古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回はPart.4になります。
ここからは原作「大脱出!アクト基地!」にあたる時系列の話に移行していきます。
ですが今回はその導入ということもあり、あまり原作から差別化できていないかもしれないことはご容赦下さい。


Part.4

オウガが逃亡する少し前 アジ島 基地内部

 

 レックスとマルムを連行していたソーノイダ達は、リュウタを拘束したウサラパやロトロア兄妹、そしてジェイソンの4人と合流した。

 

「はい、おじい様。トリケラトプスとスティラコサウルスのカードよ」

 

 ロアからガブとイナズマのカードを渡され、ソーノイダは満面の笑みを浮かべた。

 

「フッ…フフフフ…ワシの恐竜がまた戻ってきたぞい!

ジェイソン! イシドーラ! 協力感謝するぞい!」

 

「構わねぇさ。おれ達のボスからの指令だからな」

 

「私としてもこれで戦闘手当が貰えますから、この程度のことなら歓迎しますよ」

 

 インドミナス・レックスとインドラプトルをカードに戻した2人がそう返答する。だがそこでソーノイダの言葉を聞いたリュウタが声を張り上げた。

 

「ワシの恐竜だって…? ガブ達はお前の恐竜じゃないぞ!」

 

「カードになった恐竜は全てワシの恐竜ぞい!

ワシの恐竜王国で、ワシのために働くことになっておるのだぞい…!」

 

 そう言うとソーノイダは夢見心地といった様子で恍惚とした表情を浮かべた。だがそれをリュウタ達が口々に咎める。

 

「恐竜を、働かせる…!?」

 

「どういうこと!?」

 

「ふざけんな! 恐竜は道具じゃねぇぞ! このゾイじじい!」

 

「ぞっ…ゾイじじい!?」

 

 リュウタから付けられた想定外の呼び名に、思わずソーノイダは驚く。それを聞いてリュウタへ真っ先につっかかっていったのは、ウサラパだった。

 

「ゾイじじいだなんて失礼だねぇ〜!

きちんと泣いて謝ったらどうだい?」

 

 そう言うとウサラパはリュウタの両頬をつねってこねくり回す。だがリュウタはその痛みを懸命に堪えていた。

 

「ぎゅぐぐぐ…こんなことで泣いてたまるか〜…」

 

 そんなやり取りを横目で見ながらロトがソーノイダに話しかける。

 

「お爺ちゃん、こいつらはどうする?

もう1人もいるんだし、生きて帰すわけにはいかないだろ?」

 

「そうじゃったぞい! カロリディーがもう1人しょっ引いてくるんじゃったぞい!

…さて…そうぞいな〜…。どうしてやるぞいか…」

 

 Dキッズの処遇を考えるソーノイダに対し、ノラッティ〜とエドが提案をしようと手を挙げた。

 

「はいはーい! ミー達の子分にしてやるのがいいと思うザンス!」

 

「賛成ッス! おれ達の下で恐竜の世話とかやらせるのがいいと思うッス!」

 

「ふむ…なるほどぞい…」

 

 だがそれに待ったをかける人物がいた。他ならぬノラッティ〜とエドの親分であるウサラパだ。

 

「何だってぇ? お前達の子分?

何バカなこと言ってんだい10年早いよ!」

 

「そんなこと言わないでほしいザンスよ〜! ミー達も子分が欲しい年頃ザンス〜!」

 

 ノラッティ〜がそう訴えると、エドも静かに同意するように頷いた。だが、ウサラパは首を縦に振らない。

 

「年の話じゃないよ!…もしかしてあんた達、アタシの子分じゃ満足できないってのかい…?」

 

「そ、それは…」

 

「いやそういう訳じゃなくってぇ…」

 

「こりゃーっ! どんぐり揉めとる場合じゃないぞい!」

 

 ソーノイダがウサラパ達を諌めようとしていると、そこでジェイソンとイシドーラのインカムが鳴った。

 カロリディーからの着信が入ったのだ。

 

「おう、ドジスン。どうした?…何? それは本当か?」

 

「ほう…それはそれは…見事に一杯食わされたな」

 

「どうしたのじゃぞい? ジェイソン? イシドーラ?」

 

「Dr.ソーノイダ。ボスからの報告をお伝えします。

覇轟オウガは『土竜突撃(ビッグモールアタック)』でコロシアムから逃走。いずこかへ姿を隠したとのことです」

 

「既に穴は埋まっていて物理的な追跡は不可能。

基地のどこかへ逃げたのは間違いないから今すぐ探し出してこい…だとよ」

 

「何じゃとぞい!? それが分かっておったのなら、あそこで勝負が決まったと早合点せずに見ておったのに…何たることぞい!

おいっ! ウサラパ! ノラッティ〜! エド! すぐにアクトロイドを捜索に向かわせるのじゃぞい!」

 

「わ、分かったッス!」

 

「でもこのガキ共はどうするザンス?」

 

「もう何もできぬガキンチョにこんなにアクトロイドはいらんぞい! 最低限必要な分だけ残して、他を全て連れて行け!」

 

「「「ヘイヘイホー!!」」」

 

「じゃあアクトロイド! お前とお前と…お前達以外はガキンチョを探しに行くのよ!」

 

 ウサラパのその言葉に従い、リュウタ達を拘束している6機以外は捜索へ向かっていった。

 その後ろ姿を見送りながら、エドが不安そうに呟く。

 

「でも大丈夫ッスかね? どこにいるかも分からないのにあてもなく探してたら日が暮れちゃうッスよ?」

 

「なーにを言っとるぞい! お前らも一緒に行くんだぞい!」

 

「え〜っ…」

 

「そんなこったろうと思ったザンス〜…」

 

 肩を落とす3人に呆れながらソーノイダが視線をずらすと、ふとレックスに目線が止まった。

 何故ならレックスはアクトロイド達の拘束が緩まった隙にディノホルダーにカードをスキャンしようとしていたからである。

 

「ん? お前! 何しとるぞい!…あぁっ! それは!?」

 

「これはお前達がいじめていた、アロサウルスだ! いけーっ!」

 

 その言葉と共に、レックスが強引にカードをディノホルダーにスキャンする。すると灰色の光と風に包まれ、アロサウルスが召喚されたではないか。

 アロサウルスは高らかに咆哮すると、アクト団達をギロリと睨む。

 

「アロサウルス! いじめられた仕返しをしてやれ!」

 

 レックスのその言葉を聞くやいなや、アロサウルスはアクト団の方へと向かっていった。

 まず標的になったのは、工作員の3人組である。

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」

 

 そしてチビアクト恐竜達も驚いて逃げ出し、それにソーノイダも巻き込まれる形で一緒に逃げ惑う羽目になってしまう。

 

「「「「ハラホロー!!」」」」

 

「「「「ヒレハレー!!」」」」

 

 その光景を前に、ジェイソンとイシドーラは動けずにいた。彼らの恐竜では、ソーノイダ達も傷つけてしまいかねないからである。

 

「取引先を助けなきゃならねぇんだが…おれのインドミナスだとあいつらにも攻撃が当たっちまいそうだしなぁ…」

 

「あれだけ不規則に動かれたのでは、ポインターで狙いをつけられない…。落ち着くのを待つしかないな…」

 

 そしてレックスも、この隙を見逃さなかった。すぐリュウタとマルムにも逃げるように指示を出したのだ。

 

「今だ! 逃げろ!」

 

「おう!」

 

 リュウタがそれに応じ、脇のアクトロイドに体当たりをして拘束から逃れる。そしてマルムを拘束するアクトロイドを2人で撃破すると、リュウタ達は逃げ出していった。

 

「ガキンチョを逃がすんじゃないよぉ〜!」

 

 アロサウルスから必死に逃げながらもウサラパがそう指示を出す。それに応じることができたのはさっきまで彼らを拘束していた6体のアクトロイドだけである。他は全てオウガの捜索にやったのだからいないのは当たり前なのだが。

 それでも彼らはエレベーターへ乗り込むリュウタ達3人を追いかけようとしたが、彼らの目の前でドアは閉まりきったのだった。

 

 何故か自動的に下へ降りていくエレベーターの中で、レックスはリュウタとマルムの拘束を解いてやっていた。

 

「ふぅ〜、助かった〜…」

 

「ホッとしてる場合じゃないぞ! ガブ達のカードを取られたまんまなんだぞ!

それに、基地のどこかに隠れたオウガとも合流しないと!」

 

「分かってるけど…今はどうにもならないでしょ?」

 

「でも、取り戻す方法は考えなきゃ…。何とかオウガとも連絡を取る方法もそうだし…」

 

「…あぁ、そうだな!」

 

 その時、エレベーターが目的地への到着を知らせた。

 開いた扉から出ると、リュウタ達の前に広がっていたのはこの世のものとは思えぬ光景であった。

 アクトロイドとは違うロボット達がせわしなく動き回り、広大な空間の中央では巨大なマシンがゆっくりと回っている。

 

「なんだ…ここ…? それに何だよこの機械…?

恐竜となんか関係あんのか?」

 

「見たことないわよこんなデザイン…。地球のものかどうかすら怪しいわ…」

 

「ロボットやこのマシン…。まさかアクト団って…」

 

「宇宙人ってか? まっさか〜…」

 

 宇宙人ではないにせよ、未知のマシンやロボットがこの基地に存在していることは確かである。

 と、そこでレックスが遥か上を指さした。

 

「あっ、あそこに人が!」

 

 その先には、ゴンドラに乗って何やら作業をしているノーピスの姿があった。先程ソーノイダから侵入者の心配がなくなったと連絡があったので、マシンの復旧作業に戻っていたのである。

 まあその侵入者であるDキッズはこうして基地内を徘徊しているわけなのだが。

 しかし、そこで不意にノーピスがリュウタ達の方を向いた。彼らの喧騒を聞き取っていたのであろうか。すぐに3人は身を隠したが、ノーピスの視界から逃げることはできなかったようだ。ノーピスは無言のまま周囲のロボット達に3人を排除する指示を出したようで、先程まで作業に没頭していたロボット達が3人の方を見つめているではないか。

 

「エライド…エライド…エライド…」

 

「なんかやばいぞ…!」

 

 リュウタの嫌な予感は当たっていた。彼らの目の前に3体のロボットが降り立ち、こちらへ向かってこようとしていたのだ。

 

「「「うわぁぁぁぁ!」」」

 

「エライド…エライド…エライド…」

 

 彼らは何とか元来たエレベーターの中へ戻り、間一髪で助かったのであった。しかしエレベーターはまたしても自動で動き始め、今度は上の階へと向かい始める。

 

「上行ってるけど…今度はどこ?」

 

「分かるわけないだろ?」

 

「…とにかく、もう誰にも会わないことを祈ろう…」

 

 しかし残念ながらその祈りは届かなかった。

 エレベーター到着のベルが鳴り、開いたドアの先にはあのタルボーンヌが立っていたのである。

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」

 

 想定外の遭遇者に、3人は思わず絶叫を上げたのだった…。

 

 

その頃 アジ島内部 収納スペース

 

 レクシィの記憶を全て見終えたオウガの意識は、元の場所…狭い収納スペースの中へと戻ってきた。そのことを実感してから、オウガはゆっくりと手元のレクシィのカードに目を向け、ぽつりと呟いた。

 

「…あれが、レクシィの生涯だったのか…。

俺はレクシィのこと…本当に何も分かってなかったんだな…」

 

 そんな彼の言葉を受けてか、ディノラウザーからまた【伝説(レジェンド)】の声が聞こえてくる。

 

『彼女について知らなかったことについて君が思い悩むことはなかろう。このような過去を彼女が自分から話すことはまずないじゃろうからのう。

しかしこれで君は彼女の気持ちを知ることができたのではないかな?』

 

「…そうですね。レクシィは迷っていたようでした。

過去の経験から人間を信用することはできないけど、その一方で俺のことは信用したいという矛盾を抱えていたんだと思います。だから最近はディノラウザーの呼び出しに応じなかったのかもしれません…」

 

『そうかもしれんのう。結局のところ、君もレクシィも似たもの同士ということじゃ。

君は何故レクシィが彼女自身のことについて話してくれないのかについて悩んでいたが、レクシィもまた何故自分が人間である君との生活を心地よく感じてしまっているのかについて考え続けていたということじゃろうのう。そしてそのことを、互いに相手に対して明かしておらんかった。

…しかし、そうなれば君が彼女にすべきことは何か、分かっておるじゃろう?』

 

「勿論ですよ。レクシィが回復から目覚めたらすぐにでも彼女がどうするべきか俺の意見を伝えます!…とは言え…」

 

 そう言いながらオウガが出入り口のシャッターの方へ目を向ける。その外では…。

 

「トロイド、トロイド、トロイド、トロイド…」

 

 オウガを探すアクトロイド達が複数体徘徊していたのだ。これではここから動くことすらできない。

 

「…あのロボット達がどこかへ行かないことには、ここから出られないですね…」

 

『待つしかないじゃろうな。大丈夫。すぐ機会は訪れるじゃろう』

 

「そうですね。でもリュウタ達と合流もしたいのに…早くどこかへ行ってくれないかなぁ…」

 

 そう呟き、オウガは小さくため息をついたのだった。

 

 

その頃、リュウタ達はどうなっていたのかと言うと…

 

「ちょっと! 何すんのよー!」

 

「離せったらー!」

 

「ダメです! 子供はお勉強の時間です!」

 

 エレベーターから出てきたところをタルボーンヌに捕らえられ、何故か勉強部屋へと連行されていた。

 リュウタ達はここの人間ではないのに、どうして勉強させられなければならないのだろうか。

 

「お勉強…?」

 

「何だよそれ…」

 

 困惑した様子でレックスとリュウタが呟くと、頭上から笑い声が降ってきた。その方向を見ると、そこにはロトロア兄妹がいた。

 

「あっ! あの子達…」

 

「大騒ぎして逃げたと思ったら、タルボーンヌに捕まってやんの!」

 

「おっもしろーい!」

 

 3人をからかう兄妹だったが、その2人もタルボーンヌは見逃さなかった。

 

「何を笑っているんです2人とも! あなた方もお勉強の時間でしょう!」

 

「「あっ…」」

 

 こうして、タルボーンヌは計5人を勉強部屋へ連行したのだった。

 

「さあ! お勉強なさい!」

 

「オレ達関係ないったら〜…」

 

「ただの通りすがりですから〜…」

 

「勉強なら家でやるし〜…」

 

「いいえ! 誰であろうとお勉強のお時間です!」

 

 3人の弁明にもタルボーンヌは聞く耳を持たず、強制的に席に座らせた。それと同時に3人の眼前のモニターが点き、問題文が表示される。

 しかし、リュウタとマルムにはさっぱり理解できないものだった。

 

「何だぁ…これ…?」

 

「これ…算数…?」

 

「一般相対性理論で使うリーマン幾何学だよ」

 

「…はぁ?」

 

 まず現代の小学校では聞かない言葉がロトの口から飛び出し、リュウタとマルムの脳内が?で埋め尽くされる。それを見ていたロアが、彼らを嘲笑うような言葉を口にした。

 

「もしかしてぇ…知らないとか?」

 

「…へーぇ、面白い」

 

「えっ…お前、これ分かるのか!?」

 

「いや全然」

 

 レックスはどういうものか分からないようだが、それはそれとして興味は抱いたようである。

 こうして、不本意ながらもリュウタ達はアジ島式の勉強をすることになったのだった…。

 

 

その頃 ソーノイダの研究室

 

「まったくあのガキンチョ共! 舐めたマネをしてくれおって!

今度捕まえたら、耳の穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたるぞい!」

 

 先程までアロサウルスに追い回されていたソーノイダだったが、何とか撃破してカードに戻すことに成功したようだ。とは言えリュウタ達に逃げられたことが我慢ならなかったらしく、こうして足音荒く戻ってきたのである。

 机の上に回収してきた5枚のカードを広げつつ、ソーノイダはまだブツブツと呟く。

 

「ま…とは言っても奴らのカードも手に入ったことだし、もーう泣く子も黙るワシの邪魔はできんぞい! フハハハハハハ!!

…いや、まだぞい。もう1人…カロリディーが逃がしおった奴がいたぞい…。アクトロイドとウサラパ達が探しに行ったはずじゃが…まだかぞい…」

 

 そうぼやきながら別の机に視線を向けたソーノイダは、驚愕で顔を染めた。

 

「んぉっ? ない! ないぞい! ワシの大事な恐竜カードがぜーんぶないぞい! ミーン! ミーン!」

 

 別の机に置いておいた水と風の技カードが全てなくなっていたのである。部屋のあちこちを探しても見つからず、挙句の果てにはどういう訳かポールにしがみついてセミの真似までしている。

 

「もしや! あのガキンチョ共が犯人かぁーっ!?

おーい! ウサラパー! ノラッティー! エドー!」

 

 本当はタルボーンヌが回収していったのだが、そんなことなどソーノイダが知るはずもない。リュウタ達がカードを奪っていったのだと決めつけたソーノイダは、急いで研究室から出ていってしまった。

 当然、ガブ達のカードはそこに置いたままである。

 やがてソーノイダがいなくなってからしばらく経ったところで、1人の人影がそこへ現れた。

 

「ドクターは先程出ていったから、当分誰もここへは来ないはずだ。早いところ終わらせなければ…」

 

 ノーピスである。しかも手には何かデバイスのようなものを握っていた。

 彼は部屋に入り、素早く机へ近づくと、ガブのカードを手に取りデバイスに差し込んだ。するとデバイスにパーセンテージが表示され、それが段々と100%へと近づいていく…。

 その間、彼はせわしなく部屋の入り口に目を向けていた。まるで何かやましいことでもやろうとしているように見えてしまう。

 やがてパーセンテージが80を超えたところで、彼はピクリと聞き耳を立てた。何者かがここへ近づいている。ノーピスは珍しくイライラした様子を見せていたが、ついにパーセンテージが100に達し、デバイスの液晶画面に「Complete」の文字が出てくる。

 それを確認したノーピスは素早くガブのカードを抜き取って元の場所へ戻し、すぐさま研究室を後にした。そして、帰り道では丁度ソーノイダの研究室方向へ向かうウサラパ達とすれ違ったのである。

 

「ん? あら? あれってノーピスじゃない?」

 

「本当ザンス! こんなところにいるなんて珍しいザンスね!」

 

「何しに来たんスかねぇ…?」

 

 3人はこの辺りだと滅多に見ないノーピスがいることに首を傾げるのであった。

 

 

その頃 勉強部屋

 

 どうすることもできないので取り敢えずモニターに向き合ってみるマルムだったが、やはりさっぱり分からない。そこで横のリュウタを見てみると、彼は机に突っ伏していた。

 

「ねぇ、リュウタ! 寝てる場合じゃないでしょ?」

 

「だってさぁ…こんな勉強やったって仕方ないだろ?」

 

「違うわよ、さっきのオバさ」

 

 そう言いかけたマルムの口をリュウタが素早く抑える。もう少しでウサラパを呼ぶ魔法の言葉を口走ってしまうところだった。

 

「…じゃなかった。タル…なんとかさん?」

 

「タルボーンヌさんよ」

 

「そう! そのタルさん、どこかに行っちゃったみたいよ?」

 

「え?…ホントだ!」

 

「どこかに掃除に行ったんだよ」

 

「なんだよ…だったら!」

 

 さっさと逃げ出そうとリュウタ達が立ち上がるが、そんな彼らにロトが呼びかけた。

 

「勉強をサボろうったって無駄だよ?」

 

 ロトがそう言ったものの、部屋の扉は何の問題もなく開いた。

 

「何が無駄だよ。開いてんじゃん」

 

 そしてさっさと出ていこうとする3人だったが…そこへ電光石火の速度でタルボーンヌが駆けつけ、彼らの前に立ちはだかった。

 

「「「えぇーっ!?」」」

 

「たっ、タルボワンさん!?」

 

「タルボーンヌです」

 

「タルボワンヌさん!?」

 

「タルボーンヌです!」

 

 と、その時リュウタが小さく驚きの声を出した。タルボーンヌの割烹着のポケットにカードの束が入っていたからである。

 そんな彼の視線には気づかず、タルボーンヌはリュウタへ尋問を始めた。

 

「まだお勉強の時間は終わっていません! どこに行くつもりです?」

 

「えっと…だからタルボウンナさん…僕達トイレに行きたくなっちゃって…」

 

「だからっ! タルボーンヌですっ! トイレならそこですっ!」

 

 そう言ってタルボーンヌが奥の扉を指さした。どうやらトイレと言って部屋の外へ出ることもできなさそうである。

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 リュウタがそう言うと、タルボーンヌはスッと扉を閉めていった。気落ちした表情を浮かべるリュウタ達に、ロトが得意げな顔で声をかける。

 

「だから無駄だって言ったろ?」

 

「ちぇっ…。オレ本当にトイレ!」

 

リュウタがトイレへと駆け込むものの、何故かすぐに戻ってきた。

 

「逃げ出す方法が分かった! レックス! マルム! 来てくれ!」

 

「どうしたの?」

 

「何を思いついたんだ?」

 

 そこで、更にリュウタはロトロア兄妹にも声をかけた。

 

「お前らも勉強サボりたかったら手伝えよ!」

 

「えっ?」

 

「わたしたちも?」

 

 そしてトイレの中を覗いたレックスだが、特にめぼしいものもなかったためリュウタに呆れ顔で声をかける。

 

「おいおい、窓もないじゃないか…」

 

「別にここから逃げる訳じゃないよ。…これさ!」

 

 そう言うとリュウタは用具入れの扉を開ける。そこには様々な清掃用具にまじって…銀色に光るスパナが入っていた。

 

 さて、その頃、タルボーンヌは別の部屋を清掃している真っ最中だった。

 しかしその最中、何かを感じ取ったのか顔を上げ、猛スピードで駆け出していく。目的地はやはり勉強部屋だった。

 そして扉を開けたリュウタの前へ現れる。

 

「またですか? 今度は何です?」

 

「タルボッコさん! そうじゃないよ! 大変なんだ!」

 

「タルボーンヌ!!…あら? どうしたんですその姿は?」

 

 何度も名前を間違えられて怒るタルボーンヌであったが、リュウタ達やロトロア兄妹の姿を見て目を点にする。何故なら彼らは全員ずぶ濡れだったからである。

 

「トイレだよ〜…」

 

「ほら来てよ〜」

 

 リュウタに言われるがままにタルボーンヌがトイレの扉を開けると、そこでは水が出るあらゆる部分から水が漏れ出ていた。水のトラブル絶賛発生中である。

 

「あらま! なんてことです!」

 

「ねっ? 大変でしょ?」

 

 これにはさしものタルボーンヌも驚きを隠せない。

 この隙にリュウタはタルボーンヌのポケットからカードを掠め取ろうとするが、手をはたかれあっさり撃退されてしまう。腕まくりをしながら水漏れを直そうと向かうタルボーンヌを見送りながら、リュウタは思わず舌打ちをした。

 

「チェッ…」

 

「おいリュウタ。何やってるんだ」

 

「悪い。すぐ行くから…」

 

 こうして、タルボーンヌが水漏れの修理をしている内にリュウタ達とロトロア兄妹は勉強部屋から逃げ出すことができたのだった。

 

 

その頃 オウガが隠れている収納スペース

 

「…あれ?」

 

 静かに息を潜めていたオウガが、ふと顔を上げた。何やらシャッターの向こうの廊下が騒がしくなってきたのだ。アクトロイドや人間の足音が絶え間なく聞こえたかと思うと、急に静かになってしまった。

 不審に思い、そっとシャッターを開けて外を覗き見てみると…先程までここを徘徊していたアクトロイド達が1機もいなくなっていたのである。

 

「一体何がどうなってるんだ…?」

 

 とは言え、この好機を逃す手はない。オウガはこれまで籠城していた収納スペースから出て、廊下を走り始めたのだった。

 

 




今回はここまでです。
今回は全体的に地味な話作りになってしまったかもしれません。
次回以降からは派手な場面も多くなってくるかと思いますので、どうかご容赦の程お願い致します。
ちなみにノーピスがガブのデータを収集したのは後々のことを考えれば意味が分かってくるかもしれません。
ついでに言うのであれば、ノーピスは前回の技カード実験用コロシアムで少しではありますがアメジストのデータも収集していました。
それでは、次回Part.5をお楽しみにお待ち下さい!
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