古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
またしても分割してしまい、申し訳ありませんでした。
どうか今回も、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。
アジ島 外周部
豚肉の袋を服の中に隠したまま、ロアはようやく先程の場所まで戻ってきていた。依然としてぐったりと横たわる白い恐竜に、ロアは豚肉を差し出した。
「ほら、これ食べて。きっと気に入ると思うんだけど…」
すると白い恐竜は、じっくりとその匂いを嗅ぎ…パクリと食らいついた。それから少しずつ肉を噛みちぎり、飲み込んでいく…。
甲高い唸り声も、どこか先程より元気が出てきたようだ。
「良かった…。まだ袋には残りがあるから、いっぱい食べてね」
そう言ってロアが頬笑みかけた…その時だった。
キュウオオオオッ!!
空き地の片隅で甲高い声が上がったのだ。ロアがそちらを見ると、そこにも同じような見た目の小型肉食恐竜が2体いた。しかしその頭には申し訳程度の羽毛が生えており、体色も黒い。そして、体も白い恐竜より一回りほど小さかった。
彼らこそが、白い恐竜の周りに無数の足跡を残していった恐竜達であった。
「も…もしかして…この子の仲間なの…?
き、聞いて! わたし、あなた達の仲間の傷つけに来たわけじゃ…」
しかし恐竜に人間の言葉など通じるはずもない。あっという間に彼女はその恐竜達に包囲されてしまったのだ。恐怖で動けない彼女に、恐竜達がにじり寄り、鋭い爪を伸ばしてきた…その時だった。
キシャアァァァッ!!
突如として白い恐竜が頭を起こし、黒い恐竜達に吼えたのである。吼えられた恐竜達は何が起こっているのかよく分からないようだったが、続けて白い恐竜が短く発する声を黙って聞いていた。
(まるで、会話してるみたいだわ)
その合間に黒い恐竜達は何度か抗議するような声を上げたものの、力関係がはっきりしているのか、ロアの包囲を解いたのだった。
「あ、ありがとう…」
ロアが白い恐竜に話しかけると、その恐竜はまた彼女の持つ袋を引っ張った。もっと欲しいということらしい。
「もっと欲しいのね? 勿論いいわよ」
そうしてロアが白い恐竜に食べ物をあげる様子を、黒い恐竜達は困惑した様子で見つめていたのだった…。
戻って六本木では、依然としてテリジノサウルス同士の睨み合いが続いていた。しかし、盲目のテリジノサウルスは威嚇こそしていたが、一向に襲ってくる気配がない。
これはどういうことかと言うと、オーウェンのアドバイスで、Dキッズやソーノイダ、そして彼らの恐竜がじっと身動きすることなく黙りこくっているからだった。
更にその上で、テリジノは頻繁に足を踏み鳴らし、威嚇の声を上げていた。これは、他の恐竜達の呼吸音や僅かな音から気を逸らすためであった。
このような状況なので、敵のテリジノサウルスは、音は殆どしないものの虹色の光以外にも何か生き物がいる気配で、勇気ある行動を取れないのである。
これが脇目も振らず襲ってくるようなハイブリッド種ならこうはいかなかっただろうが、このテリジノサウルスは野生動物で、しかも盲目である。そのため、敵がどのくらいいるか分からない場所に突っ込んでいくというリスクの高い行動を取れずにいたのだ。
そんな最中、ソーノイダが手元の紙(オウガが自分のメモ帳から1枚ちぎり取り、彼に渡したものだ)に何かを書き殴り始めた。どうやら筆談で会話をするつもりのようである。
『一体いつまでこの状況を続けるつもりじゃぞい?』
『今レクシィ達に指示を与えて、あの盲目のテリジノサウルスを包囲するように移動させています。
ですから、配置が終わるまで待って下さい』
『仕方ないのう。待ってやるぞい』
ソーノイダは意外にも素直だった。目の前のテリジノサウルスから放たれるプレッシャーに気圧されたのかもしれない。
とにかく、準備が終わるまで6人は静かにその場で待機し、テリジノが相手の注意を引き付けているうちに、レクシィ達はそれを取り囲むように静かに移動していっていたのだった…。
その様子を、ロトはすぐ外の飛行船からやきもきしながら見ていた。
「お爺ちゃん、何やってるのさ。さっさとテリジノサウルスを回収して、あそこから逃げればいいのに。
何でああやってバカみたいに突っ立ってるんだよ…」
ロトがそう悪態をつく一方で、ノーピスは手元のコンソールで盲目な方のテリジノサウルスをスキャンし、その詳細を調べていた。
(以前カロリディーから渡された、ハイブリッド恐竜の1枚であるインドミナス・レックスにはテリジノサウルスのゲノムも含まれていたが、なるほど…。あれがそのゲノムの提供元というわけか。
瞳は白濁していて、とても視力があるようには思えない。精々光の有無を判別できる程度だろう。
だがこの聴力はどうだ。驚異的なほどの鋭敏さだ。更には…ほほう、口からエコロケーションを放つのか。この2つの特異能力で視力の低さを補っているのだな…。
しかし…これは俺の研究テーマである、恐竜のさらなる進化にも役立ちそうだ。できれば確保して帰りたいが…)
そこでノーピスはすぐ隣にいる、やきもきした様子のロトを見て、密かにほくそ笑んだ。
戻ってDキッズ達の方では、恐竜の配置を終えて後は指示を待つだけになっていた。
『オーウェンさん。レクシィ達はみんな配置完了したみたいですよ。まだ攻撃しないんですか?』
『このメッセージを全員に見せてくれ。
オレが合図の口笛を吹いたら、一斉に技カードをスキャンしてほしいんだ。
それなら一気にあのテリジノサウルスを倒すことができるはずだからな』
オーウェンの意図を汲んだオウガは、まずすぐ隣にいたソーノイダにそのメモを渡した。そしてソーノイダからリュウタへ、リュウタからレックスへマルムへとメモが渡り、全員が了承の合図を送った。
それを見たオーウェンが頷き、口笛を吹こうとした…その時だった。
「アクトスラーッシュ! 轟け! カスモサウルス!」
ゴォォォォ…!!
ロトの声と共にテリジノの前に黄色い光が現れ、その中からカスモサウルスの姿が現れたのである。
そう。ノーピスはロトにカスモサウルスを召喚させたのである。そのために一度下へと降りてウサラパのアクトホルダーを借りることまでしてきたのだから、大したものだ。
「今回はいきなり行くよーっ! 『超アクトフュージョン』!」
ゴオォォグォォォッ!!
そして更にはいきなり超アクトフュージョンを使い、カスモサウルスを超アクト化してしまった。
それを目の当たりにしたソーノイダは、当然だが驚かずにはいられない。
「すっ、超アクト恐竜じゃと!? ロト! お主いつの間にその技術を…」
「お爺ちゃんが必要なくなったって捨てた設計図を、ボクとノーピスで改良したんだよ。前のアクロカントサウルスの欠点を改善して、こんなに使いやすくなったんだから! 見ててよ!」
そしてロトは超アクトカスモサウルスに指示を与え、まずはテリジノサウルスに突っ込ませた。
しかし、相手も荒々しい足音ですぐにどこまで近づいたかまで把握したようで、容赦なく爪を振るってカスモサウルスを薙ぎ払ってしまった。
しかし、流石は超アクト恐竜である。カスモサウルスは転がりつつも素早く起き上がると、再びテリジノサウルスに突撃していった。
そしてそれに合わせて、ロトが技カードを手に取る。
「さて、小手調べはここまでだ! ボクの本気を見せてあげるよ! 『
その言葉と共にロトがカードをアクトホルダーに通すと、カスモサウルスが黄色い光と紫電に包まれて高く咆哮した。そして技を仕掛けようとしたのだが…。
テリジノサウルスの体も、同じように虹色の光に包まれたのだ。どうやらこちらも技を使おうとしているようだ。
そしてテリジノサウルスは正面から来たカスモサウルスに向かって足を軸に激しく回転しながら向かっていく。
それを見たマルムが、思わず声を上げた。
「あれって、さっきこっちのテリジノちゃんもやってた…」
「いかん! 『
「相性が…悪い?」
何のことかよく分からない様子でリュウタがそれを繰り返すと、彼らの目の前で『
そして、ソーノイダの危惧は的中した。
テリジノサウルスが鍔迫り合いを制し、カスモサウルスを切り刻んでしまったのだ。攻撃をまともに受け、力なく倒れたカスモサウルスは、テリジノサウルスのトドメの薙ぎ払いを受けて大きく吹き飛ばされてしまった。そしてその先には、ノーピスとロトが乗る飛行船があるではないか!
「のっ、ノーピス! やばいよ! 早く飛行船の高度を落として!」
「なっ、何っ!? ぐうっ…」
だがノーピスはテリジノサウルスのデータ収集をしていたため、反応が遅れた。それが仇となり、カスモサウルスは飛行船に直撃すると、飛行船を巻き込んで諸共に下へと落ちていってしまったのだった。
「ロトーッ! ノーピスーッ!」
ソーノイダが2人の名前を呼びながら窓の方へ駆け寄っていったが、すぐにその表情が明るくなる。
落下こそしたものの、ノーピスが飛行船内に格納していた小型飛行機を展開したことで、2人は命拾いしていたのだ。
『ドクター! これ以上は我々がいても足手まといになるだけかと思われますので、一足先に帰還します!』
『ごめんね、お爺ちゃん…。お爺ちゃんを助けようと思ってカスモサウルスを出したのに、力になれなくて…』
「なぁに、気にすることはないぞい!
後はワシとテリジノちゃんに任せるのだぞい!」
そして南の空へ去っていくノーピス達を見送ったソーノイダは、すっかり蚊帳の外になっていたDキッズとオーウェンに向き直った。
「さあ、お主ら! 今こそ技カードの使い時ぞい!」
「言われなくても分かってるよ!」
無論、ロトが無謀な突撃をしてくる前に立てていた作戦である。そのため彼らもいつでも技を使える用意をしていたのだ。
まずはDキッズのオウガを除く3人が技カードを次々にディノホルダーにスキャンしていく。
「いくぞ! イナズマ! 『
「お前も行くんだ! アイン! 『
「あなたもお願い! ランラン! 『
技カードが読み込まれ、イナズマ達の体にそれぞれの属性の力が宿る。そしてまずはアインが『
しかしその足音にテリジノサウルスも反応したのか、その体に虹色の光を纏い、その場で回転し始めた。再び『
だがそこでイナズマの放った電撃を浴び、相手が痺れて回転速度が弱まった。更にランランが呼び出したオヴィラプトル達による卵の雨あられが襲いかかり、回転が更に弱まる。そしてその隙を見逃さずにアインが疾風の如き連撃を繰り出した。
「よし! ここまでは段取り通りだ! オウガ君!」
「分かってますよオーウェンさん!」
そして最後に、オウガがディノラウザーに技カードをスキャンし、それとほぼ同時にオーウェンが技カードをアンバーに押し当てた。
「頼んだよ、レクシィ! 『
「行くぞっ! ブルー! 『
技カードが発動し、レクシィが口に炎を溜め込む後ろから、ブルーが旋風を巻き上げて追い風を送る。空気を絶え間なく供給されたことでレクシィの溜め込む炎はより大きくなっていき、勢いも増していく。
そしてレクシィは十分に大きくなった炎を、火球として口から吐き出した。火球は追い風によって更に火力と速度を増し、まるで太陽のような輝きと熱を放ちながら、相手へ迫っていったのだった。
凄まじい爆発音と共に火球が炸裂し、相手のテリジノサウルスが業火に包まれる。その威力は凄まじく、展望デッキのガラスが全て吹き飛んでしまうほどであった。
「ぐううううっ…」
当然Dキッズやオーウェン、ソーノイダ達は吹き飛ばされそうになってしまうも、柱の陰やらなど物陰に隠れることで窮地を逃れることができたようだ。
「まさかお主らが合体技を知っておったとはな…。
しかしこれほどの攻撃を受けたならば、あの盲目のテリジノサウルスもただではすまんじゃろ…」
そう言いかけたソーノイダの言葉が止まった。そして、煙の向こうを真っ直ぐに指さす。煙が晴れてきたその先には…半身が黒焦げになりながらも立ち続けているテリジノサウルスの姿があったのだ。
「そんなバカな…! レクシィとオーウェンさんのブルーの合体技が直撃したはずなのに…」
「…いや、違うぞい。あのテリジノサウルスは…『
目が見えていれば諦めてしまうようなところを、目が見えないばかりに抵抗しようとして、そして成功したということぞい…。なんという奴ぞい…」
しかも、あれほど酷い傷を受けながらも戦意を失ってはいないらしい。すかさず無事な方の手に『
「なっ、何じゃとっ!?」
「まずい! レクシィ! カバーに…」
オウガがそう命じようとした時だった。ソーノイダの前にテリジノが立ちはだかり、斬撃をその身で受けたのである。しかしいくらシークレット恐竜とは言えどダメージは大きかったようで、がくりと膝をついてしまう。
「テリジノちゃん…まさかワシを庇って…。
あんなにお前に酷い仕打ちをしたというのに、お前はそこまでワシを慕ってくれておったのじゃな…」
しかし手応えがあったことを認識したのか、相手は再び爪を振りかぶり、そしてテリジノにトドメを刺そうとした。
だが、その攻撃は通らなかった。テリジノが自身の爪でその攻撃をガードし、更にはもう片方の爪で相手を薙ぎ払ったのである。
相手の体が大きく後退し、その間にテリジノはゆっくりと体を起こして、ソーノイダの方を見た。
まるで、「後は自分に任せて欲しい」と言っているようであった。
「…分かったぞい。テリジノちゃん! その盲目のテリジノサウルスを倒すんだぞい!
ワシと一緒に厳しい鍛錬を乗り越えてきたんじゃ! お前ならきっとできるぞい!」
ソーノイダの言葉を受けてテリジノが駆け出し、その長大な爪を振りかぶって斬りつけようとする。しかし今度は相手がそれを防ぎ、尻尾を振るって打撃を浴びせてきた。より長い尻尾を持つその個体であるが故に、片腕が使えなくなった今はそうやって攻撃してきたのだ。
そこからしばらくは爪同士や爪と尻尾がぶつかり合う応酬が続いたものの、突然相手がタックルをかましてテリジノを吹き飛ばしたのである。テリジノはエレベーターにその身を強くぶつけてしまう。
そこを相手のテリジノサウルスは好機と見たのか、全身に虹色の光を纏うと、無事な方の足を軸足として高速回転しながら突っ込んできた。またしても『
「まずいぞ!」
「あのままじゃテリジノがやられる!」
「お願い! 立って! テリジノちゃん!」
「立てーっ! 立つんじゃー! テリジノちゃーん!
お前はこんなところで終わる奴ではないはずじゃーっ!」
Dキッズやソーノイダの声援が効いたのか、テリジノはゆっくりと立ち上がる。しかしそのすぐ目の前に、高速回転する相手のテリジノサウルスが迫ってきていた。
「今こそワシ達の実力を見せる時ぞい!
テリジノちゃん! 自慢の大技『
ソーノイダの言葉を聞いたテリジノが全身に虹色の光を滾らせ、両手の爪に光の鞘を形成する。
そしてそれで身を守るように交差させて、相手の『
爪同士がぶつかり合って激しい火花が散る。その状態で両者は鍔迫り合いを続けていたが、その時は唐突に訪れた。
テリジノが交差した両爪で相手を強引に押し戻したのである。虚を突かれ、相手の回転が僅かに弱まる。その好機にテリジノは光の爪を振るい、連続の斬撃を浴びせた。
これには耐えきれなかった相手のテリジノサウルスは、フラフラとした足取りの後にばったりと倒れた。
そして、輝かしい虹色の光を放つテリジノに片手を伸ばそうとしたところで力尽き、ようやく4枚のカードへ戻っていった。
最近では稀な接戦を、ようやく制したのであった。
「ヒョッホーイ! よくやったのうテリジノちゃーん!」
ソーノイダが感涙に咽びながらテリジノに駆け寄っていくと、彼も両手を広げて彼を迎える。
そして、ソーノイダとテリジノは再び抱き合った。
「本当に、よく頑張ったのう…。
さあ、テリジノちゃん。一緒に帰って、ゆっくり休むぞい…」
ソーノイダにそう優しく語りかけられたテリジノは、目尻に涙を浮かべながらゆっくりと目を閉じ、虹色の光と共にその身をカードに戻していった。
そしてテリジノのカードは、ソーノイダの両手の中にしっかりと収まっていたのである。
そのカードを見つめ、感涙に咽ぶソーノイダを、Dキッズ達は遠巻きに見つめていた。
そんな空気の中…。
「ドクター! 早く撤退しましょう!」
「あんな大爆発があった後だから、ミー達心配してたザンス!」
「テリジノサウルスは回収できたんスよね? それなら早く帰った方がいいッス!」
ウサラパ達アクト団工作員の乗った小型飛行機が、展望デッキに横付けしてきたのである。
そんな彼らの前で変な表情を見せられないのか、ソーノイダが涙を袖で拭ってからいつもの調子で命令をする。
「うるさいぞい! それならさっさとハッチを開けんか!」
「了解! ハッチ、オープン!」
「ヘイヘイホー!」
そして小型飛行機のハッチがゆっくりと開き、そこへ歩いて行くソーノイダだったが…乗り込む直前にDキッズの4人へ振り返った。
「…よいか! お前達と手を組んだのは、このテリジノちゃんを連れて帰るため、仕方なくやったんだぞい!
次に会った時は、ワシらはまた敵同士ぞい! くれぐれも! それを忘れるでないぞい!」
「おう! こちとらいつでもどんと来いだぜ! またな! ゾイじじい!」
リュウタからの返答を聞いたソーノイダは満足げにニヤリと笑うと、小型飛行機へと乗り込んだ。そしてアクト団を乗せた小型飛行機は、南の空の彼方へと消えていったのだった…。
「…あーあ、今回はアクト団にカードを奪われちゃったかぁ〜!」
「でも、僕はあれで良かったと思うよ。
あんな2人の仲を引き裂くことなんて、僕にはできないよ」
「フフフッ、そうね! それにあのおじいさん、何だか来た時と帰る時で、全然表情が違って見えたわ!」
「多分、あの人の中でも何か変わったところがあったんじゃないかな。それと向き合ったからこそ、テリジノサウルスは許してくれたんだよ」
「何より、こうしてオレの世界のテリジノサウルスも保護できた訳だしな。全く収穫がなかったという訳じゃないだろう?」
オーウェンのその言葉と共に見せた『テリジノサウルス・チェロニフォミス』のカードを見て、Dキッズは互いに笑い合ったのであった…。
その後 アジ島 食堂
任務から戻ってきたウサラパ達は、何とか昼食の時間に間に合ったようで、今日初めての食事を口にしていた。
「いやぁ~、朝から何も食べてなかったから、タルボーンヌのご飯が身に沁みるねぇ~!」
「ホント! いつにも増して美味しいッス!」
「タルボーンヌさん! おかわりが欲しいザンス!」
「まったく、突然いなくなったと思ったらまた突然帰ってくるなんて…何なんです? あなた達は…」
タルボーンヌは呆れつつも炊飯器からご飯を取り、おかわりを所望したノラッティ〜に与えていた。
そんな中ウサラパが食卓を見渡して、疑問を口にする。
「あら…? ドクターは来てないの? ドクターも朝ご飯を食べてないのは同じのはずなのに…」
「ドクターのご飯なら私がお部屋に運んでおきましたよ。どうやらとても重要なマシンを作るということのようですが」
「重要な?」
「マシンッスか?」
「何のことザンスかねぇ…」
ソーノイダが作ろうとしているマシンについて、ウサラパ達は何も知らないようだった…。
その頃 リュウタ宅
テレビでは姿を消した恐竜、仮称ロッキーについての話が流れている中、Dキッズは今回の六本木遠征の成果を古代博士に見せていた。
「ふむ…ふむ…おっ、これはすごいな…! 夏休みの自由研究としては、上出来だぞ!」
今日の遠征で撮ってきた写真の中には、岩に埋まった大型恐竜の全身骨格があった。オーウェンと共に下へ降りてきた時、2つに割れた岩の中にあるのをリュウタが見つけたのである。
…ちなみにこれは、ロトのカスモサウルスが落下した時にその岩にぶつかったのが割れた原因なのだが、それを知る者はいない。
「ねぇねぇ、その化石、父さんは何のやつなのか分かる?」
「何の化石か…。うーーむ…比較的短い尻尾に樽のような腹部、それからこの長い爪…こんな特徴を持つのは…」
「「「「テリジノサウルス類!?」」」」
「ん? おおそうか! そう言えば今日お前達が会ったのは、そのテリジノサウルスだったんだったな!
それも2体も!」
「うん! しっかし、どっちも強かったよなぁ…」
「先に見つけた方は、パラパラ達も相手にならない位だったし…」
「オーウェンさんのとこの方は、あれだけ集中攻撃しても倒しきれなかったもんね…」
「盲目の代わりに五感の残り…特に聴覚を鋭敏にして補っていたとはな、私も驚きだったぞ!
しかし…本当に大丈夫なのか? オーウェンさんの方でないとは言え、アクト団にテリジノサウルスを渡してしまって…」
「そんなに心配すんなよ父さん!」
「テリジノサウルスに、ソーノイダは真摯に謝ってました。それをテリジノサウルスも受け入れた以上、俺達が口を挟むのは野暮ってものですよ」
「うーむ…それならいいのだがなぁ…」
それでも古代博士は心配そうな様子を崩さなかったのであった…。
その頃 アジ島
その頃ソーノイダは、自身の研究室で設計図をもとにひたすらマシンの溶接に明け暮れていた。
そのマシンは、かつての彼なら絶対に作るはずのないものであった。
「…ふぅ、これであともう少しぞい。
このマシンが完成すれば、テリジノちゃんの体から技カードを切り離し、元の生活を送ることができるはずぞい」
そう。かつて彼が作ったすごいマシンとは対極にある、技カード分離マシンを作ろうとしていたのである。
そんな開発の途中でも、時折部屋の隅へ目をやることには忘れない。そこのベビーベッドには、チビ恐竜形態のテリジノが眠っているからである。既に怪我の処置は施したのか、その体にはあちこち包帯が巻かれていた。
その安らかな寝顔を見て顔を綻ばせたソーノイダは、また開発に戻る。
(いつかは、ガキンチョ共に奪われたパキケファロサウルスや…まだ見つかっていないディーノ達にも、しっかり謝らんといかんなぁ…)
そんなことを考えながら、ソーノイダは引き続きマシンの開発を続けるのであった…。
今回の恐竜解説!
「今回の担当は、俺、覇轟オウガだよ。
今回解説するのは、巨大な鉤爪『テリジノサウルス』! 両前脚に備わったとても長くて大きな爪が特徴的な恐竜だね。
名前の意味は「刈り取るトカゲ」。この爪を刈り取り用の大鎌に見立てて名付けられたみたいだね。
化石が発見されたのは白亜紀後期のモンゴルやカザフスタンといった地域で、今のところ爪を含めて2メートルもある両腕と肋骨、そして部分的な後ろ足の化石が発見されているんだ。だから今でも本種の正確な姿は分からなくて、近縁種の化石から推測するしかないんだよね。
その最大の特徴と言えば、名前の由来にもなった最大70センチにも及ぶ長い爪だよね! これに更に角質の鞘が付いたとしたら、長さは1メートル程に及んだのではないか、という見方もあるほどなんだよ。でもこれを何に使ったのかは分かってなくて…植物を口元へ運ぶのに使ったとか、アリクイみたいに蟻塚を壊す時に使ったとか色々言われているんだよね。そもそも本当に草食恐竜なのかすら分かってないみたいで…本当に謎が多い恐竜だよね。
ちなみにこの恐竜の種小名「チェロニフォミス」は、「亀のような」って意味なんだけど、これはあまりに幅広な肋骨から、当初は亀のように復元されてたからこんな名前が付いたんだよね。
知名度に反して色々と謎の多い恐竜だけど…これからもっとこの恐竜についての発見があるといいよね!」
ということで、今回はここまでです。今回のエピソードを機に、ソーノイダは原作よりも大分マイルドな方向に変化していくことになります。光堕ち…ではないですが、それに近い形ですね。
まあ、ウサラパ達に対してはあまり変わらないでしょうけど…。
そして今回から、アクト恐竜陣営にテリジノサウルスの「テリジノ」が加わることになります。ソーノイダが過保護を発動させているので、当分戦線に出ることはありませんが…。
それでは次回第28話『UMA大集合!エメラ・ントゥカにチペクウェ、そしてカサイ・レックス!』恐竜キング側の恐竜は原作と変化ありませんが、JP・JW側からは、チペクウェやカサイ・レックスにそっくりなあの恐竜が出ることになるかも…。
是非明後日の更新を、お楽しみにお待ち下さい!