古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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 前回の恐竜キング!

 リュウタの母亜紀から昔のアルバムを見せてもらっていたマルムは、昔の古代夫妻の写真を目にする。それは古代博士がプロポーズした時の写真で、今日が結婚記念日だったのだが、古代博士はそのことを忘れてしまっていたのだ。
 何とか博士に思い出させようと、マルムはオウガ達Dキッズの仲間と協力し、古代夫妻を思い出の遊園地…のリニューアル版「キョウリュウランド」へと連れて行ったのだった。
 古代博士は子どものようにはしゃぐばかりであったものの、観覧車を見てようやく今日が結婚記念日であることを思い出した。
 何とか彼女に一言謝ろうと園内を探す博士とオウガ達は、アトラクションだと思っていた恐竜が動くところを目にする。ここはアクト団が資金調達のために作った遊園地だったのだ。
 途中パラパラを追ってマルムがはぐれてしまったものの、亜紀と合流した彼らは、イナズマの行動で恐竜から制御パッチを取り外せばカードに戻ることを知った。そこで古代夫妻を一度退避させ、オウガ達はパッチ剥がしを始めたのだが、あと半分というところでチビ恐竜達は疲れ切ってしまった。
 しかしそこへアップグレードが完了したディノラウザーやディノホルダーを持ったミサとリアスが現れ、更にはマルムとも合流して恐竜達を全て鎮圧することに成功する。
 だがそこでロトロア兄妹が現れ、カスモサウルスとティラノをけしかけて来る。リュウタとマルムは仲良くなったランベオサウルス『ランラン』と共に応戦するものの、いつもよりも洗練された命令や、超アクト恐竜となったカスモサウルスの猛攻に苦しめられる。
 それでもランランの『不滅一葉』によってパラパラはピンチを救われ、そしてオウガやレックスも合流したことで兄妹を退けることができたのだった。
 そして、観覧車に乗った古代夫妻を見守る中、夜空に咲く花火を見ながら、オウガはミサと初デートの約束を取り付けたのだが…?




第27話:臆病vs神経質!立ち上がれテリジノサウルス!
前編


 辺りに霧が立ち込める、何も無い白い場所。そんな中をソーノイダは彷徨い歩いていた。彼は、彼を呼ぶ声に導かれてひたすら歩き続けているのだ。

 

「この鳴き声は! ワシの赤ちゃん恐竜ちゃんぞーい! どこにいるんだぞーい!」

 

 ひたすら声の主に呼びかけながら、彼は深い霧の中を歩き続けていると…突然、彼の目の前から7色の光が差し込んできた。

 よく目を凝らすと、その光の中心には恐竜の赤ん坊がおり、そこから声が聞こえてくるではないか。

 

「おっ! 恐竜ちゃーん! 恐竜ちゃーん! ワシの恐竜ちゃーん!」

 

 必死にソーノイダはジャンプをしてその恐竜のもとへ手を伸ばすものの、明らかにジャンプの高さが足りず、手が届かない。

 それでも彼は必死にジャンプを続け、ようやく手が届きそうになったその時…。

 

「恐竜ちゃん…恐竜ちゃ…ぐへっ!」

 

 ベッドから落ちてしまった。どうやら今までの光景は夢だったようだ。

 

「あれは…紛れもなくテリジノサウルスぞい! 助けを呼んでおったのだぞい!」

 

 そう叫ぶと、ソーノイダは寝間着のまま部屋から飛び出した。普通の人間ならば、先程のことを夢だと断じてまた寝てしまうだろう。しかしソーノイダには、恐竜が彼に夢を通じて助けを求めてきたのだと思えてならなかったのだった。

 

 それから数分後、部屋中に蝋燭を灯してセッティングを終えたソーノイダは、世界地図に恐竜の化石を糸に結わえ付けたものを垂らしていた。

 

「ホネホネホネホネホネホネホネホネ〜…」

 

 これは、天才科学者Dr.ソーノイダの科学の風上にも置けないオカルト技・恐竜の骨占いPart2であった。

 やがて垂らされた恐竜の化石は日本の関東地方の上で動きを止めると、激しく震動し始めた。

 

「ホネホネホネホネッ! ここぞーいっ!」

 

 それで今回の出現場所を予知することができたようで、ソーノイダは叫ぶと、彼の横へ下りてきた糸を力の限り引っ張った。

 

「ウサラッ…バカッ!」

 

 すると、それぞれの個室で眠りについていたウサラパ達アクト団工作員の3人に、様々な災難が降りかかったのである。

 

「うわぁ~あ〜っ!?」

 

 ウサラパはベッドをバネで激しく揺さぶられ…。

 

「ぎゃっはっはっはっ!?」

 

 ノラッティ〜は突如現れた2本のマジックハンドにくすぐられ…。

 

「ハラホロヒレハレ…」

 

 エドは恐竜の足を模したプレス機で踏まれ…。

 このように様々な方法で叩き起こされた3人は、ソーノイダに彼の研究室まで呼びつけられたのであった…。

 

 そして、いつもの服に着替えて集合したものの寝ぼけ眼の3人に、ソーノイダは今回の指令について説明し始めた。

 

「今回のターゲットのテリジノちゃんは、ワシが卵から孵して育て上げたかわい〜いシークレット恐竜ぞい!」

 

「シークレットって…確か前にもパキケなんとかって…」

 

「パキケロナグルス…いや、パキケロヒレハラホレ…?」

 

「パキケファロサウルスぞいっ!

…ワシが言うのも何じゃが、ヤツは甘やかし過ぎて少々アホンダラに育ってしまったぞい…」

 

 バツが悪そうにそう言いながら、ソーノイダは以前のローマでの出来事を思い出す。あれほどパキケファロサウルスに自分の愛情を言い聞かせたものの、当のパキケファロサウルスには全くもって伝わっていなかった苦い記憶であった。

 

「その反省も踏まえて、テリジノちゃんはガンガン厳しく育てたんだぞい!

どこに出しても恥ずかしくない、立派な恐竜に育ってほしくて…」

 

 そしてソーノイダはかつてテリジノサウルスと過ごした日々を思い出す。どうやら様々なトレーニングに取り組んだようで、その中ではテリジノサウルスは辛さのあまり泣いているように見える場面も存在した。

 やはり恐竜を育てる上で力の入れ方を間違っているのではないだろうか。

 

「過酷な日々じゃったが…テリジノちゃんはよく頑張ってくれたぞい…!」

 

 ソーノイダは涙ながらにその頃の思い出を語っていたのだが、ウサラパ達からは相槌の代わりに寝息が返ってきた。そこで彼がウサラパ達に目を向けると、彼らは眠気に負けて寝てしまっていたのである。

 

「起きろーっ! はっ! ほっ! はっ!」

 

 すぐさまソーノイダは彼らに飛び蹴りを浴びせて叩き起こし、話を続けた。

 

「テリジノちゃんが助けを呼んでおるのだぞい! 身動きできずに苦しんでおるのだぞい!

一刻も早く助け出して…帰る、ぞいっ!」

 

 そしてソーノイダが片足を勢いよく振り下ろすと、突然ウサラパ達の足元に出撃シュートの大穴が現れ、3人はその中へ吸い込まれていった。

 

「うわあぁぁぁぁぁ…」

 

 やがて3人は今回の出撃マシンの運転席に落下し、尻を押さえて痛みに悶えていた。

 

「うわぁぁぁ…」

 

「ケツ割れた…」

 

「よいか! 光を探すのだぞい! 7色の光ぞい!」

 

「「「ヘイヘイホー…」」」

 

 最後にソーノイダが出撃シュートを覗き込んで3人に助言を与えるとシュートも閉じ、マシン後方のプロペラが回転を始める。どうやら今回のは小型飛行機のようだ。そして飛行機はアジ島から飛び立ち、目的地の日本へ一直線に向かっていったのであった…。

 

 

その頃 日本 東京都 六本木

 

 ウサラパ達がアジ島を飛び立った頃、六本木の一角で解体作業中のビルの内部にある1本の柱の一部が、7色に光り輝いていたのである。

 よく見ると、それは恐竜カードの一部のようだった。しかしその大半は、鉄筋コンクリートの中に埋まってしまっていたのである…。

 

 その頃、六本木の地下鉄の駅からは、見慣れた4人が駆け上がってきていた。それは、オウガ達Dキッズのメンバーであった。

 

「よーっし! 都会の化石探し、はっじめるぞ〜っ!」

 

 そう言って張り切るリュウタとは対照的に、後ろから付いてくるチビ恐竜達は都会の暑さにバテバテであった。珍しくレクシィもこの暑さに参っているようである。

 

「なんだなんだ、これくらいの暑さで…。恐竜のクセにクーラーに慣れすぎちゃってるんじゃないの〜?」

 

「だけど、それにしたってちょっと暑すぎよ。

あっ! あそこがヒルズね! まずはあそこに行きましょうよ! きっと涼しいわよ!」

 

「そうかもな。化石もあるかもしれないし…行くぞ! ガブ! イナズマ!」

 

 ということで、4人と8匹はかの有名な六本木ヒルズを目指して歩き始めたのであった。

 

「いやー、それにしても夏休みももう終わりなんて信じられないよなー!」

 

「大体アクト団の連中とも顔を合わせる夏休みだったけどね…」

 

「でも、今年の夏は色んな経験ができて本当に楽しかったよ。

福島に化石発掘に行ったり、ラスベガスでゴウト団を取り押さえたり、恐竜遊園地に行ったり…ミサさんとの花火デートを邪魔されたり…」

 

 オウガはそんな事を呟きながら、つい数日前のことを思い出す。そう、それはミサをDラボまで迎えに行った時のことだった。

 ちなみにこの時、レクシィとアメジストは空気を読んだのか、珍しく自分からカードに戻ってディノラウザーの中に入っていた。

 

『ミサさん、お待たせしました!』

 

『フフフ、待ってたわよ。オウガ君。

どうかしら? この浴衣?っていう服。リアスさんにオウガ君と花火デートに行くって伝えたら、買いに連れて行ってくれたの』

 

 そう言って、ミサはその場でクルリと回ってみせた。彼女のリボンと同じ黄色い下地に水玉模様が入っており、実に可愛らしいものであった。

 

『は、はい! とてもよく、お似合いです!』

 

『良かった。わたしも頑張って選んだんだけど、似合ってるかどうかはちょっと自信なかったから…安心したわ』

 

 そう言って柔らかく微笑むミサに、オウガはまた見惚れてしまう。

 

『さてと、それじゃあ行きましょう?』

 

『そ、そうですね!』

 

 そして、それからオウガとミサはオウガの父帝牙が運転する車で、花火会場まで送ってもらったのであった。

 しかもどうやらオウガの気持ちはバレているようで、帝牙は車から降りた直後の彼に『頑張れよ』と囁いてから帰っていったのであった。

 走り去る父の車を、苦笑いを浮かべながら見送るオウガだったが、そんな彼にミサが興奮気味に話しかけてくる。

 

『うわぁ…! オウガ君、すごい人の数ね!』

 

『本当ですね…! やっぱり有名なだけはあるなぁ…!』

 

 2人の目の前には、大勢の人でごった返す花火会場があった。まだ花火が始まる時間ではないというのに、その人の量ときたら凄まじいものがある。

 

『それじゃあ俺が案内しますね! この日のために俺、色々調べてきたんです!

例えば出店してる夜店の内容とか、花火を綺麗に見られる場所とか…』

 

 オウガがメモ帳を開きながらそんなことを話していると、突然ミサが手を差し伸べてきた。

 

『え?』

 

『案内…してくれるんでしょ? その…男の子ならこういう時エスコートするものだって、リアスさんから聞いたんだけど…』

 

 ミサから思いがけないことを言われ、オウガは更に赤面してしまう。しかし、ミサも同じように頬を赤らめていることにも気づく。

 彼女もまた、恥ずかしさを堪えてこうしているのだ。それならば自分もそれに応えなければ、彼女に恥をかかせてしまいかねないだろう。

 そう考えたオウガは覚悟を決め、ミサの手を取った。

 

『じゃあ…俺がしっかりエスコートしますから、手は、その…離さないでもらえると…嬉しいです…』

 

 オウガから熱の籠もった真っ直ぐな視線を向けられ、ミサの頬は更に紅潮した。

 

『!あ…ありがとう…ね?

そ、それじゃあ時間も勿体ないし…行きましょうか?』

 

 ミサの言葉にオウガも頷き、緊張からかギクシャクした動きながらも歩き出した…その時だった。

 

「あれぇ〜? こんなところでオウガとミサさんに会うなんて! 偶然ってあるものなのねぇ〜!」

 

 聞き覚えのある声にオウガがギクリとして振り向くと、そこには浴衣姿のマルムがいた。その後ろからは、リュウタとレックスも駆け寄ってきている。

 

『あれ? でもおかしいわねぇ〜?

確か遊園地から帰ってきた後の宿泊会の時、アタシ達でオウガに花火大会の誘いを入れた時は…どうしても外せない用事があるから行けないーって言ってたのにぃ〜』

 

『ギクギクッ!!』

 

『ねぇ、オウガ。もしかしてだけど…Dキッズの仲間のアタシ達にウソついてたのぉ…?』

 

『え…えーっと…それは…』

 

 オウガの顔を冷や汗がダラダラと垂れる。顔色も先程までとは違い、青褪めていた。今はどうやって目の前の状況を打開するか、それだけしか考えることができなかったのである。

 だが、そこでミサが助け舟を出してくれた。

 

『マルムちゃん、違うのよ。オウガ君はウソをついた訳じゃないの。

その…花火大会のことを知らなかったわたしのために、ここへ連れて来てくれるって約束してくれてたのよ!

だから、マルムちゃん達の方には参加できなかったって感じで…』

 

『なぁ〜んだそうなんですかぁ〜! じゃあ折角だし、アタシ達もご一緒させてもらっていいですかぁ〜?』

 

『えっ? それは…まあ、いいけど…でも、オウガ君は…』

 

『大丈夫ですよ! なんたってオウガはアタシ達Dキッズの仲間ですから!

…いいわよ、ね?』

 

 そう言ってオウガの顔を覗き込んできたマルムの顔は、笑っていなかった。それを目の当たりにしたオウガは、力なく頷くしかなかったのである。

 

『決まりね! それじゃあミサさん! アタシここの屋台だと毎年行ってるところがあるの! 今からそこに案内するわね!』

 

 そう言うが早いかマルムはミサがオウガと繋いでいた手を振りほどくと、ミサの手を引いていってしまった。あまりの勢いに、ミサもオウガも反応できなかったようである。

 そして、呆然と立ち尽くすオウガの背中に、リュウタとレックスが慰めるようにポンと手を置いて励ましていた。

 結局オウガは、ミサと2人きりのつもりが、いつもの3人も加えて花火を見ることになってしまったようである。

 

「まさかバレてるとは思わなかったなぁ…。周囲へのアリバイ作りは完璧にやってたはずだったのに…」

 

「アタシ達を差し置いて、2人だけで花火デートなんて許される訳ないでしょ〜?」

 

「何度も言うようだけど…オウガ、ホントにごめんな。

こっそり後をつけるだけにするつもりだったんだけど、マルムが出て行っちゃってさ…」

 

「まさかマルムが、リアスさんとミサさんの買い物から尾行してたとは思わなかったけど…。

僕は正直、マルムが何でここまでするのか分からないよ」

 

 あの時のことを思い出してオウガはため息をつく。一方でリュウタとレックスは申し訳なさげに背中を丸めており、逆にマルムは得意げな様子であった。

 そんなオウガを見たレクシィが、ディノラウザーを通して嫌味を言ってくる。

 

『…フン、秘密を作ったところで、それを隠し通せることはできないものだ…。

私がこれまで見てきた、愚かなニンゲン共も同じよ。次こそはできる、上手くいく…。その反省もない姿勢こそが、ニンゲンのポジティブ思考とやらなのかもしれないな』

 

「レクシィまでそんなことを…。

ていうかレクシィはコスタリカ沖のヌブラル島で生まれ育ったんだろ? 何でそんなに暑そうなのさ」

 

『確かに私が長いこと住んでいた場所は、いつも暑い所だった。だが島の殆どは森だったから、そこで日光を避けることができていたのだ』

 

「そう言えば、そうだったなぁ…。だとすれば、日除けの少ない六本木の街がしんどく感じるのも当然なのかもしれないね…」

 

 そんなとりとめのない会話をしている内に、4人と8匹は目的地である六本木ヒルズに到着した。

 冷房がガンガンにきいた館内はとても涼しく、バテ気味だった彼らは一気に元気を取り戻したようだ。

 

「涼し〜い! 生き返るぜーっ!」

 

「はぁ〜…。外とはえらい違いだなぁ…」

 

「流石ヒルズね! 色んなショップがいっぱい…。

ねぇ! あそこでアイスクリーム食べない?」

 

「おっ! いいねぇ!」

 

「アイスか…。気分転換にはもってこいだね!」

 

 マルムが見つけたアイスクリームショップにリュウタとオウガも向かおうとしたが、そんな3人をレックスが引き止めた。

 

「おいおい…。宿題の自由研究はどうするんだよ? ちゃんと化石探ししないと、夏休みが終わっちゃうぞ?

大体これも今まで自由研究もやらずに遊んでたリュウタが、突然Dキッズで共同研究をやるとか言い出すから…」

 

「チェッ、分かってるってば…。じゃあ探そうぜ…」

 

 こうして、4人は六本木ヒルズの館内で化石探しを始めたのであった…。

 

 しばらく探していると、マルムが何かを見つけたようで、オウガ達3人を呼び寄せた。彼女が指さしている石製の柱には、何かの化石のようなものが認められたのである。

 

「あっ! これベレムナイトだわ! ちょっと小さいけど…」

 

「イカの仲間の化石だね。あっ! こっちにはアンモナイトが一部見えるよ!」

 

「本当だ。結構見つかるものなんだね」

 

 オウガも見つかった化石に感心しているようだが、リュウタは不満そうな表情を浮かべていた。

 

「でも、ちょっと物足りないなぁ…」

 

「やっぱりそうよねぇ…。このくらいなら、うちの近所の歯医者さんや、駅の壁にもあるし…」

 

「そう考えると、やっぱり三畳市って化石が豊富なところなんだね…」

 

「こうして遠征するとそれを実感するよなぁ…。

う~ん…。もっと古いビルじゃないとダメなのかなぁ?」

 

「それは多分関係ないだろ」

 

「そうね。建物の古い新しいは関係ないわよ。きっと探せば見つかるし、手分けして探しましょう!」

 

 マルムの言葉にオウガ達も頷くと、それぞれのチビ恐竜達を連れて4方向に分かれて探索を開始したのだが…。

 

『ガブッ! ガァブッ!』

 

『ゴロロローッ!』

 

「あぁっ! ガブ! イナズマ!」

 

 追いかけっこをして遊んでいたガブとイナズマがエスカレーターに連れ去られたり…。

 

『ギュアッ!?』

 

『ギャッス!?』

 

「エース! アイン! 何してるんだよ!」

 

 床を滑って遊んでいたエースとアインが自動ドアの向こうに閉じ込められてしまったり…。

 

『クゥ? クォーン!』

 

『ラララララ〜♪』

 

「パラパラ! ランラン! 待ってーっ!」

 

 子供向けの音楽を流しながら練り歩いていた風船売りにパラパラとランランが気を取られて駆け出してしまったり…。

 

『キューッ! キューッ!』

 

「ほら、アメジスト。次に行くよ? フルーツパフェなら、調査が終わった後に連れて来るからさ…」

 

『…どうしても今食べたいのだそうだ』

 

「そんなぁ…。頼むよアメジスト…。俺だって食べたい気持ちは分かるけどさ…」

 

 ブルーベリーパフェを食べたい一心で、アメジストがフルーツパーラーの前で座り込みを始めてしまったり…。

 このように、4人はチビ恐竜達に振り回され続けていたのである。

 

 そして、ようやく六本木ヒルズでの調査も一段落したところで、疲れた4人は噴水広場で座り込んでしまった。一方でチビ恐竜達は、喉の渇きを潤すために噴水に集まっていっている。

 

「なんかスッゲー疲れた〜…」

 

「おまけにまだこれといった化石も見つからないし…」

 

「これで六本木中探すってなったら、先に夏休みが終わっちゃうよ…」

 

「あっちのビルの方があるかもね〜…」

 

 そう言ってマルムは、ヒルズとは別の方向へ目を向けたのであった…。

 

 

 その頃、いよいよ解体作業が始まったビルの前を、ウサラパ達3人が通りかかっていた。

 

「ドクターが言ってた場所ってこの辺りだろぉ? 恐竜なんか影も形も、気配すらないじゃないかぁ…」

 

「7色の光なんて全然見えないッスよぉ…?」

 

「今回ばかりは、ドクターの占いも外れたみたいザンスねぇ」

 

「まったく…夢で見たか知らないけど、とんだ無駄足だったよ…。ん?」

 

 その時、ウサラパの視界に六本木ヒルズが入ってくる。それを見たウサラパは目を輝かせた。

 

「ねぇ、せっかくここまで来たんだから…あそこの展望台、登ってみようか!」

 

「あ〜、いいッスねぇ!」

 

「滅多にない機会だし、行ってみるザンス!」

 

 ということで六本木ヒルズ上層の展望台に行くことにした3人は、急ぎ足でヒルズの中へと入っていった。

 その直後、Dキッズの4人とチビ恐竜達が、先程の広場からエスカレーターで下ってきたのである。ここに来て両者はニアミスしていたのだが、互いに互いの存在に気づくことはなかったのであった。

 そしてDキッズは、アクト団とは反対方向へ…先程のビル解体現場の方へと向かっていったのだった。

 

「あっ、これは石灰岩だね。特徴的なオンコライトが見えるよ」

 

「あそこには…ほら! 二枚貝っぽいのが見えるわ!」

 

「あれは…魚の化石かな? シファクティヌスみたいな特徴的な顎をしてるね」

 

 六本木ヒルズの時とは打って変わり、今度は街の様々なところで化石を発見することができたようだ。

 これにはリュウタもニコニコである。

 

「調子いいぞ〜! このままもっと大物が見つかるといいな〜!」

 

「ホントね!」

 

 そして彼らは、遂にあのビル解体現場の前を通りかかったのである。しかし、彼らはそこにテリジノサウルスのカードがあるなど知るはずもないため、そのまま通り過ぎようとした。

 と、そこでマルムが足を止める。ビル内部の柱の1つから放たれる不自然な輝きに気づいたのである。

 

「…あれ?」

 

「どうしたぁ?」

 

「今、何か…見間違いかしら?」

 

 一度は足を止めたものの、マルムは気のせいだと思い直したようで、またオウガ達と共に散策を開始した。

 その時であった。雲の切れ目から太陽が顔を出し、一際日光が強まったのである。その日光は六本木ヒルズのガラスに反射し、ビルの解体現場へと光を投げかける…。するとビルの柱に埋まったカードが虹色の輝きを放ちながら実体化していく…。

 

「「「「うわぁぁぁっ!?」」」」

 

 そして轟音と共にビルが炸裂した。その音に驚いたDキッズの面々が後ろを振り向くと、工事現場から出てきたテリジノサウルスが目に入ってきた。しかもそのテリジノサウルスは、全身に虹色のオーラを纏っていたのである。

 

「あれは…!」

 

「テリジノサウルスだよ! あの鉤爪、間違いない!」

 

「確かに、間違いなさそうだね。

未だに爪と腕の一部しか見つかってないから、正確な姿は分かってなかったんだけど…本当にこんな姿だったんだ!」

 

「だけど、何であんなに光ってるの!?」

 

 その時、リュウタに電流が走った。以前ローマで見たパキケファロサウルスを思い出したのである。

 

「…そうだ! 前にもあったよな? ゾイじじいが勝手に強化した…」

 

『その通りぞい! テリジノちゃんも、ワシが作ったシークレット恐竜ぞい!』

 

 突如上から降ってきた声に4人が反応してそちらを仰ぎ見ると、そこにはアクト団のロゴが入った飛行船があった。

 

「ゾイじじい!」

 

『ボクもいるよ〜。それと、怪我したくなければそこから離れた方がいいんじゃないかなぁ?』

 

「今の声は…ソーノイダの孫のロト!

でも、逃げた方がいいってどういう…」

 

 オウガがそう口にするが早いか、飛行船の下に取り付けられた巨大な何かがDキッズを押し潰さんばかりの勢いで落下してきたのである。

 慌てて4人と8匹がその場から飛び退くと、巨大な何かは轟音と共に着地し、自動的に巨大な檻アクトカーゴに変形したのであった。

 飛行船の籠にはソーノイダの他にロトとノーピスも乗っていたのだが、ソーノイダはその中で1人怒りの表情を浮かべていた。

 

「フン! 思った通りの展開ぞい! ウサラパ達には任せておけんと追いかけてきたが…全くもって役に立たん奴らだぞい!」

 

「それにしても…ウサラパ達はどこ行っちゃったんだろうね?

ノーピス。あいつらの居場所分かったりする?」

 

「無論だ。アクトホルダーにGPSを取り付けてあるからすぐに分かる」

 

 ロトに言われたノーピスが手元のコンソールを弄り始めた時だった。ソーノイダが飛行船から身を乗り出すようにして、テリジノサウルスに話しかけ始めたのだ。

 

「よよよ? テリジノちゃーん! やっと会えたぞーい! さっ、一緒に帰るぞーい!」

 

 そう言うと、ソーノイダはテリジノサウルスに向けて両手を広げたのだった…。

 

 

その頃 三畳市 Dラボ

 

「はぁ…」

 

 いつもは元気な様子を見せているミサだが、ここ数日は勤務中も力なくため息をついていることが多かった。

 そんな彼女を見かねたのか、珍しくDラボにやって来たオーウェンがリアスに問いかける。

 

「なあ、リアスさん。あのミサとかいう子は、何であんなにため息ばかりついているんだ?」

 

「あぁ、あれね…。オウガ君とこの前花火デートに出かけたんだけど、マルムに茶々を入れられて台無しにされちゃったみたいなのよ。彼女もずっと楽しみにしてたみたいなんだけど…」

 

「へぇ、オウガ君も意外と隅に置けないんだな。

しかし本当なのか? マルムちゃんがデートの邪魔をしてきたって…」

 

「そうみたいなのよ。話によれば、私とミサさんが浴衣を買いに行った時からつけてたらしいわ。

一体何のつもりなのかしら…」

 

「ふーむ…多分あれじゃないのか?

自分と近しい異性が別の同性と仲良くしていると、苛立って仕方ないとかそういうヤツさ。あの子ぐらいの年の時にそんな経験があるとクレアから聞いたこともあるし…」

 

 その時、彼らの目の前にあるマップからアラームが鳴り、東京都の地図が拡大表示された。

 こちらのディノサーチにも出現したテリジノサウルスが引っかかったのである。これにはミサもしょげている暇などなく、すぐさまコンソールに向かう。

 

「恐竜が出現したようね…。ミサさん、場所は?」

 

「はい! 今割り出します!…出ました! 場所は東京都港区六本木…ここって!」

 

「マルム達が向かったところだわ! 大変!」

 

「しかし、Dキッズの皆が行くところ行くところ、大体恐竜が現れるような感じだな…。

こりゃあ、恐竜から会いに来てると言っても過言じゃないのかもしれんな」

 

 大慌てのミサとリアスの横で、オーウェンはそんなことを呟いたのであった。

 

 

その頃 六本木ヒルズ 展望エレベーター前

 

 外でそんなことが起きているとは露ほども知らないウサラパ達3人は、展望エレベーターの順番待ちをしているところだった。

 ようやくエレベーターに乗れる、というところで彼らのアクトホルダーに内蔵されたアクトサーチが反応した。テリジノサウルスの出現を感知したのである。

 

「ん?」

 

 画面を覗き込もうとした3人だったが、そこへタイミング悪くエレベーターが到着してしまう。そして後ろに並んでいた人々に押し込まれる形で、彼らは展望エレベーターに乗ることになってしまったのだった…。

 

 

 一方、出現したテリジノサウルスは、街灯やビルなど、目につくものを自慢の爪で手当たり次第切り刻んでいた。その切れ味は、目を見張るものがある。

 

「すげぇ…!」

 

「なんて切れ味の爪なんだ…。やっぱりあれも、パキケファロサウルスのように超技と融合した影響なのかな…?」

 

 そして、ソーノイダはいつの間にやら飛行船から降り、アクトカーゴの前でテリジノサウルスを呼んでいた。

 

「テリジノちゃーん! こっちおいでー! ワシぞーい! パパだぞーい!」

 

 ソーノイダの呼びかけに反応したのか、テリジノサウルスは彼の方を振り向いた。

 それに気をよくしたのか、ソーノイダは更に呼びかける。

 

「よしよし…テリちゃ〜ん! ウハハハハ…」

 

 ソーノイダが満面の笑みを浮かべているのに対し、テリジノサウルスは少し訝しげに彼を見つめた後、何かを思い出すかのように首を傾げ…目を見開いた。

 そう。かつてソーノイダと共に過ごした過酷な日々を思い出したのである。

 すると途端にテリジノサウルスはパニックに陥った様子で、ソーノイダごとアクトカーゴを切り刻もうとしてきたのだ。

 

「うわっ!? なっ、何をするぞい!?」

 

 ソーノイダはすんでのところで攻撃を躱したものの、テリジノサウルスは爪を滅茶苦茶に振り回してアクトカーゴを微塵切りにしている。

 それを危険だと判断したのか、ノーピスは飛行船の高度を下げ、ソーノイダへと呼びかけた。

 

「ドクター! やはりやめた方がいいです!」

 

「そうだよお爺ちゃん! テリジノサウルスは興奮してるみたいだし…」

 

「うるさーいっ! ワシとテリジノちゃんの邪魔をするでないぞい!」

 

 心配する2人の言葉に耳を貸さず、ソーノイダがそんな主張をしていると、テリジノサウルスは彼に背を向けて駆け出していってしまった。

 

「あっ…! どこに行くんだぞい!?」

 

 そして、それをDキッズと彼らの恐竜達も追いかけていく。

 

「ヒルズの方へ行ったぞ!」

 

「大変だ! あっちには人が大勢いるはずなのに!」

 

「とにかく、早く止めましょう!」

 

「早く何とかしないと、取り返しのつかないことになりかねないね!」

 

「こっ…こらーっ! 待たんかーっ!」

 

 しかしDキッズはソーノイダの言葉などどこ吹く風といった様子で走り去ってしまった。そして、1人残された彼のもとへ飛行船が降りてくる

 

「ドクター! 早くお乗り下さい!」

 

「ウサラパ達の場所も分かったみたい! 恐竜は全部あいつらが持ってるから、早く拾いに行こう!」

 

「ぬっ…? 奴らはどこにいたのだぞい?」

 

「六本木ヒルズの展望台です。GPSからそう判断できました」

 

「何じゃと!? あいつらテリジノちゃんを置いて遊びに行っておったのか!

許せん! 許せんぞい! すぐに奴らをしょっ引くぞい!」

 

 そしてソーノイダも乗り込んだところで、再び飛行船は浮上を始める。そして肝心のテリジノサウルスは、遂に六本木ヒルズに到着すると、逃げ惑う人々には目もくれずにあちこちの建造物を切り裂き始めたのであった…。

 

 一方、展望エレベーターで展望台へと運ばれてしまったウサラパ達は、前を見て飛び上がるように驚いた。目の前のガラスの向こうに、飛行船に乗ったソーノイダ達がいたのである。

 ソーノイダは大層怒っている様子で、ロトは呆れたように腕を組んで彼らを見ていた。ノーピスはこちらには目もくれていないようである。

 

「「「ヒェーーーーッ!?」」」

 

「何でドクター達がここにいるんスか!?」

 

「しっ、知らないよぉ…!」

 

 ガラスの向こうということで声は届いていないのだが、ソーノイダは怒りながらもしきりに下を指さしていた。その際勢い余って飛行船から落ちそうになり、ノーピスに支えてもらったりしてもいたのだが。

 

「声は聞こえないザンスけど…大層ご立腹のようザンス…」

 

「早く降りた方が良さそうだねぇ…」

 

「「「急げーっ!」」」

 

 そしてウサラパ達は互いの顔を見合わせると、下りのエレベーターに駆け込んだのであった。

 

 

 その頃、Dラボではリアス達がTVで恐竜出現の内容を確認しているところだった。

 

『番組の途中ですが、臨時ニュースをお送り致します。東京に、恐竜と思われる謎の生物が出現したとの情報が入ってきました。

先日は英国でネッシー騒動があったばかりですが、今度は東京の六本木で恐竜らしき生物・仮称ロッキーが出現したということになります』

 

「ロッキー…六本木のネッシーみたいな生き物だから、そう名付けたんでしょうか?」

 

「それにしても勝手なものね。どんな生き物かも分からないのに、安直な仮称まで付けちゃうなんて…」

 

 ミサとリアスがそんな話をしていると、画面には視聴者が提供した新着の映像が流れ始めた。そこで彼らも、ようやく今回出現した恐竜の詳細を知ったようである。

 

「あれは…テリジノサウルス…でしょうか?」

 

「間違いないわね。しかも全身に虹色のオーラを纏って光り輝いているわ。恐らく以前マルム達が保護したパキケファロサウルスと同じく、技カードと融合させられた恐竜なのでしょうね」

 

「技カードと融合させる、だと? アホそうな連中だと思っていたが、そんな卑劣なことまでやっていたのか…」

 

 オーウェンがそう言いながらTVの画面を見ていると、画面の隅を何か大きなものが横切っていった。

 ミサとリアスは気づかなかったようだが、オーウェンにはその正体が分かった。何故なら彼は、以前その恐竜を見たことがあるためだ。しかも、クレアから聞いた話を合わせれば、極めて危険な恐竜でもある…!

 

「リアスさん! ディノサーチをジュラシック・アンバーに対応したものに切り替えてくれ!」

 

「え? ええ…分かったわ」

 

 オーウェンの言葉を受け、リアスはコンソールを操作して画面を切り替える。すると、同じく東京の六本木にオレンジ色の反応が現れたのである。

 

「やはりか…! あいつは危険な恐竜だぞ…!

よし、今回はオレも行く! リアスさん、ミサさん!テレポートの準備を頼む!」

 

「わ、分かったわ。でも…どういうことなの?」

 

 リアスからの質問に、オーウェンは興奮気味に答えた。

 

「あいつは…クレアの話によれば、目は不自由だが音に敏感なやつらしいんだ。そして呆れるほど縄張りに固執するやつでな、もし侵入者の音を聞きつければ…。

殺してでも排除するほど気性が荒いらしい」

 

 その言葉に、リアスとミサは青褪めたのだった。

 

 

戻って東京 六本木

 

 オーウェンの予測は当たっていた。そこに現れていたのは、ソーノイダの手掛けた恐竜と同種の個体・テリジノサウルスだったのである。しかしその瞳は白く濁っており、とても見えているようには見えない。それでも彼は時折超音波のような鳴き声を発し、その反響で周囲の様子を探っているらしかった。

 しかしそこへ、1台の車が通りかかり、道路の真ん中を歩いているテリジノサウルスへクラクションを浴びせる。それを受けたテリジノサウルスは躊躇うことなく爪を振るい…車を弾き飛ばしてしまった。

 ひっくり返った車から運転手が呻きながら出てくると、テリジノサウルスを見て脇目も振らずに逃げ出していく。

 それを追いかけてトドメを刺そうとしたテリジノサウルスだったが…突如として視界に凄まじい光が入ってくる。ほぼ何も見えないはずの目でも確認できるほどの凄まじい光だった。

 それを感知したテリジノサウルスは足を止めると、その光の発生源を…ソーノイダが懸命に呼びかけている方のテリジノサウルスを見つけ、低く唸る。

 その唸り声からは、明確な怒りが感じ取れたのだった…。

 

 




今回はここまでとなります。
それでは明後日の後編を、お楽しみにお待ち下さい。
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