古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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 前回の恐竜キング!

 太平洋上の存在しないはずの島に恐竜が現れたとの情報を得て、現地へ向かったDキッズは、そこがアクト団の基地・アジ島であったと知る。
 道中のアクト恐竜達は撃退したものの、彼らと取引をしていた秘密結社「Sin-D」のジェイソンとイシドーラが操る恐竜達に圧倒されてガブ達の恐竜カードを奪われ、オウガもレクシィをカロリディーのジョーカーに倒されてしまう。
 それでも助けに来た古代博士の助力もあり、恐竜カードを取り戻すことができた。
 そして追手としてやって来たウサラパ達3人や『Sin-D』のジェイソンとイシドーラを倒し、オウガとレクシィもジョーカーを倒してアジ島を脱出することができたのだった。
 そしてDラボに帰ったオウガがレクシィに話しかけていると、ディノラウザーを通してレクシィが自身の内心を明かしてくれた。その話し合いを通し、レクシィはオウガを信用の置ける存在だと認めてくれた。
 そんな中、眩い光と共に落ちてきた何かを確認しに行ったオウガとレクシィは、記憶喪失の美女と遭遇する。
 そして彼女から名前を聞くと、関係があるかは分からないが「ミ…サ」という言葉を聞くことができたので、彼女に「ミサ」という仮名を付けることにしたのだった…。




第13話:ローマに輝くシークレットな光!
前編


イタリア ピサ市

 

 ここはピサの斜塔で有名なイタリアのピサ市。この日街には雨が降っており、雨音以外はとても静かな様子であった。

 そんな中街中で突如として地割れが起こると、そこからいつもの卵型カプセルが姿を見せた。カプセルは地割れに溜まった水によって流されると、舗装された道の上に落ちて割れ、中のカードを排出した。

 やがて雨が止み、雲の切れ間から太陽が陽射しを投げかけてくる。その陽射しが建物の窓に反射してカードに当たったかと思うと、カードが虹色の光に包まれて実体化していく…。

 光が収まり、そこに姿を現したのは、ドーム状の頭部が特徴的な石頭恐竜・パキケファロサウルスだった!しかも何故か自慢の石頭が眩い光を放っているではないか。パキケファロサウルスは目覚めるなり目の前にそりたつピサの斜塔に頭突きを食らわせ、直立させてピサの塔にしてしまったのだった…。

 

 

三畳市 洋菓子店「トリアシック」前

 

 朝早くだと言うのに、ここの洋菓子店には長蛇の列ができていた。それもそのはず、ここでは1日40個限定でオリジナルプリンが販売されているのだ。

 辛口のパティシエ達の舌を唸らせた1品を是非味わってみたいと多くの人達が並んでおり、その中にはDキッズの3()()もいた。

 

「限定プリン、美味しいって評判だけど…こんなに並んでるとはね…」

 

「みんな朝早くから並んでるよね。俺達も早起きした甲斐があるってものだよ」

 

「…あれ? 言い出しっぺのリュウタは?」

 

 レックスの声に2人が辺りを見渡すと、確かにリュウタの姿がない。

 オリジナルプリンの話をリュウタが持ち出し、甘いものに目がないマルムと何故かやる気のオウガが乗っかり、レックスが付き合う形で来たというのに、肝心のリュウタは列に並んでいなかった。

 

「もう、すぐいなくなっちゃうんだから…」

 

 その時、どこからかリュウタの笑い声が聞こえてきた。それを聞いた3人が周囲を見渡すと、リュウタは向かいの本屋で漫画を立ち読みしているではないか。

 

「おい、リュウタ!」

 

「あっ…。悪い悪い、退屈だったから…」

 

「ちゃんと並んでないと、あんたにはプリンあげないわよ!」

 

「はいはい、心を入れ替えてちゃんと並びますです!」

 

「それならいいんだよ。じゃあリュウタも一緒に…」

 

 そうオウガが言いかけたところでまたリュウタが駆け出し、並んでいる他のお客の間からピョコピョコと顔を覗かせ始めた。

 

「プリン! プリン!! 早く食べたいなーっ!」

 

 まるで待ちきれずにはしゃぎ回る幼児のような振る舞いを見せるリュウタの耳をマルムがひっつかみ、並んでいる場所まで引き戻してきた。

 

「いいから大人しく並んでなさいよ…」

 

「ごめー…ん? 今何か聞こえなかったか?」

 

 突然リュウタがそんなことを言い出したのでオウガ達も耳を澄ませてみるが、特にこれといったものは聞こえない。

 

「何が?」

 

「俺にも何も聞こえないけど…」

 

「ほら、よく聞けよ…。恐竜って言ってるじゃん!」

 

「恐竜…?」

 

 オウガ達が首を傾げている間に、またリュウタはどこかへと駆け出していってしまった。

 

「ちょっとー! どこ行くのよー!…もう! 絶対プリンあげない!」

 

 あまりに勝手気ままなリュウタの振る舞いに、マルムは怒り心頭であった。

 と、そこで何かに気づいたのかレックスがオウガに問いかける。

 

「そう言えば、今回オウガは随分乗り気だったよね。いつもはティラノサウルスが絡まないとあまり積極的じゃないのに…」

 

「えっ…そうかな? ま、まあ俺だって甘いものは好きだしさ!」

 

 途端に慌てだすオウガを、マルムは怪しむ。

 

「怪しい…。まさか、ここのプリンをミサさんにプレゼントして、それで好感度稼ぎしようとか考えてるんじゃないでしょうね…?」

 

 マルムがそう言った瞬間にオウガの頬が赤く染まった。どうやら図星らしい。

 

「…やっぱり! 何かおかしいと思ったもの!」

 

「そ、そういう訳じゃ…」

 

 その時、彼らの持つディノホルダーやディノラウザーが甲高い通知音を響かせ始めた。恐竜の出現を感知したのだ。

 

「あっ! ディノサーチが反応してる!」

 

「え…? ってことはまさか、さっきリュウタが言ってたのって…」

 

「急いでリュウタを探しましょう!」

 

 3人で頷き合ってから列を外れてリュウタを探していると、彼は電器屋の前に展示されていたテレビに釘付けになっていた。彼らも駆け寄ってテレビを覗き込むと、恐竜の出現を報じるニュースが流れていたのだ。

 

『ご覧ください! イタリアのピサに突如現れたこの恐竜によって、ピサの斜塔がまっすぐにされてしまいました!』

 

 テレビの映像ではまっすぐになってアイデンティティを失った元ピサの斜塔が映った後、街中を歩き回るパキケファロサウルスの姿が映された。

 

「パキケファロサウルス!?」

 

「なんか頭がすごい輝いてるね…」

 

 

その頃 アジ島

 

『現在その恐竜は、ローマに向かっている模様です…』

 

 一方、アクト団達もパキケファロサウルス出現をニュースで把握していた。

 そして珍しいことに、出現した恐竜を見てDr.ソーノイダは大喜びしているのである。

 

「おおおっ! 遂にヤツが現れたぞいっ!」

 

「そんなにお喜びになるほどの恐竜なんですか? その…」

 

「パ…パ…パキケ…ファ…?」

 

「縞模様のある、デカい頭の恐竜ザンスねぇ…」

 

「パキケファロサウルスは、ワシがこの手で作り上げたシークレット恐竜ぞい!」

 

「「「シークレット恐竜???」」」

 

 ソーノイダの口から出てきた大層な言葉に、ウサラパ達は思わずオウム返しをしてしまう。

 

「今だから教えてやろう…。ワシは強い恐竜を作るために研究に研究を重ね、すごい装置の開発に成功したのだぞい!」

 

 そう言うとソーノイダは目を閉じて恍惚とした表情を浮かべる。どうやら過去の思い出に浸っているらしい。

 

「そしてその研究のために手に入れたパキケファロサウルスの卵を、自ら温めた…! 生まれた時のあの感動は、忘れはせんぞい!

それにあの純粋な美しい瞳…」

 

 しかし回想を見る限り、生まれた時から連続頭突きを食らう程度には嫌われていたようである。なんと一方的な愛であろうか。

 とは言え曲がりなりにも愛情はあるようだし、これからソーノイダはパキケファロサウルスを大切に育てていったのだろう。

 

「そしてワシは、更にパキケファロサウルスを強くすることに成功したのだぞい!

パキケファロサウルスは虹色に輝いておったぞい…!」

 

 ここでソーノイダの回想は終了した。

 なんと、パキケファロサウルスをそのすごい装置とやらで改造し、頭が虹色に輝くようにしたのだという。愛情深いと思いきやとんだ毒親である。

 しかし、ノラッティ〜は感動の涙を流していた。

 

「いい話ザンッス! 感動的ザンッスぅ〜!」

 

「…何だか恐竜が可哀想な気もするんスけど…」

 

「途中までいい話だったのに…」

 

 一方でウサラパとエドは微妙な反応である。感動的に見せかけた虐待話だったのだから当然だろう。

 だが、そんな反応などどこ吹く風と言わんばかりにソーノイダは続けた。

 

「ワシが育てたパキケファロサウルスは、我が子も同然じゃ! だから何としても、我が元に連れ戻すのじゃぞーいっ!」

 

「「「ヘイヘイホーッ!」」」

 

「…だが、この目でヤツの力を確かめたいぞい…。

よし! ワシも行くことにするぞい!」

 

「行くって…どこへです?」

 

「ローマに決まっておるぞい!」

 

 なんと、今回はソーノイダもウサラパ達3人に同行するつもりのようだ。今回こそは恐竜カードを奪取して帰ってくることができるのであろうか。

 兎にも角にも、彼ら4人は出撃の準備を始めるのであった…。

 

 

その頃 Dラボ

 

 Dラボでは、古代博士やリアスも恐竜出現のニュースを目の当たりにしていた。

 

「おお! パキケファロサウルスじゃないか!」

 

「でも…何か変な感じがするんです。ほら、見て下さい…」

 

 リアスがそう言ってパキケファロサウルスの頭部を拡大する。そのドーム状の頭部は、虹色に光り輝いていた。これには古代博士も驚く。化石にはパキケファロサウルスが頭を光らせていたという証拠はないからだ。

 

「んっ!? あの頭の光は何だ!?」

 

 と、そこへDキッズが到着する。

 

「パキケファロサウルスはどこ!?」

 

「イタリアのローマ市近郊よ」

 

「よし、行くぞ!」

 

 リアスから出現場所を聞き、Dキッズの面々は早速テレポート台へと向かう。

 その時、再びテレポートルームの扉が開いた。前回オウガが拾ってきた(?)美女・ミサはつい先日からここで働き始めていて、今はリアスに頼まれた資料を取りに行っていたところだったのだ。

 

「リアスさん。頼まれた資料、取ってきました…」

 

「あら、ありがとう。そこに置いておいてちょうだい」

 

 リアスから指示された机にミサが資料を置きに向かう時、ミサはテレポート台のDキッズ達に気が付き、軽く会釈をした。それを受けてDキッズも彼女へ会釈を返す。

 と、そこで古代博士は何かを思い出したかのように彼らに尋ねた。

 

「…ん? おい、限定プリンは?」

 

「戻ってくるまでに買っといてー!」

 

 リュウタは父親である古代博士にプリン購入を依頼すると、Dキッズの仲間と共にローマへテレポートしていった。

 

「買っといて、って言われてもなぁ…。忙しいんだけどなぁ…。仕方ない! 買ってくるとするかぁ!」

 

 なんだかんだで古代博士も限定プリンが楽しみだったようで、依頼されたからには仕方ないと言いつつ洋菓子店へと走っていってしまった。

 そんな彼を呆れ顔で見送ったリアスがふと視線をずらすと、ミサが腰を抜かした状態で座り込んでいた。

 

「ミサさん、どうしたの?」

 

「い…今、オウガ君達Dキッズの皆さんが消えてしまいましたよね…? わたしの…見間違いじゃないですよね…?」

 

「…そういえばテレポートについて、彼女に教えるのを忘れていたわ…。

私達は慣れてたけど、初めて見る人はそりゃ驚くわよね…」

 

 結局、リアスはミサにテレポートの原理とDキッズが今どこにいるのかについて話して安心させなければならなくなったのであった…。

 

 

その頃 海上

 

 ソーノイダも同伴しての出撃ということもあり、この日アクト団達が移動手段として用いていたのは、クルーザーだった。

 

「急げ急げーっ! 我が愛しのパキケファロサウルスが待っとるぞーい! スピードMAX!」

 

「全開バリバリーッ! スピードMAX! ザーンス!」

 

 ソーノイダの指令を復唱し、ノラッティ〜が何かのボタンを押すと、クルーザーは更に加速して水切りのように水面を跳ね始めた。

 まるでロデオのように暴れるクルーザーに彼らは上下に振り回され続けたが、何とか着水して元の姿勢に戻ることができた。

 しかし、これで一安心といかないのがソーノイダのメカである。

 

「「えぇっ!?」」

 

「外れちゃったザーンス!?」

 

 なんと、エドとノラッティ〜が握っていた操縦桿がさっきの暴走で外れてしまったのである。制御を失ったクルーザーは、ますますスピードを上げていく…と、そこでウサラパが前方を指さして叫んだ。

 

「前! 前!」

 

 その声でエドとノラッティ〜が正面を見ると、そこには潮を吹き上げる巨大なクジラが浮上していた。

 当然、避けることもできずにクルーザーはクジラ目がけて突っ込んでいく。

 

「「「「あぁぁぁぁぁあ!!」」」」

 

 正面衝突されたクジラは大きなたんこぶこそ作る羽目になったが、何とか無事のようだ。

 しかし衝突したクルーザーはバラバラになってしまい、ソーノイダ達も海へと投げ出される。結局一番大きく乗りやすい金属板のかけらにソーノイダが乗り、それをウサラパ達3人がバタ足で押していくことになってしまった。

 

「くぅぅぅ…」

 

「「「あらよっ…ほらよっ…あらよっ…ほらよっ…」」」

 

 まだローマへの旅は始まったばかりだと言うのにこの始末。果たして彼らは、ローマにたどり着くことができるのだろうか…?

 

 

その頃 秘密結社『Sin-D』本部

 

 カロリディーに招集をかけられたジェイソンとイシドーラは、嫌嫌ながらも彼の執務室へと向かった。

 

「ようやく来たか。では私から指令を伝える。

ホスキンス、ミルズ。イタリアのローマに恐竜が出たとの情報が入った。

そうとなれば必ずDキッズも姿を現すはずだ。お前達も現地へ行って連中の妨害をしてやれ」

 

「まったく…。マジで命じてくるとはな…」

 

「私が冗談を言っていると思ったのか?

…しかしこれは正式な任務だ。勿論、報酬も支払おう」

 

 報酬、の一言を聞いた途端にイシドーラは姿勢を正し、指令を快諾した。

 

「了解しました。報酬があるならば私は喜んでやりますよ。ボス」

 

「ほんっとにお前、金が絡むとどんな案件も即諾するんだな…」

 

「お前もだぞホスキンス。軍で教わらなかったのか?上官の命令は…」

 

「あぁ、あぁ、分かった。行ってくるよ。行ってくりゃいいんだろ?」

 

「フン、最初からその態度でいればいいんだ。

ところでインドミナスシリーズはまだ回復中のようだな。それなら前回私が渡したあの恐竜達を使えばいい。

そして…引き続きアンバー『Ⅲ』を探せ。言っておくが覇轟オウガを倒す必要はないぞ。奴に引導を渡しアンバーを手にするのは私なのだからな」

 

「むしろアンバーの収集がおれ達の本命じゃねぇかよ…。

まあ分かった。行ってくるよ。ボスの指令だからな」

 

 カロリディーからの任務を受けた2人は、ジェットヘリでイタリアへ向かったのであった…。

 

 

その頃 イタリア ローマ市

 

 Dキッズがテレポートしてきた先は、ローマの市街地だった。今のところパキケファロサウルスは影も形も見えない。

 代わりにテレポートした直後の彼らの前からは、慌てた様子のローマ市民達が走ってくるではないか!

 突然のことではあったが、彼らはDキッズ。ウサラパ達のようにわざわざ踏まれることはないのである。ローマ市民達は彼らの横をすり抜け、どこかへと逃げていった。

 と、そこで市民達が走ってきた方向を見ていたレックスが声を張り上げた。

 

「あそこだ!」

 

 そこには、ニュース映像でも見たあのパキケファロサウルスが立っていた。半球形の丸い頭が虹色の輝きを放っていることからも間違いない。パキケファロサウルスはDキッズに気づくと、またどこかへと走っていってしまった。

 

「それにしても、一体何なんだ? あの虹色の光は…」

 

「わかんない…」

 

「『Sin-D』のジェイソンやイシドーラが出してきたインドミナス・レックスとインドラプトルも虹色の光と共に出てきてたし、何か関連性があるのかもしれないね。

とにかく、何とかして後を追いかけたいけど…」

 

 オウガが追いかける手段を考えていると、ふとリュウタが何かを見つけたようで指さした。

 

「あっ! あれを借りようぜ!」

 

 そこには、比較的新しい子供用自転車が4台打ち捨てられていた…。

 

 

その頃のアクト団

 

 なんということだろうか。ソーノイダ率いるアクト団はこの時には既にローマに到着できていた。クルーザーが大破したところがイタリアの近海だったのだろうか。

 兎にも角にも、彼らはパキケファロサウルスを探して回っているようだ。木々が薙ぎ倒された林の中へ続いていくパキケファロサウルスの足跡を見て、ソーノイダが唸る。

 

「うーむ…一足遅かったぞい…。じゃが見るぞい! この破壊力!

あの可愛かったパキケファロサウルスが、泣く子も黙る強い恐竜に育ってくれとるぞーい!」

 

 むしろパキケファロサウルスの暴れ様に大満足な様子のソーノイダであった。

 そのことはさておいて、ウサラパが不思議そうな口調で呟いている。

 

「おかしいねぇ…?」

 

「ん? どうしたんスか、ウサラパ様?」

 

「イタリア人って美人に興味がないのかしら? 道中誰にも声をかけられなかったのよ…」

 

「…何考えてるんスか?」

 

 ウサラパの世迷言にエドが呆れ顔で反応していると、彼らアクト団の方へもローマ市民が逃げてくる。その中には、容姿端麗なイタリア人男性も幾人かまじっていた。

 

「やっぱり美しさに国境はないわぁ! 流石情熱の国イタリアねぇ〜!」

 

 ウサラパは喜ぶものの、勿論ローマ市民は彼女などに気を配っている余裕はない。避けないで突っ立っていたウサラパ達は、かつて万里の長城でもされたように散々に踏まれてしまっていた。ちなみにソーノイダは素早く横に飛び退いていたため、難を免れることができたようだ。

 呆れ顔で無様な様子のウサラパ達を見ていたソーノイダだったが、聞き覚えのある声を耳にしてそちらへと目を向ける。そこにはあのパキケファロサウルスがいた。

 

「おおっ! いたぞい!

おお…我が愛しきパキケファロサウルスよ〜!」

 

 ソーノイダがそう呼びかける後ろにウサラパ達が控えたところで、パキケファロサウルスが彼らの方を見る。すると、頭から凄まじい光が放たれ、彼らを包みこんだ。

 

「ま、まぶしい〜!」

 

「何なんザンス! この光は〜!」

 

「そ、そうじゃ! ヤツを見るときにはこれが必要不可欠だったぞい!」

 

 そう言いながらソーノイダは懐からサングラスを取り出し、かけた。それを見たエドが呆れた様子でソーノイダに問いかける。

 

「自分が作った恐竜が光を放つことを忘れてたんスかぁ…?」

 

「ちょっと思い出すのが遅れただけぞい!」

 

「それを忘れてたって言うんですよ…?

っていうかノラッティ〜! あんたはもうサングラスかけてるのに何で眩しがってるのさ!」

 

「違うザンス! これはサングラスじゃなくてただ黒いだけのメガネザンス!」

 

 と、そこでソーノイダが辺りを見渡すと、パキケファロサウルスの姿は影も形もなくなっていた。

 

「…ん? どこぞい? ヤツはどこにいったんじゃぞい?

探せーっ! 早く追うんじゃーっ!」

 

 ソーノイダに命じられたウサラパ達は、彼を担ぎ上げると騎馬戦のような体勢で駆け出したのであった…。

 

 

その頃 Dキッズ側

 

 Dキッズは打ち捨てられていた自転車を拝借し、パキケファロサウルスを追いかけていた。しかし、古代ローマ風の柱が立ち並ぶ立体歩道橋の付近でその姿を見失ってしまったようだ。

 

「こっちに入り込んだはずだけど…」

 

「なんて敏捷性なんだ…。自転車で追いかけてたのにあっという間に姿を晦ませるなんて…」

 

 口々にそう呟きながらDキッズが周囲を見渡していると、レックスがまっすぐ柱の影を指さした。

 

「あそこだ!」

 

 その先を見てみると、なるほど姿は見えないが頭頂部の輝きが移動していく様がよく見えるではないか。

 

「オウガも言った通り、すごいすばしっこい奴だな…」

 

「スピードならエースに任せてくれ!

ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

グォォォォォォン!!

 

 レックスがすぐさま前へ出ると、エースのカードを手にとってディノホルダーにスキャンした。するとエースが成体の姿で降り立ち、パキケファロサウルスの後を追いかけ始める。

 

 

 その頃、ソーノイダ達もパキケファロサウルスの後を追っている途中だった。そんな彼らの目の前で、バトルフィールドが展開されていく。

 

「あっ! どこかでバトルが始まったッスよ!」

 

「もしや! ガキンチョ達に先を越されてしまったのかぁーっ!? 何をしとる! 早く行けーっ!」

 

「「「へーい…」」」

 

 もう散々走らされてクタクタのウサラパ達だが、ソーノイダの命令とあれば逆らうことはできない。フラつきながらもソーノイダを運んでいったのだった…。

 

 

戻ってDキッズの方では…

 

 柱の回廊の中で、エースは引き続きパキケファロサウルスを追いかけていた。エースはDキッズの恐竜達の中でもトップのスピードを誇るはずなのに、依然としてその差は埋まることがない。

 それどころか、前を走っていたはずのパキケファロサウルスは忽然と姿を消してしまった。

 

「消えたぞ!?」

 

「エース! 後ろだ!」

 

 いつの間にかエースの後ろに回り込んでいたパキケファロサウルスが、背後から突進してきた。エースは避けられるはずもなく突き飛ばされ、地面に転がってしまう。

 

「あぁっ、エース!」

 

 そしてパキケファロサウルスの攻撃はこれだけでは終わらなかった。なんと近くの柱に頭突きをし、倒してしまったのだ。倒れた柱は次の柱を倒し、次の柱はそのまた次を…とドミノ倒しのように柱は勢いを増して倒れていき、そのうちの1本が横たわるエースに倒れようとしている!

 

「やばい…戻れ! エース!」

 

 しかしレックスの判断も早かった。素早くディノホルダーを操作し、エースをカードに戻して回収する。カードがレックスの手元へ向かっていくのとほぼ同時に、柱は先程までエースがいたところへ倒れ込んだ。

 

「スピードだけじゃない…。すごい破壊力だ!」

 

「しかもドミノの原理まで理解してるように見えたね。強く賢く素早い…。これは強敵だ…」

 

 レックスとオウガが感嘆の言葉を漏らす。

 その時、先程まで空を覆っていた雲の切れ間から陽射しが降り注いできた。それをパキケファロサウルスは見つめると嬉しそうな声をあげ、太陽の輝く方角へ走っていく。

 

「追うぞ!」

 

 リュウタの言葉にオウガ達も頷き、再び自転車に跨ってパキケファロサウルスを追いかけ始めたのであった。

 

 

 その頃、パキケファロサウルスを探していたソーノイダ達は、バトルフィールドが解けたことを把握したところだった。

 

「バトルフィールドが解けたっス!」

 

「ガキンチョ共にやられたのかしら?」

 

 ウサラパのその言葉にソーノイダは反論した。そのついでに何故かエドが頭を叩かれ、涙を滲ませている。

 

「バカモン! ワシが作った泣く子も黙るシークレット恐竜がそう簡単に負けるはずないぞい!

ワシには分かるぞい! すぐ近くにおるぞい!」

 

「ホントッスかぁ?」

 

 半信半疑といった様子のウサラパ達だが、道路に写るソーノイダの影に、何か大きなものの影が被さったことにノラッティ〜が気付いた。

 恐る恐る後ろを振り返ると、すぐそばにパキケファロサウルスの顔があるではないか。

 

「え?…うわーっ! 後ろザーンス!」

 

 その言葉にソーノイダ達も振り向く。次の瞬間全員が飛び上がって驚き、ウサラパ達はソーノイダを放りだして逃げ出してしまった。

 そして、地面に横たわるソーノイダにパキケファロサウルスが顔を近づけていく。

 

「おおっ! 会いたかったぞい! 古代ローマの遺跡にも勝る、ワシの最高傑作よ…!

ほれ!こっちに来い! 一緒に帰るぞーいっ!

フフフ…照れんでもよいぞい…」

 

 ソーノイダはすぐさま起き上がり、必死にパキケファロサウルスへ呼びかけるものの、当のパキケファロサウルスは彼のことなど眼中にもないようだ。どうやらソーノイダのことを覚えていないようである。

 その様子を、ウサラパ達も物陰からこっそりと見ていた。

 

「あれ…完璧に無視されてるわよね?」

 

「会えない時間が2人を引き裂いたザンス…」

 

「長すぎた春ッスねぇ…」

 

 口々にソーノイダとパキケファロサウルスの様子について感想を述べていると、そこへ自転車に乗ったDキッズが駆けつけてきた。

 

「あっ! ゾイじじい!」

 

「ぬ? 現れおったな! 忌々しいガキンチョ共! この間の恨み、忘れてはおらんぞい!」

 

「何でわざわざゾイじじいが島から出てきたんだ!」

 

「いつも通りオバさん達だけでいいのに!」

 

「キィーッ! オバさん言うなーっ!」

 

 いつものマルムのオバさん呼びにすぐさまウサラパも反応した。

 と、そこで突然思い出したかのようにソーノイダがDキッズ達に向けて叫んだ。

 

「そうじゃ! ガキンチョ共! この前持っていったワシのカードを返せーっ!

でないと、ワシが作ったパキケファロサウルスでお前達を叩きのめしてやるぞい!」

 

「作ったってどういうことだ!?」

 

「そもそもカードは殆ど残していったじゃないですか! 全部水属性の技カードでしたけど!」

 

「それに今の言葉聞き逃さなかったわよ! あなた達、パキケファロサウルスに何をしたのよ!」

 

 マルムがそう聞くと、ソーノイダは不敵な笑みを浮かべながら答えた。

 

「「強さ」を与えてやったんだぞい。泣く子も黙る我がシークレット恐竜の力を試す時が来たぞい!」

 

「シークレット恐竜…!?」

 

「いっけーっ!」

 

 そう宣言し、ソーノイダがパキケファロサウルスに攻撃指令を出した。

 

 その様子を影から窺っている、何者かの影がある。そのシルエットはパキケファロサウルスに酷似しているものの、体にあるのは丸い模様で、頭も光っていない。その上、体格もずっと小さいものだった。

 そいつはパキケファロサウルスを見て、低く唸り声を上げたのだった…。

 

 




今回はここまでです。
ちなみに同名の恐竜がJP・JW恐竜にいた場合でも戦うには大きさが小さすぎる場合はお助け恐竜として登場させたいと考えております。
後編では、前回の幕間の話でチラッと登場したジェイソンとイシドーラの新恐竜が登場する予定です。
では、後編をお楽しみにお待ち下さい。
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