古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

69 / 94
今回は後編になります。
それでは、今回も最後までお楽しみ下さい。


後編

 リュウタ達がロトロア兄妹と相対するより少し前の頃、オウガはレクシィとアメジストに、彼の目についた限りでは最後の恐竜を鎮圧させるところに来ていた。

 レクシィが目の前のメトリアカントサウルスをねじ伏せたところで、すぐさまアメジストが走り寄って腹の制御パッチを払い除ける。するとメトリアカントサウルスはカードへと戻り、アクトロイドに回収されていった。

 

「よし…! これで俺の目に付く限りの恐竜は全部鎮めることができた! ありがとう! レクシィ! アメジスト!」

 

 オウガがそう礼を述べると、アメジストは嬉しそうに、レクシィは静かな笑みを浮かべながら唸り声で返した。

 

「お疲れ様、オウガ君にレクシィちゃんとアメジストちゃん。今回もお手柄だったわね」

 

「はい! まあ、できれば恐竜達のカードを保護したかったんですけど、あのロボット達の動きが早くて…」

 

「無理することはないわよ。それに…ほら!」

 

 そう言ってミサが指さす先では、バトルフィールドが解けて元の風景に戻っていっている。

 

「リュウタ達も恐竜を鎮めることができたみたいだ。これで安心ですね。それじゃあレクシィとアメジストをチビ形態に戻して…」

 

 それを見たオウガもディノラウザーを弄ってレクシィとアメジストを小さくしようとした時だった。

 何か巨大なものが降り立つ轟音と共に、周囲に再びバトルフィールドが展開されていったのである。

 

「そんな…バトルフィールドが再展開されていくわ…」

 

「…!ミサさん! ディノサーチに新しく恐竜の反応が2体現れました! 多分アクト団がリュウタ達のうち誰かと戦ってるんだと思います!」

 

「大変! それなら早く行きましょう!」

 

「勿論です! レクシィ! アメジスト! 俺に付いてきてくれ!」

 

 そしてオウガとミサが並んで走っていく後ろを、レクシィとアメジストがのしのしと付いていったのであった…。

 

 

「何だ…!? バトルフィールドが…!」

 

 その頃、一通り恐竜を鎮圧して仲間との合流を目指していたレックスも、バトルフィールドが再展開されていくところを目にしていた。

 更に、彼のディノホルダーも、新しい恐竜が現れたことを伝えていた。

 

「ここに来て新手か…! エース! アイン! 急ごう!」

 

 そして、レックスも反応のもとへ急いだのであった…。

 

 

 Dキッズが恐竜達の鎮圧にあたっている頃、古代夫妻はたまたま乗ることになったアトラクションを満喫していた。

 アトラクションの道中で次々に現れる、デフォルメされた恐竜達に、亜紀はご満悦であった。

 

「うふふっ、可愛い〜♡」

 

「おおお…これは〜…」

 

 照れつつも寄り添い合う2人は、まるで若い頃に…恋人同士だった頃に戻ったかのようであった…。

 

 

 しかしその頃、リュウタとマルムの恐竜達は、ロトロア兄妹の操るカスモサウルスとティラノに想定外の苦戦を強いられていた。いつも恐竜に任せきりだったり、トンチンカンな指示を与えるウサラパ達ではなく、的確な指示を受けるカスモサウルスとティラノはかなりの強敵となっていたのである。

 状況を打開するため、リュウタはディノホルダーに新設されたボタンで2枚の技カードを選び取ると、それをディノホルダーにスキャンした。

 

「うおおお! 『激力雷電(ギガライディーン)』!」

 

 するとガブの体を黄色い光と電撃が渦巻き始め、2本の大角の間にその電撃が収束していく。そしてガブは1筋の電撃をティラノに向けて放ったのだ。

 普段ならこれでノックアウトに追い込むことがでにるのだが、相手はロアである。彼女はすぐさま技カードをアクトホルダーに通した。

 

「それならこっちはこれよ〜! 『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』!」

 

 今度はティラノの体が赤い光と炎に包まれ、口に炎を溜め込み始める。そしてティラノが吐き出した炎とガブの電撃がぶつかり合って相殺され、大爆発を起こした。

 

「どうお? いつものウサラパ達とは比べ物にならないでしょ〜?」

 

「まだだ! それならこれだ! 『雷錨牽引(プラズマアンカー)』!」

 

 すると煙を突き破って電撃が伸び、ティラノの体をガッチリと捕まえたではないか。煙が晴れると、その電撃を投げつけてきたのがイナズマだとロアは気づいたのである。

 

「ティラノちゃん! パワーでスティラコサウルスに負けちゃダメよ!」

 

「イナズマ! 頑張れーっ!」

 

 こうして、イナズマとティラノによる綱引きが始まったのであった…。

 

 一方マルムのパラパラとランベオサウルスは、カスモサウルスの苛烈な攻めに苦しめられていた。2体がかりだというのに、カスモサウルス1体に競り負けているからである。

 その状況を満足そうに見ていたロトが、アクトホルダーを持ち直すと静かに口を開いた。

 

「折角だし、君の恐竜達にはボクのカスモサウルスが到達した、究極の進化を見せてあげるよ」

 

「究極の…進化? どういうことなの?」

 

 ロトはその質問に答えなかった。

 いや、答えなくてもすぐに分かると確信していたのかもしれない。彼は不敵な笑みを湛えたまま、画面に表示されたアクトマークを指でタップした。

 

「こういうことさ! 『(スーパー)アクトフュージョン』!」

 

 すると、カスモサウルスの体を激しい電撃が包み込んだ。その規模は凄まじく、少し離れた場所にいたオウガやミサ、レックスにも見えるほどであった。

 そしてその電撃は黄色から紫色に変化していき、やがてその中からカスモサウルスが姿を現す。

 しかしその姿は、鮮やかな緑色ではなく、毒々しい紫色に染まっていたのである…。

 

「な…何よこれ…。これじゃあまるで…」

 

「思い出したかい? 君らが以前戦った『(スーパー)アクトアクロカントサウルス』…。お爺ちゃんがそれに使ったスーパーアクトコントローラーをボクが改良して、より負荷が少なく、より高いパフォーマンスを発揮できるようにしたのさ。

もっとも、この姿での活動時間はあまり長く取れないけど…それでも君達を叩きのめすには十分だね!」

 

ゴオォォグオォォォッ!!

 

 ロトの言葉を肯定するかのようにカスモサウルスが雄叫びを発する。その一方で、マルムは怒りに震えていた。

 

「許せない…! 恐竜を好き勝手に改造するなんて! あなた達に恐竜を思いやる心はないの!?」

 

「別にボクは恐竜を道具とは思ってないさ。むしろ恐竜の力は、ボク自身の力なんだ。

これも全部、お爺ちゃんを拐かしてアクト団に巣食う悪い奴らを追い出すため…。だからこの力が必要なんだ…!」

 

「だからって! あなたのエゴに恐竜を巻き込まないで! いくわよパラパラ! 『朋鋼翼撃(メタルウィング)』!」

 

 マルムがディノホルダーに技カードをスキャンすると、パラパラが緑色の光と草吹雪に包まれる。そしてプテラノドン達を呼ぼうとした…その時だった。

 

「おっと! その技はやらせないよ! 『閃光落雷(ブリッツカウンター)』!」

 

 ロトが素早く技カードをスキャンしたのだ。するとカスモサウルスは黄色の光と紫電に包まれながら2本脚で立ち上がり、天に向かって吼えた。すると天から落ちた1筋の雷が、パラパラを打ち据えたのである。

 強制的に技をキャンセルされた上超技も受けてしまったパラパラががくりと膝をつく。

 

「パラパラ!」

 

「これが『閃光落雷(ブリッツカウンター)』。ノーピスが開発した新技カードさ。相手が技を出そうとした直前に素早く雷を落とし、その技をキャンセルさせる。しかも技の発動で属性エネルギーは既に消費しているから、相手の恐竜を余計に消耗させられるって訳だね。

その引き換えとして本来威力はあまり高くないんだけど…今それを使ったのはボクの超アクトカスモサウルス。なかなかの威力になってるだろ?」

 

 ロトの説明に嘘はないようだ。何故ならパラパラがまだ痺れて立ち上がれていないからである。

 それを確認したロトはもう1枚の技カードを取り出し、アクトホルダーに通す。

 

「さあて、本気でも出そうか! 『瞬雷千烈(ガトリングスパーク)』!」

 

 再びカスモサウルスの体を、黄色い光と紫電が包み込む。そしてカスモサウルスはパラパラに素早く走り寄ると、角でパラパラを薙ぎ払って腹を向けさせた。

 そこへ降り注いできた雷をカスモサウルスはその身に受け、目にも止まらぬ百裂拳…ならぬ千烈突きを披露したのである。

 ただ無抵抗なままその連続突きを受けたパラパラは、その場にバタリと倒れてしまった。カスモサウルスが荒々しい雄叫びを上げる横で、パラパラの体が緑の光に包まれていた。力尽きてカードに戻ろうとしているのだ。

 

「そんな…パラパラーッ!」

 

 そうマルムが叫んだ時だった。

 

プオォォオォォ…

 

 突如としてランベオサウルスが嘶きを上げ、その体が緑色の光に包まれた。そして、口から金色に光る1枚の葉を吐き出したのである。

 その葉はひらひらと宙を舞いながらパラパラの体に触れたかと思うと、その体を包んでいた緑の光は収まり、再びパラパラが起き上がったのである!

 

「パラパラ…! でも、どうして…?」

 

 マルムがそう呟きながらランベオサウルスを見るものの、彼は優しく微笑むばかりであった。

 一方ロトは、予想外の展開に歯ぎしりをしていた。

 

「まさかあれは…『不滅一葉(エターナルリーフ)』…? 何であのランベオサウルスが持ってたんだ…?

いや、そんなこと気にしてる場合じゃない! もしあれが『不滅一葉(エターナルリーフ)』なら、パラサウロロフスは撃破を免れただけで残り体力は少ないはずだ! 今度こそとどめを刺せ! カスモサウルス!」

 

 ロトの声に応じ、カスモサウルスがパラパラへ突進していこうとする…が、その体は突然横へ吹き飛んだ。

 ガブとイナズマの『雷錨牽引(プラズマアンカー)』でかち上げられたティラノが、カスモサウルスを巻き込んでしまったのである。

 

「ロアッ! 何やってんだよ! パラサウロロフスを倒す絶好のチャンスだったのにっ!」

 

「だ、だって…トリケラトプスも同じ技を使って、2体がかりで引っ張られたんだもの…。ティラノでも堪えきれないじゃない…」

 

 凄まじい剣幕で怒声を浴びせるロトに、ロアが身をすくめながらもそう答える。しかし、状況は確実に彼らにとって悪い方に傾き始めていた。

 

「レクシィ! ガブ達を助けるんだ! 『狙大爆砕(クリティカルエクスプロード)』!」

 

 そこに突如現れたレクシィがティラノの首筋に食らいついて地面に引き倒し、口内に炎を溜め始めた。そしてその炎を炸裂させ、大爆発を引き起こしたのである。立ちこめる煙の中でティラノは赤い光を放ちながらカードに戻っていき、それを見届けたレクシィは、今度はカスモサウルスに視線を移した。

 そのレクシィの後ろには、オウガやミサ、アメジストにレックスの姿もある。遂にDキッズが全員合流したのであった。

 

「リュウタ! マルム! 助太刀に来たよ!」

 

「オウガ! それにレックスも! 来てくれたんだな!

…やい! ロト! これだけの数ならもう勝てないだろ!」

 

 リュウタの声に呼応するように、Dキッズの恐竜達がカスモサウルスを包囲していく。自分の手掛けた超アクトカスモサウルスが追い込まれている現実を受け入れられないのか、歪んだ表情を浮かべたロトが言い放った。

 

「バカにするなよ…! ボクが手掛けた超アクトカスモサウルスの力はこんなもんじゃない!

今度こそこの技で引導を渡してやる! 『瞬雷(ガトリング)』…」

 

 その時、ロトのアクトホルダーから警告音が鳴り、赤いランプが点滅し始めた。その瞬間ロトの表情が更に曇る。どうやら、超アクト形態での活動限界が近いらしい。

 そして、ロアがロトの服を引っ張ってある1点を指さしていた。しかも、どこか怯えた様子である。

 

「ね、ねえおにい様…」

 

「なんだよロア! 下らないことだったら怒るぞ!」

 

「あ…あれ…」

 

 そしてロトもそちらへ…遊園地の入退場口へ目を向け、目を見開いた。何故なら、そこにいたのは…。

 

「みなさーん! 食料が手に入りましたよ〜! お腹いっぱい、食べていいんですよぉ〜!」

 

 満面の笑みを浮かべながら自転車を漕ぐタルボーンヌだったのである。しかも後ろには食材を山のように積み上げたリヤカーが取り付けられていた。あれほどの重さを自転車1台で運ぶとは、やはり彼女は只者ではなさそうだ。

 しかし、ロトとロアに関してはそれどころではない。もし勉強もそこそこに抜け出したことが彼女にバレれば、ただでは済まないからだ。

 

「タルボーンヌさんよ! 早く戻らないとお勉強サボったのがバレちゃう!」

 

「…くっ、仕方ない! カスモサウルス! 戻れ!」

 

 やむなくといった表情でロトはカスモサウルスの超アクト化を解いた。元に戻った瞬間、カスモサウルスはガクリと膝をつく。体への負担は最低限にしてあるとはいうものの、やはり恐竜にかかる負担は決して小さくはないようだ。

 そしてそんなカスモサウルスをカードに戻すと、ロトとロアは素早くその場から走り去っていく。

 そんな2人を、植え込みに隠れたウサラパ達も見ていた。

 

「ちょっとちょっと…いつの間にあのカスモサウルス、アクロカントサウルスみたいになっちゃったんだい?」

 

「制限時間付きにしてスーパーアクトボールが壊れないようにしたんザンスかねぇ…」

 

「それよりウサラパ様。タルボーンヌが帰ってきたんなら、おれ達も早くアジ島に戻った方がいいんじゃ…」

 

 エドの言葉に、ウサラパも思い出したかのように飛び上がった。

 

「そ、そうだよ! ほらお前達! モタモタしてないで早く帰るんだよぉ!」

 

「「ヘイヘイホー!」」

 

 というわけで植え込みから飛び出した3人だったが、そこをDキッズやミサ、リアスに目撃されたのである。

 

「あーっ! オバさん達そんなところに隠れてたのね!」

 

「キーッ! アンタ達いい加減にしなさいよーっ! 人を見ればオバさんオバさんってぇーっ!」

 

「急ぐザンスよウサラパ様!」

 

「早くしないとアジ島に乗り遅れるッス!」

 

 そしてエドとノラッティ〜の2人は、手足を振り回して喚き散らすウサラパを引きずりながら退散していったのであった…。

 

「あっ! 逃げてったわ!」

 

「毎度毎度のことだけど、逃げ足の速い奴らだな」

 

「まあ、でも良かったんじゃないかな。こうして俺達みんな無事だったし、マルムのお陰でランベオサウルスも保護できたし」

 

「へへーん! おととい来やがれー!」

 

 逃げていくアクト団の背中に煽り文句を投げつけたところで、Dキッズはそれぞれのディノホルダーやディノラウザーを操作し、パートナー恐竜達をチビ化させた。そしてマルムはランベオサウルスに歩み寄り、その頭を抱きしめた。

 

「ありがとう。ランベオちゃん。あなたのお陰でパラパラもやられずに済んだわ」

 

『コォーン…』

 

プオォォ…

 

 マルムとパラパラから感謝の言葉を受け取ったランベオサウルスは嬉しそうに一声鳴くと、2枚のカード…ランベオサウルス自身のカードと、『不滅一葉(エターナルリーフ)』の技カードだ…へと戻っていく。が、その直後、マルムのディノホルダーがぼんやりと発光し始めたのだ。

 

「あれ? お姉ちゃん、これって何なの?」

 

「さぁ…。こんな機能を付けた覚えはないんだけど…」

 

 だが、リュウタはその光に気付いたようで、マルムに言う。

 

「これって、イナズマの時と同じだ…! マルム! ランベオサウルスのカードを、スキャナーに通してみろよ!」

 

「え、ええ…。分かったわ」

 

 リュウタの言葉通り、マルムが恐る恐るランベオサウルスのカードをスキャンすると、カードは小さな緑色の光となってパラパラの隣に落ちる。

 そしてその光が止むと…そこにはチビ恐竜となったランベオサウルスの姿があったのである。

 

『ララ? ラララ〜ラッ!』

 

「キャーッ! ランベオちゃんもちっちゃくなっちゃった! かーわい〜い♡」

 

 そんな黄色い声を上げながら、マルムがランベオサウルスを抱きしめると、ランベオサウルスも嬉しそうに一声鳴いた。

 

「やっぱり、イナズマの時と同じでランベオサウルスもマルムの力になりたかったんだよ」

 

「僕とアインの時はそうじゃなかったけど…確かにリュウタとイナズマはそうやって仲間になったんだもんな」

 

「なんにせよ、これで俺達はみんなパートナー恐竜を2体ずつ持てるようになったってことみたいだね。

これからもアクト団やSin-Dとの戦いは続くだろうし、ランベオサウルスも一緒に、皆で頑張っていこう!」

 

「「「「おーっ!」」」」

 

「それじゃあこの子の名前はランランね!

パラパラとお揃いの名前よ! これからよろしくね!」

 

「なんかランベオサウルスってより、パンダみたいな名前だな…」

 

「何よリュウタ。文句あるの?」

 

「いっ、いやぁ…別に…」

 

『ラララ〜ラ♪』

 

 リュウタの反応はともかく、どうやらランベオサウルスはその名前を気に入ったようで、体を揺らしながら歌い始めた。

 

『クォ〜ン! クォ〜ン!』

 

 更にそこへパラパラも加わり、合唱のような形へと発展した。

 すると、そこへ古代夫妻が戻ってきた。どこか先程よりも距離が近いように見える。

 

「フフフッ♪ 怖かったけど、面白かったわ!」

 

「ハッハッハッハ…それは良かった」

 

 そして、そこで古代博士は一呼吸を起き、少し頬を赤く染めながらも亜紀に話しかけた。

 

「なあ、母さん…。最後に観覧車に乗らないか?」

 

「まあ…!」

 

 それを聞いた亜紀も頬を染め、嬉しそうに微笑む。その光景を見たDキッズやミサ、リアスも、互いに顔を見合わせて笑い合ったのであった…。

 

 

 一方、ウサラパを引きずりながらアジ島の停泊場所を目指していたエドとノラッティ〜だったが、当然ながらアジ島は既に出航してしまっていた。あまり離れてはいないものの、確実に泳いで追いつける距離ではない。

 

「あーっ! アジ島がおれ達を置いて行っちゃったッス!」

 

「何やってんだい! すぐ追いかけるんだよぉ!」

 

「追いかけるって言われても…そもそもこうなったのはウサラパ様のせいッスよぉ!?」

 

「何ですってぇーっ!? 全部アタシが悪いって言いたいのぉーっ!?」

 

「そりゃそうザンス…ん? ややっ? こぉんなところにお誂え向きにロケットがあるザンス!」

 

 その時、ノラッティ〜がロケットらしきものを発見してウサラパとエドを呼び寄せた。

 

「やりぃ〜! これはついてるねぇ〜!

早速これに乗って追いつくよぉ〜!」

 

「…あっ! ウサラパ様! ノラちゃん! それは…」

 

 しかし、何かに気付いたエドが2人を引き止めようとする。しかし2人は既にロケットの導火線にマッチで火をつけ、機体にしがみついて発射を待っていた。

 

「何やってんだい! 置いてくよ!」

 

「あ…あぁ…分かったッス…」

 

 そのロケットの正体に気がついた一方で、置いていかれたくないエドは、結局言い出せないままロケットにしがみついたのであった。

 やがてロケットは打ち上がり、空高く上昇していく。

 

「「イヤッホ〜〜ッ!」」

 

 ようやくこれでアジ島に帰り、美味しいご飯を食べられると胸を躍らせていたウサラパだったが、ふと横を見ると、ロケットの機体に書かれた文字が目に入ってきた。

 

「ん? なになに…『超特大ロケット…花火』…花火ぃっ!?」

 

「だからそう思ったんスけど…」

 

「「そう思ったなら言えよぉーっ/言えザンスぅ〜っ!」」

 

 だが、そんな口論をしている時間などなかった。ロケット花火が炸裂し、いくつもの花火玉と共にウサラパ達を宙に放りだしたのである。

 

「「「ズバズバ〜…」」」

 

 そして花火玉も次々に炸裂し、彼らは花火を至近距離で観覧することになってしまったのだった…。

 

 

 一方その頃、地上ではDキッズやミサ、リアスが夜空に咲く花火を見ているところだった。無論彼らは、その花火の只中でウサラパ達3人が酷い目に遭っていることは知るはずもない。

 

「綺麗〜…」

 

「本当、綺麗ね…。結局私は遊園地で遊べなかったけど、最後にこんな立派な花火が見れたなら、今日思い残すことは何も無いわ…」

 

「それにしても、ここで花火なんていいタイミングだなぁ…」

 

「でも、どうして花火なんか…アクト団が仕掛けていってたのかな?」

 

「まあまあ、そんなこと気にすんなって!

父さんに母さんも、うまくやってるかなぁ…?」

 

「うまくやってるさ!」

 

 そう言い、Dキッズは観覧車を見上げた。どうやら古代夫妻が観覧車に乗って間もなく、花火が炸裂したようである。

 そんな中、オウガは満面の笑みで花火を見上げるミサに話しかけた。

 

「ミサさん。ミサさんは花火って初めて見るんですか?」

 

「そうね…。わたしは記憶がないから前に見たかどうかまでは何とも言えないけれど…でも、オウガ君達と出会ってからは初めてよ。

花火って、こんなに綺麗なのね…」

 

 そう言葉を返すミサの頬はほんのりと赤く染まっていて、目はほのかに潤んでいる。その様子がオウガにはいつにも増して美しく見えたようで、その熱に浮かされるままにオウガはミサに向かって言葉を続けた。

 

「…もし、ミサさんさえ良ければなんですけど…三畳市で今週やる花火大会、一緒に行きませんか?」

 

「えっ…? 三畳市で、花火の大会っていうのがあるの?」

 

「そうみたいなんです。俺は今年引っ越してきたばかりだから詳しいところまでは知らないんですけど…市外からも結構多くの人が来るくらい有名みたいで…」

 

「そうなのね。わたしも気になるし、見てみたいわ。

でも、Dキッズのみんなで遊びに行くところに、わたしも付いていって大丈夫かしら?」

 

「あー、えっと…その…ですね…」

 

 何故か口ごもるオウガをミサが不思議そうに見つめていると、彼がようやく口を開いた。

 

「その…花火大会には、ミサさんと2人で行きたいんです…」

 

「…えっ?」

 

 途端にミサの顔が火照る。記憶がなくなっている彼女でも、オウガの言っていることの真意が分からない訳ではない。彼は、自分をデートに連れ出そうとしていると分かったのだ。

 しかし、こと人間関係となると少し臆病なのがオウガである。なかなか返答をくれないミサに、念押しのように言った。

 

「ああでも…ご迷惑でしたら断ってもらっても大丈夫ですから! 俺もちょっと雰囲気に乗っかっちゃった感じありますし…」

 

「それじゃあ、何日にしようか?」

 

「…えっ? ほ、本当ですか!?」

 

 今度はオウガが驚く番だった。思ってもみなかった反応を貰えたという様子である。

 

「記憶はないって言ったけど、一般常識まで分からない訳じゃないのよ? 勿論…オウガ君がデートのお誘いをしてくれてるってことも…」

 

 そう言いつつも、ミサはオウガと同じくらい赤面していた。彼女も照れていることは違いないらしい。

 

「…言っておくけど、勘違いはしないでね。

花火大会だから行くわけじゃないのよ。オウガ君と一緒に行きたいから、なんだから…」

 

 ミサそう言って恥ずかしそうに顔を伏せる。オウガもしばらくその横顔を眺めていたが、意を決したように口にした。

 

「…それじゃあ…明明後日の水曜日に、お迎えに行きます」

 

「…うん、分かったわ。準備して…待ってるわね」

 

 

 その頃、観覧車の中では、古代夫婦が向かい合って座っていた。観覧車の籠の外では花火が上がっているのだが、2人はお互いのことしか見えていない様子である。

 

「その…何だ、すまなかったな。結婚記念日、忘れてて…」

 

「フフフ、いいのよ。それより、こうして観覧車に乗ってると、あの時のことを思い出すわよね…」

 

「あ…あぁ、ハッハッハ…」

 

 亜紀から昔ここでプロポーズした時の話を持ち出され、古代博士は思わず笑ってしまった。

 そんな彼の脳裏には、あの時…博士号を取るため日夜勉強に明け暮れ、発掘現場ではオーエン博士について回る日々の中、この観覧車で彼女と交わした会話の内容が蘇ってきていた。

 

『大事なお話って?』

 

『あ、そのですね…えっと…は…白亜紀に生息していたマイアサウラはですね、巣を作って子供を育てていたんです。

マイアサウラという名前には、「よい母親」という意味が…あっ! いや、そんな話じゃなくて…あっ』

 

 この時、古代博士はハーモニカを持ち歩いていたようで、汗を拭おうとハンカチを取り出した時に一緒に取り出してしまったようだ。

 

『はっ、ハーモニカ吹きます!』

 

 そう言うと古代博士は気持ちを落ち着けるためかハーモニカを吹き始め、そして亜紀は静かにその演奏に耳を傾けてる。すると彼らの周りが中生代の風景になり、恐竜達に祝福されているような感覚に陥ったのである。

 そして一曲吹き終えたところで、古代博士は亜紀の手を取り、プロポーズした…という形だったようである。

 

 それを思い返していた古代博士の目の前に、亜紀が新品のハーモニカを差し出した。

 

「はい、プレゼント」

 

「あぁ…すまん、母さん…。母さんは、ずっと覚えていてくれてたんだな…。

それなのに私ときたら、プレゼントも用意しないで…」

 

「聞かせて?」

 

「えっ?」

 

「もう一度、あの曲を聞かせて。それが私へのプレゼント」

 

 どうやら、亜紀はプレゼントとしてあの時の音色をもう一度聞かせてほしいようである。そんな彼女の想いを汲み取ったのか、古代博士はハーモニカを構え、ゆっくりと演奏を始めた。亜紀もあの時と同じように、瞳を閉じてその音色に耳を傾ける…。

 

 すると、彼女の瞼の裏に、あの時と同じ中生代の風景が映る。しかし以前と違うのは、その風景の中にリュウタやレックス、マルム、オウガがいた点であった。しかもレックスはカルノタウルスとアロサウルス、マルムはパラサウロロフスとランベオサウルス、オウガはティラノサウルスとステゴサウルス、そしてリュウタはトリケラトプスとスティラコサウルスを連れているように見えたのである。

 更に遠くでは、オウガのそれとは違う赤いティラノサウルスに、スピノサウルスとサイカニア、そしてカスモサウルスの4体が何故かこちらをじっと見ていた。

 そして、2人を祝福するように雄叫びをあげる恐竜達と手を振る4人に、古代夫妻は手を振り返し、仲睦まじく寄り添いあったのであった…。

 

 

 ちなみに遊園地から家へ帰った後、何故かレックスはリュウタを家から連れ出し、更にオウガとマルムをDラボに呼び出すと、突如として宿泊会の開催を宣言したのだった。

 当然訳が分からず困惑する3人はレックスに尋ねるものの、「それがパパのアドバイスだから」というよく分からないことしか言わず、3人は更に困惑してしまった。

 その答えは、夜遅くになっても消えなかった古代家の明かりだけが知っていることだろう…。

 

 




 今回の恐竜解説!

「今回の担当は私! 古代博士だ!
今回解説する恐竜は、麗しき巨竜「ランベオサウルス」! 扇形と後ろに突き出した形の2種類のトサカが頭にあることで有名な鳥脚類の恐竜だな!
名前の意味は、「ラムのトカゲ」。発見者である、ローレンス・ラム氏の名字からその名前がつけられたのだ。
その全長は10〜15メートルにも及ぶとされていて、エドモントサウルスやシャントゥンゴサウルスと並ぶ鳥脚類最大級の体格の持ち主だったのだ!
また、その特徴的なトサカは中空になっていたようでな、パラサウロロフスなどの他のトサカを持つ鳥脚類と同様、これで嗅覚を鋭敏にする、ないしは音を増幅させて大きな嘶きを上げていたと考えられているぞ。しかしこの構造はかなり個体差が分かれていてな、扇形の部分しかなかったり、全体的に小さかったりと様々なのだ。そのため以前はこれが種の独自性に繋がるものと考えられていたのだが…今は性別や成長段階の違いということになっているようだな。
そうそう、本種は嘴の部分の幅がかなり狭くなっていてな、そのため他の草食恐竜と食べ分けをしていたのではないかという見立てもあるのだ。
それと、本種は皮膚の印象化石も見つかっていてな、それによると皮膚は部分的に多角形の突起を持ち、薄めの皮膚だったことが分かっているぞ!」


ということで、今回はここまでです。
今回のエピソードで、マルムに新しいパートナー恐竜であるランベオサウルスの『ランラン』が加わりました。これで拙作におけるDキッズのフルメンバーが揃った形になります。一方アクト団側の戦力増強は、『翼竜伝説編』以降になりますので、是非その時をお待ちいただければ…。
それでは次回第27話『臆病VS神経質!立ち上がれテリジノサウルス!』幼少期からのスパルタ教育の結果臆病になってしまった個体と、目が不自由なために近づくものを全て排除する神経質な個体がぶつかり合います。
果たして勝つのはどちらなのか…明後日の更新をお楽しみにお待ち下さい。

追記:設定集に『ランラン(ランベオサウルス)』と、草の超技『不滅一葉』の説明を追記しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。