古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
今回は戦闘シーンに割と手を加えておりますので、ぜひ最後までご覧下さい。
しばらく後 高架下
Dキッズはアルティリヌスを探し、今は高速道路の高架下を通りかかっているところだった。
レックスが呆れたようにリュウタに話しかける。
「リュウタ…本当にこっちにいるのか?」
「あぁ! アルティリヌスだってサッカー見たいに決まってるもんな!」
「へぇ~…。それでスタジアムの方に向かってるの?」
「恐竜に人間の感性を当てはめて行動するのはどうかと思うんだけどな…」
「そうだよ。恐竜がサッカー観戦を楽しむとは思えないなぁ…。食べ物を探しに山に行ったかもしれないだろ?」
「オレのカンだよ、カン!」
「…あてになるか、そんなもの…」
何故か自信に満ち溢れたリュウタに、レックスが冷たい言葉を返した時だった。
Dキッズの目の前にボールが転がってきたのである。すぐさまガブとイナズマが反応し、リュウタの家でも見せた抜群のパスとドリブルの連携を披露する。
「アハハハ、うまいうまーい!」
金網の向こうでサッカーをしていたのであろうオーレの子供達が2匹に拍手を送る。どうやらボールは彼らのもののようだ。
リュウタは最後にボールに噛みつこうとするガブとイナズマをすんでのところで引き離し、ボールを手に取った。
「やめろってガブ、イナズマ!…ごめんな、こいつら何でもガブガブ噛んじゃうんだ。危なかったぜ」
そう言うと、リュウタはボールを返すために大きく蹴り上げた。
ボールはフェンスを飛び越え、子供達の方へ届いた。
「ナイスキック! 良かったら一緒にやらない?」
「いいの!? サッカーの本場でオレのプレイが披露できるのか…。くぅーっ…やるやる!」
そう言って飛び出しかけたリュウタを、レックスが引き止めた。
「ちょっと待て! そんなことしてる場合かよ? アルティリヌスはどうするんだ?」
「こんだけ探しても見つからないんだ。きっとどっかで寝てるんだよ」
「えっ…?」
「向こうだって移動してる可能性もあるんだし、もう少し探した方が…」
「よーし、行くぞーっ!」
口を挟んだオウガの言葉も程々に、リュウタは子供達の輪の中へ加わっていってしまった。
そして、彼だけに留まらない。
「…そうよね! アタシも入れてー!」
マルムまでそれに加わっていくではないか。彼らを見送りながら、レックスとオウガは揃って大きなため息をつくのであった。
「何でこうなるんだよ…」
「本当にこんなことで大丈夫なのかな…。前回デボン島でもアクロカントサウルスを奪われてたのに…」
その頃 大通り
こちらでは恐竜がいなくなったということもあり、カーニバルの行進が再開されていた。そのダンサー達の中に、ウサラパ達アクト団工作員の3人の姿もあるではないか。
更に彼らはサイカを可愛らしく着飾り、その上に乗っていたのである。
「みんな驚いてるザンスよ!」
「さっすがウサラパ様の作戦ッスね!」
「当たり前だよ! あらかじめこうしておけば、いつ獲物が現れたってす〜ぐ戦えるだろぉ?」
「おまけにこれなら作り物にしか見えないザンスね!」
事実彼らの作戦はうまくいっていた。その場にいた誰もがサイカをカーニバルの山車だと勘違いしているのである。
しかし、そんなサイカへ1匹の犬が吠えかかった。目の前のものが生き物であることに気づいたのであろうか。するとサイカはギロリと犬を睨み、咆哮で返したのである。
犬は驚いて逃げていったものの、サイカはまだ興奮冷めやらぬ様子であった。そんなサイカを、ウサラパ達が3人がかりで宥める。
「サイカちゃん! 大人しくしてね…」
「どうどう…」
彼らの必死の説得でようやく落ち着いたサイカは、再び大通りを練り歩き始めたのであった…。
その頃 山車小屋
「さぁーっ、どんどん出発するんだ!」
一方こちらでは、カーニバルに出される山車と張りぼてが次々と運び出されていた。
その中に、サッカーコートを模した張りぼてがある。真ん中には芝で作られた大きなサッカーボールが置かれていた。
「こりゃまた見事だな〜…。草でできたサッカーボールとは…」
作業員達がそんなことを言っていると、そこへ近づいてくるものがいる。あのアルティリヌスだ。どうやらこの喧騒で目を覚ましてしまったらしい。
アルティリヌスは一声鳴くと、何故かその山車に足をかける。作業員達が悲鳴を上げながら逃げ出す中、アルティリヌスは山車から転がり落ちた草のボールを追いかけ始めたのであった…。
その頃 高架下
Dキッズは、高架下の小さなサッカーコートで現地の子供達と共にサッカーに興じていた。
レックスはゴールキーパー、オウガはディフェンダー、マルムはミッドフィルダー、そしてリュウタは本人の強い希望でフォワードでプレイしていた。渋々といった感じで始めたレックスとオウガだが、いざ始めてみるとすっかり熱中している。
結局彼らは、現地の子供達と同様裸足でサッカーに興じていたのであった。
「アハハ、お陰で楽しかったよ! ありがとう!」
「こちらこそ!」
「サッカーって、どの国の子供達ともすぐ仲良くなれるのね…」
「それがサッカーの偉大なところだぜ!」
リュウタがそう熱弁していると、どこからか悲鳴が聞こえてくる。その悲鳴は、サッカーコートの片隅に置かれたテレビから聞こえてきていた。
『恐竜は、オーレカップの会場であるオーレスタジアムへ進んでいます』
「アルティリヌスよ!」
「一体どこに隠れていたんだろう…。それにこれは…まさかドリブルしてるのか…?」
「見ろよレックス。オレが言った通りだろ?」
リュウタにそう言われたレックスと、ついでにオウガも複雑な表情をしていた。リュウタの世迷言だと思っていたことが、的中しているかもしれないからである。
「よし、オーレスタジアムに行こう!」
「ええ!」
「…どうなってるんだよ…」
「…どういうことなの…?」
約2名納得していないメンバーを抱えつつ、Dキッズはオーレスタジアムへ向かい始めたのであった…。
その頃 カーニバルステージ
ここでは、カーニバルの最後にコンテストの優勝者の表彰式が行われていた。
「それでは、今回のサンバコンテストの優勝者に…盛大な拍手を!」
司会の声と共に拍手喝采を送られているのは、ウサラパ達アクト工作員の3人と、サイカである。どうやらサイカの物珍しさが高く評価されたようだ。
「グルルァンプリだなんて光栄ですワ! 今日はサンバのリズムで踊り明かソー!」
拍手する観客達に手を振って応えていた3人だが、そんな時突如彼らのアクトホルダーに着信が入った。
相手は勿論ソーノイダである。しかも今回は何故か立体映像での通話になっていた。
『くぉぉらぁ! 獲物を放ったらかしにして何やっとるぞーい!』
「「「ドクター!」」」
『お前達が浮かれている間に、獲物が騒ぎを起こしとるぞい!』
「ありゃま!」
『バカ!』
ソーノイダからのストレートな罵倒の言葉と共に画面が切り替わる。そこでは、アルティリヌスが草のボールでドリブルしている映像が流れていた。
「まるでサッカーしてるみたいッスね!」
『みたいじゃないぞい! これはサッカーそのものぞい!
そこでワシはある作戦を思いついた! フフフ…フハハハ…オーレ!』
「作戦って、どんな?」
「教えて欲しいザンス!」
ウサラパ達がそう問いかけると再び画面が戻り、ソーノイダの立体映像が出てくる。
『バカモーン! 既に準備は進行中ぞい。お前達もスタジアムに急ぐぞい!』
そこまで言うと、ソーノイダは通信を切った。
ウサラパ達は互いに頷き合うと、サイカをカードに戻して観客の方へ向き直る。
「ほな、皆さん…」
「「「サイナラ!」」」
そう言い残し、彼らは素早くその場を立ち去っていったのであった。
その頃 オーレスタジアム
現地に行っていたスタッフからの映像をもとに、日本のニュース番組でも恐竜の出現が報じられていた。
『こちら、恐竜が向かっているスタジアム前の様子です。避難するサポーター達で騒然としています。
…あっ! 来ました! 恐竜です! 草のボールを転がしています!』
そこでカメラがスタジアム前から切り替わり、草のボールを突き転がしながら力強く前進するアルティリヌスを映し出した。
そして、Dキッズの4人もようやくオーレスタジアムに到着したところだった。
「あっちだ!」
彼らに追いかけられている中、アルティリヌスは遂にスタジアムのサッカーコートへと侵入していた。
ウォームアップをしていた選手達も悲鳴を上げて逃げ惑っている。
「サッカー関係者の皆さんには申し訳ないけど、これでアルティリヌスを追い込めたね」
「そうだな! 今度こそ!…あっ! ロカルドー!」
「そんな場合じゃないだろ?」
「ロカルドだって避難してるのに邪魔したら良くないよ…」
「くっそー…」
ロカルドに一声かけようとしたリュウタだったが、今度こそオウガとレックスに静止され、断念する。
そして改めてアルティリヌスのもとへ向かおうとした4人だが、そこでマルムが誰かにぶつかって倒れてしまいそうになる。
そんな彼女の体を支えたのは、あのベッサムだった。
「大丈夫かい? お嬢さん」
「べっ…ベッサム様…!」
「…あれ? 君は昼間の…」
間近で憧れのベッサムに見つめられたことか、彼に認知してもらえていたことかは分からないが、そこで限界化したマルムは恍惚とした表情で意識を手放してしまった。
「あのー…」
そこで、オウガ達が申し訳なさそうにベッサムに声をかける。
「あっ、すみません…」
「あとは、僕達が預かります…」
「ごめんなさい…。お手数かけてしまって…」
ということでベッサムからマルムを引き取ったオウガ達3人は危険が及ばないように彼女をコートの端へ引っ張っていった。
「あぁ…ベッサム様ぁ…」
「しっかりしろよマルム…」
「こんな状態じゃ、今回マルムは戦えなさそうだね。
俺達3人で何とかしないと…」
「あっ! 見ろ!」
レックスが指さした先を見ると、アルティリヌスは苛立たしげな様子で草のボールを踏み潰していたところだった。
そして、Dキッズの方へ向かって突進してくる!
「よーし、行くぞ! ガブ!イナズマ!」
『ガブッ!』
『ゴロロッ!』
すかさずリュウタがガブとイナズマをカードに戻し、ディノホルダーにスキャンした。
「ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」
ゴオォォォォ!!
ギュオォォォォ!!
ガブとイナズマが同時に成体化して降り立つと、すぐさまアルティリヌスに向かっていく。それと同時に、バトルフィールドも展開されていった。
まずはイナズマがアルティリヌスを突進で突き飛ばすと、続けてガブが突進していく。そしてアルティリヌスの両前脚によるストンプ攻撃を躱してから、尻尾ではたき返した。
「負けるな! ガブ! イナズマ!」
リュウタの声援に応えるように、更に奮起したガブはアルティリヌスの尻尾に食らいつき、大きく振り回してから投げ飛ばした。
すかさず落下地点にイナズマが入り、強烈なかちあげで追い討ち攻撃を加える。
「あーっらぁ〜! 獲物ちゃんったら元気なこと!」
だが、そこへアクト団工作員達もやって来た。しかもコートではなく観客席から見下ろす形である。
「あっ! また出たな!」
「来ましたね! 推定三十路のオバさん!」
「キィーッ! 誰が三十路のオバさんよ! アタシはまだ19よーっ! しかもそっちのガキンチョは人をお化けみたいに言ってくれちゃってーっ!
…まあいいわ。そこの3匹にアタシ達からのプレゼントがあるのよ!」
「何っ…? プレゼント…?」
「エド! ノラッティ〜!」
「「ヘイヘイホー!」」
ウサラパの指示に応じてノラッティ〜とエドが手元のコントローラーを操作し、ドローンを飛ばしてくる。そのドローンは、ガブ&イナズマとアルティリヌスの間に藍色のボールを持っていった。
「さあ! 大好きなこれで思う存分遊ぶザンスよ!」
そしてエドのホイッスルと共にボールが地面に投下された。どうやらアクト団はガブ&イナズマとアルティリヌスにサッカー対決をさせようとしているらしい。
すかさずガブがボールを突き飛ばしてアルティリヌスに当てる。するとアルティリヌスはお返しとばかりに尻尾でボールを弾き飛ばす。それをガブは両前脚で止めると、ボールに片足をかけた。
まるでサッカー選手のようである。
興奮したアルティリヌスがボールを奪おうと突進していくが、それをガブはひらりと躱すと素早くイナズマにパスを回した。そしてボールを受け取ったイナズマは、器用にボールを扱いながらアルティリヌスをいなしている。
「なんだぁ?」
「サッカーを始めたぞ!」
「すっげぇー! 負けるなガブ! イナズマ!」
「でも、あのボールの色…どこかで見たような…?」
突如として始まった恐竜サッカーに興奮を隠せないリュウタと、どこか訝しげな視線を送るオウガを横目に見つつ、ウサラパ達はほくそ笑んでいた。
「ドクターの作戦通りッスね!」
「あのボールはアクトロイド達を合体させたもの…」
「2匹が疲れたところでバラけてとりつけば…奴らは身動きが取れなくなるザンス。そこをミー達が…!」
「「「イッシッシッシ…」」」
アルティリヌスが草のボールを転がしていたのを見てソーノイダが思いついた名案であった。
いつもこうならよいのだが…。
一方で、オウガ達も何故ウサラパ達がボールを提供してきたのかを怪しんでいた。
「やっぱりどう考えてもおかしいよ。恐竜を何とも思ってないようなアクト団が恐竜を喜ばせようとするなんて…」
「きっと…何か企んでるんだ!」
「ガブ! イナズマ! やめるんだ!」
しかしサッカーに夢中な2体にリュウタの言葉は届かない。このまま行けば、アクト団の思い通りになることは明白であった。
「おいこのクソ恐竜! よくもおれ達の休暇を台無しにしてくれやがったな!」
…何の横槍も入らなければ、の話なのだが。
その声のした方へオウガ達やウサラパ達が目を向けると、そこにはジェイソンとイシドーラがいた。しかも2人ともFCユーロのユニフォームを身に纏っている。
「ジェイソン…!」
「イシドーラもいるぞ!」
「あっ、アンタ達! 何でこんなところに来てるのよ!」
「今回おれ達はわざわざ有給まで取ってこのオーレカップの決勝戦を見に来てたんだよ!
それなのにあの鼻デカクソ恐竜…何もかも台無しにしやがった!」
「故に私達はあの恐竜に然るべき罰を与えるため、ここへと来たのです。私達の休暇を邪魔した報い…受けてもらいますよ!」
そこまで言うとジェイソンとイシドーラは恐竜カードを取り出し、それぞれのアンバーに押し当てた。
「やっちまえ! インドミナス・レックス! クレバーガールズ!」
「死して尚消えぬ痛みを刻みつけてやりなさい。インドラプトル! アトロキフォース!」
虹色の光と共にインドミナス・レックスとインドラプトルが、灰色の光と共にクレバーガールズとアトロキフォースが地面に降り立つと、まっすぐアルティリヌスに向かっていく。
「まずい! アルティリヌスを守らないと…!
レクシィ! アメジスト! 行ってくれるか?」
『…いいだろう』
『キュッ!キューッ!』
承諾を得たオウガが、すかさず2匹をカードに戻す。
「僕達も行こう! エース!」
『ギャウ!』
レックスもそれに続き、エースをカードに戻した。
「ディノスラーッシュ!
燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!
揺るがせ! ステゴサウルス!」
ゴガアァァァァッ!!
ケエェェェェ…!!
「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」
グォォォォォォン!!
レクシィとアメジスト、そしてエースの3体が成体化して地面へと降り立つと、ジェイソン達の恐竜に向かっていく。
まずはレクシィとインドミナスがぶつかり合い、エースとインドラプトルが睨み合い、飛びかかってきたアトロキフォースをアメジストが薙ぎ払った。
しかし、明らかに数が足りていない。空いた隙間をクレバーガールズがすり抜けていき、一斉にアルティリヌスに食らいついたのだ。
「まずい!」
「ガブ! イナズマ! アルティリヌスを助けるんだ!」
すかさずガブとイナズマが突進していくものの、2体とも先程までサッカーをしていたせいでスタミナを浪費してしまっている。動きにもいつものようなキレがないせいで、クレバーガールズにあっさりと躱されてしまった。
「くっ…。マルムはまだ夢見心地から覚めてないし…。
レクシィかアメジストに早めに勝負を決めさせてからカバーに入らないと…」
そうオウガが呟くが、ジェイソン達の行動は早かった。
「てめぇらが邪魔するってんならその角竜ごとバラバラにしてやるよ! 食らいな! 『
ジェイソンのターゲットはあくまでアルティリヌスのようで、早々に技カードを使った。
クレバーガールズ3体がそれぞれ灰色の光と風に包まれると、その風が渦を巻き、竜巻のようになる。そしてクレバーガールズは竜巻を撫でるように尻尾を振るい、アルティリヌスに向けて風の刃を飛ばした。
そのアルティリヌスを守るようにガブとイナズマが立ち塞がるも、無数の風の刃を受けて倒れ伏し、カードへ戻っていってしまった。
ついでにアクトロイドボールも風の刃で微塵切りにされてしまう。
「うわーっ! なんてことするザンス!」
「あぁっ! ガブ! イナズマ!」
ガブとイナズマのカードを回収するため、リュウタがそちらへ走っていく。それを見ながらジェイソンは、すぐ横のイシドーラに話しかけた。
「次はお前だミルズ。今度こそあのクソ恐竜を仕留めてやれ」
「言われずともそのつもりですよ。
アトロキフォース。そのステゴサウルスは置いていきなさい。どうせスピードなら貴方達には追いつけません」
イシドーラがそう指示を出すとアトロキフォースはアメジストから離れ、アルティリヌスのもとへ全速力で駆けていく。慌ててアメジストが追いかけようとするものの、スピードの差は歴然であった。
「これだけ離れれば十分でしょう。行きなさい、アトロキフォース。『
頃合いと判断したようで、イシドーラが技カードをアンバーに押し当てる。
するとアトロキフォース4体それぞれの体を灰色の光と風が渦巻いて包み込むと、その風が手裏剣のような形に変わっていく。
だがオウガも諦めていない。何とか技を発動させて、アトロキフォースの技を中断させようとしていたのだ。
「間に合ってくれ! アメジスト! 『
技が発動し、アメジストの体が紫の光と紫結晶の欠片に包まれる。そして地面から生えてきた4本の紫結晶塊を携えると、更に加速してアトロキフォースへ突進していった。
しかし、アメジストがアトロキフォース達を吹き飛ばすのと、『
「倒されこそしましたが、貴方は私達の恨みを晴らしたのです。誇りなさい」
「さーて、これであのクソ恐竜は倒したんだが…まだ苛立ちが収まらねぇ! ガキ共の恐竜にも八つ当たりしてやるぜ!」
そのジェイソンの声に呼応するようにインドミナスとクレバーガールズが咆哮を上げ、同時にレクシィへ飛びかかっていく。
それに対し、レクシィは冷静に対応した。まず尻尾でクレバーガールズを薙ぎ払うと、インドミナスの首に食らいついて地面へと投げ捨てたのだ。
「いいぞ! レクシィ! アメジストが戻るまで少しだけ堪えてくれ!」
やがてアメジストもレクシィと合流し、協力してインドミナス&クレバーガールズに立ち向かっていく。
そして頃合いを見たところで、オウガは技カードを取りだした。
「よし! レクシィ! ヴェロキラプトル達はさっきまでアルティリヌスの相手をしていた分疲弊してる!
決めるなら今だ! 『
オウガがディノラウザーにカードをスキャンし、『
火球を受けたクレバーガールズは火だるまになりながら地面へと落下し、カードになってジェイソンの手元へ戻っていった。
「すごいぞ! レクシィ!」
「フン、本当に腹立たしくなる強さだな。
だがそっちのステゴサウルスはどうだろうな? おれ達が新開発したこのカードを食らってみろ!
『
その言葉と共にジェイソンが技カードをアンバーに押し当てる。するとインドミナスの体が虹色の光に包まれたと思うと、素早く駆け出してアメジストに背中から食らいついた。そのまま抵抗できないように両腕で抱えると、アメジストの体を地面に何度も叩きつけ始めたのだ。
フィニッシュとしてインドミナスに投げ捨てられたアメジストは、カードへ戻っていってしまった。
「アメジスト!」
そう叫びながらアメジストのカードを回収しに走ろうとするオウガの目の前に、インドミナスが立ち塞がった。
一方、エースはインドラプトル相手に苦戦を強いられていた。とにかく相手の身のこなしが尋常でなく、攻撃が当たらないのだ。そんな戦況を確認したイシドーラが冷たい笑みを浮かべながら、技カードを取り出す。
「さて…そろそろこちらも終焉といきましょう。
我が組織が開発した新技カードの威力、とくと味わいなさい」
そしてイシドーラが技カードをアンバーに押し当てると、インドラプトルが虹色の光に包まれた。
しかし、それを黙って見ているレックスではない。
「こっちも行くぞ! エース! 『
レックスもディノホルダーに技カードをスキャンし、『
ピクリとも動かないが、まだカードには戻っていないらしい。
「トドメを刺すんだ! エース!」
レックスの言葉に従い、エースがインドラプトルに躙り寄る。
だがその時、エースの視界の外でインドラプトルが嘲笑うかのように尻尾をクネクネと動かした。
それを見たレックスは、すぐさま叫んだ。
「ま、待て! 待つんだエース! すぐにそこから離れるんだ!」
「もう遅いですよ」
レックスの言葉にエースが振り返った瞬間、インドラプトルは飛び起きるとエースの喉に食らいつき、地面にねじ伏せると更に深く牙を立てた。エースは悲鳴すら上げられずに、その体をカードに戻されてしまう。
「『
インドミナスの『
「まあガキだからな。いちいちそんなこと覚えられねぇんだろうよ」
ジェイソンとイシドーラがそんな会話をしているとは知らないまま、レックスはエースのカードを拾いに行く。
しかしレックスがカードを拾い上げてから前を見ると、そこにはインドラプトルが待ち構えていた。後退りするレックスだが、つい転んでしまう。
そんな彼へ、口角を鋭く上げたインドラプトルが更に迫ってきていた…。
(どうすれば…どうすればいいんだ…。
どうすればこの状況を切り抜けられる…?)
命の危機を感じ取ったレックスが一心に考えていた…その時だった。
『レックス君、レックス君。聞こえているかしら?』
ディノホルダーにリアスからの通信が入ってきたのだ。
「聞こえてます! リアスさん!」
『良かった。あなたに頼まれていた恐竜の最終調整および療養が終わったの。今から送るわね。
リュウタのイナズマちゃんに並ぶ、あなたの第2のパートナー恐竜よ』
その言葉と共に、1枚のカードがディノホルダーから排出される。そのカードを迷いなく手に取ったレックスは、すかさずディノホルダーにスキャンした。
「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! アロサウルス!」
グゥガアァァァァッ!!
灰色の光と風に包まれ、アジ島で共に戦ったあのアロサウルスが姿を現したのだ。アロサウルスは眼前のインドラプトルを見据えると咆哮をあげながら突っ込んでいった。
予想外の敵の出現に戸惑っていたインドラプトルは、諸に攻撃を受けて隙を晒してしまう。そこをレックスは見逃さず、技カードをディノホルダーにスキャンした。
「今だ! アロサウルス! 『
すると、灰色の光と風を纏ったアロサウルスが加速しながらインドラプトルへ迫っていく。
「…愚かな。インドラプトル、もう一度です。『
再びイシドーラが技カードを発動させると、インドラプトルが虹色の光に包まれ、攻撃に身構えた。
しかし、激突寸前にアロサウルスの姿が目の前から掻き消えてしまったのだ。
困惑するインドラプトルを囲むようにつむじ風が起こる…いや、これはつむじ風ではない。超高速で移動しているアロサウルスが起こしている風なのだ。
その風の中から、アロサウルスは神速の連撃を繰り出していく。そしてトドメの1発を受けたインドラプトルは倒れ伏し、カードになるとイシドーラの手元へ戻っていった。
「…やられましたね」
詰めが甘かったのは自分だったと、イシドーラは自覚せずにはいられなかったのであった。
一方、インドミナスに立ち塞がられたオウガは、恐怖で動けなくなっていた。蛇に睨まれた蛙と言うべきか、金縛りにあったかのような感覚に陥っていたのだ。
そんな彼に、インドミナスが大口を開けて迫っていこうとした…その時、インドミナスの体が跳ね飛ばされた。
レクシィがオウガのところまで駆け戻り、インドミナスにタックルを入れたのだ。
『今だオウガ! アメジストを!』
「あ、ありがとう! レクシィ!」
レクシィから声をかけられた瞬間、オウガは自身の体が再び動けるようになったのを実感し、アメジストのカードを拾いに走った。
「よし…! アメジストのカードは取り戻した!
レクシィ! 君はまだ技を使えそう?」
『…まだ大丈夫だ。いつでも来い』
「よし、それじゃあこのカードだ! 『
オウガがディノラウザーに技カードをスキャンすると、再びレクシィが口に炎を溜め始める。
「インドミナス! あのティラノに技を使わせるな!」
ジェイソンの指示を受け、インドミナスが迫ってくるが、レクシィはそのインドミナスに炎を吐きかけた。熱い炎にインドミナスが一瞬怯んだ隙にレクシィはその首筋に食らいつき、自身を基点にグルグルと振り回し始める。
そして十分に勢いがついたところで、ジェイソンとイシドーラがいる観客席へと投げつけた。
「「うおわぁぁぁぁ!?」」
2人が慌てて飛び退くと、先程まで彼らがいたところにインドミナスの体が叩きつけられ、カードへと戻っていく。そのカードはやはりジェイソンの手元へ自動的に戻っていった。
「クソッ、軽くガキ共を蹴散らして帰ろうと思ってたのに…。余計気分が悪くなっちまった…」
「戦力はもうない。撤退だな」
「…そうするしかねぇだろうな…」
そう会話をし、2人は素早くオーレスタジアムから姿を消した。
「よくやったぞレクシィ!」
「オウガ! こっちも倒したぞ!」
「すげぇじゃん! オウガ! レックス!」
ようやく『Sin-D』の恐竜を全て撃退したオウガ達は集まり、喜びを分かち合う。
と、そこでレックスが思い出したかのようにリュウタに質問した。
「ところでリュウタ。アルティリヌスのカードは?」
「それが、どこにもないんだよ! いつの間にかアクト団の姿も消えてるし…」
「…しかも、ジェイソン達の姿もない。相変わらずの逃げ足の速さだね」
先ほどまでジェイソン達がいたスタジアムの観客席を見上げながら、オウガはそう呟いたのだった…。
その頃 オーレ郊外の森
冒頭でアルティリヌスが出現したあの森に、ウサラパ達アクト団工作員の3人の姿があった。
「「「ハアッ…。ハアッ…。ハアッ…」」」
「こ、ここまで来ればもう安心ッスよ…」
「ガキンチョ共もジェイソン達もめちゃくちゃザンス…。あれじゃティラノやサイカを出せるだけの猶予もなかったザンスよ…」
「まあでも…このカードはアタシ達が確保したんだから良かったじゃないか」
そう言ってウサラパは1枚のカードを取り出す。それは、アルティリヌスのカードだった。あの混乱に乗じて持ち出したのだ。
「確かに、これがあればドクターに怒られなくて済むッスね!」
「作戦は失敗ザンしたけど、終わりよければ全て良しザンス!」
「とにかく、迎えが来るまでここで待つんだよ!」
「「ヘイヘイホー!」」
こうして最初は元気に待っていた3人だったが、ソーノイダがよこした迎えのマシンに乗る頃には全身虫刺されだらけになっていたのだった…。
その後 三畳市 マルム宅
三畳市へと帰ってきたマルムは、早速姉のリアスに今回の戦利品を見せていた。その戦利品とは、パラパラの腹に書いてもらったベッサムのサインであった。
「見て見て! お姉ちゃん! これがあのベッサム様のサインよ! 嫌な顔1つしないで書いてくれたのー!
うーん、サイッコー…!」
恍惚とした表情をしながらその時のことを思い出すマルムを一目も見ることなく、そのサインを見つめていたリアスはポツリと呟いた。
「ねぇ、マルム。この子ちょうだい」
「ダメ!」
「ケチ…」
リュウタ宅
一方、リュウタとレックスは、ガブやイナズマ、エースにあのアロサウルスを加えて遊ばせていた。
「へぇ~…。あのアロサウルスには、『アイン』って付けることにしたのか!」
「うん。アインっていうのはドイツ語で『1』って意味なんだ。エースと同じく1番になってほしい気持ちを込めたんだよ」
「いい名前じゃん! 他のみんなにはもう言ったのか?」
「うん、マルムやオウガにも伝えたよ」
「そうなのか? マルムはリアスさんにベッサムのサイン見せてくるって言ってたけど…オウガは?」
「いつも通りなら、まだDラボにいるんじゃないか?
最近オウガは帰ってきたらいつもミサさんに旅の話をしてるんだよ。そういった新鮮な話が刺激になれば、記憶も戻るんじゃないか、って」
「なるほど、そんなもんなのかな?
…よく分かんないけど」
Dラボ
「…それでリュウタのやつ、恐竜探しの最中なのに現地の子供達とサッカーを始めちゃって…」
「フフフ、そうなのね」
レックスも言っていた通り、オウガはDラボに残ってミサと今回の旅の話をしていた。
「本当にありがとう、オウガ君。いつもわたしに旅の話をしてくれて…君から聞く話は刺激的でとても面白いわ。でも…ごめんね。わたしのために君の時間を使わせてしまって…」
「いいんですよ。俺が好きでやってることですから」
「それなら、いいんだけど…。
…ねぇ、オウガ君。オウガ君はわたしと一緒にいて、楽しい?」
「…え? そりゃ楽しいに決まってますけど、いきなり何を…」
「わたし、今がとても楽しいの。君とこうして、話したり、笑ったり、何でもないようなことを共有することがとても楽しくて幸せなのよ」
でも、と言葉を切ってからミサは続けた。
「でも、わたし…怖いの。もし記憶が戻った時…これまで幸せだと感じていたことが…どうでもいいことのように感じるようになってしまうんじゃないかって…。
それを考えているうちに、自分はここでいるべきなのかどうかも分からなくなってきてしまう時があるの…」
そういうミサの手は、小刻みに震えていた。
「ミサさん…」
オウガは、思わずミサの手を取って話しかけた。
「ミサさん。そんなに心配しないで下さい。確かに記憶を取り戻すことが怖いことは分かります…。
でも、そんな寂しいこと言わないで下さい。俺…達Dキッズは勿論、古代博士やリアスさんもミサさんの味方ですから。
もし記憶が戻らなくても、ここがミサさんの居場所になればいいんですから」
「オウガ君…」
少し上気した頬のミサに見つめられ、オウガは照れくさくなって顔を伏せると、自分がミサの手を握っていたことに初めて気がついた。
「あっ…ご、ごめんなさい!」
「あっ…」
慌ててオウガが手を離すと、ミサは少し名残惜しげな声を出した。そして、顔をリンゴのように赤くしながらもオウガが続ける。
「だ、だから俺が言いたいことは…気にしないで、ってことです。もっとミサさんには…そんな思い詰めた顔じゃなくて、笑っていてほしいですし…」
そんなオウガを見たミサは、オウガを優しく見つめ、微笑みながら言葉を紡いだ。
「ありがとう、オウガ君。やっぱり君ってとても素敵な男の子…かもね」
「…その「かもね」って何なんですか?」
「あっ、ごめんね。何故かは分からないんだけど、意識していないのに時々語尾に付いちゃうの」
「入りづらいなぁ…」
その頃、Dラボに忘れてきた資料を取りにやってきた古代博士だが、この雰囲気に自分まで照れくさくなってしまい、研究室へ入れずにいたのだった…。
今回の恐竜解説!
「今回の担当は俺、覇轟オウガだよ。
今回解説するのは、鼻っ柱大将『アルティリヌス』! 元はイグアノドンの1種とされていた、鳥脚類の恐竜だよ。
名前の由来は、「高い鼻」。盛り上がった鼻の部分がその由来になっているんだね。
全長は元々の資料だと8メートルほど、とされていたんだけど、最近は6.5メートルだとする説が濃厚みたいだね。
生息地は白亜紀前期のモンゴルで、20世紀後半にそこへ発掘調査に来たソビエト連邦とモンゴルの調査隊によって最初に発見されたんだ。
名前の由来にもなった特徴的な鼻は、どんな機能があったのかは正確には分かってないんだ。血液を冷やすため、嗅覚を増幅するため、独特なコミュニケーションをやり取りするため、そしてこの手のものだとありがちな、性的ディスプレイのため…。
一体どれが真実なのかは、これ以降の研究が待たれるところだね」
ということで、今回はここまでです。
次回からレックスの第2のパートナー恐竜、アロサウルスの「アイン」が参加するようになります。
あとはマルムなのですが…彼女の追加パートナー恐竜を何にするか全く決まっておりません。
よろしければ感想等で皆様のご意見をお聞かせいただければ幸いでございます。
それでは次回第17話『恐るべし!バリバリ島の恐竜ダンス!』ぜひ、お楽しみにお待ち下さい。
※追記:超技『鎧裂凶打撃』、『擬死奇襲』の説明文を設定集に追記しました。
※追記2:「アイン(アロサウルス)」の説明文を設定集に追記しました。