古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

4 / 94
続いて、第1話後編です。
どうぞ最後までお楽しみ下さい。


後編

その日の夜 三畳市 裏山頂上の古代恐竜研究所

 

「リアス君。翻訳機は出来そうか?」

 

「ええ。博士が要望された通りの…石板に取り付けられたチップの機能を翻訳する装置は出来そうです」

 

 竜野リアス…Dラボの研究員でありマルムの姉でもある…と協力し、古代博士は石板を組み込んだデバイスの開発に勤しんでいた。

 

「でも…今でも信じられません。本当に石板に恐竜のマインドがあって、さらにはチップがそれを読み取るものなんでしょうか?」

 

「この石板は6500万年前…いや今の研究では6600万年前か…とにかく、恐竜が絶滅した頃に出来たものと推測される。それが何か念のようなものを発しているのも分析から確かだ。

恐らく…絶滅した恐竜のマインドが凝縮されて石板になり念を発していると考えられる。そしてチップはそれを読み取るものなのだろう。

誰が作ったのかは知らんが、恐竜をカード化させるシステムもそのチップに組み込まれてるに違いない!

…ってリアス君!? 聞いてなかったの!?」

 

 そんな古代博士の熱狂的な説明を途中で聞き流し、リアスはデバイスの開発を続けていた。

 

「…ふう。デバイスは明日には完成する目処が経ちました。

それにしても…カードから恐竜が現れるなんて不思議なこともあるものですね。

オウガ君の持っていたカードからは現れなかったと聞きましたが…」

 

「うむ、そうなんだ。彼はかなり落ち込んだ様子だったよ。

だがあれは間違いなく、トリケラトプスのカードとほぼ同じ性質を有したものだった。だから本来、実体化できないはずはないんだ」 

 

「それならば何故…?」

 

「少なくとも言えることは…あのティラノサウルスは、石版では実体化させることができないということだけだろうな…」 

 

 

 翌日、Dキッズたちはガブを連れて海浜公園にやって来ていた。リュウタがフリスビーを投げ、それをガブがキャッチして遊んでいる。

 

「よーし! いいぞガブ!」

 

『ガブガブ♪』

 

 そんな1人と1匹の様子を眺めながら、オウガとレックス、マルム達は談笑していた。

 

「ガブってホント犬みたいね。とても恐竜とは思えないわ」

 

「ガブはリュウタを本当の親であるかのように思ってるらしいよ。刷り込みとかそんな現象なのかもしれないね」

 

「刷り込みっていうと…リュウタを最初に見たからってこと?」

 

「僕もそう思う。だけど、ガブのカードを使えるのはリュウタが持つ石板だけだろ? なら僕達の見つけた石版は一体なんだったんだ?」

 

「そういえばそうよね。

アタシ達が拾った石板にも、その近くにもカードは無かったし…」

 

「…これはあくまで僕の予想なんだけど…カードはまだ他にもあると思うんだ。ガブの石板の紋章は一緒だったろ? 僕達の石板にはそれぞれ違う紋章があったから…」

 

「あ、そっか! アタシ達の石板と同じ紋章のカードがどこかにある筈だわ!」

 

「ということは俺の場合、炎の石版を見つけないとダメだってことなのか…」

 

 レックスの推測を聞き、オウガはがっくりと肩を落とした。

 

「元気出してよオウガ。きっと大丈夫よ! アタシ達が石版と巡り合ったのにオウガだけ巡り会えないなんてことあるわけないわ!

すぐにでも見つかるわよ!」

 

 落ち込むオウガをマルムが励ましていると、海沿いの道で何か騒ぎが起こっているようだった。オウガ達3人が海の方を見ると…何かが海の向こうからやってくるのが見える。

 

「あ…あれは…!」

 

「っ! 来る!」

 

 何か不穏な気配を感じ取ったリュウタがガブを連れて3人のもとへ駆け寄ってくる。

 

「どうした! レックス?」

 

「リュウタ! アレ!」

 

 マルムが海の方を指差した、その時だった。

 

ガァァァァァァァァッ!!!

 

 なんと、全長13メートルはあろうかという巨大なティラノサウルスが海中から姿を現したのだ!

 

「な…何でここにティラノサウルスが!?」

 

「すっげー! 本物のティラノだ!」

 

「リュウタ! 感心してる場合じゃないわよ! ほら、みんなも早く…」

 

 そう言いかけてマルムがオウガを見ると、彼は目をキラキラさせながら目の前のティラノサウルスを見つめていた。

 

あああ…すごい! 本物のティラノサウルスだ!

全身に張り詰めた筋肉! 強靭な足と尻尾! 口の中に並ぶステーキナイフのような歯! そしてこの圧倒的強者を感じさせる佇まい! あああ…やっぱりティラノサウルスは最高だ…!

 

「そうだった! オウガはティラノサウルスのこととなると我を忘れちゃうんだった!」

 

「オウガも早く逃げよう! このままだと僕たち全員食べられてしまう!」 

 

 ティラノサウルスから逃げる為に4人と1匹は懸命に走った。

 しかし当のティラノサウルスは彼らをターゲットとして定めたのか、脇目も振らずに追いかけてくる。

 

「ヤバいヤバい! 追いかけてくる!」

 

「バラバラに分かれて撹乱するんだ!」

 

 レックスの提案でバラバラに分かれた4人と1匹だったが、ティラノサウルスはリュウタとガブに狙いを絞り追いかけ続けていた。

 

(もしかすると、あのティラノサウルスの狙いはガブなんだろうか…?) 

 

 オウガがそう推測を立てていた時、そこへ古代博士が駆けつけてきた。

 

「おおっ! アレはまさしくTレックス!

しかもオウガくんのものとは色も姿も違うな!」

 

「父さん!」

 

「リュウタ! もう安心だ! ここは私に…まっかせなさーい!」

 

 棒状の装置を持った剣竜が、向かってくるティラノへと走り出した。

 

「ティラノサウルス! ここで会ったが6600万年目! 大人しくお縄につけい! そおりゃああ!」

 

 そのまま古代博士は手にしていた武器のスイッチを押した。

 すると棒の先端が虫取り網のように広がり、ティラノの口に被さったのだ。

 …だが、あのティラノサウルスがそんなチャチなもので食い止められるはずもなく…あっさりと網は破られてしまった。

 

「な、なんと!」

 

「古代博士! ティラノサウルスはワニとは違うんですからそれじゃあいくらなんでも無理ですよ!」

 

「しまった! うわああっ!」

 

 食べられると思い、古代博士が頭を覆ってしゃがみ込む…が、ティラノは彼を無視してリュウタの方に向かって歩き出した。

 

「まさかオレを狙ってるのか? …うわあああ!」

 

 悲鳴を上げながらリュウタは近くにあった店の中へと逃げ込む。しかしティラノは小屋に近づき少し睨むと、そのまま軽く頭突きをして小屋を破壊してしまった。

 そして、逃げ場をなくしたリュウタに、大きく口を開けながら迫っていく…。

 

「お、オレを食っても腹壊すぞ! やめろ! やめろぉ!!」

 

 リュウタの命乞いの言葉が辞世の句になるかと思われたその時だった。

 なんとガブが猛然と駆け出し、ティラノの鼻先に噛み付いたのだ。だがティラノは蚊に刺された程度としか感じていないようで、軽く頭を揺らしてガブを振り解いてしまった。

 ガブは投げられた勢いのまま木に激突し、そのまま地面へとずり落ちる。

 

「ガブ! 逃げろ! 逃げるんだ!」

 

 しかしガブはその場から動けそうにない。どうやら今の一撃がかなり堪えたようだった。

 その隙にとどめを刺そうということなのか、ティラノが口を大きく開きながら向かっていく。このままではガブが危ない!

 

「リュウタ! これを使えっ!」

 

 その時、古代博士が何かをリュウタに投げ渡した。見るとそれは何かしらのデバイスだった。

 

「な、何これ? ゲーム機か何かなの?」

 

「お前達の石板の機能を使いやすくした装置だ! それを使ってガブを大きくしろ! 取り扱いのマニュアルはコレだ!」

 

 続けて古代博士がマニュアルを投げ渡すも、それは六法全書もかくやというほどに分厚い。とても今読んでいる時間はないだろう。

 

「こんな分厚いの読んでいる暇なんか無いよ!」

 

 それでも彼は何とかデバイスを操作し、ガブを元のカードに戻すことには成功した。

 

「リュウタ! よく聞くんだ!

真ん中の部分にカードを読み取る箇所がある! やり方は石板の時と一緒だ!」

 

「分かった! いくぜ!」

 

 リュウタは電子機器の読み取り部分にガブのカードをスライドさせスキャンした。

 すると電子機器の液晶画面に雷のエンブレムが現れ、ガブが手足から少しずつ変化していくではないか。

 そして体に雷を迸らせながら、ガブは本来の姿であるトリケラトプスになった。

 成体化したガブとティラノサウルスが向かい合うと、途端に空や木の色が変色し、周りの空間も変化していく。

 

「なんだこの風景…? まるで中生代みたいだ…」

 

「これは…時空が歪んだのか…?」

 

 

その頃 先ほどのティラノ上陸地点付近

 

「ハァッ…ハァッ…死ぬところだったわ…」

 

「何とか助かったザンス〜…」

 

 海浜公園の桟橋にしがみついて荒い息をしている3人組がいた。昨日アジ島から意気揚々と出撃したはずのウサラパ達アクト団工作員の面々である。

 彼らが乗っていた潜水艦は道中巨大な船舶と衝突し、粉々になってしまったのだ。

 

「ティラノちゃんに陸地まで乗せていってもらおうと思ったのに…あの子ったらアタシたちを置いてっちゃうんだもの…」

 

「あぁ…疲れたッス…」

 

 

 ウサラパ達が疲れて動けなくなっている頃、既にガブとティラノの戦いは幕を開けていた。

 ガブはその長大な角を活かしティラノに突撃していくが、ティラノも負けじと噛みつきで応戦する。

 だが噛みつきだけでは不十分だと判断したのか、ティラノは尻尾を振るいガブに一撃を食らわせた。

 怯んだところを見逃さず、さらにティラノは角に噛みつき、ガブを投げ飛ばす。

 

「あぁっ! ガブ!」

 

「ダメだ…。やっぱりトリケラトプスがティラノサウルスに勝てるわけない…」

 

「いや、トリケラトプスは十分ティラノサウルスに通じるポテンシャルはあるはずなんだ!

少なくとも俺が知ってる化石証拠だと…」

 

「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?

このままだとガブが…!」

 

 横倒しになったガブの腹に、ティラノは容赦のない蹴りを入れ続ける。すると、リュウタの手元にあるデバイスが赤く点滅し始めた。

 

「父さん! これどうなってるの?」

 

「まずいぞ…。ガブの体力が少なくなっているんだ! このままではやられてしまうぞ!」

 

 古代博士が悲鳴のような叫びを上げる。

 どうすればこの状況を打開できるのか分からない。

 ガブは力尽きる寸前。

 他に対抗できる手段もない。

 

 もし、俺のティラノサウルスも戦えたら…。

 そうすれば、みんなを助けられるのに…!

 

 オウガは心の中でそう叫びながら、手に握るカードを胸元へ…ちょうど琥珀のペンダントの辺りに当てた。

 

 その時、オウガの耳に得体の知れない声が響いてきた。

 

『わしと…契約したまえ…』

 

「…は?」

 

 思わず辺りを見渡すが、そんな声をかけてきそうな存在は見当たらない。

 当惑するオウガだが、やがてその声はペンダントの琥珀から聞こえてくることが分かった。

 

『わしはジュラシック・アンバー。

そこの君よ、わしと契約を交わしたまえ。さすればそのカードに眠る魂を目覚めさせ、襲い来る敵を打ち負かす力を授けようではないか』

 

「…契約? 契約と言うからには、メリットの他に何かしらデメリットはあるんですか?」

 

 オウガが声を潜めて尋ねると、暫しの沈黙の後、再び声が聞こえてきた。

 

『…結論から言えば…ある。もし君がこのジュラシック・アンバーを持つにふさわしい力量にないと判断した場合…正確には、君がこの恐竜を導くことができなければ、契約は破棄させてもらう。

そうすればこの恐竜は支配から解き放たれ、最悪の場合君はこの恐竜に食い殺されることもあり得るだろう。…いかがかね?』

 

 オウガはしばらく考えた。

 もし自分がこのティラノサウルスを正しく導くことができなければ、その代償として自分の命を奪われるかもしれないのだという…。

 改めて眼前の光景を確認する。

 ガブはまだ横倒しにされて赤いティラノからの連続蹴りを受けている。このままでは間もなく力尽きるだろう。

 俺が動かなければ、どのみちここでみんな赤いティラノに食べられてしまうかもしれない。

 何より…俺がこのティラノサウルスと共に戦うことができるのなら、これ以上望むようなことなど何もない。

 

「…分かった。あなたと契約します。

だから、俺をこのティラノサウルスと共に戦わせて下さい!」

 

『よくぞ言った! 今を以て君をこのジュラシック・アンバーの契約者と認めよう!

わしの銘は【伝説(レジェンド)】!

そして今こそ君の望んだ力を見せようではないか!

これこそ恐竜の頂点に立つ存在!

崇高にして偉大なる、恐竜の女王である!

燃え上がれ!ティラノサウルス・レックス!!

 

 その瞬間、手の中のカードから凄まじい光が放たれた。

 湧き起こった深紅の光に包まれて姿を現したのは…

 

 筋肉質で灰褐色の巨大な身体。

 口に並ぶのはステーキナイフのような鋭い歯。

 身体中に走る無数の傷痕。

 思わず跪きたくなるほどの気品と力強さ。

 そして爛々と輝く琥珀色の瞳。

 それはまさしく、オウガの持つ恐竜カードに描かれた姿そのもの…。

 

ゴガアァァァァァッ!!

 

 ついにオウガのカードから、ティラノサウルス・レックスが顕現したのだった。

 

「…ティ、ティラノサウルスが…俺のティラノサウルスが出てきてくれた…!」

 

 オウガが感動のあまり瞳を潤ませながら呟く。

 リュウタ達や古代博士も驚く中、オウガのティラノサウルスは猛然と駆け出し、未だガブを蹴り続けているティラノを思い切り突き飛ばした。そしてもんどり打って転がるティラノを追いかけ、更に追撃を加える。

 

「す…すげー…! がんばれ! オウガのティラノ! あの赤いティラノを倒せー!」

 

「ね、ねえ…なんかオウガのティラノ、あの赤いティラノよりも1回りくらい大きくない…?」

 

「私の見立てでは全長13.5メートルほどといったところか…。現状見つかっているティラノサウルスと比べても最大級の体格だな…」

 

 バトルのペースは完全にオウガのティラノとガブの手に渡った。

 相手のティラノの噛みつきを躱してオウガのティラノが噛みつき、地面に投げ倒したところをガブが突撃して突き転がす。そんな隙のない攻めを相手のティラノに食らわせていた。

 

「よし…そろそろいい頃だ。リュウタ!

それにはカードホルダー機能もついていてな、もう1枚のカードもそこにしまっておいているんだ!

それを使えば何かが起こるかもしれない…。使ってみなさい!」

 

「よ、よっし! 分かった! いくぜ!」

 

来電蓄電(エレクトリックチャージ)

 

 リュウタがカードを読み取り口に通すと、にわかに空が曇り、雷雲が立ち込めてきた。そこから落ちた一筋の雷がガブの体に当たり、全身に電撃を纏ったかのように電流が迸る。

 そのまま角に電気エネルギーを蓄えたかと思うと、角を高く掲げて相手のティラノへと突撃した。

 相手のティラノは大きくバウンドしながら公園の方へと転がっていくが、まだ力尽きたようには見えない。

 技を終えたガブは最後の力を使い果たしたのか、カードに戻っていってしまった、

 

「く、くそっ! まともに食らったはずなのに!」

 

「もうガブはフラフラよ! これ以上戦えないわ!」

 

 どうするべきかオウガも考えを巡らせていると、ふと手の中にもう1枚…ティラノサウルスではないカードを握っていることに気がついた。

 見れば、炎の紋章と『狙大爆砕』の文字が書かれている。

 

(リュウタが使った来電蓄電は恐らく恐竜に技を使わせるためのもの…。

それなら俺のティラノサウルスも、これで技を出せるはず…!)

 

「みんな大丈夫だ! とどめは俺のティラノが刺す!」

 

 そう宣言したオウガは、今度は迷いなく琥珀のペンダントに技カードを当てた。

 

狙大爆砕(クリティカルエクスプロード)

 

グオオオオオオン…!!

 

 その瞬間、オウガのティラノは全身に深紅のエネルギーを纏い、高らかに咆哮を上げた。

 そしてそのまま相手のティラノに力強く体当たりをして後退させると首筋に噛みつき、地面に捻じ伏せる。

 続いて動きの取れない相手に食らいついたままじっくりと口に炎を溜め始め、溜めきったというところでその炎を思い切り炸裂させた。

 想像を絶する大爆発が起こり、オウガ達にも爆発の衝撃が届く。

 煙が晴れた時、相手のティラノは地面に倒れ伏したまま動かなくなっており、やがてその体はカードに戻っていった。

 オウガのティラノはその姿をじっと見つめると、高く天を仰いで再び咆哮を轟かせたのであった。

 

 変化していた周りの景色も元に戻り、ようやくホッと一息がつける…と思ったその時だった。

 オウガのティラノがギロリとオウガたちを睨みつけたかと思うと、再び咆えた。

 

「こ、この咆哮は…まさか私たちを敵と見なしているのか…!?」

 

 古代博士の分析は正しかった。

 その逞しい足で大地を踏みしめ、ティラノがこちらへと駆け出してきたのだ。

 頭を低く下げて口を大きく開けている…これはどこからどう見ても攻撃姿勢だ!

 

「待ってくれ、ティラノ! どうか止まってくれ!」

 

 オウガがそう叫びながら琥珀を握りしめると、ピタリとティラノの動きは止まる。間もなくティラノの体は深紅の光に包まれ、カードとなってオウガの手元に戻っていったのであった。

 

「び…びっくりした〜…。今度はオウガのティラノに食われちゃうのかと思ったぜ…」

 

「でも、どうして僕たちに攻撃しようとしたんだろう? 僕たちは何か害を及ぼした訳ではなかったんだけど…」

 

「………」

 

「ね、ねぇオウガ…あんまり思い詰めないでね。

もしかしたらあのティラノも少し混乱していたのかもしれないし、あの子のお陰でアタシ達もガブも助かったんだから…。

あっ! そういえばガブは!? 死んじゃったの!?」

 

「まさか…」

 

 リュウタが心配そうな顔でカードを右からスキャンすると、ガブが元気そうな様子で姿を現し、早速リュウタの鼻に噛み付いた。

 

「大丈夫か? …いてててっ!」

 

「見たところ大丈夫みたいだね。怪我もなさそうだし何よりだよ」

 

「そういえば敵のティラノもカードに戻ってたけど、どうなったのかしら…」

 

 マルムの言葉でみんながティラノが倒れていた方向を見ると、そこにはティラノのカードを拾い上げる3人組の姿があった。

 その中の緑髪の女…ウサラパが声を張り上げる。

 

「あんたたち! よくもうちのティラノちゃんを痛めつけてくれたわね!」

 

「な、何だよいきなり…。そもそも誰なんだお前たち!」

 

 リュウタの問いを受け、ウサラパ達が名乗りを上げる。

 

「アタシ達は!」

 

「泣く子も黙る!」

 

「秘密結社アクト団の!」

 

「ウサラパよぉ〜ん♡」

 

「ノラッティ〜ザンス!」

 

「エドッス!」

 

 名乗りは相当練習をしたのだろうが、Dキッズたちの反応は微妙なものだった。

 

「…泣く子も黙る?」

 

「秘密結社?」

 

「アクト団だって?」

 

「誰も泣いてないんですがそれは…」

 

「…ふ、フン! 今日のところは自己紹介だけで勘弁してあげるわ! 今度会った時は必ず泣かせてあげるから覚えておきなさい!」

 

 一方的にまくし立てると、ウサラパ達はさっさと逃げ出していった。逃げ足も速い連中である。

 

「何なんだあいつら…」

 

「変なオバさんね…」

 

 マルムがそう呟いた瞬間、怒りで顔を真っ赤に染めたウサラパが駆け足で戻ってきた。

 

「なんですって!? 今オバさんって言ったわね!? 確かに聞こえたわよ!!

アタシはね! 18よ18!!」

 

「うわっ、すごい地獄耳だな」

 

「ウサラパ様、それはいくら何でも無理があるッスよ…」

 

「19よぉぉ〜…!」

 

 結局ウサラパはノラッティ〜とエドに2人がかりで担がれて退場していったのだった。

 

「何なのよあのオバさん。あの見た目で18、19だって。そんな訳ないじゃない」

 

「まあそう言ってやるなよマルム。女性っていうのはいつまでも若い気持ちでいたいものなんだよ」

 

「あー…そういえばオウガの女性の好みって年上だったもんねー。

ふ〜ん、あーんなオバさんも守備範囲内なの〜?」

 

「いや、流石にあの人は俺的にもないかな。

多分実際の年齢は三十路手前くらいだと思うし」

 

「やっぱりオバさんだった…」

 

 そして今度はアクト団と入れ替わるようにして古代博士が現れると、リュウタ以外の3人にも同じようなデバイスを手渡した。

 

「父さん、これって何?」

 

「石板を組み込んだ翻訳機だよ」

 

「翻訳…? 何を翻訳する機械なんです?」

 

「石版が伝えたがっている恐竜の心さ。

オウガ君の場合は石版がないから…もしかすると、そのカードの声を聞くことができるんじゃないかな」

 

「ティラノサウルスの声を…!?

聞きたいです! 聞かせてください!」

 

 そしてオウガたちが翻訳機に手を取ると、途端に4人の体が光り出し…どこからともなく謎の声が聞こえてきたではないか。

 

『助けて…私たちを助けて…』

 

「助けてって…」

 

「どういう意味なんだ…?」

 

「アタシにも分からないわ…」

 

 

 

『ユルさない…私は…ニンゲンをユルさない…!』

 

「……え…?」

 

 

 

 恐竜の言葉を聞いている彼らの姿を、物陰からこっそりと見つめる人物がいた。

 髭面で恰幅の良い体格の男は、オウガ達から目を逸らさないようにしながら手元の衛星電話を弄る。

 しばらく呼び出し音が流れた後、電話が繋がった。

 

『…私だ。ようやくジュラシック・アンバーを見つけたのか?』

 

「ああ見つけたとも。まったくウー博士め。余計なことをしてくれたもんだ。お陰ではるばるこんな遠い極東の国まで来る羽目になっちまったよ」

 

『お前が博士から目を離さなければこんなことにはならなかっただろう。違うか?

…それで? アンバーにはもう保持者がいるのか?』

 

「あぁ、いるよ。小学校高学年くらいのガキがその保持者だ」

 

『それならば話は早い。子供相手ならさっさと奪ってしまえばいいだろう』

 

「まあそう言うなよ。ヤツの周りにはどういうわけか石版に選ばれた連中がいやがる。それも3人だ。

無計画にいくとむしろこっちが危険だぜ」

 

『…何か作戦があるかのような言い方だな』

 

「その通りよ。ヤツを何とかして石版の保持者たちから引き離す。

そうすりゃああとは孤立無援のガキに『平和的交渉』を持ち込めばいいのさ。

いきなり殴りかかるなんてのはおれの流儀じゃねぇからな」

 

『もし取引に応じなければどうするつもりだ? …ホスキンス』

 

 電話の相手からの問いかけに、男はにんまりと笑みを浮かべながら答えた。

 

「そんときは本当に…ほんっとーに残念だが…『実力行使』しかないだろうな。

心配すんなよドジスン。もし『実力行使』となれば、おれはもう容赦しねぇぜ」

 

 




 今回の恐竜解説!

「今回の担当は、俺、覇轟オウガだよ。
今回紹介するのは、恐竜帝王『ティラノサウルス』! 俺の1番大好きな恐竜だよ!
ティラノサウルスといえば、知らない人はほぼいない、世界一有名な恐竜の1頭だね。
名前の意味は「暴君トカゲ」。これ以上ないくらいの素晴らしい名前だね。名付け親のヘンリー・オズボーン博士にはいくら感謝してもし足りないくらいだよ。
この恐竜は白亜紀末期のララミディア大陸…現在の地理で言うと北アメリカ西海岸の地域に生息していて、最大全長は13メートルにも達するとされる最大級の肉食恐竜なんだ!
しばしば肉食恐竜の代表として扱われるティラノサウルスだけど、その身体的特徴は他の肉食恐竜とは一線を画しているかなりの「変わり者」なんだよね。
最大の特徴はその大きな頭と、その体格に似つかわしくない小さな前足だね! その巨大な顎から発揮される咬合力は1番有力なものだと5トン、最低でも3トン、最高で8トンとも推測されているんだ。これは他の大型肉食恐竜と比べてもダントツで高い値だね! ティラノサウルスはこの咬合力を活かしてトリケラトプスやアンキロサウルスのような重武装の草食恐竜を狩っていたと考えられているよ。
さらにティラノサウルスの両目は前を向いていて、現生の猛禽類に匹敵する両眼視野を持っていたんだ。
このお陰で獲物との距離を把握しやすく、狩りにも役立ったんじゃないかと言われているよ。
一方で前足はとても小さいんだけど、片腕で200kgのものを持ち上げられるほどの力を発揮できると言われているんだよ! さらに腕の骨に疲労骨折の痕跡が見られることから、この前足はうつ伏せの体勢から起き上がる時に使ったんじゃないかと推測されているんだ!
その他にも頭蓋骨の分析で、他の大型肉食恐竜より比較的大きな脳を持っていたことが判明しているんだ。
中でも1番大きいのは嗅球っていう嗅覚を司る器官で、現生生物トップの嗅覚を持つヒメコンドルに匹敵するほど鋭敏だとも…え? もう時間? …そ、そんな!
まだティラノサウルスの魅力を全部みんなに伝えられていないのに! せめてもう10行くらい…!」


というわけで今回はここまでです。
何故ティラノサウルスは、「ニンゲンを許さない」と語ったのか…。
次回をご期待下さい。

第6話に登場させるJP・JW恐竜について考えています。以下の恐竜ならどれを登場させるのがよいか、または登場させてほしいか、是非皆様のお考えをお聞かせ下さい。

  • ディロフォサウルス
  • パラサウロロフス・ワルケリ
  • スティギモロク(お助け恐竜)
  • ディメトロドン(お助け恐竜)
  • メトリアカントサウルス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。