古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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 今回は後編になります。
 この話タイトルを設定したのは執筆を始める前だったのですが、進めれば進めるほど「あれ?もしかして超アクトアクロカントサウルスってレクシィからすると相性最悪なのでは?」と考えるようになってしまいました。
 加えてこの回はエースが水を克服して成長する話でもあるので、その成長を潰さないためにもあまりレクシィの活躍は描けなかった感じがしてなりません…。
 ということで誠に勝手ながら、話タイトルを変更させていただきます。大変申し訳ありませんでした。




後編

戻ってDラボ

 

 ニュース番組を見ていたレックスは、超アクトアクロカントサウルスが炎をものともしていないところに気がついたようだ。

 

「あいつ…炎の中なのに平気でいる…!」

 

「炎属性の恐竜だからって炎の中にいても大丈夫な訳じゃないのに…ソーノイダのやつ、一体どんなおぞましい改造を施しんだんだ…?」

 

「…アタシ、行ってくる!」

 

 堪えきれず飛び出していこうとするマルムを、レックスが引き止めた。

 

「待つんだマルム! もう少しでリュウタのディノホルダーも修理できる! それまで待った方がいいよ!」

 

「そんなに待ってられないわよ! その間に三畳市が…アタシ達の街があいつに焼き尽くされちゃったらどうするの!?

…例え時間稼ぎしかできなくても、アタシは行くわ!」

 

 そう言うとマルムはラボから駆け出していってしまった。

 

「マルム…! オウガ、一体どうすれば…。僕のディノホルダーはまだ修理すら始まってないし…」

 

「…これはもう猶予がなさそうだね。レックス! 俺もマルムの後を追って行ってくる!

俺も持ってるのはアンバーだけだからレクシィしか戦わせられないけど…皆が集まれるまで戦ってみせるよ!」

 

「…分かった。オウガ、マルムを頼んだよ!」

 

「最悪の事態は避けられるよう、最善を尽くすよ」

 

 それからオウガがアメジストを抱え上げ、ミサの方へと向き直った。

 

「ミサさん。俺が行っている間、アメジストをお願いします。

成体化できないのに連れて行っても危険な目に遭わせるだけだと思うので…。

アメジスト。ミサさんに迷惑をかけないようにね」

 

『キュッ!』

 

「…分かったわ、オウガ君。でも絶対に無茶はしないで。無事に戻ってきてね。

…も、勿論Dキッズのみんなでよ!」

 

「は、はいっ! 分かってます! 必ず戻ってきますから!

行こう! レクシィ!」

 

『グルルッ…』

 

 そう言うとオウガは踵を返し、レクシィと共にラボから出ていった。そんな彼を心配そうに見送るミサを見て、リアスはボソリと呟いた。

 

「まるで安いメロドラマを見せられてる気分だわ…。

それにしても、あの2人ったらいつの間にあんなに仲良くなってたのかしら…?」

 

 

その少し後 爆発現場

 

 炎は依然として燃え続けており、あれほど並んでいた消防車は全て横倒しにされている。そこまでやってようやく気が収まったのか、再びアクロカントサウルスは進撃を再開した。

 その様子に、ウサラパ達も胸を撫で下ろす。

 

「や、やっと離れたザンス!」

 

「遅いッスよ…」

 

 一方で上空のマスコミも、アクロカントサウルスの動向を引き続き報道していた。

 

『火を吹く恐竜はガソリンスタンドを離れ、湾岸通りを市街地へ向かっています。このままでは三畳市が火の海になってしまいます』

 

 そしてマスコミは、無謀にもアクロカントサウルスを追いかけるようにヘリコプターを移動させ始めた。

 しかし、アクロカントサウルスの周囲で燃え盛る炎が激しく、接近することも叶わないようだ。

 

『火の勢いが強く、これ以上接近することができません。三畳市の皆さんは、大至急避難して下さい!』

 

 アクロカントサウルスが街路樹を燃やしながら歩いていく様をリュウタが観察していると、そこへマルムがやって来た。

 

「リュウタ!」

 

「マルム! まさかあいつと戦う気か?

…気をつけろよ! あいつ…すごいぞ!」

 

「…やるだけやってみるわ!

ディノスラーッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス!」

 

キュオォォン!!

 

 マルムがディノホルダーにパラパラのカードをスキャンし、成体化させて召喚する。パラパラがアクロカントサウルスを見据えると、周囲の風景もバトルフィールドに変わっていった。

 しかし、ウサラパ達3人は余裕綽々といった態度を崩さなかった。それどころかパラパラをせせら笑ってすらいる。

 

「何だい? やって来たのはあいつだけかい?

甘く見られたもんだねぇ…。うちの(スーパー)アクトアクロカントサウルスも…」

 

 そして、パラパラは歩みを進めるアクロカントサウルスの背後から突撃しようとしていた。それに気付いたアクロカントサウルスが火炎放射を浴びせると、パラパラは大きく跳躍して躱し、アクロカントサウルスの背中を踏み台に更に跳ねようとした。

 しかし、ジュウウッと肉の焼ける音がしたかと思うと、パラパラは放り出されるように地面に転がったのである。

 どうやら足裏を火傷してしまったようで、なかなか立ち上がることができなさそうだ。

 

「あぁっ! パラパラ! 大丈夫!?」

 

「くっそぉ…まさか火傷するくらい体表も熱いなんて…。ガブとイナズマが来るまで何とか耐えてくれ!」

 

 マルムとリュウタの声援を受け、何とかパラパラは立ち上がるものの、それを待っていたアクロカントサウルスからの尻尾攻撃を受けてまた地面へ倒されてしまう。完全なるワンサイドゲームであった。

 

「パラパラ! 無理しないで!」

 

 マルムが涙ながらにそう呼びかけるものの、アクロカントサウルスはいたぶりの手を止めることはなかった。

 もうすっかり余裕だと確信したのか、ウサラパが思い出したかのように口を開く。

 

「…そういえば、ドクターはアクロカントにどんな技を覚えさせてたんだい?」

 

「ちょっと待ってほしいザンス。

えーっとドクターから貰ってきたこの説明書によると…尻尾を炎の剣にして貫く『過熱炎剣(オーバーヒート)』、広範囲に炎を吐き出す『拡散豪炎(フレアバースト)』、それからそれから…相手に噛みついて爆発させる『大炎爆発(ビッグファイアボム)』…。以上の3つらしいザンスよ」

 

「前の2つは聞き覚えがないんスけど…もしかして、あのカロリディーとかいうやつに納品した炎属性の技カードと同じやつなんスかね?」

 

「もう、そんなの今はどうだっていいだろ?

アタシが聞きたいのは1つだよ。その中で1番あのパラサウロロフスを苦しめながら倒せる技はどれだい?」

 

「え? それは…多分一定の火力で広範囲を焼き払う『拡散豪炎(フレアバースト)』だと思うッスよ?」

 

「体をジワジワと焼かれるなんて嫌ザンスからねぇ。

例えるなら魚焼き機に入った魚の気分…かもしれないザンス」

 

 エドとノラッティ〜がそう答えると、ウサラパはにんまりと口角を上げた。

 

「じゃあ話は早いね。アクロカントが十分パラサウロロフスを痛めつけたら、『拡散豪炎(フレアバースト)』の指示を出すんだよ」

 

 そのウサラパの言葉に、思わずエドとノラッティ〜は互いの顔を見合わせた。

 もしかするとウサラパは、普段あの少女にオバさん呼びされていることの意趣返しをしようとしているのではないか、と互いに同じことを考えていたのだ。

 

「返事はどうしたんだい?」

 

「「へ、ヘイヘイホー…」」

 

 そんな受け答えをしているうちに、準備は整ったようだ。地面に倒れ伏し起き上がれなくなったパラパラに、アクロカントサウルスがジリジリと迫ってくる。

 

「今だよ! さっさの技の指示をお出し!」

 

「わ、分かったザンスよ…。

アクロカント! 『拡散豪炎(フレアバースト)』ザンス!」

 

 ノラッティ〜がそう呼びかけると、アクロカントサウルスが赤い光と炎に包まれ、高らかに雄叫びを上げる。そして口に赤い炎を溜め込みだしたではないか。

 しかしその炎が溜まっていく様子を、パラパラは観察していることしかできなかった。

 

「お願い! パラパラ! 起き上がって!」

 

「くそぉっ…。父さんはまだなのかよ…!」

 

 マルムとリュウタの叫びが響く中、アクロカントサウルスの口が大きく開かれて炎が溢れだそうとした…その時だった。

 

「行けーっ! レクシィーッ!」

 

ゴガアァァァァッ!!

 

 掠れ声でその言葉が聞こえたかと思うと、出し抜けにそばの林から成体の姿のレクシィが姿を現した。そしてアクロカントサウルスに突進し、大きく跳ね飛ばしたのだ。

 アクロカントサウルスは口に溜め込んだ炎を撒き散らしながら海へと落下していく。

 そしてレクシィに続いてその場へ出てきたのは、ゼェゼェと息を切らせたオウガだった。

 

「ごめん…2人とも…。俺、あまり体力ないから…必死で自転車漕いで来たんだけど…時間かかっちゃって…」

 

「そんなことないぜオウガ! ナイスタイミングだったぜ!」

 

「ありがとう、オウガ! パラパラを助けてくれて…。

そうだ! パラパラ! 大丈夫!?」

 

 マルムがパラパラのもとへ駆け寄っていくと、パラパラは少し頭を上げ、マルムに一声を返してからカードへ戻っていった。

 マルムはそのカードを胸元に当て、静かに囁いた。

 

「パラパラ…ありがとう…」

 

 一方、横槍を入れられたことにウサラパは大層ご立腹な様子だった。

 

「キィーッ! 何なのさあのティラノは余計なことしてくれちゃって! お陰でアタシの日頃の恨みを晴らす案が失敗しちゃったじゃない!」

 

「やっぱりそうだったんスね…」

 

「こうなったらあのティラノもアクロカントで倒しちゃうんだよ! ほら、ノラッティ〜! さっさとおし!」

 

「わ、分かったザンスよぉ…。アクロカント! もう一度こっちに戻ってくるザンス!」

 

 すると、アクロカントサウルスが岸壁を飛び越えて再びレクシィの目の前へ降り立った。そしてレクシィとアクロカントサウルス、2体の頂点捕食者の睨み合いが始まろうとしたその時…。

 オウガ達の後ろから、車が猛スピードで近づいてくるではないか。その車はドリフトしながらオウガ達の目の前で急停車する。

 そして運転席から姿を現したのは、防護服に身を包んだ古代博士だった。

そして彼と共にガブとイナズマが降りてくる。

 

「父さん!…その格好は…?」

 

「防護服だ。防火素材で出来ているから、これを着ていれば安心だ!

ほら! お前達の分も持ってきてやったぞ!」

 

 そう言って古代博士が防護服を差し出す。

 だが、そこでアクロカントサウルスがレクシィを威嚇するために火を吐いた。当たりこそしなかったものの、舞い散った火の粉が防護服に引火し、燃え出してしまったではないか。

 防火素材とは何だったのか。

 そしてそれを目の当たりにした古代博士はすかさず手の防護服を投げ出し、自分が着ていた防護服も素早く脱ぎ捨ててしまった。

 

「父さん…それでディノホルダーは?」

 

「おお! 直ったぞ!」

 

 そう言い、古代博士がリュウタにディノホルダーを差し出した。リュウタはそれを受け取り、オウガと並び立ってアクロカントサウルスに向かい合う。

 

「よっしゃあ! いくぞ! ガブ! イナズマ!

三畳市を火の海になんかさせるもんか!

ディノスラーッシュ!

轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」

 

ゴオォォォォ!!

 

ギュオォォォォ!!

 

 リュウタがガブとイナズマのカードをディノホルダーにスキャンし、2体を成体化させた。そしてレクシィと共にアクロカントサウルスに立ち向かっていくが、いきなりアクロカントサウルスは3体に火炎放射を浴びせてきたのである。

 

「いきなり火炎放射を…!?」

 

「これじゃあうっかり近づけないよ!」

 

 ガブとイナズマに比べれば属性の関係上比較的炎には耐性があるレクシィが炎の中を強行突破し、アクロカントサウルスを掬い投げたことで何とか火炎放射を中断させることはできた。

 しかし落下して間もなく起き上がるとレクシィを尻尾攻撃で後退させ、またガブとイナズマへ火炎放射を浴びせてくる。

 

「火炎放射に加え、この暑さではレクシィはともかく、ガブやイナズマは体力を消耗する一方だな…」

 

「それに…レクシィが使える炎属性の技も、あのアクロカントサウルスには通じそうになさそうだね。

もし炎を吸収して更にパワーアップさせてしまったら…と考えると怖くて使えないな…」

 

「ガブやイナズマが技を使おうにも、あれだけ絶え間なく火炎放射を浴びせてくるんじゃ差し込む隙がないよ…」

 

「エースがいてくれたら…エースはまだなの!?」

 

 こんな時、素早い動きで相手を翻弄できるエースがいてくれたら…とその場にいる全員が考えていたのだった。

 

 

その頃 Dラボ

 

 さて、その肝心のレックスはまだ出発できていなかった。リアスがまだ彼のディノホルダーを修復している途中なのだ。

 そんな中ふと彼が顔を上げると、モニターに映るニュース映像が目に入ってきた。ちょうどアクロカントサウルスがレクシィ達に火炎放射を浴びせている場面であり、モニターの前ではミサがアメジストを抱えたまま不安そうにしている。

 

『新たに現れた恐竜達は、まるで火を吹く恐竜が三畳市に入るのを阻止しているように見えます』

 

「ガブ…イナズマ…レクシィ…!

くっ…ごめんなさい! リアスさん! これ以上待てないよ!」

 

「えっ!? ちょ、ちょっと…レックス君!」

 

 突然レックスは修理途中のディノホルダーを引っ掴むと、ラボの外…彼の自転車が停めてあるところまで一直線に走っていったのだった。

 

 

戻って爆発現場近く

 

 さてここでは、まだレクシィ達とアクロカントサウルスの戦闘が続いていた。

途中レクシィがアクロカントサウルスに食らいつこうとしたものの、あまりの熱さに口を離してしまっていたため、肉弾戦での打倒も厳しそうな状況である。

 一方でウサラパ達も、すぐに勝負を決めたがっている様子であった。

 

「こらノラッティ〜! さっさと技の指示を出すんだよ!

相手が多いんだし、もう一度『拡散豪炎(フレアバースト)』を使わせればいいだろぉ?」

 

「わ、分かったザンスよ…。

アクロカント! もう一回『拡散豪炎(フレアバースト)』ザンス!」

 

 ノラッティ〜が指示を与えると、再びアクロカントサウルスが口内に赤い炎を溜め込み始めた。来る攻撃に備えガブとイナズマも身構えるが、そこでレクシィはチラリとウサラパ達の方を見ると、何故か彼らに背を向けるように立ちはだかった。

 そしてアクロカントサウルスが『拡散豪炎(フレアバースト)』を放つと、レクシィ達は一斉に飛び退き、炎の範囲外へと逃れた。

 しかし、『拡散豪炎(フレアバースト)』とは、炎が勢いを保ったまま広範囲へ拡散する技なのである。

 ということは…。

 

「「「うわーーっ!?」」」

 

レクシィ達の後ろにいたウサラパ達3人にも炎が届き、またしても彼らを黒焦げにしてしまった。

 

「「「チリチリチリ…ブホッ…」」」

 

 しかも今回は技ということもあってか、アクトホルダーまでが炭化しボロボロと崩れてしまった。しかしそんなことまで気にしているほどの余裕は彼らにはない。

 

「「「あーちちちちち!!!」」」

 

 全身を襲う熱さから逃れるため、彼らは次々に海へと飛び込んでいった。そしてアクトホルダーが破壊されたことでスーパーアクトボールも限界を迎え、爆発四散してしまったのだった…。

 

 

同時刻 アジ島

 

 その頃、アジ島では奇妙なことが起こっていた。アクト恐竜達と遊んでいた(遊ばれていた)ソーノイダの背後で、突如としてスーパーアクトコントローラーが爆発を起こし、スクラップと化したのである。どういうわけなのであろうか。

 

「うおーっ!? どうしたことぞい!?

…うわあっ!? ワシのスーパーアクトコントローラーがーっ!?」

 

 これには流石のソーノイダも驚きの声を上げざるを得なかったのだった。

 

 

戻って三畳市 爆発現場付近

 

 スーパーアクトコントローラーの支配から解き放たれたアクロカントサウルスは大きく咆哮し、今度は尻尾に炎を滾らせ始めた。そして大きく跳躍してガブとイナズマに肉薄すると、炎の剣の如き尻尾で滅多斬りにし、最後に尻尾を突き刺す超技『過熱炎剣(オーバーヒート)』を繰り出した。

 ここまでの戦いで体力をじわじわと削られ続けていた2体はこの攻撃に耐えられず、カードへと戻されてしまう。

 

「あぁっ! ガブ! イナズマ!」

 

 これで邪魔者はいなくなったとばかりに、アクロカントサウルスはレクシィに目線をやり、雄叫びを上げた。レクシィもそれに応えるかのように咆哮すると、アクロカントサウルスに突進攻撃を仕掛けた。

 周囲を炎に囲まれた中で、頂点捕食者のデスマッチが始まったのだ。互いに炎は効果が薄いことが分かりきった状態であるため、純粋に肉弾戦での勝負である。

 しかしレクシィはティラノサウルス種最大の武器である噛みつきができないため、タックルや尻尾等で攻撃をしていくしかない。

 そんな圧倒的不利な状況でも、何とか善戦していた只中のことだった。

 自転車に乗ったレックスが、ようやくオウガ達と合流したのである。

 

「「レックス!」」

 

「遅いんだよレックス!」

 

 だが到着したレックスはディノホルダーを持っていなかった。代わりに上着のポケットからエースのカードと風の石版を取り出し、リュウタに見せる。

 

「リュウタ。これ、どうやるんだ?」

 

「石版…?」

 

「初めてガブを召喚した時、リュウタはこの石版を使ってたじゃないか!」

 

「そう言えば…確かに…。

俺のアンバーと同じように、石版だけでもカードからの召喚はできたんだよね?」

 

「えーっと…確か…石版についてるチップにカードを擦り付けるんだったっけ…」

 

「これか?…よーし、ディノスラーッシュ!」

 

 チップを確認したレックスがカードをスキャンするも、エースはチビ形態で召喚されてしまった。

 

「うえぇぇぇっ!?」

 

『…グア?』

 

「リュウタ! 違うじゃないか!」

 

「違うのはお前だよ! 擦るのが反対なんだよ反対!」

 

 リュウタから言われ、自分の間違いに気付いたレックスは再びエースをカードに戻し、先程とは逆方向にスキャンした。

 

「今度こそ! ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

グォォォォォォン!!!

 

 今度は、風と共にエースが成体状態で召喚され、降り立つことができた。エースが大きく吠えると、新手を察知したアクロカントサウルスがそちらへ振り向く。

 

「気をつけろよ! エース!」

 

 リュウタがそう声をかけると共に、エースは駆け出していく。

アクロカントサウルスはそんなエースにまた火炎放射を吐きかけるが、それをエースは軽く躱すと、アクロカントサウルスの首に食らいついた。

 しかしレクシィでも耐えられないほどの温度である。当然エースも耐えられずに素早く飛び退いた。その隙にアクロカントサウルスが追撃を加えようと襲いかかるが、そこでレクシィがアクロカントサウルスに体当たりを加え、大きく突き飛ばした。

 

「今だよ! レックス! エースに技を!」

 

「分かった! 『疾風無敵(サイクロン)』!」

 

 すぐさまレックスがディノホルダーに技カードを通す。するとエースの体に竜巻が宿り、それを纏ってアクロカントサウルスへと突撃していった。

 しかし、アクロカントサウルスは跳ね飛ばされないどころか火炎放射でエースを押し戻してしまったのである。

 エースが纏っていた風が突風となり、Dキッズと古代博士に襲いかかる。

 

「レックス! 炎に対して風は相性が悪い!

疾風無敵(サイクロン)』はアクロカントサウルスを余計凶暴にして、喜ばせるだけだぞ…!」

 

「そうよ…。やっぱり火を消すには…水じゃないと…!」

 

「他には火に土を被せて消火する方法もあるけど…ディノラウザーがないからアメジストは召喚できないし…」

 

「水が苦手なエースじゃ、あいつを倒すのは無理か…。

やっぱり、オウガとレクシィに頑張ってもらうしかねぇのかよ…!」

 

 そこでようやく風が止む。すると、古代博士は突然こんなことを口走り始めた。

 

「…メキシコでは、空から魚が降ってきた話がある」

 

「…はあ?」

 

「カリフォルニアでは、カエルが降ってきたこともあったらしい…」

 

「ちょっと父さん! こんな時に何言ってるの!?」

 

 突然何が何だか分からない話を持ち出され、リュウタは困惑した様子で古代博士に迫る。

 

「いやあ、竜巻であいつを倒すいい方法がないかと考えているんだが…」

 

「竜巻?…! そうだ! 海水を『疾風無敵(サイクロン)』で巻き上げればあいつを…!」

 

 そうレックスは閃いたものの、エースはそもそも水嫌いだということも思い出す。エースは、果たしてこの案に乗ってくれるのだろうか…。

 そうレックスが考えている間に、アクロカントサウルスはエースから視線を外し、レクシィとの戦闘を再開していた。だが高温のアクロカントサウルスの体にレクシィは噛みつけないため、極めて厳しい戦いを繰り広げることになってしまっていた。

 更に悪いことに、オウガのアンバーも赤く点滅し始めた。レクシィの活動限界が近づいているのだ。

 

「レクシィも苦しい戦いなのは分かってる…。

でも、ここで抑えないと…三畳市が…俺達の街が…!」

 

 そう呟いたオウガの言葉に、レックスも何かを決意した表情を浮かべると、海の方へと走っていく。

 

「レックス! どうしたんだよ!?」

 

「僕に考えがあるんだ!…僕のところへ来るんだ! エース!」

 

 そこへエースを呼び寄せると、レックスは岸壁から下の海へと飛び込んだのだ。そしてそこから更にエースに、自分のところへ来るように呼びかける。

 

「僕と一緒なら、怖くないだろ?」

 

 信頼するレックスからそう呼びかけられても、やはり怖いものは怖いようだ。エースは嫌嫌と言うように首を横に振ると、少し後退りをしてしまっている。

 

「エース! 僕を信じてくれ!」

 

 レックスがもう一度呼びかけると、エースは意を決して海へと飛び込んだ。

 

「よし! もう一度だ! 『疾風無敵(サイクロン)』!」

 

 再びレックスが石版に技カードを通す。するとエースの周囲に巻き起こった風が海水をぐんぐんと吸い上げ、まるで水の竜巻のようになっていくではないか。

 そして十分に水を吸い上げたところで、水の竜巻を纏ったエースはゆっくりと前進していく。

 

 その時、陸を目指して必死に泳いでいたウサラパ達も、周りから水がなくなったことに驚いていた。

 

「な、何だい…?」

 

「何が起きてるザンスか?」

 

 困惑しながらも上を見上げてみると、そこにはエースが作った水の竜巻があり、彼らも思わず驚愕の叫びをあげた。

 

「「「ズビズバーッ!?」」」

 

 アクロカントサウルスと戦っていたレクシィも、水の竜巻がこちらへ迫ってきているのを見て、少し後退りをする。それを不審に思ったアクロカントサウルスが後ろを振り向くと、そこには水の竜巻を纏って前進してくるエースの姿があるではないか。

 すかさず火炎放射を放つものの、水の中にいるエースには届かない。

 圧倒的不利を感じ取ったアクロカントサウルスは、エースから背を向けて湾岸通りの方へ逃げようとした。

 だがオウガもそれを見逃さない。すかさず技カードを取り出すとアンバーに押し当てた。

 

「逃さないぞ! レクシィ、君の最後の力を貸してくれ! 『アトミックボム』!」

 

 レクシィが赤い光に包まれて高らかに咆哮を上げる。それから目の前のアクロカントサウルスを掬い投げるとその後を追うように飛び上がり、全体重をかけてアクロカントサウルスを踏みつけてしまった。

 そして技を終えると同時にレクシィは活動限界を迎え、カードになってオウガの手元へ戻っていく。

 

「レクシィ…ここまで頑張ってくれて、ありがとう…!

エース! 後は君が決めるだけだ! 思いっきりやっつけてやれー!」

 

「行くんだ! エースー!」

 

 オウガとレックスの声援を受けて、エースも呼応するかのように吼えると、アクロカントサウルスを水の竜巻へと巻き込んだ。アクロカントサウルスは水の中で揉まれ、苦しげな声を上げる。

 やがて竜巻が解かれると、アクロカントサウルスは背中から地面に落下し、ピクリとも動けないままカードへと戻っていった。

 それをリュウタが拾い上げると同時に、巻き上げられていた海水が雨のように降ってくる。

 

「やったぜエース!」

 

「うむ。これは凄い技を開発したな。水と竜巻の合わせ技、言うなれば『激流旋風(ウォーターサイクロン)』…イテッ!?」

 

 得意げな顔で技名をつける古代博士の頭に、大きな魚が降ってきた。

 

「ほ、本当に魚が降ってきたぞ!?」

 

「エースーッ!」

 

 そこへレックスが海から上がってくると、いつの間にかチビ形態になったずぶ濡れのエースが駆け寄っていった。

 

「ごめんよ、エース。嫌いな海に飛び込ませて…」

 

『グアァ…』

 

 エースを抱え上げたレックスがそう言って謝るものの、身震いして入念に水を落としたエースは、レックスにしっかりと抱きついていた。

 一方でオウガも、ひとりでにチビ形態で出てきたレクシィを抱え上げて労っていた。

 

「レクシィ。三畳市が火の海にならなかったのは君の力添えもあったお陰だよ。本当にありがとう」

 

 オウガがそう言うと、レクシィは照れくさそうにしながらオウガの胸に顔を埋めるのだった。

 

 『激流旋風(ウォーターサイクロン)』で巻き上げた海水のお陰もあり、爆発現場からはすっかり火が消え始めたていた。そして大体全てが終わったところに、再びマスコミのヘリコプターが戻ってくる。

 

『これはどういうことなのでしょうか。次々に現れた恐竜達の姿が消えてしまいました。

しかしこれで、三畳市が火の海になることは避けられた様子です』

 

 そのニュースは、Dラボのミサとリアスのもとにも届けられていた。ようやく緊張が溶け、ミサが大きく息を吐き出す。

 

「本当に良かった…。アクロカントサウルスも倒されたみたいだし、オウガ君達も無事みたい…。

アメジストちゃんもこれでひと安心よね?」

 

『キュッキューッ♪』

 

 そんな会話をしながら笑い合うミサとアメジストを横目に、リアスは額の汗を拭っていた。彼女の目の前には今しがた修理を終えたディノラウザーが置いてある。どうやら届けることも視野に入れていたようだが、その必要はなさそうだった。

 

 

 一方、ウサラパ達アクト団工作員の3人は波消しブロックの上で休息を取っていた。

 

「ふぃーっ、酷い目に遭ったザンスぅ…」

 

「トホホ…もう熱いのはこりごりだよ…」

 

 そんな愚痴を呟いていると、彼らのアクトホルダーに着信が入る。相手は当然ながらソーノイダであった。

 

『どうぞい? 作戦はうまく進んでおるぞいか?』

 

「ドクター、それがですね…そのぉ…」

 

「スーパーアクトボールが壊れちゃったんザンス…」

 

『何じゃと!? …もしやコントローラーが爆発四散した原因は、スーパーアクトボールにあったのかぞいか…。

そんなことより! ワシの超アクトアクロカントサウルスはどうしたのだぞい!』

 

「えっと…そのう…」

 

『どうした。はっきり言わんかい』

 

「そのぉ…またガキンチョ共に奪われちゃったッス…」

 

 エドがそう言った瞬間、通話先のソーノイダの顔が怒りで染まった。

 

『何ぃーっ!? カードまで取られただとぉーっ!?』

 

「だってぇ…それもこれも、ドクターがまた壊れるようなもの作るからぁ…」

 

『またとは何ぞい! このウスラバカ者達がぁっ!』

 

 そう叫ぶと、ソーノイダは怒りに任せて手に持ったレンチを投げつけてきた。ウサラパ達は思わず体を縮こませたものの、所詮画面の向こうの出来事である。すぐに気を取り直してヘラヘラと笑い出した。

 

「いやドクター、そんなもの投げつけたって…」

 

 しかしその瞬間、何故かアクトホルダーの画面にヒビが入ると、大爆発を起こす。一体どういうメカニズムなのだろうか。

 そして哀れにもそれに巻き込まれた3人は、今日で何度目かも分からないがまたしても黒焦げになってしまっていた。

 

「「「クロコゲヒレハレ〜…」」」

 

 

その頃 アジ島

 

「ええい本当にあのバカ共めが! ワシの研究成果を無駄にしてくれおって!」

 

 そう喚き散らしながら地団駄を踏んでウサラパ達に悪態をついていたソーノイダであったが、何故か急に落ち込んでしまう。

 

「ハァ…。せっかく苦労してスーパーアクトコントローラーを作り上げたというのに、失敗してしまったぞいか…。

仕方がない。この研究はお蔵入りにするしかなさそうぞい…」

 

 そう言って鉄屑と化した元スーパーアクトコントローラーにソーノイダが向かい合っていると、ロトが彼の研究室へと入ってきた。

 

「お爺ちゃん。すごい発明ができたって聞いたから来てみたんだけど…あれ? もう壊れちゃったの?」

 

「ロトか…。あぁそうぞい。

ウサラパ達の話から推測すれば、スーパーアクトボールが(スーパー)アクト恐竜から放たれる属性エネルギーに耐えられなかった、と考えるのが自然じゃろうな」

 

「ふーん…。じゃあお爺ちゃん。どうせ捨てちゃうならこれ貰っていっていい?」

 

 そう言いながらロトが手に持ったのは、スーパーアクトコントローラーの設計図である。

 

「別に構わんぞい。失敗作の設計図なんぞワシは興味ないぞい。次はもっと改良して、うまくやってみせるぞい!

取り敢えずもっと出力を上げて…」

 

 そう呟きながら新しい設計図に向かい合うソーノイダを尻目に、ロトは研究室を後にした。そしてエレベーターに乗り込んだところで、設計図を開いてみる。

 

「ふーん…。なるほどね。やっぱり大体予想はしてたけど、属性エネルギーが出力全開じゃないか。それで更に長時間戦わせてれば、そりゃアクトボールもイカれちゃうよ。

もっと出力を絞って…かつ適性の高い恐竜にこれを装備させれば、少し手を入れるだけで良さそうだ。

取り敢えず、改良案についてノーピスと話をしてみようかな…」

 

 そう独り言を言うロトの手には、カスモサウルスのカードが握られていたのだった…。

 

 

 




 今回の恐竜解説!

「今回の担当するのは私! 古代博士だ!
今回解説するのは、肉食の猛牛『カルノタウルス』だ! エースや、アマゾンでリュウタ達に襲いかかった恐竜がこの種族に分類されるな。
名前の意味は『肉食の雄牛』。目の上にある1対の角が牛の角のように見えたことからそう名付けられたと言われているぞ。
本種最大の特徴であるこの角は円錐形でな、どんな用途に使われていたのかははっきりしていないのだ。獲物の体に顔を突っ込んだ時に酸欠にならないよう空気の通り道を確保するためだとか、異性へのディスプレイのためだとか、様々な説は出ているのだがな…。
それと、本種は全長8メートル前後と大型肉食恐竜の中では小柄な方だが、その分脚が長い上に体つきもスマートだったようなので、大型肉食恐竜らしからぬ俊足で移動することができたのではないかと考えられているぞ!
だが、長い脚とは対照的に、本種の腕は非常に短くかつ小さいものになっていて、あのティラノサウルスよりもずっと小さいのだ。その割に指は4本もあり、更に肩の可動域もかなり広かったらしい。何故このような進化を遂げたのか…不思議な恐竜だな。
そして本種は皮膚の印象化石が見つかっているのも特筆すべき点だな! どうやらそれによると低い円錐状の飾り鱗が背中から尻尾に向かって付いていたらしい。これもどういう意味があったのかは分かっていないな。
このように謎が多い上、化石の個体数も少ない割には特異的な見た目をしているので、恐竜を扱う二次創作では何かと盛られがちな恐竜でもあるな。ティラノ並に巨大化&マッシブになったり、冷気を扱う設定を付けられたり、海洋軟体生物並の擬態能力を身に着けていたり…。
まあしかし、このような作品から恐竜に興味を持ってくれるのなら、私としても嬉しいに越したことはないぞ!」


ということで、今回はここまでです。重ね重ねにはなりますが、自分の勝手で章タイトルを変更することになってしまい、大変申し訳ありませんでした。
2度とこのようなことがないよう、精進してまいります。
それでは次回第16話の『熱いぜ!恐竜サッカーオーレ!』でお会いしましょう。

※追記:設定集に『過熱炎剣』『拡散豪炎』の説明を追記しました。
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