古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回は後編…のつもりだったのですが、かなり長くなってしまったので中編と後編で分けて投稿します。
後編は明日の5時に投稿する予定ですので、何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。


中編

その少し後 忍者村食事処「山くじら」

 

 次にデイノニクスが姿を現したのは、屋外の食事スペースだった。そのテーブルの1つには山のようにバーベキュー用の肉が積まれている所をみるに、その匂いに釣られてやって来たのだろう。

 早速デイノニクス達は他の客達を威嚇して追い出すと、肉の皿へと殺到した。

 

「あっ! いたっ!」

 

 そして、そこへオウガ以外のDキッズの3人と、古代博士も到着したのであった。その勢いのままに飛び出していこうとするリュウタを、古代博士が引き留める。

 

「待て、リュウタ。デイノニクスは群れで狩りをしていたと考えられている獰猛な恐竜だ。小さいからと言って油断するなよ」

 

「勿論分かってるよ、父さん!

よーっし、じゃあオレ達に任せてくれよ! 何てったって免許皆伝だからな!」

 

 そう誇らしげに宣言すると、リュウタはまずガブをカードに戻してディノホルダーにスキャンした。

 

「まずはお前からだ! 行くぜ、ガブ! ディノスラーッシュ!

轟け! トリケラトプス!」

 

ゴオォォォォッ!!

 

 黄色い光と電撃に包まれてガブが成体化するや否や、何とリュウタはその頭へとよじ登り出したのである。ご丁寧に印まで結んで、一体何をするつもりなのだろうか。

 

「あっ忍者恐竜ガブ…只今、あっ参上…!」

 

 免許皆伝を得てすっかり調子に乗っているようで、リュウタはガブの上でそう大見得を切って見せたのであった。

 更にその光景を見た外国人旅行者が殺到し、彼らの姿を写真に撮り始めた。

 

「オー! ジャパニーズニンジャダイナソー!」

 

「ワンダフォー!」

 

「へっへへー! それほどでもぉ…」

 

「何やってるんだリュウタ!」

 

「バカなことやってる場合じゃないでしょ!」

 

 外国人旅行者から褒められてますます図に乗っていたリュウタだったが、レックスとマルムから怒鳴られてしまった。敵を前にしてこの態度では怒られても仕方ないというべきだろう。

 とは言え語気強めに怒られたリュウタは口を尖らせ、若干イジケたような表情を見せた。

 

「チェッ、分かってるってば…。…あーっ! デイノニクスが!」

 

 そしてそんなやり取りをしている間に、肉を食べ尽くしたデイノニクス達が走り去ろうとしていたのである。

 

「待てーっ! 追うんだガブ…うわぁっ!」

 

 すぐさまリュウタが指示を出すと、ガブは旅行客達を軽々と飛び越えてデイノニクスを追いかけ始めた。

 四つ足とは言え自慢の突進力を活かして猛追するガブに対し、デイノニクス達はどんどん距離を離していく。しかもスピードを落とさずに目まぐるしくフォーメーションを変え続け、ガブとリュウタの目を惑わせようとしていた。

 

「くっ、なんてスピードと身のこなしなんだ…」

 

 そしてデイノニクス達は更にスピードを上げると、通りの先にある屋敷の門をくぐっていってしまったのであった。

 追いかけたいところだが、門の大きさを考えると、ガブではくぐれるどころか突き破ってしまうだろう。だがガブは今最高時速に達しており、簡単には止まれそうもないこともまた事実であった。

 

「うわぁぁっ! これじゃぶつかるーっ! 戻れっ! ガブ!」

 

 それでも何とか機転を利かせ、リュウタは素早くディノホルダーを操作してガブをカードに戻した。しかしそれでも遅すぎたようで、リュウタだけが門に激突してしまったのであった。

 

「ぷぎゅう…」

 

「リュウタ! 大丈夫か!?」

 

 潰れたカエルのような悲鳴と共に地面に倒れ伏すリュウタのもとに、レックスやマルム、そしてイナズマをはじめとしたチビ恐竜達も追いついてくる

 

「だ…大丈夫〜…」

 

「ったく…何が『オレに任せろ』よ。全然ダメダメじゃない」

 

 リュウタを囲みながら呆れた様子で会話をするレックスとマルム。そんな彼らの頭上では、巨大な何かの影が高速でこの忍者村へ近づいてきていたのだった…。

 

 

忍者村 上空

 

 影の正体は、アクト団の飛行機…というよりロケットのようなものであった。

 

「間もなく忍者村に到着するッス!」

 

 いよいよ目的地上空に到達したということで減速させようとしたエドだったが、そこで彼ははたと気づいた。操縦桿やその周辺には、減速するためのブレーキ等の表示がなかったのである。

 

「あれっ!? このロケット、ブレーキがついてないッスよ!?」

 

「「えーっ!?」」

 

「心配するでないぞい。ちゃーんと付いとるぞい」

 

 エドの言葉に慌てふためくウサラパとノラッティとは異なり、ソーノイダは落ち着いた様子で傍らの電灯のスイッチのような紐を引っ張った。

 すると突然ベルトのようなものがウサラパ達3人の体に巻き付き、続けて彼らの足元の床が抜けてしまった。

 悲鳴と共にロケットから投げ出された3人だったが、そのベルトからパラシュートが広がると、機体の後方で開いた。どうやらこれがブレーキ代わりらしい。

 しかしその形はパラシュートというより、まるで凧のような見た目であった。これでは落下スピードを緩めるには少々…いや、かなり心許ない。

 

「うわぁぁぁぁ…!」

 

「ちょっと! 何でアタシ達がブレーキなのよぉぉぉぉ!」

 

「これじゃいくら命があっても足りないッスよぉぉぉぉ!」

 

「ソーノイダ様〜! やめてほしいザンスぅぅぅぅ!」

 

 猛烈な風を全身に受けながらも、ウサラパ達は口々にソーノイダへ届くはずもない助けを求める。

 そして、状況は更に悪くなろうとしていた。

 

「え、エドぉぉ! そんなに近づくとヤバいザンス!」

 

「そんなこと言われてもぉぉ…」

 

 風の流れのせいか、ロケットの軌道のせいかは分からないが、ノラッティ〜の凧がエドの凧へ近づいてきたのである。しかしだからと言って2人にどうにかできようはずもなく、2つの凧は互いに絡み合ってしまった。

 

「うわぁぁぁぁ近づくなぁぁぁぁ!」

 

 更にそこへウサラパの凧も加わり、全ての凧は互いに絡まり合って激しく回り始めたのであった。

 当然こんな有様でロケットが減速などできるはずもなく、むしろ機体は更に速度を増して落下し続けていく。

 

「おっ、おっ、おおおお…!」

 

「「「ズビズバ〜…」」」

 

 そして彼らのロケットは、目的地の忍者村…から少し離れた山間部に勢いよく激突したのであった…。

 

 

その頃 忍者屋敷

 

 一方その頃、リュウタ達に古代博士を加えた1団は、忍者屋敷に逃げ込んだデイノニクスの行方を探っていた。

 その中でガブとイナズマに匂いでデイノニクスを追わせていたリュウタは、井戸の前に辿り着いたのである。

 

『ガブ、ガァブ』

 

『ゴロロロ…』

 

「この井戸に逃げたってのか…? おーいみんなー! ちょっとこっちに来てみてくれよー!」

 

 リュウタが大声を張り上げると、すぐさまレックスやマルムにチビ恐竜達、そして古代博士も集まってきた。

 

「ほんとなの?」

 

「ふむ…どうやら間違いなさそうだ」

 

 そう呟き、古代博士は井戸の周りに残っていた足跡の1つを指さした。それは、2つ指の生き物の足跡だったのである。

 

「見てみろ。この2本指の足跡は間違いなくデイノニクスのものだ。第2指にはシックルクローが付いているせいで、彼らをはじめとしたドロマエオサウルス類の足跡は2本指になるからな」

 

「へっへーん! どうだ! なんたってオレ達は…」

 

「はいはい、免許皆伝でしょ? それに見つけたのはガブとイナズマであってリュウタじゃないし」

 

「じゃあ、デイノニクスは井戸の中に?」

 

「そうなるだろうな…。恐らくここからあの城の中へ入り込んだのだろう…」

 

 そう呟く古代博士の視線の先には、立派な城が聳え立っている。この城こそが、ここ忍者村で最大かつ一番人気のアトラクション・忍者屋敷なのである。

 

「よし、それじゃあオウガに一言連絡してから先に入ることにしよう」

 

「分かった! じゃあオレがやるよ!」

 

 

少し前 アトラクション「悪代官のカラクリ屋敷」前

 

「オウガくーん! ごめんね、待ったかしら?」

 

「いえ、大丈夫ですよ! 何にせよ何事もなく合流できてよかったです」

 

「テレポートしてすぐスタッフの人に聞いてみたの。それなら間違いなくここだろうって…ほら、パンフレットも渡してくれたのよ」

 

 そんな会話をするオウガとミサの視線の先には立派な屋敷があり、入り口には如何にも悪代官といった風貌の恰幅の良い男と、その横でゴマすりしているこれまた如何にも悪徳商人のような男の等身大パネルが立っている。どうやらこの2人がこのアトラクションのイメージキャラクターらしい。

 

『…しかし、どうして忍者村にもいつものワシの屋敷と部屋が用意されておるんじゃ?』

 

『いえいえ、これもサービスでございますので…』

 

 時折パネルから流れてくるアトラクションの紹介メッセージ(ほぼ雑談)をBGMに、オウガとミサは状況のすり合わせを始める。

 

「それで、ミサさん。ウー博士は今回オレンジの反応については何か言ってましたか?」

 

「ここら一帯から反応は検出されなかったみたい。だからデイノニクスに集中する形でいいかもね」

 

「そうでしたか…。分かりました。取り敢えずミサさんと合流したことをリュウタ達に伝えますね。

皆は先にデイノニクスを追いかけていったので…」

 

 と、そこでタイミング良くオウガのディノラウザーが着信を知らせた。リュウタからである。

 

「おっと、噂をすれば…もしもし? こちらオウガ」

 

『よっ、オウガ! もしかしてミサさんと合流できた感じか?』

 

「うん、ついさっきね。これから俺達も向かうけど、リュウタ達が今どこにいるのか教えてもらえる?」

 

『オレ達はこれから忍者屋敷に入るところだぜ。どうやらあいつらはここへ逃げ込んだみたいなんだ!』

 

「なるほど…忍者屋敷、忍者屋敷…ここか!

分かった! それじゃあ俺達もすぐに行くから、先にデイノニクスを探しててくれ!」

 

『言われなくてもそのつもりだぜ! じゃあまた後でな!』

 

 通話を終えたところでオウガはディノラウザーをカバンにしまい、ミサに向き直った。

 

「…ということみたいです。早速俺達も忍者屋敷に行きましょう!」

 

「そうね。手遅れになる前に、わたし達でデイノニクスを止めないと!」

 

 そしてオウガとミサ、そして彼らのチビ恐竜達は共に忍者屋敷へ急行したのであった…。

 

 

その頃 忍者屋敷前の大通り

 

 忍者屋敷へと続く大通りをヨロヨロと歩く1団があった。それはなんとソーノイダ達アクト団一行であった。どうやらあれほど激しく山肌にぶつかったにも関わらず、多少怪我をしただけで彼ら全員五体満足のようだ。何とも悪運の強い連中である。

 

「ディーノ…ニック…スー…どこにおるんじゃぞ〜い…」

 

 杖代わりの枝をつきつつ弱々しい声でそう呼びかけるソーノイダ。しかし当然ながら彼らからの返事はない。

 その代わりに聞こえてきたのは、人々の悲鳴だった。その声に釣られて4人が顔を上げると、忍者屋敷から大勢の人々が逃げてきている光景が目に入ってきたのである。

 

「うわーっ!」

 

「恐竜だーっ!」

 

「何ッ! 恐竜じゃと!? となれば間違いないぞい! ディーノ達はあの忍者屋敷の中に…」

 

 ソーノイダがウサラパ達を振り返ってそう言いかけた時だった。彼らは逃げ惑う群衆に巻き込まれ、哀れ下敷きになってしまったのである。

 

「「「ハラホロヒレハレ…」」」

 

「何でワシまでこんな目に…ぞい…」

 

 土埃が晴れた頃に現れた足形だらけの彼らの姿は、最早見慣れた光景であった。

 

「あら…? オウガ君、アクト団の人達が道端に倒れてるわよ。何があったのかしら…」

 

「多分いつものように群衆に巻き込まれたんですよ。それより忍者屋敷まであと少しです。行きましょう!」

 

「…そうね。みんなと早く合流しないと…」

 

 そしてそんな彼らの横を、オウガとミサが通過していったのであった…。

 

 

その頃 忍者屋敷 地下部分

 

 その頃、井戸から忍者屋敷の地下へ入り込んだリュウタ達は、暗くジメジメとした通路を進んでいた。

 その壁に深く刻まれた切り傷に触れ、古代博士が小さく唸る。

 

「ふむ…。これは十中八九デイノニクスの爪痕だな。やはりここを通ったのは間違いなさそうだ」

 

「でもパパさん。通路はあそこで行き止まりになってますよ」

 

 そう言ってレックスが通路の先を指さす。そこは袋小路となっていて、進めそうにない様子であった。

 

「でもここまで分かれ道なんて無かったよな? じゃあデイノニクスはどこに行ったんだよ」

 

「忍者屋敷って言うくらいだし、何か仕掛けを解かないと進めないのかしら…」

 

 4人が考えを巡らせていたその時、突然ガブとイナズマが駆け出した。そして2匹は天井から意味ありげに垂れ下がっている紐に食らいついたのである。

 

『ガブッ!』

 

『ゴロロッ!』

 

 2匹分の体重がかかって紐が下がると、それに連動する形で天井が軋み…隠し階段が現れたのではないか。

 これには一同も驚愕である。

 

「隠し通路が…」

 

「いいぞガブ! イナズマ!」

 

 そして彼らは隠し階段の先へと進んでいった。やがて突き当たった天井を押しのけると…。

 

「ここは…?」

 

 そこは襖で区切られた畳の間だった。天井だと思っていたものはその畳のうちの1枚だったらしい。

 そしてその畳の間でくつろいでいたのは、3体のデイノニクス達だったのである。

 

「あーっ! いたーっ!」

 

 そのリュウタの声に驚いたのか、デイノニクス達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。更にガブ達チビ恐竜達までもが、彼らを追って飛び出していってしまった。

 

「あっ…ガブ! イナズマも待てよ!」

 

 そう言ってリュウタはつい手を伸ばしてしまう。それにより支えを失った畳がリュウタ達へのしかかってきた。

 

「「「ぎゅう!?」」」

 

 一瞬怯んだものの、すぐに彼らは気を取り直して畳の間へと這い上がる。しかしその時には、デイノニクスもチビ恐竜達も姿が見えなくなっていたのであった…。

 

 

 その頃、地上では…。

 

「忍者屋敷はここみたいですね…」

 

「目玉の施設っていうだけあって大きいわね…。

それでオウガ君、博士達はどこから追いかけるって言ってたの?」

 

「確か井戸から潜入するって言ってました。俺達もすぐ後を追いましょう!」

 

 そう言いながら駆け出そうとしたオウガを、ミサが引き止める。

 

「待って、オウガ君。博士達が井戸から潜入したなら、わたし達は上から中へ入らない?

その方が捜索範囲も広げられるし、うまくいけば挟み撃ちにできるかもしれないでしょう?」

 

「言われてみれば…そっちの方が合理的ですね。すみません、ちょっと冷静さを失ってました」

 

「いいのよ。ほら、早く行きましょ?」

 

 そしてミサに手を引かれながら、オウガも忍者屋敷に入っていく。そしてその直後、ソーノイダ達アクト団も敷地内へなだれ込んできた。

 

「急げ! お前達! ガキンチョ共より早くディーノ達を見つけるのじゃぞい!」

 

「でもドクター…闇雲に探しても見つかりそうにないですわよ…」

 

「それにしても大っきい城ッスねぇ〜…。ここを探すとなると骨が折れそうッス」

 

「それにここって忍者屋敷なんザンしょ? どんな恐ろしい仕掛けが待ってるのかと思うと…気が滅入るザンス…」

 

 1人威勢のよいソーノイダを除き、ウサラパ達は探索する前から既に諦めムードのようである。そんな彼らを、ソーノイダは容赦なく叱り飛ばした。

 

「バカモーン! 探す前から怖気づくでないぞい!

よいか! ワシはもう一度ディーノ達と会って話をするまで帰るつもりはないのじゃぞい!

分かったらさっさと…中に入るぞいっ!」

 

「「「あ〜れ〜…」」」

 

 そしてソーノイダは3人を忍者屋敷へと蹴り入れ、自分も中へ飛び込んだのであった。

 

 ということで、アクト団一行はまず外周部の廊下から探すことにしたようだ。先頭に立っているソーノイダが、デイノニクス達に呼びかけながらゆっくりと周囲を見て回る。

 

「ディーノ! ニック! スー! ワシじゃー! ソーノイダじゃー! 出ておいでー!」

 

 その後をウサラパ達3人がトボトボと付いていく。明らかに気が進まない様子だ。

 

「…ん?」

 

 しかしそこで最後尾にいたエドが、障子の向こうの影に気づいて足を止めた。すると突然障子が開き、中からデイノニクスの1体が姿を現したのである。

 

「ちょっ…!」

 

 そしてエドは悲鳴を上げる間もなく、障子の向こうへと引きずり込まれてしまう。物音に気づいたノラッティ〜が振り向いた時には、既に元通り障子が閉じたところであった。

 

「…あれ? エドはどこに行ったんザンしょ」

 

 そう呟くノラッティ〜の背後…天井からはもう1体のデイノニクスが腕を伸ばしていた。

 

「うわーっ!」

 

「…あら? エド! ノラッティ〜!…んもう、アタシを置いてどこに行っちゃったのかしら…」

 

 ウサラパもノラッティ〜の声に反応して振り向いたものの、既に彼はデイノニクスに連れ去られた後であった。眉をひそめる彼女であったが、その背後の床板が静かに開き、そこから3体目のデイノニクスがそっと手を伸ばしてくる…。

 

「!むぐっ…!」

 

 そしてデイノニクスは両手で彼女の口を塞ぐと、床下へ引きずり込んだのである。見事な隠密行動…というより最早暗殺術の類と言えるだろう。

 

「隠れてないで出ておいで〜…。おいっ! お前らもしっかり探さんか…ん?」

 

 後ろからウサラパ達の気配が消えたことに気が付いたソーノイダが振り返ると、ちょうど床板が元通りに戻されるところであった…。

 

 

「「「あわわわわ…」」」

 

 一方、拐われたウサラパ達はとある畳の一室に集められていた。彼らの目の前にはデイノニクス達が立ちはだかっており、皆揃って嗜虐的な笑みを浮かべている。

 まさに絶体絶命と言える状況であった。

 

「な、何とかおしよお前達! このままじゃアタシ達食べられちゃうだろぉ?」

 

「何とかしろって言われても…ここに逃げ道なんてないッスよ…」

 

 その時、突然彼らの目の前に2本のロープが垂れ下がってきた。いかにも引っ張ってくれと言わんばかりである。

 

「ん? なんスか、これ?」

 

 まずその片方をエドが引っ張ってみると…。

 

ガラン!

 

「いてっ!」

 

 何故かウサラパの頭上から金ダライが降ってきて、甲高い金属音と共に彼女の頭を打ち据えたのである。

 コントでもよく見る間抜けな光景を目にし、ついエドとノラッティ〜は吹き出してしまう。

 そんな彼らに対し、ウサラパは容赦なくげんこつを落とした。

 

「笑うなーっ!」

 

 当然だがこんな所で内輪揉めをしている場合ではない。彼らがバカをやっている間に更にデイノニクスは鼻息が感じられるほどの距離にまでにじり寄っていたのである。

 

「こうなったらダメ元ザンス! こっちを引いてみるザンス!」

 

 そこでノラッティ〜がもう1本のロープに手をかける。すると3人の足元の床板が持ち上がり、壁ごと彼らを隣の空間へ投げ出したのである。

 それを見てデイノニクス達は慌てて攻撃にかかったものの、彼らの爪は壁と入れ替わった床板を空しく叩いただけであった…。

 

 

その頃、忍者屋敷の別の部屋では…。

 

 閑静な茶の間に姿を現したのは、リュウタとレックスだった。どうやらガブ達を探して邸内を歩き回っているようだ。

 

「ったく! ガブもイナズマもどこ行っちゃったんだよ! ただでさえデイノニクスも追わなきゃいけないのに…」

 

 ぶつぶつ文句を零しながらリュウタは襖を開け、隣の部屋へ進んでいく。しかしそこでレックスはふと立ち止まり、後ろを振り返った。なんとマルムや古代博士がいつの間にか姿を消していたのである。

 

「あれ? マルムとパパさんはどこに?」

 

 そして足を片方…もう1枚の畳へ踏み出した時であった。

 

「うわぁっ!?」

 

 なんと畳が傾き、レックスは下へ落ちてしまったのである。そしてそれを見計らったかのようなタイミングで、掛け軸の裏からマルムが姿を現した。

 

「んもう、みんなどこ行っちゃったのよ。ほんっと勝手なんだから…」

 

 そう呟きながらマルムは床の間の引き戸を開け、その中へ潜り込んでいく。その引き戸が閉まったタイミングで囲炉裏からオウガとミサが這い出てきた。

 

「ここにも誰もいないみたいね…。みんなどこへ行ったのかしら…」

 

「これだけ広い上に仕掛けだらけだと、デイノニクス探しどころじゃなくなっちゃいますよね…」

 

 そして2人が掛け軸の裏に通路を見つけ、入っていったところで、マルムが入っていったのとは反対側の引き戸が開き、ウサラパが顔を覗かせる。

 

「ふぅ〜、何だか分からないけど助かったみたいだね」

 

 そのウサラパの言葉に釣られる形で、今度は壺からはエドが、兜の下からはノラッティ〜が頭を突き出した。

 

「もうダメかと思ったザンスよ」

 

「でも、どこを通れば外に出られるんスかねぇ…」

 

 そして3人がまた顔を引っ込めると、今度はソーノイダが壺の下から顔を覗かせた。どうやら彼もまたウサラパ達を探しているらしい。

 

「まったく、ウサラパ達はどこに行ったのじゃぞい。

早くディーノ達を探さねばならんというのに…手のかかる奴らぞい」

 

 そう愚痴を零しながらソーノイダが顔を引っ込めると、ウサラパ達がまた先程と同じ場所から出てきた。どうやらソーノイダの声を聞きつけたらしい。

 

「あら? 今ドクターの声が聞こえたような気がしたザンスけど…」

 

「おれにも聞こえたッス。でも…気のせいッスかね?」

 

「どーせまた合流したところでこき使われるんだし、ほっとけばいーのよ…」

 

「何じゃとぞい? もう一度言ってみろぞい」

 

「ひえっ!?」

 

 そこでソーノイダもウサラパ達の声を聞きつけて戻ってきた。当然叱られたくない3人はすぐさま顔を引っ込め、どこかへと身を隠す。

 

「まったく…あのウサラバカ共め…」

 

「ギャーッ! いてて…ケツ割れた…」

 

 すると、突然床の間の天井が傾き、そこから古代博士が滑り落ちてきたではないか。そして、ここで初めて古代博士とソーノイダは互いの姿を認識したのだった。

 

「ぬおっ!? お主は…」

 

「ムッ!? お前は確か…」

 

 しかしそれ以上言葉は続かなかった。立ち上がろうとした古代博士は畳の下へ、床の間から這い出ようとしたソーノイダは手を滑らせて下へ落ちてしまったのであった…。

 

 

その頃 忍者屋敷 地下通路

 

「みんなどこ行っちゃったんだろ…」

 

 リュウタはその時、真っ暗な地下道を歩いていた。安全のためサンバイザーのヘッドライトまで点けており、そのお陰もあってスムーズに進めているようだ。

 しかしそんな彼の背後から、デイノニクスの1体が忍び寄っていく。そしてデイノニクスはリュウタのすぐ後ろにつけ、大きく口を開いた…!

 

「…ん?」

 

 そこで気配を察したリュウタがすんでのところで振り向く。だがデイノニクスの方も、一瞬で姿を闇の中に溶け込ませてしまった。

 そしてもう1体のデイノニクスが、今度は別方向からリュウタへ襲いかかろうと牙を剥く…!

 

「あれ?」

 

 そこでリュウタがまたそちらへ振り向くが、またしてもデイノニクスは一瞬で姿を消してしまう。

 気配はあるのに姿は見えない…。そんな状況でリュウタは慎重に辺りをライトで照らすが、そんな彼の頭上には最後の1体が忍び寄っていたのだった…!

 そしてデイノニクスの鋭い爪がリュウタの首筋へ伸びようとした、その時…!

 

『ガァブッ!』

 

『ゴロローッ!』

 

「あっ! ガブ! イナズマ! お前らどこ行ってたんだよ! 心配したんだぞ…」

 

 突然ガブとイナズマがその場へ躍り出たのである。どうやら彼らはリュウタにデイノニクス達の魔の手が迫っていたことに気づいていたようだ。

 デイノニクス達は形勢の不利を悟って逃げ出したものの、ガブとイナズマはまだ警戒の色を滲ませている。そんな彼らを、何も知らないリュウタは不思議そうに見つめていたのだった…。

 

 その頃、忍者屋敷の中は混迷を極めていた。

 

「一体ここはどこなのよー?」

 

「ちょっと! 誰!? 足踏まないでよ!」

 

「暗いの怖いッス…」

 

「リュウター! どこだー!?」

 

「ここを行ったらあそこに出たから、えーっと外に出るには…どこに行けばいいんだ…」

 

「オウガ君…わたし達ここから出られるのかしら…」

 

「行き止まりザンス…」

 

「あーッ! もういやっ! ここから出せーッ!」

 

 皆必死に外へ出ようとしているものの、あまりに仕掛けが多い上に複雑なせいで脱出ルートを見いだせていないようである。

 そんな彼らを置いてやすやすと屋敷から抜け出したデイノニクス達は、どこかへ歩み去ろうとした…。

 

「待っておったぞーい! ディーノ! ニック! スーよ!」

 

 と、そこでデイノニクス達に声をかける者がいた。その声に反応したデイノニクスが忍者屋敷を仰ぎ見ると、最上階の屋根からソーノイダが姿を現したのである。デイノニクス達が外へ出るまでそこで張っていたようだ。

 そして更に信じ難いことに、ソーノイダはそこから躊躇いもなく飛び降りたではないか。

 

「とぉあーっ…ぐふっ!」

 

 …が、着地に失敗し、地面にうつ伏せで転がってしまった。しかしすぐに何事もなかったかのように起き上がり、デイノニクス達のもとへ駆けていく。一体どれほど頑丈な体を持っているのだろうか。

 

「ワシじゃ! Dr.ソーノイダじゃ! お前達のパパじゃぞい!」

 

 そうソーノイダが呼びかけるものの、デイノニクス達は訝しげな様子で彼から距離を取る。どうやらテリジノとは違って彼のことを覚えていないようだ。

 

「ワシのことを…忘れてしまったのだぞいか…?」

 

 その時だった。ソーノイダのすぐ隣でドロンと煙が立ち昇ったかと思うと、そこから忍装束のあの老人が姿を現したのである。

 

「ぞい? 誰ぞいお主は…」

 

「これを着るといい」

 

 その言葉と共に老人は紫の忍装束と小太刀を差し出した。

 

「あ、はい。どうも…?」

 

 何が何だか分からないものの、反射的に感謝の言葉を述べたソーノイダに老人は笑いかけると、また煙と共に姿を消したのだった。

 

「待て! アクト団! デイノニクスは渡さないぞ!」

 

 と、そこで突然忍者屋敷の入り口が騒がしくなってきた。見れば、リュウタ達Dキッズ一行がいるではないか。だがオウガとミサはまだ屋敷の中のようである。

 

「フン! そうはいくかい!」

 

 そして今度はウサラパ達が井戸の中から姿を現した。しかしいがみ合う両者をよそに、デイノニクスは再びどこかへ走り去ろうとするそぶりを見せる。

 

「あらら…。全く相手にされてないザンス」

 

「ならば…これならどうぞい! ニンッ!」

 

 高らかにそう声を張り上げると、ソーノイダは一瞬で忍装束に着替えてデイノニクス達の前に立ちはだかる。

 すると、何ということだろうか。デイノニクス達の目の色が露骨に変わったのである。

 

「お前達に課した忍者修行は、それは厳しいものじゃったろうぞい。しかし、それでもあの時のワシは、それこそがお前達を更に強くする方法だと、言わば愛のムチだと確信しておったぞい」

 

 そこでソーノイダは「じゃが…」と一度言葉を区切ると、地面に座り…デイノニクス達に向けて深く土下座をした。

 

「すまん…本当にすまん! 愛のムチなどと考えておったが、結局それはワシの自己満足に過ぎなかったぞい!

それより、お前達がどれほど辛かったのか、苦しんでいたのかを考えきれてなかった自分が本当に恥ずかしいぞい!

許してくれ…なんて甘いことを言うつもりはないぞいが…この通りぞい! もしお前達が良ければ、ワシと一緒にアジ島に帰ってくれないぞいか!?」

 

「ドクター…」

 

「まさか恐竜相手に土下座するなんて…」

 

「あのお爺さん、やっぱりテリジノサウルスの一件から気持ちに変化があったのかしら」

 

 これまでからは考えられないソーノイダの姿に、ウサラパ達だけでなくDキッズまで呆気に取られてしまう。

 当のデイノニクス達もしばらく当惑したような表情を浮かべていたが、やがて3体で顔を突き合わせ、何やら相談を始めた。そして相談が終わると、ソーノイダへつかつかと歩み寄り…。

 

「ぐはっ!」

 

 スーがソーノイダを蹴りつけた。蹴られたソーノイダの体はもんどり打ちながら転がっていき、更にニックからも蹴りが浴びせられる。

 

「やっぱりかなり恨まれてたみたいッスねぇ…」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないザンス! あのままじゃドクターが殺されるかもしれないザンス!」

 

「お待ち下さい、ドクター! 今助太刀に…」

 

「やめんか! お前達!」

 

 アクトホルダーとカードを手に取りかけたウサラパを、ソーノイダが叱責する。見れば既に彼の体は土埃に塗れ、あちこちに血も滲んでいた。

 

「でもドクター、このままじゃあいつらに…」

 

「これはワシの犯した罪に対する罰ぞい! だからお前達は黙ってそこで見ておれ! 心配せんでもワシは…」

 

 そう言いかけたところで、ディーノがソーノイダの腹に尻尾で強烈な打撃を浴びせた。これには耐えきれずにソーノイダもがくりと膝をつく。

 それを見たディーノは鋭く口角を上げると、鋭いシックルクローが備わった片足を高く上げ…ソーノイダ目掛けて勢いよく振り下ろした!

 

「ッ! ぐうっ…!」

 

 反射的に両目を固く瞑るソーノイダ。しかし、いつになっても切り裂かれる感触と痛みが襲ってこない。

 そこで彼が恐る恐る目を開けると、シックルクローは彼の眼前の地面に突き刺さっていたのだった。

 

「ディーノ…何故…」

 

 そうソーノイダが呼びかけると、ディーノは地面から爪を抜き、フンッと鼻を鳴らした。しかし、瞳は変わらず真っ直ぐに彼を見つめている…。

 

「ワシを…許してくれるのか…? 修行と称してあんなに酷い仕打ちをした、このワシを…?」

 

 弱々しい声でそう言いながら、ソーノイダはそっと片手をディーノへと伸ばす。その手がディーノの横顔に触れようとした…その時だった。

 

ヒュンッ!

 

「…ん? 何じゃ…?」

 

 彼のすぐそばを、鎌風が吹き抜けたのであった。

 

 




中編はここまでになります。
只今アンケートも設置中ですので、もしまだ回答されていない場合は回答していただけるととても助かります。
それでは、後編をお楽しみにお待ち下さい。

第37話の原作「恐竜!荒野の決闘!」に出演する恐竜について、皆様からのご意見を伺いたいと思います。以下の選択肢から1つを選んで回答して下さい。(選択肢3を選ばれた方は、具体的な恐竜を提案して下さると助かります)

  • 原作通りサウロファガナクスを出す
  • アロサウルス・A(風属性)を出す
  • 別の超大型肉食恐竜を出す
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