らいつくと、その体格からはあり得ないほどのパワーでエースを振り回し、壁へ叩きつけた。エースの体から力が抜け、カードへと戻っていく。

 

「あぁっ、エース!」

 

「何なの…あの恐竜は…?」

 

 黒い塊の正体は、あのインドラプトルであった。

 当然2人が見たことのない恐竜である。カンボジアで彼らがオーウェンと合流した時、既にインドラプトルはブルーに倒された後だったので当然と言えば当然なのだが。

 そしてインドラプトルに続き、痩せ型で神経質そうな男も姿を現した。金欲の化身・イシドーラである。

 

「まさかあれは…!」

 

「オウガとオーウェンさんから聞いてるわ! 確か…イシドーラ・ミルズね!」

 

「…既に知っていましたか。それなら自己紹介の手間も省けるというものです。

では単刀直入にいきましょう。我々のボスの指示で、貴方達を始末せよと仰せつかりました。

とは言え既にカルノタウルスは討伐しましたし、パラサウロロフスごとき恐れるに足りません。

…ですが念には念を。仕入れた技カードで手短に攻めることにしましょう。…『血鬼魔手(ヴァンパイアネイル)』」

 

 そう言うと、イシドーラはカフスピンのアンバーに技カードを押し当てた。するとインドラプトルを虹色の光が包み込んだ。

 そして、それを見たソーノイダの顔も喜色一面に染まる。

 

「おおっ! いいぞいいいぞい! 遂にワシが苦労して作った技カードの出番なのだぞいな!?

やれーっ! あのガキンチョをやってしまうのだぞい!」

 

 ソーノイダの言葉とほぼ同時にインドラプトルが軽く宙返りをすると、尻尾を地面に叩きつける。するとそこから黒い煙が吹き出し、周囲を包みこんだ。

 

「何っ? この煙…。パラパラ、気を付けて!」

 

 マルムがパラパラに呼びかけるものの、パラパラは辺りをキョロキョロと見回すだけだ。どうやら視界を奪われて混乱してしまっているらしい。

 その間に暗闇の中からインドラプトルが素早く連撃を加えていく。周囲が見えない状況で攻撃を食らい、弱ったパラパラが最後に見たのは、自身の目の前へその腕を伸ばしてくるインドラプトルの姿だった。

 

「ーーーッ!」

 

 晴れてきた黒煙の中で、インドラプトルの爪で貫かれたパラパラの姿がぼんやりと浮かび上がる。

 それを見たマルムは涙をこぼしながら声にならない悲鳴を上げた。それとほぼ同時に、パラパラの体がカードへと戻って地面へ舞い落ちていく。

 

「パラパラァーっ!」

 

 このままではアクト団達にパラパラのカードを奪われてしまう。

そう察知したマルムは、一刻も早くカードを回収しようと走り出したのだった。

 

 




今回はここまでです。
設定集に超技『血鬼魔手』の説明を追加しました。
次のPart.3で原作エピソード『行くぞ!恐竜島!』にあたる時系列の話は全て書き切り、その後幕間の話を1つ挟んでから後半に入りたいと考えております。
是非お楽しみにお待ち下さい。
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