古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
どうぞ今回も、最後までお楽しみ下さい。
一方その頃、鉱山から撤退したDキッズと古代博士は車を停め、今後について話し合っていた。
「それにしても、あいつらはあんなところで何してたんだ?」
「だから、恐竜運動会の練習だよ。きっと」
「いや、やっぱり秘密基地作ってるんじゃないか?」
「でも、わざわざ鉱山を乗っ取ろうとしてたくらいですし、何か欲しい鉱物でもあるんじゃないでしょうか…?」
「うーむ…。どれもいまいちピンとこないな…。それに、あのトリケラトプスとステゴサウルスの融合体のような恐竜も気になることだし…。
どちらにせよ、奴らをこのままにしてはおけん。私達も調べてみよう!」
そして古代博士は車をUターンさせ、また鉱山の方へと向かったのであった…。
その頃、アクト団とジェイソンはサイカが掘り進んだ坑道を進んでいた。先頭を行くのは、アクトカウンターを携えたノラッティ〜である。
そして進む内に、彼らは分かれ道に差し掛かった。
「おい、道が分かれてんぞ。どっちに行くつもりなんだ?」
「ちょいとお待ちを…」
そう言うとノラッティ〜はアクトカウンターを地面から持ち上げ、右の道と左の道へ翳してみた。
すると、アクトカウンターは左の道へ向けた時に一際強く反応したのである。
「こっちザンス! もう目の前ザンスよぉ!」
「ほぉ~。あのジジイが作ったものとは思えねぇくらいハイテクじゃねぇか」
「ソーノイダ様は時々いいものを作るんスよねぇ…。
まあ殆ど失敗作ばかりなんスけど」
「そうなんだろうな。あの坑道の入り口でひしゃげた飛行船を見ればバカでも分かる」
「いやあれはただ燃料が少なかっただけで…」
「おいこらエド! 無駄話してないでさっさと行くよ!」
そして彼らは、坑道の更に奥深くへと入り込んでいくのであった…。
その頃、病院で診察を終えたマルムは、彼らが宿泊しているコテージへと帰ってきていた。帰ってきたリアス達を、コテージで待機していた亜紀が出迎える。
「病院なんて大袈裟なんだから〜…」
「でも大したことがなくて良かったわ。せっかく夏休みを利用してやって来たのに、怪我したら勿体ないものねぇ〜」
「それは確かにそうですね。でも…わたしがもう少し注意していたら、マルムちゃんも痛い思いをしなくて済んだのに…」
「ミサさんは気にすることないわ。マルムは元からそそっかしい子だから…」
「そんなこと…」
ミサに肩を貸してもらいながら、マルムがソファに腰を下ろしたところで、彼女のディノホルダーが鳴った。再び恐竜の出現を検知したのだ。
「…ちょっとリュウタ達と連絡取ってくるね。行こうパラパラ!」
リュウタ達と連絡を取ることを口実に、マルムはコテージを抜け出したのだった。
それから携帯電話を取り出してリュウタ、レックス、オウガに電話をかけるものの、3人の誰からも応答はなかった。
「おかしいなぁ…。繋がらない…」
彼らと連絡を取れず、マルムは困った表情を浮かべる。と、そこに誰かの雄叫びが聞こえてきた。見ると近くの川で釣りをしている男性がいるではないか。
釣り竿もかなりしなっているところを見ると、なかなかの大物らしい。
「何かしら? 行ってみよう、パラパラ!」
マルムとパラパラが近づいていくと、水面は一層激しく騒ぎ始め、大きな水飛沫と共に巨大な影が現れた。それは、先程アクト団によって呼び出されたフタバサウルスであった。
「いぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!?」
釣り人はフタバサウルスに驚き、釣り具も置いたままどこかへと駆け出していってしまう。
そしてマルムがそちらへと目を逸らした僅かな間に、フタバサウルスは姿を消していたのであった。
「今のって…フタバサウルス…?」
すると、突然パラパラがマルムのもとを離れ、陸地の方へと駆け出した。
「どうしたのパラパラ?」
『コォーーン!』
マルムが声を掛けるものの、パラパラは付いてこいと言わんばかりに鳴いては走っていくだけであった。
「あ、待って!」
マルムもパラパラを放っておくことはできず、片足を引きずりながら追いかけていくのであった。
パラパラもマルムが足を怪我していることを知っているのか、少し走っては振り返り、マルムが追いつきそうになったところでまた走るを繰り返していた。
「待ってったら〜…。まだ走れないわよ〜…」
そしてパラパラは、草が薙ぎ倒されたところで足を止めてマルムを仰ぎ見た。そこへマルムも近づいていくと、そこに先程のフタバサウルスがいたのである。
「やっぱりあなた、フタバサウルスね!…あら?」
その時、マルムはフタバサウルスが首の1箇所を丁寧に舐めていることに気がついた。そこを覗き込んでみると、首の1部が内出血を起こしているではないか。
先程サイカに尻尾のハンマーで殴られ、それで怪我を負っていたのである。
「あなた、怪我してるのね…。今治してあげる!」
そう言うとマルムはパラパラをカードに戻し、ディノホルダーにスキャンした。
「ディノスラッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス!」
キュオォォォン!!
パラパラが成体の姿で召喚されたのを確認したところで、マルムは続けて1枚の技カードを手に取り、ディノホルダーにスキャンした。
「『
技カードが読み込まれ、パラパラは口から草のブレスをフタバサウルスに向けて吐き出す。そしてブレスはフタバサウルスの体を包み込み、傷を瞬く間に治してしまった。
フタバサウルスはゆっくりと起き上がると再び川へ入っていき、これまでの分を取り戻すかのように泳ぎ回り始めた。時折マルムとパラパラの方を振り返り、優しげな瞳で見つめている。
マルムはそんなフタバサウルスに手を振り返し、ディノホルダーを操作してパラパラをチビ形態へと戻した。
「元気になったみたいね、フタバちゃん。
あっ、そうだ。もう一度リュウタ達に連絡してみようっと」
そこで自分の本来の目的を思い出したマルムは、再度リュウタ達へ連絡を入れるものの、やはり彼らからの応答はなかった。
「おかしいなぁ…。圏外になっちゃってるのかなぁ?」
そう呟きながら首を傾げるマルムを真似してか、フタバサウルスも同じように首を傾けていたのだった…。
マルムがリュウタ達と連絡を取ろうとしていたその時、ちょうど彼らは鉱山の中へ潜入していた。だからマルムの発信が届かなかったのである。
彼らは壁にかけられた電灯を頼りに暗い坑道の中を進んでいたのだが、その時前方からゴロゴロという音が聞こえてきた。
リュウタ達は素早く坑道の壁に沿うようにして身を隠した。
すると、彼らが進行方向にある分かれ道の片方からスピノが現れたのだ。相変わらずゴロゴロと大岩を転がしているようである。
「やっぱり大玉を転がしてる…」
「リュウタ…静かに…」
レックスがそう忠告したが、もう遅い。声に反応したスピノは、キョロキョロと辺りを見渡していた。
しかし、暗闇で目が利かないのは向こうも同じなはず。だから気の所為だと判断して通り過ぎてくれる…。
そうオウガやレックスは考えていた。
しかしそう甘くはなかった。スピノは存外にしつこかったのである。
スピノは岩を転がす手を止めると、頭を高く持ち上げ、深くゆっくりと辺りの匂いを嗅ぎ取り始めたのだ。そしてリュウタ達のいる方向へ目を向け…咆哮を上げた。
「ええっ!? やっべぇ!」
「まずい! 俺達の存在に気づいてる!」
「ここは私が食い止める! お前達は早く外へ逃げるんだ!」
リュウタ達がスピノにビビり散らかす中、勇敢にも古代博士は前へ進み出ると、カメレオン鞭をその手に構えた。そして勢いよく振り下ろしたのだが…鞭はすぐ側の電灯を叩き落とし、ただでさえ暗い坑道を真っ暗にしてしまった。
ここまでノーコンだといっそ清々しいくらいである。
「あっ、しまった…」
「父さん、無理しないで!」
「いいから急げ! 暗闇ならスピノサウルスの目も利かないはずだ!」
「わ、分かった!」
ようやくリュウタは決心したようで、オウガやレックスと共にもと来た道を戻っていく。
そして古代博士がスピノへと視線を戻すと、スピノは当惑したように周囲をキョロキョロと見渡しながらゆっくりと彼の方へ歩みを進めてきていた。
どうやら本当に暗闇の中で視界が確保できていないらしい。
「む…あれは…!」
その時、古代博士の視線が彼が先程叩き落とした電灯に向けられた。電灯は粉々になっていたものの、それと繋がれていたのであろうケーブルが、スパークを放っていたのである。
そこで彼は機転を効かせ、ケーブルを鞭で絡め取るとスピノの体へ接触させた。凄まじい電撃がスピノの体を包み込み、スピノの怒りと苦しみが入り混じった雄叫びが響く。
しかし、電撃は鞭を伝って古代博士の方にも流れてきてしまったのだ。たちまち彼の体も電撃に襲われ、感電してしまう。
「ギャーーーーーッ!」
しばらく彼はスピノと同じように電撃に悶えていたが、何とか鞭から手を離したことで難を逃れることができた。
成体スピノも苦しむほどの電撃を受けたというのに、彼は全身が黒くなっただけでそれ以外に支障はなさそうだ。とんでもなく頑丈な体である。
「ふぅ、びっくりした…」
そして目の前でいまだに電撃に苦しみ続ける続けるスピノを放置し、古代博士は先に逃がしたリュウタ達を追っていったのであった…。
その頃、マルムは近くに結わえ付けられていた手漕ぎボートに乗り、フタバサウルスとの交流を楽しんでいた。
「よしよし…。可愛いフタバちゃん!」
そう言ってマルムが手を差し出し、フタバサウルスの頭を撫でてやる。するとフタバサウルスも嬉しそうに目を細め、お返しなのか彼女にその頭を擦り寄せようとした。
しかし人間とフタバサウルスでは遥かに体格が違う上、力も歴然とした差があるものだ。フタバサウルスは勢い余って彼女をボートから突き落としてしまったのである。
「きゃあっ!?」
しかし水に落ちたはずの彼女の体はすぐに浮かび上がった。フタバサウルスが背中に乗せて助けてくれたのである。そしてフタバサウルスは彼女を背中に乗せたまま、水面を滑るように泳ぎ始めた。
これにはマルムも大興奮である。
「うわぁぁぁっ! すごいね、フタバちゃん!」
マルムからそう褒められたフタバサウルスは彼女に振り返り、嬉しそうに一声鳴いたのであった…。
一方、アクトメタル鉱石を探して坑道を彷徨うウサラパ達アクト団工作員とジェイソンは、突き当たりの部分で立ち止まっていた。アクトカウンターの反応によれば、すぐ目の前にアクトメタル鉱石が埋まっているようである。
「間違いないザンス! こいつがアクトメタルの鉱石ザンスよ!」
「あとはここの岩を丸ごと掘り出して持ち帰るだけだねぇ…」
「…なんか、今回怖いくらいスムーズに事が進んでるッスねぇ…?」
「まあ、てめぇらはいつも大ポカやらかしてばっかりらしいからな! 偶にはこのくらいあってもいいってのが天の思し召しなんだろうよ! グアッハッハッハ!」
「いつも大ポカやってる訳じゃないよーっ!
…って、それより早くこれを掘り出さないとね。おい! お前達! 今からここの壁を丸ごと掘り出すんだよ!」
ウサラパが背後に整列したアクトロイド達にそう命令すると、彼らは一斉に敬礼を返してきた。
その時、ふとジェイソンが何かに反応したように顔を上げた。
「…ん?」
「ジェイソン、どうしたんスか?」
「今、誰かは分からねぇが、坑道のどこかから人間の叫び声が聞こえたぞ」
「ミーには何も聞こえなかったザンスけど…。
ひょっとすると、残ってた作業員がスピノやサイカに驚いたんじゃないザンスか?」
「いや、人払いはおれ達が徹底してやったから、この坑道に人間は残ってないはずだ。
もしかしたらあのクソガキ共が戻ってきたのかもしれねぇ…」
そう呟くと、ジェイソンは坑道を引き返していってしまった。
「一体何を聞いたんスかねぇ?」
「あんなにギタギタにやられたガキンチョがまた戻ってくるなんて、ちょっと考えづらいザンスけど…」
「ほらお前達、何やってんだい? スピノとサイカはもうお役御免なんだから、さっさとカードに戻しちまいな!」
「「ヘイヘイホーッ!」」
ウサラパの指示を受けたエドとノラッティ〜はひとまずアクトホルダーを操作し、スピノとサイカを元のカードへと戻したのであった…。
その頃、マルムはまだフタバサウルスの背に乗って遊んでいたのだが、突如としてフタバサウルスの体は青い光に包まれて消えてしまった。
マルム1人だけがボートの上へと下ろされ、彼女は戸惑った様子で周囲を見渡している。
「フタバちゃーん! どこー?」
すると、ボートに1枚のカードが舞い落ちてきた。マルムが拾って確認すると、それはフタバサウルスのイラストが描かれた技カードだったのである。
「水の技カード…? もしかしてフタバちゃんって…。
取り敢えず、もう一度リュウタ達に連絡してみようかな…」
そこでマルムは三たびリュウタに電話をかけた。すると、今度は数度のコールの内に電話が通じたのである。
「あぁリュウタ! 今までどうしてたの? いくら電話かけても繋がらなかったから心配してたのよ?」
『え? そうなのか? 全然気づかなかったぜ…』
『多分鉱山の中にいたから、電波が通じなかったんじゃないのかな』
「オウガもそこにいるの? ってことはレックスや古代博士もそこにいるのね!」
『そりゃそうだけど…マルムこそ足は大丈夫なのか?』
「もうほぼ大丈夫よ! まあ、まだ走ることはできないけど…。そんなことより、皆にすごいニュースがあるの!」
鉱山 坑道入り口付近
ここでリュウタ達や古代博士は立ち止まり、マルムと通話していた。彼らが坑道入り口まで来たお陰で、ようやくマルムからの着信を受け取ることができたのである。
『アタシ、今までフタバサウルスと遊んでいたのよ!』
「フタバサウルスと…?」
『首に怪我をしててね、それをパラパラで治してあげたらアタシに懐いちゃったみたいなの!』
マルムのその言葉を聞いたリュウタが、レックスやオウガにもそのことを伝える。
「首に怪我か…。もしかしてあの時、サイカニアの尻尾の一撃を貰ったことで怪我をしたんじゃないか?」
「俺もレックスと同意見だよ。でも、肝心のフタバサウルスを呼び出したスピノはその場にいなかったのかな?」
「確かに…。マルム! そこにスピノは現れなかったのか?」
『ええ。スピノサウルスなんて見てないわよ?』
「ふ〜む…。となるとアクト団の連中は、あれからずっとスピノサウルスを出しっぱなしにしていたということになるな…。恐らく坑道でスピノが私達に襲いかかってきたことも、奴らは把握していない可能性が高いな…」
古代博士が顎に手を当ててそう考察する。全身感電して黒焦げであるが、頭脳に支障は出ていないようだ。
『でも、さっきからみんなどうしたの? なんかピリピリしてるように感じるんだけど…』
「ピリピリしてるって…そりゃそうだよ! エースはアクト団のスピノが呼び出したそいつにやられたんだから!」
『えーっ? ウソでしょ? そんな好戦的な子には見えなかったわよ?
それにアクト団って…まさかオバさん達がそこに来てるの?』
「そうなんだよ! あのオバさん達、また何か企んでるみたいなんだ!」
その頃 坑道内の別の場所
「キーーッ! またオバさんって言ったね!? しかも2・回・もーッ!」
「多分空耳だと思うッスよ…?」
「ジェイソンもウサラパ様も、空耳に惑わされすぎザンス…」
驚異の地獄耳でリュウタと電話先のマルムの「オバさん」呼びを聞き取り、発狂するウサラパだったが、当然それが聞こえないエドとノラッティ〜には空耳として受け流されてしまった。
その時、轟音と共に彼らの後ろにあった壁が球形となって掘り出された。外面はまるで某トレジャーハンターの映画によく出てくる、トラップの大岩のような見た目である。
そこへノラッティ〜がアクトカウンターを向け、大きく頷く。
「ウサラパ様! この岩石の中からアクトメタル鉱石の反応があるザンスよ!」
「…ん? じゃあもうこれで終わったのかい?」
「はいザンス! この鉱山からはもう他に反応はないザンスから…これだけで大丈夫ザンス!」
「これでもう帰れるんだね〜! それじゃあ技カードも回収できたことだし、さっさと帰るよ!
アクトロイド共! さっさとその岩を出口まで押していくんだよ!」
ウサラパの命令に、再びアクトロイド達は敬礼で答えたのであった…。
戻って坑道入り口付近では、リュウタがマルムとの通話を続けていた。
「それで、今その目的をオレ達で調べて止めさせようとしてるんだけど、あいつらのスピノとサイカに妨害されて…」
「それだけじゃないんだ。『Sin-D』のジェイソンもアクト団に同伴してたんだけど、あいつ…「ステゴケラトプス」とかいうトリケラとステゴのキメラ恐竜みたいなのを使ってきたんだ!
しかも異なる属性を1つに纏め上げたような攻撃を繰り出してきて…俺のアメジストも倒されちゃったんだ…」
『そうだったのね…。それなら、アタシとパラパラもそっちに行くわ! 走れないだけで足自体はもう大丈夫だし』
「ホントか? じゃあ、父さんに迎えに行ってもらうよ!」
『分かった! じゃあまた後でね!』
そこで通話は切れ、リュウタは古代博士の方を向き直った。
「ってことだから、父さん! マルムを迎えに行ってもらっていい?」
「うむ! 分かった! だが私がいない間、あまり危ないことはするんじゃないぞ!」
古代博士はそう言い残し、車の方へと走っていった。
そしてそれを見送っていたリュウタ達だったが、そんな彼らの背後から声が響いてきた。
「やっぱりいやがったなクソガキ共…。あれほど力の差を見せつけられたってのにまだ懲りてねぇのか」
その声の主へ彼らが振り返ると、そこにはジェイソンが立っていた。その顔には、不敵な笑みを浮かべている。
「ジェイソン…! いつからそこに…」
「お前らがお仲間さんと呑気に話し込んでる間にさ。
どうやらお前らの保護者はそっちの迎えに行っちまったらしいなぁ?」
その言葉にリュウタ達が外へ視線を戻すと、ちょうど古代博士の車が走り去っていくところだった。
そう。ジェイソンは古代博士が車で戻っていくと踏んで、彼らを見張っていたのである。
「これでお前らは逃げる手段を失ったってわけだ。
しかもお前らの恐竜は半分がほぼノックアウト状態…残り半分を倒せばおれ達の完全勝利ってわけよ!
さぁ、出てこい! ステゴケラ…」
ジェイソンは勝ち誇った様子でステゴケラトプスのカードを取り出し、アンバーに押し当てようとした…。
が、そこでオウガが咄嗟に声を上げた。
「待ってください。俺達はまだ肝心なことを聞いてませんよ」
「…ん? 肝心なこと…だと?」
ジェイソンは思わずその手を止め、オウガの言葉の真意を尋ねた。
それを見たオウガは、努めて冷静に言葉を続ける。
「さっきあなたは言ってましたよね。『ステゴケラトプスは、協力者に作ってもらった』って…。
その協力者って、一体誰のことなんですか?」
「お、おいオウガ…。いきなりどうしたんだよ…」
そう聞こうとしたリュウタの方を見て、オウガはそっとウインクした。どうやら古代博士が戻ってくるまで時間稼ぎをするつもりらしい。
そのことには気づかない様子で、ジェイソンは不敵な笑みを崩そうとしていない。
「クックック…どうやらお前らクソガキは守秘義務ってもんを知らないみてぇだなぁ…。
おいそれと協力者の情報をくれてやる訳がねぇだろ」
「それなら…質問を変えます。
以前あなた達が召喚してきた、インドミナス・レックスやインドラプトル…。あの恐竜達もキメラ恐竜だったはずです。彼らも、その協力者という方が作ったんですか?」
「…そんなことを聞いて、どうするつもりだ?」
「答えていただけないんですか? それとももしかすると…知らないとか…?」
「口のききかたに気をつけろよ、クソガキ。
今おれとお前らじゃ、おれの方が圧倒的に優位にあるってことを忘れんじゃねぇぞ」
そう言いつつも、ジェイソンはニヤリと口角を上げた。
「…まあいいだろう。冥土の土産に教えてやるよ。
あのインドミナス・レックスやインドラプトルは、おれ達や協力者が作ったんじゃない。初めからあの姿でカードになってたんだよ」
「初めから…? じゃあ何であの恐竜がキメラ恐竜だと…」
「その恐竜の生みの親だとかいう中国系アメリカ人の科学者がいるって情報をもとに見つけてな、そいつをとっ捕まえて吐かせたんだよ。あくまで名目は、保護のためだったがな。
だが、その上でいくら聞いても、結局そのレシピまでは吐かなくてな。なぁにが神の真似事はもうごめんだ、だよ…。ふざけやがって…。
だがそいつには、てめぇも会ったことがあるんじゃねぇのかぁ?」
その言葉に、オウガはハッとする。
そう、それは数ヶ月前…彼が以前住んでいた、北海道から三畳市に引っ越す直前のことであった。
数ヶ月前 北海道 札幌市
「王牙ー! お母さん達は家で不動産屋さんとお話してるから、そこで待ってなさーい!」
「うん、分かったよー」
この日、覇轟一家は住んでいた家を引き払い、三畳市の新しい家へ向かう最後の手続きをしていたのだ。そして両親が不動産屋に引き払いの手続きをしている間、オウガは家の前で1人座り、買ってもらったばかりの恐竜図鑑を読んでいた。
時折図鑑を傍らに置いて、メモ帳に新しく仕入れた情報を書き込んでいた…その時だった。
家の庭に1人の男が入ってきたのである。彼は中国系の顔立ちをしており、傍らに鞄を抱えて酷く怯えている様子だった。辺りを見渡し、ようやく一息つけた様子の彼は、訝しげな視線を向けるオウガに気が付き、カタコトの日本語で話しかけてきたのだ。
「スミマセン。スコシヤスンダラ、スグ、デテイキマスカラ…ドウカオヤゴサンニハ…」
「え…? あぁいや、大丈夫ですよ。俺も父さんや母さんに言うつもりはありませんから。
でもすぐ出てくると思いますから、おじさんも早い内に出ていった方がいいですよ」
「ソ、ソウデスカ…。アリガト、ゴザイマス」
そう言って小さく頭を下げた男は、オウガが恐竜図鑑を見ていることに初めて気がついた。
「ソレ…」
「あ、これですか? 恐竜図鑑ですよ。俺、恐竜が好きなんです」
「アナタ、キョウリュウ、スキ、ナンデスカ?」
「はい! 特にティラノサウルスが大好きなんです。
とにかくカッコよくて力強くて逞しくて…好きな理由はいくらでも出てくるくらいですよ!」
「…ソウ、ナンデスネ…」
「おじさんはどうなんですか? 恐竜は好きですか?」
「キョウリュウ…スキ…ワタシ、ワカリマセン…」
「分からない…? どういうことなんですか?」
そうオウガが問いかけたところで、どこからか何者かの怒号が聞こえてきた。それを耳にした男が身を震わせたところを見るに、男は今の怒号の主に追われているのだろう。
すると男は意を決した様子でオウガを見ると、彼に駆け寄って何かを握らせてきたのだ。
「え? あの…」
「コレ、モッテイッテ、クダサイ。アナタガモツ、フサワシイ、モノデス。
アナタ、ジュンスイニ、キョウリュウヲ、アイシテイマス。ワタシナドトハ、チガッテ…。
ドウカ、イツマデモ、ソノキモチ、ワスレナイデ…」
そう言い残すと、男は門から外に出てどこかへと走り去っていった。
その直後、玄関のドアが開くと、中からオウガの両親が出てくる。どうやら家の引き渡しが完了したようだ。
「お待たせ、王牙。それじゃあ行きましょうか」
「もうここには戻って来れないからな。ちゃんと忘れ物はないか確かめたかい?」
「…うん、大丈夫だよ」
オウガはそう返答し、両親の後に続いて車に乗り込んだ。そしてそっと手を開き、男が渡してきたものを見てみると…。
それは、彼の掌くらいの大きさの琥珀だったのだ。表面は綺麗に磨かれているのか光り輝いており、透明度も高い。そして、その表面にはティラノサウルスの骨格のエンブレムが刻まれていた。
(ティラノサウルスだ…! でも、どうしてあの人は俺にこれを渡してきたんだろう…)
最後までその疑問は解決しないままだったが、オウガはその琥珀…後に「ジュラシック・アンバー【
「…あれぇ? Dr.ウーは一体どこに行ったんだな…?」
覇轟家の車が走り去ってしばらくした後、そこへ赤ら顔の巨漢がやって来て辺りを見渡していた。どうやらこの男が追っ手であったらしい。
しかしオウガは、中国系の男がDr.ウーであることと、彼を追っていたのがその赤ら顔の巨漢であることは知る由もなかったのであった…。
戻って現在 坑道出入り口付近
「…その顔だと、どうやら心当たりがあるみてぇだな?」
しばらく考え込んでいたオウガは、ジェイソンのその言葉で現実に引き戻された。
「あれからおれ達はずっとその科学者からレシピを聞き出そうと四苦八苦してたんだが、先日件の協力者が分析を進めてくれたお陰で、ハイブリッド化のメカニズムを解き明かすことができたって訳だ!
分かるか? こいつはとんでもないビジネスになるんだよ! 文字通り戦場の常識が変わる発明なんだ!」
「戦場って…まさかハイブリッド恐竜達を兵器として使うって言うのか! そんなの許されると思ってんのかよ!」
リュウタが猛抗議するも、ジェイソンはその笑みを崩すことはない。
「許されるか、だぁ? んなもん許されるに決まってんだろ!
世界を見てみろ。今日も世界のどこかでは戦争は起きてるんだ。それで徴兵された親や子供を失うのは、とてもとても悲しいことだろ?
その兵士をハイブリッド恐竜にやらせるとすればどうだ! 人間は恐竜に指示を出すだけ! そうなりゃ戦争で死ぬ兵士はいなくなる! 様々な国が喉から手が出るほど欲しがるはずだぜ!」
「そんなことして…! 世間が許すわけないだろ!」
「許すだと? 何を言ってやがる。あいつらは犬や猫、クジラなんかとは違う。ただのデカいトカゲだ。
トカゲを愛でる人間なんて世間じゃ少数派だろ?
そんな奴らが人間の代わりに戦場で戦い、死んでくれるんだ! そしておれ達『Sin-D』には莫大な富をもたらす! むしろ感謝されて然るべきだぜ!」
「あなた達…本当にどうしようもない連中ですね…!」
オウガが憤怒に満ちた表情を向けても、ジェイソンは鼻で笑うだけだった。
「ふん、何とでも言ってな。この発明で、おれ達が新世界の戦争秩序を作っていくんだからな。
…さて、おしゃべりはここまでだ。もう一度てめぇらを、ステゴケラトプスの前に跪かせてやるよ…」
咄嗟にオウガはリュウタを振り返るものの、彼は首を横に振る。まだ古代博士は到着できてないようだ。
ここまで来てしまったのなら、やるしかない…。
そう覚悟したオウガ達がディノラウザーやディノホルダーとカードを構えた時だった。
…ゴロゴロゴロゴロ…
「ん? なんだ?」
「何だ? 今の音…」
突如として坑道の中に、ゴロゴロと何か重いものが転がるような音が響き渡ったのだ。
その音は徐々に奥から近づいてきており…それと共に悲鳴のようなものも聞こえてきたのであった…。
今回はここまでです。
次回はいよいよアクト団やステゴケラトプスとの決戦になります。明後日の更新をお楽しみにお待ち下さい。
第26話の原作「恐竜遊園地で大儲け!」にあたるエピソードでマルムの第2のパートナー恐竜を登場させたいと考えております。つきましては、私が選出した候補からどれが相応しいか皆様からご意見を伺いたいのです。もしよろしければ、以下のうちから1つを選んでご回答下さい。
-
ランベオサウルス
-
エドモントサウルス
-
カロノサウルス
-
コリトサウルス
-
オウラノサウルス
-
ディプロドクス・ハロルム(小)