古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
先週は1話も更新できず、誠に申し訳ありません。先週は特に忙しい1週間でして、執筆のための時間も取れませんでした。
どうか今回も、楽しんでいただけると幸いです。
ペルー 地下 月の神殿への道
その後、彼らDキッズの4人は長老や村人と分かれ、アクト団を止めるべく月の神殿へ繋がる通路へ入った。
相当長い間誰も訪れていなかったようで、通路は薄暗く、どこからか冷たい風も吹き込んでいた。
「通路が壊されてなかったから楽に進めそうだけど…なんか嫌な雰囲気だなぁ…」
「お爺さんや村人さん達の話が本当なら、ここには危険なトラップが沢山仕掛けられてるみたいだから、注意して進まないとね」
「…あら? これって壁画かしら?」
そこで、いかにも古代ラテンアメリカを彷彿とさせる壁画を見つけたマルムが手を伸ばそうとした。
すると、触れてもいないのにその壁画がひとりでに奥へと引っ込み、カチャリという音が響いたのである。その直後、どこからともなく地鳴りのような重低音が響き始めた…。
「何だ? 今の音…」
リュウタが訝しげにそう呟いた時だった。突然彼らの背後にあった床石の1枚が外れ、そこからムカデが這い出してきたのである。
それも、ただのムカデではない。その全長は3〜4メートルはあろうかというほどの、巨大なムカデだったのだ。
更に悪いことに、巨大ムカデはDキッズを見るなり、毒液が滴る牙を打ち鳴らしながら迫ってきたのだ。
「「「「うわぁぁぁぁ!?」」」」
「逃げろーっ!」
巨大ムカデに驚いたDキッズ達は、それから逃げるように廊下の更に奥へと駆け出していったのであった…。
一方、Dキッズより更に先を進んでいたアクト団工作員の3人やジェイソンも、月の神殿の奥を目指しているところだった。
しかし、不気味な雰囲気に耐えきれなくなったのか、当初から気が進んでいない様子だったノラッティ〜が弱音を吐いているようである。
「ウサラパ様〜…引き返しましょうよぉ〜…。ちょっと怖すぎるザンス…」
「ケッ、大の大人…それも男がこのくらいで怖気づいてんじゃねぇよ」
「そうよノラッティ〜。アンタそれでも男なの?
ま、いいわ。行きたくないならここで置いて行っちゃおうかしら…」
ウサラパ達がそう言いながらさっさと奥へ進んでいこうとする。これにはノラッティ〜も大慌てである。前回アフリカで1人置き去りにされてメキシコまで流れ着いてしまったというのに、また取り残されてはたまったものじゃないということだろう。
「にゅやっ!? ま、待ってほしいザンスよぉ〜!」
そしてノラッティ〜が慌てて3人の後へ付いていこうとした…その時だった。
「あたーっ!」
あまりに急いだせいで、彼は何かに躓いて転んでしまったのだ。彼が躓いたもの…床石から突き出た三角形の石は、その衝撃で少しずれ、重い音を立てながら沈み込んでいく。
すると、彼らの近くでも何やら地鳴りのような音が響き始めた。
「「「「ん…?」」」」
突然の地鳴りに4人が困惑していると、突然彼らの頭上から何かが降り掛かってきた。
それは、なんと大きな網だったのである。しかもその網は彼らを纏めて絡め取り、大きく開いた天井の穴から連れ出してしまったではないか。
「なっ、何だぁっ!?」
「「「あららーっ!?」」」
そして、彼らは連れ出された先で、様々な責め苦を受けることになってしまったのだ。
まずは、燃え滾る業火の中をくぐり…。
「火攻めーっ!」
「あちちちちっ!? 何でこんな遺跡の中で炎が燃えてやがるんだ!?」
続いて、今度は冷たい水がどうどうと流れ落ちる滝の中を抜け…。
「水攻めーっ!」
「ガボガボガボッ…さっきの火で火照った体を冷ますにはいいが…こりゃ先が思いやられるぜ…」
更に、一面凍りついた洞窟へと潜り…。
「氷攻め…」
「火に水に氷…。どうなってんだこの神殿は…ぐうぅ…」
そんな様々な試練をくぐり抜け、ようやく4人は神殿内のどこかも分からないところで解放されたのであった。
「こ…今回ばかりは死ぬかと思ったぜ…」
「まったく…こんな仕掛けがあるとは思わなかったよ…」
「ビックリしたザンス…」
「もう帰りましょうよウサラパ様ぁ…。これじゃいくつ命があっても足りないッス…」
今度はエドまで弱気になったようで、ウサラパにそんな泣き言を言ってくる。だがそれに対し、彼女はあくまで確信に満ちた表情を崩さなかった。
「バカだねぇ〜お前達! ここまで侵入者を警戒して罠を設置してるってことは、この先にすごいお宝がある証拠じゃないか!」
「ってことはアクトメタルも…」
「ジェイソンが探してるアンバーとやらもここにあるってことッスか?」
「間違いないよ! オーッホッホッホッ…いてっ!」
誇らしげに高笑いをするウサラパだったが、突然その手に痛みが走ったようだ。
「なぁんかチクチクしないかい?」
「「え?」」
「言われてみりゃあ、確かに…」
そして4人が下を見てみると…そこにあるはずの床はなく、代わりに一面に鋼鉄のトゲが敷き詰められているではないか。
それに気付いた瞬間、彼らは全身に走る突き刺すような痛みをようやく実感し、天井を突き破らんばかりに驚いたのであった。
「「「針地獄ーッ!?」」」
「どーなってんだここの神殿はよーっ!?」
その頃、Dキッズ達も依然として危機的状況にあった。まだ彼らを、あの大ムカデが追跡してきているのである。
既にオウガはバテてきていたものの、何とか3人で彼を励ましながら進んでいたのだが…ついに袋小路に突き当たってしまったようだ。
「ダメだ! 行き止まりだ!」
「ウソでしょ!?」
「ゼェ…ゼェ…。もう、ダメだ…。おしまいだぁ…」
「諦めちゃダメだ! オウガ! ここまで一本道だったんだし、必ず先に進む道があるはずだ!」
レックスがすっかり弱気になったオウガを励ますものの、既に彼らのすぐ後ろに大ムカデは辿り着いていた。
大顎をカチカチと打ち鳴らすその表情は、久々の食事に歓喜しているようにも見える。
「こうなったらパラパラかランランを出して…」
「無理だ! この狭さじゃ、天井が崩れてアウトだぞ!」
「俺達の恐竜はみんな10メートルかそれ以上の大きな体格だし…ここで召喚するのはリスクが高すぎるね…」
その時、レックスが何かに気付いた様子で、壁の一角を指さした。見てみればその壁の片隅が崩れて穴が空いており、その中にレバーのようなものがあるではないか。
「あそこにレバーみたいなのがある! きっと、この壁を開くためのスイッチになってるんだ!
僕が操作してみるよ!」
そしてレックスが何とかレバーへ手を伸ばそうとのしたのだが、思った以上にそれは奥にあるらしく、指先すら届かなかったようだ。
「くっそ〜…。狭くて届かない…」
『ガブ! ガァブ!』
『ゴロロロッ!』
すると、ガブとイナズマがレックスを押し退け、その穴の中へと入り込んでいった。
小柄なチビ恐竜だからこそ、この状況にも対応できたのである。
「そっか! ガブとイナズマなら…! ガブ! イナズマ! そのレバーを倒すんだ!」
リュウタの呼びかけに応じ、ガブはレバーに噛みついて引っ張り、イナズマはその反対側からレバーを押し始めた。
しかし、その間にも大ムカデはジリジリとDキッズの方へと近づいてくる。そして高く鎌首をもたげ、飛びかかってこようとした時だった。
『ガブッ!』 『ゴロッ!』
ようやくガブとイナズマがレバーを動かしたことで壁が開き、Dキッズは壁の向こうへと転がり込んだのである。そしてすぐさま壁は閉じ、見事大ムカデだけを彼らから隔離することに成功したのであった。
しばらく大ムカデは苛立たしげに壁にその体をぶつけていたものの、やがて諦めたのか、不気味な足音と共に遠ざかっていった。それを確認し、ようやくDキッズは一息つくことができたようだ。
「今回ばかりはもうダメだと思ったよ…」
「そうね。これもガブとイナズマのお陰…ってリュウタ! あの子達は!?」
「えっ…いない! まさか向こうに取り残されちゃったのか? おーい! ガブー! イナズマー!」
リュウタが大声で呼びかけると、2匹の声は意外と近くから返ってきた。見ると、壁のひび割れた部分からガブとイナズマが這い出してきているではないか。
どうやら先程レバーがあった空間が、たまたまこちらのひび割れと繋がっていたようである。
「ガブ! イナズマ!」
「良かった〜!」
「2匹とも無事だったみたいだな!」
「お陰で俺達全員助かったよ! ありがとう2匹とも!」
Dキッズは口々にガブとイナズマを労ったところで、立ち上がって周囲を見渡した。
先程までの狭い廊下とは違い、ここはかなり広い空間のようだ。天井からは弱いながらも光が差し込んできており、その空間を神秘的な雰囲気に仕立てていた。
「ここは…?」
「これまでとは打って変わって、いかにも神殿っぽいところね…」
「どこから光が差し込んできてるのかは分からないけど、神秘的で柔らかい光だね。まるで月光みたいだ…」
「…なるほど。月の神殿と言うだけのことはあるかもな」
そして奥に見える豪華な祭壇の上には、光り輝く水晶のドクロが鎮座していたのだ。
それこそが、長老が口にしていた月の神の秘宝の1つ・水晶ドクロであった。
「あーっ! あれってまさか、長老さんが言ってた水晶ドクローッ!?」
「そうよ! 本物だわ!」
「アクト団が来る前に、俺達で守らないと!」
オウガの言葉にDキッズは全員で頷き合い、揃って祭壇へと駆け出した…その時だった。
「オッホッホッホ…」
「「フッフッフ…」」
笑い声と共に、祭壇の後ろからアクト団工作員の3人が現れたのである。どうやらあの火と水と氷と針の試練を乗り越えたことで、Dキッズよりも大分ショートカットできていたようだ。
しかし、先程まで彼らと一緒にいたはずのジェイソンの姿は、どこにもなくなっていた。
「随分遅かったわねぇ、ガキンチョ共…。
生憎だけど、このアクトメタルはアタシ達のものなの」
「アクトメタルだと!? じゃあやっぱり…」
「みんな! あのドクロの目を見てみてくれ!」
そこで、レックスが水晶ドクロを指さす。その水晶ドクロの目にあたる部分からは、彼らがこれまで見たことのない輝きを放つ金属が見えていたのだ。
「長老さんが言ってた、水晶ドクロの中を満たしている金属っていうのが…!」
「そのアクトメタルなのね!」
「その通りザンス! ガキンチョには目の毒ザンスよ。さっさと帰るといいザンス!」
「大人しく引き下がれる訳無いだろ! それはここの村の人達がずっと守り続けてきたものなんだ!
お前達なんかに渡す訳にはいかない!」
「『いかないっ!』って言っても貰っちゃうもんねぇ〜っ!
エド! ノラッティ〜! やりな!」
「「ヘイホーッ!」」
ウサラパの指示を受けたエドとノラッティ〜は、2人がかりで水晶ドクロを外しにかかった。どうやら祭壇に置かれているのではなく、固定されているらしい。
それを見たマルムは、彼らを糾弾する言葉を投げかけた。
「やめて! そんなことをして月の神が目覚めたら、大変なことになるって聞いたわよ!」
「脅かしたって無駄なことさ。そんなよく分からない神なんて、アタシ達のアクト恐竜にかかれば一捻りなんだよ!」
そしてウサラパはアクトホルダーを取り出し、スピノのカードをそれに通した。どうやら先程の戦闘でティラノは体力が尽きてしまったらしい。
「アクトスラーッシュ! まずはナマイキなガキンチョ共を追っ払っておくれ!」
グァギュオォォォォッ!!
それを見たDキッズ側の行動も早かった。まずはレックスがディノホルダーにエースのカードをスキャンしたのである。
「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス!」
グォォォォォン!!
こうして成体となったエースとスピノは召喚されると睨み合いを始めた。それと同時に周囲にはバトルフィールドが展開されていく。
まずはスピノが雄叫びと共にエースに突っ込んでいき、大口を開けて食らいつこうとする。だが、エースは素早く身を引いてそれを躱し、お返しに尻尾で強烈な一撃を放ったのだ。
それを諸に食らったスピノは大きく仰け反ったものの、すぐに体勢を立て直そうとする。しかしそこへ、エースが素早く追撃を加えるべく飛び込んでいった…。
「おっと! そうはいかないわよ! 出てらっしゃいパウパウサウルス!」
そこで、すかさずウサラパが『パウパウパワー』のカードをアクトホルダーに通し、パウパウサウルスを召喚したのだ。パウパウサウルスはスピノを守るような位置に現れ、飛びかかってきたエースを押し退けてしまった。
「また身代わりだ!」
「パウパウサウルスをまだ痛めつけるなんて許せないわ!」
「何言ってるザンスか。パウパウサウルスを痛めつけてるのはそっちのカルノタウルスザンス。
そんなにパウパウサウルスが可哀想なら、ミー達の邪魔をするのをやめることザンスね!」
「それなら…もう一度タッグで押し切るまでだ!
レクシィ! もう一度頼める?」
『…無論だ。まだいくらでも戦えるぞ』
レクシィの了承を得たオウガは彼女をカードに戻し、ディノラウザーにスキャンした。
「行こう、レクシィ! ディノスラーッシュ!
燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!」
ゴガアァァァァッ!!
勇ましい咆哮を轟かせながらレクシィが成体となって現れ、すぐさまエースに加勢しようと走り出した…が、突然その巨体が横から出てきた何かに弾き飛ばされてしまった。
「レクシィ!?」
「な、何よ!? 今度は何が起こってるの?」
「!オウガ! マルム! あれ見ろ!」
そこでリュウタはピンときた様子で、バイザーについた角型ライトを点灯させた。その光に照らし出されたのは、神殿の石畳や石柱そっくりに体表組織を変化させた、インドミナス・レックスだった。そしてその後ろには、不敵な笑みを浮かべるジェイソンの姿もあったのである。
「ジェイソン…! まさか、インドミナス・レックスと一緒にこの暗闇に隠れていたのか…!」
「ククク…そういうこった。パウパウサウルスは敵が2体だと力を発揮できないらしいからなぁ…。こうしてインドミナスでてめぇのティラノを妨害すりゃ、あいつらがアクトメタルとやらを確保する時間稼ぎもできるってもんさ」
「ナイスだよ〜、ジェイソン! そのままガキンチョのティラノを妨害しときな!
ほら! お前達も何してんのさ! さっさとアクトメタルを取り外すんだよ!」
「それが…このドクロ、水晶でできてるだけあって全然壊れないんスよ…」
「こうなったら、このドクロごといただくザンス!」
遂に水晶ドクロごと持ち去ることに決めたノラッティ〜が、祭壇からそれを持ち上げた。すると、その下にあった台座がゆっくりと下へ下がり、カチリという音を立てたのである。
「「「んっ?」」」
それにウサラパ達が気付いた瞬間、彼らの背後にあった壁が崩れ始めた。
「「「どわぁぁぁぁっ!?」」」
悲鳴を上げ、祭壇から駆け下りようとする3人だったが、途中で一旦立ち止まり、後ろを振り返った。突然崩れた背後が気になったのだろう。
「「「あーっ!?」」」
「「「「えーっ!?」」」」
そして、崩れた壁の中から現れたものに、ウサラパ達のみならずDキッズも驚いた。何故なら、そこには巨大な壁画が出現していたのである。
その造形には、Dキッズは見覚えがあった。
「あの壁画…ここに来る途中の通路にあったものと同じだわ…」
「ってことは…あれが…月の神…?」
そして、その壁画の右目の部分には、橙色に光り輝く何かが埋め込まれていたのである。今度は、それを見たジェイソンが歓喜の声を上げた。
「間違いねぇ…! あの色! あの形! あの大きさ!
あれこそおれ達が探し求めていた…最後のジュラシック・アンバーだ!」
そう叫びながらジェイソンは走り出し、ウサラパ達を押し退けて祭壇の上へと駆け上がっていく。しかし、事はそう上手くは進まなかった。
突然右目の宝石は青い光を放つと、その光は祭壇の上へと降り、何かの形へ変化していく…。
そして青い光が止んだ時、ジェイソンの目の前には巨大な何かがそそり立っていたのである。
「こ…こいつはまさか…」
それは、紛れもなく恐竜の姿だった。だが、その見た目がとても奇怪だったのである。
たくましく発達した両前脚には鋭い爪が生え揃っており、背中には巨大な帆のような構造物を背負っている。そしてその頭は、まるで鰐のようではないか…。
グゴォォォォォォ!!
それは、アフリカ原産の巨大肉食恐竜・スピノサウルスだった。しかもその個体は、アクト団のそれよりも更に強靭な体格をしていたのである。
「あれはスピノサウルスザンス!」
「しかも、うちのスピノちゃんより強そうッスよ…?」
「何言ってんだい! こっちのスピノには技カードもあるんだよ! 食らいな! 『テイルスマッシュ』!」
ウサラパがそう啖呵を切って技カードをアクトホルダーに通すと、スピノの体が青い光で覆われた。そしてスピノは素早く駆け出し、もう1体のスピノサウルスへ尻尾の連撃を浴びせたのである。
しかし、相手のスピノサウルスはトドメの1振りを受けても仰け反っただけで、さしてダメージを受けた様子はなかった。
「こいつぁ…ダメだな。あまりにも実力が違いすぎらぁ…」
ジェイソンはそう小さく呟いたが、まさに事態はその通りに進もうとしていた。お返しとばかりに、スピノサウルスはアクト団のスピノに強烈な尻尾攻撃を繰り出したのである。吹き飛んだスピノは壁に叩きつけられそうになったものの、すんでのところで助けに入ったパウパウサウルスが緩衝材になったことで、ダウンを免れることができたようだ。
しかし、ならばと今度はスピノサウルスが高く吠え、その身を青い光と水流で包み込んだ。どうやらこのスピノサウルスも技を覚えているらしい。
するとその水流はやがてスピノサウルスの周囲で大きな渦を巻き始めた。そしてそれと同時に、アクト団のスピノの足元にも巨大な渦潮が現れたのだ。次第にスピノを飲み込まんばかりに迫っていく渦潮に、当のスピノは吠えることしかできていない…。
が、そこで猛然とパウパウサウルスが突進し、渦潮からスピノを弾き出したのである。そしてパウパウサウルスは、代わりに渦潮の中で激しく揉まれることになってしまっていた。
「あれは『
「パウパウサウルスがいなかったら、どうなってたことか…ザンス…」
「チャンスだよスピノ! そのスピノサウルスに、格の違いってやつを見せておやりーっ!」
ウサラパの言葉に応じてスピノは駆け出していったものの、今度は相手のスピノサウルスから強烈なビンタを受け、地面に叩き伏せられてしまった。続けてスピノサウルスはスピノの後頭部に食らいつき、更には頭と首に手をかけて力を加え始めたではないか。
このままではスピノの首がへし折られてしまう!
「まずいッスよ! 首を折られたらスピノが死んじゃうかもしれないッス!」
「もーっ! 何でパウパウサウルスは助けに入らないのさーっ!?」
「『
ノラッティ〜の言葉通りだった。既にこの時、パウパウサウルスは渦潮から解放されてはいたものの、『
…が、スピノは意外な形で窮地を救われることになる。どこからか飛んできたインドミナス・レックスの巨体が、スピノサウルスとスピノを纏めて押し潰したのであった。
その少し前、Dキッズのレクシィとエースは、インドミナス・レックスを相手に戦いを繰り広げていた。最初は2体がかりでも一進一退の攻防が続いていたのだが、インドミナス側のマスターであるジェイソンがアンバーに釣られてその場を離れたため、少しずつDキッズ側が押し込み始めていたのである。
「ジェイソンが目を離してる今がチャンスだ! レックス! 合体技で一気に決めよう!」
「了解! それじゃあ…この技カードだ!」
そしてオウガとレックスは同時に技カードを選択して射出すると、それを手に取ってそれぞれのディノラウザーとディノホルダーにスキャンした。
「『
「『
技カードが読み込まれ、エースの体は灰色の光と風に、レクシィの体が赤い光と炎に包まれる。そして、まずエースは自身を起点に巨大な竜巻を巻き起こし、インドミナス・レックスをその中へと吸い込んだのだ。更にそこへレクシィが『
「「「ぎゃあぁぁぁぁ!?」」」
轟音と共にインドミナスの巨体が2体を押し潰し、ついでにアクト団の3人も吹き飛ばしてしまった。
インドミナスはぐったりと横たわったまま、力尽きたようにカードへ戻っていく。更に、スピノも死は免れたものの、体力は限界に近いようで、殆ど動くこともできないようだ。
「インドミナスがやられちゃったみたいザンスねぇ…」
「スピノもほぼダウンしてるようなもんッス。まあでも、あの怖いスピノサウルスに殺されるよりはずっとマシッスよね」
「…あら? ノラッティ〜。アンタ水晶のドクロはどこにやったの?」
そこで、ウサラパが先程までノラッティ〜が持っていたはずの水晶ドクロがどこにもないことに気づく。
「ありゃ? さっきまで持ってたはずザンスけど…」
「カーバ! 水晶ドクロならここだよーっ!」
その時、リュウタが大声を上げてその手の水晶ドクロをアクト団に見せつけた。どうやら先程ウサラパ達が吹き飛ばされた時に、水晶ドクロもノラッティ〜の手を離れ、Dキッズ側に転がっていってしまったようである。
「「「えーーっ!?」」」
「何やってんだいノラッティ〜! ちゃんと持っとくなりしておきなよ!」
「そんなこと言われてもぉ…」
弱々しげにノラッティ〜が答えた、その時だった。
突然神殿全体に、震動が走ったのである。
「どわあっ!?」
その震動で、アンバーを取ろうと壁をよじ登っていたジェイソンは下へ落下し、祭壇の階段を転げ落ちていく。
「な…何だ!?」
「今度は何が起こってるの?」
「! みんな! 見て! 柱が…!」
そこで、オウガが大声を上げて柱を指さした。なんと、神殿の柱が次々に下へと沈み込んでいっているのである。それと共に、神殿の天井もどんどん下へと下がっていくではないか。このままではここにいる全員が押しつぶされてしまう!
「どどどどうするんだよぉ〜! このペースじゃ、出口に着く前にアタシ達ペシャンコだよぉ〜!」
「どうするって言ったって…」
「もう戦える恐竜もいないし、どうしようもないザンスよぉ…」
しかし、そこでようやく我に返ったパウパウサウルスが、神殿の端へと走り、天井の低いところに自分の体を押し込んだのである。その体に凄まじい負荷がかかり、パウパウサウルスが苦悶の声を上げるが、何とか落ちてくる天井を一時的に止めることができたようだ。
「よくやったよパウパウサウルス! アタシ達が脱出するまで、そこでそうやっていておくれ!
ほらお前達! 脱出だよ!」
「で、でもアクトメタルは…」
「こんなところでアクトメタルを回収するために死ねってのかい? アタシゃゴメンだよ!」
「「へ、ヘイヘイホー…」」
「おっ、おい待て! おれはまだ出るわけにはいかねぇ! あのアンバーを回収しねぇと…」
「アンタも押し潰されてもいいってんなら、残ってもいいわよ!」
「…チッ、ここは出直すか…」
ということで、アクト団工作員の3人とジェイソンは、連れ立って出口へと向かっていったのであった。それに続いて、スピノもびっこを引きながらその後を追っていく。
「おい待て! お前らパウパウサウルスを置いていくのかよーっ!」
リュウタがそう怒りの声を上げても、彼らは意に介することはない様子であった。
これにはDキッズも怒りを隠せない。
「あれだけ助けてもらっておいて、最後は天井のつっかえ棒代わりに置いていくなんて…許せない…!」
「でも、これからどうするの? このままじゃアタシ達もペチャンコにされちゃうわよ!」
「落ち着け! まずどうしてこうなったのかを考えるんだ!」
「…あっ! もしかして、その水晶ドクロを取ったから、あのスピノが出現したり、天井が落ちたりすることになったんじゃないか?」
「そっか! それならこの水晶ドクロを戻せば…!」
「パウパウサウルスも助けられるはずよ!」
「よし…! それなら、俺がドクロを戻してくるよ!」
「おう! 任せたぜ! オウガ!」
その言葉と共にリュウタが差し出した水晶ドクロをオウガは受け取り、早速祭壇へ向かって走り出した…のだが、そんな彼の前にあのスピノサウルスが立ち塞がった。
「っ!!」
思わず足を止めてしまったオウガに、スピノサウルスは大口を開けて迫っていく…が、その体が勢いよく弾き飛ばされた。レクシィがオウガの窮地を救ってくれたのである。
『このスピノサウルスは私が受け持つ! オウガ! オマエは早くそのドクロを戻してこい!』
「ありがとう、レクシィ! 任せたよ!」
「よし、オレ達はパウパウサウルスがあそこから出られるようにしよう!」
「そうね! 絶対に助けてあげないと!」
「エース! ここに入りそうな瓦礫を押してきてくれないか?」
こうして、オウガは水晶ドクロを祭壇へ戻しに、リュウタ達はパウパウサウルスを助けるために、それぞれ行動を起こしたのであった。
その頃 太陽の神殿
Dキッズが神殿の崩落を止めようと四苦八苦している頃、アクト団とジェイソンは命からがら外への脱出を完了したところだった。
「はぁ〜…。助かったッス…」
「でもウサラパ様、本当にアクトメタルを諦めて良かったザンスかねぇ…」
「いいかい2人とも。あれはアクトメタルじゃなかったんだよ」
「…はぁ?」
「いやでもあの光沢は間違いなく…」
「アクトメタルなんて最初からここにはなかったんだよ。いいね?」
「「あっ…はい」」
「うんうん、それでいいのさ。もうこんなところ、2度と来たくないからねぇ…」
エドとノラッティ〜を圧で黙らせ、満足そうに頷くウサラパを、ジェイソンは呆れた表情で見ていた。
「ったく…ソーノイダのジジイにバレて、ドヤされてもおれは知らねぇからな…」
「うるさいわねぇ…。アンタこそあのアンバーとかいうのはどうするつもりなのさ」
「どうもこうもねぇよ。今日のところは出直しだ。
明日また人員を引き連れて、回収に当たらせるとするさ」
「あぁそう。まあ精々頑張ってね。
そうだ! パウパウサウルスを回収しておかなくちゃ…」
思い出したようにそう言うと、ウサラパはアクトホルダーを操作したのだった…。
戻って地下の月の神殿では、リュウタ達がパウパウサウルスの代わりになる瓦礫を運んでいるところだった。しかし彼らの目の前でパウパウサウルスは青い光に包まれてカードに戻り、出口へまっすぐに飛んでいってしまったのである。
しかし出口はスピノが無理やり出ていったせいで埋まってしまっており、そこへぶつかった『パウパウパワー』のカードは力なく地面に落ちた。
どちらにせよ、これで支えを失ってしまった神殿の天井は、もう落ちてくるしかない状況になってしまったのである。
「後は…オウガ次第ってことか…」
「大丈夫。オウガならきっとやってくれるよ」
「そうよ! だってアタシ達Dキッズの仲間だもん!」
そして、オウガも祭壇への階段を駆け上がっているところであった。そんな彼に追い縋ろうとスピノサウルスが何度も大口を開けて迫ってくるものの、そのたびにレクシィがその尾や体に噛みつき、引き戻しているのである。
そしてようやく祭壇へ辿り着いたオウガは、手に持った水晶ドクロを祭壇の元の場所へと置いた。
「頼む…元に戻ってくれ!」
すると、ドクロから月光の如き眩い光が放たれ、神殿を隈なく照らした。それと同時に下がってきていた天井も止まり、レクシィと格闘していたスピノサウルスも凍りついたように動かなくなってしまったのである。
やがて轟音と共に再び天井とそれを支える柱が元のように上がり始めていく。そして、スピノサウルスは静かに目を閉じると、その身を2枚のカードに戻していった。
「やった…! みんな潰されずに済んだんだ!
ありがとう、レクシィ。君がスピノを食い止めていたお陰で、俺達みんな助かったよ」
『…そのドクロを戻し、神殿の崩落を食い止めたのは間違いなくオマエだ。少しは自分のことも誇ったらどうだ』
「そうは言っても…俺は本当に水晶ドクロを元の場所に戻しただけだし…あれ?」
その時、オウガの目の前にカツーンという音を響かせながら何かが落ちてきた。拾い上げてみると、それは月の神の壁画に嵌められていた橙色の宝石…いや、琥珀だったのである。オウガはそれを掌の上に乗せ、まじまじと観察してみることにした。
(形といい、色といい…確かにジェイソンが言っていた通り、ジュラシック・アンバーそのものだ…。
でも…鰐の頭を持つ魔獣の刻印があるって長老さんは言っていたけど、そんなのどこにもないぞ…?)
一方、天井が再び上がっていく様子を見たリュウタ達も、互いに喜びを分かち合っていた。
そんな彼らのところへ、ガブとイナズマがカードを咥えて駆け寄っていく。それらのカードをリュウタが受け取り、戻ってきたオウガも加えたDキッズ全員で見ることにしたようだ。
「パウパウサウルスの『パウパウパワー』に、『スピノサウルス・エジプティアクス』、そして『
「パウパウサウルスは勿論だけど、このスピノサウルスも、神殿を守るために僕達に襲いかかってきたのかもしれないな…」
「そうね…。守るもののために戦う姿って傍目にはかっこよくは映るかもしれないけど、なんだかアタシには悲しいもののように映ったわ…」
「それならさ、せめて俺達がこの恐竜達を労ってあげようよ。特にパウパウサウルスは…あれだけアクト団の連中に尽くしたのに、最後はゴミのように捨てられちゃったんだし…」
「そうだな! ラボに戻ったらご馳走してあげようぜ!
っていうかオウガ! いつの間にそんなの持ってるんだよ!」
そこで、リュウタがオウガの手の中にあった琥珀を指さして尋ねてきた。特に隠す理由もないので、オウガは正直に答えることにする。
「うん。水晶ドクロを祭壇に返したら、上から落ちてきたんだよ。これが多分、長老さんが言ってた『太陽の瞳』だと思うんだけど…俺としてはジュラシック・アンバーの1つなんじゃないかと思うんだよね」
「確かに…オウガやオーウェンさんが持ってるものと同じくらいの大きさと色合いだな」
「持ち帰って古代博士やお姉ちゃんに分析してもらいたいけど…村の人達は許してくれるかしら」
「ま、そこもこれから聞いてみようぜ! じゃあみんな! 外に出るぞー!」
リュウタの言葉を受け、Dキッズは神殿の出口に向かって歩き始めたのだった…。
その頃、地上では、地下から溢れ出した水晶ドクロの光によって太陽の神殿が光り輝いているところだった。その光景に神聖さを感じたのか、村人達は次々に地に伏せ、祈りを捧げている。
そして長老もまた、静かに祈りを捧げてからゆっくりと顔を上げた。
「どうやら…月の神は怒りを鎮めてくださったようだ…」
その時、彼らの背後の森の林冠を突き破り、空へ飛び出していくものがあった。アクト団の飛行船型タンデム自転車である。どうやらこれで出撃に使った飛行機を停めているところまで向かうようだ。
「引き上げるよーっ!」
「ジェイソンは迎えのヘリで帰っていったんだし、ミー達も乗っけてもらえば良かったザンスのに…」
「席が空いてなかったんだから仕方ないッスよ」
「まったく、踏んだり蹴ったりだよぉ…」
そんな会話をしていると、ハンドル部分のモニターに着信が入った。ソーノイダからのもののようである。
『おい! 経過報告はどうなっとるぞい! いくらお前達のようなアンポンタンでも、そろそろ月の神殿は見つけられたぞいか?』
「あっ、ど、ドクター…その…勿論見つけましたのよ!」
『ほう…。ならば、アクトメタルも見つけられたということぞいな?』
「えっと、その…アクトメタルなんてどこにもなかったですよぉ…?」
『何…?』
「そっ、そうザンスよ! 技カードもなかったし、パウパウサウルスも…ぐもっ!?」
うっかり口を滑らせたノラッティ〜に、ウサラパが鉄拳制裁を加える。
「バカ! 黙ってな!」
『…そうぞいか。それは残念ぞい。だがワシはまだまだ諦めんぞい。必要なアクトメタルが集まるまでお前達をこき使って、世界中ありとあらゆる場所を探し回らせてやるぞい!』
「「「え〜〜〜〜っ…」」」
『それじゃ早速! ウソつきのお前らに気合いを入れてやるぞい!』
ソーノイダがそう叫ぶが早いか、彼らが乗っているタンデム自転車に凄まじい電撃が走った。
電撃を諸に受けたウサラパ達3人と、タンデム自転車は哀れまっ黒焦げになってしまったのである。
「「「ビリビリビリビリ!?…クロコゲヒレハレ…」」」
「もーっ、ウサラパ様がウソなんかつくからザンスよ〜…」
「「「ガックシ…」」」
そして、黒焦げになった自転車は空中分解し、3人を空中へ投げ出してしまったのであった…。
「「「あ〜れ〜〜…」」」
その頃 アジ島
「フン、あのバカ共め。ワシにそんなウソが通じると思うてか」
通信に使ったアクトホルダーを片手に、ソーノイダがそう呟いていた。彼らの出身である時間軸ではあの水晶ドクロは既に見つかって研究されており、その結果内部にアクトメタルがあることが分かっているのである。
ただソーノイダは、その事実をウサラパ達に話していないだけだったのだ。
(素直に持ち帰れなかったと言えばまあまた取りに行かせるくらいで許してやったのじゃが…ウソまでついて取り繕うとしたのならもう容赦せんぞい。
多少時間はかかっても、あいつらを苦しめながらアクトメタルを集める方法を考えてやるわい…)
ソーノイダがそんなことを考えながら薄ら笑いを浮かべていると、そこへチビ形態のテリジノがやって来た。どうやら今日も今日とてトレーニングに勤しんでいるようである。
『ミュー、ミュー』
「…ん? おおテリジノちゃん! そういえば今日のトレーニングの時間はもう終わっておったのう!
それじゃあ早速中に入って、一緒にタルボーンヌお手製の美味しいおやつを食べるぞい!」
そうソーノイダが声をかけたものの、テリジノは首を横に振ると、彼の袖を爪で軽く摘んで引っ張ってきた。
『ミュー、ミュー』
「どうしたんだぞい? テリジノちゃん?」
ソーノイダが不思議そうに彼に問いかけると、テリジノは少し進んでから彼の方に振り返った。どこかに案内しようとしているようである。
「一体どうしたぞいか? 分かった分かった、今行くぞい」
そしてテリジノはソーノイダの前を歩きながら、彼をアジ島の見張り台まで案内したのである。それから備え付けの望遠鏡を指さし、続けてジャングルを指さしてみせたのだった。
「望遠鏡で…ジャングルを見てみてほしいということぞいか? 一体どうしたんだぞい…」
ソーノイダは不思議がりながらも望遠鏡を覗き込み…あっと驚いた。ジャングルの一角…林冠の一部が途切れているところに、白い体に黒い斑点がある小型肉食恐竜と、その傍らにこちらは黒い小型肉食恐竜がいたのである。更に白い個体のすぐ傍には、彼の孫娘であるロアの姿があるではないか。
「ばっ、バカな! アクトサーチが正しければ、この島にワシらが管理していない恐竜はおらんはず…。
いや! そんなことよりも! あのままではロアが危ないぞい! すぐ助けに…む?」
そこまで叫びかけたところで、ソーノイダはその場の違和感に気が付いた。ロアは別に襲われていないようなのである。むしろその小型肉食恐竜達と、楽しそうに語らい合っていたのだ。
「ううむ…。何が何だか分からんが…取り敢えず、ロアが危ない目に遭っている訳ではなさそうぞい…」
そしてソーノイダは、彼のすぐ側で見上げてきているテリジノに目をやった。もしかするとテリジノは、トレーニング中にたまたまロアの姿を見て、心配して自分をここまで案内したのではないだろうか。
ソーノイダにはそう思えてならなかった。
「ありがとうのう、テリジノちゃん。
お前なりにロアを心配してくれておったのじゃな?
じゃが、ロアは大丈夫そうじゃ。心配せんでいいぞい」
『ミュー…』
「取り敢えずあの恐竜達については、今度周りに誰もいない時にワシがそれとなくロアに聞いておくぞい。それでお前も安心できるじゃろ?」
『ミュッ!』
「…よーし! 今日のトレーニングはここまでじゃ!
さあテリジノちゃん! おやつの時間にするぞい!」
『ミューッ!』
そしてソーノイダとテリジノは、連れ立ってアジ島の内部へ戻っていったのであった…。
一方その頃 南米ペルー 太陽の神殿
この時、ちょうどDキッズは、月の神殿から脱出し、地上へと出てきたところだった。幸いにも太陽の神殿は崩れなかったようで、そのままの形を保っていたようだ。
その神殿の様子を、リュウタは『パウパウパワー』のカードに話し聞かせてやっていた。
「なあ、パウパウサウルス。お前が頑張ってくれたお陰で、この神殿も崩れずに済んだんだぜ」
「こっちのスピノサウルスも、自分が守っていた神殿が無事だと知ったら安心してくれるんじゃないかな」
「きっと安心してくれるわよ!」
そんな話を4人でしていると、そこへ長老に連れられた村人達が集まってきた。
「おお…異国の少年たちよ。我々もここで見ていたぞ。
どうやら月の神の怒りを鎮めてくれたようじゃな。
我々からも心から礼を言わせてもらいたい。本当に、ありがとう…」
「そんな、お礼なんかいいですよ。俺達は俺達のやるべきことをやっただけですから…。
それで、神殿の奥の壁画からこれが落ちてきたんですけど…」
「む…! これは…紛れもなく『太陽の瞳』!
それに…神殿の奥に壁画じゃと!? そんなものがあったとは私も知らなかった。なんと罰当たりなことじゃ…」
そう呟きながら長老は琥珀に向かって恭しく頭を下げ、それからDキッズに向き直った。
「『太陽の瞳』がそなた達のもとへ降ってきたというのも、我らが月の神の思し召しだろう。
何よりこれまで幾数百年もの間、月の神の壁画すら奉ってこなかった我々にこれを受け取る資格はない。
だからこれは、そなた達が持って帰るといいじゃろう…」
「ありがとうございます! 早速、帰って古代博士に分析してもらおうよ!」
「そうだな! 早く帰ろうぜ!」
「皆さんお帰りですか。それではどうか、帰り道に気をつけて…」
そしてDキッズは、村人達に見送られながらテレポートでDラボへ帰還していったのであった…。
その後 Dラボ
Dラボへ戻ってきたDキッズは、早速古代博士とリアスに持ち帰ってきた琥珀の分析を依頼した。
パートナー恐竜達を遊ばせながら分析結果を待っていると、数十分ほどしてから古代博士が戻ってきた。その手には書類と、先程渡した琥珀が握られている。
「…うむ。やはりお前達の見立て通りだったようだ」
「ってことは…父さん!」
「あぁ。オウガ君やオーウェン君が持っていたジュラシック・アンバーと同じ波動を、この琥珀からも検知した。十中八九、これが6つ目のジュラシック・アンバーだと見て間違いないだろう!」
「すごいですねパパさん! まさか南米の遺跡の中で見つかるとは思いませんでした!」
「私も驚いたわ。そもそも太陽の瞳なんて秘宝自体、初めて聞いたもの」
そして、古代博士に続いてリアスも戻って来る。
だが、マルムは怪訝な顔をしながら古代博士から琥珀を受け取った。
「でも…変なのよね。確か長老さんの話が間違ってないなら、これには鰐の頭を持った魔獣…つまりスピノサウルス科の恐竜の刻印が入ってるはずなのよ?」
「私もそう聞いたから、何らかの方法で削り取られたり塗り潰された可能性も含めて調べてみたんだが…それらしい痕跡はなかった。
何故そんな言い伝えがあるのか…うぅ~む、分からんな…」
そしてマルムから琥珀を受け取ったオウガも、もう一度じっくりと眺めてみる。しかしどこにもそれらしい刻印はなく、触ってみてもつるりとした感触以外何も感じられなかった。
「ただいま戻りました〜!」
と、そこでミサが買い物袋を手に彼らのいる部屋へと入ってきた。どうやら買い物に行っていたようである。
早速オウガは、今回の冒険の話をするためにミサのもとへ駆け寄っていった。
「あら、オウガ君。おかえりなさい。今回の冒険はどんな感じだったの?」
「ミサさん! 俺達、今回行ったペルーの神殿…太陽の神殿と月の神殿ってところだったんですけど、そこでこの琥珀を見つけたんです!」
そう言ってオウガが差し出した琥珀を、ミサは不思議そうな表情をしながら受け取った。
「近くの村の人によると、それは『太陽の瞳』って呼ばれる宝物みたいで、それにまつわる神話もあるみたいなんです。
それで本来はそれに、鰐の頭を持つ魔獣の刻印がされてるみたいなんですけど、どこを見てもそれが見えなくて…」
「え? どうして? わたしには見えるわよ」
「…えっ? ど、どこに?」
「ほら、ここの部分。けっこうぼんやりしててはっきりとは見えないけど…これってスピノサウルスの化石じゃないかしら。それっぽい刻印が彫られてるじゃない」
そう言ってミサが指し示してくれたものの、やはりオウガには何も見えなかった。周囲の反応も見てますます不思議そうな顔をするミサとその手の琥珀を見比べながら、オウガは思索にふける。
(どういうことなんだ…? 何で俺達には見えないのに、ミサさんには見えてるんだろう…?)
結局その疑問は、その後も解決されず彼の中に残り続けたのであった…。
今回の恐竜解説!
「今回の担当は私! 古代博士だ!
今回解説するのは、頼れる小兵『パウパウサウルス』! 5メートル〜6メートルほどの大きさの鎧竜だ!
名前の意味は「パウパウのトカゲ」! これは、化石が見つかったアメリカ合衆国テキサス州のパウパウ累層に由来しているのだ!
さて、解説を…といきたいのだが、実はパウパウサウルスは下顎部を欠いた頭骨の化石しか見つかっていなくてな、その全体像は未だ謎に包まれているのだ。
その頭の特徴から、ノドサウルス科に分類できるということと、ノドサウルス科では珍しく、アンキロサウルスやエウオプロケファルスのような骨質の瞼を持っていたということしか、詳しいところは分かっていなかったのだよ。
最近の研究では、頭部をCT検査にかけたところ、エウオプロケファルスと比較するとより低周波の音を聞き取れた可能性があることと、嗅覚がより劣っていたということが分かったのだが…現状本種について分かっていることはそれだけなのだ。
いつかパウパウサウルスの化石をたくさん発見できれば、より研究も進められることは間違いない! 私達ももっと頑張らなければいかんな!」
ということで、今回はここまでです。
重ね重ねにはなりますが、今回も投稿が遅れてしまって申し訳ありませんでした。先週は特に忙しく、なかなか執筆のための時間を取ることができませんでした。
来週からも忙しい日々は続きますが、先週ほどの忙しさではなくなりますので、最低でも1週間に2投稿を目標として頑張ってまいります。どうかこれからも応援していただけると、私としても大変嬉しいです。
さて次回は、第31話『Sin-D強襲!湧き上がれ!スピノサウルス・エジプティアクス!』
原作「Dキッズアドベンチャー」には存在しないオリジナルパートの話です。そして、ジュラシック・アンバー『Ⅲ』(仮称)の本来の銘と、その契約者も判明することになります…。
「ワシらもちょっとだけ出演するんだな」
「もしかして、俺達の登場を心待ちにしてくれてる奴らもいてくれたりして?」
それでは、次回もご期待下さい!