古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

 学校の校庭でサッカークラブの活動に参加していたDキッズの4人は、そこへ駆けつけてきた古代博士から、恐竜が出現したことを知らされた。急ぎ彼らはDラボから今回の目的地であるケニアへテレポートしたものの、到着直後に野生動物保護団体に身柄を拘束されそうになってしまう。だがそのリーダーのメアリーが古代博士の知り合いだったことで便宜を図ってもらい、彼女に恐竜探しを手伝ってもらえることとなった。
 しかしその最中に彼らの車がシロサイに襲撃され、リュウタのディノホルダーが踏み壊されてしまう。
 更にそこへ、スピノと共にアクト団のいつもの3人と、ケニアでも悪名高い密猟組織のボス・ウンガロが現れた。しかも彼らは、成体化できないガブとイナズマに狙いを定めたのである。
 窮地に陥った彼らのもとへ助けに現れたのは、トロサウルスとトリケラトプス・マーガレットの2体だった。しかしDキッズが思った以上に仲良くなった4体は、エースとアインがスピノと戦っている間にその場を立ち去ってしまった。
 その後給水をしていたガブ達のもとへ、再びアクト団とウンガロが現れ、今度はスピノとティラノの2体をけしかけてきた。そこへDキッズも追いついてパートナー恐竜達を召喚するが、レクシィに前世の恨みがあるトリケラトプス・マーガレットがレクシィに矛先を向け、更にカサイ・レックスことケラトサウルス・ナシコルニスまでもが乱入してきてしまう。それでもランランの『朋鋼翼撃』やアメジストの『大地激怒』、そしてガブ、イナズマ、トロサウルス、トリケラトプス・マーガレットによる『Q激力雷電』によって、アクト団を退けた上に、出現した恐竜達も保護することができたのだった…。




第29話:許されぬ愛!ノラッティ〜の初恋物語!
前編


 アフリカ サバンナ 森林地帯

 

「ウサラパ様ぁ〜…エドぉ〜…どこザンスかぁ〜…?

ミーは1体、どこへ行けばいいザンスかぁ〜…?」

 

 すっかり真夜中になってしまい、暗い森林の中をノラッティ〜は1人で歩いていた。どうやら河か滝か、ないしはどこかでウサラパやエドとはぐれてしまったらしい。

 そんな状況の中、彼は何やら鼻につく匂いを嗅ぎ取ったようだ。

 

「…んん? 何ザンスかこの匂いは…。

なんだか嗅いでいるだけで身の毛もよだつザンスが…気になるザンス…」

 

 ノラッティ〜はその匂いの方へ向かう。しかし彼の中の何かはそれに警鐘を鳴らしていた。そっちへ行ってはいけない、と生物としての本能が警告しているというのに、彼は自分の好奇心を抑えることができなかった。

 そしてその匂いのもとへ辿り着き…彼は声にならない悲鳴を上げる。

 そこでは、何かの肉塊を小さなトカゲのような恐竜達が啄んでいるところだったのだ。トカゲ達は小鳥のように囀りながら次々に肉を引き千切っては頬張っており、時折それを巡って小さな諍いを起こしている。

 そして、その肉塊が纏っている布切れにも、ノラッティ〜は見覚えがあった。茶色の上着に青色のジーンズにテンガロンハット…それは、昼間まで一緒に活動していた、ウンガロのものだと気付いてしまったのである。

 

「…ぁああああぁぁぁっ! もうたくさんザンスぅ!

ウサラパ様ーッ! エドーッ! ソーノイダ様ーッ!

誰でもいいから今すぐミーを助けてほしいザンスーッ!」

 

 そうノラッティ〜は叫び声を上げ、その場から走り去る。だがそれを聞きつけた小さな恐竜…コンプソグナトゥス達はそんな彼に目を向けると、ウンガロだったものをその場に放置し、今度はノラッティ〜のあとをつけ始めたのだった…。

 

 

それから1週間後 アクト団基地 アジ島外周部

 

「さっ、テリジノちゃん! 今日も日課のトレーニングを始めるぞい!」

 

『キュウン!』

 

 ウサラパ達がアフリカのケニアへ出撃してから1週間が経った頃、ソーノイダはテリジノと共に外でトレーニングをしていた。彼が設計したマシンのお陰でテリジノの体から3枚の技カードが分離し、爪から虹色の輝きが消え失せてからもう10数日は経つ。

 そんな中トレーニングをしたいと言い出したテリジノと共に、ソーノイダはこうして外に出て一緒に走り込みやリフティングをしているのである。

 

「テリジノちゃんなら、技カードを切り離した後でももっと強い子になれるぞい!

今日も一緒にトレーニングして、美味しいご飯も食べて、それから沢山遊ぶぞい!」

 

『キュウン!…キュ?』

 

 ソーノイダの真似をするようにガッツポーズを取ったテリジノだったが、ふと何かを見つけたのか海の彼方を指差す。

 

「どうしたんぞいテリジノちゃん? 海なんか指差して、クジラでも見つけたぞいか?」

 

 そしてテリジノに倣って海を見つめたソーノイダは、その目を見開いた。

 なんと、1艘のイカダがこちらへと流れてきていたのだ。そしてそこには、ウサラパとエドが乗っているのが見えた。

 

「あいつら…ようやく帰ってきたぞいか!

まったく! ずっと連絡も寄こさんでどこをほっつき歩いておったのだぞい!

…ん? 何故ノラッティ〜がおらんのだぞい?」

 

 プリプリ怒りながらも、ノラッティ〜がいないことに気がついたソーノイダは、彼らに投げ渡すための救助浮き輪を探しに行ったのであった…。

 

 そして無事アジ島に上陸したウサラパとエドに、早速ソーノイダは質問をする。

 

「おい! ノラッティ〜がおらんではないか! あやつはどうしたのだぞい!」

 

「それがですね、ドクター…」

 

「そのう…帰る途中で姿を見失っちゃったんス…」

 

「何じゃとーっ!? ぞい! ノラッティ〜とはぐれたってどういうことぞい!?」

 

「あのですねぇ、ドクター…滝から落ちる前までは確かに一緒だったんですけど…」

 

 そう言ってウサラパは先週の出来事を思い出す。サバンナの野生動物に追われて崖から河へ落っこちたウサラパ達3人とウンガロは、更に滝壺へと落下した。

 ここまでは前回のお話で描写された通りである。

 その後ウサラパとエドは何とか岸へ泳ぎ着いたものの、その段階で既にノラッティ〜とウンガロの姿を見失ってしまっていたようである。

 

「滝壺から死に物狂いで岸に這い上がった時には…」

 

「ノラッティ〜の姿が消えていたんですの!」

 

「ぬぬう…。つまり行方不明ということぞいか?」

 

「そういうことになるッス…」

 

「ったく! 何たる事ぞい! ひっじょーに悲しいぞい!」

 

「そうなんですのよ! 例え普段は役に立たないウドの大木なノラッティ〜でも、いなくなってしまうなんて…」

 

「ほんと、仲間が消えたなんて悲しすぎるッスよぉ…」

 

 ノラッティ〜がいなくなったことを嘆くウサラパとエドだが、ウサラパの言い方がなかなかに酷いように感じなくもない。

 しかし、そんな彼らの言葉に、ソーノイダがムッとした表情を浮かべる。どうやら彼が気にしているのは、ノラッティ〜の安否ではないようだ。

 

「バカタレーっ! ワシが悲しんどるのは、お前らがいつもいつも恐竜を取り返せずにおめおめ逃げ帰ってくることぞい!

ノラッティ〜なんぞどうでもよいから、次こそは恐竜を捕まえて帰ってくるのだぞい!」

 

「「ぎょへーっ!?」」

 

 そう言うとソーノイダは、テリジノのリフティングのために持ってきた鉄アレイで2人を殴り飛ばしたのだった…。

 

 

 さて、そんなノラッティ〜はその頃、どこで何をしていたのかというと…。

 

「こ…ここはどこ…? 何でこんなところにミーは…」

 

 彼は、どこかの砂漠をあてもなく歩き続けていた。しかも、何故こんなところを歩いているのか、彼自身よく分かっていないようだ。

 

「た…確かあれは…アフリカの森で…」

 

 そこで、ノラッティ〜はゆっくりと1週間前のことを思い出す。

 彼はコンプソグナトゥス達から逃げ出した後、足を滑らせてまた河へ落ちてしまい、そのまま長い長い距離を流された挙げ句大西洋へ出てしまったようである。

 

「あの後…河を流されて…いつの間にか海へ出て…港で一悶着あって…飛行機に乗せられて…気がついたら…。

こんな砂漠に…!」

 

 そして最後はこの砂漠へ落とされたようである。何をどうしたらこんな大冒険になるのであろうか。

 

「意味分からないザンス…」

 

 彼もよく分かっていないようだ。

 しかしここは砂漠であり、大多数の生物は生きることすら困難な地域である。そんな中を1人彷徨うノラッティ〜もまた、いつ死を迎えるか分からない状況であった。

 

「み…水…水を…」

 

 渇きに渇き切ったノラッティ〜は、ヨロヨロと歩くうちに何かを踏みつけ、転んでしまった。彼が踏みつけたそれは、なんとあの卵型カプセルであり、踏まれた衝撃で割れ、中から2枚の恐竜カードが排出されたのである。

 そして、そのうちの1枚は、ノラッティ〜の目の前にヒラリと落ちてきた。裏の模様を見る限り、これは草属性の恐竜のようである。

 

「…ん? こっ! これは…!」

 

 それを見たノラッティ〜はカードを手に取り、自分の後ろを振り返る。そして彼は、卵型カプセルにその恐竜カードを入れた上で、更に袋の中へと仕舞い込んだのだ。これで相当のことがない限り、カードをなくす心配はなくなった。

 

「つっ…捕まえた!…ザ…ンス…」

 

 しかし、そこで限界を迎えてしまったノラッティ〜は、仰向けに倒れ、気絶してしまった。

 そんな彼の周囲を一迅の風が吹き抜けると、もう1枚のカードが飛ばされ、近くのサボテンに触れる。するとそのカードは緑色の光を放ちながら実体化していく…。

 そしてその光の中から嘶きと共に姿を現したのは、モンゴル原産の大型鳥脚類・サウロロフスだった!

 サウロロフスは目の前に倒れていたノラッティ〜の匂いを注意深く嗅いでから、何かを探すかのように周囲を見渡してから立ち去っていく。

 そして、誰もいなくなったノラッティ〜の周囲に、あのコンプソグナトゥス達が囀りながら集まってきたのであった…。

 

 

その頃 日本国三畳市 Dラボ

 

「ええっ!? 故障!?」

 

「転送システムが? よりにもよってこんな時にですか?」

 

 恐竜出現の通知を受け、Dキッズは急ぎDラボへとやって来たのだが、そこで古代博士とミサから、転送システムが故障していることを聞かされたところだった。

 

「ううう…えーい、くそっ! やっぱりダメだ!

場所を特定することすらできんぞ!」

 

 そう言いながら転送装置をガンガン殴りつける古代博士に、リュウタは止めに入った。

 

「ちょっと! 父さん何やってるのさ!」

 

「昔のテレビは叩けば直ったんだがなぁ…」

 

「パパさん。相手は精密機械なんですから、乱暴に扱っちゃダメですって!」

 

「そうだよ父さん! 余計壊れたらどうするのさ?

それよりリアスさんに直してもらえば…」

 

「うーむ…。それがなぁ…」

 

 何故か返答に詰まる古代博士に、リュウタとレックスが不思議そうな顔をしていると、そこでマルムが会話に入ってきた。

 

「お姉ちゃんならダメよ?」

 

「えっ? どうして?」

 

「だって、メキシコに出張中だもん」

 

「「えーっ!?」」

 

「うむ。そうなんだよ。だからミサ君に頼んでプログラムの異常がないかどうかコードを確認してもらっているんだが…」

 

 そう言って古代博士が向けた視線の先には、ミサとオウガが並んでパソコンの画面を覗き込んでいる光景があった。心なしかミサの目は、疲れているようにも見える。

 

「どうですか? ミサさん。ずっとよく分からない文字の羅列が流れているようにしか見えないんですけど…」

 

「リアスさんが残していった資料によると、このプログラムコードは全部で200万行以上はあるみたいなの。だから全部チェックするとなると、こうして流してみるしかないのよ…」

 

「…この分だと、一生かかっても終わらなそうですね…」

 

「…わたしも同じ意見かもね…」

 

「でも、今の状況だとミサさんが頼りなんです。

何か、俺に手伝えることってありますか?…プログラムコードはよく分からないので、それ以外になりますけど…」

 

「そうね…。それじゃあ、コーヒーを淹れてきてもらえる? この文字の羅列を見ていると、段々眠くなってきちゃって…」

 

「分かりました。淹れてきますね」

 

 早くも疲れ切った様子のミサと、そんな彼女のためにコーヒーを淹れに行ったオウガからリュウタ達は視線を外し、古代博士へと戻す。

 

「それで父さん。リアスさんは何でメキシコに行ったの?」

 

「うむ。オーエン博士が今メキシコのとある発掘現場に赴いていてな。そこで新しく見つかった貴重な化石を我がDラボに譲ってもらえるということで、急遽リアス君に受け取りに行ってもらったんだ。

私は次の学会の準備があるし、ミサ君はパスポートがないから消去法で…という形ではあるんだがな…」

 

「パパのところに?

それにしても、恐竜が出たのに場所も分からなければ移動もできないんじゃ、どうしようもないよ…」

 

「父さん、何とかならないの〜?」

 

「自慢じゃないが、私もミサ君もこのシステムがどんな仕組みになってるのかサッパリ分からんからな…」

 

「それなら、お姉ちゃんに連絡してみたら?」

 

「もうそれは考えてさっき電話してみたんだが…どうやら今は砂漠のど真ん中を移動しているらしく、いくらかけても繋がらないんだよ…」

 

「それならもう1回連絡してみてよ! このままじゃまたアクト団に先を越されちゃうからさ!」

 

「う、う〜む…。分かった。もう一度やってみよう…」

 

 ということで、古代博士は衛星電話を手に取り、リアス側の呼び出し番号を入力し始めたのだった…。

 

 

その頃 メキシコ ソノラ砂漠

 

 一方、メキシコに赴いていたリアスもまた、車に揺られながら衛星電話を操作していた。相変わらず繋がらず、四苦八苦しているところのようだ。

 

「う〜ん…。さっき着信があったみたいだから折り返し連絡したいのに…やっぱり圏外だわ…」

 

 そう呟いて困り顔を浮かべるリアスの手から、衛星電話をひったくる者がいた。隣の座席に座るオーエン博士である。

 

「なぁにをやっとる、リアス君。

ここでこんなものは必要あるまい。ふんっ!」

 

 なんということだろうか。オーエン博士は、雰囲気に相応しくないという理由だけで衛星電話を車から放りだしてしまったのである。

 これには無理もないことだが、リアスも呆気に取られてしまう。

 

「ついでに…これもじゃ!」

 

 オーエン博士の暴走は止まらない。今度はリアスの眼鏡を摘み取ると、それも車外へ投げ出してしまったのだ。

 

「あっ! は、博士!」

 

「お〜、思った通りじゃ。リアス君。君は眼鏡で人生を損しておったぞ?」

 

「はぁー?」

 

「その美貌じゃよ。眼鏡さえ無ければ、君は相当イケてるナオンじゃ!」

 

「…ナオン?」

 

「眼鏡を外して生活するんじゃ。そうした方が、君は幸せになれる!」

 

「だからって…衛星電話も眼鏡も捨てるなんて酷いじゃないですか!」

 

 至極真っ当な抗議を、リアスは口にする。私物を勝手に捨てられたとなっては当然だろう。

 しかし、オーエン博士は低く笑ってから頭のソンブレロを取り、中から捨てたはずの衛星電話と眼鏡を取り出した。どうやら捨てたフリをしたらしい。

 

「ジャ~ン! 冗談じゃよ〜!」

 

 それを見たリアスは安心した様子で手を伸ばした…が、オーエン博士はすぐさまそれを引っ込めてしまった。

 

「ダ〜メじゃ! ワシと一緒にいる間は、これは預かっておく。どこかに連絡がしたければ、発掘現場近くの村で通信装置が利用できるはずだし…」

 

「そうじゃなくて、私…眼鏡がないと…」

 

 これまた当然だが、普段から眼鏡を使っているリアスは近視寄りのようで、オーエン博士の顔すら滲んでよく見えなくなっていたのである。

 しかし、当のオーエン博士は全く悪びれる様子もなかった。

 

「だ〜い丈夫じゃ! 人間見た目が1番…」

 

 その時、車が急ブレーキをかけ、リアスとオーエン博士は前へつんのめった。

 

「な、何じゃ、どうした?」

 

 オーエン博士は運転席の男…パンチョーに話しかける。

 

「オーエン博士。行き倒れでさぁ」

 

 なんと、彼らはちょうど行き倒れて動けないノラッティ〜を発見したのである。

 すぐさまオーエン博士達は車を降り、ノラッティ〜の様子を診てみることにした。

 

「まだ息はあるだよ」

 

「大丈夫ですか? しっかりして…」

 

 リアスが水筒の水をハンカチに染み込ませ、ノラッティ〜の顔を拭いてやると…彼は目を覚ました。

 

「良かった。目を覚ましたみたい…」

 

 その言葉と共に微笑んだリアスに、ノラッティ〜は全ての思考を奪われてしまった。

 

「あぁ…。え、エンジェル…ザンスぅ…」

 

 何なのかよく分からない戯言を呟き、ノラッティ〜は再び意識を手放してしまった。

 

「たいへん! また気を失っちゃったわ!」

 

「うむ…これは一大事だ! パンチョー! すぐに車に乗せてやりなさい!」

 

「んだ!」

 

 そうは言ったオーエン博士であったが、パンチョーに担がれて運ばれていくノラッティ〜を見て、首を傾げた。

 

「う〜む…。しかしこの男、どこかで見かけたことが…あるような…ないような…。

う〜ん…んんん!?」

 

 実際のところ、彼は以前アメリカ自然史博物館で起きたディノモンド争奪事件の時にノラッティ〜とは顔を合わせていた。しかし彼はウサラパに夢中だったこともあり、ノラッティ〜をよく覚えていなかったようだ。

 何とか思い出そうと彼が転がっていたところへ目を向けたオーエン博士は、突然大声を出したのである。

 

「おおおおっ! これはっ!

リアス君! 少しこれを見てくれたまえ!」

 

「どうしたんです? そんなに興奮して…」

 

「行き倒れていた彼の周りに…ほら! こんなに沢山の足跡が! この3本指の足跡は、小さな恐竜のものではないのかぁーっ!?」

 

「う〜ん…」

 

 リアスもその足跡を見てみる。確かにそのように見えなくもないが、普通に小鳥か何かの足跡ではないのだろうか。

 

「小鳥じゃないんですか? 恐竜と決めつけるのは時期尚早な気も…」

 

「いいや! 見ての通りここは見渡す限りの砂漠だ!

つまり! このような小鳥がこんなところにいるはずがないのだよ!」

 

「…そんなことより博士。この人を安静にできる場所に早く向かった方がいいんじゃないですか?」

 

「うっ!…う〜む…確かにそうだ…。

仕方あるまい。ならば早く発掘現場近くの村へ行くとしよう!」

 

 ということでオーエン博士は後ろ髪を引かれる気持ちもありながらも車に乗り込む。3人とノラッティ〜を乗せた車はその場から走り去っていき…その姿が小さくなった頃に物陰からコンプソグナトゥス達が現れた。

 どうやらオーエン博士達の車が接近してきたのを見て、気配を悟られないようずっと息を殺して潜んでいたらしい。お陰でノラッティ〜は食い千切られずに済んだようだ。

 彼らは苛立たしげに囀ると、車の去っていった方向へ走り始めたのであった…。

 

 

その後 ソノラ砂漠 発掘現場

 

 ようやく発掘現場へ到着したリアスは、オーエン博士から約束の貴重な化石を受け取っていた。

 

「お待たせしたのう、リアス君。

これが今回の発掘で発見された、恐竜の卵の化石じゃよ。恐らくは鳥脚類のものかと思われるのだが、詳しいところはまだ分からなくてな…。

だがしかし、貴重なものであることには変わりない。大事に持って帰ってくれ」

 

「ありがとうございます。古代博士も喜びますわ」

 

 そこで、テントの中へ入ってきたのは、先程の運転手・パンチョーであった。

 

「リアスさん。日本のDラボから、大至急連絡が欲しいとの連絡があったそうです」

 

「Dラボから? どうしたのかしら…」

 

「何か起きたのかもしれんのう。ここに来る前にも言ったように、近くの村に通信設備があるから、そこを使いなさい」

 

「はい、そうさせてもらいます」

 

 その頃、その近くの村では…。

 

「どわぁーっ!? ザーンスッ!?

こ…ここはどこザンス?」

 

 ちょうどノラッティ〜が目を覚ましたところだった。どうやら涼しい場所で点滴を受けたことで、元気を取り戻したようである。

 しかし彼はその間意識を失っていたので、治療をされていたことなど知る由もない。

 

「ないっ! ないっ! ミーのバッグがないザンスぅーっ!

確かにあの時持ってたはずザンスのに…」

 

 それどころか、どこかで荷物を預けられてしまったようで、彼が死に物狂いで確保した恐竜カードがなくなってしまっていたのだった。寝かされていた部屋を隅々まで探し回るものの、やはりどこにもないようだ。

 

「どうしてないザンスーッ!?」

 

 そう叫びながら窓を開け放った彼だったが、その動きが止まってしまう。

 何故なら、彼が寝かされていた家のちょうど前をリアスが通りかかったからであった。

 

「エンジェル…おお…マイ・エンジェル…!」

 

 どうやら先程死にかけていた状態で眼鏡を外したリアスを見たことで、一目惚れしてしまったようである。

 

「おお…マイ・エンジェル…。なんて美しい…あらっ?」

 

 だがそこでノラッティ〜は、リアスが肩からかけているバッグに不自然な膨らみがあることに気付いた。

 実際のところ、それは先程オーエン博士から貰った恐竜の卵の化石(専用ケース入り)なのだが、不運にもその形や大きさが卵型カプセルにそっくりだったのだ。

 

「あれは恐竜カードのカプセル!? そんな…あの方はミーを助けてくれたエンジェル…。

エンジェルがミーのものを盗むなんて…そんなはずが…」

 

 ノラッティ〜は一目惚れした相手が泥棒かもしれないという疑念と、そんなはずはないと信じたい気持ちの間で板挟みになってしまっていた。

 重ねて言うようだが、バッグに入っているのは恐竜の卵の化石(専用ケース入り)である。

 しかし、更に彼にとって悩みのタネとなるものまでもが来てしまったのである。

 

「わっ! あっ、あれは!」

 

 独特なプロペラ音を聞いたノラッティ〜が上空を見上げると、そこには彼にとっては見慣れた小型飛行機が飛んでいた。そしてその胴体には、アクト団のマークがプリントされている…。

 アクトサーチでサウロロフスの出現を感知したウサラパとエドがこのメキシコへやって来たのであった。

 

 その頃、上空の飛行機内部では…。

 

「恐竜の反応があったのはこの近くらしいッス」

 

「いよいよ、アタシ達2人だけの冒険の始まりだよ」

 

「ちょっと心細いッスけど…ノラちゃんの分も頑張るッス!」

 

「そうよ! ここで恐竜が出たって聞けば、ノラッティ〜もやって来るかもしれないからね!」

 

 すっかりノラッティ〜をいないものとして話を進めているウサラパとエド。勿論彼らは、今地上でそのノラッティ〜が必死に叫びながらその飛行機を追いかけていることなど知りようがなかったのであった。

 

「そうッスね! じゃあ着陸させるッス!」

 

 しかもあろうことか、飛行機を着陸態勢に入れたのである。その真下にはノラッティ〜がいることも、勿論彼らは知らなかったのであった。

 

「ぎぃやあぁぁぁぁ……ぶっ!?」

 

 そのままノラッティ〜にのしかかる形で飛行機は着陸し、ウサラパとエドはメキシコの地に降り立った。

 

「今、何か声がしなかったッスか?」

 

「えぇ? そうかい?」

 

 そんな会話をしながら周囲を見渡す2人の耳に、ノラッティ〜の呻き声が聞こえてくる。

 

「恐竜の鳴き声かねぇ…?」

 

「違うッスよ。これは…」

 

「「ノラッティ〜!?」」

 

 そこで、ようやくウサラパとエドは飛行機の下敷きになっているノラッティ〜に気が付いたのであった。

 

「こんなところでいたのかぁい?」

 

「良かった! 心配してたんスよ!」

 

「良かった無事で! いつかは見つかると思ってたけど…」

 

「こんなに早く再会できるなんて!」

 

「アタシゃ嬉しいよぉ〜!」

 

 喜ぶウサラパとエドに、ノラッティ〜は揉みくちゃにされてしまう。しかも彼は飛行機の下敷きになっているというのに、ウサラパ達はかなり無理な体勢を取らせようとしてしまっていた。

 だが、ノラッティ〜が苦悶の表情を浮かべていることにウサラパはようやく気づく。

 

「ん? どうしたんだい? 再会が嬉しくないのかい?」

 

「くっ…苦しいっ…ザンス…」

 

 その後、ようやく飛行機をどかして自由の身になったノラッティ〜は、ここまでの経緯をウサラパ達に詳しく言い聞かせていた。

 

「ケニアからメキシコまでそんなに長い旅をしてたなんて…ノラちゃん、大変だったッスねぇ…」

 

「アンタ、よくそれでここまで生き残れてたもんだよ。運がいいのやら悪いのやら…。

それで、本当なのかい? 恐竜カードのカプセルを回収したっていうのは…」

 

「そ…そうザンスけど…」

 

「けど…? 何よぉ?」

 

「ちょっと…問題が…」

 

 先程までとは打って変わって口籠り始めたノラッティ〜に、ウサラパとエドは怪訝な表情を浮かべるのだった。

 

 

 その後…あの村の民家の一室に、リアスの姿はあった。今は通話してきたDラボの古代博士達と連絡を取り合っているところである。

 

「なるほど…。テレポート装置が故障して、それで恐竜が出現した場所の特定とそこへのテレポートができなくなったから連絡を寄越したんですね」

 

『そういうことなのだ。どうかねリアス君。今はミサ君にプログラムコードの確認をしてもらっているんだが…』

 

「プログラムコードって…あの膨大なコードの中から問題のある部分を見つけ出そうとしてるんですか!?

博士! そんな干し草の山から針を探すようなこと、今すぐやめさせて下さい!」

 

『わ…分かった…。おーいミサ君! プログラムコードの確認はしなくていいみたいだぞー!』

 

 古代博士がそう呼びかけると、通話先からミサの疲れ切った声と、そんな彼女を労うオウガの声が聞こえてきた。

 そこで古代博士と代わり、リュウタがリアスと会話をすることにしたようだ。

 

『リアスさん! それで装置を修理するためにはどうしたらいいの?』

 

「まずは基盤を開いてみて。そこにある赤いコネクターを見てもらえるかしら?」

 

『基盤の…赤いコネクター…?』

 

「そう。そのコネクターを抜いて、ショートしていないかテスターで調べてみて」

 

『分かった。ちょっと待ってて! 調べてみる!』

 

 そのように通話中のリアスの後ろの窓から、ノラッティ〜がぬっと顔を出す。だが、丁度リアスの真後ろにいるせいなのか、通話先のDキッズには気づかれてないようだ。

 しかし、ノラッティ〜はなかなかあと一歩を踏み出すことができなかった。自分を救ってくれたエンジェルたるリアスが泥棒だとは信じたくなかったのだ。(事実泥棒ではないのだが)

 

(カプセルをエンジェルが持ってる…なんて言ったら、エンジェルがどんな目に遭わされるか…分からないザンス…。

ミーが何とかしなくっちゃ…!)

 

 そんなノラッティ〜の様子を、崖の上からウサラパとエドが見つめていた。

 

「なーにやってんだい、アイツ…」

 

「あの部屋の中に置いてきた…って言ってたッスけど、何で二の足を踏んでるんスかね?」

 

「な〜んか…怪しいわねぇ…」

 

 明らかに挙動不審なノラッティ〜に、ウサラパが疑いの目を向ける。しかしそんな彼らの後ろから、突然大きな鼻息が聞こえてきたのであった。

 

「「ん?」」

 

 それに気付いた2人が振り向くと、そこには先程ノラッティ〜が取り逃がしたあのサウロロフスが立っていたのである。

 

「「うわぁぁぁぁっ!? お助けーっ!!」」

 

 驚いた2人がその場から逃げ出すと、サウロロフスもその後を追いかけて行く。背を向けて逃げる相手を追いかけるのは野生の本能なのである。

 ウサラパとエドはそのまま坂を下って村のゴミ捨て場へと駆け込むと、その中に置いてあった古い冷蔵庫の中へと入り込んだ。そこに隠れてサウロロフスが諦めるのを待つ算段らしい。

 しかしサウロロフスはその真上に陣取り、高らかに雄叫びを上げた。

 するとゴミ捨て場のあちこちから、グリーンの瞳を輝かせながらコンプソグナトゥス達が次々と這い出してくる。彼らは小鳥のように囀りながら、冷蔵庫の真上に陣取るサウロロフスを取り囲んだ。

 ウサラパとエドは、まさに絶体絶命の状況を置かれてしまったのであった…。




今回はここまでです。
しばらく不定期更新が続くかと思われますが、更新時間を変更する予定はありませんので何卒ご了承下さい。
それでは、次回後編の更新をお楽しみにお待ち下さい。
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