古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

 ある日のこと、今日も今日とて恐竜が出現したとの通知を受け、インド北部のとある町へ行くことになったDキッズ一行。そこで彼らは、屋敷から逃げてきたというクシャトリヤの少女・ミーナと出会う。
 そして夕方のガンジス川で泳ぐまで家には帰りたくないという彼女のため、お姫様に憧れるマルムは一時的に衣装を交換して成り替わることになった。
 そんな中リュウタとレックスはデルタドロメウスと、オウガはアパトサウルスを発見し、それぞれの追跡にあたる。
 オウガはアパトサウルスの尾行中にジェイソンと会敵し、交戦することになる。レクシィとアメジストの合体技『溶岩爆発』でステゴケラトプスを退けたものの、続けてインドミナス・レックスが投入された。しかしそこで何故かアパトサウルスが乱入し、インドミナスに激しい攻撃を加え続けて撃破までしてしまったのであった。
 一方ガンジス川に辿り着いたミーナは夕日に向かって泳ぐうちにデルタドロメウスと出会い、共に泳ぎ始める。しかしそこへアクト団が乱入し、スピノを召喚してデルタドロメウスを痛めつけ始めた。
 窮地に追い込まれたミーナだったが、リュウタとレックスが駆けつけたことで形勢は逆転。最後はガブとエースによる合体技『雷雲招来』によってスピノを撃破した。
 戦いの後、屋敷から逃げ帰ってきたマルムと衣装を交換し直したミーナは、自分を守ってくれた恐竜を理解するために古生物学者になりたいとDキッズに語る。
 そんな彼女の思いを汲んだDキッズはメンバーズバッジを渡し、彼女をDキッズ第5のメンバーと認定したのだった…。
 



第34話:異種格闘大戦!ニンジャvsコマンドー!
前編


 ここは、三重県県某所にある化石発掘現場。この日も多くのスタッフが、現場のあちこちで忙しなく作業にあたっていた。

 その現場へ、今ちょうど足を踏み入れている一団がある。それは、古代博士とDキッズの4人だった。どうやら火急の要件とのことでここへ呼び出されたらしい。

 古代博士は現場をぐるりと一望したところで、現場監督と思しき男に声を掛けた。

 

「いやぁ、どうもー!」

 

「あっ、これは古代博士! お越し下さりありがとうございます!」

 

「早速ですまないんだが、今日見つかった恐竜の歯の化石というのは…」

 

「こちらです。きっと驚かれますよ!」

 

 そして現場監督に案内された先には、岩盤から突き出るように露出した棘のような化石があった。

 大きさもなかなかのものだ。

 

「ほう…。これは立派なものですな…。どれどれ…」

 

 早速古代博士はルーペを取り出して化石を丹念に観察し始める。しかし次第に彼の表情は曇り始め…。

 

「…うん?」

 

 終いには、訝しげな顔で首を傾げたのであった。

 

 

 それから10数分後、古代博士とDキッズは森の中をとぼとぼと歩いていた。その様子からは、明確な落胆が見て取れる。

 

「な〜んだ。恐竜の化石が見つかったって言うからついてきたのに…」

 

「ただのイノシシのキバだったなんて…」

 

「そもそもイノシシのキバが見つかるような地層を調査してても恐竜の化石なんて見つかるわけないじゃないですか。

古代博士。本当にあそこのスタッフに任せてて大丈夫なんですか?」

 

「う〜む…。流石にイノシシのキバと恐竜の化石を間違えるとなるとなぁ…。

まあ、ここは山奥だし野生のイノシシは沢山いるからな…。多分昔からそうだったんだろう…。タハハ…」

 

「ったく! ついてきて損したー! …ん?」

 

 口々に不満を漏らすDキッズと、本人が悪いわけではないのに申し訳なさそうに体を縮める古代博士。

 しかしその中、リュウタがふと足を止めた。見れば道の脇に大きな看板が立っており、そこに「ようこそ忍者村! この先道なりに2キロ」と書かれていたのである。

 このまま失意のうちに帰るしかないものかと思いきやの発見で、リュウタの顔は喜色満点に染まった。

 

「忍者村…!? ねぇ父さん! みんな! せっかく来たんだしさ、ちょっと寄ってこうよ!」

 

「忍者村…?」

 

「こんなところに忍者のテーマパークがあったなんて…」

 

「へぇ〜…でも、なんか面白そうだな!」

 

「ねぇおじさん! 行こう行こう!」

 

「え? だが、お前達は明日からまた学校じゃ…」

 

 そう反論しようとした古代博士だったが、あっという間にレックスとマルムに腕を掴まれ、オウガに後ろから押される形で連行されてしまう。

 

「さっ!」

 

「早く早く!」

 

「こんなところまた来れるかも分かりませんし、行ってみるのも悪くないですよ!」

 

 そして彼らはリュウタを先頭に、チビ恐竜達も引き連れて忍者村への道を進んでいったのであった…。

 

「にっに忍者っ忍者村〜っ!」

 

「ちょっちょちょっと、お待ちなせぇ〜!」

 

 

忍者村

 

 ということで、Dキッズと古代博士は忍者村へとやって来たのだった。忍者村というだけはあって園内には江戸時代を意識した建造物が立ち並んでおり、スタッフのみならず来場者達までもがみな着物や振袖といった和装の出で立ちである。

 

「この紋所が目に入らぬか!」

 

「ここにおわすお方をどなたと心得る! 畏れ多くも先の副将軍、徳川光圀公にあらせられるぞ!」

 

 更にその一角では、かのご長寿時代劇「水戸黄門」の撮影も行われていた。これでは忍者村というより映画村といった方が適切であるかもしれない。

 そしてDキッズ一行へ視線を戻してみると、彼らの中で1番興奮していたのは意外にも古代博士だった。

 

「おぉーっ! これはすごいぞ! 町娘だ! 飛脚だ! 侍だ! 姫様だ〜っ!」

 

 そう叫びながら古代博士は忍者村の中へと駆け出していってしまう。その後をDキッズはゆっくり追っているところだった。

 

「結局おじさんが1番はしゃいでるんだから〜…」

 

「時代劇の世界がそのまま目の前に広がってるとなったら、つい興奮しちゃうのも無理ないよ」

 

「にしたって…もうちょっと落ち着いてほしいよな〜…」

 

 そんな会話をしている時だった。突如として彼らの前に、老人の忍が現れたのである。

 

「「「「うわっ!?」」」」

 

「…うむっ、なかなかよいペットをお持ちじゃ。

どうじゃ? お主達。ひとつこいつを体験していかんか?」

 

 その言葉と共に差し出された1枚の紙を、Dキッズは受け取って覗き込む。その紙は、「ペットと一緒に忍者体験!」というイベント案内のパンフレットだったのである。

 

「ペットと一緒に忍者体験…?」

 

「へぇ〜、面白そう!」

 

「ペットも忍者になりきれるなんて、珍しい取り組みだね」

 

「だな! おじさん! これどこで…」

 

 そうリュウタが問いかけようとした時には、もう老人は目の前から消え失せていた。4人で周囲を見渡してみても、それらしい人影はどこにもなくなっていたのである。

 

「いないわ…」

 

「確かについさっきまでそこにいたのに…」

 

「…あっ! あそこに案内のポスターがあるぞ!」

 

 そこで、レックスがすぐそばの壁に貼り付けられたポスターを見つけた。そのポスターにもやはりパンフレットと同じ内容に加え、開催場所までもがしっかりと記されていたのである。

 

「どうやら…開催場所はあっちみたいだ」

 

「せっかくだし行ってみましょうよ!」

 

「う〜ん…気になることは多いけど…それもそうだな! 行こうぜ!」

 

 ということで早速会場へ向かうことにしたDキッズであったが、その中で1人オウガは考え込んでいた。

 

「………」

 

『…オウガ。その様子ではどうやらお前も気が付いたようだな』

 

「うん。一応レクシィにも確認しておきたいんだけど…あのお爺さんって前に原宿やバリバリ島で会った人で間違いないよね?」

 

『そうだろうな。匂いが同じということもそうだが、ああまで特徴的な顔のニンゲンが複数人いるとも考えにくいだろう』

 

「恐竜カードを持っていたことと言い、何度も俺達に接触してくることと言い…何かと不審な点が多すぎるよ。やっぱり、あのお爺さんがただのお爺さんだとは思えないんだけど…」

 

「おーい、オウガー! 早く行こうぜー!」

 

「…あっ、ごめん! 今行くよ!」

 

 ひとまず老人の正体について考えるのは後にし、オウガもリュウタ達のもとへ向かったのであった。

 

 

ペットと忍者体験 会場広場

 

 それからDキッズは何とか古代博士と合流し、一緒に忍者体験の会場へとたどり着いた。会場となる広場は既に多くの参加者と彼らのペット達でごった返している。ペットは殆どが犬や猫、インコ等の普遍的なものであったが、その中には豚やゾウなども交じっている。豚はともかくゾウをペットにするなどただ者とは思えないが、恐竜を連れているDキッズも大概であろう。

 

「なるほどぉ〜。飼い主とペットがコンビになって、数々の忍者修行をクリアできるか競うアトラクションな訳か…」

 

 立札に書かれたルール説明を見て納得した様子を見せる古代博士の横では、既に着替えを終えたオウガ達がいた。それぞれリュウタは赤、レックスは白、オウガは灰褐色の忍衣装に身を包んでおり、レクシィ以外のチビ恐竜達も覆面にスカーフと申し訳程度の仮装をしているようだ。(ちなみにレクシィは衣装を嫌がったので敢えて着せなかったようである)

 

「いよーっし! いっちょバッチリ息の合ったところを見せてやろうぜ! ガブ! イナズマ!」

 

『ガァブ?』

 

『ゴロロッ!』

 

「エース! アイン! 出場するからにはトップを取るぞ!」

 

『ギャーウ!』

 

『ギャッス!』

 

「あんまり体力に自信はないけど、俺もできる限り頑張るからレクシィとアメジストも付いてきてくれよ!」

 

『キュッキュッ〜!』

 

『私も当然負けるつもりはないが…オマエが最後まで残れているかが1番の問題だな』

 

 そしてそんな彼らのもとへ、ようやく着替えを終えたマルムとパラパラ、ランランが合流した。彼女が身に纏っているのは所謂くノ一衣装であり、どこか小学生らしからぬ色気を醸し出していた。

 

「お待たせ〜! どう?」

 

「おおっ! 似合ってるじゃん!」

 

「ふふん、当然でしょ?」

 

「うむ。馬子にも衣装ってやつだな」

 

「「……」」

 

 マルムのくノ一姿を素直に褒めるリュウタと古代博士だったが、その横ではレックスとオウガが彼女の姿に釘付けになっていた。

 

(マルムってこんなに可愛かったんだ…)

 

(マルムでこれなら…ミサさんのくノ一姿はもっと素敵な格好だったんだろうな…。連れてきたかったな…)

 

 もっとも考えていることは両者で全然違っていたのであるが…。

 

「…可愛い…」

 

「えっ?」

 

「「「ん?」」」

 

 そんなことを考えていたせいか、ついレックスは口を滑らせてしまったようだ。虚を突かれたマルムはつい頬を赤らめ、オウガ達の好奇の視線がレックスに注がれる。当のレックスも失言に気づいたようで、その視線から逃れるようにそっぽを向いてしまったのだった…。

 

 何はともあれ、出場者の準備が整ったタイミングに合わせて、先程の老人が煙幕と共にその場へ現れた。

 驚く人々をよそに老人は巻物を広げると、よく通る声で説明を始めたのである。

 

「ようこそ新米忍者諸君! ここへ集まった諸君らには、これから各々のペットと共に忍者修行に挑戦してもらう! ペットと力を合わせて数多の関門をくぐり抜けるのだ!

そして最初に終点へ辿り着いた者を免許皆伝と認定し、更に記念品も贈呈しよう! 

では、まずは第一の試練…飛び石渡り! 始め!」

 

 老人の掛け声と共に、出場者達と彼らのペットは一斉に駆け出していく。まず最初の試練は、泥沼に点在する石に飛び移りながら対岸まで渡る「飛び石渡り」だ。

 

「よーし、行くぞー! へいっ、ほっ…うわぁっ!」

 

 意外と距離感を掴むのが難しいらしく、この時点で既に複数人の脱落者が出る始末であった。

 

「次! 第二の試練「網渡り」!」

 

 続いての試練は、橋のようにかけられた網を登って先へと進む「網渡り」である。握力さえ気をつければ先程より難しくはなさそうだが…。

 

「うわぁ〜…」

 

「怖くないから…ほら、おいでー!」

 

「ニャーっ!」

 

 高所を怖がったペットに飛びつかれ、バランスを崩して脱落してしまう者や、本人は渡れたもののペットが網上で立ち往生して進めない者が出ていた。

 まあこれは無理もないだろう。

 

「まだまだ! 第三の試練「水蜘蛛渡り」!」

 

 今度は池の上を忍具の1つ・水蜘蛛で向こう岸へ渡る「水蜘蛛渡り」である。こちらはそもそも繊細なバランス感覚を求められることもあり、転覆する者が続出していた。

 

「気を抜くなよ! 第四の試練! 「丸太走り」!」

 

 更に続いては、崖を渡すようにかけられた3本の丸太の上を走り抜ける「丸太走り」であった。ここまで来ると忍者というよりは最早筋肉番付やSAS〇KEの領域である気がしなくもない。

 当然バランスを崩して丸太から滑り落ちる者や、すんでのところで丸太にしがみついたはいいものの身動きが取れなくなった者が多数見受けられた。

 

「こんなもんでは終わらんぞ! 第五の試練! 「迷宮突破」!」

 

 そして今度の試練は、巨大な岩がゴロゴロと転がり抜ける迷宮で、点在する退避場所を利用してタイミングよく回避と進行を繰り返す「迷宮突破」だった。早い話が某ソウルゲームのセ〇の古城システムである。

 だが流石に本物の岩を使うと死人が出るので、大玉転がしにも使われる柔らかく軽めの球を使っているようだ。

 明らかに突破させる気がない試練ばかりだが、そんな中Dキッズはどうしていたのかというと…。

 

「どりゃあっ!」

 

『ガァブッ!』

 

『ゴロローッ!』

 

 リュウタ達は持ち前の運動神経で飛び石を難なく渡りきり…。

 

「しっかりついて来いよ! エース! アイン!」

 

『グァーッ!』

 

『ギャギャッス!』

 

 レックス達も瞬発力を活かして素早く網を渡り…。

 

『コ〜ン!』

 

『ラララ〜ラ〜♪』

 

「うふふ、いい子よ〜パラパラ! ランラン!」

 

 マルムは水蜘蛛で安定した体勢を見つけた上でパラパラとランランに引っ張ってもらい…。

 

「大丈夫…大丈夫…。そっと歩けば丸太を転がさずに向こうに渡れるはず…」

 

『キュッ…キュッ…』

 

『…いつまでかかっているのだ。安定択を取ることは悪くないだろうが、それでは日が暮れるぞ』

 

「わ、分かってるっ、けど…うわわっ!」

 

 オウガとアメジストは慎重すぎるくらいの足取りで丸太を渡っていた。ちなみにレクシィはとうに渡り終えており、対岸でオウガ達を待っている状況である。

 そして数多の脱落者が出る中、いよいよ4人と8匹は、第5の試練「迷宮突破」を踏破しようとしていたのであった…!

 

 

その頃 忍者村 別の場所

 

 Dキッズがチビ恐竜達と共に忍者体験をしている頃、1人残された古代博士はフラフラと村内を散策しているところだった。ちょうど風情のあるススキ野原を通りかかったところで、彼は誰に言うでもなくボソリと台詞を呟く。

 

「オホン!…拙者、ススキ三十郎…いや、五四十郎か…」

 

 どうやら何かの時代劇の台詞を真似てみたようだ。周囲には彼以外誰もいないので特に反応は返ってこなかったが、代わりに少し遠くから歓声が聞こえてきた。そちらへ目をやると、そこではスーパー戦隊のスペシャルステージが開催されていたのである。

 

「ほほーう! 面白そうじゃないか!」

 

 それに興味を惹かれた古代博士は、早速ステージの方へ歩いていったのだった…。

 

 

その少し後 忍者村 最終試験会場

 

 遂にあらゆる試練をくぐり抜けたDキッズとチビ恐竜達は、断崖絶壁に垂らされた綱を登る最終試験「断崖登り」に臨んでいた。どうやら彼らだけがこの最終試験まで到達できたようである。

 そして崖の上では、あの老人が鋭い眼差しで彼らが登ってくるのを待っていた。

 

(…うむ。やはりこの4名が残ったか…)

 

 老人の見下ろす先では4人と8匹が懸命に綱を登っていた…のだが、まず脱落したのはマルムだった。

 

「…あっ! あぁーっ!」

 

 彼女は綱を掴み損なったことで体のバランスを崩してしまったのである。すんでのところでパラパラとランランの尻尾を掴んだはいいものの、人間の体重をチビ恐竜2匹が支えられるはずもなく、真っ逆さまに落下してしまった。

 哀れ地面の染みとなるかと思われたマルム達だったが、ゲストの安全に抜かりがないのがこの手のテーマパークである。下にはしっかりとマットが敷かれており、彼女達を受け止めてくれていた。しかしその代わり、落ちた時の衝撃で彼女達はトランポリンのように跳ね続けていたのだった。

 

「もーっ!」

 

「あっ! マルムが落ちたぞ!」

 

 そして、今度はオウガの番だった。

 

「ゼェ…ゼェ…もう…ダメだぁ…」

 

 ここまで艱難辛苦をくぐり抜けてきたせいで、ただでさえ少ない彼の体力は限界に達していたのである。彼は力尽きた様子でズルズルと滑り落ちていき、ぺたりとマットの上にへたり込んだ。

 アクシデントもなければ見せ場もない、全くもって面白みのない落ち方であった。

 ちなみにアメジストはとっくに限界に達して滑り落ちていたようなので、仮にオウガが一念発起したとしても脱落は変わらなかっただろう。

 その場から全く動けないほど疲弊した彼を気遣ってか、下で待っていたアメジストと先に登っていたレクシィが降りてきて彼のもとへと駆けつけた。

 

『キュウン…』

 

「ごめんな、レクシィ、アメジスト…。ゴールまで連れて行ってあげられなくて…」

 

『気にするな。オマエにしてはここまでよく頑張った方だろう』

 

「レクシィが慰めてくれるなんて…珍しいね…」

 

『…フン。言われてみれば私らしくもないかもしれんな』

 

 そしていよいよ1着争いは、リュウタとレックスの手に握られることになったのだった。

 

「後はオレ達だけか…。よし! 勝負だレックス!」

 

「あぁ! 望むところだ!」

 

 1対1のガチンコ勝負ということでチビ恐竜達も気合が入ったのか、彼らはリュウタやレックスを追い越してどんどん崖を駆け上っていく。

 

「頑張れガブ! イナズマ! あと少しだ!」

 

「負けるな! エース! アイン!」

 

 しかし先にガブとイナズマは、もう少しで崖の上というところで揃って息を切らしてしまった。4足歩行の彼らはそもそも登るのに向いているとは言い難いので、仕方ないだろう。

 

『ゼェ…ゼェ…』

 

「ガブ! イナズマまで! あと少しだろ! 頑張れって!」

 

 その一方で、エースとアインはまだ余力がありそうだった。見栄っ張りのアインに至っては宙返りまで織り交ぜながら登っていくくらいである。

 

「今がチャンスだ! エース! アイン! 一気に登りきれ!」

 

 レックスの声に応え、エースとアインは一気に崖上目前まで登り切った…のだが、そこで突然エースが足を止めてしまった。何故か体を小刻みに震わせ、目を固く瞑っている。

 

「…? どうした? エース…」

 

 レックスがそう声をかけた時だった。エースがレックスの眼前で高く尻尾を上げ…フンをしたのである。どうやらこんな時に便意を催してしまったようだ。

 

「えっ?…うわぁぁぁぁっ!」

 

 当然、そんなことをされて慌てない人間はいない。慌てたレックスはつい手を離しててしまい、一気に下のマットへ落下してしまったのだった。

 

「こっ、こんな大事な時にうんちするなーっ!」

 

 下からエースへ文句を飛ばすレックスだったが、そんな彼の顔へマットでバウンドしたフンが再び落下してくる。

 

「もーっ! いい加減にしてくれーっ!」

 

『グゥ…♪』

 

『ギャギャ…』

 

 そう絶叫するレックスをよそにエースはすっきりとした表情を浮かべており、それをアインは心底呆れた目で見ていたのだった。

 

 かくしてライバルがいなくなったことで余裕を取り戻したガブとイナズマはしばらく休んで体力を取り戻したようだ。そしてリュウタと共に少しずつ崖を登り…遂に終点へと辿り着いたのである。

 

「よっしゃーっ! 登ったどーっ!

アハハッ! やったな! ガブ! イナズマ!」

 

『ガブ! ガァブ!』

 

『ゴロッ!ゴロロロッ!』

 

 互いに手を取り合い、リュウタとガブ、そしてイナズマは喜びを分かち合う。そんな彼らを見た老人は満足そうに頷くと、彼らに歩み寄った。

 

「天晴じゃ! お主達は力を合わせ、見事全ての忍者修行をやり通したのじゃ!

では免許皆伝の証として、この巻物を与えよう!」

 

「免許皆伝の巻物…!? ありがとうございます!」

 

『ガァブ…!』

 

『ゴロロ…!』

 

「うむ。ではこれからも、鍛錬を怠るでないぞ!

でやっ!」

 

 そう言い残すが早いか、老人は何かの球を懐から取り出し、地面に叩きつけた。すると辺りに煙幕が張られ、そしてそれが晴れた頃には、老人の姿はどこにもなくなっていたのである。

 

「免許皆伝の巻物かぁ…! どんなのが書いてるんだろうな? ガブ、イナズマ!」

 

 一方でリュウタはまだ興奮冷めやらぬようで、巻物を手にガブやイナズマと語らい合っていたのであった…。

 

 

その頃 スーパー戦隊スペシャルステージ

 

「よーしそこだー! 行けーっ!」

 

 すっかりスペシャルステージに夢中になっていた古代博士は、他の観客も気にせず全力でスーパー戦隊を応援しているところだった。

 だが、怪人の方とてやられっぱなしではいかないようだ。

 

「えぇ〜い! これでも食らえ〜!」

 

 すると怪人の両肩から風の渦が発射されたのである。どこかで見覚えがあるかと思ったら、いつぞやのディノレンジャーズに出演していた怪人と同じ技であった。スーツを流用しているのだろうか。

 

「トウッ!」

 

 しかし敢え無くその攻撃は躱されてしまい、行き場を失った風の渦は背景の崖に直撃し、大きな土煙が上がった。どうやら破壊力はそれなりにあるらしい。

 そしてその土煙の中から、石や砂に交じってステージに落ちてきたものがカツーンと金属音を響かせる。

 それは、いつもの卵型カプセルだったのだ。カプセルは2つに割れると、中から1枚のカードを排出する。

 

「正義は必ず勝つ! 怪人め、覚悟しろ!」

 

 続いてヒーロー役の人物が武器を取り出し、高く掲げた時だった。その刃に太陽光が反射して眩く光り輝くと、カードが虹色の光を放ち始めたのである。

 そして光の中から姿を現したのは、3体の小柄な獣脚類だった。その全身が豹柄の羽毛で覆われており、頭部には立派な飾り羽がひらめいている。そして足にはドロマエオサウルス類特有の一際大きな鉤爪…シックルクローが備わっていたのだ。

 

「あっ! あれはデイノニクスじゃないか!」

 

 そう、その恐竜の名はデイノニクス。かつて存在した「恐竜は愚鈍な生物」だという固定観念をぶち壊す切っ掛けとなった、俊敏で狡猾な小型獣脚類である。

 

 

その頃 忍者村

 

「ふんふふ〜ん…ジャーン! 免許皆伝!

これで拙者も立派な忍者でござる…なーんちってー!」

 

 デイノニクスがヒーローステージを荒らし回っている頃、Dキッズは着替えを終えて合流したところだった。見るからに上機嫌な様子のリュウタが免許皆伝の巻物を手に、オウガ達のもとへと歩いてくる。

 

「いいなぁ〜…。アタシももうちょっとだったのに〜」

 

「…で、何が書いてあるんだ?」

 

「すごい忍術が書いてたりするんじゃないかな? 壁抜けの術とかバッタの術とかネズミ変身の術とか…」

 

「よーし、ちょっと待ってろ〜…」

 

 そしてリュウタは、ワクワクした様子のオウガ達の前で勿体ぶらずに巻物を開いた。

 

「えー、なになに…。『わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい。 byジュラ三太夫』…」

 

「…ジュラ…三太夫…?」

 

「忍術と何にも関係ないじゃないか…」

 

「こんなみつをライクの格言もどきのために、俺達はあんな危険な修行に身を投じたのか…」

 

 思った以上に薄っぺらい内容の巻物を見たせいか、4人の間に微妙な空気が流れる。

 …が、そこへ響いてきた古代博士の声でその空気は一変した。

 

「おーいリュウター! そいつを捕まえてくれー!」

 

 その声の方へ4人が振り向くと、通りの向こうからデイノニクス達が土煙を上げながら迫ってきたのである。だがデイノニクス達は4人の目の前で散開し、あっという間に走り去っていってしまった。

 

「父さん! あれってデイノニクスだよね!」

 

「ああそうだ! ヒーローステージに突然現れてな…今はあの通り、あちこちを走り回っているのだ!」

 

「これ以上被害が出る前に、僕達で食い止めよう!」

 

 そして5人は互いに頷き合い、デイノニクスが逃げていった方向へ走り出した…ところで、オウガのディノラウザーに着信が入ってきた。画面を見ると、相手はDラボのミサであった。

 

「ミサさん? 悪いみんな! 先に行っててくれ!」

 

「了解! オウガもすぐに来いよ!」

 

 リュウタ達の背中を見送りつつオウガはディノラウザーを持ち直し、通話ボタンを押す。

 

「ミサさん、こちらオウガです」

 

『もしもしオウガ君? 今日オウガ君達が行った化石発掘現場の近くに恐竜が出たの! そっちでも確認できてる?』

 

「はい、できてます! ターゲットはデイノニクス。場所は忍者村っていうテーマパークの中です!」

 

『忍者村…?』

 

『三重県の山奥にある、忍者を主題にしたテーマパークね。戦国時代、そこで伊賀忍者の一族が隠れ住んでいたことが由来らしいわ』

 

『そうなんですね…。

それじゃあオウガ君! これからわたしとエンピロちゃんもそっちへテレポートで移動するから、どこか場所を決めて落ち合わない?』

 

「場所ですか…。分かりました!

えーっと、この辺りで分かりやすいところは…」

 

 そう呟きながらオウガはしばらく周囲を見渡していたが、やがてその視点がとある施設に向く。それは、実に特徴的な建物であった。ここならミサにとっても分かりやすい目印となるだろう。

 

「じゃあ…ミサさん。今俺の目の前にあるアトラクション…『悪代官のカラクリ屋敷』の前で集合することにしましょう! 万が一場所が分からない時は、また連絡してくれれば俺がナビゲートしますから!」

 

『分かったわ。今回もオウガ君の力になれるよう頑張るわね!

それじゃあ、また後で会いましょう!』

 

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 

その頃 アクト団基地「アジ島」

 

 同じ頃、アクト団達もデイノニクス出現の一報をアクトサーチと臨時ニュースの両方で把握したところだった。

 

『ここで臨時ニュースを申し上げます。三重県の忍者村に恐竜が出没したとの情報がたった今入ってきました。

このところ連続して起こっている恐竜が出現する騒動はいまだ沈静化する様子がないようで…』

 

「おおっ! デイノニクス! ワシのデイノニクスぞい!」

 

「ワシの?」

 

「デイノニクス?」

 

「ザンスか?」

 

「そうじゃ! こいつがディーノ! こいつがニック! こいつがスー!」

 

 ソーノイダがそう言いながら画面に次々と流れるデイノニクス達を指さし、名前を口にする。どうやら一際頭の飾り羽が大きく美しい個体がディーノで、その他の2体がそれぞれニックとスーであるらしい。

 

「「「スー?」」」

 

「奴らはワシがかつて手塩にかけて育て上げたシークレット恐竜ぞい!」

 

「スーって名前はどうなんスか…?」

 

「どっちかというとティラノサウルスの愛称ザンス」

 

「っていうかシークレット恐竜って、あのパキケロなんたらとテリジノちゃん以外にもまたいたんですの?」

 

「そうじゃ。だがあいつらはパキケファロサウルスやテリジノちゃんとはまた違った育て方をしたんだぞい。

あいつらはのう…」

 

 そこで一度言葉を区切ると、ソーノイダはゆっくりと語り始めた。シークレット恐竜恒例の回想タイムに入るようである。

 

「雨の日も風の日も、厳しい修行に明け暮れ…来る日も来る日も、難行苦行に耐え忍び…そして遂に、立派な忍者恐竜に成長したんだぞい! ニンっ!」

 

 その回想で流れたものは、棒での折檻や滝行、更にはガンガンに熱した鉄板の上で跳ねさせる…など、これまた恒例ではあるが虐待そのものな内容であった。

 よくこれで子育てなどと言えたものである。

 

「忍者恐竜?」

 

「何でまた忍者にしたザンス?」

 

「そ、それは…たまたま忍者映画を見て思いついたのだぞい…」

 

「「「ガクッ…」」」

 

 あまつさえ忍者修行をさせた理由は忍者映画に影響されたからだという。どこまでも救いのない話であった。

 

「ドクター。それって恐竜虐待じゃないスか? デイノニクス達が可哀想ッスよ…」

 

 エドがついそんな苦言を口にすると、ソーノイダの喜びの表情がどんどん曇っていく。これを見てウサラパとノラッティ〜は、彼が怒っていると察したようだ。

 

「こっ、こら! エド! ドクターに謝るんだよ!」

 

「ええっ!? おれ何にも悪いこと言ってないッスよ!」

 

「正論は時に人を傷つけ怒らせるザンス! ここは謝っておいた方がいいザンス!」

 

 そして3人がそーっとソーノイダの顔色を窺うと…なんと彼は、今にも泣きそうな顔になっていたのである。

 

「ど…ドクター…?」

 

「…エドの言う通りぞい。ワシはその場のノリと思いつきで、ディーノ達が望んでもいない修行を強いてしまったのだぞい。

あの時のワシは、本当にどうかしておったぞい…」

 

 心底反省しきった様子でそう口にするソーノイダを、ウサラパ達はどこか信じられないものを見る目で見ていた。まさか彼から自分の所業を省みる発言が出てくるとは思わなかったのである。

 

「じゃからワシは、例えディーノ達に拒絶されたとしても受け入れる心の準備はしてきたつもりぞい。

だが、せめてあの子達とは一度でいいから話を…」

 

「あーっ! ドクター! テレビテレビ!」

 

「何ぞい、人がせっかく…ぞいっ! あいつらは!」

 

 ウサラパの声に応じてソーノイダがテレビのモニターを見ると、そこにはデイノニクスを追いかけるリュウタ達の姿があった。

 

「まずいぞい! あいつらに先に回収されてしまったら、話どころではなくなってしまうぞい!

お前達! 早速現場へ急行するぞい!」

 

「「「ヘイヘイホー!」」」

 

 ウサラパ達の返事を聞いたところで、ソーノイダはアクトホルダーを手に取り、こんなことを言い出した。

 

「さて、そうとなればあの子も連れて行かんとな。

テリジノちゃーん! 一緒にお出かけするぞーい!」

 

『ミュー!』

 

 ソーノイダの声に応じ、玩具で遊んでいたテリジノが駆けつけてくる。そしてソーノイダは、テリジノを優しく抱き上げてウサラパ達に見せつけたのだ。

 

「今日はこの子も連れて行くぞい!」

 

「テリジノちゃんも連れて行くんスか?」

 

「ずっとミー達には任せてくれなかったザンスのに…」

 

「当たり前ぞい。お前達に任せたら、またアクロカントやアルティリヌスのようにガキンチョ共に奪われるのが目に見えておるじゃろうが。

なぁーに心配するな! 技カードと融合なんぞしてなくても、ワシと一緒に鍛え直したテリジノちゃんは十分すぎるほど強いぞい!」

 

「心配はしてないですけどぉ…」

 

(ドクターと一緒だといつも碌なことにならないザンス)

 

(正直それには同感ッス)

 

「何ぞい?」

 

「「いっ、いえ、何でも…」」

 

「ならいいぞい。ほらほら何をぼさっとしておるのだぞい! さっさと準備をせんか!」

 

「はい! ただいま!」

 

 何はともあれ、ようやく出撃することになったソーノイダ達は、速度を重視してジェット機に乗ることにしたようだ。

 しかし席は3人分しかないので、ウサラパの席にはソーノイダが座り、ウサラパは床に座らされていた。そしてテリジノは、大事を持ってカードに戻されたようだ。

 

「エネルギースタンバイOKッス!」

 

「目標確認! 日本国三重県忍者村ザンス!」

 

「よし! 発進準備オールグリーンぞい!」

 

「何でアタシだけ床に座んなきゃいけないのよ…」

 

「うるさいぞい! さあ、エド! ノラッティ〜! 発進ぞい!」

 

「了解ッス!」 「了解ザンス!」

 

 エドとノラッティ〜の手によりジェットエンジンに点火され、機体はみるみるうちに加速していく。コクピット内のソーノイダ達にも、加速による凄まじいGがかかり始めた。

 

「うわわわわ…」

 

「く…苦しいッスけど…いつになくカッコよく動いてるッス…!」

 

「なんかもう嫌な予感がしてきたザンス…!」

 

 そして機体はアジ島から離れ、日本へ向けて一直線に飛んでいったのであった…。

 

(ディーノ…ニック…スー…。今行くぞい…!)

 

 

その頃 忍者村

 

 忍者村の大通りを、1人の男が歩いている。その男は周囲の人々とは違ってスーツにネクタイを締めており、更に胸元にはアンバーを埋め込んだカフスピンを付けていた。

 そう、秘密結社『Sin-D』の資金調達・経理担当のイシドーラ・ミルズである。彼はとある任務を受けた上でここへ来ていたのだ。

 

(まさか、「日本のニンジャとかいうものを研究してこい」とは…。手が離せない用事があるのは分かるが、それならホスキンスのやつが自分で赴けばよい話だろうに…)

 

 どうやらジェイソンの頼みで、日本のニンジャの研究に来ているらしい。彼のことであるから、どうせカロリディーから特別手当を受けているのだろう。

 

(とは言え…来ておいて何だが、こんなところでは目的の資料は集まりそうにないな。

まったく、バカバカしい…)

 

 そんなことを考えながら歩いていたイシドーラだったが、川に出たところで彼の視線はとある一点に釘付けになった。

 それは、あのデイノニクス達であった。抜群の連携を見せるその姿に、彼は目を奪われたのであった。

 

(あれほどの敏捷性…そして尋常ならざる連携…。

特に連携は私のアトロキラプトル達に欠けているものだ。奴らは連携など関係なしに私の指定したターゲットを追跡して血祭りに上げることしか教育していないからな。

だがもしあの連携を我々の技術に取り入れることができれば…)

 

 イシドーラの口が笑みで歪む。当然のことだが、彼は金になるものにしか興味がないのである。

 

(アトロキラプトルや…その他のラプトルの商品価値は更に跳ね上がるのは間違いないだろう。

では…早速サンプルを確保しなければ…)

 

 そう心の中でつぶやくと、イシドーラは前へ…デイノニクス達が走り去っていった方へ歩を進めたのであった…。

 

 




今回はここまでです。
年末ということで多忙な状況ではありますが、今回は前々からある程度構想を固めていた話ということとあり、前回よりはスムーズに筆を進められました。
次の投稿は、遅くとも来年1月上旬までに行いたいと考えています。
それでは、後編をお楽しみに!

第37話の原作「恐竜!荒野の決闘!」に出演する恐竜について、皆様からのご意見を伺いたいと思います。以下の選択肢から1つを選んで回答して下さい。(選択肢3を選ばれた方は、具体的な恐竜を提案して下さると助かります)

  • 原作通りサウロファガナクスを出す
  • アロサウルス・A(風属性)を出す
  • 別の超大型肉食恐竜を出す
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