古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
ある日、いつものようにDラボに集まっていたDキッズの4人は、古代博士からオーパーツの1種・水晶ドクロのレプリカを見せてもらっていた。
そんな中恐竜が南米ペルーのジャングルの中に出現した通知を受け、4人はテレポートで現地へと向かう。
そこには現地の村人達が崇拝する神を祀るための「太陽の神殿」と「月の神殿」があった。その月の神殿にアクト団とジェイソンらしき人物が入っていったという話を聞き、リュウタは自ら生贄役に志願することで神殿内部へ入ろうと考える。
こうして村人達と共に神殿内に入ったDキッズだったが、そんな彼らにアクト団のティラノが襲いかかってきた。早速リュウタがガブを成体化させて応戦したものの、アクト団が技カード『パウパウパワー』で召喚したパウパウサウルスの防御の前に、ガブは成すすべがなくなってしまう。その後オウガがレクシィを加勢させたことでパウパウサウルスを無力化することはできたが、月の神殿へと繋がる扉が開いてしまい、アクト団達をその中へ入らせてしまった。
Dキッズも彼らを追いかけ、道中大ムカデに追跡されながらも月の神殿へと辿り着いたが、そこには既にアクト団とジェイソンが辿り着いていた。
再び両者は恐竜バトルを始めるが、そんな中ノラッティ〜が台座から水晶ドクロを取り除いたことで、現れた壁画からスピノサウルス・エジプティアクスが召喚され、彼らに襲いかかる。そればかりか、その場にいる全員を押し潰さんばかりの勢いで天井が下降し始めたのである。
アクト団のため自らの身をもって天井の下降を食い止めたパウパウサウルスと、水晶ドクロを祭壇に戻したオウガの健闘によりDキッズは窮地を脱したが、そんな彼らの前に壁画に嵌まっていた琥珀が落ちてきた。
村人達の許可を得て持ち帰った琥珀を鑑定してみたところ、それはジュラシック・アンバーの最後の1つだったのである。
しかし、そのアンバーに刻まれているはずのエンブレムはどう分析しても浮かび上がってこず、更にはミサだけはそのエンブレムが見えると主張したのである。
謎を多く残したまま、その琥珀はDラボにて保管されることとなったのであった…。
前編
Dキッズが月の神殿を後にしてから数日後…
秘密結社『Sin-D』本部ビル カロリディーの執務室
「そうか…。ジュラシック・アンバーは見つからなかったか…」
ジェイソンからの報告を受けたカロリディーが、わざとらしくため息をつきながら椅子に腰掛け直した。
不機嫌さを隠そうともしないカロリディーに、ジェイソンは何とか弁明しようと言葉を絞り出す。
「…すまねぇ、ボス。だがこれだけは信じてくれ。
おれが月の神殿で見たのは、間違いなくジュラシック・アンバーだったはずなんだ。近くには水なんてこれっぽっちもなかったのに、スピノサウルスがあの場に現れたのは、この上ない証拠だぜ。
な? ミルズもそう思うだろ?」
縋るようにジェイソンがイシドーラに視線を向けると、イシドーラはかぶりを振りつつ口を開いた。
「ボス。私からも報告が。件の神殿を調べたところ、アクト団やDキッズの恐竜、そしてインドミナス・レックスのものとまじって未確認の恐竜の足跡が発見されたとのことです。
ジェイソンが言っていることにも、あながち間違いはないかと…」
「…なるほど。つまり、ジュラシック・アンバーは確かにそこにあった…というジェイソンの言い分は信じてもいいようだな。
それで? 肝心のそのアンバーはどこへ消えたと主張するつもりだ? 誰か…それこそアクト団やガキ共が持ち去ったということか?」
「アクト団の連中はまずねぇが…Dキッズのクソガキ共が持ち去ったって可能性は十分にあるはずだ!
ウラは…まだ取れてねぇけどよ…」
「それならば…ジェイソン。お前のやるべきことは決まったのではないか?
今すぐ三畳市へ密偵を向かわせ、ジュラシック・アンバーの在処を確認させろ」
「りょ…了解したぜ…。
それで、もし見つけた時はまた報告に来るが…その後はどうするつもりなんだよ?」
ジェイソンがそう質問すると、カロリディーはあの、あらゆる憎悪の感情を凝縮したかのような醜悪な笑みを浮かべた。
「その時は既に、全てのアンバーの在処が判明した後だろう?
それならば…我々がすべきは全てのアンバーを手中に収めることのみ! 総力を以て三畳市を強襲し、あのクソガキ共とオーウェンとかいうラプトル使いからアンバーを簒奪するのだ!」
カロリディーの言葉を受け、ジェイソンは軽く敬礼をすると、部屋から駆け足で出ていった。しかしあまりにも急いでいたので、ドアの陰に隠れていたウー博士には気付けなかったようである。
「…た、大変だ…!」
そう小さく呟くと、ウー博士は踵を返し、自分の研究室へと引き返していった。そしてその後、博士は忽然と姿を消してしまったのであった…。
それから数日後 三畳市 リュウタ宅
そんな『Sin-D』の企みは露ほども知らないDキッズは、今日も今日とてリュウタの家に集まっていた。
しかし、そこにはオウガの姿がない上、マルムはどこか不機嫌な様子だったのである。
「まったくもう! オウガったら! Dキッズで集合かけたのに来れないなんて!」
「オウガにだって事情があるんだから仕方ないだろ…」
リュウタがそう言って宥めようとするものの、マルムは更にヒートアップしてしまったようだ。
「そりゃアタシだってどーしても避けられない用事なら笑って許すわよ!
それなのにオウガったら、またミサさんと買い出しに行くって言ったのよ! 信じられる!?」
「だから別にいいじゃんか…」
「よくないっ! このまま…もしオウガがDキッズから抜けることになっちゃったらどうするのよ!」
「オウガはそこまで薄情な奴じゃないだろ…。なあレックス。お前も何とかマルムを宥めてやってくれよ…」
「諦めろよ、リュウタ。今のマルムは何を言っても聞いてくれる状態じゃないぜ」
「そんなぁ…。頼むよオウガ〜…早く来てくれ〜…」
こうして、マルムの愚痴を聞かされ続けることになってしまったリュウタとレックスなのであった…。
その頃 三畳市内の商店街
リュウタ達がそんな話をしている頃、当のオウガとミサは商店街へ買い物に来ているところだった。
2人の足元にはチビ形態のレクシィとアメジストも付いてきており、彼らの様子を見守っているようであった。
「オウガ君、本当にありがとうね。また買い物手伝ってもらっちゃって…」
「いやいや、いいんですよ。俺だって暇でたまたまDラボに行こうとしたら、ミサさんと会っただけですから」
確かに、オウガの言っていることに嘘はなかった。週末の宿題を早々に終えた彼は、暇つぶしにDラボへ向かったところ、買い物に行くためにバスを待っていたミサと遭遇し、手伝いを申し出たのである。
ただその後、マルムから送られてきたDキッズ招集のメールに、断りの返事を送ったことはミサに話していないだけなのであった。
「でも、折角手伝ってくれたんだし、何かお礼をしてあげたいんだけど…」
「えっ? それなら…えっと…」
突然のミサからの申し出に当惑しつつも、オウガが考えを巡らせていると…彼の目にアイスジェラートの看板が目に入ってきた。
そこは先日オープンしたばかりの店舗で、数日前にジェラートを食べたがったアメジストを連れて入った場所だったのである。
「それじゃあ…あそこのジェラート屋さんでちょっと休憩していきませんか?」
「あら…いいわね、それ! まだ残暑も厳しいし、いい気分転換になるかも…」
そうミサが言いかけた時だった。すぐ横の精肉店から威勢の良い声が響いてきた。
「さあさあ、今から15分間だけのタイムセール!
なんと! 国産牛の切り落としが100グラムあたりたったの50円なんだな! これは買うしかないんだな!」
そして、その声を聞きつけた買い物中の主婦達が、一斉に押し寄せてきたのである。当然ながら、オウガとミサ、そしてレクシィやアメジストまでもがその人混みの中に飲み込まれてしまったのだった。
「ハァ…ハァ…何なんだよ、いきなり…」
それでも何とか助かりはしたようで、人混みの中からオウガが這い出してきた。そんな彼に続いてレクシィとアメジストも姿を見せたものの、ミサはいつまで経っても姿を見せなかったのである。人混みの中を覗き込んでみても、彼女の姿はどこにもなかった。
これにはオウガも焦り始める。
「ミサさん…? ミサさーん! どこに行ったんですかーっ!?」
『キュッ! キューッ!』
オウガと、そしてアメジストも一緒にミサへと呼びかける一方で、レクシィは先程掛け声があった精肉店の方へと目を向けていた。どこか引っかかるところがあったようだ。
「セールなんかしてないってどういうことなのよ!」
「そうザマス! ワタクシ達はちゃんとこの耳でセールのお知らせを聞いたザマスよ!」
「で…ですから…うちは今日セールなんてやってないんですって…」
そんな人々の話を耳にしたレクシィは、訝しげに顔をしかめたのだった。
商店街 路地裏
「はっ、離して! 何なんですか! あなたは!」
「何なんだ、って…一体どうしたんだな。そんな怖がらないで欲しいんだな」
オウガがまだ人混みの中で揉まれていた頃、ミサは見知らぬ男に腕を掴まれ、裏路地へと引き込まれてしまっていた。その男は赤い顔に赤い体、そして奇妙な衣装を身に纏っている。
そして、少し先でドラム缶に腰掛けていたもう一人の男が2人へと話しかけてきた。
こちらは、逆立った青い髪に不健康そうな青白い肌をした男で、相変わらず奇妙な衣装に身を包んでいた。
「お〜、グーネンコ。手筈通り進められたみたいだったりして」
「そうなんだな! 暫くこの街で潜伏していた甲斐があったってものなんだな!」
そう親しげに会話する2人の男に、ミサは震える声ながらも問いかけた。
「な、何なんですかあなた達…! 突然わたしを拉致するような真似までして…」
そんなミサの様子に違和感を感じたのか、青髪の男は赤肌の男…グーネンコに声を潜めて話しかけた。
「…? グーネンコ。
「ワシもそれは感じていたんだな。まるでワシらのことを初めて見たかのような反応なんだな」
「…なーるほど。多分近くにこの世界での協力者がいたりして。それでそいつに会話を聞かれたら任務に支障が出るから、知らないフリをしてるだけだったりして?」
「それなら納得がいくんだな。
…おい、
「だから、知らないフリなんてしなくても良かったりして?」
その頃 商店街 表通り
オウガが相変わらずミサに向かって呼びかけていると、そんな彼にディノラウザーを通してレクシィが話しかけてきた。
『オウガ。肉屋のニンゲンの話によれば、今日セールの予定はなかったようだ。
加えて、私が先程一瞬だけ見かけた声の主…赤い肌の巨漢の男の姿がどこにもない。十中八九、あの女はそいつに誘拐されたと見ていいだろう』
「そんな…! 一体どうすれば…!」
『落ち着け、オウガ。私がティラノサウルスであることを忘れたのか? あの女の匂いを辿ればよいだろう。そうすれば、自ずと犯人のところまで辿り着く』
「あっ…そっか! それじゃあレクシィ! お願い!」
オウガの頼みを受けてレクシィは鼻を鳴らすと、地面へ鼻先を近づけてゆっくりと息を吸い込んだ。
続けて今度は頭を上げ、鼻先を天に向けてまた息を吸い込み…オウガへと顔を戻した。
『…嗅ぎ取れたぞ。あの女はこっちだ』
そしてレクシィは、あの路地裏の入り口へと駆けていった。オウガとアメジストも彼女に続いていき、同じように路地裏の道の前で立ち止まる。
『…匂うぞ。この道の奥から、あの女の匂いがする』
「…よし、じゃあ早く助けに行こう。でももし相手が襲いかかってきたら…レクシィとアメジスト。君達も手助けしてもらえる?」
『キュッ!』
『…致し方なかろう。オマエの頼みであれば断る理由はない』
「…ありがとう! それじゃあ…行こうか」
その言葉と共に、オウガとレクシィ、アメジストが路地裏へ繋がる道に踏み込もうとした時だった。突然その路地裏からミサが飛び出してきたのである。
「みっ、ミサさん! 無事だったんですね! 俺すごく心配で…」
オウガが彼女に声をかけようとしたところ、ミサは素早く彼の手を取り、脱兎の如く駆け出したのである。
「えっ…ちょ、ちょっと? ミサさん! どうしたんですか?」
オウガが手を引かれながらも問いかけるものの、ミサは青ざめた顔のまま一言も返そうとしない。そんな2人の後ろを、レクシィとアメジストが慌てて追いかけていったのであった…。
その頃 Dラボ
オウガがミサと再合流した頃、Dラボでは古代博士とリアスが静かに見守る中、前回Dキッズが持ち帰ってきた『太陽の瞳』を、オーウェンがじっくりと見定めていた。
そして彼がようやく顔を上げたところで、古代博士が彼へ質問をぶつけた。
「どうかね、オーウェン君。君の目から見ても、この琥珀はジュラシック・アンバーに見えるかね?」
「オレは琥珀の専門家じゃないんで詳しいところは分からないが…見たところオレやオウガ君のアンバーと同じもののように見えるな…。
だが、オレ達が確認したアンバーには、全てティラノサウルスの骨格を模した刻印が施されていたはずだ。これにはその刻印がないようだが…」
「ううむ…。やはりオーウェン君にも詳しいところは分からないか…」
「当然さ。オレ自身もそうだがオレの世界の連中だって、恐竜がカード化するとかいう今回の事象に対して明確な答えを出した奴はいないんだ。
当然、そのカードから恐竜を具現化させられるアンバーなんて、もっと分からないことだらけさ」
「オーウェンさんの世界でもそのメカニズムは解明できていないのね…」
「あぁ。オレんとこの名だたる世界的権威のお偉いさん達が頭を突き合わせて考えても、結局解明できなかったみたいだからな。
何か事情を知ってる奴と接触できればいいんだが…」
そうオーウェンが言いかけた時だった。突然Dラボの来客用呼び鈴が鳴ったのである。
「ん? 今日は来客の予定はなかったはずなんだが…」
「マルム達はいつも鳴らさずに入ってくるし…もしかしたら博士、またいつもみたいに忘れてるだけなんじゃないですか?」
「いやぁ、その可能性は流石に…ないとは言い切れないなぁ…。一応見に行ってみるか…。
あ、オーウェン君はここで待っていても大丈夫だぞ!」
「そうか? なら遠慮なく待たせてもらうさ」
そして古代博士はオーウェンとリアスを研究室に残し、1人でラボのエントランスホールへと向かった。
すると、出入り口に1人の男が立っていたのだ。見たところその男は中国人のようであり、脇には鞄を抱えてどこかソワソワとした様子であった。
当然、古代博士の知る人物ではない。
「はて、誰だろうな…。一応、話だけでも聞いてみようか…」
取り敢えず話だけでも聞くことにしたようで、古代博士はインターホン越しに来客の男と会話をしようとした。
しかし、男は大層慌てているようで、早口かつ英語で捲し立てるように喋ってきたのである。
海外での発掘経験も多い古代博士であっても、彼の意思を汲み取ることは非常に困難なようであった。
「あ、あの〜…もう少し落ち着いて話してもらいたいんですが〜…」
やんわりと古代博士が英語でそう話したものの、男の話す勢いは収まらず、博士はすっかり困ってしまった様子だった。
「随分時間がかかってるみたいだな、古代博士。
悪質な訪問販売ならオレが相手してやろうか?」
と、そこへ暇を持て余したオーウェンがやって来たのだが…彼は来客の姿を見た瞬間、目の色を変えた。
「あんたは…行方不明になっていた、ヘンリー・ウー博士!?」
『!? オーウェン! その姿はオーウェンか!?』
「ど、どうしたんだねオーウェン君! あの男は、君の知り合いなのかね?」
「あぁ、知り合いも何も、以前同じ職場で働いていた奴でな…。恐竜達の生みの親でもあるんだ」
「恐竜達の…?」
『オーウェン! 昔話は後にしてくれ! 今は一刻を争う事態なんだ! とにかくこの日本人に、Dキッズという子供達に会わせてくれるように言ってくれ!』
「Dキッズ…? あの子達に何の用なんだ?」
『カロリディーが…『Sin-D』が動き出したのだ! このままでは子供達が危ないかもしれんのだぞ!』
中国人風の男…ヘンリー・ウーの言葉を聞いた瞬間、オーウェンの表情がさっと青ざめたのであった…。
一方その頃 Dラボ最寄りのバス停
その頃、オウガとミサはバスでようやくDラボ近くのバス停まで到着したところだった。
「オウガ君、急かしちゃってごめんね…。せっかくジェラート屋さんにも誘ってくれたのに…」
「いや、いいんですよ。ジェラートくらいまた食べに行けばいいんですし。
それより…さっきはどうしたんですか? 酷く当惑した様子でしたけど…」
「あ、あれは…その…なんて言ったらいいか分からないんだけど…」
オウガが先程のミサの不可解な様子について言及すると、ミサは途端に口籠ってしまった。
オウガはそんな彼女を暫く心配そうに見つめていたものの、彼女を落ち着かせるような口調でまた声をかける。
「…ミサさん。もし話しづらいことがあったなら、無理して話してくれなくても大丈夫ですよ。
ミサさんが話してくれるようになるまで、俺は待ちますから…」
「オウガ君…」
ミサを気遣うような言葉をかけたものの、オウガはどこか寂しそうな表情を浮かべた。そんな彼の様子を見ていたたまれなくなったのか、ミサは手にした買い物袋を強く握りしめ…意を決した様子で口を開いた。
「あ…あのっ、オウガ君! あのね…」
その時だった。実にタイミングが悪いことに、オウガのディノラウザーに着信が入ってきたのである。
しかし出ないという訳にもいかないので、オウガは渋々ディノラウザーをバッグから取り出し、通話ボタンを押した。
すると、画面には古代博士の顔が映し出されたのである。更に画面の四角にオウガだけでなくリュウタ達他のDキッズの顔も映されているところを見るに、この通話はDキッズ全員に向けられたものであるようだ。
『え〜…オホン! まずはDキッズ諸君! せっかくの日曜日だというのにすまない! 実は色々とまずい状況になっていてだな…』
『父さん! 前置きなんてどうでもいいから早く話してよ!』
『お、おおリュウタ…すまん。
では改めて、単刀直入に言うぞ! どうやら『Sin-D』の連中が、我々が最後のジュラシック・アンバーを手に入れたことを知ってしまったらしいのだ!』
「『Sin-D』が…!?」
「『Sin-D』ってあの…オウガ君達が何度も遭遇したっていう、凶悪な恐竜を使う人達のこと…?」
その頃 リュウタ宅 庭
『その通りだ! とある人物からのタレコミで入手した情報なんだが、更に連中は我々の住んでいるこの三畳市についても既に把握済みらしい!
よって彼らとの全面衝突を見据え、これからDラボで作戦会議を開こうと思う!
お前達も可能ならば今すぐDラボへ…』
「…父さん。もう、遅いみたい…」
画面から目を逸らし、空を見つめながらリュウタがボソリとそう口にする。
『な…何? どういうことだ? リュウタ?』
「ちょうど今…来たんです。僕達の街に…」
「あの『Sin-D』のヘリコプターが…!」
リュウタ達の視線の先には、1台のジェットヘリを先頭とし、輸送ヘリ2台を伴った『Sin-D』の部隊があったのである…。
三畳市上空 ジェットヘリ内部
「日本国三畳市上空に到着しました! 間もなく目的地・古代恐竜研究所に到着致します!」
「ご苦労でしたね。出撃の準備を怠らないように」
「はっ!」
その時、ジェットヘリの内部では、カロリディーが部下から三畳市到着の報告を受けたところだった。
報告した隊員が再び操縦桿に向き合ったところで、彼の衛星電話にジェイソンからの連絡が入ってきた。
「私だ。何か問題でも起きたのか?」
『いいや、問題って訳じゃねぇさ。ただ…窓から下を見てみた方がいいんじゃねぇのか?』
ジェイソンの言葉に従ってカロリディーが窓から下を覗いてみると…彼らのヘリを追いかけてくる自転車が見えた。それにその自転車に跨っている3人には見覚えがある…。
そう。リュウタとレックス、それにマルムが自転車で『Sin-D』のヘリを追いながらDラボへと向かっているところであった。
『見えただろ? あのガキ共、追ってきてやがるぜ』
「…なるほど。それで? あれを見せて私にどうしてほしいと言うんだ? ジェイソン?」
『なぁに、難しいことじゃねぇさ、ボス。
ただおれとミルズに…クソガキ共を排除する役目を任じてくれるだけでいいんだ』
「そんなことに一々私の許可を得る必要はない。
見たところ奴らは3人。お前達からの報告が正しければ恐竜も1人につき2体だ。となれば質で勝っているお前達は有利に立ち回れるはず。そうだろう?」
『流石ボス。よく分かってるじゃねぇか』
「私から言うことは1つだけだ。よく聞け。
…最早子供だろうと手加減してやる必要はない。完膚なきまでに打ちのめせ」
『了解! ほら行くぞミルズ! 出撃だ! ヘリを降ろせ!』
『全く…今日も楽な仕事では終わらなさそうだな…』
イシドーラのボヤきを最後に通話は途切れ、カロリディーの衛星電話は再び沈黙した。
それを手に不敵な笑みを浮かべるカロリディーの目の前では、いよいよ彼が乗るヘリがDラボ前の広場に着陸しようというところであった。
その頃 地上
「あっ! ヘリコプターが1機方向を変えて降りてくるぞ!」
「まさかアタシ達を足止めするつもりなのかしら?」
マルムの予測は正しかった。輸送ヘリの片方が方向を変えると、彼ら3人の方へどんどん接近してきたのである。
そして高度が十分に落ちたところで扉が開け放たれ、そこから計6枚の恐竜カードが光を放ちながら投げ出されたではないか。そしてカードは、次第に恐竜の姿へと変形していく…。
ギュアァァァァッ!!
キシャーッ!! ギュロロロロッ! ジェギャアッ!!
ゴオォォケェェッ!!
グルァァァァッ!!
グルルルル…!! ギャウッ!! ギャラララッ!! ゴフルルル!!
グァギュギシャァァッ!!
インドミナス・レックスに3体のヴェロキラプトル達とステゴケラトプス、そしてインドラプトルに4体のアトロキラプトル達とスピノラプトル…。
そう、彼らはジェイソンとイシドーラの恐竜達だったのである。彼らは地面に降り立つなり、リュウタ達の行く手を阻むように立ち塞がった。
「僕達をDラボまで行かせないつもりか!」
「向こうがそのつもりなら、やってやりましょう!」
「よっしゃあ! 行くぞガブ! イナズマ!」
勿論、ここで立ち止まっている訳にはいかないのがリュウタ達である。彼らはそれぞれの手にディノホルダーを握り、パートナー恐竜達のカードをスキャンしたのである。
「ディノスラーッシュ!
轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」
ゴォォォォォォッ!!
ギュオォォォォッ!!
「ディノスラーッシュ!
吹き抜けろ! カルノタウルス! アロサウルス!」
グォォォォォン!!
グゥガアァァァァッ!!
「ディノスラーッシュ!
芽生えよ! パラサウロロフス! ランベオサウルス!」
キュオォォォン!!
プオォォプォォォォッ!!
Dキッズ側からも計6体の恐竜が現れて地面に降り立ち、ジェイソンとイシドーラの恐竜と睨み合ったのであった…。
一方その頃、オウガとミサはようやくDラボに到着したところであった。そんな彼らを、エントランス前で待っていたオーウェンが出迎える。
「よし、何とかオウガ君は間に合ったようだな」
「俺は…って、じゃあリュウタ達はまだ来てないんですか?」
「先程ジェイソンやイシドーラの恐竜に行く手を塞がれ、交戦状態に入ったとの連絡があった。
そちらが片付くまではこちらには来れないだろう」
「…俺とオーウェンさんで何とかするしかないってことですね…」
「そういうことだ。…そら、来たぞ」
その声と共にオーウェンが指さした先を見ると、『Sin-D』のジェットヘリがDラボ前の広場に降りてくるところだった。
「奴らの狙いはオレ達のアンバーだ。ここは負けられないぞ」
「勿論です。あれから俺もレクシィもアメジストも場数は踏んできましたから…負けるつもりなんて始めからありませんよ」
それからオウガはミサに向き直ると、彼女に自分が持っていた買い物袋を手渡した。
「ミサさんは中で待ってて下さい。ここは俺とオーウェンさんが死守しますから」
「…分かったわ、オウガ君。わたしは応援することくらいしかできないけど…頑張ってね」
「…勿論です」
そしてミサがエントランスの扉を開いてラボの中へ入っていくと、扉の前にシャッターが下ろされた。
これで文字通り退路もなくなったということである。
そしてオウガとオーウェンの目の前で、カロリディーがジェットヘリからゆっくりとした足取りで降り立った。少しも怯まずに力強い視線を投げつけてくる2人に対し、カロリディーはあくまで余裕の姿勢を崩さないまま口を開いた。
「これはこれは…暴れるトカゲの主にして【
しかもその様子では…どうやら私共は貴方がたに歓迎されていないようだ」
「能書きはそこまでにしておけ。お前がここへ来た目的は何だ?」
オーウェンが強い口調で問いかけると、カロリディーはニヤリと笑みを浮かべながら答えた。
「そんなことなどわざわざ言うこともないでしょうが…では言葉にして言って差し上げましょう。
貴方がた2人が持つジュラシック・アンバー【
素直に取引に応じていただけるのであれば、こちらも大人しく撤退しますよ」
「…もし嫌だと言ったら、どうするんですか?」
続いてオウガと問いかけると、カロリディーの笑顔はますます醜悪に歪んだ。
「嫌だと言うのならば…力ずくでも渡していただくまでですよっ!
いでよっ! ジョーカーッ!」
グアァァァァァァッ!!
カロリディーがその言葉と共にジョーカーのカードをアンバーに押し当て、その姿を具現化させた。
見た目こそ以前のジョーカーと大差ないように見えるが、その体からは圧倒的な熱気が立ち昇っていた。
しかし、これに怖気づくオウガとオーウェンではない。すぐさまパートナー恐竜のカードを手に取ると、オウガはディノラウザーにスキャンし、オーウェンはアンバーに押し当てたのだ。
「ディノスラーッシュ!
燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!
揺るがせ! ステゴサウルス!」
ゴガアァァァァッ!!
ケエェェェェ…!!
「行くぞっ! ブルーッ!」
キシャーッ!!
レクシィにアメジスト、そしてブルーが成体の姿となって地面に降り立ち、ジョーカーと向かい合う。
「あくまで私共と争うという訳ですね…。
ならば今度こそ、このジョーカーの真の力を貴方がたに見せて差し上げましょう!
ジョーカー!」
カロリディーが高らかに攻撃宣言をすると、ジョーカーは大口を開けてレクシィへと向かっていった。
「迎え撃て! レクシィ!」
オウガの指示にレクシィは短い唸り声で返し、向かってきたジョーカーの顔を尻尾で叩いてからその首筋に食らいついた。
だが…。
ジュウウウウウ…
レクシィが噛みついたところから肉の焼けるような音と共に煙が立ち昇ったかと思うと、レクシィは慌てた様子で口を離したのだ。それを見逃さないジョーカーはレクシィの体の下へ潜り込むと、その体を掬い投げてしまった。
「レクシィ!? 一体どうしたんだ!?」
そんなオウガの問いかけに、レクシィはディノラウザーを通して話しかけてきた。
『グウッ…こやつ、以前とはまるで違うぞ。
体全体がまるで炎のような高熱を帯びている。まるで以前ここへやって来た…超アクトアクロカントサウルスそっくりだ…』
「超アクトアクロカントサウルス…? まさか…!」
「おや、ジョーカーの秘密に気付きましたか?
そのまさかですよ! このジョーカーの力を更に現生の頃に戻すため、アクト団に依頼してジョーカーを技カード『エレメントパワー』と融合させてもらったのです!
これによってジョーカーは更に強くなり、最強の恐竜たるギガノトサウルスの真の姿にまた一歩近づいたという訳なのです!」
「そんなギガノトサウルスがいてたまるか…」
オーウェンがそう悪態をつくが、カロリディーは満面の笑みを湛えたままであった。
「何とでも言いなさい。全てのアンバーが私の手に渡れば、そんな話も全て真実となるのですから…。
さぁ、ジョーカー! その頭でっかちの暴れるトカゲに追撃を加えなさい!」
カロリディーの言葉と共にジョーカーがレクシィに向かって駆け出していった…が、その体が突然横に吹き飛んだ。アメジストのサゴマイザーによる強烈な薙ぎ払いを受けたのである。
そして更にブルーがジョーカーの注意を逸らすように足元をチョコマカと動き回り、隙を作ろうとしていたのだ。そのお陰でレクシィも元通り体勢を立て直し、逆にジョーカーを掬い投げ返したのであった。
「よくやった! ブルー!」
「ナイスだよ! レクシィ! アメジスト!」
オウガとオーウェンは彼らの恐竜に声援を送りつつ、カロリディーの様子を窺った。さぞかし悔しがっているだろうと思ったのだが…彼の表情は余裕そのものだったのだ。
「なるほど。やはりそのラプトルに、経験を積んだステゴサウルスが相手となってはジョーカーも不利ですね。
ここは、数を合わせることにしましょう」
その言葉と共にカロリディーが指を鳴らすと、彼の背後に紫と灰色の2つの光が現れ、それぞれがアメジストとブルーを突き飛ばすように飛んでいったのである。
やがて光が晴れ、そこから姿を現したのは…。
両肩に大きなトゲを持つ剣竜類・ギガントスピノサウルスに、頭に1本の角を持つ獣脚類・マジュンガサウルスであった。
「ギガントスピノサウルスに…マジュンガサウルス…!?」
「お前まさか…こいつらも持っていたのか…!」
「その通りですよ。いくら強くなったジョーカーと言えど、数の優劣を覆すのは難しいですからね。
さあ、ギガントスピノサウルスにマジュンガサウルス。貴方達はステゴサウルスとラプトルをジョーカーに近づけさせないようにしなさい」
その言葉に応じ、ギガントスピノサウルスはアメジストの前に、マジュンガサウルスはブルーの前に立ちはだかった。そして、体勢を立て直したジョーカーが、レクシィと再び向かい合う。
「貴方のその暴れるトカゲがいつまで立っていられるのか…見せてもらいましょうか。
ヒヒヒ…グヒヒヒヒヒヒ!!」
堪えきれず醜悪な笑い声を上げるカロリディーと、全身から熱気を放つジョーカーを前に、オウガとレクシィは厳しい表情にならざるを得なかったのであった…。
その頃 Dラボ 研究室
その頃、外での映像を見ながら古代博士は頭を捻っていた。
「まずいな…。まさかギガノトサウルスに超アクトアクロカントサウルスと同じ性質を身に付けさせるとは…」
「あれだけの熱量では、炎属性のレクシィと言えど噛みつくのは不可能です。
博士。超アクトアクロカントサウルスを倒した時は、どうしていたんですか?」
「レックスのエースの『
一時的にでも体表の温度を冷やすことができれば、レクシィも噛みつくことができるはずだ」
「でも、レックス君は…」
「…そうだ。それに、例えレックスが来てくれたとしても、ここには身に纏えるだけの十分な水源はない。
状況はかなり厳しいと言わざるを得ないな…」
そう考えながらも、古代博士はミサにも意見を求めようとした…が、彼女の姿は研究室になかった。
「…あ、あれ? リアス君。ミサ君は?」
「さっきまでいたはずなんですけど…どこに行ったのかしら?」
2人が見失ったミサの姿は、Dラボのとある区画にあった。そこでは、これまで手に入れた恐竜カードや、Dキッズが使わない技カードが保管されていたのだ。
そして、先日回収された最後のジュラシック・アンバーも、ここに保管されていた。
ここへ入ってきたミサは、『スピノサウルス・エジプティアクス』のカードと技カードを数枚抜き取り、最後にジュラシック・アンバーに手をかけた。
「ごめんなさい。古代博士、リアスさん。
でも、わたし…」
ミサはそう小さく呟くと、首から下げたネックレスにアンバーを取り付け、素早くその場を後にしたのだった…。
今回はここまでです。
前回の投稿から1週間以上間が空いてしまい、ご心配された方もいらっしゃるかもしれません。ご心配をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。今回は完全オリジナル回ということで話の組み立てに少々手間取ってしまったのと、個人的な趣味で時間を使ってしまい、なかなか作品を完成させることができずにいました。来週からは、宣言通り1週間に2本を目標に更新を頑張ってまいります。
それでは次回、後編の更新をお待ち下さい。
※追記:遅くなりましたが、合体技『旋風爆炎砲』と『剛炎竜巻』を設定集に追記しました。