古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
古代博士やリアス、ミサと共にデボン温泉街へやって来たDキッズ。
彼らが温泉を満喫していると、そこへアクロカントサウルスが現れる。しかし古代博士が金庫の鍵を落としてしまったためにDキッズは戦うことができず、その間にアクロカントサウルスはデボン島へ泳いでいってしまった。
深夜にホテルを抜け出し、明朝にデボン島に上陸した4人はアクト団と遭遇し、アクトロイドを差し向けられたが、パラパラとレクシィのお陰でアクトロイドを無力化することに成功した。
そして家族の化石を守ろうとするアクロカントサウルスとガブ&イナズマ&アメジストが戦うが、あと少しのところでアクト団とジェイソンに乱入され、アクロカントサウルスのカードを奪われてしまったのだった…。
前編
太平洋 アクト団の基地 アジ島
この日、Dr.ソーノイダはかねてより製作していた新発明の最終仕上げに取りかかっていた。いつにも増して張り切っている様子が、その口調からも伝わってくる。
「バリバリ〜ッ! ココも…バリバリ…。コッチも…バリバリ…。ココも…バリッ…」
巨大な装置のあちこちを溶接するソーノイダを、ウサラパ達アクト団工作員の3人は他人事のように見ていた。
「ドクター、今度は何作ってるんスかねぇ?」
「じいさん力入ってるととんでもないもの作り出すからねぇ…」
「また失敗作じゃなきゃいいザンスけど!」
3人がそんなことを言い合っていると、突如爆発が巻き起こり、辺りに黒煙が充満する。煙を諸に吸い込んでしまったウサラパ達が咳き込んでいると、その煙の中から溶接面を片手に持ったソーノイダが現れた。彼はたいそう上機嫌なようで、高笑いなどしながらウサラパ達に装置を紹介し始める。
「フハハハハハーッ! 見て驚け! 聞いて驚け! 遂にスーパーアクトコントローラーが完成したぞい!」
「「「ええっ!?」」」
「スーパー!?」
「アクトコントローラー…ザンスか?」
「一体何がスーパーなんすかねぇ?」
なんと、ソーノイダが作っていたのはアクトコントローラーの改良版だったのだという。しかしウサラパ達は、いまいちピンと来ていないようだ。
そんな彼らの様子にすら気付かないほど得意げなソーノイダは、続けて懐から1枚のカードを取り出した。
「そして、これはこの間ワシが苦労して手に入れた…アクロカントサウルスのカードぞい!」
「苦労したのはアタシなんですけど…」
「おれ達もッス…」
「ザンスよぉ…?」
いつの間にか部下の手柄を独り占めしているソーノイダに、ウサラパ達が小声で抗議する。
まあ実際にアクロカントサウルスを追い詰めたのはDキッズのガブ達なので、彼らもそこまで苦労した訳ではなかったりするのだが。
「よいかぁ? このカードと…あとワシが作った技カードをちょいちょいっとスーパーアクトコントローラーに入れて…。
スイッチ・オン!」
ソーノイダがスーパーアクトコントローラーのスイッチを入れると、アクロカントサウルスのカードと3枚の技カードが挟み込まれ、凄まじい電撃に包まれる。
そして電撃が止むと彼は1枚になったカードを取り出し、ウサラパ達に見せつけた。カードのアクロカントサウルスはオレンジ色を基調とした先程とは打って変わり、紫と黒褐色がメインの毒々しいカラーリングに変わっていたのである。
「これはまた…随分と趣味の悪い色に変わったッスねぇ〜…」
「これでアクロカントサウルスは無茶苦茶パワーアップしたばかりでなく、我々アクト団の思うがまま…意のままに動くぞい!
ちなみに、恐竜カードと技カードを合体させる機構はシークレット恐竜の開発に使ったものを改良して組み込んだものぞい。
だからこれでわざわざカードをスキャンせんでも命じるだけで技が使えるぞい!」
そう言い、ソーノイダはウサラパにアクロカントサウルスのカードを手渡した。
「はぁ…」
「グフフフ…これは間違いなくワシの発明!ワシの成果ぞい!
…そうぞい! このスーパーアクトコントローラーで改造した恐竜を、『
「…それで、アタシ達にこれで何をしろと?」
「そんなの決まっとるぞい。こいつを使って、あのガキンチョ共に奪われたカードを取り返してくるんだぞい!」
「「「えーっ?」」」
「フハハハ…。これならいくらドジなお前らでも失敗のしようがないぞい!」
「どっ、ドジって…」
「言われても…仕方ないッスけどぉ…」
ぐうの音も出ない様子の3人を目の当たりにしたソーノイダは満足そうに笑うと、部屋を駆け回るティラノ達に視線を向ける。
「…ということで、今回はお前らアクト恐竜の出番はないぞい。
どうじゃ? ワシと遊んでおるか? ヒーッヒッヒッヒ…」
そう高笑いしていたソーノイダの顔面に、サイカが渾身の体当たりを加える。そして倒れたソーノイダの髭をティラノとスピノが2匹がかりで引っ張る。最後にサイカもそれに加わり、ソーノイダは計3匹のアクト恐竜達に髭を引っ張られることになってしまった。
本当に恐竜からの信頼が皆無である。
「うわーっ! やめて! ちょうだ〜い!」
そんなソーノイダの情けない姿を、ウサラパ達は呆れ半分の様子で見ていたのであった…。
その頃 三畳市
この日、オウガ達Dキッズと古代博士は、海岸近くへキャンプに来ていた。今はテント設営の真っ最中である。
「よーし、いいぞー! そっち持ってー…」
リュウタがハンマーを振るい、テントを固定するためのペグを打ち込んでいた。
その間パートナー恐竜達はその周りで追いかけっこをして遊んでいた。だがレクシィだけはその輪に入らず、オウガのすぐ隣で丸くなって眠っている。
そして、追いかけっこに夢中になったガブが、せっかく打ち込んだペグにぶつかって外してしまった。するとテントが崩れ、そこを通りかかったエースにかぶさってしまったではないか。
突然視界を遮られたエースはパニックに陥り、めちゃくちゃに走り出してしまう。
「あぁっ! エース! そっちは海だぞ!?」
レックスがそう叫ぶものの、テントで視界を遮られたエースが方向など分かるはずもない。そのままエースは海へと落下してしまった。
『ウギィーッ! ウギャーッ! ウギューッ!?』
海水を嫌がり、絶え間なく鳴くエースのもとにすぐさまレックスは駆けつけると、優しく抱き上げた。
「ハハハ…そんなに水が嫌なのか? エース…もう大丈夫だよ」
そう言ってエースを落ち着かせると、レックスはオウガ達や古代博士のもとへと戻ったのであった。
その後、無事にテントの設営も終わり、Dキッズの男子達は食料の調達に向かっていた。
リュウタは潮溜まりを覗いては魚を突き…
「獲ったどーっ!」
オウガとレックスは岸壁に座って釣り糸を垂らしていた。
「釣ったどーっ!」
「僕の方にも来たぞっ! えーいっ!」
釣り上げたところで、オウガはクーラーボックスへ魚を持っていき、そこで針を外そうとしている。
しかしレックスは一味違った。なんと釣り上げた魚に手を触れることなく針を外し、台車の上に乗せたのだ。だがエースがその魚に興味を示したようで、甲高い声で騒ぎ立てながら台車へ近づいていく。
エースが騒ぐ声を聞いて、レックスもエースが魚を狙っていることに気づいたようだ。
「エース! 勝手に食べるなよ!」
しかしエースはレックスの警告を無視して魚に食らいつこうと頭を伸ばし…台車を押してしまった。
当然台車は坂を駆け下り、Dキッズがテントを設営した場所へと向かっていく…。
『ギャーッ!?』
「あっ! エース!」
その頃、テント近くではマルムと古代博士も食事の準備をしていた。
マルムはまな板で野菜を切っている。そして…。
「はい、どうぞ!…もう、仲良く食べなきゃダメよ?」
料理には使わない野菜の切れ端をガブやイナズマ、アメジストにパラパラに見せると、4体は奪い合いながら食べていく。
そしてその横で、古代博士はバーベキューコンロに使う炭火を起こしていたのだが…そんな彼らのところへエースと台車が突っ込んできたのだ!
「うわあぁっ!?」
「きゃあっ!」
2人とも台車に突き飛ばされ、調理台もバーベキューコンロも横倒しになってしまう。
そして悪いことは続くもので、コンロから転がり落ちた木炭がテントに火を付けてしまった。その光景に、マルムも古代博士も大慌てである。
そして、この騒ぎは海岸にいたオウガ達にも見えていた。
「ああっ! レックス! オウガ! テントが!」
「え?…うわっ! あれはヤバいぞ!」
「大変だ! 中にディノホルダーとディノラウザーが!」
すぐにオウガ達もマルムと古代博士と合流すると、消火活動を開始した。その結果、何とか燃え広がる前に火を消すことはできたようで、古代博士がホッと一息をつく。
「よし、もういいだろう…」
「あまり燃え広がらなかったのは、不幸中の幸いだったね。でも…この分じゃ…」
「ディノホルダーが…バーベキューになっちまった…」
だが、残念なことにディノホルダーとディノラウザーはすっかり丸焦げになってしまっていたのである。
「…冗談言ってる場合?」
「とにかく、大丈夫かどうか一度やってみよう」
レックスの提案で、リュウタがディノホルダーの起動を試みる。
取り敢えず、この事はリアスに伝えなければ。
「リアスさん!…ダメだ、通信もできない…」
辛うじて電源はついたが、満足に機能してくれないまますぐに電源が落ちてしまった。
一方でオウガも、ディノラウザー…の中のアンバー【
「…【
『…うむ。聞こえておるぞ。しかし今回また随分と災難じゃったのう。まさかこんなことになってしまうとは…』
「ディノラウザーは壊れちゃいましたけど、アンバーを取り出せれば恐竜の召喚は問題なく行えるんですよね?」
『勿論じゃ。しかし開閉のスイッチも壊れておるようじゃから、分解して取り出してもらわないといけないかもしれんのう…』
「…そうですか…」
『まあ気を落とすでない。幸いにも技カードは全部無事じゃ。後はこのディノラウザーさえ修理して貰えれば万事解決じゃろう』
「それは確かにそうなんですが…」
そう呟きながらオウガは横のレクシィに視線を向け、ため息をついた。
(しばらくは、レクシィとも話せなくなっちゃうのか…)
そんな状況の中、Dラボと連絡を取っていた古代博士がDキッズへ向き直る。
「4人とも、心配するな。今リアス君に連絡を入れた。彼女ならすぐにでも直せるさ。
ひとまず、キャンプは一度中断してDラボに戻ろう」
こうしてキャンプを途中で打ち切ったDキッズは、古代博士と共にDラボへ戻っていったのだった…。
その頃 三畳市から程近い海域
Dキッズがとんだ災難に遭っていた頃、ウサラパ達アクト団工作員の3人は、潜水艦で三畳市へと向かっているところだった。
「トロイ…ッド…トロイ…ッド、トロイ…ッド…」
しかしその動力源は、まさかのアクトロイド達による手漕ぎである。まるで古代ローマの帆船のようではないか。
「ほらぁ、もうすぐなんだからもっと勢いよく漕ぐんだよ!
まったくもう本当にトロいねぇもう…」
そんなぼやきを口にしながら、ウサラパが近くのアクトロイドの1機に蹴りを入れると…。
「トロイド!トロイド!トロイド!トロイド!」
アクトロイド全員がヤケクソのように高速で漕ぎ始めたのである。お陰でどんどん潜水艦のスピードは増しているが、最早危険を感じるレベルにまで達している。
「「「うわぁぁぁ…!」」」
「この勢いならすぐッス! すぐッスけどぉ…!」
更にスピードを増した潜水艦は海中を一直線に突き進んでいくと…岸壁にぶつかってバラバラになってしまった。
哀れウサラパ達も粉々になってしまったのか…と思いきや、元気そうな様子で浮上してくる。
しかも何故かウサラパの頭にはタコが貼り付いていた。
「「「ぶはあっ!」」」
「この…タコ!」
ウサラパは頭に貼り付いたタコをはがしながらそう悪態をつく。
「それにしても、ここでいいのかい?」
「方向は間違えてないはずッスよ? ウサラパ様…」
「でも距離が…登るしかないザンスね…」
彼らの目の前には三畳市…でなく、鬱蒼とした木々が茂る山があった。どうやら、山を挟んだ反対側に上陸してしまったらしい。
とは言え既に移動手段を失っている彼らはどうすることもできないので、歩いて山越えをすることに決めたのだった…。
その夜 Dラボ
キャンプを中断して戻ってきたDキッズは、早速ディノホルダーやディノラウザーをリアスに見てもらっていた。
「せっかくのバーベキューだったのに、残念だったわね。マルム」
「バーベキューはいいんだけど…それよりディノホルダーの修理、時間かかりそう?」
「いいえ。これならすぐに直せると思うわ」
リアスのその言葉にDキッズ達の顔が綻ぶ。それを見た古代博士も安心したように言った。
「おお、やはりか。…皆、良かったな!」
「それじゃ、僕のをお願いします!」
「いーやっ、オレのを先にお願いっ!」
「えっ…何だよ! リュウタ!」
「だってさ、何かあったら大変だろ? そんな時ガブとイナズマがいれば…!」
「それならエースだって!」
「エースよりガブとイナズマだ! こっちは2匹いるんだぞ!」
「それならオウガだって2匹いるだろ!」
「まずはオレからだ!」
「いや僕からだ!」
どちらが先に修理してもらうかでリュウタとレックスが口論を始めてしまった。
その間にオウガはリアスに頼み、ディノラウザーからアンバー【伝説】を取り出してもらう。そしてオウガは受け取ったアンバーを、久しぶりにペンダントとして首から下げることにした。
「それじゃあオウガ君。これでいいのかしら?」
「はい。有事の際にもアンバーがあればレクシィだけは戦えるはずなので、俺のディノラウザーの修理は最後でも大丈夫です」
「分かったわ。ところであの2人は…まだ喧嘩中みたいね…」
そう言ってリアスが呆れの混じった視線をリュウタとレックスの方を見る。
そんな2人の口論は、更にヒートアップしていた。
「誰のせいでディノホルダーがダメになったと思ってんだよっ!」
「うっ…それは…」
リュウタのその言葉に、レックスは二の句を継げなかった。自分がしたことではないとは言え、エースの監督責任は自分にあるためだ。
レックスが反論できなくなったのをいいことに、リュウタはすぐさまリアスにディノホルダーを差し出した。
「じゃっ、リアスさん! お願い!…あれっ?」
しかしリアスの手元を見てリュウタは驚く。
もう既に誰かのディノホルダーを修理しているところではないか。
「アタシのから♪」
そのディノホルダーは、マルムのもののようだ。
見事に漁夫の利を掻っ攫っていったマルムに、リュウタもレックスも唖然とするしかなかったのであった。
「そうね…。このままだと修理の部品も足りなそうだわ。ミサさん。倉庫にある予備のディノホルダー用パーツを持ってきてくれるかしら?」
「は、はい! 分かりました!」
「あ、俺も手伝います!」
そしてミサとオウガが連れ立って倉庫に向かう様子を、リュウタ達は見送ったのだった。
その頃 三畳市郊外の山間部
ウサラパ達3人はひたすら山の中を進み続け、ようやく三畳市を見下ろせる場所まで到達することができていた。
「ガキンチョ共がいるのはあの街ッスね?」
「間違いないはずザンス」
「それじゃ、どれだけ強化されたのか見せてもらおうじゃないか! ノラッティ〜!」
「はい! いくザンスよ!」
ウサラパの指示を快諾したノラッティ〜は、
「アクトォースラッシューッ!
燃え上がるザンス! アクロカントサウルス! ザーンスー!」
グオォォォォオ!!!
いつもとは違う掛け声でノラッティ〜がカードをスキャンすると、カードイラスト通りの毒々しいカラーリングとなった超アクトアクロカントサウルスが召喚された。
「なんだいノラッティ〜! ガキンチョ共のマネなんかして!」
「一度この口上で言ってみたかったザンス…」
どうやらいつもDキッズがやっている口上でスキャンしてみたかったらしい。
と、そんなことはさておき、3人は目の前のアクロカントサウルスに視線を向ける。
「こいつホントに燃え上がってるッス!」
「目も血走ってるよぉ〜…。ホントにアタシ達の指示に従うのかねぇ?」
「やってみるザンス! じゃあまずは…横向くザンス!」
ノラッティ〜がそう指示すると、アクロカントサウルスは素直に従った。しかも左右どちらにも向いたではないか。
「尻尾振るザンス!」
これまた素直に応じる。
「何してるんスか? ノラちゃん?」
「
これなら大丈夫そうザンスねぇ…」
「へぇ~、じいさんもやーっとマトモな発明品を作ったみたいだねぇ。
帰ったらティラノ達もこうしちゃえばもっとパワーアップできるんじゃないのかい?」
「その可能性はあるザンスね。
では、最後にミー達に挨拶させるザンス!」
ノラッティ〜が三たび指示を出すと、アクロカントサウルスは3人に向かってお辞儀をした。
「「おぉ〜…」」
そして驚く3人に口を近づけると…何故か口から火球を吐きかけた。想定外の攻撃を受けた3人は、呆気にとられたまま黒焦げになってしまう。
「「「チリチリチリチリ…」」」
「余計なことするんじゃないよ!」
「は…はいザンスぅ!」
ウサラパは怒りの赴くままにノラッティ〜にチョークスリーパーをかました。そんな2人を横目にエドがアクロカントサウルスに目を向けると…彼は先程の炎で燃え上がった木を見つめていた。
その表情は、何故か恍惚としていたのである。
「技カードを使わなくても火を噴けるだけあって、火が好きなんスかね? こいつ…」
「なんかちょっと怖いザンスねぇ…」
「とにかく! さっさと街に下りて、ガキンチョ共を見つけ出すんだよ!」
「「ヘイヘイホー!」」
「それじゃあアクロカントちゃん。ミー達に付いてくるザンスよ」
先を歩くノラッティ〜がそう呼びかけると、アクロカントサウルスはやはり素直に彼らの後に付いてくる。しかし体に炎を纏っているせいか、歩いたところが次々と燃え上がっていたのであった…。
それから数時間後…。
山の峠道を1台の車が走っていた。その車が次のカーブに差し掛かったその時…。
目の前からヌッと超アクトアクロカントサウルスが顔を見せたのである!
「うっ、うわぁぁぁっ!?」
運転手は咄嗟にハンドルを切って避けようとするが、車をガードレールにぶつけてしまった。そして車を乗り捨ててどこかへと逃げていく。
そしてアクロカントサウルスの足元からは、ウサラパ達3人が姿を現した。遂に山中から峠道まで出てくることができたようである。
「前方不注意ザンスねぇ…」
必死で逃げるドライバーを見て、ノラッティ〜は嘲るようにそう言った。
そしてウサラパ達はアクロカントサウルスを引き連れてまた歩き出したのだが、アクロカントサウルスが歩いた部分のアスファルトは溶け、赤い足跡を残していた。
炎の力をその身に宿しているだけはあるようだ。
それから数時間歩き続けたウサラパ達とアクロカントサウルスは、湾岸沿いの道路を歩いているところだった。
しかし、肝心のDキッズがやって来ない。まあ彼らは恐竜の出現を探知できない状況にあるので仕方ないのだが。
「おかしいねぇ…。ガキンチョ共が現れないじゃないか…」
「せっかくアクロカントを連れてきたのに、気付かないんスかねぇ?」
そんなことを喋りながら歩いていると、彼らの前方に煌々と光る施設が現れた。ガソリンスタンドである。
超アクト恐竜となったアクロカントサウルスの特性を考えれば、その近くを通ることがどれほど危険か分からないほど彼らは愚かではなかった。
「ねぇノラッティ〜。ガソリンスタンドにこいつを近づけるのは、流石にまずいんじゃないのかい?」
「そうザンスね〜。ミー達はテロを起こしに来たわけじゃないザンス」
ということでアクロカントサウルスに迂回の指示を出そうとしたノラッティ〜だったのだが、何やら様子がおかしい。
「あ…あれ?」
何故かアクロカントサウルスに指示を送れず、ノラッティ〜が慌て始めた。
どうやら超アクト恐竜となったアクロカントサウルスが発する熱にスーパーアクトボールが耐えられず、一時的に不具合を起こしてしまったようである。
すると、アクロカントサウルスは勝手に前へ歩き出してしまったのだ。
「どっ、どうしたんだい? ノラッティ〜!」
「そっ、それが…さっきまでは言うことを聞いてたザンスのに…」
そんな会話をしている間にも、アクロカントサウルスはどんどんガソリンスタンドへ迫っていた。
「…おい、なんか熱くないか?」
「そう言えば…あっ!」
「うわっ! なんだありゃあ!?」
ガソリンスタンドの職員も高熱と共に迫ってくるアクロカントサウルスを目の当たりにし、我先にと逃げ出す。
「止まるザンスぅー!」
アクトホルダーを手にアクロカントサウルスに静止の命令を送り続けていたノラッティ〜だが、ようやく命令を受領したようで、アクロカントサウルスは停止した。
よりにもよってガソリンスタンドの真ん前で。
「おっ、止まったザンス」
「バカーッ! あんなとこに止めてどうするんだいーっ!?」
「こ、このままガソリンに引火したら大変ッスよ…」
このままでは自分達も爆発に巻き込まれるかもしれない。そう確信したウサラパ達3人は悲鳴を上げながら駆け足でその場から遠ざかった。
しかし、いつになっても爆発は起きなかった。
「…何も起きないね?」
「どうやら大丈夫のようッスね?」
「良かったザンス…」
そうして胸を撫でおろしたのも束の間だった。
案の定アクロカントサウルスの熱によってガソリンに引火し、ガソリンスタンドが大爆発を起こしたのだ。
凄まじい震動が巻き起こり、それは山の上にあるDラボにまで届いた。
「な、なんだぁっ!?」
衝撃に驚いたDキッズがラボの外に出ると、海岸沿いの1角から凄まじい炎と黒煙が立ち上っているではないか。
「うおおっ!? ありゃ何だ!?」
あまりに衝撃的な光景に一同は言葉も出せない状態だったが、その静寂を破ったのはオウガだった。
「古代博士! あそこに何の施設があったか分かりますか!?」
「え? あぁ、待っててくれ! 今ラボから地図を…」
その時、突然リュウタが走り出した。
「オレ、見てくる!」
そう言うが早いかリュウタは仲間達の静止も聞かず、自転車に跨り、暗い夜道の中を走っていったのだった。
一方で爆発現場では、爆発炎上したガソリンスタンド跡地でアクロカントサウルスが歓喜の雄叫びを上げていた。
その高熱と狂気と混沌が入り混じる光景の中で、またしても黒焦げになったウサラパ達3人のうち、エドがポツリと口を開く。
「あ、あいつ…炎の中で嬉しそうにしてるッス…」
燃え盛る炎をものともせず、むしろ喜んでいるようなアクロカントサウルスの姿は、まるで炎の悪鬼バルログを彷彿とさせるようであった…。
そして間もなく爆発現場には次々と消防車が入り、上空にはマスコミのヘリコプターが旋回し始めていた。
『只今、三畳市で起きたガソリンスタンド爆発の現場上空に来ております。
爆発の原因は、突如現れた恐竜によるものと思われます』
現場には騒ぎを聞きつけてやってきた野次馬も複数人おり、そこへ自転車に乗ったリュウタも駆けつけた。
「あぁっ! あれはアクロカントサウルス!?」
リュウタの目の前では、ちょうどアクロカントサウルスが放水してきた消防車に炎を吐きかけているところだった。
その炎の激しさに、野次馬や消防隊員も逃げ出していってしまう。
「あいつ、あんなにすごかったかな…?
って! こうしてる場合じゃない! 早くみんなに連絡しなくちゃ…!」
と、その時アクロカントサウルスから逃げていく人々の中に見覚えのある顔を3つ見つけた。
そう。アクト団工作員の3人組である。
「あぁっ! 真っ黒に焦げたオバさん!」
「キィーッ! 誰がオバさんだってぇーっ!?」
「い、いたザンス!」
「この騒動はオバさん達の仕業だったんだな!?」
「分かっちゃうんスね。真っ黒になってもオバ」
「しーっ!」
うっかり『オバさん』と口を滑らせそうになったエドの口を素早くノラッティ〜が塞いだ。
しかし幸運にも、ウサラパの耳には入らなかったようだ。
「フッフッフ…驚いたかぁ~い?」
「お前ら…! あのアクロカントサウルスに何したんだ!」
「強化したザンスよ…!」
「…強化?」
「そうよぉ…!
今のアクロカントはただの恐竜じゃない…。ドクターの改造で何倍にも強くなった
分かったら、とっととアタシ達から奪っていったカードを返しな!
…さもないと、アクロカントに命じてこの街を火の海にしちゃうよぉ…」
「そんなことさせるか!」
ウサラパ達の脅しにも怯まず、リュウタは自転車を転回させるともと来た道を戻っていった。
「あぁっ! 仲間を呼びに行ったザンスね!」
「ふん、構うもんかい。どうせあいつらの恐竜でもアクロカントは止められない。
結局はアタシ達にカードを差し出して止めてもらうしかないのさ…」
「…そもそも、アクロカントはあんな状態ッスけど、まだおれ達の指示を聞いてくれるんスかねぇ…?」
その頃 Dラボ
ちょうどその頃、マルムのディノホルダーが修理を終え、リアスからマルムに手渡されたところだった。
「はい、マルム。直ったわよ」
「ありがとう! お姉ちゃん!」
その時、ラボのモニターに着信が入った。相手は先程火災現場に向かったリュウタである。
『みんな、大変だ! あの爆発は、アクト団が連れてきた恐竜のせいだったんだよ!』
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
「リュウタ! 恐竜って? あいつらが持ってる恐竜の中で、あんなに大規模の爆発を起こせる奴はいなかったはずだぞ!」
『それが、あいつらがこの前奪っていったアクロカントサウルスなんだけど…凶暴になってるんだ!』
「凶暴…?」
「凶暴になったってどういうことなんだ?リュウタ!」
『よくは分からないんだけど…ゾイじじいが『
それに、あいつらアクロカントサウルスで街を火の海にするって…!
だから父さん! オレのディノホルダーが直ったらすぐガブとイナズマを一緒に連れて持って来てよ!』
「分かった! だがくれぐれも無茶はするなよ!」
『うん!』
そこでリュウタからの通話は切れ、画面が元に戻った。すぐさま古代博士が入力を切り替え、テレビの映像を映し出す。
そこには、横倒しになった消防車を前に咆哮を轟かせる超アクトアクロカントサウルスの姿が映っていた。
『なんとこの恐竜は、消火しようとする消防車に対して炎を吹き付けています!』
その頃 秘密結社『Sin-D』本部
『これは最早恐竜ではなく、怪獣と呼ぶ方が正しいのかもしれません!』
このニュース映像は、カロリディーやジェイソン、イシドーラらも見ていた。そして超アクトアクロカントサウルスの暴れように、それぞれ驚愕の声を上げている。
「これは…凄まじいな…。炎の中にいて何も感じないどころか歓喜しているなど…生物としての範疇を超えているとしか思えない…」
「まさか、こいつはあの時の…?
あの時は間違いなく普通のアクロカントサウルスだったはずだぞ。そんなヤツをここまで改造できるたぁ…あのジジイもなかなか捨てたもんじゃねぇのかもな。
…で、どうするドジスン? 今回おれ達は介入するのか?」
「…いや、今回我々は静観を貫くものとしよう。
我々の活動目的はテロの支援ではない。世界に「正しい」恐竜像を定着させること、そしてそのためにジュラシック・アンバーを集めることだ。
…しかし、あのアクロカントサウルスは参考にできそうだな。アクロカントサウルス程度の恐竜であそこまで強くなれるのであれば、私のジョーカーならもっと強くなることができるだろう…。
そうなればもう覇轟オウガのティラノサウルスなど相手ではなくなるに違いない…フフフ…クハハハ…」
突然自分の世界に入り、笑い出したカロリディーを、ジェイソンとイシドーラは呆れ半分の目で見ていたのだった…。
今回はここまでです。
取り敢えずゴールデンウィークの間は毎日更新を続けていきたいのですが、ストックや執筆時間の関係でそれ以降は1日おきの投稿にしたいと考えております。
では、後編でまたお会いしましょう。