古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
ウー博士の経歴については、映画で補完しきれない部分を原作小説や裏設定等に基づく形で書きましたが、もし不備があった場合は誤字報告やコメント等で指定していただけるとありがたいです。
「私がジュラシック・パークに…恐竜達に関わることになったきっかけは、まだ私が大学の研究室にいた時のことでした…」
DキッズやDラボのスタッフ達、そしてオーウェンが着席したのを確認したところで、ヘンリー・ウーは静かに自分の遍歴について語り始めた。
学生時代はノーマン・アサートン教授の研究室に所属し、そこで遺伝子工学を学んでいたこと。
教授が癌で亡くなり、研究室が存続の危機に立たされた時、そこへやってきたInGen社社長ジョン・ハモンドによってヘッドハンティングされ、ジュラシック・パークプロジェクトに参加することになったこと。
研究の末中生代の琥珀から恐竜や爬虫類のDNAを抽出することができたこと。
しかしシステムエンジニアの仕掛けた内部工作によってパーク計画が頓挫し、自分も口封じのため軟禁されていたこと。
そのInGenがインドのベンチャー企業マスラニ社に買収されると、サイモン・マスラニ社長の主導のもとジュラシック・ワールド計画がスタートし、再び恐竜の研究に携わることができるようになったこと。
やがて科学の追求に支配された自分が、InGen社のとある人物からの依頼で、インドミナス・レックスをはじめとしたハイブリッド恐竜を作り上げたこと。
そして、国際指名手配からの逃亡の末バイオシン社に匿われた自分が、知らず知らずのうちにバイオシン社以外の作物を食い尽くす古代バッタを作り上げてしまったことを…。
「私は科学を追求するあまり、人間を滅ぼしかねない研究に関わってしまっていたのです。
その時私はようやく気づきました。己の行為がいかに愚かであったか…そして、己の罪深さをようやく自覚したのです…」
ヘンリー・ウーの話を、一同は黙って聞いていた。
そんな中口火を切ったのは、古代博士であった。
「なるほど…。ウーさんにそんな過去があったんですなぁ…。
ということはオウガ君のレクシィや、オーウェン君のブルーを生み出したのも…」
「はい。どちらも私が手掛けた作品…いえ、恐竜達です」
と、そこで1人が手を挙げた。レックスである。
「ウーさん、ちょっと質問してもいいですか?」
「ええ、何なりと」
「僕達の世界だと、恐竜のDNAは半減期の影響で現代では殆ど残ってないというのが定説だったんです。
それなのにそちらでは問題なく恐竜を復元できたみたいですけど…それはどうしてなのか分かったりしますか?」
レックスからの問いに、ヘンリー・ウーは静かに考えてから口を開いた。
「それは私も『Sin-D』で働かされていた時に聞かれましたね。何故こちらの世界の常識ではあり得ないことが実現できるのか、と…。
結論から言えば…私も分かりかねます。元の世界とこの世界ではDNAの半減期が違うのか、それとも抽出方法が違うのか…詳しいところは分かりませんが、私はこの手で琥珀から恐竜のDNAを取り出し、そして復元へと持っていった。これだけは事実です。
勿論DNA鎖にはいくつか欠損もありましたので、その穴にはカエルやオオトカゲのDNAを埋めることで復元までこぎつけさせましたが…」
「つまりウーさんが作った恐竜は、実際の恐竜とは少し違うんですね」
「そうなります。例えば…現代の研究だとティラノサウルスは極めて優れた五感を持っていたことが明らかになっていますが、レクシィをはじめとする私の作ったそれはカエル同様の視覚になってしまっているのです。つまり、動くものには敏感に反応するものの、一方で動かないものは認識することができないというものですね。
その他にもブルーはオオトカゲのDNAを組み込んだことで、単一生殖が可能になっていますし…」
「オーウェンさん、つまりブルーに子供がいるってことなの?」
「おう。ブルーの娘にはベータって名前をつけていてな、今は元の世界でクレアやメイジーと一緒に過ごしてもらっているよ」
「なるほど…分かりました。貴重なお話をありがとうございます」
そう言ってレックスが引き下がると、今度はオウガが手を挙げた。
「俺からも質問させて下さい。ウーさんは『Sin-D』で働かされてたって言ってましたけど、一体どういう経緯でそうなってしまったんですか?」
「…そうですね。それについても話しておかなければ」
そこでヘンリー・ウーはお茶を一口飲み、それからまた話し始めた。
「あの日…私が生み出してしまった古代バッタに終止符を打った帰り道、私は突然空に空いた奇怪な裂け目に吸い込まれてしまったのです。
そして、気がつけば…この世界へと放り出されていました」
「…!」
ヘンリー・ウーのその言葉に、オウガは心当たりがあった。何故なら、やはり空に開いた裂け目から出てきたレクシィのカードを、彼自身が手にしていたからである。
「目覚めた時、私の傍には2枚の恐竜カードと、4つのジュラシック・アンバーがありました。
恐竜カードはインドミナス・レックスとインドラプトルのもので…そしてジュラシック・アンバーは…【
「えっ? 最初はウーさんが【
じゃあ、何でそれをオウガが…?」
「私が彼に託したんですよ。ちょうど半年ほど前、北海道にいた時に…そうですよね、オウガ君?」
「は、はい。あの時は突然見知らぬ人が庭に入ってきたと思ったら、俺に琥珀を押し付けてまた逃げていったので…どうしたのかと思っていたんですが…」
「そう思わせてしまったことに関しては申し訳ありませんでした。あの時私はアンバーを狙う人物に追われておりまして、それで一時的に避難させてもらったのです」
「そのアンバーを狙う人達が…『Sin-D』だったのね…」
「いえ、むしろ『Sin-D』はその追っ手を退け、私を保護したのですよ。まあ実態としては、保護というより軟禁に近いものでしたが。
彼らは特にインドミナスシリーズに強く興味を惹かれたようで、何度もその作り方について問われました。
勿論、門外不出の…それも殺戮マシンの設計図を教えろと言われても私は意地でも教えませんでしたが」
「え? それならその追っ手って…」
「私も面識はなかったのですが…しかし、人間とは思えない見た目だったのを覚えていますね。
赤い肌に身長2メートル以上はある大男で…それにかなり体を鍛えているようでしたが…」
そのヘンリー・ウーの言葉を聞き、ミサの顔色が変わった。
「おっ、オウガ君! その人…多分わたしを拉致しようとした人だわ…!」
「えっ!? まさかあの時の…。どんな特徴があったのかとか教えてくれますか?」
オウガがミサにそう問いかけると、他の面々の注目もミサへと集まる。当の彼女は少し考え込んでから、1つずつ特徴を口に出していった。
「まず…身体的特徴はウーさんが言っていた通りで…あと、軽い鎧みたいなものを身に着けていたわ。
あとは青髪ですごく痩せた男と一緒にいて、それから…」
全員が息を呑んで聞き入る中、ミサは静かに口にした。
「どうしてなのかは分からないけど…わたしのことを知っているみたいだったの…。
わたしのことを『
その頃 三畳市 商店街 路地裏
「どういうことなんだな…」
「こっちが聞きたかったりして…」
商店街の路地裏では、今まさにDラボで話題に上がっている赤肌の大男…グーネンコと、青髪の痩せた男…ザッパーが困惑した様子で会話をしているところだった。
その理由は、先程ミサが見せた態度にあったのだ。
『気にすることはない…って、何言ってるんですか!
わたしはこの人に拉致同然で連れてこられただけです! 貴方達になんてわたしは知らないし、会ったこともありませんっ! 馴れ馴れしく話しかけないでっ!』
ミサはそう言い捨てると、引き止めようとしたグーネンコの横っ面を買い物袋でぶん殴り、その場から逃走したのであった。(ちなみにこれは痴漢やナンパ対策としてリアスから直々に教わった撃対方法である)
「あー…全然痛みが引かないんだな。あれ絶対買い物袋に缶詰みたいなのが入ってたに違いないんだな」
まだ痛むのか、時折頬を押さえながらグーネンコがぼやく。それをよそにザッパーは静かに呟いた。
「やっぱりあいつ…知らないフリじゃなく、マジで記憶がなかったりしちゃったりして?
そうじゃなきゃあんないかにも女らしい振る舞い…あいつがするわけなかったりして」
「言われてみれば…そうなんだな。
あいつはワシらの中でも数段冷酷で強気だったはず…あんな怯えた表情を見せるわけないんだな」
そこでまた痛んだ頬を押さえ、グーネンコが続ける。
「でも…どうするんだな? せっかく時空を超えてこの世界にやってきたのに…アンバーどころかミハサが記憶喪失で帰ってこれないとなれば、あの方に何て報告したらいいんだな…?」
「それは今から考えるしかなかったりして…」
その時、彼らが持っているタブレット型の端末が細かく震え始めた。
そこへ視線を移した2人は、何故かギョッとした様子を見せる。どうやら彼らの上司からの定期連絡のようだ。
「しまった! もうこんな時間だったりして!?
これはヤバかったりして! また言い訳も思いついてないのに、あの方へ報告なんてできるわけなかったりして!」
「で、でも出るしかないんだな! そうじゃなきゃワシら、きつ〜いお仕置きをされちゃうかもしれないんだな!」
そして2人が身を寄せ合いながら恐る恐るタブレットをタップすると…女の声が聞こえてきた。
『グーネンコ。そしてザッパー。
本日の定期連絡の時間です。任務の進行状態について報告して下さい』
その声を聞いた2人は、思わず互いの顔を見つめ合う。どうやら聞き覚えのない声らしい。
「えーっと…報告の前に聞いておきたいんだが…あーたは一体誰だったりして?」
「ワシらは初めて聞く声なんだな…」
2人がそう口にすると、通話先から女の溜め息が聞こえてきた。
『…失礼。お2人と私が接触するのは今回が初めてでしたね。では自己紹介を。
私は先日付けであのお方の秘書として召し抱えられることとなりました…チョキーナ・サントスと申します。どうぞお見知りおきを…』
「お…おう…。ワシはグーネンコ…なんだな」
「ザッパー…だったりして」
極めて事務的な口調で自己紹介をしてきたチョキーナに、グーネンコとザッパーは戸惑いつつもそう言葉を返す。
『では改めて…早速定期連絡に移りましょう。
まずは任務その1…ジュラシック・アンバーの回収状況はどうなっていますか?』
「そ…それが…まだ1個も回収できてないんだな…」
『…何ですって? これまでの数ヶ月間、貴方がたは何をしていたんです?
既に所有者が確定したアンバーが5つあるということはこれまでの報告書にも書かれていますが…最後の1つは目処すら立っていないのですか?』
「そうは言われても…どこにあるかも分からないものを探せなんてどだい無理な話なんだな…」
弁明するようにグーネンコがそう口にすると、また通話先から大きな溜め息が聞こえてきた。
『…もう結構です。
では続けて任務その2…そちらの時空に送り込んだ直後に消息を絶ったミハサの安否は判明したのですか?』
「そ、それは分かってたりして! 分かりは…したんだが…ちょっと問題があったりして…」
『また何か問題が? 今度は何なんです?」
更に不機嫌な口調になったチョキーナの声に気圧されながらも、ザッパーは言葉を続ける。
「その…ミハサは見つけたんだが…あいつ、オレ達のことを覚えてないみたいだったりして」
「もしかしたら、キオクソーシツ?ってやつかもしれないんだな…」
『…はぁ?』
その後 秘密結社『Sin-D』本部ビル
敗走したカロリディー達は、ようやく根城である本部ビルまで戻ってきたところだった。カロリディーはヘリに乗っていた時からずっと不機嫌だったようで、今もジェイソンとイシドーラの前であの独特のステップで地団駄を踏んでいた。
「クソッ! クソッ! クソッ!!
ジョーカーめ! 何がギガノトサウルスだ! 何が最強の恐竜だ! 1度ならず2度までも敗北を喫するなど! お陰で私がまた恥をかくことになったではないか!」
そんな見苦しい様子を見ていられないのか、ジェイソンとイシドーラは互いに顔を見合わせ、声を潜めて話し始めた。
「ボスはジョーカーを責めてるみてぇだが…話を聞く限りじゃあそこまで悪い戦いぶりじゃなかったみてぇだよなぁ…」
「そもそもの事を言えば、ボス自身の認識に問題があると私も思うが…例えそう言ったところで、ボスは聞き入れないだろうな」
「…だが、どうする? 今回おれ達も負けちまったが、奴らからアンバーを取り返さなきゃ願いは叶わないままだぜ?」
「そうだな…。そこについてだけでも、ボスと相談しなくては」
ということで、イシドーラはカロリディーに今後の相談を持ちかけることにしたようだった。
「ボス。今回我々も敗れはしましたが、その反面奴らをかなり追い詰めることができていたのもまた事実です。
ひいては今後奴らDキッズの恐竜と衝突する際は、是非ボスにも参加していただきたいのですが…」
そんなイシドーラの言葉に、カロリディーは目を血走らせながら怒鳴り返してきた。
「私に…私にまた恥をかかせるつもりかっ!?
奴らにはもう1体…スピノサウルスが加わったのだぞ!? 相手が総勢9体となっては、お前達の恐竜はともかく、ジョーカーであっても勝てる見込みがかなり薄いことぐらい分からないのか!?
この私に…そしてジョーカーに3度目の土の味を味わわせようと言うのかっ!?」
「だ…だがよぉ、ボス。
研究室の連中は、もうこれ以上の強化は無理だとか言ってやがるぜ?
それにウー博士もどこかへ雲隠れしちまったみてぇだし、ジョーカーをこれ以上強くすることなんて…」
「いや…まだだっ! まだ策はあるっ…!」
カロリディーはそう低い声で呟くと、どこかへ電話をかけ始めた。数度のコールの後、電話先の人物が応答したようだ。
『…今度は何の相談なんだ?』
その声の主はアクト団のノーピスであった。流石に外面を取り繕うのには慣れているのか、カロリディーは努めて冷静に言葉を紡いでいく。
「ご無沙汰しております、ノーピス殿。このたびは貴方にやってほしいことがありまして、こうしてお電話させていただいた次第なのです」
『それは構わないが、あんたに貸した恐竜と技カードはどうなった?
技カードはともかく、恐竜カードをドクターに無断で持ち出したからには、速やかに返してもらいたいんだが…』
「…申し訳ないのですが…あのガキ共に奪われてしまいましてね…。しかしあのガキ…いえ、子供達の仲間に新たなジュラシック・アンバーの保持者が現れてしまったのですよ。
そのイレギュラーのせいでありまして、決して私の管理が甘かった訳では…」
『…ほう、つまりアンバーの保持者は全て出揃った訳か』
「ノーピス殿、今何か?」
『いや、他愛のない独り言だ。…それで? 今度はどんなキメラ恐竜を作ればいいんだ?』
「いえ、今回はハイブリッド恐竜ではありません。
その代わり、私のジョーカーを更に強化していただきたいのです」
『あのギガノトサウルスを、か。
勿論構わない…と言いたいところだが、もうこれ以上できることなどないぞ?
鱗も骨の強化もあんたに言われた通り可能な限りのものは施したし、これ以上は見た目に影響を及ぼす可能性も…』
「いいえ。それで構わないのです」
そのカロリディーの言葉に、ジェイソンとイシドーラは驚きを隠せない様子だった。しかしそんな彼らの視線など気にしない様子で、カロリディーは続ける。
「この際手段は問いません。あらゆる恐竜の武器をジョーカーに搭載し…ギガノトサウルスの真の姿を貴方の手で再現していただきたいのです!」
そのカロリディーの言葉を受けてなのか、電話先から押し殺したような笑い声が聞こえてきた。
『フフフ…例え異形に成り果てようとも、あくまでそれをギガノトサウルスだと主張するわけか。
まあ…いいだろう。その仕事、引き受けよう。
しかしそこまでの大掛かりな改造となると、相応の代金を頂戴することにはなるが…』
「勿論構いません! こちらとしても全力を出させていただきます!」
『それならいい。それと時間は…明日の午後6時頃なら空いているが、それで構わないか?』
「了解しました! ではその時間に伺わせていただきます!」
『…そうか。ではな』
そこまで話したところで通話は途切れ、カロリディーは受話器を置いた。すると彼はその受話器を掴んだまま、狂気的な笑い声を上げ始めた。
その姿は、ジェイソンとイシドーラですら後退るほどの不気味なものだったのである…。
その頃 三畳市 商店街路地裏
カロリディーとノーピスがそんな会話をしている頃、グーネンコとザッパーは、チョキーナにミハサが記憶喪失かもしれないことについて必死に説明していた。最初は懐疑的な様子だったチョキーナも、次第に事の重大さが分かってきたようだ。
『なるほど…。それが本当なら、確かに一大事ですね。
もしかすると、出撃の際に何か事故に巻き込まれたのかもしれません。
こちらでも確認してみましょう』
「そうしてもらえるとありがたかったりして」
「でも…どうしたらいいんだな? キオクソーシツのやつの記憶を取り戻す方法なんて存在するんだな?」
『私はその手の専門家ではないので詳しいところは分かりませんが…とにかくこれは早急にあのお方へ報告して参ります。
貴方がたは引き続きジュラシック・アンバーの確保に向けて…』
『いいえ、もうその必要はないわ』
その時、チョキーナ側の通話に新たな人物の声が割り込んできた。しかしその声を聞いた瞬間、グーネンコとザッパーが姿勢を正す。どうやら彼らが言っていた「あの方」とはこの人物らしい。
『チョキーナちゃん、通話代わってもらってもいいかしら〜?』
『は、はい。構いませんが…』
『ウフフ、ありがと♪ さぁ〜て…グーネンコちゃんにザッパーちゃん。もうジュラシック・アンバーを探さなくてもいいわよ』
「えっ!?」
「ど、どういうことなんだな!?」
『とある伝手からの情報なんだけど…もうアンバーは全部契約者が決まっちゃったらしいのよ〜。
しかもぉ…互いに敵対している組織それぞれに3人ずつ契約者が所属してるみたいなのよねぇ…。
流石に2つの組織を相手取るのはユー達にとってもかなりの負担でしょ〜? だ・か・ら…そいつらが互いに潰し合うまでユー達は待っていればいいじゃない、ってことよ〜♪』
「確かに…そっちの方が楽なんだな?」
『そうでしょ〜?
それに…ミハサちゃんが記憶喪失になっちゃった問題についても、ワタシに考えがあるわ。
取り敢えず彼女の記憶をどうやって戻すか、どうやって連れ戻すかについては、ワタシの指示を待ってから行動してちょうだい♪』
「りょ…了解だったりして」
『うんうん、それでいいの。聞き分けのいい子は大好きよ♡』
「でも、それならワシらはこれから何をすればいいんだな…?」
『それについては、ユー達に新しい指令を与えたいと思っていたの。
もしそれが終わったら、一旦こっちに戻ってきても構わないわよ〜?』
「ほ、本当なんだな!?」
「それはありがたかったりして!
…それで、オレ達は何をしたらよかったりして?」
2人は喜びつつも、「あの方」からの指令の詳細に耳を傾けた。すると「あの方」は静かにこう言ったのだ。
『それはねぇ…ワタシのペット第1号に相応しい子を、ユー達に見つけてきてほしいのよぉ…』
その日の夕方 三畳市 Dラボ近くの展望台
「それにしても…今日は色んなことがありましたね…」
「そうね…。こんなに慌ただしい1日になるなんて、今朝起きた時は思いもしなかったわ〜…」
既にウー博士からの話も終わり、Dキッズもそれぞれの家へ古代博士が送ってくれることとなった。しかしオウガは「既に父親を呼んだから」とそれを断り、こうして展望台でミサと話をしているのである。
それはひとえに、先程邪魔がはいって失敗したミサへの告白をやり直すためでもあったのだった。そのためにわざわざ嘘までつき、1人Dラボに残ったのである。
「そういえば、ミサさん。あのスピノサウルスにはどんな名前を付けたんですか? せっかく仲間になってくれたのに、ただそのまま種の名前で呼ぶんじゃ他人行儀な気がして…」
「あぁ、それはね…レクシィちゃんに引けを取らないくらい強い恐竜だったから、『エンピロ』って名前を付けたの!
英語で『エンペラー』って『皇帝』のことなんでしょ? 恐竜王者のティラノにも負けない恐竜になってほしくて!」
『…ほう。この私を差し置いて皇帝の名前をスピノサウルスに付けるとは…随分と大きく出たではないか、女』
スピノサウルス…改め『エンピロ』の語源を聞いたレクシィが、ほんの少し苛立ちを滲ませながらそう口にする。そんな彼女をオウガが宥めるため声をかけようとした…その時だった。
「それで…オウガ君。わたしとここへ来たのは、ただ今日の感想を言いに来たんじゃないんでしょう?」
ミサが少し恥ずかしそうにしながらそう言ってきたのである。どうやらオウガの企みは見抜かれていたようだ。
オウガもばつの悪そうな表情を浮かべ、ミサに視線を戻す。
「やっぱり…分かっちゃってました?」
「だって…わたしも楽しみにしてたんだもの。そりゃあ期待しちゃうじゃない…」
「わ、分かりました。それじゃあ…今から、改めて言いますね」
「うん…。いつでも、どうぞ?」
そう言ってオウガがミサに向き合い、姿勢を正すと、ミサも同じように彼に向き合った。
そして、オウガは緊張と羞恥で顔を赤くしながらも、あの時の言葉の続きを口にしたのだった。
一方でミサは、その頬を赤く染め、目尻には涙を浮かべながらその言葉を噛みしめるように聞いていた。
それからゆっくりと、彼女は首を縦に振り、オウガに何かを言いながら微笑みかけたのであった…。
その日の夕方 Dラボ
そして子供達をそれぞれの家へ送り、ラボへ戻ってきた古代博士は、ウー博士を研究室へと案内していた。
「…ということで、今日からヘンリー・ウー博士もこのDラボで一緒に働いてもらうことになった!
そしてウーさん。こちらがうちのDラボのスタッフである、リアス君とミサ君です! これから一緒に頑張っていきましょう!」
「まさか私を受け入れてくれる場所があるとは思っていませんでした…。贖罪の機会を与えられたと思い、これから皆さんのお力になれるよう努力してまいります」
「ハハハ、それは心強いことですな!
では、リアス君達も改めて自己紹介を…ん?」
その時、古代博士はミサの異変に気が付いた。彼女はどこか上の空だったのである。しかもどこかホワホワした雰囲気を纏っているようにも見える。
「…リアス君。ミサ君は一体どうしたのかね?」
「オウガ君と2人で出かけていって、戻ってきたらこんな感じだったんです。
きっと…何かいいことがあったんですよ」
その顔に優しげな笑みを浮かべながら、リアスがそう古代博士に告げる。しかし彼は、その言葉の意味を理解できなかったようだ。
「ふぅ〜む…いいこと、か…。さっぱり思いあたらないな…」
2人が声を潜めてそんな話をしている間も、ミサはどこか恍惚とした表情をしていたのであった。
「……」
「王牙? どうしたの? 早くご飯食べちゃいなさーい」
ちなみに同じ頃、オウガは自宅で夕食の席に着いていたのだが、彼もまた同じような状態であったことは追記しておこう…。
ということで、今回はここまでです。
相変わらず更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。次回からは原作ありのストーリーになりますので、少しは更新頻度を上げられるかと思われます。
ちなみにウー博士のそばに落ちていたジュラシック・アンバーは、彼がジュラシックシリーズで出演した作品に合わせてチョイスしました。
それでは次回32話『ナイアガラ大決戦!グリムでリンボでカオスな奴ら!』是非ご期待下さい。
※追記:設定集のミサの項目に一部追記を行いました。
また、新しく『エンピロ』と『蒸気大爆砕』の説明を設定集に追記しました。
※追記2:アメジストが新しく『沙漠流砂』を使えるようになりました。
※追記3:一部記述を改訂しました。
また、風属性の超技『虚像幻視』の説明を設定集に追記しました。