古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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ここからはカンボジアへ向かったオウガの話になります。
このタイミングでここへ向かうことになるので、恐竜女神タルボーンヌの伝説は…なかったことになります…。


第2話B:謎の男と異形の恐竜!?揺るがせ!ステゴサウルス!
前編


少し時間は遡り…Dラボ

 

「よし、それじゃあ俺も早く行かないと…」

 

 レックスとマルムが出発したところを見届け、オウガもディノラウザーを操作しようとした時だった。

 

「! オウガ君! 待ってちょうだい!」

 

「ど、どうしたんですかリアスさん!」

 

「今もう1つ恐竜の反応が出たの! すぐあなたのディノラウザーにも反映されるはずだわ!」

 

 リアスの言葉に従いディノラウザーの画面を確認すると、確かにもう1つ、恐竜の反応が出ている。

 

「リアスさん、この場所って…」

 

「東南アジア地域のカンボジア王国…。そこに新たな恐竜の出現を確認したわ!

待ってて。今すぐリュウタ君達の誰か1人を呼び戻すから…」

 

「…いや、俺が1人で行きます!」

 

「ダメ! 危険よ!」

 

「俺のレクシィはまだ不安定ですし、もしかすればリュウタのガブ達に襲いかかる可能性もゼロじゃありません! そうなれば戦況は最悪の方向に転がりかねない…。

それなら…俺は1人の方がレクシィもある程度安定して戦えるかもしれません!」

 

 オウガの訴えに、リアスはしばらく悩んでから口を開いた。

 

「…分かったわ。オウガ君。でも必ずこれだけは約束して。

無茶はしないで、危険だと感じたらすぐに戻ってきなさい」

 

「分かりました! それじゃあ、カンボジアまで行ってきます!」

 

 その言葉と共にオウガはディノラウザーを操作した。

 その瞬間体が浮くような不思議な感覚に包まれ、彼は瞬間移動装置から姿を消したのだった。

 

 

ほぼ同時刻 アクト団基地 アジ島

 

「…ム? 何事じゃ?」

 

 研究室で引き続き技カードの開発をしていたソーノイダの耳に、何やらブザーのような音が聞こえてきた。モニターを見ると、そこにはもう1つ恐竜が出現したことを示すサインが灯っているではないか。

 

「おぉ! なんと! 1日に2体も恐竜を見つけられるとはなんたる僥倖! ラッキーじゃぞい!」

 

 早速ティラノを連れて出ていったウサラパ達にそのことを伝えようと通信を送る。

 しかし、待てど暮らせど彼らは応答しなかった。

 

「これは一体どうしたことじゃ! 何故奴らはワシの呼び出しに答えないのじゃ!」

 

「この前話してた子供と戦っててそれどころじゃないんじゃない?」

 

 側でその様子を見ていたロトがそう呟く。

 

「なっ、何じゃと!」

 

「いくらおじい様が恐竜の出現を知ってても、倒せる恐竜が出払ってるんじゃどうしようもないわよね〜」

 

 そう言ってロアがけらけらと笑う。

 ソーノイダは慌ててマイクを引っ掴むと、声の限りに叫び続けた。

 

「ウサラパ! エド! ノラッティ〜!

ガキ共のおもりはいい! エジプトで恐竜を確保したら早くカンボジアに向かわんか! そこに恐竜がもう1体出ておるんじゃ!

おいっ! 返事をせんかぁーーーーっ!!」

 

 

カンボジア王国 アンコール・ワット遺跡付近

 

 ディノラウザーの瞬間移動機能で、オウガはカンボジアのアンコール・ワットへと降り立った。

 

「ここがカンボジアか…。さて、まずは恐竜がどこに出現したのか情報を集めないと…」

 

 そう言いかけて一歩を踏み出した時だった。

 

「よう。もしかすると君もここに恐竜が出たという噂を聞いてやって来たのか?」

 

 突然後ろから話しかけられ、オウガはバッとそちらを振り向く。

 そこに立っていたのは、白人のアメリカ人だった。

 若そうな見た目の割に適度に引き締まった筋肉を持つ男で、服装は少し粗雑なようだ。

 いきなり恐竜について包み隠さず聞いてきたということもあり、警戒心を解かずにオウガは問い返す。

 

「…何故そう思ったんです?」

 

「君の服装やバッグを見れば分かるさ。いかにも恐竜…特にティラノサウルスが好きそうな見た目をしているじゃないか。

そんな君なら、ここに古の怪物が出たという噂を聞きつけてやって来たんだとしても違和感はない。

…まあ、それにしてもその年で保護者もいないのは不用心だと思わなくもないけどな」

 

 彼は飄々とした様子でそう答えた。

 見たところ嘘は言っていない…ように思える。

 だが、初対面の男を簡単に信じていいものだろうか。

 

「話によるとどうやらそいつは森の中に現れたらしい。よければオレが案内してやろうか?

旅は道連れ、とも言うだろう?」

 

「…結構です。もし古の怪物とやらが森の中にいるなら、俺1人で見つけに行きます」

 

 そう言い早足で離れようとしたオウガに、男は背中に声を投げかけた。

 

「ここあたりの森は深いし迷いやすい。それにもし猛獣に見つかったらどうするつもりなんだ?

君みたいな子供じゃあまりに危険だ。だがオレと来れば…少しは守ってやれるかもしれん」

 

 オウガはピタリと足を止めた。

 それは自分も分かっているつもりだった。ここらへんの森はまともに開発されておらず未だ手つかずである。そんな地帯に土地勘のない自分が足を踏み入れ、迷ってしまえばもう帰ることはできないだろう。

 それなら…まだこの男と一緒に行った方がいいのではないだろうか。

 そう思い直したオウガは再び男に向き合った。

 

「…すみません。それでは一緒に来てくれますか」

 

「勿論。オレはオーウェン・グレイディ。君の名前は?」

 

「…オウガ。覇轟 オウガです」

 

 こうしてオウガは、オーウェンと名乗る男と共に森の中へと入っていったのであった。

 しばらく両者の間に会話はなかったが、唐突にオーウェンが口を開く。

 

「そういえば…君はどうしてティラノサウルスが好きになったんだ? 何かきっかけがあったんだろ?」

 

 オーウェンの問いの真意はわからなかったが、取り敢えずオウガは正直に答えることにした。

 

「あなたはアメリカ人みたいなので知っているとは思いますが…アメリカのシカゴにあるフィールド自然史博物館ってご存知ですよね?」

 

「あぁ、勿論知っているとも」

 

「昔アメリカ旅行で両親と一緒にそこへ行ったんですが、その時ティラノサウルス・スーの復元骨格を初めて見たんです。

それが本当にカッコよくて、美しくて、自分の心を鷲掴みにされたような感覚に陥って…気づけばティラノサウルスの虜になっていたのを今でも覚えています。

それまでも恐竜は好きだったんですけど、ティラノサウルスで言うなら…大好きになったきっかけはそこでしたね」

 

 オウガが昔の思い出を語っているのを、オーウェンは黙って聞いていた。

 そして、ややあってから口を開く。

 

「いいじゃないか。彼ら恐竜に対してよく大きさだとか知名度に価値を見出すやつも多いが、君は彼らの美しさに魅せられたんだろう。

そんな経験をできた君は幸せ者だな」

 

「あなたは、どうなんですか? 好きな恐竜はいるんですか?」

 

 オウガがそう聞くと、男はしばらく考えてから言った。

 

「そうだな…。やはりオレが好きなのはヴェロキラプトルだな。

彼らはただ凶暴なだけの存在じゃない。気高く凛々しく美しく、そして何より、賢い連中なんだ…」

 

 オーウェンはまるで、昔を懐かしむかのように言っていた。

 

「…まるで、実際に見てきたかのような言い分ですね」

 

「さて、どうだろうな?」

 

「でも、ヴェロキラプトルですか。

俺も骨格標本を見たことはありますけど、どちらかと言うとかわいらしいという印象を受けましたね」

 

「あいつらをかわいらしいと感じるとはなかなか豪胆じゃないか。全長は5メートルくらいもあるのに」

 

「え? ヴェロキラプトルの全長は大きくても2メートルくらいのはずですよ?」

 

「ん??」

 

「え????」

 

 何故か急に話が噛み合わなくなった。

 もしかするとオーウェンはユタラプトルやデイノニクスをヴェロキラプトルだと思いこんでいるのだろうか。

 それならまだ納得はできるのだが…。

 

「…さて、その話は置いておくとして…。

そろそろ川沿いだ。怪物が目撃された場所だぞ。気をしっかり持ってついて来いよ」

 

 そう言ってオーウェンが指さす先からは、確かに小川のせせらぎに混じって低い声が聞こえてきた。

 

「伏せろ!」

 

 森が途切れようとしたところでオーウェンからそう声をかけられ、オウガは茂みに身を潜まされた。

 茂みからこっそり顔を出してみると、何故オーウェンがそう判断したのかを理解することができた。

 

 そこでは、1頭の恐竜が川で水を飲んでいたのだ。

 体の色は背中側が紫色で腹は灰色。

 尻尾の先には2対の鋭い棘…サゴマイザーが並び、背中には紫と青で綺麗に彩られた板状の構造が互い違いに列で並んでいる。

 そして大きな体格に見合わないとても小さな頭。

 

 この恐竜は、ステゴサウルス…!

 ジュラ紀後期に生息していた、剣竜類の最大種だ。

 

「住民の話通りステゴサウルスだが…姿が違うな…」

 

 オーウェンがそんなことをボソリと呟いた。

 姿が違うとは、どういうことだろうか…?

 

 そう聞こうとしたところ、ステゴサウルスが頭を上げ、低く唸り声をあげた。

 するとにわかに近くの茂みがガサガサと大きく揺れだし、そこから…もう1体のステゴサウルスが姿を現した。

 しかし、そちらはどこか姿が違う。先にいた個体よりも全体的にずんぐりとした体格で、体の色もずっと地味だった。

 もしかすると、ステゴサウルスは性別で姿が変わるのだろうか?

 

「いた…。あいつだ」

 

 今度は確信を持ったような口調でオーウェンが呟く。

 どうやら彼が探していたのはそっちのステゴサウルスだったらしい。

 いつアクト団が来るかも分からないし、できるなら早めに弱らせてカードに戻した方がいいだろう。

 しかしオウガは、目の前で穏やかに過ごしているステゴサウルスにいきなり恐竜を出して殴りかかることをよしとするほど無粋ではない。

 何とか彼らと信頼関係を構築できないだろうか。

 

「…オーウェンさん。草食恐竜の好む食べ物とか、何かご存知でないですか?」

 

「何故それをオレに聞くんだ?」

 

「何となく…知っていそうな感じがしたので…」

 

 俺がそう返すと、オーウェンはやれやれといった感じでかぶりを振った。

 

「オレはよく知らない。

だが…オレの彼女なら何か知っているかもしれないな」

 

 そう言うと、オーウェンは何やら連絡用の端末を取り出した。

 

 

オウガ達から少し離れた場所

 

 木陰にテントを張り、ジェイソンとイシドーラはじっとモニターを見つめていた。

 ジュラシック・アンバーの契約者であるオウガを誘き出すためにステゴサウルスを呼び出したのはいいものの、そこへもう1頭ステゴサウルスが現れたため近くで待ち伏せることができなくなってしまったのである。

 そこで今はドローンを飛ばし、遠くからステゴサウルス達を追跡しつつオウガが来るのを待っているのだ。

 ガリッと雑音が入ったかと思うと、モニターの映像も少し乱れる。

 

「畜生。モニターの調子がよくねぇ。

ろくにメンテナンスもせずに持ってきたのは間違いだったな」

 

 そうぼやきつつモニターをバシバシと叩くジェイソンを見て、イシドーラも汗を拭きながら彼へ言葉を投げかける。

 

「まさかこの森にもう1頭ステゴサウルスが潜んでいるとは思わなかったな。

しかしお前にしてはえらく慎重だな。標的の子供が来たことを確認すればさっさとステゴサウルスは始末しても良かっただろうに」

 

 イシドーラの言葉に、ジェイソンはわかってないなと言いつつかぶりを振る。

 

「バカ言え。おれ達があくまで人畜無害であることを演出するためにこんな回りくどいことをしてるんだ。

そんなことをしちまうとガキを警戒させちまう。

あくまでおれはいい大人。それでターゲットに取り入るのがおれの役目って訳よ。

まあ…あくまで向こうがおれを拒絶するってんなら…そん時は『実力行使』しかなくなるだろうがね」

 

「…よく言う。本当のところは早くその化け物に実戦経験を積ませたくて仕方ないくせに」

 

 イシドーラがそう呟くと、ジェイソンはにんまりと笑いながら手元のカードを見つめた。

 

「ククク…まあ断られることは織り込み済みよ。

こいつもそろそろ暴れ足りないだろうし、丁度いい頃合いってもんさ…」

 

 そう言いながら低く笑うジェイソンの視線の先には…白い異形の恐竜が描かれたカードがあった…。

 

 

 一方、オウガはオーウェンが彼女から教えてもらったという話を聞いていた。

 

「どうやらステゴサウルスは低木の食物繊維系や果実を好んで食べるらしい。だから…例えば木イチゴといったベリー類なんかがちょうどいいと思うぞ」

 

「なるほど…ありがとうございます!

それで…そういうのを持っていたりはしますかね…?」

 

「うーん…流石にそういうのは持っていないな…。

君は? そのバッグの中に何か入っていないか?」

 

 オーウェンから問いかけられてバッグを探してみると、ブルーベリージャムの瓶が入っていた。

 そういえばいつだかのキャンプの時に持っていってそのまま入れっぱなしにしていたやつかもしれない…。

 

「ブルーベリージャムならありますけど…大丈夫でしょうか?」

 

「やってみてもいいんじゃないか?

案外普通のブルーベリーより気に入るかもしれんぞ」

 

 オーウェンもそう言うものだから、オウガはブルーベリージャムでステゴサウルスを餌付けしてみることにした。

 彼が茂みから出てステゴサウルス達に近づいていくものの、彼らは少し顔を上げただけでこちらを意に介している様子は見えない。

 世間では頭が小さいから…だとか脳がクルミほどの大きさしかないから…と愚鈍なイメージを植え付けられがちなステゴサウルスであるが、こうして見ても彼らはとても穏やかで危害を及ぼしそうには見えない。

 しかし彼らの尾先に備わっている2対のサゴマイザーは、彼らが決して無害なだけの生物ではないことを知らしめるには十分な存在感を放っていた。

 そのため十分な距離を保った上で座り込み、ブルーベリージャムの蓋を開けた。

 キュポン、と音が鳴り、ステゴサウルス達がパッと顔をこちらへ向ける。

 その目つきからは少しばかりの警戒心が読み取れた。

 だがここで派手に動いては更にステゴサウルスの警戒心を深めてしまう。

 なるべく内心の動揺を悟られないように瓶を傾け、中のジャムを出してみる。

 じっとこちらを見ていたステゴサウルスのうち、紫色の個体が瓶の中身に興味を示したのかオウガに近寄ってくる。

 近寄ってきた方にジャムを見せてみると、少し匂いを嗅いでから…舌で舐め取ってきた。

 じっくりと味わってから飲み込んだ後、今度は口で一気に食べてしまった。どうやら気に入ったらしい。

 

「もっと欲しいのかい? いいよ」

 

 また瓶からジャムを出すと、もう片方も興味を抱いたらしく近寄ってきた。

 やがて2頭は夢中になってジャムを食べ始め、さらに紫の個体はオウガが気に入ったようで頭をオウガが擦り付け始めたのである。

 

「すごいな…。ステゴサウルスがこんなに人に懐く姿は見たことがない…」

 

 オーウェンが驚いた様子で近寄ってくる。

 ステゴサウルス達は彼の姿を見て少し警戒の色を滲ませるが、オウガが驚いた様子を見せないのですぐに警戒を解いた。

 

「…よし、これなら保護できそうだ。あとはカードに戻すことができれば…」

 

「カード…?

君もこの恐竜たちがカードに戻せることを知っているのか!?」

 

「…え? オーウェンさん、それはどういう…」

 

 オーウェンの口から出てきた予想外の言葉に、オウガが思わず反射的に質問をした時だった。

 

「やっと来てくれたようだな。

待ちわびたよ、【伝説(レジェンド)】の保持者くん」

 

声の方向へ目を向けると、そこには軍服姿の恰幅がよい男と、全身を高級メーカーのスーツで包んだ痩せ型の男が並び立っていた。

 

 




今回はここまでです。
ジェイソンとイシドーラの狙いとは…?
次回をご期待下さい。

第6話に登場させるJP・JW恐竜について考えています。以下の恐竜ならどれを登場させるのがよいか、または登場させてほしいか、是非皆様のお考えをお聞かせ下さい。

  • ディロフォサウルス
  • パラサウロロフス・ワルケリ
  • スティギモロク(お助け恐竜)
  • ディメトロドン(お助け恐竜)
  • メトリアカントサウルス
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