古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
では、最後までお楽しみ下さい。
さて、引き続き全米女子オープンが行われているゴルフ場では、現在首位の選手が次のホールを始めようとしているところだった。
そんな彼女を、木立の中から様子を窺う人物がいた。トゥーイである。
「あいつがトップか…。よーし、邪魔してやる…」
トゥーイはそう呟くと、手に持ったアクトホルダーにアルティリヌスのカードを通す。するとアルティリヌスが召喚され、それに驚いた選手がショットをミスしてしまった。
何事かと観客達がざわめくものの、彼らが気づく前にアルティリヌスはカードへ戻り、トゥーイの手元に返ってきた。
「やったあ…ヒヒヒヒ…」
作戦がうまくいき、トゥーイは声を潜めて笑った。
そう。彼の作戦とは、スミレを首位にするために彼女より上位の選手をアルティリヌスで驚かせ、蹴落としてやろうというものだったのである。
子供ながらなんと邪悪極まりない作戦であろうか。
しかしこれも偏に推しに優勝してほしいためなのだろう。もっともそこに推し本人の気持ちは存在していないのであるが…。
その頃 Dラボ
恐竜出現を反応を見てDラボへ急行したDキッズだったが、到着した頃には反応が消えてしまっていた。
だが待機しているうちに再び反応が出たので今度こそ行こうとしたところ、またしても反応が消えてしまったのである。
「また消えた!?」
「ええ。同じ場所で2度出て2度消えたわ」
「どういうことなのかしら…。恐竜が現れたり消えたりするなんて…。まるで前回、オウガ君達がニューヨークに行った時みたい…」
「…そういえば!私はゴルフ中継で恐竜の姿を見たんだった!あれはアルティリヌスだったぞ!」
「えっ!?父さん!それって本当!?」
「あ、あぁ。私が恐竜を見間違えるはずがないだろう!」
「アルティリヌスといえば…アタシ達がオーレに行った時に出現した恐竜だったわよね」
「そうだね。そして俺達が『Sin-D』の恐竜と戦っているうちにカードがなくなっていたんだけど…やっぱり、アクト団の連中が持ち去っていたんだな」
「だとしたら…アクト団の奴ら、恐竜を出したり引っ込めたりして、何を企んでいるんだ?」
最初の1回はアクト団によるデモンストレーション、そしてそれ以降はトゥーイがスミレ以外の選手を妨害するために召喚していたのだが、そんなことなどDキッズは知る由もない。
彼らは何故アクト団が恐竜を出したり戻したりしているのか理解できない様子であった。
戻ってオーガスタのゴルフ場では、引き続きトゥーイが他選手の妨害工作を行なっていた。
今度の選手は、アルティリヌスを見ると尻もちをつくほど驚いてしまっており、トゥーイはそんな姿を嘲笑いながら見ていた。
しかし、そんなことをいつまでも続けられるはずもない。ウサラパの指示のもとトゥーイを探し回っていたノラッティ〜に見つかってしまったのだ!
「ガキンチョ!そこにいたザンスね!」
「あっ、やべっ!」
すぐさまトゥーイはその場から立ち上がって逃げ出した。アルティリヌスをその場に残したまま…である。
当然アルティリヌスは好き勝手に歩き回り始め、ゴルフ場にいたあらゆる人々を恐怖を陥れたのであった…。
その頃 三畳市 Dラボ
アルティリヌス出現の一報は、日本の報道番組でも速報として流されていた。
『大変です!全米女子オープンの会場に恐竜が現れました!
ただいま会場はパニックに陥っており、決勝トーナメントどころではありません!』
「やっぱり父さんが言った通り、アルティリヌスだ!」
「でも…どうしてこんなことを?ゴルフの邪魔がしたかったのか?」
「うーむ…もしかしてあの恐竜の目標はスミレちゃんかも…」
「古代博士。いくら何でもそれはないと思いますよ…」
「あっ!ねぇ、あれオバさんじゃない?」
その時、マルムが中継映像を指さした。
そこにはウサラパとエドが映り込んでいたのだ。アルティリヌスを追って現れたのだろうか。
そして、ウサラパは何故か辺りをせわしなく見回していた。
「ホントだ!」
すると、突然ウサラパがテレビカメラの方に走り寄り、声を張り上げた。
『オバさん言うなーっ!』
まさかマルムの『オバさん』呼びが聞こえていたということだろうか。毎度のことではあるが、驚異の聴力である。
「急ごう!」
リュウタの言葉にオウガ達も頷き、テレポート台へと向かっていく。
一方、古代博士はウサラパの勢いと聴力に驚いているようだ。
「き…聞こえていたのか…?
あ、お前達!気をつけるんだぞ!」
「みんな!無事に戻ってきてね!」
そして、古代博士とミサに見送られながら、Dキッズの4人とパートナー恐竜達はオーガスタのゴルフ場へテレポートしていった。
そんな古代博士に、リアスが思い出したかのように声を掛ける。
「あら?博士、スミレちゃんのサイン頼まなかったんですか?」
「あーっ!しまったーっ!ついうっかり…」
そんな古代博士の手元には、サインペンと色紙がある。
家から持ってきたというのに、ウサラパの勢いに圧倒されてつい忘れてしまったようである。
「あの…リアス博士。この前マルムちゃんからお話を聞いた時も思ったんですが、有名人のサインってそんなに価値があるものなんですか?」
「それは当たり前よ。でも…価値があるかどうかを判断するのはその人次第といったところね」
「はあ…なるほど…?」
リアスからの返答は貰ったものの、いまいちピンと来ていない様子のミサなのであった…。
ジョージア州オーガスタ ゴルフ場
Dキッズがテレポートしてきたのは、ゴルフ場内のとある一角だった。彼らの目の前を、幾人もの人々が横切っていく。アルティリヌスから逃げてきたのだ。
「あっちだ!」
その方向にこそアルティリヌスがいると判断したDキッズは、急ぎそちらへ向かって走ったのであった。
一方、ノラッティ〜に追いかけられていたトゥーイは、その足を止めてしまった。
何故なら彼の目の前には、ウサラパとエドによって拘束されたスミレの姿があったのである。
彼の要望で名前が出ていたことで、彼女を人質として利用することにしたようである。
こういうところでは頭が回るのが彼らアクト団であった。
「何するの!離して!」
「スミレちゃん!」
「ガキンチョ!早くアクトホルダーをお返し!
でないとこの娘に…エド!」
「えっえっ…ホントにやるんスかぁ…?」
「当たり前だろぉ?さっさとやるんだよぉ!」
ウサラパの指示に、エドは何故か消極的な態度を見せる。しかし彼女に叱りつけられ、躊躇いがちにスミレに向かい合った。
「ほ、本当はこんなことしたくないんだけど…ごめんなさいッス!チュゥ〜〜〜〜〜…」
なんと、エドがスミレにキスをしようと迫っていくではないか。
どうやらこれでトゥーイにアクトホルダーを手放させる作戦だったようである。
「いやぁぁぁ!やめてっ!」
しかし、嫌がったスミレからエドは足蹴りを食らってしまった。ウサラパの指示に従ったとは言え、今日の彼はどこまでも不憫であった。
「こんなに拒否されるの、初めてじゃなくてもショックッスね…」
「初めてじゃないの??」
キスが初めてではないようなエドの発言を聞き、ウサラパの目が点になった。
手下のエドに先を越されていたことになりかねないからである。
この光景を見ていたトゥーイは、アクト団達に非難の声を浴びせた。
「やめろ!スミレちゃんが嫌がってるじゃないか!」
「だったら素直にアクトホルダーをお返し!」
ウサラパがそう言ってのけた後ろには、ちょうどアルティリヌスが通りかかっていた。
それを見たトゥーイは、不敵に微笑みながらアクトホルダーを手に取る。
どうやらタダで返すつもりはないようだ。
「…分かった。返してやるよ!そらっ!」
そう言うとトゥーイはアクトホルダーを投げた。アクトホルダーは弧を描きながら飛んでいき…アルティリヌスの鼻に当たった。
すぐさまアルティリヌスが横を振り向き、アクトホルダーを拾いに来たウサラパとエドを睨みつける。
どうやら犯人は彼らだと思っているらしい。
「ひっ…?」
「スミレちゃん、こっち!」
その隙にトゥーイがスミレを連れて逃げていくが、アルティリヌスがウサラパ達から視線を外すことはなかった。
「あ、アタシ達じゃないよ!あのガキンチョがぁ…」
何とかウサラパが弁明しようとするものの、アルティリヌスは聞く耳を持たない。後ろ脚で立ち上がると、そのまま彼らへ向けて突進してくるではないか。
「「ひぃ~〜〜〜〜っ!」」
そこへDキッズがやって来るが、アルティリヌスに追い回されているアクト団の3人を見て目を丸くした。
想像していた光景と違ったからである。
「なっ、何だ!?」
「「「たすけてぇ〜〜〜!!!」」」
「どうなってるの?」
「何であの3人、自分達で召喚した恐竜に追い回されてるんだ?」
Dキッズが困惑している間も、ウサラパ達とアルティリヌスはグルグルと円を描くように追いかけっこを続けていた。
「エドーッ!何とかしなさーい!」
「了解ッスぅー!」
最早カードに戻して沈静化させる他ないと判断したようで、エドがアクトホルダーに恐竜カードを通した。
「アクトスラーッシュ!湧き上がれ!スピノサウルス!」
グァギュオォォォッ!!!
スピノが成体化して地面に降り立ち、アルティリヌスに向かい合うと、周囲もバトルフィールドへと変化していく。
「また出た!危ない!こっちへ!」
アクト団とアルティリヌスで揉めている間にスミレに巻かれた縄を解いたトゥーイは、戦いの場を離れて木立の方へと向かった。
その先には、Dキッズの4人もいる。
「早く!」
「大丈夫ですか?」
「え、ええ…。けど、どういうことなの?いきなり恐竜?が現れたと思ったらあの2人に拘束されて…一体何が起こってるの!?」
状況を理解できていない様子でスミレが事情の説明を求めてくる。
それに対し、トゥーイは躊躇しつつも口を開いた。
「…ごめんなさい!全部オレのせいなんだ!」
「え?」
「恐竜を使って他の選手の邪魔をすれば、スミレちゃんが優勝できると思って…。
なのに、スミレちゃんを危ない目に遭わせちゃって…本当にごめんなさい!」
この騒動の引き金を引いたのは自分であるとトゥーイは自白し、深々と頭を下げた。
これには、Dキッズも複雑な表情を浮かべる。
「だから恐竜の反応が出たり消えたりしてたのね…」
「でも…君、それはあまりにも独り善がりだよ。
そりゃあスミレさんだって頑張ってるけど、それは彼女だけじゃない。他の選手だってみんな、同じかそれ以上に頑張ってるんだよ。
それなのにこんなことをするなんて…スミレさんを信じられなかったのかなって僕は思うよ」
「お、オレはそんなつもりじゃ…ただ…その…」
レックスからの厳しい言葉に、トゥーイはついしどろもどろになってしまう。
そんなトゥーイを冷たい目で見つめながら、レクシィは鼻を鳴らした。
『…ニンゲンが愚かだとは以前から思っていたが、この小童はそれに輪をかけて愚かだな。自分の好きなものが1番でなければ我慢ならないとは…。
あまつさえそのためならば、対抗相手を排除するためにいかなる手も惜しまないなど、あのカロリディーとやらと同じではないか』
「…そうだね、レクシィ。今回は俺も全面的に同意するよ。
でも、彼は俺達より更に年下なんだよ。色々と思考が幼いところもあるだろうし、まだこれから意識を変えられる機会はあるんじゃないかな?」
『…どうだろうな?オマエ達の国には「三つ子の魂百まで」という諺があるそうではないか』
「何でレクシィがそんな言葉知ってるのさ…」
と、そこでマルムが思い出したかのようにトゥーイに問いかけた。
「…ところで、もしかして君が恐竜カードを『物々交換サイト』に出してたの?」
「うん…」
「そのカードは今どこにあるんだ?」
「あのオバさん達に…」
そう言ってトゥーイが指さす先には、案の定怒り狂うウサラパの姿があった。
「キィーッ!またオバさんって言ったわねーっ!?」
また、と言っているということは、Dラボでのマルムの言葉が聞こえていたということになる。
本当に恐ろしい地獄耳である。
そしてそんな彼らの目の前では、アルティリヌスがスピノに突き転がされていた。
それをリュウタは黙ってみていることはできず、ガブとイナズマをカードに戻してディノホルダーにスキャンした。
「やばい!ガブ!イナズマ!アルティリヌスを助けるんだ!
ディノスラーッシュ!轟け!トリケラトプス!スティラコサウルス!」
ゴオォォォォォ!!!
ギュオォォォォォ!!!
ガブとイナズマが成体の姿となって召喚されると、バトルフィールドは更に変化を見せた。
原宿の公園やデボン島の時のように、中生代にタイムスリップしたかのような光景へ変化したのである。
「あれ…?何…?」
「これって、原宿の時と同じ…」
「時空が歪んだんだ!」
ガブとイナズマは並び立ってスピノへと突進していくが、スピノは器用に片足を持ち上げて攻撃を回避し、自分とアルティリヌスでガブ達を挟み込む陣形に持ち込む。
その状況を見たオウガが、リュウタに助言した。
「気をつけてリュウタ!もしこの子が言っていたことが本当なら、今アルティリヌスの指揮権はアクト団にある!技を使われたら厄介だよ!」
「そ、そうだった!じゃあこの陣形は…ヤバいかも…」
オウガとリュウタの危惧は的中していた。
アクト団もこの好機を逃すまいとしていたのである。
「ウサラパ様!チャンスッス!」
「今こそ手に入れた技カードを使う時ザンス!」
「分かってるわよぉ!『
ウサラパがトゥーイから奪った技カードをアクトホルダーに通すと、アルティリヌスが緑色の光と草吹雪に包まれながら嘶きを上げる。
すると彼の背後から、これまた草吹雪と共に巨大竜脚類スーパーサウルスがその姿を現していくではないか。
このサイズ感には、Dキッズも驚きを隠せない。
「「「「「うわあぁぁぁぁ!?」」」」」
「でっけぇーっ!」
そしてスーパーサウルスが地面に降り立とうとした際、危うくウサラパ達を踏みつけそうになってしまった。
これに関しては彼らの場所取りが悪かったと言わざるを得ないだろう。
「「「ぎょえーっ!」」」
「こっちじゃなくて敵はあっちザンスー!」
「「「スタコラーッ!」」」
3人が安全圏へと逃げると、スーパーサウルスも技の態勢に入った。
まずはアルティリヌスの前へ自分の頭を差し出し、その上へ乗るように促す。
そしてアルティリヌスが乗ったことを確認すると、首のひねりを効かせて天高く投げ上げたのである。
投げられたアルティリヌスは、激しく回転しながらガブとイナズマの方へ落下していく。
「ガブ!イナズマ!何とか食い止めるんだ!」
リュウタの言葉に反応した2体がアルティリヌスに角を向けて受け止めようとするものの、その勢いを殺すには至らず、大きく後退させられてしまった。
「ガブ!イナズマ!…やっぱりあのアルティリヌス、アクト団と敵対してるんじゃないのか!」
リュウタのその言葉を肯定するかのように、アルティリヌスの周囲にアクトボールが出現した。
やはりアクトホルダーで召喚したからには彼らの恐竜であるようだ。
「オーッホッホッホ!アクトコントローラーのお陰で、こいつはアタシ達の思うがままなのさ!」
「それならどうしてさっきはカードを戻すなりして対応しなかったんですかー?」
オウガからの質問に、3人は目を点にして固まる。最初からそうしておけば良かったのに、肝心のその発想はなかったようである。
「…う、うるさいよ!そんな重箱の隅をつつくように細かいことを気にするアンタ達にはお仕置きだよ!
スーパーサウルス!もう1発かましておやりーっ!」
逆ギレしたウサラパが指示を出すと、再びスーパーサウルスがアルティリヌスを乗せて投げる。
しかし今度は投げ上げるのではなく、横投げでアルティリヌスを投げ出した。
先程とは違い低空飛行でアルティリヌスがガブとイナズマへ迫ってくる!
「ガブ!イナズマ!散開して避けるんだ!」
しかし、リュウタも何度も攻撃を受けさせるほど愚かではない。すぐさま散開の指示を出すと、ガブとイナズマは左右に分かれて攻撃を回避する。
アルティリヌスはそのまま直進していき…ちょうど射線上にいたスピノにぶつかってしまった。
スピノの体が大きく跳ね飛ばされ、カードへと戻っていく。ここで痛恨のフレンドリーファイアを決めてしまったのだった。
「あらら…」
「避けること考えてなかったんスか?」
「みっともないザンス…」
「何やってるんだい!早くスピノのカードを回収してくるんだよ!」
「了解ザンス!」
ウサラパから回収の指示を受けたノラッティ〜がすぐさま戦いの場へ躍り出ると、スピノのカードを回収しに向かっていく。
一方Dキッズ側でも、スーパーサウルスへの対策を取ろうとしているところだった。
「スーパーサウルスを何とかしないと勝ち目がないな…。よし、エース!アイン!」
レックスがエースとアインを成体化させようとするが、それをマルムとオウガが静止する。
「待って!パラパラに任せて!」
「俺とアメジストにもいい考えがあるんだ!」
そう口々に言うと、マルムはパラパラを、オウガはアメジストをカードに戻してそれぞれのディノホルダーとディノラウザーにスキャンした。
「ディノスラーッシュ!芽生えよ!パラサウロロフス!」
キュオォォォン!!!
「ディノスラーッシュ!揺るがせ!ステゴサウルス!」
ケエェェェェ…!!!
そして、2人は恐竜を成体化させたところで続けて技カードをスキャンした。
「『
「出てこいブラキオサウルス!『
するとパラパラの嘶きと共にディプロドクス・ハロルムが、アメジストの雄叫びと共にブラキオサウルスが現れ、スーパーサウルスに向かい合った。
「すっげー!スーパーサウルスにディプロドクス!それにブラキオサウルスまで!
まるで怪獣映画のクライマックスみたいだ!」
圧巻の光景に、トゥーイも感嘆の声を上げる。
そして、3者は互いに威嚇しあいながら近付いていき、まずはスーパーサウルスがディプロドクスの首に噛みついた。
しかしディプロドクスはすぐにそれを振り払い、お返しと言わんばかりに噛みつき返す。
更にそこへブラキオサウルスも到着すると、スーパーサウルスの横っ腹へ自慢の前脚で蹴りを入れた。
巨体と巨体がぶつかり合う光景に、レックスも感嘆の声を漏らした。
「すごい迫力だ…!でも数がある分、こっちの方が有利だね」
「そうね。アルティリヌスも近づけないみたいだし、今のうちにガブ達を回復するわ!『
今度はマルムが『
これにより、ガブとイナズマはほぼ体力を回復することができたのである。
一方巨大恐竜の対決は、数で勝るDキッズ側の有利なまま動いていた。
横倒しになったスーパーサウルスを、ブラキオサウルスとディプロドクスが前脚で代わる代わる踏みつけていたのだ。
このままいけばスーパーサウルスをカードに戻すこともできただろうが、スーパーサウルスもこのまま負けるほど軟弱ではない。
尻尾を振るって2体に鞭のような打撃を浴びせ、2体を後退させた隙に立ち上がった。
「もーっ、アルティリヌスは何をやってるのさー!」
巨大恐竜達を前に全く手出しができていないアルティリヌスにウサラパが文句を言うが、彼らのアクトホルダーから警告音が鳴り出した。アルティリヌスの体力が限界に近づいているのだ。
「くたびれちゃったみたいッスね」
「無理もないザンス。あのガキンチョに召喚されてからゴルフ場を歩き回ってた上に、スーパーサウルスを出しっぱなしにしてたらそりゃエネルギー切れにもなるザンスよ」
「いいからぶん投げちまいなー!」
ウサラパが指示を出すと、スーパーサウルスはまたアルティリヌスを頭に乗せて投げる姿勢に入った。
だが、今度も黙って見ているDキッズではない。
リュウタは1枚の技カードを掴み出し、ディノホルダーにスキャンした。
「うおおおおお!『
『
更にオウガも、リュウタに続いて指示を出した。
「頼んだぞー!アメジストー!ブラキオサウルスー!」
するとオウガの指示を受けたブラキオサウルスが両前脚で地面を踏み鳴らし、衝撃波を起こした。
そして、アルティリヌスを投げるのとほぼ同時にガブとイナズマからは特大の電撃を、ブラキオサウルスからは衝撃波を浴びせられ、スーパーサウルスは遂に力尽きてカードに戻ってしまった。
しかしアルティリヌスは止まらず、まっすぐガブやイナズマ、パラパラのもとへ向かっていく。
だが、そこでアメジストがブラキオサウルスの頭から宙へ飛び出し、回転しながら落下していくではないか。
更にディプロドクスが尻尾でアメジストを弾き、向かってくるアルティリヌスへぶつけたのである。
回転しながらぶつかり、空中で火花を散らしながら鍔迫り合うアメジストとアルティリヌス。
そして、遂にアメジストがアルティリヌスを押し切り、弾き飛ばした。
弾かれたアルティリヌスは大きく宙を舞うと、アクト団が乗ってきた地底戦車の上へ落ち、その車体を押し潰しながらカードへと戻っていってしまった。
「ホールインワン!ザンス!」
「アホなこと言ってるんじゃないよ!
負けちゃったんだよぉ?とにかくカードを回収するんだよぉ!」
アルティリヌスのカードを回収しようとウサラパ達が駆け出していく。
だがこれを見逃さない人物がいた。プロゴルファーのスミレである。
彼女はゴルフクラブを手に3人を睨みつけると、強烈なショットを放った。
「ぎゃっ!」
「ぎゃっ!」
「ぎゃっ!」
放たれたゴルフボールは見事に3人の頭を打ち据えた。
抜群の制球力である。
「スミレさーん!ナイスショット!」
「もう1回お願いしまーす!」
マルムとオウガからの声援を受けたスミレはまたゴルフクラブを構えると、懲りずに駆け出していくウサラパ達へ再びショットを放った。
「ぎゃっ!」
「ぎゃっ!」
「ぎゃっ!」
「カードは諦めるよぉ…」
再びゴルフボールに打ち据えられたウサラパ達は遂に心が折れ、すごすごと逃げ出していく。
そんな彼らへ、Dキッズは追い討ちの言葉を投げつけた。
「さよーならー!オバさーん!」
「オバさん、お元気でー!」
「またねー!オバさーん!」
「頑張って帰って下さいねー!オバさーん!」
「オバさん言うなーっ!お前らのかーちゃんでーべーそー!ついでにお前らもでーべー…」
オバさん呼びにすぐさま反応したウサラパが小学生のような悪口を言い返すが、そんな彼女の額へスミレの3回目のショットが炸裂した。
「いたっ!何すんのぉ…」
そんな情けない声を残し、今度こそ退散していくウサラパの姿を見て、スミレは大笑いしていた。
その様子を見て、トゥーイが安心したようにスミレに声をかけた。
「久しぶりだね。スミレちゃんの笑顔」
そう言われて初めて自分が笑っていたことを実感したのか、スミレは虚を突かれた表情になった後、すぐにまた微笑んだのだった…。
その後、日が沈み始めた頃に帰ろうとしていたDキッズは、トゥーイからアルティリヌスと『
「カードはお兄ちゃん達が持ってて」
「いいのか?」
「うん。どうせ拾ったものだし、助けてくれたお礼だと思って受け取ってよ」
「サンキュー!」
Dキッズのリーダーであるリュウタがカードを受け取ったが、その直後、トゥーイは表情を暗くして項垂れてしまった。
「けど、オレ…スミレちゃんの大切な試合をぶち壊しちゃった…」
どうやら自分の安易な考えで恐竜を利用し、ゴルフ場を混乱に陥れてしまったことに責任を感じているらしい。
しかしそんな彼に、スミレは力強く答えた。
「いいえ!まだ試合は終わってないわ。調子も取り戻せそうだし!」
「本当!?」
「ええ。…私、ゴルフを楽しむことを忘れてた。でも、さっきの騒ぎでそのことに気付かされたわ。
だから、試合が再開されたら、最後までしっかりとゴルフを楽しむつもりよ。
君みたいな、大切なファンのためにもね!」
そう言うとスミレはトゥーイの肩に手を置いた。
どうやら彼女も今回の騒動を通して初心を取り戻すことができたようだ。
「ホントに!?」
「ええ!」
そんな彼らの後ろ姿を、Dキッズとパートナー恐竜達は優しい表情で見つめていた。
すると、ディノラウザーを通してレクシィがオウガに話しかけてくる。
『救いようがない小童だと思っていたのだが…自身の行いを省みることができるだけの心はあったようだな。
あまつさえあの女に調子を取り戻させるとは…物事というものはどう転ぶか分からぬな』
「ね?だから言ったでしょ?意識を変えられる機会はあるって。
あの子はこれまでレクシィが見てきたような救いようのない大人じゃない。まだやり直しがきく子供なんだよ」
『フン。認めたくはないが…そのようだな』
そう言って顔を背けてしまったレクシィを、オウガは優しい目で見つめていたのだった…。
翌日 三畳市 リュウタ宅
オーガスタでの騒動の翌日、オウガとマルムはリュウタの家へやって来ていた。
再開された全米女子オープンの中継をみんなで見るためである。
『昨日の恐竜騒ぎで一時はどうなることかと思われましたが、何とか決勝ラウンドを迎えることができました!
三崎スミレ選手は怒涛の追い上げを見せ、現在トップタイ。優勝争いは、この最終ホールまでもつれ込んでいます』
中継映像にはスミレだけではなく、トゥーイの姿もあった。どうやらスミレのキャディーを任されたようである。
「トゥーイ君、立派にキャディーやってるわね!」
「そうだね。小さい体ながら頑張ってるみたいだ」
「このパットを沈めればイーグル!そうなりゃスミレさんの優勝確実だぜ!」
「あぁ!」
そして、いよいよスミレがパターを手に慎重にパットを始めた。ボールはコロコロとグリーンを転がっていき…ホールへと吸い込まれていった。
イーグルパット成功である。
「「「「「やったあ!!!!!」」」」」
テレビの前にいたDキッズや古代博士が歓声を上げ、各々のやり方で喜びを表現したところ、またしても頭上から嫌な音が響いた。
見上げてみれば、古代博士がまた恐竜の骨ドライバーを天井に突き刺していたのだ。
しかも前回とはまた別のところであった。
「あぁ…またやっちゃった…。
リュウタぁ、頼む!一緒に母さんに謝ってくれないか…」
「知ーらないっ!」
古代博士の縋るような頼みをリュウタは一蹴し、リビングから素早く出ていく。それに続くオウガ達を古代博士はしばらく呆然と眺めていたが、我に返ると彼らを追いかけていった。
「ま、待ってくれ〜!リュウタ!みんなぁ〜!」
こうして誰もいなくなったリビングでは、抱き合って喜ぶスミレとトゥーイの様子がテレビに映し出されていたのだった…。
その頃 アジ島 ノーピスの研究室
「ノーピス。出力の限界はこのくらいかなぁ?」
「ふむ…見たところそのようだな」
ロトとノーピスの目の前にある円形のガラス装置の中では、カスモサウルスが体中から電撃を放っている。
しかしその電撃は、ガブやイナズマのような黄色ではなく毒々しい紫色であった。
そして、カスモサウルスの頭部と体の両側面には1枚ずつチップのようなものが貼り付けられている。
やがてカスモサウルスの体がカードに戻ると、装置の排出口から出てきた。
それをロトが拾い上げると、興奮した様子でノーピスに話しかけた。
「すごいや!ノーピス!まさかこんなにパワーが上がるなんて!」
「これが進化なんだよ、ロト。君と俺の働きかけによって、このカスモサウルスは更なる上のステージへ進むことができたんだ」
「これが…進化…!」
「それにしても…ディロフォサウルスの毒液を弱毒化したものに、恐竜の戦闘本能を刺激して力を引き出す効果があったとは驚いたな。
君にディロフォサウルスの毒液を渡したのは俺だが、よくそのメカニズムを解明できたものだ。
そして更には、あのパッチに電気信号を送ったタイミングで体内へ毒液を注入できるようにするとはな…。君には感心させられてばかりだよ」
「そうだろ?将来的にスーパーアクトコントローラーの改良版と組み合わせるなら、パワーセーブも必要だと判断したからね。
おまけにカスモサウルスの攻撃が毒を帯びるようにも設計したんだ!流石に相手を死に至らしめるほど強力なものはカスモサウルスの負担にもなるから使えないけど…10数分間の間継続的に相手にダメージを与えられるはずだよ!」
とは言え…とロトは一度言葉を切ってから続けた。
「でも…これはあくまで試作品。ちゃんとパワーアップできるかはこれからも実験を積み重ねていかないと…。
あいつら…『Sin-D』の連中を…追い出すために…」
「そのとおりだ、ロト。彼らがアクト団を利用していることに気づいているのは君と俺だけ。
その中でも戦う力を持っている君だけが、この状況を打開できるんだよ。
さあ…他のみんなに心配をかけるといけない。今日はもう帰りなさい」
「そうするよ。ありがとうノーピス。君のお陰でカスモサウルスの研究がどんどん進んでるよ!
また力を貸してよね!」
ロトはそう言うと、軽い足取りでエレベーターへと向かっていく。
そして、ノーピス1人になった研究室はしばらく静かだったのだが…しばらくすると、押し殺したような笑い声が聞こえてきた。
「おっと、もう出てきていいぞ」
「ククク…おや、もう大丈夫でしたか。ではお言葉に甘えて…」
ノーピスの言葉に応じて別室から出てきたのは、カロリディー、ジェイソン、イシドーラの3人だった。
どうやらロトがこの研究室にいた間、ずっとそこに隠れていたようである。
「ククク…見たかよあのガキの顔!傑作だったぜ!
まさかそのアクト団の内なる敵と通じてるヤツが目の前にいるとも知らずになぁ!」
「利益を最大限発揮するためならば、時には方便も必要だろう。騙される方が悪いのだよ…」
ロトを嘲笑っているジェイソンとイシドーラを置いておいて、早速ノーピスとカロリディーは話を進めていた。
「…では、議論の続きといこうか」
「ええ。勿論。では私共からの要望としては、この恐竜のメカニズムを貴方に解明してほしいのです」
そう言うと、カロリディーはインドミナス・レックスとインドラプトルのカードを差し出した。
「これは…あんたの部下が使っているとかいう奇怪な恐竜だな。
一体誰が作ったんだ?」
「私共の組織で抱えている遺伝子工学の研究者のようでしてね…雇い入れてまでレシピを聞き出そうとしているのですが、意地でも口を割らないのですよ。
神の真似事など、もうたくさんだとか訳の分からないことを言っておりましてね…」
「…なるほど。それでそのレシピを解析してほしいということなんだな?」
「ええ。勿論貴方にも損はない研究かと思われますよ?このハイブリッド技術を解明することができれば…キメラ恐竜やハイブリッド恐竜を新しく作り出すこともできるでしょう…」
「…なるほど。それは実に興味深い」
ノーピスはそう呟き、口角を鋭く上げたのだった…。
今回の恐竜解説!
「今回の担当は私!古代博士だ!
今回解説するのは、ジュラ紀の超竜『スーパーサウルス』!ディプロドクスやアルゼンチノサウルスに並ぶ世界最大級の恐竜だ!
名前の意味は「とても大きいトカゲ」。推定全長は30メートルを超し、最大の見積もりでは40メートルにもなるというこの恐竜にはピッタリの名前だな!
あくまで「推定」としているのは…この恐竜の化石が殆ど見つかっていないからなのだ。現在見つかっているのは、わずか2体分の化石、それも不完全で全体像が捉えにくいものばかりでな…。
分かっていることとしては、巨大な体格であったこと、そして骨には気嚢を持つなど軽量化を図っていたことくらいだ。
これから多くの化石が見つかっていくことを、待つしかないだろうな…」
ということで、今回はここまでです。
途中トゥーイ少年にかなり厳しい部分もありましたが、当時原作のこの話を見ていた時の苛立ちが文章に現れてしまった感じがしております。
もし不快に感じられた方がいらっしゃいましたら、本文を加筆・訂正することも視野に入れております。
それでは次回第20話『鍾乳洞の孤独な竜!針だるまにご用心!?』アメジストと技カードを交換したあの恐竜が登場します。明後日の更新をぜひお楽しみにお待ち下さい。