古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
レクシィと1対1で話をするオウガ。そんな時彼の持つディノラウザーから声が聞こえてきて…?
今回は本作のオリ主オウガのヒロイン的存在となるキャラも出るので、是非最後までご覧ください。
「レクシィ、今日は君のお陰で俺達みんな無事に帰ってこられたよ。本当にありがとう」
『…グルル…』
アジ島から帰還したその夜、オウガ達Dキッズは無事に帰還できたことを祝うため、Dラボでパーティーを開くことにしたのである。
古代博士の恐竜クイズ(プレゼント付き)やパートナー恐竜達との団欒など、各々楽しい時間を過ごした。
特にパートナー恐竜達は初めてのパーティーをみな楽しそうに過ごしていた。
そしてパーティーも終わりに差し掛かった頃、オウガはレクシィと一緒にDラボ前の広場にやってきていたのだった。
「ガブ達がアクト団に一時は奪われちゃったり、俺達も何度も危険な目に遭ったけど…俺にとって1番心配だったのは、あのギガノトサウルス?に君が倒されちゃった時だったな。
今まで君が倒されたことがなかったのもあってあの時は頭が真っ白になっちゃってさ…もしこのまま一生君と会えなくなっちゃったら…そう考えると居ても立っても居られなくなったんだよね」
オウガの言葉を、レクシィは黙って聞いているようだった。その様子を見たオウガは、また軽く微笑んでから話を続ける。
「結果的には普通にダウンしただけということが分かって良かったけど…あの時は、このまま君についてよく知らないまま別れることになるのは嫌だって強く思ったんだ。
初めて会った時以来、君と話せたこともなかったしさ…」
そのようにオウガが話していたその時…。
『…どうしてもというなら、オマエだけとは話をしてやらんこともないぞ』
「…え…れ、レクシィ…?」
ディノラウザーから、レクシィの声が聞こえてきたのである。
あまりに突然の出来事に、オウガは思わず思考がフリーズしてしまった。それ以上言葉を紡げずに黙っていると、またディノラウザーから声が聞こえてくる。
『どうした? ずっとオマエが話して欲しいと言っていたからこうして話してやっているのだぞ』
「…あ、ありがとうレクシィ!
君と話ができて…君のことについて知る機会を得ることができて本当に嬉しいよ!」
『御託はいい。それより私からオマエにも聞きたいことがあったのだ。
…オマエ、私が眠っていた間に、私の記憶を見たのだな?』
「…うん、そうだね。
ジュラシック・アンバーが見せてくれたんだ」
『そうだろうと思っていた。
…それで? それを見て、オマエはどのように感じた?』
「どのように、って言われると…やっぱり、君が俺達人間を嫌っても仕方ないようなことばかりされてきたんだなってことかな」
『…そう思うか』
「人間によって生み出され、管理され、利用され続けた生涯そのものだと俺でも感じた。
あんな扱いをされ続ければ、人間を嫌い、憎むようになるのは当然だよ。
だから…君が人間を見直すようにする俺のアプローチは根本から間違っていたんだと自覚させられたよ」
そう言って、オウガは苦笑する。
一方で、それを受けてかレクシィは、彼女の思いを吐露し始めた。
『…そのことについて、私はずっと考えていたのだ。
オマエと共に暮らし、肩を並べて戦う中で、私はいつしかオマエを悪からず思うようになっていった。
オマエやアメジストと暮らす日々が、どうしようもなく楽しく感じるようになっていったのだ』
オマエからのしつこくて激しいスキンシップを鬱陶しく感じたこともあったがな、と付け足してからレクシィは続ける。
『だが…だからと言って私は、ニンゲンへの積年の恨みを捨てることはできない。
そのせいか、オマエが時折私に対して向ける憧れの目が、私を見世物にして楽しんでいたニンゲン共の目と重なってしまうように感じていたのだ。
しかし、オマエはあのニンゲン共とは違う。私やアメジストに寄り添い、感情を共有してくれる。
そのことはたまらなく私には嬉しかったが、その度に私の内なる声が囁いてくるのだ。
「何故こいつを信用しようとする? こいつは私が死ぬほど憎んでいたニンゲンだぞ? どうせ信用してもすぐ裏切られる。こいつを理解しようとするのは無駄ではないのか?」…とな。
アメジストも何かと私に気を遣ってくれてな、懸命にオマエはいいやつだということを力説してくるのだ。確かにその話の内容も頷けるものではあったが…それでも、どうしても私はニンゲン共から受けた仕打ちを忘れることができない。
…オマエ。私は一体どうすればいい? どうすればこの悩みから解き放たれることができるのだ?』
そう言い切ると、レクシィはオウガをじっと見つめた。その言葉を黙って聞いていたオウガはレクシィに向き合うと、優しい声で語りかけた。
「人間を、無理に許す必要はないんじゃないかな?」
『何…?』
「君がこれまで経験してきたことは、紛れもない事実だ。君自身が証人だからね。
だから繰り返すようだけど、俺は君に、人間を許してくれ、なんて傲慢なことを言うつもりはない。それこそ君の信用に対する最低の裏切り行為だということが分かったからね」
『………』
「でも…烏滸がましいようだけど、一方で君には、せめて俺だけは信じて欲しい。
俺は、絶対に君を失望させるようなことはしないから」
『…オマエとはいえ、私がニンゲンの言葉を信用するとでも?』
「今すぐは信用してくれなくてもいいさ。
でも、いつかは…それまでの俺の振る舞いを見て、その上で判断してくれないか?
俺は信用に足る人物だと、必ず納得させてみせるからさ」
オウガからの言葉に、しばらくレクシィは沈黙していた。オウガがじっくりと返答を待っていると…。
『…いや、その必要はない。
もう私は、ある程度はオマエを信用しているのだから』
「えっ…? レクシィ、それって本当?」
『そうでなければここまでオマエと共に歩んできたりはしない。契約者保護の協定があるとは言え、オマエと離れて生活をすることも私にはできたのだからな』
「そうなの!?なんてこったい。【
『聞かれなければ教える義務もないだろうからな。
奴を責めることはできまい。
…話は戻るがな、最初こそオマエを見極めてやろうと思ったところもあったのだが、結果として私は、すっかりオマエに絆されてしまったようだ。
あのアクト団とかいう連中の島でそれを実感した時、情けなくもあり喜ばしくもあり…どっちともつかない不思議な感覚に陥ったのを覚えているよ」
「レクシィ…」
「そして…あの時オマエが言った、ニンゲンを無理に信用しなくていいという言葉は、本当に救いになった。
ニンゲンというものは皆傲慢で強欲で、どうしようもない連中だという私の凝り固まった考えを一変させたのは、間違いなくオマエだった。
そして、過去を否定せずともよいのだとオマエは私に寄り添った答えを与えてくれたのだ。
やはり、オマエは私の知るニンゲン像には当てはまらないのだな』
「そんなことないさ。
俺だって最初は、ティラノサウルスを見てみたい、仲間にしたいって気持ちが強かったんだし」
『それでも、だ。
そのように自分にも他人にも正直だからこそ、私はオマエならば信用に足る存在であると認識したのだ。
…あくまでもある程度は、だがな』
しっかりと念押しするレクシィに、オウガは思わず笑いをこぼした。
そして、そこまで言ったところでレクシィがベンチから飛び降り、Dラボのエントランスの方へ走っていく…と見せて、途中でオウガを振り返ってから言った。
『だから、これからもよろしく頼むぞ。
「…えっ…? オウガ…オウガって…レクシィ!
今、俺の名前を呼んでくれたのか!?」
『当然だ。私たちはアイボウなのだろう?
オマエが私を名前で呼ぶならば、私もオマエをオウガと呼ばなければ不作法というも…お、おいこらっ! 何をする!』
レクシィが少し澄ました顔でかたっているところを、オウガは抱き上げてくるくる回り出した。
「やったーっ! 遂にレクシィが俺を相棒だと認めてくれたんだ! これでやっと俺達は正真正銘の相棒同士になったんだ!
あはははは! これからもずーっとよろしくな! レクシィ!」
『ええい、やめぬか! こんなところを見られてはアメジスト共に示しがつかん! 分かったから早く降ろせ…』
その時だった。すぐ近くの森が眩く光ったかと思うと、ガサガサッと何かが落ちてくるような音が聞こえてきたのだ。
「…? 何だ? 今の音…」
『私にも分からん。だが…何やら嫌な匂いがするな』
「もしかしたら、レクシィのカードが出てきた時みたいに、またオーウェンさんの世界から恐竜が紛れ込んできたのかも…。
様子を見に行ってみよう」
ということで、オウガとレクシィは誰にも告げずに光った方角へと進み始めた。もう日は暮れており、辺りは大分薄暗い。レクシィと外に出た時に拝借していた懐中電灯で辺りを照らしながら、彼らは先へと進んでいく。
やがて1本の大木に辿り着いた。あちこち枝が折れてそこら辺りに散らばっている。さっきの光はここから発せられたようだ。
しかし落ちてきたはずのものはどこへ…と思って辺りを照らしていると、木の陰に誰かが横たわっているのが見えた。見た目からすると、女性のようだ。
「た、大変だ…! すみません! どこの誰かは知りませんが大丈夫ですか!?」
そう言ってオウガが女性をゆり動かし、その後仰向けにさせた瞬間、オウガの動きが止まった。
彼女は、とても奇妙な出で立ちだったのだ。
まず日本人ではないだろうと思われる奇妙な服装。そして頭にはとても大きな黄色のリボンを付けている。
だが、オウガの目を惹いたのはそこではなかった。
まるで雪のような白い肌に、黒曜石のように黒く艷やかな髪、男子の目線からも分かる整った顔立ちに抜群のプロポーション。
そして控えめながらも開かれた真紅の瞳に見つめられた瞬間、オウガはハートを射止められてしまった。俗に言う一目惚れである。
「…あの…あなたは…?」
女性がこれまた控えめながらも声を出す。オウガはそこでようやく意識が引き戻され、彼女に声をかけた。
「あ、すみません! 目が覚めましたか!
俺はここ三畳市に住む、覇轟オウガと言います!
それで…あなたは誰ですか? ここで一体何が起こったんですか?」
オウガが焦り気味に質問をすると、女性は痛みが走るのか少し手を頭に当て、か細い声で口にした。
「…ごめんなさい。わたし…分からないの…。
自分が誰なのか、ここが一体どこなのか…」
「えっ…?」
まさかの記憶喪失らしい美女に、オウガも驚きを隠せない。
しかし、そんな彼女を、何故かレクシィは鋭い視線で睨みつけていた…。
その頃 秘密結社『Sin-D』所有施設
ジェットヘリから降りたカロリディーは、足音荒く研究室へと向かっていく。その後ろを、ジェイソンとイシドーラも着いていっていた。
そして彼は研究室の扉を開けると、大声で目的の人物を呼んだ。
「ウー博士! ウー博士はいるかっ!?」
カロリディーがそう呼びかけると、気だるげな表情をした中国人風の男が振り返った。
「…何です?」
「ウー博士。貴方にはこのギガノトサウルスをティラノサウルスを超える存在にするよう徹底的に強化するよう伝えていたはずだ!
だというのに…ジョーカーは初見ですら五分五分、再戦時に至っては終始相手のペースだったのだぞ!
これは一体どういうことだっ!?」
「どういうことも何も…それがギガノトサウルスのスペックを盛ってようやく到達できる限界の領域です。
それに貴方は何故か骨の強化だけしか命じませんでしたから…。あなたのところのスタッフが皮膚の強化を独断で行なったようですがね」
「何を言う! 骨密度を上げて骨を頑丈にすれば防御力が上がり、ティラノの噛みつきにも耐えられるようになるという理論に欠点はないはずだ!
とにかく! まだ強化が足りない! 次に出撃させるときまでに、ジョーカーの骨を更に強化しておけ! それと体力の回復も忘れるなよ!」
そこまで言い捨てると、カロリディーはウー博士の机にジョーカーのカードを叩きつけ、研究室を出ていく。その後ろ姿を見送りながら、ウー博士は大きくため息をついたのだった。
「もう神の真似事はやめようと決めたのに…助けられた恩があるとは言え、一体私は何をしているんだ…」
その後、カロリディーはジェイソンとイシドーラを伴って彼の執務室に入った。しかし彼はまだ苛立ちが収まらないようで、檻の中のクマのように部屋中をうろついている。
「くそっ、研究員共の怠慢のせいで、私が恥をかいてしまったではないか…。これでは私のプライドが…」
そうブツブツと呟くカロリディーの後ろで、ジェイソンとイシドーラがコソコソと耳打ちし合っていた。
「そういやぁ、ドジスンの口からジョーカーを心配する言葉は聞いたことがねぇな」
「あくまでボスにとってジョーカーは、自分の自己顕示欲を満たす玩具のようなものなのだろうな。
まあ、我々もボスを揶揄できるほど恐竜共を大切に扱っているつもりはないが」
そのように囁やきあっていると、突如としてカロリディーが2人に振り向いた。
「もう我慢ならん! よくよく考えてみれば全てはあの覇轟オウガとティラノサウルスのせいだ!
こうなればお前達 !お前達は次から奴らDキッズの妨害工作をしろ! 奴らが恐竜を回収するために向かった地域へ向かい、邪魔をしてやるのだ!」
「おいおい…。おれ達にそんなガキの嫌がらせみてぇなことやれってのかよ…」
「私もホスキンスと同感だ。何よりアンバー『Ⅲ』はどうなる?」
「それも同時進行で進めるに決まっているだろう!」
「そりゃあまりにもオーバーワークだぜ…。何より、今回はおれのインドミナスもミルズのインドラプトルも戦い過ぎた。しばらく休憩させなきゃ十分なパフォーマンスは発揮できないぜ?」
ジェイソンがそう問いかけると、カロリディーは自身の机の引き出しを荒々しく開け、中の何かをジェイソンとイシドーラに投げ渡した。2人がそれぞれの手元を見てみると、それはタバコ箱くらいのサイズの小箱で、中には恐竜カードと技カードが1枚ずつ入っていたのだ。
「破壊力はインドミナスシリーズに劣るが、よりスピードがあるカード…更にその中から特に攻撃性が高い恐竜カードを選出した。
それなら十分だろう?」
「それは…そうかもしれねぇが…」
「子供相手に鬱憤を晴らすため、とは感心しないな」
「やかましい! これは業務命令だ! わかったらとっとと次の出撃に向けて準備をしておけ!」
カロリディーがそう怒鳴ると、2人はかぶりを振りつつ部屋を退出していく。2人とて組織の人間である。業務命令と言われれば逆らえないのだ。
彼らを見送ってからカロリディーは乱暴に席に座ると顔を両手で覆い、自身に暗示をかけるかのように呟き出した。
「私は間違っていない…。最後に笑うのは私だ…。
全てのアンバーさえ手中に収めれば、私の常識が世界の常識になるのだ…」
そう呟いているうちに彼の苛立ちの声は、狂気的な高笑いに取って代わられたのだった…。
その頃 Dラボ リアスの研究室
「…それで、あなたがあの人を連れてきたってことなのね。オウガ君」
「はい…。そういうことに…なりますね…」
オウガが謎の美女をDラボに連れてきた後、彼はリアスからの事情聴取を受けていた。
ちなみに彼女は今、ラボのエントランスロビーでマルムが持ってきたホットミルクに口をつけている。
「それにしても…彼女、ちょっと妙な人ね」
「どうしてそう思うんですか?」
「色々と妙なところが多すぎるのよ。
例えば肌の色。白人、なんて人種はあるけど、あの肌の白さはそれの比じゃないわ」
「でも、世の中には人間でもアルビノになる例があるじゃないですか。彼女がそれの可能性も…」
「アルビノなら髪の色も白くなるはずよ。
それなのに彼女の髪は艷やかな黒。それがおかしいこと位君でも分かるわよね?
あとは、そうね…。目は
「それは…確かに…」
そこでオウガは言葉に詰まってしまった。確かに彼女には人間離れした魅力がある。しかしそれから目を逸らそうとしてしまっているのは、惚れた弱みというやつなのだろうか。
『…おい、オウガ』
その時、ディノラウザーからレクシィの声が聞こえてきた。すぐ横を見ると、レクシィが彼を見上げている。
「レクシィ? どうしたの?」
『私もこのメガネ女の意見と同じだ。ヤツは明らかに私が知るニンゲンの姿と違う。もっともヤツから漂う匂いは、覚えがあるものだがな』
「匂い…? どんな匂いなの?」
『自身の欲にどこまでも正直なニンゲンの匂いだ。全てを奪い尽くしても尚収まることのない、邪悪な欲望の匂いだ。
その匂いがヤツの体から一際強く漂ってくる』
「邪悪な…欲望の…匂い…?」
『見たところ、オマエはヤツに一目惚れしたようだが…用心しろよ。私の嗅覚が間違っていなければ、ヤツは何かの目的を達成するためにここへやって来た可能性もある』
「うん。レクシィの嗅覚は確かだ。俺も用心するよ。…ってレクシィ! 何で俺が一目惚れしたって分かったの!?」
『オマエがヤツを見る目がこのメガネ女やピンク髪の女を見る目と明らかに違うからだ。
何日オマエと共に暮らしたと思っている』
「それは…確かにそっかぁ…」
「…君…オウガ君。聞いているのかしら?」
「は、はいリアスさん!すみません、ちょっと上の空になってて…」
「まったく…もう一度言うわね。とにかく彼女の素性を少しでもいいから明らかにすることが必要よ。
身寄りがなさそうならしばらくここで生活させてもいいけど…全てが不明な不審人物をいつまでも置いておけるほど私も博士も甘くはないわよ」
「分かってます。それじゃあ、話を聞いてきますね」
そう言うとオウガはリアスの研究室から退出していった。退出して間もなく、レクシィが話しかけてくる。
『どうやらヤツの話を聞きに行くようだな。
重ねて言うようだが…用心しろよ』
「分かってる。ちゃんと心がけるよ」
Dラボ エントランスロビー
オウガがロビーへ着くと、リュウタ達がこぞってあの美女に質問をしているところだった。しかし彼女はオドオドしているばかりで、どの質問にも答えられていない。
と、そこでマルムがオウガが気づき、呼び寄せるように手招きした。
「あっ、オウガ! 今アタシ達でこの人から話を聞いてみようとしてたんだけど…怖がってあまり話してくれなくて…」
「リュウタがあんまりガツガツ迫って聞こうとするから怖がってるんじゃないか?」
「何をーっ! そういうレックスこそ…」
「………」
「まあまあ、2人ともそのくらいで…
今から俺が彼女にいくつか質問をしてみようと思うからさ、ちょっと離れてもらっていいかな?」
オウガの言葉にリュウタとレックスは頷き、少し離れたところに座った。
そしてオウガは例の美女の隣に座り、早速質問を開始した。
「それじゃあ今からあなたに質問をしていきますね。
あなたは、自分がどこから来たのか覚えていますか?」
彼女は首を横に振る。どうやらこの話題からはもう情報は得られなさそうだ。
「じゃあ…名前が思い出せないと言っていましたが、何か名前を思い出せそうなきっかけはありませんか?
何でも構わないんです」
オウガがそう尋ねてみると、彼女は考え込み始めた。どうやら、何か思い当たるものがあるらしい。
「よくは分からないんですけど…わたしの名前を思い出そうとすると、おぼろげに浮かんでくる言葉があるんです…。
でも頭にモヤがかかったみたいな感じでそれが何なのかまだよく分からなくて…」
「そうなんですか? その言葉、何とか形にできませんか?」
オウガが更にそう聞いてみると、彼女はもう一度考え込み始めた。
すると…。
「…うっ…あぁ…」
突然頭を両手で押さえて苦しみ始めたのだ。これにはオウガのみならず、Dキッズ達も慌てた。
「ねぇ! この人苦しんでるわよ!」
「無理に思い出そうとしたから、何か悪影響を及ぼしてしまったのか…?」
「す…すみません! 頭が痛むようでしたら、無理に思い出さなくても大丈夫ですから!」
4人が代る代る呼びかけるも、彼女は頭を押さえて痛みに耐えている様子であった。
そして突然痛みが止んだのか、彼女は頭から両手を下ろし、荒い呼吸をする。額には玉のような汗が浮かんでおり、彼女が何とか痛みを耐えようとした努力が見て取れた。
そして落ち着いたところで…彼女は小さく呟いた。
「…ミ…サ…?」
「…え?ミサ…?」
「どうしてなのかしら…。分からないけど…名前を思い出そうとしたら何故かその言葉が浮かんできたんです。
もしかしたら、わたしの名前や記憶に何か関係があるのかもしれません…」
それを聞いたDキッズの4人は互いの顔を見合わせた。何も知らないところからではあったが、取り敢えず名前に関連する何かを思い出せただけでも大きな進展だろう。
「取り敢えず…これでお姉ちゃんに報告はできそうね」
「そうだな! でも…いつまでも「この人」とか呼ぶわけにもいかないし、何か呼ぶための名前を付けた方がいいんじゃねぇか?」
「そうだな…。それなら…今思いついた言葉を合わせて、『ミサ』さんって呼ぶのはどうかな?
あくまで仮の名前って感じだけどさ」
「オウガにしては安直ねぇ…」
「まあ、いいんじゃないかな。呼び名がないよりはずっといいよ」
ということで話も決まり、キョトンとしている女性にオウガが向き直った。
「取り敢えず、名前がないのは可哀想だから…ということで俺達で話し合って…あなたを「ミサ」さんって呼ぶことにしました。
あくまで仮の名前ですけど…あっ! もし気に入らないようなら別のものでもいいですよ?」
「フフフ、あなた達が一生懸命考えてくれた名前ですし、わたしはそれでいいですよ。
それにしても「ミサ」ですか…。何だか不思議な気持ちになります。いい名前をありがとうございました」
そう言うと、その女性…ミサは初めて顔を綻ばせた。その顔にオウガは勿論、リュウタとレックスもつい見惚れてしまう。
だが、それは面白くないのがマルムだ。マルムは少し仏頂面でオウガに問いかけた。
「…それで? 早くお姉ちゃんのところに連れて行った方がいいんじゃないのー? きっとお姉ちゃん待ってるわよー?」
「そ、そうだった! ミサさん! 今からリアスさんの研究室に行くので、俺について来てくれますか?」
「わ、分かりました。すぐに…」
そう言いつつミサは立ち上がって歩こうとした…が、グラリと体勢を崩してしまった。
「危ないっ!」
すかさずオウガが体を支えたお陰で、ミサは転ばずに済んだようだ。体勢を整えたところで、慌ててオウガが手を離した。
「あっ…す、すみません! 支えるためとはいえ、ついお体に触ってしまって…」
赤面したオウガがそう言って謝ったものの、当のミサはキョトンとした顔をしたが…ややあってから彼に微笑みかけた。
「いいんですよ、ありがとうございます。
オウガくん…あなたって優しい人…なの
幕間の物語は以上になります。
大きな黄色いリボンに黒髪と白い肌…一体誰なんだ…。(すっとぼけ)
オウガと彼女の関係はある程度良好かつ円満に進行させていく予定です。少なくとも、「Dキッズ・アドベンチャー」の間は…。
では次回、第13話『ローマに輝くシークレットな光!』ぜひお楽しみにお待ち下さい!
追記:登場人物「ミサ」の情報を設定集に追記しました。