古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
ある日のこと、Dキッズがいつものようにリュウタの家に集まり、マルムとパラパラのボイストレーニングを見ていると、突如としてエースが室内を駆け回り始めてしまった。
レックスによると、最近エースは機嫌が悪いのだという。
そんな中東南アジアの神秘の島・バリバリ島に恐竜が出たとの通知を受け、Dキッズとチビ恐竜達は現地へと赴いた。
そしてそこのリゾートホテルに辿り着くと、何かに惹かれたのかガブ達がホテルの中へと入っていってしまう。そこで行われていたのは、バリバリ島の先住民族達による儀式を観覧できるディナーショーだった。
そこへレクシィ以外のチビ恐竜達が乱入すると、楽しそうに歌って踊り始める。
更にそこへダスプレトサウルスが現れてチビ恐竜達と踊り始めるが、そこへアクト団が水を差してくる。
怒り狂うダスプレトサウルスはDキッズにも怒りの矛先を向け、レクシィ&エースと戦い始めたものの、ガブ達が再び踊り始めるとその怒りは収まり、先程のように踊り始めた。
そして、ダスプレトサウルスはレクシィを除くDキッズの恐竜達と共に心ゆくまで踊りを楽しんだのであった…。
前編
秘密結社『Sin-D』本部
この日、『Sin-D』本部のカロリディーの執務室では、カロリディーとジェイソン、イシドーラの3人で秘密の会談が行われていた。
「…それで、その話は確かなんだろうな?ホスキンス」
「おうよミルズ。マジもマジ、大マジだぜ。
アメリカの古生物学者Dr.オーエンが凄まじいエネルギーを持つ琥珀を見つけたってんで、現地でも騒ぎになってたんだ。
もしかすると、おれ達が求めてやまない、あのジュラシック・アンバー『
「しかしホスキンス。ジュラシック・アンバーであるならば表面に刻印が刻まれているはず。私が持つ『
そのような情報はあったのか?」
「いや、その話はなかったんだが…聞いたところだと、その琥珀は大人の握りこぶしほどもあるサイズらしい。
だから、その中に『
「…なるほど、確かに。
今我々のアンバー捜索が完全に行き詰まっていることも考えれば、この機会を逃さない手はないかもしれないな。
どうします?ボス」
イシドーラの言葉を受けたカロリディーは、ようやく口を開いた。
「少しでもアンバー『
こうして話し合いをしている時間も惜しいくらいだ。
…ジェイソン。お前は部隊を率いてDr.オーエンと接触して琥珀を手に入れろ。殺害以外なら手段は問わない。
だが顔を見られないように行動すること。そして必ず件の琥珀を持ち帰ってくること。これだけは全うしろ。いいな?」
「了解したぜ、ドジスン。
まあ見てろよ。しっかり仕事を終えて帰って来るぜ」
そう言い残し、ジェイソンは執務室から退出していったのだった…。
アメリカ合衆国 ニューヨーク市 アメリカ自然史博物館
ここは、アメリカのニューヨークに立つアメリカ自然史博物館。
19世紀後半に設立された歴史ある博物館で、自然科学や博物学に関係する標本を多数収容している。
過去には、映画『ナイト・ミュージアム』の舞台になったことでも有名なこの博物館だが、その前には1台のリムジンと、奇怪な見た目のマシンが路駐されていた。
後者のマシンには、アクト団のマークが入っている。
そして、博物館のエントランスホールにはソーノイダ達5人のアクト団達の姿があった。
彼らはここへ来ていたのだ。
そのうちの1人、ノラッティ〜がバロサウルスとアロサウルスの復元骨格を見て感嘆の声を上げる。
「いやぁ〜…すごいザンスねぇ!」
「フン!何がすごいぞいか!ただの石になった骨ぞい!くだらん!」
「そうですよねぇ!こんなホネホネのオバケじゃなくて、アタシみたいにピチピチしてなくっちゃ…」
「お前がピチピチかどうかは知らんがな…」
「そうだよ。三十路手前で毎日浴びるように化粧液付けてるクセに」
「ロト!アンタは一言多いんだよ!」
「というか今更ッスけど、何でロトが来てるんスか?」
そう。この場には何故かロトも来ていたのだ。
「だってしょうがないだろ。サイカは先週ディロフォサウルスから受けた毒液のせいでまだ絶対安静なんでしょ?それならボクとカスモサウルスが行くしかないじゃないか」
「アンタが持ってったそのカスモサウルスをアタシ達に返せばそれで良かったのよ!」
「それはもう無理だよ。このカスモサウルスはボクとロアに懐いてるんだ。
ウサラパ達が指示を下そうものなら角の上で皿回しされてからポイされるとしか思えないね」
「ぐぬぬぬ…妙に有り得そうなこと言ってくれちゃってぇ…」
「こりゃっロト!今回お主を連れてきたのは社会勉強のためでもあるのだぞい!カスモサウルスを使うのは大前提として、タルボーンヌにそう約束してきたのじゃからな。
ちゃーんと勉強しないと立派になれないぞい!
…まあ、こんな石の塊なんか置いてあるところで学べることなどないじゃろうがのう!
恐竜は生きて新鮮じゃないと何の意味もないからのう!ひゃーっひゃっひゃっひゃ!」
どうやら、ソーノイダは自分が恐竜を持っていることもあって、化石をただの石ころだと考えているらしい。
しかし、ロトとエドはそれに同意しかねるようで眉をひそめる。
「そうでもないと思うけどなぁ…。化石でしか分からないこと…例えば恐竜の生態や食生活を知ることができるって勉強したよ?」
「そうッスよ。化石には歴史的な価値があると思うんスけど…」
「バカモノーッ!歴史は偉大なる恐竜王国を建設する、このワシが作るんだぞい!
大体ワシらの目的は、こんな骨の石より、この博物館の連中が見つけおった巨大琥珀『ディノモンド』ぞい!」
「「「おぉ~…」」」
このディノモンドとは、先日レックスの父親であるオーエン博士が発掘した、巨大な琥珀なのである。
しかもディプロドクスの全身骨格、それも腹の部分から発見されたというのだから驚きである。
「おぉ~…って、お爺ちゃん…ウサラパ達に今回の目的教えてなかったの?」
「…そう言えば、有無を言わせず連れてきたから言い忘れておったぞい…」
「お爺ちゃん…」
「そ、そう言えばですよドクター!ディノモンドさえあれば、アジ島のパワーが全開になるんですものねぇ!」
「そういうことぞい!
早速この建物のどこかに隠されているディノモンドを探し出すのだぞい!」
「探すのはいいッスけど…」
「この博物館とてつもなくデカいザンスよ?
いやー、それにしても勉強になりそうな色んなものが展示されてるザンス!」
気楽に博物館見学をしようとするエドとノラッティ〜に、ウサラパが飛び蹴りを浴びせた。
「このデレスケーッ!見学に来たんじゃないんだよ!とっととディノモンドを探すんだよぉ!」
「この広さじゃ、何時間かかるか分からないけどね…」
「ケッ…それにしても、骨なんぞ語ってる奴の気が知れんぞい…」
そう呟くと、ソーノイダは博物館の奥へと進んでいく。その後へウサラパとロトが付いていった。
「あっ!お待ち下さいソーノイダ様ーッ!」
「それにしても警備員の姿が1人も見えないけど、一体どうなってるんだろうねー?」
一方、蹴り飛ばされたエドとノラッティ〜は、ふと上を見上げた。
すると視界に入ってきたのは、彼らを踏み潰さんばかりに聳えるバロサウルスの骨格があった。
「「ま、待って下さいウサラパ様ーッ!」」
慌てて飛び起きた2人は、先行していった3人を追いかけていく。
その時物陰では、失神させられた警備員達が雁字搦めにされて転がされていたのだった…。
その頃 三畳市 リュウタ宅
この日の夜、リュウタの家にはDキッズやDラボのスタッフ達が集まり、パーティーの準備をしていた。
リビングではリュウタと古代博士が亜紀の作った料理を並べており、その横でオウガとミサが室内の飾り付けをしている。
そんなところへ、マルムとリアスがやって来た。
「「こんばんはー!」」
「よう!」
「おっ、マルム達も来たみたいだね」
「来たな!待ってたぞ!」
「お二人ともこんばんは。もう準備はできてますし、どうぞ上がって下さい」
「いらっしゃい。リアスさん、マルムちゃん」
「お邪魔します」
「これで…うん、みんな揃ったわね。
リュウター!主役を呼んできてー!」
「うん!」
亜紀にそう言われたリュウタがリビングを退出していく。
そう。今日はレックスの誕生日。それを祝うパーティー会場を皆で設営していたのである。
その頃、レックスは1人窓際に立って夜空を見上げていた。その表情からは、一抹の寂しさが感じ取れる。
そんな彼へ、リュウタが声をかける。
「レックス!入るぞー!みんな揃ったから、下に来いよ!」
「…あぁ」
「ん?どうしたんだよ?もっと嬉しそうな顔しろよ!お前の誕生日だぜ?」
「誕生日って、みんな大騒ぎし過ぎだよ…。
今日は僕がパパに拾われた日でしかないんだから…」
「だから何なんだよ?例え本当の誕生日じゃなくても「父さん」って言える人に初めて会った日だろ?
それが誕生日だぜ!パーティーだぜパーティー!
ほら、パーッとやろうぜパーッと!」
そう言うとリュウタはレックスの手を引き、リビングへと連れて行った。
そして2人がリビングへと入ると…。
『恐竜大好きーっ!』
『「恐竜仲間ーっ!かっせきー探してどっこまでもーっ!ぼっくらは仲良し恐竜はっかせー!イェーイ!」』
古代博士がTV電話の先のオーエン博士といつもの儀式をやっている真っ最中であった。
恒例の光景ではあるが、これにはリュウタとレックスも呆れざるを得ない。
「パパ…」
『おおレックス!今日から12歳じゃな!』
「はっ、はい!」
『ハッピーバースデー!レックス!』
「「「「「「お誕生日おめでとう!」」」」」」
オーエン博士の誕生日祝いの言葉に続くように、オウガ達も祝いの言葉を送り、一斉にパーティークラッカーを炸裂させた。
色とりどりのカラーテープが宙を舞う様を、チビ恐竜達は瞳を輝かせながら見ており、テープを浴びたレックスも照れくさそうに顔を赤らめている。
「あ、ありがとうパパ…みんなも…!」
感謝の言葉を口にするレックスに、亜紀がバースデーケーキを差し出した。
「はい、レックス」
「…うん!フーッ…」
レックスがケーキに立てられた蝋燭を吹き消すと、周囲から拍手が巻き起こった。
「さあ、ご馳走用意したからみんなで食べてね!」
「「「はーい!」」」
誕生日のオープニングも終わったところで、オウガ達がプレゼントボックスを手にレックスへ歩み寄る。
そして代わる代わるプレゼントを彼へ手渡していった。
「はい、レックス!これはアタシとお姉ちゃんからのプレゼント!」
「オレも!」
「これは俺からだよ。それとこっちは…」
「わたしからのよ。レックス君」
「そしてこれは…私達からよ!」
「あ…ありがとう!」
自分の手に積み上げられたプレゼントとリュウタ達を見ながら、レックスが感謝の言葉を伝える。
『オホン!…レックス!』
「パパ!」
『本当にすまない。わしからのプレゼントは、また手に入らんかった…。
だから、別のものを用意した』
「えっ?」
そして、TV電話先のオーエン博士からもプレゼントがあるのだという。
しかし、彼がまたしても手に入らなかったプレゼントとは何なのだろうか。
『届いとるじゃろ?』
「ええ、師匠!…これだよ、レックス」
そう言い、古代博士はレックスに小包みを手渡した。
父オーエンからのプレゼントということもあり、レックスが一際顔を輝かせる。
「うわぁ…!パパありがとう!開けていい?」
『おお!当たり前じゃろ!』
オーエン博士から許可を貰ったレックスは、すぐさま小包みを開けていく。
その中身がリュウタ達も気になるようで、横や前から覗き込む。
そして、中から出てきたのは…!
「…『恐竜化石を発見しながら女の子にモテる100の方法』…?」
なんと、中身は恋愛指南本だった。しかも恐竜化石を発見しながらとは、あまりに需要が限定的過ぎないだろうか。
微妙な表情を浮かべるレックスとは裏腹に、オーエン博士は大興奮だった。
『そうじゃーっ!わしがお前の年の頃に読んで役に立った本じゃ!お前も読んで、役に立ててくれ!』
レックスと並んで複雑な表情を浮かべるオウガ達とは対照的に、古代博士は感動の涙まで流していた。
「さっすが師匠ー!恐竜化石を発見しながら女の子にモテる方法なんてあったんですか!
レックス!いい本を貰ったな!」
「え、ええ…」
「リュウタやオウガ君も借りて読ませてもらうといい!…私も、借りていいかな?」
「…パパァ〜…?」
既婚者にあるまじき発言をした古代博士だったが、そんな彼は背後から漂う夥しい殺気を感じ取った。
自分という妻がありながら更に女の子にモテたいという夫に、亜紀が激怒しているのだ。
このままでは折檻か分からせ(意味深)は避けられないだろう。
「…あーっ!台所から煙がーっ!?」
「いけない!ローストチキンが!」
そこで突然古代博士が台所の方へ指をさす。
どうやらローストチキンを焼いている最中だったようで、それに気付いた亜紀が慌てて駆け出していった。
どうやら本当にローストチキンが焦げかけていたようで、何とかこの場を誤魔化すことには成功したようだ。
ホッと胸を撫で下ろす古代博士にオウガが近づいていき、小声で囁いた。
「博士。今のはちょっと迂闊だったと思いますよ」
「そうだな…面目ない。今度母さんに何かプレゼントして、埋め合わせをしないと…」
「ねぇ、レックス。そういえばさっき、パパさんが「またプレゼントが手に入らなかった」って言ってたけど…」
「確かに言ってたね。あのオーエン博士でもなかなか手に入れられないなんて、一体どんなものなんだろう?」
「そうだよ。何なんだそれ?」
3人からそう聞かれたレックスは、未だにTV通話先で熱弁を振るうオーエン博士を見ながら口を開いた。
「…分かんない。パパは何かを手に入れてプレゼントしたいらしいんだけど、教えてくれないんだ」
オーエン博士となれば、古生物学の世界的権威として知られる存在である。
そんな彼をもってしても手に入れられないものとは、何なのだろうか。
と、そこで古代博士が思い出したかのようにオーエン博士に問いかけた。
「ところでDr.オーエン。先日ディプロドクスの化石から見つかった、巨大琥珀のことですが…」
『おお、これのことか!』
そう言ってオーエンが卵型のクリアケースを取り出す。その中には大人の握りこぶしほどの大きさを誇る大きな琥珀が収められていた。
「おおっ!」
「でっけ〜…!」
「すごい大きさの琥珀だ…。しかも俺のアンバーに似た、何か力強さのような気配まで感じさせるね…」
「これは見事なサイズですな…。しかも輝きも実に美しい!」
『そうじゃろそうじゃろ!琥珀にしてはデカいからな、こうして保管しておるん…な、なんじゃ君達は!』
その時、扉が蹴破られる音にオーエン博士が振り返ると、その扉から黒ずくめの覆面男達が乱入してくる光景が、画面に映し出された。
ニューヨーク州 アメリカ自然史博物館 オーエンの研究室
「な、なんじゃ君達は!いきなり入ってきて…」
そう言いかけたオーエン博士が口を噤む。何故なら男の1人が彼に拳銃を突きつけてきたからだった。
「Dr.オーエン。その琥珀を我々に渡してもらおう。
素直に応じてくれるのであれば、悪いようにはしない」
「突然何を…この琥珀をどうするつもりなんじゃ!」
「あなたが知る必要はない。我々があと10数えるまでにそのケースを地面に置き、両手を上に上げていただこう。
さもなくば…」
そう言うと覆面男の1人が銃の安全装置を外し、レックス達と通話をしていたモニターを撃ち抜いた。
モニターのど真ん中に風穴が空き、火花を散らしながら停止する。
「そのパソコンのようになってもらうぞ。
さあ、カウント開始だ。10…9…8…7…」
静かにカウントを始める。
オーエン博士は焦っていた。
ここは銃社会アメリカである。そして彼らがただ脅迫のためだけに銃を構えているとは思えなかった。
(わしがここで撃ち殺されてしまえば…レックスに会うことも、あのプレゼントを渡すこともできなくなってしまう…。
ここで…わしは死ぬわけにはいかんのだ…。
くっ…仕方がないか…!)
「3…2…1…」
「わっ、分かった!渡す!渡すから銃を下げてくれ!」
「こちらの要求に応じるのが先だ。今すぐそのケースを床に置いてもらおう」
「…分かった。言う通りにしよう」
そしてオーエン博士が床に琥珀が入ったケースを置いて少し離れ、両手を上に上げる。
「…よし、取ってこい」
銃を構えた男が別の男に顎で合図を送ると、その男は素早くケースを抱えると、部屋から素早く走り去っていった。
それに続いて他の男達も部屋から出ていき、最後に銃を構えた男が退出していく。
ようやく覆面男達が全員いなくなったところで、オーエン博士は躊躇うことなくデスクへ近づき、ニューヨーク市警直通の通報ボタンを押したのだった。
その頃、館内にいたアクト団は博物館のバックヤードに入っていくところだった。
「ドクター…本当にこの先にディノモンドがあるんですの?」
「館内のどこにもディノモンドは展示しておらんかった。となるとこのバックヤードのどこかにあるに決まっておるぞい!
1番有力なのは、ディノモンドを発見した…えーっと、何という奴だったぞいかのう…」
「オーエン博士だよ、お爺ちゃん」
「そう!そのオーエンとかいう奴の研究室にあると考えられるぞい!」
「そのオーエンとかいう博士の研究室がどこにあるのか分かってるんスか?」
「それが分かってないと、また当てもなく探す羽目になるザンスよ?」
「うるさいぞい!それはこれから探すのじゃぞい!」
「大丈夫なのかなぁ…」
そうロトが心配そうに言った時だった。
前の曲がり角から黒ずくめの1団が突然現れると、先頭のソーノイダを突き飛ばしたのである。
「ぬおおっ!?ぞいっ!?」
「ドクター!?ちょっとアンタ達!ドクターに何すんのよ!?」
ウサラパが1団へ怒鳴るものの、彼らは謝罪の一言すらないままに走り去っていってしまった。
「何なのよあいつら!一言も謝らないで!」
「でも、何か様子が変だったよね。それに、先頭の奴が何か抱えているように見えたんだけど…」
「あーっ!ソーノイダ様!ここを見るザンス!」
すると、曲がり角の先へ行っていたノラッティ〜から呼び声が聞こえてきた。
ソーノイダ達もそこへ向かうと、ノラッティ〜が部屋のネームプレートを指さしていた。
そこには、オーエン博士の名前が書かれていた。
「おおっ!ここぞい!よくやったぞいノラッティ〜!」
ソーノイダはノラッティ〜を褒めるとすぐさまドアノブに手をかけ、勢いよく開いた。
そして中にいたオーエン博士に威勢よく問いかける。
「Dr.オーエン!ディノモンドはどこじゃぞい!」
「今度は何じゃ!お前達は何ものなんじゃ!」
オーエン博士からしてみればまたしても現れた乱入者である。
そんな彼からの問いかけに、ウサラパ達は久方ぶりの名乗りを上げた。
「アタシ達は!」
「泣く子も黙ーる!」
「アクト団ザンスよ!」
「ま、という訳で怪我をしたくないんなら大人しくディノモンドを渡してほしいんだよね」
「ディノモンド?…まさかあの琥珀のことか!何故そんなものを欲しがる!」
「お前には理解できんじゃろうが…あのサイズの琥珀はディノモンドと言ってな、とてつもないエネルギーを秘めているのだぞい!」
「とてつもない、エネルギーだと…?」
「そうよ?アンタが持ってても仕方のないもの…。
さあ、さっさとディノモンドをお渡し…」
そう言いながら顔を近づけたウサラパを見て、オーエン博士は顔を赤らめた。
まるで、ミサと初対面の時のオウガのようである。
どうやらウサラパに一目惚れしてしまったらしい。
「ぬぉーーーーっ!」
「な…何よ?」
「お前さん、よく見るといい女じゃのう!」
「えーっ!?」
ウサラパは思わず顔を赤らめ、驚愕の声を上げる。反応を見るに、これまで異性からそんなことを言われたことがないらしい。
そして、未だ驚いて動けないウサラパに、オーエン博士は渋い声色で呼びかけた。
「俺と…今度、ワシと…デートせんか?」
「なっ…何言ってるのぉ〜?」
案外満更でもなさそうな反応を見せるウサラパ。普段のふるまいから考えれば意外そのものである。
だが、そこへソーノイダが割り込んだ。
「貴様ーッ!ワシを舐めとるのかーっ!?
だったら…こうしてやるぞい!」
ガアァァァァァァ!!!
そう言ってソーノイダはアクトホルダーにカードを通し、ティラノを召喚した。
轟音と共にティラノが着陸し、衝撃で周囲に飾られた化石標本がグラグラと揺れる…。
そしてその中の1つ…ディプロドクスの化石標本から1枚のカードがヒラヒラと舞い落ちたのであった。
その頃 三畳市 リュウタ宅
リュウタ宅にいたDキッズや古代博士達は、直前までモニターに映っていた状況を見て大慌てだった。
「大変だ!パパの研究室に強盗が…!」
「急いでニューヨーク市警に連絡しよう!」
「お願いします!」
その時、ディノホルダーとディノラウザーから恐竜出現を知らせる通知音が響いてきた。
ソーノイダのティラノ召喚を感知したのである。
「恐竜の反応が…?」
「場所は…アメリカ・ニューヨーク州!アメリカ自然史博物館があるところだよ!」
「よし!ひとまずDラボに行こう!」
古代博士の言葉にその場にいた全員が頷き、続々と庭の方へ向かっていく。
「ちょっと焦げちゃったけど、チキンが焼けたわ〜!
…あら?みんなどこ行っちゃったの?」
そこへローストチキンの皿を持った亜紀がやって来たが、いつの間にか誰もいなくなった部屋を見渡し、首を傾げるのだった…。
戻って ニューヨーク州 アメリカ自然史博物館
目の前で咆哮を上げるティラノを見て、オーエン博士は恐れるどころか大興奮の様子であった。
「おおーっ!ファンタスティック!」
そして、ティラノへじりじりとにじり寄っていく。
「あ、アンタ!危ないわよ!」
「それ以上進むと本当に食われるぞい!」
「本物のティラノサウルスに食われるなら、後悔などない!むしろ幸せいっぱいじゃあ!」
「「はぁーっ!?」」
驚くウサラパとソーノイダを尻目に、オーエン博士はそんなことを言ってのけた。
恐竜のためなら死すら恐れないとは、生粋の古生物学者である。
そこへティラノが近づいてくると、彼らの至近距離で咆哮を浴びせてくる。それを見たソーノイダ達ですら咄嗟に飛び退くものの、オーエン博士は怯みもしていなかった。
「おおっ!お前虫歯があるぞ…」
それどころか前歯の1つが虫歯であることに気づき、躊躇うことなく指でつつく。
するとティラノは虫歯の痛みに耐えかねたようで、こちらの方が大きく仰け反ってしまった。
しかもオーエン博士は、その虫歯に触れた指を舐めてみているではないか。
「なっ、何じゃあっ!?」
「すごい命知らずザンス!」
「恐れっていう感情がないのかな…?」
「ほんっと、ドクターより度胸がありますわね…」
そのウサラパの言葉が癪に障ったのか、ソーノイダがムッとした表情で言い返す。
「なっ、何をっ!?ワシの方がすごいぞい!
ほーれティラノ、来い!虫歯を治してやるぞい!」
そう言ってティラノの方へ進んでいくソーノイダを、エドとノラッティ〜が2人がかりで抑えた。
「ドクター!お待ちになって!」
「えーい!離せっ!」
「本当に食べられちゃうッスよ!」
「思い留まってほしいザンス!」
「思い出してよお爺ちゃん。今はティラノにどれだけ近づけるかのチキンレースをやってる暇ないよ。
ボク達はディノモンドの回収に来たんでしょ?」
ロトがそう言うと、ソーノイダはハッとしたような顔をした。どうやら今の今までオーエン博士に圧倒されていたせいで忘れていたようである。
「あっ!そうじゃった忘れとった…。
おい!お前!ディノモンドをワシらアクト団に渡すのじゃぞい!」
ソーノイダの言葉を聞いたオーエン博士は、すぐに笑い出した。
「何じゃ!何がおかしいのじゃぞい!」
「フッフッフ…残念じゃが、お前達の求めるものはここにはない!
何故ならあの琥珀は…既に盗まれてしまったのじゃからな!」
「なっ、何じゃとぉーっ!?」
「ちょうどお前さん達が来る前に、黒ずくめの覆面男達が押しかけてきてな。拳銃を突きつけられて脅されたので渡してしまったのじゃよ!」
「おっおい!お前は死んでも構わんのではなかったのかぞい!」
「それはあくまで恐竜の話じゃ!凶弾に倒れるなどごめんじゃわい!」
ソーノイダとオーエン博士が言い争っている中、エドが思い出したようにポンと手を打った。
「黒ずくめ…覆面…?まさかあいつらッスか!」
「あの時、お爺ちゃんを突き飛ばしていった1団か!」
「そう言われてみれば…何か小脇に抱えていたような気がするザンスねぇ…」
「ぐぬぬぬ…何たることぞい!
お前ら!すぐにあの黒ずくめの連中を追いかけるぞい!」
「「「ヘイヘイホー!」」」
「おっとティラノ!お前も戻るのじゃぞい!」
そして忘れずにティラノをカードへ戻すと、ソーノイダ達は駆け足で博物館の外へと向かおうとした、その時だった。
外が騒がしいので彼らが窓の外を覗くと、博物館前にニューヨーク市警のパトカー達が殺到してきていたのであった…。
今回はここまでです。
本当は今回の話で出てくるのはセイスモサウルスなのですが、本種は現在、既にディプロドクスに統合されてしまっているため、ディプロドクスとしました。
また、今回出てくるアクト団のメンバーにロトを加えたのは、後半のとある展開で彼の方向性を示したいと考えたためです。
どんな展開なのか…それは明後日投稿予定の後編をご覧いただきたいです。
では、また後編でお会いしましょう。