古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
夏休みで街を散策していたDキッズは、アクト団によく似た集団が銀行強盗を試みているところに遭遇し、ガブとレクシィでそれを阻止することに成功した。
しかし帰ってからリアスに検証してもらうと、彼らはアクト団のメンバーとよく似ているものの、本人ではなかったのだ。
そんな中、三畳市にほんの僅かな間恐竜が出現したかと思うと、その数時間後には欲望の街・ラスベガスに恐竜出現の通知があり、急ぎDキッズは現地へと赴く。すると現地のカジノでは、アクト団と彼らのそっくりさんであるゴウト団が強盗に入っていたのだ。
しかし彼らの恐竜は、賭けを邪魔されて怒り狂ったイシドーラの新恐竜・スピノラプトルに纏めて撃破され、そのスピノラプトルもオウガのレクシィとレックスのエースによる合体技『超熱風突撃』によって撃破された。
そして結局アクト団は金を諦めて下水道に逃げ込んだものの、ゴウト団は無事に現地警察に逮捕されたのであった…。
前編
三畳市 リュウタ宅
夏休みも中頃に差し掛かったこの日も、朝早くからオウガ達Dキッズはリュウタの家に集まっていた。
そんな中、リュウタの母である亜紀が懐かしそうに見ていたのは、なんと昔のアルバムだった。どうやら部屋の掃除をしていて見つけたものらしい。
それを目ざとく見つけたマルムが他のメンバーも呼び寄せ、今は一緒に鑑賞会をしているところのようだ。
「えーっ!? これがリュウター!? かーわいいーっ!」
恐竜を模した緑のベビーウェアに身を包んだリュウタの写真を見て、マルムが黄色い声を上げる。
「…それがいつからこんなのになっちゃったのかしら〜?」
そう言うマルムの視線の先には、1人だけその輪から外れてガブやイナズマの世話をするリュウタの姿があった。マルムからそんな言葉をかけられた彼は、どこかむくれているようにも見える。
「こんなのって言うな! 母さんもそんなの見せるなよな!」
「あら、照れてるの?」
「そんなんじゃねぇよ…。レックス、オウガ。オレ達は庭で遊ぼうぜ」
「あ、あぁ」
「別にいいけど…どうしたのさ急に」
それにレックスとオウガ、そして彼らのパートナー恐竜達が続いていったが、マルムは亜紀と共に部屋に留まってアルバム鑑賞を楽しんでいた。
「あっ! これっておじさんとおばさん?」
アルバムをめくっているうちに出てきた1枚の写真を指さし、マルムがそう聞く。写真には大きな観覧車を背景に若かりし頃の古代博士と亜紀の姿が写り込んでいた。
「ええ、そうよ。ここはね、思い出の遊園地なの…」
そして亜紀は、この遊園地に行った時の思い出をマルムに話し始めたのだった…。
その様子を、リュウタは複雑な表情で眺めていた。そんな彼のところへ、オウガが近づいていく。
「リュウタ、どうしたのさ。随分亜紀おばさんやマルムを気にしてるみたいだけど…」
「まあ、そりゃ…。母さんがまたマルムに余計なこと言ってないかどうか心配でさ」
「そうなんだね。まあでも…おばさんにも悪気はないと思うよ」
「何でそう思うんだよ?」
「きっとおばさんはリュウタの成長を純粋に喜んでるはずだよ。だって自分がここまで育ててきた子供なんだし、その成長を振り返って嬉しくない訳ないはずだよ」
「それには僕も同感だな。僕もパパから昔の話を聞くたびに、大事にされてきたんだなって実感するし」
そこへレックスもまじってくると、リュウタはますますバツの悪そうな顔になる。
「それは…オレだって分かってるけどさ…けど、やっぱり照れくさいじゃん。オウガやレックスみたいな男友達相手ならともかく、マルムは…」
そう言ってリュウタはリビングのマルムに目を向けると、彼女は亜紀から何かを聞いて顔を紅潮させていた。
「えっ!? プロポーズ…!?」
「そう。この遊園地で、あの人にプロポーズしてもらったの…。あ、リュウタ達にはナイショね。女同士のヒミツ♪」
「う、うん!」
なんと、先程のツーショット写真はプロポーズの直後に撮ったものであったらしい。その頃を思い出しながらマルムに話す亜紀の姿は、どこか恍惚としているようにも見えた。
その言葉に頷きながらも、マルムは意外そうな様子で口を開いた。
「でもちょー意外! あの博士がそんなロマンチックなことするなんて…」
「フフ…そう思うわよね。あの人って恐竜のために生きてるような人だもの。そんなところが好きになったんだけど…。
でも、その結婚記念日が今日だってことも忘れてるみたいなの」
「ええっ!?」
亜紀が惚気けながらも発した言葉に、マルムは敏感に反応する。男にとっては必ずしもそうではないのかもしれないが、マルムを含め女性にとって、記念日を忘れることは十分大罪になり得るのである。
その頃 Dラボ
「はぁーっくしょい! う〜…何だか寒気がしてきたなぁ…」
「博士、まさか風邪ですか? もしそうなら、私やミサさんに移す前に帰った方がいいですよ」
「いやいや、そうはいかん! 何せ今日は…リュウタ達Dキッズのディノホルダーやディノラウザーのアップグレード作業の最中なのだからな!」
どうやら今はディノホルダーやディノラウザーのアップグレードをしている最中のようである。リアスはデスクに向かってひたすら溶接と回路接続の作業に没頭していた。
そんな中別のデスクで書き物をしていたミサが顔を上げた。どうやら彼女は全員分のマニュアルに今回のアップグレードの内容について書き足していたようだ。
「リアスさん! マニュアルへの追記終わりましたけど、何かお手伝いできますか?」
「そう、助かったわ。ありがとう。
じゃあ、そうね…。電子基板がもう少し必要そうだから、倉庫から持ってきてもらっていいかしら?」
「はい! 分かりました!」
ミサも元気に答え、倉庫へと駆け出していく。それを見送りながら、古代博士はまたリアスに話しかけた。
「それにしても、ミサ君も随分とここに慣れてきたようじゃないか。最初は何事にもオドオドしている様子だったというのに…人とは変わるものだな…」
「オウガ君が何かと彼女に世話を焼いてくれているみたいですからね。その分彼女が適応するのも早かったということでしょう。
しかし…博士は先程からどうしたんです? どこかソワソワしているようですけど…」
「ううむ。何かを忘れているような気がするんだが…それが何なのかも分からなくてな…何とももどかしい気分なんだよ…」
「私も大学でよくその気分になりましたよ。嫌な感覚ですよね…」
リアスはそう言うと、またデスクに向き直った。だが古代博士はその後も、忘れていることについて考え続けていたのだった…。
それから数日前 太平洋のどこかのアジ島
「お食事ですよーっ! さ、たんと召し上がれ」
タルボーンヌに呼ばれ、アクト団のメンバーは食卓の席に着いた。そして配膳された皿を見たメンバーは、全員目が点になった。何故なら皿には、小さなビスケットが1枚しか乗っていなかったからである。
「って…」
「言われても…」
「これだけザンスか?」
「遂に食料の備蓄が底を突きましたからね。もうこれだけしか出せません」
「カジノ強盗も失敗に終わったものねぇ…」
「これもみんな! ドクターの稼ぎが悪いからですよ!」
「面目ないぞい…」
タルボーンヌに叱られ、ソーノイダはしょんぼりとした様子でその身を縮こませた。今回ばかりは彼も責任を感じざるを得ないようである。
「それにしてもこれだけなんて…」
「ひもじいザンス…」
「こんなんじゃ、夜まで保たないッス…」
ウサラパ達がそうブツブツと呟きながらビスケットをネズミのように少しずつ齧っていると、タルボーンヌが彼らの前に農業用具と種の袋を投げ出した。
「文句があるなら、自分達で調達なさい! ほら!」
しかし、農業用具を渡されたウサラパ達はピンと来ていないようである。当然かもしれないが、ろくに使い方もわからないようだ。
そしてタルボーンヌは今度はロトとロアにも向き直り、ウサラパ達を指さしながらこう口にする。
「あなた達も、こんな大人にならないようにしっかりと勉強に取り組みなさい!」
「「はーい…」」
そう言ってロトとロアはビスケットを一口で食べてしまった。それからロトはさっさと席を立ってどこかへと歩いて行くが、ロアはじっとソーノイダの皿を見つめていた。どうやらソーノイダから貰えないかと思っているらしい。
しかし、そこまでしょげていたソーノイダもその視線には気付いたようで、素早くビスケットを口の中へと放り込んだ。この極限状態では、孫に優しくできるだけの余裕もないということである。
そして、その場には珍しくノーピスも来ていた。しかし彼は『Sin-D』から多額の報酬を受け取っている身である。そのため彼だけは食うのに困っていないはずなのだが、とにかく彼も同じ食卓に並んでいたのであった。
そして食事の後、ウサラパ達の姿はアジ島外周部にあった。どうやら先程タルボーンヌに渡された種を蒔くための畑を作っているらしい。
大変そうな作業ではあるが、ウサラパ達の表情はどこか爽やかであった。
「ふぅ〜…。こうして土に塗れて、額に汗して働くのって、なんか気持ちいいザンスねぇ」
「自然に感謝し糧を得る。美味しい野菜ができるといいッスねぇ…」
「そうだねぇ…。あとは収穫の時を楽しみに…って待てるかーいっ! その前にアタシ達が餓死しちまうよっ!」
「でもこれはラディッシュの種ッスよ?」
「そうザンス! ラディッシュは別名二十日大根とも言うザンスから、あと3週間もすれば美味しい野菜が…」
「その3週間をどうやって食いつなぐんだい! どっちみちアタシ達が餓死する方が先じゃないかぁ!」
「いや、その前にワシら、ティラノ達に食われてしまうかもしれんぞい」
「ドクター! いつの間に!?」
「それよりどういうことなんですの? 今のは…」
いつの間にやら畑のそばに座っていたソーノイダに気づいてウサラパ達は驚いたが、その後の彼の言葉で更に驚くこととなった。
「うむ。ワシらの食うものがないということは、当然ティラノ達の餌もないということぞい。もう丸1日、奴らは何も食べていないのだぞい…」
「ええ…マジで…?」
ソーノイダの言葉に、3人は震え上がる。このままこのアジ島は、ヌブラル島やソルナ島、アイビス島のような惨劇が繰り広げられる舞台となってしまうのだろうか…。
「働かざる者食うべからず…」
と、そこへノーピスがやって来た。
「ノーピス! なんじゃらほい?」
「ドクター。今の経済状況を改善するための手段を考えついたのでご報告に上がりました」
「なぬっ!? それは本当ぞいか?」
「ええ。ここは1つ、恐竜達を働かせるというのはいかがかと…」
「恐竜」
「達を」
「働かす…?」
「じゃとぉ? どういう意味ぞい! もっと詳しく聞かせんか!」
ソーノイダからそう呼びかけられたノーピスはニヤリと笑みを浮かべると、自分の考えた案について語り始めたのであった…。
時と場所は戻って三畳市 公園
あの後、オウガ達はマルムに引きずられるようにしてリュウタの家の近くにある公園へ来ていた。
そこで彼らは、古代博士が結婚記念日を忘れているらしいということを聞かされたのである。
「まったく、結婚記念日を忘れるなんて、パパさん信じられないな!」
「でしょお〜?」
「今日もDラボでディノホルダーやディノラウザーの改良を見届けてるあたり、本当は覚えてるけどサプライズで…って可能性もなさそうだよね」
「ま、父さんは恐竜のことしか頭にないからなぁ〜…」
Dキッズの面々からの評価は散々であった。些細なものならともかく、結婚記念日とは夫婦としての門出の日であり、それを忘れるのはあり得ないというのが共通認識のようだ。
「でね、思い出の遊園地に2人を連れて行って、おじさんに思い出してもらおうと思うんだけど…」
「遊園地?」
「思い出って?」
「何でそれが結婚記念日と関係あるの?」
「それは女同士のヒ・ミ・ツ♪」
「「「はぁ?」」」
遊園地に古代夫妻を連れて行く肝心の理由を聞けず、オウガ達は怪訝な表情を浮かべる。そんな彼らの前にマルムは1枚のパンフレットを差し出した。
「で、その遊園地がここ!
ずっと閉鎖中だったみたいなんだけど…なんと! キョウリュウランドとして今日リニューアルオープンしたんだって!」
「えっ!? キョウリュウランド!? 行きたい行きたい行きたいっ! 行きたーいっ!」
恐竜をテーマにした遊園地となると、リュウタの顔色も一変する。彼はマルムの手からパンフレットをひったくると、それを持ったまま狂喜乱舞し始めたのだった…。
「リュウタ、はしゃぎ過ぎだよ…」
「お前がはしゃいでどうするのさ…」
そんなリュウタを見て、オウガとレックスも呆れ顔になるのであった…。
その後 Dラボ
「行きたい行きたい行きたいっ! 行きたーいっ!」
その後、急ぎDラボに向かったDキッズが古代博士にその話をしたところ、彼はリュウタと全く同じ反応を示した。やはりこの親あってリュウタありといったところだろうか。
「リュウタと喜び方がそっくりだ…」
「やっぱり親子ね…」
「そうだ父さん! 母さんも一緒に来るってさ!」
「うむ、そうか! しかしお台場にキョウリュウランドとは…私としたことが全く気づかなかったな…」
どうやら古代博士は、「お台場」の「遊園地」というだけでは結婚記念日を思い出せなかったようだ。
それを見たマルムの表情は、ますます沈む。
「もっと他に思い出さなきゃいけないことがあるのに…」
「ホントに綺麗さっぱり忘れてるんだな。結婚記念日のこと…」
「この分だと現地に連れて行っても、気づいてくれるか分からなくなってきちゃったね…」
そのように呆れ半分なDキッズには気づく様子もなく、古代博士は作業中のリアスとミサに片手を挙げて告げた。
「じゃあリアス君! ミサ君! そういうことだからディノホルダーとディノラウザーはよろしくね!」
「えっ!? ちょっと博士…」
「いってきまーすっ!」
そう言い残し、古代博士はDキッズを連れて外へ出ていった。オウガは残された2人…特にミサが気になるのかしばらくその場に残っていたものの、古代博士に引きずられるようにして連れて行かれてしまったのであった。
「もう…何よ…私達だけ置いてけぼりなんて…」
「まあリアスさん。遊園地?っていうのがわたしには何かは分かりませんけど、もしディノラウザーやディノホルダーのアップグレードを早く終わらせることができれば、わたし達も皆さんと合流できるんじゃないでしょうか?」
「!それよ! ミサさん! 今すぐ作業を終わらせて、私達も遊園地に行くわよ!
ほら早く! あなたはこっちをやって!」
ミサの言葉に奮起したリアスは彼女にディノラウザーを押し付けると、早速デスクに向かいディノホルダーの修理を開始した。
「えっ…ええっ? でもわたし、どこをどうすればいいのか分からないんですけど…」
「今から今回のアップグレード計画のマニュアルを作ってあなたのパソコンに送るわ! それを参照しながら作業してちょうだい!」
そう言うなりリアスはとんでもない速度でタイピングを始め、ミサが座るデスクにマニュアルのデータを送りつけた。そしてまた自分の作業へと戻っていく。
「もう…リアスさんったらちょっと無茶振りが過ぎるかもね…」
マニュアルに目を通しながら作業を始めたミサは、そうボヤいたのであった…。
その後 お台場 キョウリュウランド
Dラボを出た後、古代博士は車を走らせ、道中亜紀を拾ってから全速力でお台場へと向かった。そして、無事キョウリュウランドへ入場することができたようである。
中は大勢の来場客でごった返しており、恐竜がモチーフになったアトラクションも多数設置されていた。
「すっげぇーっ! 人でいっぱいだー!」
「見ろよ! そこら中恐竜だらけだ!」
「すごいな…。この光景、ミ…他のみんなにも見せたかったなぁ…」
「それにしても、よく出来た恐竜ねぇ…。まるで本物みたい…」
「おっ、見ろ! あれはスーパーサウルスじゃないか!?」
古代博士が指さす先には、スーパーサウルスによって支えられているジェットコースターがあった。
「あっ! あっちにはプテラノドン!」
また、リュウタが指さす先には、プテラノドンの空中メリーゴーランドが…。
「フタバサウルスもいるぞ!」
レックスが指さした園内の湖には、フタバサウルスのような潜水艦が浮いている。きっと海底◯万マイルのようなアトラクションなのだろう。
「あれは…カルカロドントサウルスだ! 飛行塔を回す役割っていう設定なのかな?」
オウガの指さす先には飛行塔を回す2体のカルカロドントサウルスがいる。
「アハハハ! ランベオサウルスやマイアサウラのメリーランドがあるわ! 乗ってみたーい!」
そしてマルムが指さす先には、ランベオサウルスもいた。どうやらランベオサウルスやマイアサウラなどといった鳥脚類の恐竜の背中に乗った気分でメリーゴーランドを楽しめるらしい。
とにかく、恐竜尽くしの遊園地であることに間違いはなさそうだった。
「よーしっ! 私はあのスーパーコースターに乗るぞーっ!」
「あっ父さん! オレも乗りたーいっ!」
早速スーパーサウルスのジェットコースターへと駆け出していく古代博士を、リュウタも追いかけていく。すっかり今回のDキッズの目的を忘れてしまっているようだ。そしてそれに付いていく形で、ガブもイナズマも駆け出していった。
「何よ、リュウタったらおじさんと一緒になって盛り上がっちゃって! ただ遊びたいだけじゃない…」
「俺達がここに来たのは、ただ遊ぶだけじゃないはずなんだけどなぁ…」
そんなマルムやオウガの気持ちなど知る由もないのか、リュウタと古代博士が立ち止まったままの彼らに大声で呼びかけてきた。
「おーい! 早く来いよーっ!」
「スーパーサウルスに乗りたくないのかーっ!?」
「えっ…? だ、だって、今日はおじさんに結婚記念日を思い出してもらおうと思って…」
そう呟き、マルムは俯いた。どうやら遊びたい気持ちと本来の目的の間で心が揺れ動いているらしい。
そんな彼女の気持ちを察したのか、亜紀は彼女を見て優しく話しかけた。
「せっかく来たんだから、行ってくれば?」
「えっ?」
「マルムちゃんも遊びたいでしょ? それなら無理しちゃダメよ?」
「う…うん! でも、絶対おじさんに思い出させてみせるから! 待ってーっ!」
そう言い残してマルムもパラパラと一緒にリュウタ達に合流しに走り出していく。
「マルムまで…。もう、アトラクションは博士に思い出させてからでもいいだろうに…」
「おーい! オウガー! こっちにティラノサウルスのスケアリーハウスってのがあるぜー!
多分お化け屋敷の恐竜版みたいなやつだよー!」
「…えっ、本当!? どこどこ? どこーっ!?」
そんな真面目な事を言っていたオウガも、ティラノサウルスという言葉を聞くといても立ってもいられなくなってしまう。すぐさま彼はレクシィとアメジストを引き連れて走り去ってしまった。
そこで、亜紀は1人残ったレックスに話しかけた。
「レックス君はみんなと一緒に行かないの?」
「あっ、僕はいいです!」
「遠慮しないで、子供なんだから遊んできていいのよ?」
「いえ、そうではなくて…僕、ジェットコースターもお化け屋敷も苦手なんです…」
「ウフフ、そうだったのね。じゃあ、私達は他のに乗りましょうか?
それにしても、ここの遊園地ってこんなに広かったかしら…?」
「…ん? あれ? あの島の形、どこかで見たような…」
亜紀に倣って周囲を見渡して乗れるアトラクションを探していたレックスだったが、ふとすぐ近くの海に浮かんでいる島が目に入ってきた。
その独特な形に、いかにも恐竜時代らしいエキゾチックな植物達…どこかで見覚えがあったものの、レックスはすぐに思い出すことができなかったのであった…。
アジ島
「「ダーッハッハッハーッ!」」
「早くも入場者数が1万人を超えたザンス! いいペースザンスねぇ!」
「さっすがノーピス! 潰れた遊園地を乗っ取って恐竜ランドに変えるとは、よく考えおったぞい!」
そう、それはアクト団の基地・アジ島だったのである。今は園内に仕掛けた監視カメラから様子を確認しつつ、チケットの売上を確認していた。
どうやらノーピスの提案とは、今持っている恐竜カードを総動員して遊園地のキャストとして働かせ、ボロ儲けするというもののようだ。
ソーノイダから直々にお褒めの言葉を貰い、ノーピスは軽く口角を上げた。
「で? で? お幾らくらい儲かっちゃったのぉ〜?」
「えーっと…大人が1人3000円で子供は小学生未満なら500円、それ以上なら1500円ッスから…。
あっ、そう言えばタルボーンヌさんが売上金を全部持って買い出しに行ったから、帰ってから聞いてみるといいッスよ」
「はぁ〜っ♡ これでひもじい生活とはおさらばね〜っ!
今夜はステーキ? フカヒレ? それとも特上の握り寿司〜? いや〜ん、太っちゃう〜♪」
恍惚とした表情で今晩の献立を妄想するウサラパだったが、その一方でノーピスは何かに気付いた様子で手元のコンソールを弄っていた。
「やはりか…。ドクター。予測通り恐竜達の空腹が続き、血糖値が低下すると、制御装置の機能が著しく低下するようです」
「うむ。確かにそう言っておったのう…。しかし、予想よりも随分と早くないぞいか?」
ノーピスの読み通りであった。既に園内の各所でアトラクションの役割を担っていた恐竜達がコントロール下から解き放たれ始めていたのである。
「恐らく、予想以上の来場客数によってアトラクションの回転率が上がり、その分恐竜達が余計に疲弊してしまったことが要因と考えられます。このままの状況が続けば、やがて制御装置は機能停止に陥り、恐竜達は暴走するでしょう」
「うーーむ…そういうことか…。タルボーンヌさえ戻ってくれば、こやつらにたらふく飯を食わせてやれるんじゃが…もう暴走まで猶予はなさそうぞい…」
そこでソーノイダはウサラパ達いつもの3人組の方を向くと、彼らに指令を与えた。
「お前達! それまで恐竜達を何とか宥めるんじゃぞい!」
「えーっ!? アタシ達がぁーっ!?
あ〜ん、ステーキさん、お寿司さん、待っててねぇ〜…」
そして、空きっ腹を引きずりながらウサラパ達は園内へ出撃していったのであった…。
その頃、リュウタとマルム、古代博士の3人はスーパーサウルスのコースター「スーパーコースター」に乗っていた。オウガはティラノサウルスのスケアリーハウスを堪能した後で一緒に乗ると約束し、一時解散となったようである。
そしてコースターが登り坂に差し掛かったところでスピードが抑えられ、減速したところでふと古代博士は横を見た。するとそこには、どこか見覚えのある観覧車が立っていたのだ。
「ぬおっ!? 観覧…車…? デート…亜紀ちゃん…!」
その瞬間、彼の脳内に確かに存在した記憶が駆け巡る。ようやく彼は、今日が何の日かを思い出したのだ。
「あっ…あーーーーっ! リュウタ! 今日は何月何日だ!?」
「えーっ? 聞こえないよー?」
「今日は何日だって聞いてるんだーっ!」
「あーっ! 父さんやっと思い出したー!」
「やっぱり! 今日は…結婚記念日だーーっ!」
ちょうどコースターがループのところに差し掛かり、そこで古代博士は結婚記念日を忘れていた後悔と、亜紀への申し訳無さを込めて叫び声を張り上げたのであった…。
その頃、出撃したウサラパ達は、園内の恐竜達を宥めるために無い知恵を絞って策を考え、それを実行に移しているところだった。
今はダスプレトサウルスの前に、文字通り絵に描いた餅の看板を見せつけて宥めようとしている。
「ほらほら恐竜ちゃん♪ もう少ししたら餌がどっさり届くから、それまでこれで我慢してるんだよ〜」
「まさに絵に描いた餅ザンス…」
「ダスプレトサウルスは肉食恐竜ッスよ?」
「うるさいねぇ! アタシだってこんなことしたくないん…」
その時だった。彼らの頭の上から咀嚼音と共に木屑がパラパラと落ちてきたのである。恐る恐る彼らが上を見ると、空腹に耐えかねたダスプレトサウルスが看板を食いちぎっていたのだ。
「「「ん? あーーっ! いやぁぁぁ…」」」
恐怖に襲われたウサラパ達は背を向けて走り出した。しかし生き物は背を向けて逃げるものを追いかける習性があるものである。すぐさまダスプレトサウルスは自分の役割を投げ出し、ウサラパ達を追いかけていったのであった…。
その頃、スーパーコースターを降りた古代博士達3人はオウガと合流し、亜紀を探して回っていた。
「まずい…まずいぞ…。プレゼント何も用意していなかった…。
な、何か売ってないか?」
「それが変なんですよ、博士。俺もレクシィ達もお腹減ったから売店で食べ物を買おうとしたんですけど、どこに行っても食べ物が売ってなくて…」
「そうなの?」
「遊園地なのに食べ物がないってどういうことなんだ…?」
そんな会話をしていると、彼らの前を見覚えのある3人が横切っていく。それは、ウサラパ達アクト団工作員の3人であった。
「あっ! オバさん!」
「だぁ〜れがオバさんだってぇ〜?」
マルムのオバさん呼びに即座に応じるウサラパ。ここまではいつもの光景であったのだが、何かの咆哮が轟くと彼女はそちらへ目を向け、悲鳴を上げながらまた駆け出していった。
すると彼らの後を、ダスプレトサウルスが追いかけていくではないか。
「「「「えぇぇぇぇ!?」」」」
「あれは、ダスプレトサウルス!?」
「じゃあ、まさか…ここのアトラクションだと思ってた恐竜達って…」
「本物の恐竜だったんだ!」
その時、マルムの足元にいたパラパラが、突然走り出してしまったのだ。
「あっ! パラパラ! どこに行くの!?」
そしてマルムも、パラパラを追いかけてどこかへと行ってしまう。
「あっ! マルム! 待てよ! 恐竜が暴れてるのに危ないってー!」
リュウタが呼びかけたものの、既にマルムもパラパラもいなくなってしまっていたのだった…。
その頃、リアスの車はお台場を目指して一直線に走っているところだった。後部座席には、ディノホルダーとディノラウザーを抱えたミサが座っている。
どうやらアップグレードを終わらせることができたようだ。
「思ったより早く終わって良かったわ…。
ミサさん。そろそろキョウリュウランドに着く頃だから、電源を入れておいて貰えるかしら?」
「はい、分かりました」
そしてミサがその1つ…ディノラウザーの電源を付けると、すぐさまディノサーチが反応した。画面にはお台場周辺の地図と、そこにビッシリと赤い点滅が現れているではないか…。
「リアスさん! お台場に恐竜が出現してます!」
「何ですって!?」
「それもこれは…数十体は下らない数ですよ…。
オウガ君…それにみんなは大丈夫かしら…」
一方 お台場 アジ島
「まずい…非常にまずいぞい! 遂に恐竜達が暴走し始めてしまったぞい!」
「何とか制御装置を再起動させます! もうしばらくお時間を!」
そして、ノーピスは何かのレバーを引き出すとそれを摘み、上げたり下げたりし始めたのであった…。
その頃、パラパラを追ってきたマルムは、メリーゴーランドの近くにやって来ていた。そこでようやくパラパラに追いついたのである。
「もう、パラパラったらどうしたの? さっきダスプレトサウルスがいたから、無闇に出歩いちゃダメよ…って…」
その時、彼女の視線がパラパラの上の方へと移される。そこには、草を食んでいる大型の草食恐竜がいたのである。
全長は少なくとも10メートルはあろうかという巨躯に、頭には特徴的なトサカがある。
そう、その恐竜の名は…。
「あなたは…ランベオサウルス…?」
…プォォ…?
マルムに呼びかけられたランベオサウルスは彼女を見つめ返し、首を傾げるような仕草をしたのであった…。
今回はここまでです。
それでは、明後日更新予定の後編をお楽しみにお待ち下さい。