古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

 海の近くへ古代博士と共にキャンプにやって来たDキッズの4人。しかしエースが引き起こしたトラブルでディノホルダーやディノラウザーが焼け焦げ、故障してしまう。
 その夜キャンプを中止し、リアスにディノホルダーやディノラウザーの修理をしてもらっていたが、そんな時三畳市郊外の湾岸通りに立つガソリンスタンドで爆発事故が発生。その犯人はアクト団が改造した「超アクトアクロカントサウルス」であった。
 炎のエネルギーに満ち溢れ、三畳市を焼き尽くさんとするアクロカントサウルスとDキッズは対決するものの、恐竜達は次々と倒され、レクシィも強みを活かせないことで苦戦を強いられる。
 だが最後には水が苦手だったエースが勇気を振り絞って海に飛び込み、発動した『激流旋風』でアクロカントサウルスを撃破し、三畳市を火の海から守り抜いたのだった…。




第16話:熱いぜ!恐竜サッカーオーレ!
前編


『ご覧下さい、この熱気! ここはカーニバルで沸く南米のオーレです。

しかしこの地では今、もう1つの熱いイベントが開かれようとしています。そう! サッカークラブ世界一を決めるオーレカップがいよいよ今日、決勝戦を迎えるのです!』

 

 このように日本のニュースでも今大々的に取り上げられている南米の都市オーレ。

 そのオーレ郊外の森の中で、崖からいつもの卵カプセルが転がり落ちて木の上に引っかかる。するとそこから緑色の光と共に、1頭の恐竜が姿を現した。盛り上がった鼻先が特徴的な鳥脚類・アルティリヌスだ!

 アルティリヌスは目覚めるなり周囲をキョロキョロと見渡すのだった…。

 

 

その頃 三畳市 リュウタ宅

 

『まだキックオフまで時間がありますが、ここのスタジアムは既にサポーター達で超満員です。

果たして、世界一の栄冠を手にするのは、地元南米チャンピオン「チーム・オーレ」か!? それとも、ヨーロッパの強豪「FCユーロ」か!? キックオフが待ちきれませんね!』

 

 この日、オウガはリュウタの家へやって来て、リュウタやレックスと一緒にオーレカップの特番を見ていた。ちなみにマルムは少し遅れて来る予定である。

 特にリュウタは熱心に見入っているようだ。

 

「チーム・オーレとFCユーロか…。

どっちが勝つと思う? オウガ、リュウ…タ?」

 

 レックスがそう言いいながら横を見ると、そこにいたのはオウガだけで先程までいたはずのリュウタはどこにもいない。

 

「俺としては総合的にチーム・オーレじゃないかなって思うよ。あ、あとリュウタはいてもたってもいられないみたいで庭に出ていったよ」

 

 そう言ってオウガが指さす先では、リュウタがガブとイナズマの前でリフティングをしていた。

 そこでレックスは、もう一度聞こうと口を開く。

 

「おーいリュウタ! リュウタはどっちのチームが…」

 

「んなもんチーム・オーレに決まってんだろ?

何たってロカルドがいるんだからさ!」

 

「ロカルドかぁ…。そういやリュウタ、ロカルドの大ファンだったよな」

 

 ロカルドという男は、オーレ生まれオーレ育ちの生粋の南米人で、長年このチーム・オーレでエースストライカーとして活躍し続けてきたベテラン選手だ。

 そんなロカルドに、リュウタは心酔していたのであった。

 

「今日の試合もロカルドは絶対決めてくれるぜ!

それにロカルドは家では犬を相手にトレーニングしてるんだってさ! だからオレもこうしてガブやイナズマと一緒に練習すれば、いつかロカルドみたいに…」

 

 リュウタがそう言いかけた時だった。

 彼がリフティングしていたボールを、ガブが奪い取ったのだ。ガブはすぐさまそのボールをイナズマへとパスする。

 恐竜だというのになかなかのボール捌きであった。

 

「あっおい! 何してんだよガブ! イナズマ!

いつの間にそんなパス回しが上手くなったんだよ!」

 

 リュウタが追いかける間もガブとイナズマは抜群の連携でドリブルを続けると、最後に2匹でボールに齧りついて萎ませてしまった。

 

「手使ってんじゃねぇか! ハンドだぞハンド!

あーっ!…何すんだよもー…」

 

 すっかり萎んでしまったボールを手に持ち、リュウタがぼやく。

 ちなみにガブもイナズマもボールを咥えたまま離そうとしていなかった。

 

「あれじゃあロカルドにはなれないな…」

 

「むしろガブやイナズマの方がストライカーには向いてるかもね」

 

「フフフ、言えてる」

 

 オウガとレックスが苦笑交じりにそんな事を話していると、呼び鈴と共にマルムの声が聞こえてきた。

 

「マルムも来たみたいだね」

 

 そうレックスが言うが早いか、マルムが部屋へと駆け込むなりテレビに張り付いた。

 

「きゃあ~っ! ベッサム様〜!

ヨーロッパの貴公子だなんて誰が言い出したのかしら?もうホントピッタリ〜!」

 

「マルムもサッカー見てたんだ…。なんか意外だね」

 

「何よ! 女の子はサッカー見ちゃいけないなんて法律でもあるの?

まあアタシがサッカー見るのはベッサム様が出てる時だけだけどね!

今日も勝ってね! ベッサム様〜!」

 

 以前はMC玉木に熱を上げていたことからも、マルムはなかなかのイケメン好きであるらしい。

 まあ彼女くらいの年頃ならむしろ自然なのだろうが…。

 しかし、そのマルムの発言を聞き捨てられなかった人物が1人いた。リュウタである。

 

「何言ってんだよ! 今日はロカルドのチーム・オーレが勝つに決まってるだろ!」

 

「チーム・オーレぇ? ダメダメ、あんな華がないチーム。

世界一が似合うのは、世界一カッコいいベッサム様が所属するFCユーロなの♪」

 

「あのなぁ! サッカーは顔でやるんじゃねーんだぞ!

ベッサムみたいなチャラチャラしててサッカーに真面目じゃない奴なんかに、栄光のオーレカップを奪われてたまるか!」

 

「チャラチャラ…? サッカーに真面目じゃないですって!?」

 

「そうだろうが! それに引き換えロカルドは…」

 

 次第にリュウタとマルムの口論はヒートアップしていく。その様をオウガは困り顔で、レックスは呆れ顔で見ていた。

 

「何よ! まさかリュウタ僻んでるのぉ〜?

カッコよさでもサッカーの腕でもリュウタなんかベッサム様の足元にも及ばないクセにぃ〜?」

 

「オレのことはどうでもいいんだよ! オレよりオーレ…」

 

「オレなんでしょ?」

 

「じゃなくて! んあーっ! もう! 優勝はチーム・オーレだってばーっ!」

 

「FCユーロよ!」

 

「まあまあ、2人とも。どっちが勝つかは試合を見届ければ分かることなんだし、落ち着いてよ…」

 

 着地点の見えない口論を続ける2人を宥めようとオウガが割って入ろうとするが、2人の圧で退けられてしまった。

 ちなみに彼らのパートナー恐竜達は興味がないらしく、萎んだボールを引っ張り合っていた。

 

『…ニンゲンの争いとは醜いものだな』

 

そんな時、オウガのディノラウザーからレクシィの声が聞こえてきた。彼女も呆れているようである。

 

「仕方ないよ。どっちも自分の応援してるチームが1番になって欲しいって考えるのは当然のことだし」

 

『そんなものなのだろうな。

それにしてもニンゲンは「1番」や「最強」という言葉が好きなようだな。あのカロリディーとかいう男もそんなことを口走っていた』

 

「言われてみれば、確かにそうだね。

やっぱり俺達人間は何かと「1番」を定義づけしたがるところがあるんじゃないかな…」

 

 オウガがレクシィとそんな会話をしていると、ディノラウザーから甲高い通知音が鳴り響いた。画面を見ると、南米ブラジルの辺りで赤い光が点滅している。冒頭のアルティリヌスの出現を感知したのだ。

 リュウタ達もディノホルダーでそれを確認したようで、4人は互いに頷き合うとDラボへ向かったのであった。

 

 

Dラボ

 

 Dキッズがテレポートルームに入ると、そこにはもう既に古代博士やリアス、ミサが揃っていた。

 

「今度はどこに恐竜が現れたんだ?」

 

「南米の都市オーレの辺りよ」

 

「「「「オーレ!?」」」」

 

 なんというタイミングだろうか。今回恐竜が出現したのはオーレだという。心なしかリュウタとマルムは興奮気味であった。

 

「オーレか…。オーレといえば…ちょうど今はカーニバルの時期じゃないか? ウーッ! シャカシャッカ!」

 

「それよりオーレカップだって!」

 

「ベッサム様が試合するところよ!」

 

「ベッサム様が…?」

 

 マルムの言葉に、リアスが反応する。しかしミサは何の話をしているのか分からないようで、目を点にしていた。

 

「なるほど…世界中から人々が集まっている訳か。そんなところで恐竜が暴れたら大変だな…」

 

「よし、行くぞ!」

 

「健闘を祈ってるぞ!」

 

「みんな、気をつけてね!」

 

 古代博士とミサに見送られ、Dキッズはオーレへとテレポートしていった。

 

「…ところで古代博士。オーレカップって何なんですか?」

 

「ん? あぁそうか…。

カップというのは世界一のサッカークラブを決める大会でな、今回の開催都市が南米のオーレだからオーレカップと呼ばれているんだ」

 

「なるほど…。サッカーというスポーツの世界大会なんですね」

 

「そういうところだな」

 

 そんな会話をしているミサと古代博士の横で、リアスがボソリと呟く。

 

「いいなぁ…マルム…」

 

「「え?」」

 

 その言葉に反応したミサと古代博士がリアスの方を見る。彼女が彼らの視線から隠すように手の中に持っていたのは、ベッサムのブロマイドだった。

 どうやら姉妹揃ってベッサムのファンのようだ。

 

 

その頃 南米オーレ

 

 古代博士も言っていたように、今オーレはカーニバルのシーズンである。そのため街の大通りでは綺羅びやかに着飾ったカーニバルのダンサー達が練り歩いていた。

 その中に、いつものアクト団工作員の3人がまじっている。しかも南米の祭りだというのに、何故かエジプト風の衣装を身に纏っていた。

 

「へぇ〜…。獲物はどこに潜んでるんザンしょ?」

 

「ドクターも時々あてにならないッスからねぇ…」

 

「何ブツブツ言ってんだい? 狛犬同士で」

 

「狛犬じゃなくて、ミー達はスフィンクスザンスよ?」

 

「何だっていいんだよ! 早く見つけないと、あの小うるさいガキンチョ共が来ちゃうじゃないか!」

 

「でも人が多すぎて、ここからじゃ探しづらいッスよ…」

 

 その時、ノラッティ〜が何かに気付いた様子で前を指さした。そこにはパレードの山車に乗せられた巨大なゴリラの張りぼてがあった。

 

「あっ! あの上からなら見つけやすいんじゃないザンスかね?」

 

「なるほどー! よし! 行くよ!」

 

「「ヘイヘイホー!」」

 

 そう言うが早いか我先に駆け出そうとするエドとノラッティ〜を、ウサラパは杖で軽く殴りつけて制した。

 

「おバカ! 踊りながら近づかないと不審がられるだろぉ?」

 

「あっ、ついうっかり…」

 

「「「ウッ! オレェッ! オレェッ!」」」

 

 そんなことをしている彼らのすぐ近くに、もうDキッズ達は来ていた。今は沿道からカーニバルを観賞しているところのようだ。

 

「へぇ〜。すごい人だなー…」

 

「元々世界的に有名なカーニバルだからね。それに加えてオーレカップ決勝戦を控えてるとなればここまでの人にもなるよ」

 

「はぐれないようにしないとね」

 

 そんな話をしていると、近くから黄色い歓声が聞こえてくる。

 

「ん? 恐竜か?」

 

 その声の方へDキッズが目を向けると、そこには1台のバスが停まっており、何やら人だかりができていた。それにバスの窓の1つから顔を覗かせているのは、あのロカルドではないか。

 どうやらあのバスはチーム・オーレのもので、彼は今ファンサービスの最中らしい。

 

「ロカルド!? マジかよ! チーム・オーレのバスだ! おーい!」

 

「あっ、リュウタ…」

 

「まったく…あいつここに何しに来たかわかってるのか?」

 

「いつものことだけど、リーダーが目的を見失ってるんじゃ先が思いやられるよ。マルムもそう思うよ…ね…?」

 

 オウガがそう言いながら横を見てみると、マルムは頬を紅潮させながらリュウタとは別の方向を見ていた。まさかと思って彼も視線をそちらへ向けると、そこにはもう1台のバスが停まっており、その窓からベッサムが顔を見せている。こちらはFCユーロのバスらしい。

 

「ウソでしょ…! ああぁ〜! ベッサム様ぁ〜!」

 

 黄色い声を上げながら、今度はマルムがそちらへと走っていく。そして彼女は他に集まっていた女性たちを押しのけて前へと出ると、躊躇うことなくベッサムに呼びかけた。

 

「あ、あのアタシ、ベッサム様の大ファンで! その…サイン下さいっ!」

 

「いいよ。でもどこに?」

 

「あっ、えーっと…この子に!」

 

 ベッサムからどこにサインを書けばいいか言われたマルムは、色々と考えた末パラパラを差し出した。

 これにベッサムは少し驚いたものの、慣れた手つきでパラパラの体にサインを書いていく。

 

 そんな様子を、レックスとオウガは呆れ顔で見ていた。

 

「やれやれ…サッカーより恐竜だろ…?」

 

「2人とも浮かれちゃってまあ…」

 

 その時、衝撃震動がその場にいた人々を襲った。何か大きなものが移動しているようだ。

 

「いやぁ~ん! コング離してぇ〜! あっは〜ん! 何すんのぉ〜ん!」

 

 ちょうどこの時、ウサラパはゴリラの張りぼての拳に入り込み、キングコングのヒロインの真似をしていた。

 そんなウサラパをよそに、エドとノラッティ〜は張りぼての上へよじ登り、そこから周囲の様子を窺っている。

 

「なんかイヤーな足音がするザンスねぇ…」

 

「あーっ! ウサラパ様! 後ろ後ろ!」

 

「えっ?」

 

 エドが指さす先…後ろをウサラパが見ると、そこにはアルティリヌスの顔があった。目が合うなりアルティリヌスが咆哮を発する。

 

「げっ! ひゃあーっ!」

 

 ウサラパの叫び声に驚いたのか、アルティリヌスはゴリラの張りぼてを頭で薙ぎ払い、壊してしまった。

 当然、ウサラパ達3人は吹き飛ばされてしまう。

 

「「「ズビズバーッ!?」」」

 

 アルティリヌスが山車を壊したことで、周りの観光客やダンサー達も我先にと逃げ出していく。その状況で人の流れに逆らってアルティリヌスへ近づいていくのは、オウガ達Dキッズであった。

 

「あれはイグアノドン?」

 

「いや、あの大きな鼻はアルティリヌスだ!」

 

「某映画に出てたク◯ーンってキャラのモチーフがあの恐竜だったよね!」

 

「クロー◯はムッタブラサウルスじゃないのか?」

 

「言われてみればその線もあるな…。

どっちだろう…。俺も自信無くなってきちゃったよ…」

 

 そんな話をしている内に、アルティリヌスは踵を返してどこかへ歩いて行こうとする。

 

「追いかけよう!」

 

「「「うん!」」」

 

 

 大通りから市場へと入り込んだアルティリヌスは、前からやってきたトラックの前に立ち塞がった。運転手が悲鳴を上げ、車を乗り捨てて逃げていくのを見送ると、アルティリヌスは荷台に積まれた瓜をむさぼり食い始めた。

 他の客や店員も逃げ出していき、誰もいなくなった市場へDキッズも追いついてくる。

 

「そうか…。アルティリヌスは草食恐竜だもんな…」

 

「よっぽど腹ペコみたいだぞ?」

 

「らしいね。美味そうに瓜を食べてるよ。

…おいおいアメジスト。君まで食べちゃダメだよ。ご飯は食べてきただろ?」

 

涎を垂らしながら瓜を凝視するアメジストに、オウガが釘を刺す。

 

「でも、このままじゃ市場がめちゃくちゃになっちゃうわ」

 

「…よし! 行くぞエース!」

 

「俺達もやるぞ! アメジスト!」

 

 まずはレックスとエース、オウガとアメジストが戦うことに決めたようで、それぞれのディノホルダーやディノラウザーに恐竜カードをスキャンした。

 

「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」

 

グォォォォォォン!!

 

「ディノスラーッシュ! 揺るがせ! ステゴサウルス!」

 

ケエェェェェ…!!

 

 灰色の光と共にエースが、紫色の光と共にアメジストが成体化すると地面に降り立ち、周囲の風景がバトルフィールドに変わっていく。そしてエースとアメジストは同時に駆け出すと、アルティリヌスにタックルをかましたのだった。

 

 

その頃 オーレのとある店舗

 

「…ん? 何事だ?」

 

 飲食店の窓から外を窺っていたのは、まさかのジェイソンとイシドーラであった。食事を楽しんでいる最中に表の通りが騒がしくなってきたのに気がついたのである。

 

「…何か起こったのかもしれないな」

 

「仕方ねぇ…。ちょっと聞いてくっかぁ…」

 

 そう言って一度外へと向かったジェイソンだったが、すぐに席へと戻ってきた。

 

「随分早かったな。どうした?」

 

「お、おう。どうやら…デカい化け物が姿を現したんだとよ」

 

「…恐竜か?」

 

「恐らくそうだろうな」

 

「ならば話は早い。ボスに連絡をして手当が下りるかどうかの確認をしなければ」

 

 そう言って衛星電話を手に取ったイシドーラの手を、ジェイソンが抑えつけた。

 

「何をするホスキンス。事前に連絡をしておかなければ私もお前もタダ働きになってしまうぞ」

 

「なぁ、よく聞けよ兄弟。おれ達が今日何をしに来たのか覚えてるか?」

 

「何を、だと? そんなこと言うまでもない。オーレカップの決勝戦を観戦するため…」

 

「そうだ。そのために有給まで取って、こんなところまで来たんじゃねぇか。

だというのにてめぇは…その休日を自分の手で潰すつもりか?

あんなガキの嫌がらせみてぇなことで、その休日を台無しにするつもりなのか?」

 

「…それは…」

 

 そこでイシドーラは押し黙ってしまう。休日手当とオーレカップ観戦を天秤にかけているのだろうか。

 

「なぁに、おれ等が黙ってりゃあドジスンの奴にも分からねぇよ。ここにガキ共が来てようがアクト団のバカ3人が来てようが関係ねぇ。

おれ達は何も見なかったし聞かなかった。そういうことにしておけばいいんだよ。OK?」

 

 ジェイソンが畳みかけるようにそう言うと、イシドーラもようやく決心がついたようだ。

 

「…OK!」

 

「いい判断だ。よし、じゃあ決勝戦までまだ時間があるし、もう一品食ってから行こうぜ。

…おっと、衛星電話の電源は落としておけよ。ククク…()()()()()()()()()()()()()しておかねぇとな…」

 

 というわけで、休暇中は何が何でも休むことに決めたジェイソンとイシドーラであった。

 

 

戻って市場

 

 アメジスト&エースとアルティリヌスの戦いはまだ続いていた。エースが立ち向かっていくと、そこでアルティリヌスが尻尾での打撃を浴びせて地面に倒す。そして追撃を加えようとエースに向かっていくアルティリヌスにアメジストが突進して後退させると、エースが体勢を立て直すまでの時間稼ぎをしていた。

 アルティリヌスもなかなかに強い恐竜であったが、流石にDキッズの恐竜2体には敵わないようで、どんどん消耗していっていた。

 

「流石だぞ、アメジスト!」

 

「エースもいいぞ! あともう一息だ!」

 

 このままアルティリヌスをカードに戻すことができれば、この話はそこでおしまいである。

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 

「そうはさせないわよぉ!」

 

「何ぃっ!?」

 

「ウサラパ!?」

 

 ウサラパ達アクト団工作員がその場へ駆けつけてきたのだ。更にスピノの恐竜カードをアクトホルダーに通してくる。

 

「お行きーっ! スピノちゃーん!」

 

グァギュオォォッ!!

 

 青い光と共にスピノが召喚されると、すぐさまDキッズを飛び越え、その先にいたエースとアメジストをアルティリヌスの近くからどかしてしまった。

 

「ちょっと! ジャマしないでよオバさん!」

 

「キィーッ! まだそれを言うかーっ!

スピノ! そこの恐竜達はいいからそこの小娘をやっつけておしまいーっ!」

 

「ウサラパ様ぁ…」

 

「もう、大人げないんだからぁ…」

 

「黙らっしゃい! このデレスケ共!

このっ! このっ! このーっ!」

 

 いつものオバさん呼びにキレ散らかしたウサラパが、そんな彼女に呆れるエドとノラッティ〜に折檻をし始めてしまった。それによる指揮系統の混乱でスピノはどうすればよいのか分からず、オロオロとしている。

 その隙にエースとアメジストがスピノの横をすり抜けてアルティリヌスのところへ戻ろうとするものの、エースがスピノに尻尾を噛まれて引き止められてしまった。何とか前へ進もうとするエースだが、スピノの力が強く引っ張られてしまう。

 だがそれに気付いたアメジストが戻り、サゴマイザーでの一撃をスピノに加えたことでエースも自由になることができた。

 

「こうなったら、アメジストとレックスのエースで先にスピノを倒した方が早そうだね」

 

「仕方ないか…。リュウタ! マルム! 2人はアルティリヌスを見ていてくれ!

スピノは今から僕達が倒す!」

 

「分かった!」

 

「分かったわ!」

 

 ということで先にスピノを倒すことにしたDキッズは、アメジストとエースに新しい指示を出した。それを受けた2体がスピノに突撃し、転ばせる。

 

「何やってんだいノラッティ〜! とっとと決着を付けるんだよ!」

 

「技を使うなら先にステゴサウルスをやっつけた方がいいと思うッス!」

 

「へい、『龍河苦玉(トラジェディーオブザボール)』」

 

 ノラッティ〜がいつもとは違う声色でアクトホルダーに技カードを通すと、青い光と水流に包まれたスピノが口に水球を溜め込み、アメジストへと発射した。

 だがオウガも勿論このまま倒されるつもりはない。

 

「『龍河苦玉(トラジェディーオブザボール)』を切り裂くんだ!

アメジスト! 『土竜聖剣(クエイクセイバー)』!」

 

 すかさずオウガがディノラウザーに技カードをスキャンする。するとアメジストの周囲を紫色の光と小さな紫結晶が渦巻き、それが尻尾へと収束して紫結晶の剣を形成していく。そしてアメジストはその剣を振り抜き、『龍河苦玉(トラジェディーオブザボール)』を切り裂いてしまった。

 これにはウサラパ達もびっくり仰天である。

 

「何ぃーっ!?」

 

「相手の技を打ち消したわ!」

 

「今だレックス! エースに技を!」

 

「分かった! いくぞエース! 『爆風大渦(ソニックブラスト)』!」

 

 今度はレックスがディノホルダーに技カードをスキャンすると、エースの体が灰色の光とつむじ風に包まれる。

 そしてエースは口いっぱいに風を溜め込むと、スピノに向けて発射した。暴風によって空高く巻き上げられたスピノは地面へと落下し、カードへと戻っていく。

 

「「「「やったあ!」」」」

 

「「ええーっ!?」」

 

 あっさりやられてしまったスピノにノラッティ〜とエドは驚きつつも、すぐさまカードを回収しに走り始める。

 と、ここでオウガとレックスが視線を戻した時、先程までそこにいたアルティリヌスは影も形もなくなっていた。

 

「アルティリヌスは? アルティリヌスはどこに?」

 

「くそっ! 後もう少しだったのに! お前達のせいだぞ!」

 

 そうレックスが抗議するものの、ウサラパ達はどこ吹く風といった様子である。

 

「へーん! あの獲物さえ手に入れば、こっちの勝ちなんだよーっだ!」

 

「まだ近くにいるはずッスよ!」

 

「急ぐザンスよ! ウサラパ様!」

 

「「「ほな、サイナラ!」」」

 

 そう言い残し、3人は風のように去っていった。

 アメジストをチビ形態に戻しながら、オウガがリュウタとマルムに問いかける。

 

「リュウタ、マルム。アルティリヌスはどこへ逃げていったか分かる?」

 

「もっちろん! この通りをまっすぐ行って…」

 

「あそこの裏路地へ入っていったところまでは見えたわ!」

 

「よし、早速探しに行こう! 絶対に僕達が先に保護するんだ!」

 

 レックスの言葉に全員が頷き合うと、一斉に走り出したのであった。

 

 

一方その頃

 

 綺羅びやかなカーニバルが行われている大通りからは離れたところに、大きな山車小屋がある。ここでは、カーニバルで使う山車や張りぼてが保管されているのだ。

 その中に紛れ込むようにして、アルティリヌスは息を潜めていた。空腹は満たしたものの、先程の戦いでダメージを負った体を休ませようとしているようだ。やがてアルティリヌスは大きな欠伸をすると、眠り始めたのであった…。

 

 




今回はここまでです。
Dキッズとアクト団、アルティリヌスのカードを先に手にするのはどちらなのか…。
次回、後編をご期待下さい。
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