古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
今回は文字数配分をミスって想定していた後編が15000字超えのとんでもない長文になってしまいましたので、中編と後編に分けて投稿したいと思います。
威勢よくパキケファロサウルスに攻撃指令を出したソーノイダ。しかし当のパキケファロサウルスは、Dキッズには目もくれずにくるりと方向転換し、逆方向へ走っていく。
これにはDキッズのみならず、ウサラパ達も目が点になった。当然ソーノイダもパキケファロサウルスの暴挙に慌てた様子を見せた。
「な、なんじゃ? そっちじゃないぞーい!」
だがパキケファロサウルスは止まらない。そのままとある店のショーウィンドウに突っ込み、粉砕してしまった。それを目の当たりにして、Dキッズもパキケファロサウルスが制御できていない状況を理解したようだ。
「勝手に暴れてるみたいだけど、どうなってんだ?」
「…何かリュウタに似てない?」
「言えてる。例えば落ち着きのないところとか」
「でもリュウタは何かものを壊したりとかは…してるか」
「…うっせー…」
思わぬ形で自分に飛び火し、いじけるリュウタであった。
一方命令を無視されたソーノイダも大いに怒っていた。
「どうしてワシの言うことが聞けんのじゃーっ!」
「ドクターの言うことを聞かない恐竜なんてお仕置きよーっ!」
「えーい! サイカちゃん! 出動ッス!」
そう言ってエドがサイカのカードを取りだした瞬間、ソーノイダが彼へ飛び蹴りを入れた。
「待てーい! ワシの命令なしに勝手なことをするんじゃないぞい!」
パキケファロサウルスを改造したとは言え、我が子のように育てた相手に手荒なことはしたくないためか、エドのサイカ召喚を妨害したようだ。
しかしエドが蹴り飛ばされたことでその手を離れたサイカのカードはヒラヒラとどこかへ飛んでいく。
「ああっ! カードが!」
「行かないでサイカちゃーん!」
飛んでいくサイカのカードを、エドとノラッティ〜が追いかけていく。この時点でアクト団は戦力が半減してしまった。
だがそんなことなど気にもとめないソーノイダは、手にしたマジックハンドを思い切りパキケファロサウルスに投げつけた。
「そぉりゃあぁぁぁぁぁ!」
マジックハンドはパキケファロサウルスの頭に生え揃った棘の1つを掴み、ソーノイダをその背中へと飛び乗らせた。
「嘘っ!? 恐竜に乗っちゃったわ!」
「めちゃくちゃだぜあのジイさん!」
Dキッズ達も驚く暴挙に出たソーノイダだが、本人は至って真面目にパキケファロサウルスを説得しにかかっていた。
「パキケファロサウルスよ! ワシの温もりを忘れたと言うのか! 絶対に離さんぞい! 2度と離すもんか!」
パキケファロサウルスはソーノイダを振り落とそうとしばらく暴れていたが、諦めたのか彼を乗せたまま走り出してしまった。
「あぁっ! ドクター!」
そう言ってソーノイダに手に伸ばそうとするウサラパのすぐ横を、自転車に乗ったマルムが通り抜けていく。
「邪魔よオバさーん!」
続けてレックスも…
「危ないよーオバさーん」
それからオウガも…
「前通りますねーオバさーん」
そして最後にリュウタが通り抜けようとする。
「どけーっ! オバさーん!」
「オバさん言うなーっ!」
ウサラパは低い声でそう叫ぶと高く跳躍し、リュウタが運転する自転車の後部座席に飛び乗った。どうやらついでに乗っけてもらう心づもりらしい。
「ぐるじい〜! 離せーっ!」
「いいからさっさと追うんだよーっ!」
「いいからさっさと降りろよーっ!」
「ヤダッ!」
大人1人分の負荷がかかったリュウタの子供用自転車はスピードを落としながらも走行していった。
その頃、サイカのカードを追いかけていたエドとノラッティ〜は、カードが真実の口の中へ入っていくのを目撃した。
真実の口の伝承を知っているノラッティ〜が、恐怖を顕にしながら呟く。
「こ、これは真実の口ザンス…。隠し事や偽りがあれば手を食いちぎられるらしいザンス…」
「そ、そんなの作り話に決まってるッス…」
「だったら、一緒に入れてみるザンス…」
意を決した2人は、一斉に手を真実の口へ突っ込んだ。
「「せーので、ほいっ」」
手を突っ込んでみたものの、特に噛まれたような痛みはない。ホッとした2人が手を引き抜こうとした時だった。
2人とも手が抜けなくなってしまったのである。
「「ぇあっ!?」」
「抜けないザンス! 何か隠し事があるザンスね!?」
「の、ノラちゃんこそ白状するッス!」
「ミーに隠し事なんて…!」
「あるある、あるッスー!」
片手を封じられた状態で器用に殴り合う2人。1人ずつ手を抜くなり掴んだカードを一旦離すなりすればいいのに互いに互いが悪いと決めつけて殴り合っているようでは、戦線復帰は当分先になりそうであった。
その頃、Dキッズは引き続き自転車でパキケファロサウルスを追跡していたが、リュウタの自転車だけは少し遅れて走行していた。後部座席にウサラパが乗っているので無理もない状況である。
「もっと急げって言ってるでしょーっ!? このオタンコガキンチョーッ!」
「うっせぇ! 重いぜオバさんがぁ!」
「だからオバさん言うなぁ〜っ!」
「むぐぐ…やめろぉ…うわあっ!」
オバさん呼びに怒ったウサラパに頬をつねられ、リュウタの自転車はバランスを崩して転倒してしまった。
「何すんだよ! 危ないだろ!」
「アンタがオバさんって言うからだろぉ!?」
「オバさんはオバさんだろーっ!」
「アタシはまだ19よぉーっ!」
このように同レベルの口論を繰り広げるリュウタとウサラパを、自転車を停めたオウガ達3人は呆れた表情で見ていた。
と、その時オウガはディノラウザーから通知音が出ていることに気が付いた。画面を見てみると、ローマにオレンジ色の反応が出ている…。
(オーウェンさんの世界の恐竜もここに出現したんだ。
でも…ここまで走ってもあのパキケファロサウルス以外いなかった気がするんだけど…)
そんな彼らの前方では、パキケファロサウルスがまた立ち止まり、ソーノイダを振り落とそうと暴れていた。最早危険なレベルの暴れ具合だが、それでもソーノイダは手を離そうとしない。
「ワシがっ、どんな思いでっ、お前をっ、それなのに何故っ…」
その様子に、流石に見過ごせなくなったのかマルムが声をかける。
「危ないわよ! 早く飛び降りて!」
「やかましいぞいっ! こいつはワシのもんじゃっ! 誰にも渡さんぞーいっ!」
マルムの静止にも聞く耳を持たず、ソーノイダはパキケファロサウルスにしがみつき続けていたが、ついに振り落とされてしまった。
「どおーっ…ぐへっ!」
振り落とされ、うつ伏せで地面に横たわったソーノイダのもとへウサラパが駆け寄っていく。
「ドクター!」
「のほほ…アヤツはもうワシの事を忘れてしまっておるぞーい…」
「ドクター、どうかお気を落とさないで…。きっと反抗期なんですわ…」
そんな彼らの遥か頭上を、ジェット旅客機が通っていく。その機体に太陽光が反射して輝いたのを見た瞬間、パキケファロサウルスはその旅客機を追いかけるように走り出したのだ。
「…もしかするとアイツは、太陽の光に反射するものに反応してるんじゃないのか?」
「俺もそう思う。もしかするとあの頭の光も、それと何か関係してるのかも…」
「とにかく、早く追いかけましょう!」
マルムの言葉にオウガとレックスも頷き、自転車を漕ぎ始める。そしてマルムも2人に続こうとした時…突然後ろから首根っこを掴まれ、自転車から引きずり降ろされてしまった。
その犯人はウサラパであり、彼女はすぐさま自転車に跨る。
「きゃあっ! 何するのよもう!」
「ドクター! 乗って下さい! ブッちぎりますわよ!」
「はいな!」
マルムの非難の声もどこ吹く風といった様子で、ウサラパはソーノイダを後部座席に乗っけると子供用自転車を漕いでいってしまった。
「ちょっとー!」
「乗れ! マルム!」
「うん!」
自転車は奪われたものの、リュウタがまだ先行していなかったお陰で、マルムは彼の後部座席に乗って移動することができたのだった。
そしてパキケファロサウルスを追いかけ、ソーノイダとウサラパは古代ローマの旧跡コロッセオにやって来た。コロッセオを見下ろし、恐竜王国のイメージ映像を思い出したのかソーノイダが感嘆の声をあげる。
「おお…コロッセウム…! ワシの恐竜王国に相応しい場所だぞい…!」
「あっ! ドクター!」
そのウサラパの声でソーノイダが振り向くと、そこにはパキケファロサウルスがいた。どうやらコロッセオに入った時に旅客機を見失ってしまったようである。
そんなパキケファロサウルスに、ソーノイダが再び呼びかける。
「我が息子よ! これ以上ワシに恥をかかせるでないぞい!」
そう言うと、ソーノイダはアクトホルダーを操作してアクトボールを呼び出すと、パキケファロサウルスへ向かわせる。するとアクトボールから凄まじい電撃がパキケファロサウルスへ放たれた。
どうやらアクトコントローラーにカードを挟み込まなくても、アクトボールの洗脳電波を浴びせることで同じように隷属化することができるようだ。
しかしこの手順では恐竜に要らぬ苦痛を与えることになるようで、パキケファロサウルスは突然の電撃に身を捩り、悲鳴を上げて苦しんでいた。。
「こんなものを使ってお前を操りたくはなかったが…仕方あるまい…」
そこへ駆けつけたDキッズはその痛ましい光景を目のあたりにし、口々にソーノイダを非難した。
「やめろよ! 嫌がってるじゃないか!」
「さっきサイカニアの召喚を妨害してまで説得しようとしてたじゃないですか!
そこまでする位には大切な恐竜なんじゃないんですか!」
「黙れガキンチョ! これは愛のムチというやつぞい! どちらにせよ、これでようやくワシの思い通りに動くぞい!
行けーっ!パキケファロサウルス!」
しかし、事はそう思い通りには動かない。
パキケファロサウルスは苦しみながらも頭を振り回し、アクトボールを撃墜してしまったのだ。何とか洗脳から逃れたパキケファロサウルスはソーノイダ達の方を向き、非難するように咆哮を上げる。
「な、な、何ぞい! ワシに楯突くというのかっ?」
「あ、あ、あんた! ドクターに育ててもらった恩を忘れるなんて、それでも恐竜なのっ!?」
ソーノイダとウサラパにそう声をかけられても、パキケファロサウルスは止まることなくジリジリと彼らに近づいていく。
その姿を見て、ソーノイダも悲痛な覚悟を決めたようだ。
「本当に…もう通じ合えんのじゃな…?
…許さん…許さんぞい! ワシの力を思い知らせてやるぞい!」
いや、これでは悲痛な覚悟というより短気を起こしただけに聞こえなくもない。しかしこの声にいち早く応じたのがウサラパであった。
「ラジャー! 出ておいでスピノちゃん!」
グァギュオォォォォッ!!
掛け声と共にウサラパがスピノのカードをアクトホルダーに通し、スピノを成体化させて召喚する。
そして、ソーノイダもそれに続いた。
「アクトスラーッシュ! 燃え上がれ! ティラノサウルス!」
ガアァァァァァ!!
続いてティラノも成体化して召喚され、スピノと並び立ってパキケファロサウルスを威嚇する。それと同時に周囲もバトルフィールドへ変わっていった。
「かかれー!」
ソーノイダの命令に従い、ティラノとスピノがパキケファロサウルスへ突撃していく。2体がかりで確実に仕留める気なのだ。
「2体でパキケファロサウルスを潰すつもりだわ!」
「あれだけ言っていたのに結局力で押し通すつもりなんだな…。それなら俺達もいつも通りいこう!」
「おう! アクト団の好きにさせてたまるか!」
「こっちも総力戦だ!」
そしてDキッズは互いに頷くと各々のディノホルダーやディノラウザーを手に取り、カードをスキャンした。
「ディノスラーッシュ!
轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」
ゴオォォォォォ!!!
ギュオォォォォォ!!!
「ディノスラーッシュ!
吹き抜けろ! カルノタウルス!」
グオォォォォン!!!
「ディノスラーッシュ!
芽生えよ! パラサウロロフス!」
キュオォォォォン!!!
「ディノスラーッシュ!
燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!
揺るがせ! ステゴサウルス!」
ゴガアァァァァァァ!!!
ケエェェェェ…!!!
Dキッズが各々のパートナー恐竜達を召喚し、計9体の恐竜がコロッセオに集結する形となった。
「行けーっ! パキケファロサウルスを助けるんだ!」
リュウタがそう叫ぶと、ガブとイナズマとエースが迷わずティラノとスピノへ突撃していく。
ガブ&イナズマとティラノ、エースとスピノの戦いが始まり、包囲網から抜け出したパキケファロサウルスは、何故かコロッセオの観客席を駆け登って上へ向かっていく。
「レクシィ! アメジスト! 君達も頼む!」
しかし、レクシィとアメジストはその場から動かなかった。
「あれ? どうしたんだろう?」
すると、ディノラウザーから声が聞こえてきた。レクシィの声だ。
『…オウガ。奴らだ。インドミナス使いの男がここに来ているぞ。アメジストも気付いたらしい』
「な、何だって!?」
その声を聞いたオウガが周囲を見渡すと、コロッセオの今いる場所とは反対側の席にジェイソンとイシドーラが腰掛けていた。
「…本当だ。あれは『Sin-D』の連中…。一体何をしに来たんだ?」
どうやらオウガの視線に気づいたようで、向こうから声をかけてくる。
「よう、オウガ。久しぶりだなぁ…。
今日はおれ達のボスから直々に指令を受けてな、てめぇらの邪魔をさせてもらうぜ」
「我々も報酬がかかっておりますので、悪く思わないで下さいね」
「…『Sin-D』って意外と暇なんですね。私怨でこんな子供みたいな嫌がらせしてくるなんて」
「うるせぇっ! おれだって好きでこんな任務やってんじゃねぇんだよ!」
「私は報酬さえ支払ってもらえるのならどんな任務でもやりますがね」
「てめぇには聞いてねぇ! 黙ってろミルズ!
…ま、ということなんでな。オウガ! てめぇにはちょっとお灸をすえてやるぜ」
そう言うとジェイソンとイシドーラはそれぞれ恐竜カードを1枚取り出すと、アンバーに押し当てた。
「仕事だ! やれ!『クレバーガールズ』!」
「任務は迅速に、ですよ。行きなさい、『アトロキフォース』」
すると、灰色の光と風に包まれて2組の小型恐竜達が姿を現した。
片方は3体で1組。その姿はオーウェンのブルーに酷似しているものの、体色はレクシィと似た灰褐色である。そしてその中の一際大きな個体は、特に狡猾で意地悪そうな雰囲気を纏っていた。
もう片方は4体で1組。こちらはそれぞれ白、赤褐色、虎柄、褐色と白とバラバラの体色だった。だがこちらはクレバーガールズのような野性味は薄く、むしろ訓練された傭兵のような雰囲気すらある。
どちらも、かなりの強敵であることは間違いなさそうだ。
「さぁ、やれ! あのクソガキの鼻を明かしてやれ!」
「アトロキフォース。私の報酬金のため力を尽くしなさい」
2人がそう言うと、計7体の略奪者達が甲高い鳴き声を上げながらレクシィとアメジスト目掛けて襲いかかっていく。
「俺達だって簡単にはやられないぞ!
レクシィ! アメジスト! あのラプトル達を倒すんだ!」
その言葉を受け、アメジストが戦闘態勢に入る。
『…いいだろう。だが小さいからと手を抜くことができるほど私は甘くないぞ』
ディノラウザーを通してそう呟くと、レクシィはくわっと牙を剥いて向かってくるクレバーガールズに立ち向かっていった。
その頃、真実の口から手を引き抜けなくなったエドとノラッティ〜は、ようやくその原因に気付いたようだった。
「カードを握ってたら抜けないに決まってるッス!」
「どちらかが抜ければいいザンス! それならエドがここでカードを握ってる間に、ミーが助けを呼んでくるザンス!」
「でも、それが嘘なら食い千切られるッスよ?」
エドがそう言うと、何故かノラッティ〜は動揺した。どうやらエドを置いて逃げようとしていたらしい。
「何故黙るッスか?…まさか、ウソついてたッスね? 自分だけ助かって逃げようとしたッスね…?」
「いやザンスぅ〜…」
「ウソつきっ!」
離脱する言い訳も潰されたノラッティ〜が力なく項垂れ、エドも同じように項垂れるのであった。
戻ってコロッセオでは…
パキケファロサウルスが観客席を登っていくのを見たスピノが、その後を追っていく。ガブもそれを追いかけようとするが、4足歩行のガブでは観客席に上がることができないようだ。
そんなガブへティラノが襲いかかろうとする…が、イナズマがティラノに突進したことでガブは突き飛ばされずに済んだ。
「イナズマ、ナイスだ!…おいアクト団! 邪魔すんなよ!」
「ワシに歯向かったパキケファロがどうなるか、黙って見ておれ! 『ネッククラッシャー』!」
ソーノイダが技カードをアクトホルダーに通すと、ティラノが赤い光に包まれた。そして先程横槍を入れてきたイナズマを掬い投げると、グルグル回転しながら尻尾での一撃を加えた。
技を受けたイナズマはコロッセオの壁へ向かってかっ飛んでいくが、そこへパラパラが助けに入る。しかしパラパラ1体では威力を殺しきれなかったようで、壁とイナズマに挟まれてパラパラはカードに戻ってしまった。
「パラパラ!」
「イナズマの身代わりに…!」
パラパラが倒れるや否や、すぐさまマルムがカードの回収のために走っていく。だがパラパラの必死のディフェンスの甲斐があったようで、イナズマはすぐに起き上がることができた。
一方でパキケファロサウルスは、上へ登り続けていたものの壁に行く手を阻まれてしまっていた。すぐ後ろからはスピノが走り寄ってきている。
その光景を見たレックスは、素早くエースに指示を出した。
「エース! パキケファロサウルスを助けるんだ!」
エースは軽々と壁を飛び越え、観客席を駆け登っていく。
しかし、ウサラパの判断も早かった。
「今すぐ楽にしてあげるからね!
この前アンタ達が置いていったカード、使わせてもらうわよ! 『
ウサラパが技カードをアクトホルダーに通すと、スピノを青い光と水流が包みこんだ。それからスピノは口内に水を球状に溜め込み始める。
そこへパキケファロサウルスを守るように立ちはだかったエースだったが、なんと当のパキケファロサウルスはエースを踏み台にしてスピノを飛び越えていってしまった。
「ウソだろ!?」
勿論、標的が変わっただけなのでスピノの攻撃は止まらない。
そのまま水の玉を吐き出してエースをその中へ閉じ込めると、身動きの取れないエースに体当たりをぶちかましたのである。吹き飛ばされたエースは観客席に叩きつけられ、カードへと戻っていってしまった。
「エース!」
すぐさまレックスもカードの回収に向かう。
そして回避に成功したパキケファロサウルスだったが、ふと上を仰ぎ見ると、太陽が雲に隠されていくではないか。
するとパキケファロサウルスは悲しそうな雄叫びを上げると、すぐ近くに来ていたスピノに突進し、大きく掬い投げた。
これにはウサラパやDキッズも困惑しきりである。
「何なの? いきなりやる気満々になっちゃってさあ!」
「さっきまでと違って凶暴になってるわ!」
その間にもパキケファロサウルスは横倒しになったスピノに頭突きを入れ続け、ついにはカードに戻してしまった。
「あぁ〜! スピノちゃ〜ん!」
すぐさまカードの回収に向かうウサラパを尻目に、パキケファロサウルスはまたコロッセオの中央部へ戻っていく。そしてティラノとガブ&イナズマが向かい合っているところに来ると、突如としてガブの背中に飛び乗り、何度も頭突きを食らわせ始めたではないか。
これにはDキッズも驚く。救出対象の恐竜がアクト恐竜を置いてこちらを攻撃し始めたとなれば慌てるのも当然と言えるだろう。
「何すんだよ! こっちじゃないだろ! オレ達みんなお前を助けようとしてるんだぞ!」
「あいつには、敵も味方も関係ないんだ…!」
『とにかくあのパキケファロサウルスは、太陽の光がないと苛立ってしまうことは確かみたいだね。
最初にエースと交戦した時も、太陽は出てなかったはずだし』
オウガも『Sin-D』の恐竜2組と戦いながらディノラウザーで会話に参加していた。
「オウガ! あなたの方は大丈夫なの?」
『大丈夫。レクシィとアメジストが十分戦ってくれているから。
それより皆はパキケファロサウルスを…』
「ワシに歯向かうヤツは全て叩きのめすぞい!」
Dキッズ達の会話の最中、ソーノイダがそう言うとティラノがパキケファロサウルスに張り付かれたガブに向かっていく。しかしイナズマがガブの背中からパキケファロサウルスを追い払ったことで、ガブはまたしてもティラノからの一撃を回避することができた。
イナズマに追い払われ、着地したパキケファロサウルスは、突如としてその頭に光を収束し始めた。
「ドクター! あれは何ですの?」
「あれはねー、確か…凄い技ぞい…」
「まあーた忘れたんか…」
ソーノイダとウサラパがそんなマヌケな話をしている間にもパキケファロサウルスの頭には更に光が集まっていき、最早ガブやイナズマ、そしてティラノさえも目を背けないといけないほどの凄まじい輝きを放ち始めていた。
そんな中、リュウタは意を決して技カードを手に取る。
「こうなったら、一気に決着をつけてやる!」
「ワシにも凄い技はあるぞい! 『ネッククラッシャー』!」
再びソーノイダがネッククラッシャーの技カードをアクトホルダーに通すと、赤い光を纏ったティラノがパキケファロサウルスに突進していく。
一方でリュウタも、大きく飛び上がるとディノホルダーに2枚の技カードをスキャンした。
「うおぉぉぉ! 『
技カードがスキャンされ、ガブとイナズマの体を黄色い光と電撃が包み込む。
するとガブはその電撃を2本の長い角の間に収束させ始め、イナズマは電撃を全身に纏う。そしてガブは強烈な電撃を放ち、イナズマは電撃を纏ったままきりもみ回転でパキケファロサウルスに突撃していく。
しかし、パキケファロサウルスは素早い身のこなしでどちらの攻撃も躱すと、頭に収束させた光を一気に解き放った。凄まじい光の波動がガブとティラノに襲いかかり、2体に大ダメージを与える。
ティラノはそのままカードに戻されてしまい、ガブは大ダメージを負って立てなくなってしまった。だがイナズマは『
その時、ソーノイダがポンと手を打った。
「そうじゃった! 『
「あんたが作ったんじゃろうがい…」
これにはウサラパも突っ込まずにはいられないようだ。
そしてDキッズとイナズマは、倒れたガブのもとへと急行する。
「ガブ! 大丈夫か!?」
一方ウサラパの頭上から、ティラノのカードも降ってくる。
「ティラノのカードですわ!」
「うむ…ん?」
と、そこでソーノイダはパキケファロサウルスが彼のもとへ歩み寄ってくることに気が付いた。
「見ろ! ようやくワシのもとへ帰ってくるぞい…!」
目をうるませながらソーノイダがそう叫ぶ。
彼の脳内を、まるで走馬灯のようにパキケファロサウルスと過ごしてきた思い出がよぎっていく。そしてますます近づいてくるパキケファロサウルスを目のあたりにしたソーノイダは、目から涙を滝のように流しながら彼に向かって両手を広げた。
「フフフ…ようやく思い出したようじゃのう…!」
…その時。
パキケファロサウルスの体に、灰色の手裏剣が突き刺さった。
今回はここまでです。
今話は長々と書いているうちにここまで伸びてしまいました。
もっと考えて書いていかなければいけないと痛感した次第であります。
それでは、次回の後編でまたお会いしましょう。
※追記:設定集に「クレバーガールズ」「アトロキフォース」の説明を追加しました。