古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
このところ忙しく、投稿を遅らせることになってしまい大変申し訳ありません。
今日から来月中は、このように更新が不定期になることもありますので、ご容赦ください。
その後、Dキッズの4人はメアリーの車で保護区の真ん中へ連れてきてもらっていた。周囲に広がるサバンナを見渡してみれば、様々な動物達が生活している様子を観察できる。
「なんか壮大っていうか…優雅でいいわねぇ…」
「ホントだなぁ…。まさに平和!って感じで…すっげえ和むぜ〜…」
「実際はこの中のあらゆる生き物が激しい生存競争を繰り広げてるんだろうけど、とても雄大な光景だよね…」
「でも、この平和を乱す密猟団がいるんですよね?」
「そう。こんなに美しい動物達の命を金欲のために利用し、絶滅に追い込もうとする奴等がね…。
だから保護区の中でも、このエリアの動物達は人間に対する警戒心が強くて、近づくと危ないのよ」
確かにメアリーの言う通り、野生動物達は車が近づくなり遠くへと駆け出していき、遠巻きにこちらを見つめてくるだけであった。よほど人間が恐ろしいようだ。
「密猟なんて許せないな…!」
「ほんと!」
「でも、メアリーさん達はこうして取り締まりをしてるんですよね? どうして密猟者は一向に減らないんですか?」
「それは、この国の経済事情に関係してくるの。ここに住む人の大多数は貧しくて、日々の暮らしもやっとの人が多いわ。そんな人たちが、高額な報酬をダシに密猟を持ちかけられれば…断れないでしょう?
それに、原因はそれだけじゃないわ。例えばあなた達の出身国である日本でも、象牙の判子を有難がる人はまだ沢山いるわよね? 他にも中国では今だにサイの角が漢方薬の材料として重宝されているわ。そういった需要を減らしていかないことには、密猟は減っていかないのよ。
つまり、密猟は必ずしも現地だけの問題ではないということなの」
『…密猟、か。私もそういったニンゲン共に追い回されたことは一度や二度ではない』
そこまでの会話を聞いてなのか、レクシィも口を開いた。
「レクシィも…そうなの? 確かにヌブラル島から焼き出された時も、密猟団に捕まる形だったけど…」
『それだけではない。最初の…オマエ達で言うところの『旧パーク』崩壊後や、故郷の島を焼き出された後も、私は幾度となく密猟者共に狙われてきた。
まあ…その殆どは蹴散らしてやったがな』
そこまで話したところで、レクシィはふと思い出したようにまた話し始めた。
『そうだ…。私がサンクチュアリで出会った、あの同族夫婦も、そういった密猟目的のニンゲンによって酷い目に遭わされたことがあると聞いた。
特に彼らの息子は、2度もニンゲン共に誘拐されたようだ』
「えっ!? そんなことがあったの?」
『どうもそうであるらしい。しかもオスの方は、息子を取り戻すためにニンゲン共の縄張りへ殴り込み、散々に荒らし回ったと言っていた。本当かどうかは知らないがな』
「それは…どうなのかな…? ちょっと話を盛ってるんじゃない?」
『正直なところ、私もそう思った…。一応何も言わないでおいたがな』
彼らはそんなことを言っているが、その騒動は『サンディエゴ事件』と呼ばれていて、オーウェン達の世界で実際に起こった事件なのである。ただ事実と違うのは、レクシィが知り合った夫婦の夫側…ティラノサウルス・バックは自分から殴り込みに行ったのではなく、人間によってサンディエゴまで連れてこられたという点なのだか…。
とにかく、彼らがそんな話をしていると、突然轟音と共に車体に衝撃が走った。
「「「「うわあっ!?」」」」
「何事なの!?…あっ!」
咄嗟にメアリーとDキッズが後ろを振り返ると、そこには成体のシロサイがいたのである。どうやら今の衝撃はこのシロサイが突進してきたもののようだ。
しかも今の衝撃で、リュウタは車外にディノホルダーを落としてしまったようだ。そしてそれを、シロサイが踏み潰してしまった。
「えあーっ!? オレのディノホルダーがーっ!?」
「逃げるわよ!」
「ま、待って!」
メアリーがイグニッションキーを捻るところを見たリュウタが慌てて車から降りる。ディノホルダーを回収しなければいけないからだ。しかしこのままでは車に乗り遅れかねない状況であった。
しかしそうはならなかった。何故なら、メアリーの目の前に大きな何かが立ちはだかったからである。
彼女はそれに気づいて見上げ…そして悲鳴を上げた。
何故なら、目の前にいたのはスピノサウルスだったからである!
「スピノサウルスだ!」
「まさか…アクト団が?」
そしてこの間にリュウタはディノホルダーを拾い上げるものの、内部で回路のどこかがイカれてしまったのか、うんともすんとも言わなかった。
それでも潰れていないだけマシであるのだが。というかサイに踏まれても潰れない電子機器とは、一体どのようなものなのだろうか。
「ぬぅ〜っ、ディノホルダーがぁ〜…。これじゃガブもイナズマもカードに戻せないよ〜…」
「…よし、エース、アイン。行くぞ!」
すかさずレックスがエースとアインをカードに戻し、ディノホルダーにスキャンする。例え1人が恐竜を召喚できなくなっても、他のメンバーでカバーできるというのがDキッズの強みでもあった。
「ディノスラーッシュ!
吹き抜けろ! カルノタウルス! アロサウルス!」
グォォォォォン!!
グゥガアァァァァッ!!
エースとアインが成体の姿となって並んで降り立ち、目の前のスピノを見据えると、いつものように周囲がバトルフィールドに変化していく。
しかしメアリーは眼前で起きていることに思考が追いついていないのか、唖然とした様子であった。
「ウソでしょ…?」
そんな彼女の目の前で、エース&アインとスピノは戦闘を開始した。まずは突っ込んでいくエースとアインに向けてスピノが力強く尻尾を振るものの、2体はジャンプで軽々とかわし、逆にスピノへドロップキックをお見舞いしたのだ。
2体ともティラノサウルスやスピノサウルス程ではないとは言え、立派な大型肉食恐竜である。蹴飛ばされたスピノは、悲鳴を上げながら地面に転がされてしまったのであった。
「まったく、何やってんだいだらしないねぇ〜…。
サイ1匹くらいで手こずってるんじゃないよぉ〜…」
と、そこへスピノの後を追い、ウサラパ達アクト団工作員の3人が、ウンガロの運転する車でやって来た。
当然、動物達の敵を見逃すメアリーではない。
「現れたわね! ウンガロ! 今日こそ覚悟して貰うわよ!」
「ゲーッ!? やっべぇ!」
「あっ! 自称19実年齢三十路のオバさんもいるじゃないですか!」
「また三十路のオバさんって言ったねこのガキンチョ! お前らから泣かせてやろうかーっ!?」
オウガの発言にウサラパが怒り狂っていると、何故かガブが車から降り、ウサラパ達を睨みつけ始めた。
そんなガブを見たウンガロの目の色も露骨に変わる。
「おい。ありゃあまさか…チペクウェの子供じゃねぇのか? 貰った写真とそっくりだぜ…」
『ガブゥゥ…』
その時、恐竜達の戦闘にも変化があった。アインより素早いエースが一足先にスピノに突撃していったのだが、スピノから尻尾での反撃を貰ってしまったのである。
横倒しになったエースのもとへ、ガブが駆け寄っていく。アインもすぐさま方向転換をしてエースのカバーに入ろうとしたものの、その隙をスピノに突かれ、エースとは逆方向に投げ飛ばされてしまった。
「エース! アイン!」
「待てよ! ガブ!」
『ゴロローッ!』
一方、アクト団はそんなガブの行動の真意を計りかねているようだ。
「あのチビ恐竜は、今回大きくならないんスかねぇ?」
「フン、甘く見られたもんだねぇ…。
スピノ! アロサウルスは放っておいて、そっちのチビを先に泣かせておしまい!」
「ぐっ…。しないんじゃなくてできないんだってば…」
リュウタはガブとイナズマを抱え上げてそう呟くものの、そんなことなどアクト団の知ったことではない。
既に指示を受けたスピノは攻撃態勢に入り、リュウタ達のところへ突進してきていた。しかし、ガブはリュウタの腕から抜け出し、スピノへ向かって吠えかかる。傍からみれば、蛮勇もいいところである。
「うわぁぁぁぁ…」
「何してるの! 避けるか逃げるかしなさい! さもないと…」
もたつきつつもガブを抱え直そうとするリュウタに、メアリーがそう叫びかけた。
しかしその時、彼女の両隣を巨大な影が1つずつ通過していったのだ。その片方はリュウタ達を庇うように立ち塞がり、もう片方は真正面からスピノを迎え撃つ。それは大盾のような長大なフリルでスピノの攻撃をいなすと、反撃に強烈な突き上げを食らわせたのだ。突き上げを諸に受けたスピノはクルクルと地面を滑っていき、そこへ立ち直ったエースとアインが殺到して袋叩きにし始めていた。
「スピノちゃん…」
「見てられないッス…」
「酷いザンス…」
あんまりな光景に、ウサラパ達はそんな声を発する。
その一方、Dキッズはガブの傍らに寄り添う2体の恐竜を確認していた。
「この大きなフリルは…トロサウルスだ!」
「それでそっちは、トリケラトプスかな? でも成体の時のガブより一回りくらい大きいね…」
「ガブとそっくりね〜…」
『ガァブ…』
『ゴロ…』
そんなガブを寂しそうにイナズマが見つめていると、ガブは彼も呼び寄せようと一声鳴いた。それを受けたイナズマが恐る恐る近づいていくと…2体は優しくイナズマを迎えたのだ。ついさっきまでの寂しさはどこへやら、ガブとイナズマはにこやかに微笑み合いながらトロサウルスやトリケラトプスと会話をしているようだった。
「ガブの声を聞いて、助けに来てくれたのかな…?」
彼らがそんな話をしている間に、エースとアインは横倒しになったスピノの上で、跳ねては踏みつけを繰り返していた。
「いいぞ! エース! アイン!」
「ビシッと決めてやれーっ!」
しかし、そうして応援するDキッズを尻目に、トロサウルスとトリケラトプスはどこかへと立ち去っていく。更にそれを追いかけ、ガブとイナズマも姿を消してしまったのだった。
一方ウサラパ達は、今だに無様を晒し続けているスピノに我慢がならなくなったようだ。
「しっかりおし、スピノ!
ほらノラッティ〜! 技カードを使うんだよ!」
「了解ザンス! 『
ノラッティ〜が技カードをアクトホルダーに通したことで、スピノの体が青い光と水流に包まれる。そしてスピノは口に水を溜め、それを水球にして吐き出したのだが…。
エースとアインは左右に分かれ、その水球を躱してしまった。
「キーーッ! ちょこまかとすばしっこい奴らだねぇ〜!」
「いいぞ! エース! アイン!」
スピノ達の戦闘を見守っていたウサラパ達だったが、エドがふと何かに気付いた様子でウサラパに話しかけた。
「ウサラパ様。トロサウルスもトリケラトプスもどこか行っちゃったッス!」
「えっ? どこ行ったんだい?」
ウサラパがそう言いつつ周囲を見渡すものの、恐竜らしき影はどこにも見えない。相当遠くへ行ってしまったようだ。
「すぐ追いかけるんだよ! ノラッティ〜!」
「はいザンス!」
その言葉を聞いたノラッティ〜はすぐさまスピノをカードに戻し、3人で車へ戻っていく。
「ほら! ボサっとしてないでトロサウルスを追いかけるんだよ!」
ウサラパからそう言われたウンガロは、ようやく我に返った様子でアクセルを踏み込む。
「おおおおっ! やっぱりあいつら全員恐竜だったんじゃねぇか! UMAの正体が恐竜の生き残りとなりゃあ、億万長者どころじゃねぇくらいの大金が転がり込んでくるぞーっ!」
そしてウンガロとウサラパ達を乗せた車は、その場から走り去っていったのであった…。
一度戦闘も一段落したところで、Dキッズとメアリーはエースとアインのもとへと向かう。まさか本当に恐竜がいるとは思っていなかったようで、メアリーは言葉に詰まっていた。
「これが本物の恐竜なのね…」
更に目の前でレックスが2体をカードに戻し、更にチビ恐竜として召喚したところを目の当たりにし、彼女は2度驚いていた。
「すごい…。古代博士が言っていたことは本当だったのね…」
と、そこでリュウタがようやくガブとイナズマが見当たらないことに気づき、周囲を見渡した。
「…あれ? ガブとイナズマがいない…。
ガブー! イナズマー!」
「トロサウルスとトリケラトプスもいないわ…」
「もしかすると…彼らについていっちゃったのかもしれないね…」
「くそぉ…。これさえ開けば…石版で呼び戻せるのにぃ…」
何とかリュウタがディノホルダーの石版を格納している部分を開けようとするも、先程シロサイに踏まれた時に蓋が歪んでしまったようで、どうやっても開けることができなかった。
「それは後回しにして、早くしよう! このままだとガブやイナズマも密猟団に捕まってしまうかもしれない!」
「そうだ! そうだよ! メアリーさん! 急いで車を!」
「うん! 任せて!」
そしてDキッズは再びメアリーの車に乗り込み、ガブやイナズマの行方を探すことにしたのだった…。
その後、リュウタが探しているガブとイナズマの姿は、池の畔にあった。彼ら2匹とトロサウルス、そしてトリケラトプスは仲良く水を飲んでいたのだ。
しかしそこで突然周囲がバトルフィールドに変化したかと思うと、背後の茂みからティラノが姿を現した。とうとうアクト団とウンガロに追いつかれてしまったのだ。
トロサウルスとトリケラトプスはガブとイナズマを庇うように立つと、ティラノに向かって威嚇の咆哮をあげる。
その様子を、ウサラパ達とウンガロは近くの茂みから観察していた。
「みーっけ! 今度は逃さないわよぉ〜…」
「お誂え向きにチビ恐竜が2匹も付いてきてるッス!」
「ドクターに思わぬお土産ができるザンス!」
「やったぜベイベー!ッスね!」
「こりゃ億万長者どころか、世界征服も夢じゃねぇかもしれねぇ…。野望が広がるぜウハハハハ…!」
1人でそんなことを呟いているウンガロはさておき、ウサラパ達は早速ティラノに攻撃指令を下した。
「またあいつらが現れる前に、全員カードに戻しておしまい! ティラノ!」
「相手も2体いるならこっちもいくザンスよ〜?
アクトォースラッシュー! 湧き上がれ! スピノサウルス!」
グァギュオォォォッ!!
更にそこへ加わったスピノもその指示に咆哮で答えると、早速トロサウルスとトリケラトプスへ向かっていったのだった。
しかし、そのティラノの咆哮をDキッズとメアリーは聞いていた。メアリーが車を飛ばしたお陰で、かなり近くまで来れていたようである。
そして、更には周囲がアフリカのサバンナから恐竜時代の平原のような光景へ変化していく…。
「いっ、今のは何…? それにこれって…」
「間違いありません! アクト団のティラノの声です!」
「てぃっ、ティラノ?」
「それに時空が歪んでる…。アクト団も複数恐竜を召喚したんだわ!」
「メアリーさん、急いで!」
ティラノサウルスが出現したと聞いて動揺するメアリーだったが、リュウタに促されるままに声の方向へ車を走らせたのだった。
そして、彼らが現場へ到着すると、ちょうどティラノ&スピノとトロサウルス&トリケラトプスが戦闘を始めたところだった。
「ガブー! イナズマー!」
リュウタが席から体を乗り出してそう呼びかけるが、メアリーが急ハンドルを切ったために車から転げ落ちてしまった。そんな彼をよそに、車が停止したのを確認してからオウガとマルムが降り立つ。
「今度はアタシが…!」
「俺達もやるぞ! 行こうレクシィ! アメジスト!」
そしてマルムはパラパラとランランを、オウガはレクシィとアメジストをカードに戻すと、それぞれのディノホルダーやディノラウザーにスキャンした。
「ディノスラーッシュ!
芽生えよ! パラサウロロフス! ランベオサウルス!」
キュオォォォォン!!
プオォォオォォォ!!
「ディノスラーッシュ!
燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!
揺るがせ! ステゴサウルス!」
ゴガアァァァァァッ!!
ケエェェェェ…!!
Dキッズ側から計4体の恐竜が召喚され、ティラノに向かい合った…のだが、レクシィの姿を認めたトリケラトプスは、何故かレクシィの方へ攻撃を仕掛けてきたのである。
当然、オウガは慌ててレクシィに回避の指示を出した。
「レクシィ! トリケラトプスが突っ込んでくる! 早く回避するんだ!」
『なっ、何っ!?』
すぐさまレクシィが回避の指示に応え、トリケラトプスの突進攻撃を躱す。攻撃を躱されたトリケラトプスは、すぐさま方向を転換して再びレクシィに向き直る。
「どうして…。さっきまでガブ達と仲良くしてたのに…」
困惑した様子を見せるオウガに対し、レクシィはどこか合点がいったかのように笑みを浮かべた。
『そうか…。その顔を見て思い出したぞ。
オマエは、確かあの嵐の日…私が自由の身となった夜に、我が贄となったトリケラトプスだな?
インドミナス・レックスやギガノトサウルスで薄々は感づいていたが、まさか本当に死んだはずの恐竜が黄泉帰ってくるとは思わなかったぞ…』
レクシィの言葉に、更に怒りを募らせたトリケラトプスは、再び突進攻撃を仕掛けてきた。
それを再度躱しながら、レクシィはごく冷静に相手へ語りかける。
『聞け、3本角よ。
私に復讐したいという気持ちは分からんでもないが…今はオマエの友人を守ることが先だろう?
それとも…あくまで前世のリターンマッチを望むか?』
そのレクシィの言葉に答えるかのように、トリケラトプスは大きく角を掲げ、三たび突進をしてきたのであった…。
一方、大きな滝を背景にトロサウルス&パラパラ&ランラン&アメジストvsティラノ&スピノの戦いは始まっていた。
まずはパラパラがティラノへ突進していくもののスピノに阻まれ、更に追撃を受けてしまいそうになるが、そこをランランがタックルでスピノを吹き飛ばして事なきを得る。
そしてティラノとトロサウルスが頭を突き合わせて力比べをしているところへアメジストが突撃し、ティラノを押し倒したところでトロサウルスが大きく掬い投げた。
「うううう〜…くっそ〜…外れろ〜…っうわぁっ!?」
そんな中リュウタは必死に石版の格納部分を取り外そうとしていたが、一向に外れそうにない上、本人が勢い余ってずっこけてしまっていた。
一方パラパラとランランは揃ってスピノへ尻尾でビンタを浴びせ、締めに息を合わせてスピノを蹴り上げ、滝壺へ叩き込んでいた。
これで一安心、かと思われたのだが、そこへ横槍を入れてくる者がいた。突如茂みから飛び出した1つの影が、パラパラの首筋に食らいついたのである。
それもまた、恐竜だった。全長8メートル弱の体格に、鼻先には角のようなものを備えている。
そう、その恐竜は…。
「うおおおおっ! カサイ・レックスまでも現れたか! そして、やはりあいつも恐竜だ!」
「あれは…ケラトサウルスだわ…」
「でも…前に原宿でお爺さんから貰った個体より…ずっとがっしりとした体格だね…」
その恐竜は、ケラトサウルス。奇しくもこの恐竜も、オーウェン達の世界から迷い込んできた個体であった。
そしてケラトサウルスは、パラパラに食らいついたままその身に灰色の光と風を纏い始める。技を繰り出そうとしているのだ!
そしてケラトサウルスは、自身を中心に大きな竜巻を作り出し始め、その中へパラパラの体を流す。パラパラはその竜巻の中で木やら岩やらに打ち付けられながら空高くへと舞い上がり…竜巻が解けると同時に地面へと落下し、カードへ戻ってしまった。
これが、ケラトサウルスの持っている超技『
それを背景にティラノはアメジストに突進していくが、尾先のサゴマイザーで薙ぎ払われ、勢いを止められてしまう。そこへトロサウルスが突撃してティラノの体を横からぐいぐいと押し込んでいったものの、頭に食らいつかれ、大きく振り回されてから投げ飛ばされてしまった。
その吹き飛ばされたトロサウルスの体は、まっすぐガブのところへ飛んでいくではないか!
『ガァブッ!』
しかしガブもただそれに潰されてしまうほど鈍くはない。タイミングよくジャンプをしてそれを躱すことに成功した。しかし衝撃により巻き起こった風圧でその小さな体が煽られてしまい、運悪くウンガロの方へ飛んでいっていまったのである。
思わぬ僥倖に、ウンガロは両手を大きく広げてガブを抱きとめようとしている…。
「おおーっ! よーしよーし、ここだここー!」
「ガブーッ!」
リュウタが叫ぶものの、空中でそう簡単に着地点は変えられない。このままガブはウンガロに捕まってしまうのだろうか…。
だが皆さんお忘れではないだろうか。こちらには投げ縄の名手がいるのである。
「任せなさい! そーれっ!」
そこへメアリーが投げ縄を投げ入れ、ガブの体を回収していったのである。更に抱きとめようとしていたウンガロに、イナズマが後ろから突進して倒したではないか。
「ぐほっ!?」
そして、ガブを抱きとめたリュウタのもとへ、イナズマも戻っていく。
「ガブ! イナズマ!」
するとガブはすぐさまリュウタの手の中から離れ、地面に落ちたディノホルダーを見て、イナズマと頷き合った。そして2体は協力して蓋を齧り取り、中の石版を取り出して彼に差し出したのである。
「ありがとう! ガブ、イナズマ!
よーし! いっくぞー!」
そしてリュウタは石版を弄って2体をカードにし、石版にスキャンした。
「ディノスラーッシュ!
轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」
ゴオォォォォォ!!
ギュオォォォォォ!!
ガブとイナズマが成体になって降り立つと、2体はトロサウルスに食らいつくティラノへまっすぐに突進していく。そしてその体を弾き飛ばし、トロサウルスの窮地を救うことに成功した。
「よくやったぞ! ガブ! イナズマ!
オウガ! トロサウルスはオレ達が助けるから、アメジストをパラパラのカバーに回してやってくれ!」
「分かった! じゃあアメジスト! 今度はそっちの…ケラトサウルスを相手に戦ってくれ!」
オウガの指示に応じ、アメジストはケラトサウルスの方へと駆け出していった。
そしてオウガは、レクシィとトリケラトプスの決闘の方へと視線を移す。尚も攻撃を続けようとするトリケラトプスに対し、レクシィは語りかけているようだった。
『見ただろう? 3本角よ。この世界では恐竜は力尽きるとあの紙切れに戻るだけだ。だからこの世界では、どうやってもオマエは私を殺すことはできない。
それならば…オマエの友人を助けてやるべきなのではないのか?』
レクシィの言葉にようやく耳を貸したのか、トリケラトプスは攻撃の手を止めると、レクシィとガブ達の戦いとをゆっくりと見比べ…ガブ達の方へと合流していった。
『…フン。私にもオマエの甘さが移ってしまったのかもしれんな。
これでは元の世界に戻ってから苦労しそうだ』
「大丈夫だよ。その時はずっと俺と一緒にこの世界で暮らせばいいからさ」
『…その言葉、間違っても軽々しく使うでないぞ。
特にあのミサとかいう女にはな』
「…?」
一方…。
「ほへぇ〜…」
そんな恐竜バトルをアホみたいな顔で見ていたウンガロの体に、メアリーの投げた投げ縄がかかる。
「ここまでよ! ウンガロ!」
「しっ、しまった〜っ!」
そして、ランランとスピノの戦いにも決着がついた。マルムが技カードをディノホルダーにスキャンしたのである。
「『
するとランランの嘶きで、3体のプテラノドンが姿を現し、スピノへと向かっていく。
「うわーっ! ちょっと待つザンス!」
ノラッティ〜がそう叫ぶものの、時すでに遅しである。プテラノドン達は1体ずつスピノの体を鋭い翼で切りつけ、カードに戻してしまったのだ。
「ぎょっえ〜! そんなのないザンスぅ…」
そして、それを見たオウガもディノラウザーからカードを射出し、スキャンした。
「いくよ、アメジスト! 『
するとアメジストの体を紫色の光と紫結晶の欠片が包み込み、それからアメジストが力強く大地を踏みしめる。するとそこから大地が2つに割れていき、ケラトサウルスの体を地割れに落とし込んでしまったのだ。
何とか脱出しようと藻掻くケラトサウルスだったが、アメジストが尻尾で地面を打ち鳴らすと地割れは閉じ、ケラトサウルスの体を挟み込んでしまった。
ケラトサウルスは絶大なダメージに悶えながら、その身を2枚のカードに戻していく。
そしてそのカード…『ケラトサウルス・ナシコルニス』のカードと『
「よし! ケラトサウルス保護完了!」
一方、ガブやイナズマ、そしてトリケラトプスは、ダメージが大きいトロサウルスを守るように戦っていた。
「もうトロサウルスの体力は残ってないはずだよ!
ここは何としてもあの包囲網をくぐり抜けて、トドメを刺すんだよ!」
ウサラパの声に応じて何とかティラノも向かおうとはするものの、やはりその守りを突き崩すことは容易ではないようだった。
そして、マルムやオウガも技カードを発動したのを見て、リュウタもその手に技カードを取る。
「食らえっ! 『
リュウタが技カードをディノホルダーにスキャンすると、ガブとイナズマの体が黄色い光と電撃に包まれる。そしてガブは両角の間に、イナズマは1本角の先に電撃を溜め始めたのだが…そこにトロサウルスとトリケラトプスも並び立ち、同じように両角の間に電撃を溜め始めたのである。
「なっ、何だい!?」
そしてガブ・イナズマ・トロサウルス・トリケラトプスの4体はまるで剣を突き合わせるかのように上体を起こすと、同時に『
その凄まじい電撃は地形を大きくえぐり取ってしまうほどの威力であり、当然それを受けたティラノもタダで済むはずがない。敢え無く極太の電撃を受けたティラノは、あっという間にその身をカードに戻されてしまったのであった。
「やったぜ! ガブ! イナズマ!」
勝利を称え合うかのようにガブとイナズマはトロサウルスとトリケラトプスに話しかけるが、両者はがくりと膝をつき、それぞれ2枚のカードに戻ってしまった。どうやら今の超技で限界を迎えてしまったらしい。
「ずるいじゃないか! 2体ならまだしも、4体で同じ技を合体させて発動するなんて!」
「へっへーん! 以心伝心だい!」
「くーっ!…ノラッティ〜! スピノはどうしたのさ!」
「ランベオサウルスの技でカードに戻されてしまったザンス!」
「何だってこのスカポンタン〜!」
激怒したウサラパがノラッティ〜の胸ぐらに掴みかかり、振り回していると…。
ランランが頭のトサカを震わせ、何やら音を響かせ始めたのである。しかし、これはいつもの超音波攻撃ではなさそうだ…。
「…ん? 何かしら、この音…」
「なーんかどっかで聞き覚えが…」
すると、彼らの後方の茂みを突き破り、サバンナの動物達が彼らへ襲いかかったのである!
「「「ギャーーッ!?」」」
「ランランが呼んでくれたのね?」
マルムがそう問いかけると、ランランも肯定の返事を返す。どうやらパラパラからこういった音の使い方も教わっていたようである。
一方、逃げ惑うウサラパ達はウンガロをも巻き込んで動物達から逃げ続けていた。
「ノラッティ〜! 何とかおしよ〜!」
「ミーには無理ザンス! エドにお願いするザンス!」
「えーっ!? 急に言われても困るッスぅ〜!」
「おいこらーっ! オレまで巻き込むんじゃねぇ〜っ!」
そして逃げ続けた彼らだったが、突然先へ進めなくなってしまう。不思議に思って足元を見ると、そこに大地はなかった。どうやら崖から宙へ駆け出してしまったようである。
そして、人間である以上引力に逆らうことなどできようはずもなく…。
「「「「んぎゃーっ!?」」」」
彼らは真っ逆さまに崖下の河へと落下してしまったのであった。それでもなんとも悪運のよいことに流木が流れてきたので、それに掴まって呼吸を確保することはできた。
「へえっ…へえっ…」
「助かったザンス…」
「どうなるかと思ったぜ…」
「おおおおれ泳げないッスぅ〜!…はあ、助かったッス…」
「…でも、本当に助かったのかねぇ…?
どこへ流されているかも分からないってのに…」
ウサラパの危険予知は当たっていた。流れの先には、大きな滝が横たわっていたのである。
「「「「なんでこーなるのぉ…」」」」
そして彼ら4人の体は、滝壺へと吸い込まれていったのであった…。
その後、ウンガロのキャンプ地を突き止めたメアリー達動物保護団体は、団員を全員逮捕した上で、彼らに捕らえられた動物達を親や群れに引き合わせていた。
今はその最後の1体…冒頭で捕らえられたシロサイの幼体を母親に引き渡しているところである。
「良かったわ〜。みんな家族のところへ帰れて…」
「ええ。ウンガロ本人を取り逃がしてしまったのは心残りだけど…これでしばらくは平和になるわ…。
あなた達も恐竜達を密猟団から守っているのね」
「アクト団がどんな連中かはまだよく分かってないんですけど…そんなところです」
「そうそう! 恐竜達が助けを求めてるからさ!」
「…助けを?」
「そうです。メアリーさんも、助けを求める恐竜のため、頑張って下さい!」
「フフフ、ありがとう! あなた達もね?」
「「「「はい!」」」」
メアリーからの激励の言葉に、Dキッズは元気よく返事をしたのだった…。
その頃 サバンナのどこかの森林地帯
「ハァ…ハァ…。何とか滝壺からは生き残れたが…クソッ! 縄はほどけねぇし、衛星電話や銃もスタンガンもどっかに落としちまったし…散々だぜ…」
ウンガロは、どこかの森林の中を彷徨っていた。もう既に日は沈み始めており、辺りは暗くなってきている。
そんな彼は、ふと気配を感じて後ろを振り返る。すると後ろには、無数のグリーンの光がゆらゆらとしていたのである。
ウンガロにはそれが何なのか分かった。それらは、動物の目の光だった。それもよく見れば、昼間スタンガンで痛めつけたあの小さなトカゲ達ではないか。
弾けるように彼は走り出した。しかしただでさえ足場の悪い森林の中では、思うように走れない。
やがて足がもつれ、彼は転んでしまった。そんな無防備な彼に、グリーンの眼光のトカゲ達が飛びかかっていく…。
否、トカゲではない。彼らも立派な恐竜…コンプソグナトゥス達だったのだ。
体格こそ小さいものの、こうして群れになれば人間でも食いちぎることができるのである。
「何だこの…ぐあっ…ぐぎゃっ…ぎゃっ、ぎゃあああぁぁぁぁぁ…」
暗い森林の中に、ウンガロの叫び声が響き渡る。しかし彼の悲鳴は、やがて夜の闇の中へと消えていったのであった…。
今回の恐竜解説!
「今回の解説担当は私!古代博士だ!
今回紹介する恐竜は、長大な盾『トロサウルス』! ティラノサウルスやトリケラトプスと共に、恐竜時代の最期を見届けた恐竜の1体なんだぞ!
名前の意味は「突き通すトカゲ」。化石を見てみると、頭骨のフリルにとても大きな穴が1対空いていることが分かるだろう? これが名前の由来とされているのだ!
その体格は、トリケラトプスやペンタケラトプス、ティタノケラトプスにも迫る7〜9メートルで、角竜最大級の種なんだぞ!
何よりも特徴的なのが、この大盾のように大きなフリルだな! その最大の大きさは2.9メートル! これは陸棲動物の中では最大のものだと言われているぞ!
同じように大きなフリルを持つ種だと、先程も挙げたペンタケラトプスがいるが、これはそれを更に上回るかもしれないのだ。
化石は北アメリカの様々な場所から見つかっていてな、地域ごとにフリルに様々な差異が見て取れるところも面白いところだな!
ところで…トロサウルスといえば、2010年にスキャネラ氏とホーナー氏が発表した、『トリケラトプス・トロサウルス同一種説』を話しておかねばならないな。
彼らの持説を簡潔に纏めると、「トロサウルスはトリケラトプスの老齢個体、つまり同一の種であり、2種は纏めるべきである」というものだったのだ。
しかし結論から言って、この説はあまり支持されなかった。そもそもトロサウルスの幼体や亜成体の化石もあまり数はないものの、見つかっていたからね。おまけに両種は確かに似てはいるものの、違いも相当数存在したんだ。
結局スキャネラ氏はこの説を諦めたようだしな。まあこれに限らず、ハドロサウルス類以外でのジョン・ホーナー氏の発言は話半分程度に聞いておいた方がいいかもしれないな。
しかしこれによって、「トリケラトプスがトロサウルスに纏められる」「トリケラトプスなんて存在しなかった」という論調が出てきてしまったのだ。勿論トリケラトプスの方が先に発見されて命名までされているから、取り消されるなんてことはあり得ない。しかしそのように認識してしまったのは、早とちりなのか、それとも故意に何者かが流した風説なのか…。
ティラノサウルス羽毛問題やスカベンジャー問題でもこういった風説はよく見かけるが、私から言えることは1つだ。
恐竜の新説!みたいな話を聞いてもそれを鵜呑みにはせず、一度立ち止まって考え、そして実際はどうなのか信用性の高い論文や文献を調べること。これが風説に騙されないための心得だぞ!」
ということで、今回はここまでです。
今回出てきたトリケラトプスは、『Jurassic Park The Game』というゲーム作品に出演した、成体のトリケラトプス『レディ・マーガレット』という個体です。シナリオを追う以外はほぼQTEの作品なので、あまりやった方はいらっしゃらないかもしれませんが…もし知っていたらコメント等で言及して下さると嬉しいです。
それでは次回第29話『許されぬ愛!ノラッティ〜の初恋物語!』是非次回も、ご期待下さい。
・追記:今回の恐竜解説をあとがきに追記しました。
また、風属性の超技『剛力竜巻』の説明を設定集に追記しました。